特許第6160786号(P6160786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特許6160786末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂、それを含む熱可塑性樹脂組成物、および成形品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6160786
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂、それを含む熱可塑性樹脂組成物、および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/20 20060101AFI20170703BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20170703BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C08G63/20
   C08L101/00
   C08L67/02
   C08J5/00CFD
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-565514(P2016-565514)
(86)(22)【出願日】2016年10月24日
(86)【国際出願番号】JP2016081419
【審査請求日】2017年1月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-214370(P2015-214370)
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅
(72)【発明者】
【氏名】東城 裕介
(72)【発明者】
【氏名】横江 牧人
(72)【発明者】
【氏名】梅津 秀之
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−129513(JP,A)
【文献】 特開平11−258836(JP,A)
【文献】 特開2010−280862(JP,A)
【文献】 特開平11−092639(JP,A)
【文献】 特開昭63−314267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00−63/91
C08J 5/00−5/24
C08L 67/00−67/03
101/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量Mwが10,000〜100,000、融点が210℃〜235℃、250℃における溶融粘度μが10Pa・s以下であって、下記式(A)で表される(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物が末端に90〜300mol/ton結合した末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂;
ここで、重量平均分子量Mwは、ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005Nトリフルオロ酢酸ナトリウム添加)を移動相とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で求めた、標準ポリメタクリル酸メチルの分子量に対する相対的な重量平均分子量を示す;
【化1】
上記式(A)において、
は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基から選ばれる基であり、
はヒドロキシル基およびカルボキシル基ら選ばれる基であり、
mは1〜3の整数であり、
nは22の整数であり、
Xは水素原子および/またはメチル基であり、
Yは水素原子および/またはメチル基であり、
およびRを除いた部分の炭素合計数が1844である。
【請求項2】
示差走査型熱量計(DSC)を用い、昇温速度20℃/分で30℃から250℃まで昇温し、250℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分で250℃から30℃まで降温し、昇温速度20℃/分で30℃から250℃まで昇温したときに観察される結晶融解熱量が40〜60J/gである請求項1に記載の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂。
【請求項3】
酸価が13mol/ton以下である請求項1または2に記載の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂。
【請求項4】
窒素気流下、250℃で1時間熱処理した際の重量減少率が15%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂。
【請求項5】
重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比で表されるMw/Mn(分散度)が2.5以下である請求項1〜4のいずれかに記載の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂および他の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、該他の熱可塑性樹脂100質量部に対し、該末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を5〜30質量部含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記他の熱可塑性樹脂が、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリブチレンナフタレートから選ばれる1種以上の樹脂である請求項6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項6または7に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融粘度が極めて低く、溶融滞留安定性に優れた高融点の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂、それを含む熱可塑性樹脂組成物、およびその熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂は機械特性、耐熱性、成形性、リサイクル性、耐薬品性の点で優れ、成形品、フィルムおよび繊維などに溶融加工することができる。中でもPBTは自動車や電気・電子機器のコネクター、リレーおよびスイッチなどの工業用成形品の材料として広く使用されている。一般にPBTは、テレフタル酸(TPA)またはそのエステル形成性誘導体と、1,4−ブタンジオール(BDO)から製造される。
【0003】
特許文献1では、熱可塑性樹脂に対して、片末端メトキシ基封鎖ポリエチレングリコールを少量添加して重合時に反応させることによって、流動性を向上させている。
【0004】
特許文献2では、ポリエチレンテレフタレート(PET)に対して、分子量の高い片末端メトキシ基封鎖ポリエチレングリコールを重合時に反応させることによって、防汚性および洗濯耐久性を付与している。
【0005】
特許文献3では、ポリテトラメチレングリコールを含むPBTマスターバッチを作成し、PBTに耐熱衝撃性を付与している。
【0006】
非特許文献1では、片末端メトキシ基封鎖ポリエチレングリコールをPET重合時に添加したPET樹脂が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−129513号公報
【特許文献2】特開昭63−35824号公報
【特許文献3】特開2001−24768号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Timothy E. Long著「Synthesis and characterization of poly(ethylene glycol) methyl ether endcapped poly(ethylene terephthalate)」Macromolecular Symposia出版、2003年10月、volume.199、issue.1、p.163―172
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PBTは、高分子量体であるほど溶融粘度が高くなることが知られている。溶融粘度を低減することができれば、溶融加工時の剪断発熱が抑制されることに起因する熱分解の抑制、溶融加工温度の低下、複雑形状の成形品の製造が可能となる。
【0010】
しかしながら、特許文献1の技術では、機械特性の低下を抑制するために、ポリオキシアルキレン基を有する化合物の結合量が低く、溶融粘度の低減効果が小さいという課題があった。
【0011】
特許文献2の技術では、ポリオキシアルキレン基を有する化合物の分子量が大きいため、溶融滞留時に分子量低下するとともに、溶融粘度の低減効果が小さいという課題があった。
【0012】
特許文献3の技術では、ポリオキシアルキレン基を有する化合物をポリマー末端ではなく、ブロック共重合体として主鎖へ結合させているため、溶融粘度の低減効果はほとんど表れないという課題があった。
【0013】
非特許文献1の技術では、得られるPET樹脂は、低分子量体であり、融点が低く、機械特性が低かった。また、分岐骨格導入によってゲル化する課題があった。
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、溶融粘度が極めて低く、溶融滞留安定性に優れ、かつ、高融点の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は次の構成を有する。すなわち、
重量平均分子量Mwが10,000〜100,000、融点が210℃〜235℃、250℃における溶融粘度μが10Pa・s以下であって、下記式(A)で表される(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物が末端に90〜300mol/ton結合した末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂;
ここで、重量平均分子量Mwは、ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005Nトリフルオロ酢酸ナトリウム添加)を移動相とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で求めた、標準ポリメタクリル酸メチルの分子量に対する相対的な重量平均分子量を示す;
【0016】
【化1】
【0017】
上記式(A)において、
は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基から選ばれる基であり、
はヒドロキシル基およびカルボキシル基ら選ばれる基であり、
mは1〜3の整数であり、
nは22の整数であり、
Xは水素原子および/またはメチル基であり、
Yは水素原子および/またはメチル基であり、
およびRを除いた部分の炭素合計数が1844である。
【0018】
本発明は、上記の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂および他の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、該他の熱可塑性樹脂100質量部に対し、該末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を5〜30質量部含む熱可塑性樹脂組成物を含む。
【0019】
本発明は、上記の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、溶融粘度が極めて低く、溶融滞留安定性に優れ、かつ、高融点の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ジオール成分およびジカルボン酸成分からなる。ジオール成分とは、ポリブチレンテレフタレート樹脂を構成する成分のうち、ジオール由来の成分である。同じく、ジカルボン酸成分とは、ジカルボン酸またはそのジアルキルエステル由来の成分である。末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂において、主要ジオール成分は、1,4−ブタンジオール成分であり、主要ジカルボン酸成分は、テレフタル酸成分である。ここで主要ジオール成分とは、末端変性ポリブチレンテレフタレートを構成する全ジオール成分に対する1,4−ブタンジオール成分の割合が80mol%以上であることをいう。また、主要ジカルボン酸成分とは、末端変性ポリブチレンテレフタレートを構成する全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸成分の割合が80mol%以上であることをいう。
【0023】
末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、本発明の効果が実質的に損なわれない範囲で、共重合成分として、イソフタル酸、イソフタル酸−5−スルホン酸塩、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ビスフェノールジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸およびそのジアルキルエステル;琥珀酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸およびそのジアルキルエステル;エタンジオール、プロパンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のようなジオール成分などの重合性官能基を2つ有する化合物を共重合していてもよい。これらの化合物由来の成分は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を構成する全モノマー成分に対して、10質量%以下の範囲で含有してもよい。これらの化合物は単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。なお、ジカルボン酸ジアルキルエステルとしては、ジカルボン酸ジメチル、ジカルボン酸ジエチルなどが挙げられる。なお、共重合成分としては、前記重合性官能基を2つ有する化合物が好ましい。トリメチル1,3,5−ベンゼントリカルボキシレートのような、重合性官能基を3つ以上有する化合物は、架橋点となるため、ポリマーの融点や溶融滞留安定性が低下する傾向がある。ポリマー中に含まれる、重合性官能基を3つ以上有する化合物の質量割合は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を構成する全モノマー成分に対して、0.8質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5質量%以下、さらに好ましくは0質量%である。
【0024】
本発明において、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物からなる成形品の機械特性に優れる点で、10,000以上であることが必要である。10,000未満であると機械強度が低下する問題がある。また、14,000以上であることが好ましく、18,000以上であることがより好ましい。また、製造時の熱劣化を抑制できる点で、100,000以下であることが必要である。100,000を超えると成形加工が困難となる問題がある。90,000以下であることが好ましく、80,000以下であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール、カラムとしてShodex GPC HFIP−806M(2本)とShodex GPC HFIP−LGを直列に接続したものを用いて、30℃で測定したヘキサフルオロイソプロパノール(0.005Nトリフルオロ酢酸ナトリウム添加)を移動相とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。その重量平均分子量は、標準ポリメタクリル酸メチルの分子量に対する相対値である。なお、後述する数平均分子量についても、前記方法と同じ方法で測定されたものである。
【0025】
本発明において、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点は210℃〜235℃の範囲であることが必要である。溶融加工性に優れる点で、融点は215〜235℃であることが好ましく、220〜235℃であることがより好ましく、220〜230℃であることが特に好ましい。融点が210℃未満であると耐熱性低下の問題がある。一方、融点が235℃を超えると極めて結晶化度、結晶サイズが大きくなるため、溶融加工時に過度に加熱することが必要となり、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂末端に結合させた式(A)で表される(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物に由来する構造の分解を併発する問題がある。なお、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の融点とは、示差走査型熱量計(DSC)を用い、昇温速度20℃/分で30℃から250℃まで昇温し、250℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分で250℃から30℃まで降温した後、再び昇温速度20℃/分で30℃から250℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークのピークトップ温度である。
【0026】
また、前記吸熱ピークの面積で表される結晶融解熱量は、耐熱性に優れる点で、40J/g以上であることが好ましく、45J/g以上であることがより好ましい。また、溶融加工性に優れる点で、60J/g以下が好ましく、55J/g以下がより好ましい。末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を構成する全ジオール成分に対する1,4−ブタンジオール成分の割合が80mol%以上、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸成分の割合が80mol%以上とすることで、結晶融解熱量を上記の範囲にすることができる。
【0027】
さらに、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、示差走査型熱量計(DSC)を用い、昇温速度20℃/分で30℃から250℃まで昇温し、250℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分で250℃から30℃まで降温したときに観察される発熱ピークのピークトップ温度(降温結晶化温度)が160℃以上であることが、結晶性に優れる点で、好ましい。165℃以上であることがより好ましく、170℃以上であることがさらに好ましい。また、200℃以下であることが好ましい。降温結晶化温度が200℃を越える場合、分子間相互作用が強く、溶融粘度低減効果が小さい傾向があるので、降温結晶化温度は200℃以下であることが好ましい。190℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、従来のポリブチレンテレフタレート樹脂と比較して、溶融粘度が極めて低いことが特徴である。本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、溶融粘度低減効果に優れる点で、250℃における溶融粘度μ(Pa・s)が10Pa・s以下であることが必要である。溶融粘度が低いと、重合時の剪断発熱が抑制され、分解を抑制できるため、8Pa・s以下であることが好ましく、6Pa・s以下であることがより好ましい。溶融粘度μの下限は特に限定されず、溶融粘度μが低いほど溶融加工性は向上する。溶融粘度の下限値は、理論上は0Pa・sである。なお、本発明において、250℃における溶融粘度μ(Pa・s)とは、レオメータ(AntonPaar社製、MCR501)を用いて、窒素雰囲気下、250℃で5分溶融した後、振動モード、周波数3.0Hz、振り角20%にて測定したときの溶融粘度μ(Pa・s)をいう。
【0029】
本発明において、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、次式(A)で表される化合物を末端に90〜300mol/ton結合させていることが必要である。
【0030】
【化2】
【0031】
上記式(A)において、
は炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基から選ばれる基であり、
はヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基およびチオール基から選ばれる基であり、
mは1〜3の整数であり、
nは1〜29の整数であり、
Xは水素原子および/またはメチル基であり、
Yは水素原子および/またはメチル基であり、
およびRを除いた部分の炭素合計数が2〜58である。
【0032】
式(A)で表される(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物(以下、化合物(A)と呼ぶことがある)は、分子運動性が高いエーテル結合をもち、ポリブチレンテレフタレート樹脂と溶解度パラメータが近似しているため、相溶性が高い。そのため、(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物が、溶融時のポリブチレンテレフタレート分子鎖の分子間相互作用を減少させたり、自由体積を増加させることが可能となり、ポリマー鎖の分子運動性を大幅に増大させる。そのため、溶融粘度低減効果が顕著に発現する。
【0033】
化合物(A)のRは、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基から選ばれる基である。炭素数1〜30のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。炭素原子数6〜20のシクロアルキル基の具体例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等が挙げられる。炭素原子数6〜10のアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。炭素原子数7〜20のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、2−フェニルプロパン−2−イル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。Rとしては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。
【0034】
化合物(A)のRは、ポリブチレンテレフタレート樹脂に結合可能な官能基であり、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基およびチオール基から選ばれる基である。ポリブチレンテレフタレート樹脂との反応性に優れる点で、Rとしては、ヒドロキシル基またはカルボキシル基が好ましい。
【0035】
化合物(A)のmは耐熱性に優れる点で、1〜3の整数であることが必要である。また、mは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。mを3以下とすることで、末端部分に占めるエーテル結合が多くなり、溶融粘度低減効果を大きくすることができる。
【0036】
化合物(A)のnは、溶融粘度低減効果および溶融滞留安定性に優れる点で、1〜29の整数であることが必要である。nは3以上の整数であることが好ましく、5以上の整数であることがより好ましい。nは25以下の整数であることが好ましく、20以下の整数であることがより好ましい。nが29を超えると溶融粘度低減効果が小さくなるとともに、溶融滞留安定性が悪化する。
【0037】
化合物(A)のXは、水素原子および/またはメチル基である。Xを水素原子および/またはメチル基とすることで、主骨格となるポリブチレンテレフタレート部分との親和性が向上し、溶融粘度低減効果を大きくすることができる。
【0038】
化合物(A)のYは、水素原子および/またはメチル基である。Yを水素原子および/またはメチル基とすることで、主骨格となるポリブチレンテレフタレート部分との親和性が向上し、溶融粘度低減効果を大きくすることができる。
【0039】
化合物(A)のうちRおよびRを除いた部分の炭素合計数は2〜58である。RおよびRを除いた部分の炭素合計数を2〜58とすることで、溶融粘度低減効果および溶融滞留安定性に優れる末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を得ることができる。
【0040】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂において、末端に結合した、化合物(A)の濃度は、90〜300mol/tonの範囲であることが必要である。溶融粘度低減効果を大きくするためには、化合物(A)の濃度は、95mol/ton以上であることが好ましく、100mol/ton以上であることがより好ましい。また、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の分子量を高くするためには、化合物(A)の濃度は、290mol/ton以下であることが好ましく、280mol/ton以下であることがより好ましい。化合物(A)の濃度が90mol/ton未満の場合、溶融粘度低減効果が小さくなる問題がある。化合物(A)の濃度が300mol/tonを超えると、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の高分子量化が困難となり、溶融滞留安定性も低下する問題がある。
【0041】
末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量%に対する、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端に結合した化合物(A)の質量割合は、5質量%以上であることが好ましい。化合物(A)の質量割合を5質量%以上とすることで、溶融粘度低減効果を大きくすることができる。化合物(A)の質量割合は、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上がさらに好ましい。また、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の分子量を高くするためには、化合物(A)の質量割合は、50質量%以下であることが好ましい。化合物(A)の質量割合は、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。化合物(A)の質量割合は、5質量%未満であると溶融粘度低減効果が小さく、不十分であり、一方、50質量%を超えると耐熱性低下の問題がある。
【0042】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ポリマー末端に前記式(A)で表される(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物が特定量結合していることにより、主骨格となるポリブチレンテレフタレート樹脂の結晶性を阻害することなく、溶融時の分子運動性を向上させることができ、溶融粘度が顕著に低減する。
【0043】
(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物をポリブチレンテレフタレート樹脂の主鎖に結合させた場合は、前記化合物を末端に結合させた場合に比べて、(ポリ)オキシアルキレン構造の両端が拘束されることにより、十分な分子運動性向上効果を発現できない傾向にある。またポリブチレンテレフタレート樹脂の降温結晶化温度が低下し、結晶性が低下する傾向がある。一方、化合物(A)をポリブチレンテレフタレート樹脂の末端に結合させることで、結晶性の低下を抑制することができる。さらに、末端に結合させることで、(ポリ)オキシアルキレン構造とポリブチレンテレフタレート構造とが、秩序的なミクロ相分離様の構造をとるため、種々の添加剤が高濃度化しやすい。例えば、酸化防止剤を添加する場合、従来よりも高い長期保存安定性および溶融滞留安定性を発現することができる。
【0044】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、溶融粘度が低く、重合時の剪断発熱が抑制され、ポリブチレンテレフタレート樹脂の分解を抑制できるため、カルボキシル基の発生を抑制することができる。末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、酸価(カルボキシル基濃度)が13mol/ton以下であることが耐加水分解性に優れる点で、好ましい。酸価は、10mol/ton以下であることがより好ましく、7mol/ton以下であることがさらに好ましい。酸価の下限は特に限定されないが、カルボキシ基を酸触媒とした加水分解を抑制するという観点で0に近い方が好ましい。酸価の下限値は、理論上は0である。なお、耐加水分解性は、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を、121℃、100%RH条件下で24時間処理した後の重量平均分子量を、処理前の重量平均分子量で割った重量平均分子量保持率を求めることで評価することができる。重量平均分子量保持率が60%以上であることが好ましく、70%であることがさらに好ましい。重量平均分子量は前述の通りゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0045】
末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、窒素気流下中、250℃で1時間保持した際の重量減少率が15%以下であることが好ましい。この範囲にすることで、溶融滞留時の粘度変化を最小限に維持し、安定して溶融加工することができる。また、重量減少率は、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。なお、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の重量減少率とは、熱重量測定装置(TGA)を用い、昇温速度200℃/分で30℃から250℃まで昇温し、250℃で1時間保持した際の重量減少率である。
【0046】
末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で表される分散度(Mw/Mn)は、2.5以下であることが好ましい。分散度は、2.3以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましい。本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、溶融粘度が低いため、溶融重合時に、均一に重合が進行し、分散度が小さくなる傾向にある。分散度の下限値は特に限定されないが、理論上、1.0以上である。分散度が2.5を超える場合、相対的に低分子量成分が多くなるので、靭性などの機械特性が低下する傾向にある。
【0047】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、溶融粘度が低く、高い流動性を有するため、射出成形品、繊維、フィルムなどに容易に加工することができ、電気部品や自動車部品などの成形材料の他、フィルム用、繊維用およびブローボトル用としても広く用いることができる。この効果により、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を低温で加工することも可能となり、それにより熱エネルギーを削減でき、環境負荷を低減できる。
【0048】
射出成形においては、従来のポリブチレンテレフタレート樹脂では困難であった複雑な形状の成形品も、本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることで容易に得ることができる。
【0049】
また、繊維においては、従来、分子量増加に伴う溶融粘度増加により、溶融紡糸が困難となる課題があった。しかし、本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることで、高分子量体の溶融紡糸が容易となる上、溶融時の剪断発熱抑制に伴い分解を回避できるため、高強度の繊維を得ることができる。
【0050】
さらに、フィルムにおいても、繊維と同様に、分子量増加に伴う溶融粘度増加により、溶融製膜が困難となる課題があった。しかし、本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることで、高分子量体の溶融製膜が容易となる上、溶融時の剪断発熱抑制に伴い分解を回避できるため、高強度のフィルムを得ることができる。
【0051】
次に、本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法について説明する。
【0052】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法は、次の2段階の工程から成る。すなわち、(a)エステル化反応工程、または(b)エステル交換反応工程からなる1段階目の工程と、それに続く(c)重縮合反応工程からなる2段階目の工程である。
【0053】
1段階目の工程のうち、(a)エステル化反応の工程は、ジカルボン酸とジオールとを所定の温度でエステル化反応させ、所定量の水が留出するまで反応を行い、低重縮合体を得る工程である。また(b)エステル交換反応の工程は、ジカルボン酸ジアルキルエステルとジオールとを所定の温度でエステル交換反応させ、所定量のアルコールが留出するまで反応を行い、低重縮合体を得る工程である。
【0054】
2段階目の工程である(c)重縮合反応は、(a)エステル化反応または(b)エステル交換反応で得られた低重縮合体を加熱しながら、減圧にすることにより脱ジオール反応を進行させ、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を得る工程である。
【0055】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法において、前記工程(a)、(b)および(c)から選ばれるいずれかの工程において前記化合物(A)を添加することが、ポリマー末端に化合物(A)を定量的に導入できるため、好ましい。工程(a)または工程(b)で化合物(A)を添加することがより好ましい。また、未変性ポリブチレンテレフタレート樹脂と化合物(A)を押出機を用いて溶融混練することによっても末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を製造することはできるが、ポリブチレンテレフタレート末端への化合物(A)の導入率が低下するため、未反応の化合物(A)が、熱処理時にブリードアウトする傾向がある。
【0056】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法において、(a)エステル化反応工程または(b)エステル交換反応工程の最高温度は、140℃以上にすることが好ましい。最高温度を140℃以上にすることで、工程(a)または工程(b)において化合物(A)を添加した場合に、ポリブチレンテレフタレート成分との反応性が十分に確保され、ポリマー末端に定量的に導入することができる。工程(a)または工程(b)の最高温度は、150℃以上がより好ましく、160℃以上がさらに好ましい。また、最高温度は、290℃以下にすることが好ましい。290℃以下にすることで、工程(a)または工程(b)において化合物(A)を添加した場合に、化合物(A)の熱分解や揮発を抑制することができる。最高温度は、280℃以下が好ましく、240℃以下がさらに好ましい。
【0057】
(c)重縮合反応工程の最高温度は230℃以上にすることが好ましい。最高温度を230℃以上にすることで、効率的にポリマーを高重合度化することができる。最高温度は240℃以上がより好ましい。また、(c)重縮合反応工程の最高温度は260℃以下にすることが好ましい。最高温度を260℃以下とすることで、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の熱分解を抑制することができる。最高温度は250℃以下がより好ましい。
【0058】
上記の方法で得られた末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を、さらに固相重合を行うことにより、さらに高重合度化してもよい。固相重合は、特に限定されないが、不活性ガス雰囲気下または減圧下で加熱処理されることで実施される。不活性ガスとしては、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対して不活性なものであれば良く、例えば窒素、ヘリウム、炭酸ガスなどを挙げることができ、窒素がより好ましく用いられる。また、圧力条件としては、装置内の圧力を133Pa以下の条件とすることが好ましく、より低い圧力にすることが固相重合時間を短縮できるため好ましい。固相重合温度は、反応速度および生産性の点から、180℃以上が好ましく、185℃以上がより好ましい。一方、ポリエステルチップ同士の融着を抑制する点から、固相重合温度は、240℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。固相重合温度は、上記範囲内で任意に設定可能である。一般的な傾向として、低い温度で重合した場合には、反応速度が低下して期待する固有粘度まで上昇させる時間が長くなるが、最高到達固有粘度は高くなる。逆に重合温度を高くした場合には、反応速度が上昇するが、同時に劣化反応も進行するため、最高到達固有粘度は低くなる。
【0059】
末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、バッチ重合、半連続重合、連続重合のいずれでも生産することができる。
【0060】
末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造方法において、(a)エステル化反応に用いられる触媒としては、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウムなどの化合物が用いられる。また、(b)エステル交換反応に用いられる触媒としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、コバルト、亜鉛、リチウム、チタンなどの化合物が用いられる。また、(c)重縮合反応に用いられる触媒としては、アンチモン、チタン、アルミニウム、スズ、ゲルマニウムなどの化合物が用いられる。
【0061】
アンチモン化合物としては、アンチモンの酸化物、アンチモンカルボン酸、アンチモンアルコキシドなどが挙げられる。アンチモンの酸化物として、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモンカルボン酸として、酢酸アンチモン、シュウ酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリウム等が挙げられる。アンチモンアルコキシドとして、アンチモントリ−n−ブトキシド、アンチモントリエトキシド等が挙げられる。
【0062】
チタン化合物としては、チタン錯体、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマーなどのチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアセチルアセトナートなどが挙げられる。中でも多価カルボン酸および/またはヒドロキシカルボン酸および/または多価アルコールをキレート剤とするチタン錯体であることが、ポリマーの熱安定性、色調劣化を防ぐことができるため好ましい。チタン化合物のキレート剤としては、乳酸、クエン酸、マンニトール、トリペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0063】
アルミニウム化合物としては、カルボン酸アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート化合物、塩基性アルミニウム化合物などが挙げられる。具体的には、酢酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、塩基性酢酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0064】
スズ化合物としては、モノブチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズオキサイド、ヘキサエチルジスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、モノブチルヒドロキシスズオキサイド、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズサルファイドなどが挙げられる。
【0065】
ゲルマニウム化合物としては、ゲルマニウムの酸化物、ゲルマニウムアルコキシドなどが挙げられ、ゲルマニウムの酸化物として、具体的には、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム等が、ゲルマニウムアルコキシドとして、具体的には、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド等が挙げられる。
【0066】
マグネシウム化合物としては、具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0067】
マンガン化合物としては、具体的には、塩化マンガン、臭化マンガン、硝酸マンガン、炭酸マンガン、マンガンアセチルアセトネート、酢酸マンガン等が挙げられる。
【0068】
カルシウム化合物としては、具体的には、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウムアルコキシド、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0069】
コバルト化合物としては、具体的には、塩化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルト、酢酸コバルト四水塩等が挙げられる。
【0070】
亜鉛化合物としては、具体的には、酸化亜鉛、亜鉛アルコキシド、酢酸亜鉛等が挙げられる。
【0071】
これら金属化合物は、水和物であっても良い。
【0072】
末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、安定剤としてリン化合物を含んでも良い。具体的には、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト等が挙げられる。色調や熱安定性改善効果に優れる、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン(PEP36:旭電化社製)や、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト(GSY−P101:大崎工業社製)などの3価リン化合物が好ましい。
【0073】
末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ポリオキシアルキレン構造を有する化合物の酸化分解を抑制するために、酸化防止剤を含むことが好ましい。末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、酸化防止剤を0.1〜5.0質量部含むことが好ましい。酸化防止剤の含有量は、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。酸化防止剤による末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の分解を抑制する点で、含有量は、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましい。含有量が0.1質量部未満であると酸化分解抑制効果が不十分であり、一方、5.0質量部を超えると耐熱性低下の問題がある。酸化防止剤としては、特に限定されないが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤、トリアゾール系酸化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもまたは2種類以上併用して用いてもよい。
【0074】
ヒンダードフェノール系の酸化防止剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール等が挙げられる。中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](IRGANOX1010:チバ・ジャパン社製)は、着色を抑制する効果が高いため、好ましい。
【0075】
イオウ系の酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)等が挙げられる。
【0076】
ヒドラジン系の酸化防止剤としては、デカメチレンジカルボキシリックアシッド−ビス(N’−サリシロイルヒドラジド)、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、N−ホルミル−N’−サリシロイルヒドラジン等が挙げられる。
【0077】
トリアゾール系の酸化防止剤としては、ベンゾトリアゾール、3−(N−サリシロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール等が挙げられる。
【0078】
また、必要に応じて、色調調整剤として樹脂等に用いられる染料が添加されても良い。特にCOLOR INDEX GENERIC NAMEで具体的にあげると、SOLVENT BLUE 104やSOLVENT BLUE 45等の青系の色調調整剤、SOLVENT VIOLET 36等の紫系色調調整剤が高温での耐熱性が良好で発色性に優れるため好ましい。これらは単独で用いても2種以上組み合わせて用いても良い。
【0079】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を各種製品に加工する際に、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤、例えば、顔料および染料を含む蛍光増白剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、核剤、艶消剤、可塑剤、離型剤、消泡剤またはその他の添加剤などの添加剤を必要に応じて1種以上添加することもできる。
【0080】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂および他の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。このような熱可塑性樹脂組成物は、本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端に付加した化合物(A)に由来する構造により、溶融粘度が低くなる。末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることで、熱可塑性樹脂組成物の製造工程を変更することなく、熱可塑性樹脂組成物に機能性を付与できるとともに、使用目的に応じて、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂と他の熱可塑性樹脂の量をコントロールすることで、所望の溶融粘度の熱可塑性樹脂組成物を容易に得ることができる。また、化合物(A)を他の熱可塑性樹脂と直接混合した場合、作業中の粉体の舞い上がりや液体の付着など作業環境が悪化するが、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることで、この課題を解決することができる。さらに、末端に付加した化合物(A)に由来する構造はポリブチレンテレフタレート樹脂相に存在しやすいため、溶融混練、成形加工時の熱安定性が良好となる。
【0081】
他の熱可塑性樹脂に本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を溶融混練することで、溶融粘度の低い熱可塑性樹脂組成物を容易に得ることができる。また、成形加工前に他の熱可塑性樹脂に本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂をドライブレンドし、その後成形することで、溶融粘度の低い熱可塑性樹脂組成物を容易に得ることもできる。
【0082】
他の熱可塑性樹脂100質量部に対する末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量割合は、5質量部以上であることが好ましい。質量割合を5質量部以上とすることで、溶融粘度低減効果を大きくすることができる。質量割合は7質量部以上がより好ましく、9質量部以上がさらに好ましい。また、得られる熱可塑性樹脂の特性を損なわないために、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の質量割合は30質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることがさらに好ましい。質量割合が5質量部未満であると溶融粘度低減効果が小さく、不十分であり、一方、質量割合が30質量部を超えると製造コストが増加するとともに、熱可塑性樹脂の特性が変化する問題がある。
【0083】
他の熱可塑性樹脂と末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を溶融混練する温度は、240℃以上にすることが好ましい。溶融混練温度を240℃以上にすることで、均一に溶融混練することができ、245℃以上がより好ましい。また、溶融混練する温度は280℃以下にすることが好ましい。溶融混練温度を280℃以下とすることで、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の熱分解を抑制することができ、275℃以下がより好ましい。
【0084】
前記他の熱可塑性樹脂としては、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂との溶融混練のしやすさの点で、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリブチレンナフタレートからなる群から選ばれる1種以上の樹脂であることが好ましい。また、この熱可塑性樹脂には、本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂のような、前記一般式(A)で表される構造を有する化合物がその末端に結合した樹脂は含まれない。
【0085】
本発明により得られた熱可塑性樹脂組成物は、低溶融粘度であって溶融加工性に優れるため、繊維、フィルム、ボトル、射出成形品など各種製品に公知の方法で溶融加工することができる。例えば、熱可塑性樹脂組成物を射出成形品に加工する場合、溶融粘度低減効果により溶融加工性に優れる点を活かして、厚み0.01〜1.0mmの薄肉部位を有する部品、複雑形状の部品、流動性および外観性が必要とされる大型成形品等に容易に加工することが可能である。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0087】
(1)重量平均分子量、数平均分子量、分散度
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、未変性ポリブチレンテレフタレート樹脂および末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂、熱可塑性樹脂およびポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の値を求めた。これらの平均分子量は、標準ポリメタクリル酸メチルを標準試料として換算して求めた相対的な値である。分散度は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比で表される値(Mw/Mn)である。溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)を用い、濃度が1mg/mLになるように試料を溶解した溶液を調製した。検出器にWATERS社示差屈折計WATERS410、ポンプにMODEL510高速液体クロマトグラフィー、カラムにShodex GPC HFIP−806M(2本)とShodex GPC HFIP−LGを用いた。移動相としてヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)を用い、流速を1.0mL/minとし、前記試料溶液を0.1mL注入して分析した。
【0088】
(2)溶融粘度μ
レオメータ(AntonPaar社製、MCR501)を用い、110℃熱風乾燥器中で12時間以上乾燥した試料0.5gを、窒素雰囲気下、250℃で5分間溶融した後、振動モード、周波数3.0Hz、振り角20%にて、溶融粘度μ(Pa・s)を測定した。
【0089】
(3)ポリマー末端への化合物(A)の導入量(H−NMR測定)
末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を、日本電子社製FT−NMR JNM−AL400を用いて、積算回数256回にて、H−NMR測定した。測定溶媒として重水素化HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)を用いて、試料濃度50mg/mLの溶液を使用した。化合物(A)のRおよびR部分に由来のピークと、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の主骨格であるポリブチレンテレフタレート成分由来のピークの積分強度を算出し、それぞれの構造単位中の水素原子数で除することで組成比を決定し、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂への化合物(A)の導入量(mol/ton)を算出した。
【0090】
(4)ポリマー末端への化合物(A)の導入率
前記(1)により求めた数平均分子量の逆数を2000000倍して算出した全末端基量をx(mol/ton)、前記(3)により求めたポリマー末端への化合物(A)の導入量をy(mol/ton)とし、y×100/x(%)を算出した。
【0091】
(5)熱特性
パーキンエルマー社製示差走査熱量計(DSC7)を用いて、熱特性を測定した。試料5mgを窒素雰囲気下中、30℃から速度20℃/minで250℃まで昇温した後、250℃で5分間保持し、250℃から速度20℃/minで30℃まで降温したときの発熱ピークのピークトップ温度を降温結晶化温度Tc、発熱ピークの面積を降温結晶化熱量ΔHcとした。引き続き、30℃から速度20℃/minで250℃まで昇温したときの吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tm、吸熱ピークのピーク面積を結晶融解熱量ΔHmとした。
【0092】
(6)250℃重量減少率(溶融滞留安定性)
パーキンエルマー社製熱重量測定装置(TGA)を用い、窒素気流下中、昇温速度200℃/分で30℃から250℃まで昇温し、250℃で1時間保持した際の重量減少率を測定した。重量減少率が小さいものほど熱安定性に優れると言える。
【0093】
(7)酸価
(a)ポリブチレンテレフタレート樹脂をo−クレゾール/クロロホルム(2/1vol)混合溶液に溶解させた溶液を、1%ブロモフェノールブルーを指示薬として、0.05mol/Lエタノール性水酸化カリウムで滴定し、下記式によりカルボキシル末端基濃度を算出した。なお、滴定の終点は、青色(色調D55−80(2007年Dpockettype日本塗料工業会)とした。
カルボキシル末端基濃度[eq/g]=((a)成分を溶解させたo−クレゾール/クロロホルム(2/1vol)混合溶液の滴定に要した0.05mol/Lエタノール性水酸化カリウムの量[ml] − o−クレゾール/クロロホルム(2/1vol)混合溶液の滴定に要した0.05mol/Lエタノール性水酸化カリウムの量[ml])×0.05mol/Lエタノール性水酸化カリウムの濃度[mol/ml]×1/滴定に用いた(a)成分の採取量[g]。
【0094】
(8)耐加水分解性
110℃熱風乾燥器中で12時間以上乾燥した試料を、250℃でプレスし、厚さ1mmのシートを得た。エスペック社製高度加速寿命試験装置により、シート50mgを、121℃、100%RH、24時間の高湿度条件下で処理し、処理前後の試料の重量平均分子量を前記(1)の方法で測定した。処理前の重量平均分子量に対する、処理後の重量平均分子量保持率が、70%以上である場合をA、60%以上70%未満である場合をB、60%未満である場合をCと判定した。
【0095】
(9)耐ブリードアウト性
上記のようにして熱プレスにより作成したフィルムを、150℃のギヤオーブン中に6時間投入し、目視、および手触りにて、フィルム表面の状態を、下記基準にて判定した。表面の状態に変化はない場合をA、わずかに表面に液状物または粉状物が見られる、またはわずかにべとつきまたは粉っぽさを感じる場合をB、明らかに表面に液状物または粉状物が見られる、または手で触ると明らかにべとつき、または、粉っぽさを感じる場合をCとした。
【0096】
(10)引張強度
日精樹脂工業製射出成形機NEX1000を用いて、成形温度250℃、金型温度80℃の各温度条件、射出時間と保圧時間を合わせて10秒、冷却時間10秒の成形サイクル条件でポリブチレンテレフタレート樹脂を成形してISO3167(A型)ダンベル試験片を得た。得られたダンベル試験片について、島津製作所製オートグラフAG−20−kNXを用いて引張降伏強度を測定した。測定は5回行い、その平均値を引張降伏強度とした。この引張強度が大きいほど、優れた機械強度を有することを示す。
【0097】
(実施例1)
1,4−ブタンジオール(BDO)100gを100℃に加熱後、テトラ−n−ブトキシチタネート(TBT)を11.2g混合して触媒溶液を得た。
【0098】
ジカルボン酸としてテレフタル酸(TPA)780g、ジオールとしてBDO760g、表1記載の(ポリ)オキシアルキレン構造を有する前記化合物(A)89.0g(生成する末端変性ポリブチレンテレフタレート100質量部に対して7.4質量部)、エステル化反応触媒として上記方法により得られた触媒溶液5.3mLを、精留塔の付いた反応器に仕込んだ。このとき、BDOとTPAのモル比(BDO/TPA)は1.8、生成する末端変性ポリブチレンテレフタレート100gに対するTBTの添加量は1.3×10−4モル(末端変性ポリブチレンテレフタレート100質量部に対して0.045質量部)であった。温度160℃、圧力93kPaの減圧下にてエステル化反応を開始した後、徐々に昇温し、最終的に温度225℃の条件下でエステル化反応を285分間行った。得られた反応物に重縮合反応触媒として、TBTの添加量が生成する末端変性ポリブチレンテレフタレート100gに対して1.5×10−4モル(末端変性ポリブチレンテレフタレート100質量部に対して0.05質量部)となるように、上記方法により得られた触媒溶液5.9mLを添加し、温度245℃、圧力100Paの条件で重縮合反応を230分間行った。反応器の攪拌トルクが所定の値に到達した時点で、反応器を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させた。得られたポリマーを、反応器からストランド状に吐出して、冷却後、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。
【0099】
得られた末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の特性を表1に示す。なお、末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を溶解したヘキサフルオロイソプロパノール溶液を、その溶液の10倍量のメタノールを撹拌しているところに、徐々に添加し、再沈殿させることにより、未反応の化合物(A)を取り除いた。沈殿物を回収し、真空乾燥器で室温、3時間以上乾燥させた。再沈殿精製後のポリマーのNMRスペクトルから、ポリマー末端に導入された化合物(A)を定量した。
【0100】
(実施例2〜12および比較例1〜8)
用いる化合物の種類、製造条件を表1、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行った。化合物(A)の添加量は、生成する末端変性ポリブチレンテレフタレート100質量部に対する添加量である。
【0101】
(比較例9)
テレフタル酸、および1,4−ブタンジオールの合計量100質量部に対し、トリメチロールプロパンを0.1質量部添加し、用いる化合物の種類を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0102】
(比較例10)
テレフタル酸、および1,4−ブタンジオールの合計量100質量部に対し、トリメチル1,3,5−ベンゼントリカルボキシレートを1質量部添加し、用いる化合物の種類を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0103】
表1および2に記載の通り、実施例1〜12の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、比較例1〜8のポリブチレンテレフタレート樹脂に比べて、溶融粘度が低く、溶融滞留安定性に優れ、かつ、高融点であった。
【0104】
比較例9および10のポリブチレンテレフタレート樹脂では、分岐構造形成により融点、溶融滞留安定性が低下した。また、溶融粘度の低減効果が小さかった。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
(実施例13〜14および比較例11〜14)
Mw=21,000の未変性ポリブチレンテレフタレート樹脂、表3に示すとおりの各実施例および比較例で得られた末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を、プリブレンドした。その後、シリンダー温度:250℃、スクリュー回転数:200rpmに設定した二軸押出機(日本製鋼所製TEX30α−45)へ供給し、溶融混練した。押出機から吐出されたガットをペレタイズすることによりポリマーペレットを得た。得られたポリマーペレットを用いた射出成形品の引張強度を表3に示す。
【0108】
実施例13および14と比較例11〜14の比較により、本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を溶融混練したポリエステル樹脂組成物は、溶融粘度が十分低減され、かつ機械強度に優れることがわかる。
【0109】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、低溶融粘度に起因して溶融加工性に優れるため、繊維、フィルム、ボトル、射出成形品など各種製品に公知の方法で溶融加工することができる。これらの製品は、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、自動車用部品、電気・電子部品またはその他の用途として有用である。
【要約】
重量平均分子量Mwが10,000〜100,000、融点が210℃〜235℃、250℃における溶融粘度μが10Pa・s以下であって、下記式(A)で表される(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物が末端に90〜300mol/ton結合した末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂;ここで、重量平均分子量Mwは、ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005Nトリフルオロ酢酸ナトリウム添加)を移動相とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で求めた、標準ポリメタクリル酸メチルの分子量に対する相対的な重量平均分子量を示す;
【化1】
上記式(A)において、Rは炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基および炭素原子数7〜20のアラルキル基から選ばれる基であり、Rはヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基およびチオール基から選ばれる基であり、mは1〜3の整数であり、nは1〜29の整数であり、Xは水素原子および/またはメチル基であり、Yは水素原子および/またはメチル基であり、RおよびRを除いた部分の炭素合計数が2〜58である。本発明は、溶融粘度が低い末端変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を提供する。