特許第6160790号(P6160790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士電機株式会社の特許一覧

特許6160790検出装置、パワーコンディショナ、検出方法、および検出プログラム
<>
  • 特許6160790-検出装置、パワーコンディショナ、検出方法、および検出プログラム 図000002
  • 特許6160790-検出装置、パワーコンディショナ、検出方法、および検出プログラム 図000003
  • 特許6160790-検出装置、パワーコンディショナ、検出方法、および検出プログラム 図000004
  • 特許6160790-検出装置、パワーコンディショナ、検出方法、および検出プログラム 図000005
  • 特許6160790-検出装置、パワーコンディショナ、検出方法、および検出プログラム 図000006
  • 特許6160790-検出装置、パワーコンディショナ、検出方法、および検出プログラム 図000007
  • 特許6160790-検出装置、パワーコンディショナ、検出方法、および検出プログラム 図000008
  • 特許6160790-検出装置、パワーコンディショナ、検出方法、および検出プログラム 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6160790
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】検出装置、パワーコンディショナ、検出方法、および検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   H02J3/38 180
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-46246(P2017-46246)
(22)【出願日】2017年3月10日
【審査請求日】2017年3月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】長倉 孝行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀之
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−131441(JP,A)
【文献】 特開2016−082789(JP,A)
【文献】 特開2017−051072(JP,A)
【文献】 特開2017−051063(JP,A)
【文献】 特開2007−215392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
H02M 1/00−1/44
7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される電力の周波数に応じた周波数パラメータを算出する周波数パラメータ算出部と、
第1期間における前記周波数パラメータ、および前記第1期間よりも過去の第2期間における前記周波数パラメータに基づいて、周波数偏差に応じた偏差パラメータを算出する偏差パラメータ算出部と、
前記偏差パラメータに基づいて、前記電源が単独運転しているか否かを検出する単独運転検出部と、
前記第1期間および前記第2期間の間の時間差を変更する時間差変更部と
を備える検出装置。
【請求項2】
前記電源から供給される電力にフリッカが発生しているか否かを検出するフリッカ検出部を更に備え、
前記時間差変更部は、フリッカが検出されたことに応じて、前記第1期間および前記第2期間の間の時間差を変更する
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
フリッカが検出されたことに応じて前記第1期間および前記第2期間の間の時間差を第1時間差から第2時間差に変更した場合において、前記時間差変更部は、フリッカが更に検出されたことに応じて、前記第1期間および前記第2期間の間の時間差を、前記第1時間差および前記第2時間差と異なる第3時間差に変更する請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記時間差変更部は、フリッカが検出されなくなるまで、前記第1期間および前記第2期間の間の時間差を、予め定められた複数の時間差の中から予め定められた順番で変更していく請求項2または3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記フリッカ検出部は、フリッカの周期に応じたフリッカ周期パラメータを算出し、
前記時間差変更部は、前記第1期間および前記第2期間の間の時間差を、前記フリッカ周期パラメータに基づく値に変更する
請求項2または3に記載の検出装置。
【請求項6】
前記第2期間の長さを変更する期間変更部を更に備える請求項2から5のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記期間変更部は、フリッカが検出されたことに応じて、前記第2期間の長さを変更する請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記期間変更部は、前記第2期間をより長くする場合において、前記第2期間中においてサンプルした前記周波数パラメータを間引いて前記第2期間における前記周波数パラメータを算出する請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記偏差パラメータ算出部は、前記第1期間および前記第2期間の間の時間差を予め定められた複数の時間差のそれぞれとした場合に対応する前記偏差パラメータを算出し、
前記時間差変更部は、前記複数の時間差に対応する複数の前記偏差パラメータのうち変動量がより小さいものをより優先して選択する
請求項1からのいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記偏差パラメータに応じた無効電力を電源経路に注入する無効電力注入部を更に備える請求項1から9のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項11】
電力業者の装置との間で通信する通信部を更に備え、
前記時間差変更部は、前記第1期間および前記第2期間の間の時間差を、前記電力業者の装置から受信した指示によって指定された時間差に変更する請求項1から10のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項12】
前記偏差パラメータ算出部は、前記第2期間中の複数周期の前記周波数パラメータをローパスフィルタリングした値に基づいて、前記偏差パラメータを算出する請求項1から11のいずれか一項に記載の検出装置。
【請求項13】
分散電源からの電力を系統電源に応じた交流に変換する電力変換部と、
請求項1から12のいずれか一項に記載の検出装置と
を備えるパワーコンディショナ。
【請求項14】
検出装置が、電源から供給される電力の周波数に応じた周波数パラメータを算出し、
前記検出装置が、第1期間における前記周波数パラメータ、および前記第1期間よりも過去の第2期間における前記周波数パラメータに基づいて、周波数偏差に応じた偏差パラメータを算出し、
前記検出装置が、前記偏差パラメータに基づいて、前記電源が単独運転しているか否かを検出し、
前記検出装置が、前記第1期間および前記第2期間の間の時間差を変更する
検出方法。
【請求項15】
コンピュータにより実行され、コンピュータを請求項1から12のいずれか一項に記載の検出装置として機能させるための検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、パワーコンディショナ、検出方法、および検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電システム等の分散電源を系統電源に連係させる系統連系システムにおいて、系統電源の停電により分散電源が単独運転状態となったことを検出する単独運転検出システムが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1 特開2016−82789号公報
特許文献2 特開2016−131441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
分散電源が接続される電力系統の特性は接続箇所によって異なるので、単独運転検出システムは、様々な特性の電力系統と連系して適切に作動することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、検出装置を提供する。検出装置は、電源から供給される電力の周波数に応じた周波数パラメータを算出する周波数パラメータ算出部を備えてもよい。検出装置は、第1期間における周波数パラメータ、および第1期間よりも過去の第2期間における周波数パラメータに基づいて、周波数偏差に応じた偏差パラメータを算出する偏差パラメータ算出部を備えてもよい。検出装置は、偏差パラメータに基づいて、電源が単独運転しているか否かを検出する単独運転検出部を備えてもよい。検出装置は、第1期間および第2期間の間の時間差を変更する時間差変更部を備えてもよい。
【0005】
検出装置は、電源から供給される電力にフリッカが発生しているか否かを検出するフリッカ検出部を備えてもよい。時間差変更部は、フリッカが検出されたことに応じて、第1期間および第2期間の間の時間差を変更してもよい。
【0006】
フリッカが検出されたことに応じて第1期間および第2期間の間の時間差を第1時間差から第2時間差に変更した場合において、時間差変更部は、フリッカが更に検出されたことに応じて、第1期間および第2期間の間の時間差を、第1時間差および第2時間差と異なる第3時間差に変更してもよい。
【0007】
時間差変更部は、フリッカが検出されなくなるまで、第1期間および第2期間の間の時間差を、予め定められた複数の時間差の中から予め定められた順番で変更していってもよい。
【0008】
フリッカ検出部は、フリッカの周期に応じたフリッカ周期パラメータを算出してもよい。時間差変更部は、第1期間および第2期間の間の時間差を、フリッカ周期パラメータに基づく値に変更してもよい。
【0009】
検出装置は、第2期間の長さを変更する期間変更部を更に備えてもよい。
【0010】
期間変更部は、フリッカが検出されたことに応じて、第2期間の長さを変更してもよい。
【0011】
期間変更部は、第2期間をより長くする場合において、第2期間中においてサンプルした周波数パラメータを間引いて第2期間における周波数パラメータを算出してもよい。
【0012】
偏差パラメータ算出部は、第1期間および第2期間の間の時間差を予め定められた複数の時間差のそれぞれとした場合に対応する偏差パラメータを算出してもよい。時間差変更部は、複数の時間差に対応する複数の偏差パラメータのうち変動量がより小さいものをより優先して選択してもよい。
【0013】
偏差パラメータに応じた無効電力を電源経路に注入する無効電力注入部を更に備えてもよい。
【0014】
電力業者の装置との間で通信する通信部を更に備えてもよい。時間差変更部は、第1期間および第2期間の間の時間差を、電力業者の装置から受信した指示によって指定された時間差に変更してもよい。
【0015】
偏差パラメータ算出部は、第2期間中の複数周期の周波数パラメータをローパスフィルタリングした値に基づいて、偏差パラメータを算出してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様においては、分散電源からの電力を系統電源に応じた交流に変換する電力変換部と、上記の検出装置とを備えるパワーコンディショナを提供する。
【0017】
本発明の第3の態様においては、検出方法を提供する。検出方法は、電源から供給される電力の周波数に応じた周波数パラメータを算出することを含んでもよい。検出方法は、第1期間における周波数パラメータ、および第1期間よりも過去の第2期間における周波数パラメータに基づいて、周波数偏差に応じた偏差パラメータを算出することを含んでもよい。検出方法は、偏差パラメータに基づいて、電源が単独運転しているか否かを検出することを含んでよい。検出方法は、第1期間および第2期間の間の時間差を変更することを含んでもよい。
【0018】
本発明の第4の態様においては、検出装置により実行される検出プログラムを提供する。検出プログラムは、検出装置を、電源から供給される電力の周波数に応じた周波数パラメータを算出する周波数パラメータ算出部として機能させてもよい。検出プログラムは、検出装置を、第1期間における周波数パラメータ、および第1期間よりも過去の第2期間における周波数パラメータに基づいて、周波数偏差に応じた偏差パラメータを算出する偏差パラメータ算出部として機能させてもよい。検出プログラムは、検出装置を、偏差パラメータに基づいて、電源が単独運転しているか否かを検出する単独運転検出部として機能させてもよい。検出プログラムは、検出装置を、第1期間および第2期間の間の時間差を変更する時間差変更部として機能させてもよい。
【0019】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る系統連系システム1の構成を示す。
図2】本実施形態に係る偏差パラメータ算出のタイミングの一例を示す。
図3】本実施形態に係る偏差パラメータと注入無効電力量との関係の一例を示す。
図4】系統連系システム1においてフリッカが発生する状況の一例を示す。
図5】本実施形態に係るパワーコンディショナ30の動作フローを示す。
図6】期間変更部94による期間変更の例を示す。
図7】偏差パラメータ算出部70による第2期間における周波数パラメータの算出方法の例を示す。
図8】本実施形態に係るコンピュータ2200の構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0022】
図1は、本実施形態に係る系統連系システム1の構成を示す。系統連系システム1は、電力業者等が提供する電力系統に含まれる系統電源10と、太陽光発電システム、風力発電システム、および燃料電池発電システム等の分散電源20と、系統電源10および分散電源20の間に設けられて分散電源20からの電力を変換して系統電源10に供給するパワーコンディショナ30とを備える。パワーコンディショナ30は、電力系統の事故停電、計画停電、および保守停電等によって系統電源10からの電力供給が遮断されたことにより、系統電源10側が電力系統から切り離されて単独運転状態となったことを検出する。本実施形態に係るパワーコンディショナ30は、一例として、単独運転を検出したことに応じて、分散電源20側と系統電源10側の間を切り離す。これにより、パワーコンディショナ30は、電力系統側での作業・点検の安全性を確保し、及び/又は電力系統側の配電設備を保護することができる。
【0023】
パワーコンディショナ30は、電力変換部40と、連系リレー50と、検出装置60とを備える。
電力変換部40は、インバータ42およびインバータ制御部44を有し、分散電源20からの電力を系統電源10に応じた交流に変換する。インバータ42は、分散電源20からの直流電力または交流電力を、電力系統に適合する交流電力に変換して出力する。インバータ制御部44は、インバータ42が出力する交流電力の電圧、周波数、および位相を電力系統側の電力に合わせるようにインバータ制御部44を制御する。
【0024】
連系リレー50は、電力変換部40および系統電源10側の間に設けられるスイッチである。連系リレー50は、検出装置60からの制御を受けて電力変換部40および系統電源10側の間を接続または遮断する。これにより、連系リレー50は、分散電源20側の電力変換部40を系統電源10側と接続して系統電源10を電力系統と連系させるか否かを切り替える。なお、本実施形態に係るパワーコンディショナ30は、連系リレー50を内蔵している構成としているが、これに代えて連系リレー50がパワーコンディショナ30の外部にある構成を採ってもよい。
【0025】
検出装置60は、系統電源10が単独運転状態となったことを検出して、連系リレー50を遮断状態に切り替える。検出装置60は、マイクロコントローラ等のCPUを含む制御コンピュータであり、検出プログラムを実行することにより以下に示す各部として機能する。これに代えて、検出装置60は、専用回路またはプログラマブル回路によって実現されてもよい。本実施形態に係る検出装置60は、周波数パラメータ算出部65と、偏差パラメータ算出部70と、単独運転検出部75と、無効電力注入部80と、フリッカ検出部85と、通信部90と、時間差変更部92と、期間変更部94とを有する。
【0026】
周波数パラメータ算出部65は、分散電源20から供給される電力、すなわち例えば本実施形態における連系リレー50および系統電源10の間の電源経路に流れる電源電力の周波数に応じた周波数パラメータを算出する。本実施形態において、周波数パラメータ算出部65は、連系リレー50および系統電源10の間の電源系路の電圧を検出して、電圧の変化から周波数パラメータの一例として電源電力の周波数を算出する。これに代えて、周波数パラメータ算出部65は、配線を流れる電流を検出して周波数パラメータを算出してもよい。検出装置60は、周波数パラメータとして周波数を用いるのに代えて周期を用いることができる。周期は周波数の逆数に他ならないから、当業者にとっては、周波数パラメータとして周期を用いる構成もまた本明細書に実質的に記載されているものと理解できる。また、周波数パラメータは、周波数または周期自体ではなく、周波数または周期に応じて変化する値であってもよい。
【0027】
偏差パラメータ算出部70は、ある期間(第1期間)における周波数パラメータ、および第1期間よりも過去の第2期間における周波数パラメータに基づいて、周波数偏差に応じた偏差パラメータを算出する。本実施形態において、偏差パラメータ算出部70は、周波数パラメータ算出部65が出力する周波数パラメータのシーケンスを受け取り、現在期間に対応する予め定められた時間長の第1期間における複数の周波数パラメータの代表値と、過去期間に対応する予め定められた時間長の第2期間における複数の周波数パラメータの代表値とを算出する。第1期間および第2期間の代表値は、一例として第1期間および第2期間の周波数パラメータの移動平均値であってよい。
【0028】
本実施形態に係る偏差パラメータ算出部70は、第1期間および第2期間における周波数パラメータの代表値の偏差、すなわち例えば第1期間における周波数パラメータの代表値から第2期間における周波数パラメータの代表値を減じた、周波数偏差に応じた偏差パラメータを算出する。これに代えて、偏差パラメータは、周期偏差、またはこれらに応じて変化する値等であってもよい。
【0029】
単独運転検出部75は、偏差パラメータ算出部70が出力する偏差パラメータに基づいて、電源が単独運転しているか否かを検出する。一例として、単独運転検出部75は、偏差パラメータに基準以上の変化が検出された場合に、系統電源10からの電力供給が遮断されて分散電源20が単独で電源電力を供給する状態となったと判断する。
【0030】
無効電力注入部80は、単独運転検出部75が出力する偏差パラメータに応じた無効電力を電源経路に注入する。本実施形態に係る検出装置60は、一例として能動的単独運転検出方式を採り、電力変換部40および系統電源10の間の電源経路に対して無効電力を注入し、単独運転の場合には無効電力注入の影響により電源電力の周波数が大きく変動することを利用して単独運転を検出する。これに代えて、検出装置60は、無効電力を注入せずに分散電源20が連係状態から単独運転状態に移行したときに生じる周波数パラメータの基準範囲以上の変化を検出する受動的単独運転検出方式を採ってもよい。受動的単独運転検出方式を採る場合には、検出装置60は、無効電力注入部80を有しなくてもよい。
【0031】
フリッカ検出部85は、連系リレー50および系統電源10の間の配線に流れる電源電力にフリッカが発生しているか否かを検出する。フリッカは、無効電力注入部80による無効電力の注入によって電源経路の電圧が励振され、電源経路に周期的に予め定義されたフリッカ基準以上の電圧変動が生じる現象である。なお、ここでいう周期的な電圧変動は、交流電圧における交流周波数での瞬時電圧の変化ではなく、主に交流周波数よりも長い周期(一例として数Hz)における最大電圧(あるいは実効電圧または平均電圧)の変動である。
【0032】
通信部90は、専用または汎用のネットワークを介して電力業者の装置との間で通信し、電力業者から検出装置60に対する各種の指令を受け取る。
【0033】
時間差変更部92は、偏差パラメータ算出部70が偏差パラメータを算出する際に用いる第1期間および第2期間の間の時間差を変更する。本実施形態において、第1期間および第2期間の間の時間差は、第2期間の終了タイミングから第1期間の終了タイミングまでの時間差として定義する。これに代えて、第1期間および第2期間の間の時間差は、第2期間の終了タイミングから、第1期間の開始タイミングまでの時間差としてもよい。
【0034】
期間変更部94は、偏差パラメータ算出部70が偏差パラメータを算出する際に用いる第2期間を変更する。期間変更部94は、一例として第2期間の長さ、第2期間中の周波数パラメータのサンプルを間引くか否か、及び/又は第2期間における周波数パラメータの算出方式を変更する。時間差変更部92および期間変更部94は、電力業者からの指令に応じてこれらの変更を行ってもよく、フリッカが検出されたことに応じてこれらの変更を行ってもよく、他の条件に基づいてこれらの変更を行ってもよい。
【0035】
以上に示したパワーコンディショナ30によれば、電力業者からの指令、及び/又はフリッカが検出されたこと等に応じて、偏差パラメータ算出部70が偏差パラメータを算出する算出方法を変更することができる。これにより、パワーコンディショナ30は、様々な特性の電力系統に対して分散電源20を連係させて適切に単独運転を検出することが可能となる。
【0036】
図2は、本実施形態に係る偏差パラメータ算出のタイミングの一例を示す。周波数パラメータ算出部65は、予め定められたサイクル毎(本図の例においては5ms)に周波数パラメータ算出部65が検出した周波数パラメータの値を含む周波数パラメータシーケンス200を出力する。偏差パラメータ算出部70は、時刻tに対応して第1期間210a(一例として8サイクル=40ms)における周波数パラメータの代表値(一例として移動平均値)と、第1期間210aよりも時間差205だけ過去の期間である第2期間220a(一例として16サイクル=80ms)における周波数パラメータの代表値(一例として移動平均値)とを算出する。そして、偏差パラメータ算出部70は、第1期間210aにおける周波数パラメータの代表値および第2期間220aにおける周波数パラメータの代表値に基づいて、時刻tにおける偏差パラメータ232aを算出する。本実施形態においては、偏差パラメータ算出部70は、第1期間210aにおける周波数の代表値から第2期間220aにおける周波数の代表値を減じて得られる差分を偏差パラメータ232aとして算出する。これに代えて、偏差パラメータ算出部70は、第2期間220aにおける周波数パラメータに対する第1期間210aにおける周波数パラメータの比を算出する等により、異なる種類の偏差パラメータを算出してもよい。
【0037】
同様にして、偏差パラメータ算出部70は、次の時刻t+1に対応する第1期間210bおよび第2期間220bにおける周波数の代表値を算出し、これらに基づいて時刻t+1における偏差パラメータ232bを算出する。また、偏差パラメータ算出部70は、更に次の時刻t+2に対応する第1期間210cおよび第2期間220cにおける周波数の代表値を算出し、これらに基づいて時刻t+2における偏差パラメータ232cを算出する。このようにして、偏差パラメータ算出部70は、各サイクルに対応する偏差パラメータ232a〜cを含む偏差パラメータシーケンス230を出力することができる。
【0038】
図3は、本実施形態に係る偏差パラメータと注入無効電力量との関係の一例を示す。本図の横軸は偏差パラメータ算出部70から受け取る偏差パラメータ(一例として周波数偏差)、縦軸は電源経路に注入すべき無効電力を示す。無効電力注入部80は、偏差パラメータ算出部70から受け取った偏差パラメータに応じて注入すべき無効電力を図3のグラフから算出し、算出した無効電力を電源経路に注入するように電力変換部40を制御する。これにより、無効電力注入部80は、電源経路に生じた偏差を助長する方向に無効電力を注入させて、単独運転状態の検出をしやすくする。
【0039】
偏差パラメータが−a〜+aの範囲においては、無効電力注入部80は、偏差パラメータに応じた無効電流の注入量を比較的小さく制御する。これにより、無効電力注入部80は、分散電源20が電力系統と連系されており電力系統との間の偏差が小さい場合に、電源経路に大きな無効電力を注入して電力系統を乱すことを防止する。偏差パラメータが−b〜−aおよび+a〜+bの範囲においては、無効電力注入部80は、偏差パラメータに応じた無効電力の注入量を比較的大きく制御する。これにより、無効電力注入部80は、分散電源20が電力系統から切り離されることにより偏差パラメータの大きさがa以上となったことに応じて比較的大きな無効電力を電源経路に注入して、単独運転状態を検出しやくする。偏差パラメータが−b以下または+b以上の範囲においては、無効電力注入部80は、無効電力の注入量を更に増加させず最小値または最大値のまま維持する。これにより、無効電力注入部80は、電源経路に過大な無効電力を注入することを防ぐ。
【0040】
図4は、系統連系システム1においてフリッカが発生する状況の一例を示す。本図においては横軸に時間の経過を示し、上側から下側に向かって周波数パラメータ算出部65が算出する周波数パラメータと、偏差パラメータ算出部70が算出する、第1期間における周波数パラメータの代表値である第1期間周波数パラメータと、偏差パラメータ算出部70が算出する、第2期間の周波数パラメータの代表値である第2期間周波数パラメータと、偏差パラメータ算出部70が出力する偏差パラメータとを示す。
【0041】
本図は、電源経路の周波数は変動するものの、分散電源20は電力系統と連系しており単独運転状態ではない状況を示す。時刻tにおいて系統電源10の変動等によって電源電力の周波数が一時増加すると、周波数パラメータ算出部65は、基準値より大きい周波数パラメータ400aを検出する。偏差パラメータ算出部70は、周波数パラメータ400aが増加した影響を受けた第1期間周波数パラメータ410aを算出する。本図においては、図2における時間差205は200msに固定されているので、時刻tから200ms後に第2期間周波数パラメータ420bも増加するが、第1期間周波数パラメータ410aが増加する期間に対応する第2期間周波数パラメータ420aはまだ変化しない。この結果、偏差パラメータ算出部70は、増加した第1期間周波数パラメータ410aおよび変化しない第2期間周波数パラメータ420aに基づいて、正の偏差パラメータ430aを算出する。
【0042】
時刻tの前に第2期間周波数パラメータ420bが増加すると、偏差パラメータ算出部70は、負の偏差パラメータ430bを算出する。無効電力注入部80は、負の偏差パラメータ430bに応じて電源経路に周波数パラメータの減少を助長する無効電力を注入する。分散電源20が電力系統の末端に接続されている場合等においては電力系統が無効電力注入の影響を比較的受けやすく、周波数パラメータ400bのように電源電力の周波数が減少し得る。
【0043】
周波数パラメータ400bの減少に伴って、時刻tから200ms後に第2期間周波数パラメータ420cも減少する。この結果、偏差パラメータ算出部70は、基準値近くの第1期間周波数パラメータ410cおよび減少した第2期間周波数パラメータ420cに基づいて、正の偏差パラメータ430cを算出する。無効電力注入部80は、時刻tにおいて、正の偏差パラメータ430cに応じて電源経路に周波数パラメータの増加を助長する無効電力を注入する。これに伴って、電源電力の周波数パラメータが基準値より大きな値に変化し得、周波数パラメータ算出部65は、周波数パラメータ400cを基準値より大きい値として検出する。
【0044】
本図の例においては、時刻t2において電源電力の周波数を低下させる無効電力を注入し、時刻t3において電源電力の周波数を上昇させる無効電力を注入し、以後同様にして一定周期で交互に異なる向きの無効電力が電源経路に注入される。無効電力注入のタイミングと、電源経路の電圧変動のタイミングが合うと、電源経路の電圧が励振されて、周期的な電圧変動が助長されてフリッカが発生する。
【0045】
なお、以上においては、フリッカが発生する状況を簡単な例を用いて定性的に簡潔に説明した。しかし、実際には系統電源10およびパワーコンディショナ30を接続する電力系統部分の特性、並びにパワーコンディショナ30の単独運転検出方法等によってどのような場合にどのような周期・長さのフリッカが発生するかが異なるので、予め予想することが難しい。そこで、本実施形態に係るパワーコンディショナ30では、電力系統に接続された状態で偏差パラメータ算出部70における偏差パラメータの算出方法を変更可能とし、接続先の電力系統部分の環境に適応できるようにする。
【0046】
図5は、本実施形態に係るパワーコンディショナ30の動作フローを示す。
ステップS500において、フリッカ検出部85は、電源電力にフリッカが発生しているか否かを検出する。本実施形態に係るフリッカ検出部85は、例えば電源経路の電圧(最大電圧、実行電圧、または平均電圧)を検出して、電源経路における周期的な電圧変動(すなわちフリッカによる電圧変動)を観測することにより、フリッカの周期に応じたフリッカ周期パラメータを算出する。ここでフリッカ周期パラメータは、フリッカの周期または周波数であってよく、これに代えてフリッカの周期または周波数に応じて変化する値であってもよい。なお、フリッカ検出部85は、フリッカの検出方法として、特許文献2の方法等の公知の各種の方法を用いてよい。
【0047】
S510において、通信部90は、電力業者から検出装置60に対する指令があればその指令を受信する。
【0048】
S520において、時間差変更部92および期間変更部94は、偏差パラメータの算出方法を変更する変更条件が満たされたか否かを判定する。本実施形態に係る時間差変更部92および期間変更部94は、フリッカの発生が検出された場合、または電力業者から偏差パラメータ算出部70における偏差パラメータの算出方法を変更する指令を受けた場合に、変更条件が満たされたと判定する。変更条件が満たされた場合、時間差変更部92および期間変更部94は、処理をS530へ進める。変更条件が満たされない場合、時間差変更部92および期間変更部94は、処理をS540へ進める。
【0049】
S530において、時間差変更部92は、偏差パラメータ算出部70における偏差パラメータの算出方法を変更する。時間差変更部92は、フリッカが検出されたことに応じて、以下に例示するいずれかの方法を用いて第1期間および第2期間の間の時間差を変更する。
【0050】
(1)複数の時間差の中から試行錯誤により適切な時間差を選択する。
時間差変更部92は、第1期間および第2期間の間の時間差を第1時間差に設定している場合において、フリッカが検出されたことに応じて第1期間および第2期間の間の時間差を第1時間差から第2時間差に変更する。
3種類の時間差を選択可能な構成を採る場合、時間差変更部92は、第1期間および第2期間の間の時間差を第1時間差から第2時間差に変更した場合においてフリッカが更に検出されたことに応じて、第1期間および第2期間の間の時間差を、第1時間差および第2時間差と異なる第3時間差に変更する。
更に多くの時間差を選択可能な構成を採る場合、時間差変更部92は、フリッカが検出されなくなるまで、第1期間および第2期間の間の時間差を変更していくようにしてもよい。
【0051】
これにより、時間差変更部92は、第1期間および第2期間の間の時間差を変えることにより、図4における周波数パラメータ400aの増加から第2期間周波数パラメータ420bの増加までの期間、および周波数パラメータ400bの減少から第2期間周波数パラメータ420cの減少までの期間等を変えることができ、これらに応じた偏差パラメータ430bの減少および偏差パラメータ430cの増加に伴う無効電力注入のタイミングを変えることができる。更に、時間差変更部92は、フリッカが検出されたことに応じて第1期間および第2期間の間の時間差を変えていくことで、最終的にはフリッカが発生しない適切なタイミングで無効電力を注入できるように第1期間および第2期間の間の時間差を調整することができる。
【0052】
以上において、時間差変更部92は、フリッカが検出されなくなるまで、第1期間および第2期間の間の時間差を、予め定められた複数の時間差の中から予め定められた順番で変更していくようにしてもよい。電力系統に接続される複数のパワーコンディショナ30において、設定可能な複数の時間差と、これらの時間差が選択される順番を予め統一しておくことで、電力系統に対して近傍で接続される複数のパワーコンディショナ30が最終的に同じ時間差を設定するようにすることができる。これにより、各パワーコンディショナ30が独立して異なる時間差を設定する結果、互いに異なる励振周期を持つようになり外乱を与え合うような状況に至るのを防ぐことができる。
【0053】
(2)フリッカの周期に応じて適切な時間差を選択する。
時間差変更部92は、第1期間および第2期間の間の時間差を、S500において算出されたフリッカ周期パラメータに基づく値に変更する。具体的には、時間差変更部92は、第1期間および第2期間の間の時間差として選択可能な複数の時間差の中から、フリッカの周期とより同期しにくい時間差を優先的に選択する。例えば、図4においては、周波数パラメータ400aが増加してから設定された時間差の後に第2期間周波数パラメータ420bが増加し、第2期間周波数パラメータ420bの増加から無効電力注入部80による遅延の後に電源経路に無効電力が注入される。したがって、検出装置60は、検出周波数の変化から第1期間および第2期間の間の時間差に無効電力注入までの遅延等を含む検出装置60に固有の遅延時間を加えた期間の後に、電源経路に無効電力を注入する。したがって、時間差変更部92は、この時間差および遅延時間の合計の時間長が、フリッカ波形の山と谷の間の時間長と一致しないように、より好ましくはこれらの時間長の差がより大きくなるように第1期間および第2期間の間の時間差を選択する。
【0054】
これにより、時間差変更部92は、第1期間および第2期間の間の時間差をフリッカの周期に応じて適切に選択することができ、(1)のように試行錯誤により時間差を変更していく場合と比較してより早くフリッカを抑制することが可能となる。
【0055】
なお、上記(1)および(2)のいずれにおいても、第1期間および第2期間の間の複数の時間差は、例えば200ms、500ms、および1s等の予め定められた時間差を用いてもよく、これに代えて予め定められた時間単位で連続する時間差(例えば200ms、250ms、300ms、…、1000ms)を用いてもよい。
【0056】
また、時間差変更部92は、電力業者の装置から受信した指示によって第1期間および第2期間の間の時間差の指定を受けた場合には、第1期間および第2期間の間の時間差を、指定された時間差に変更する。
【0057】
S535において、期間変更部94は、第2期間を変更することにより偏差パラメータ算出部70における偏差パラメータの算出方法を変更する。一例として、期間変更部94は、フリッカが検出されたことに応じて、第2期間の長さを変更する。例えば、期間変更部94は、フリッカが検出されていない場合には図2に示したように第2期間の長さを80msとし、フリッカが検出されたことに応じて第2期間の長さを320ms等より長くしてよい。
【0058】
期間変更部94は、第2期間の長さを長くすることで、より長い期間における検出周波数に基づいて第2期間周波数を算出させるようにすることができる。これにより期間変更部94は、周波数パラメータの短い変動に伴う図4における第2期間周波数パラメータ420bの増加および第2期間周波数パラメータ420cの減少のような第2期間周波数パラメータの変動を抑えることができる。この結果、期間変更部94は、第2期間周波数パラメータの変動に伴う無効電力の注入を低減することができ、フリッカの発生を低減することができる。
【0059】
なお、S530における時間差の変更と、S535における第2期間の変更とは、予め定めた順番で択一的に行ってもよい。例えば、フリッカが検出されたことに応じて、まず期間変更部94が第2期間の長さを変更し、それでもフリッカが抑止できず再度S520においてフリッカが検出された場合には時間差変更部92が第1期間および第2期間の間の時間差を変更するようにしてもよい。逆に、フリッカが検出されたことに応じて、まず時間差変更部92が第1期間および第2期間の間の時間差を1または複数回変更し、それでもフリッカが抑止できずS520においてフリッカが検出された場合には期間変更部94が第2期間の長さを変更するようにしてもよい。
【0060】
S540において、周波数パラメータ算出部65は、電源電力の周波数に応じた周波数パラメータを算出する。
【0061】
S550において、偏差パラメータ算出部70は、第1期間における周波数パラメータおよび第2期間における周波数パラメータを算出し、これらに基づいて周波数偏差に応じた偏差パラメータを算出する。この際、偏差パラメータ算出部70は、期間変更部94により第2期間の長さが変更された場合には、変更後の長さを用いて第2期間における周波数パラメータを算出する。また、偏差パラメータ算出部70は、時間差変更部92により時間差が変更された場合には、変更後の時間差を用いて偏差パラメータを算出する。
【0062】
S560において、単独運転検出部75は、偏差パラメータに基づいて、分散電源20が単独運転しているか否かを検出する。単独運転検出部75は、単独運転の検出方法として、特許文献1の方法または特許文献2の方法等の公知の各種の方法を用いてよい。
【0063】
S570において、単独運転検出部75は、単独運転を検出しなかったことに応じて処理をS580に進め、単独運転を検出したことに応じて処理をS590に進める。
【0064】
S580において、無効電力注入部80は、S550において算出された偏差パラメータに応じた無効電力を電源経路に注入するように電力変換部40内のインバータ制御部44に指示する。そして、無効電力注入部80は、処理をS500へと進める。
【0065】
S590において、単独運転検出部75は、連系リレー50を遮断して単独運転状態の系統電源10を電力系統から切り離し本図の動作フローを終了する。なお、パワーコンディショナ30は、手動により連系リレー50を接続状態に切り替えられるように構成されてよく、電力系統からの電力供給が再開された場合に手動で連系状態に戻されてよい。これに代えてパワーコンディショナ30は、連系リレー50の遮断中にも連系リレー50と系統電源10の間の電源経路を監視して、電力系統からの電力供給が再開されたことに応じて、連系リレー50を接続状態に切り替えてもよい。
【0066】
図6は、期間変更部94による期間変更の例を示す。期間変更部94は、図5のS530で第2期間を変更する前(すなわち、フリッカが検出される前、及び/又は第2期間の変更指示等を受ける前のデフォルト状態)では、一例として周波数シーケンス600のサイクルの16倍である80msの第2期間620aを使用してよい。期間変更部94は、図5のS530で第2期間を変更する場合に、第2期間620bに示すように、第2期間の長さを第2期間620aよりも長くしてもよい。一例として期間変更部94は、第2期間620bを周波数シーケンス600のサイクルの64倍である320msとし、周波数シーケンス600における第2期間620bに含まれる全ての周波数のサンプル(一例として64個の周波数サンプル)から第2期間620bにおける周波数の代表値を算出してもよい。この際、期間変更部94は、第1期間および第2期間の間の時間差は変えないように、第2期間の開始タイミングを前にずらし、終了タイミングは維持してもよい。
【0067】
期間変更部94は、第2期間をより長くする場合において、第2期間中においてサンプルした周波数パラメータを間引いて第2期間における周波数パラメータを算出するようにしてもよい。期間変更部94は、第2期間620cに示すように、第2期間中においてサンプルされた複数の周波数パラメータから、予め定められた間隔(例えば1つおき)ピッチで間引いて第2期間における周波数パラメータの代表値の算出に使用してよい。一例として、期間変更部94は、第2期間620aを第2期間620bのように長くした場合に、第2期間620bに含まれる周波数パラメータのサンプルを間引いて、代表値の算出に用いる周波数パラメータのサンプルの数の増加を抑え、またはサンプル数を同じに維持してもよい。これにより、期間変更部94は、第2期間の長さを長く変更した場合にも、第2期間における周波数パラメータの代表値を計算するために記憶しておくべき第2期間中の周波数パラメータのサンプル数の増加を抑え、必要な記憶領域が増加するのを抑えることができる。
【0068】
なお、期間変更部94は、第2期間に含まれる周波数パラメータのサンプルのうち、特異値を除いて第2期間における周波数パラメータの代表値を算出するようにしてもよい。例えば、期間変更部94は、第2期間に含まれる周波数パラメータの全サンプルの平均から基準範囲より外となるサンプルを除いてから、第2期間における周波数パラメータの代表値を算出してもよい。また、期間変更部94は、第2期間に含まれる周波数パラメータのうち最大値(または大きい方から予め定められた個数分)および最小値(または小さい方から予め定められた個数分)を除いてから、第2期間における周波数パラメータの代表値を算出してもよい。これにより、期間変更部94は、検出周波数の短期的な変動によって第2期間の周波数パラメータの代表値が大きく変動することを防ぎ、第2期間周波数の変動に伴う無効電力の注入を低減してフリッカの発生を低減することができる。
【0069】
図7は、偏差パラメータ算出部70による第2期間における周波数パラメータの算出方法の例を示す。図4に示したように、偏差パラメータ算出部70は、基準より大きい周波数パラメータ700を検出したことに応じて、周波数パラメータ700が増加した影響を受けた第1期間周波数パラメータ710を算出し、第1期間および第2期間の間に設定された時間差の後に増加した第2期間周波数パラメータ720aを算出する。第2期間における周波数パラメータの代表値を移動平均により算出した場合、第2期間のほぼ全体にわたって周波数パラメータ700の増加の影響を大きく受ける可能性がある。
【0070】
そこで、偏差パラメータ算出部70は、第2期間中の複数周期の周波数パラメータをローパスフィルタリングした値に基づいて、偏差パラメータを算出するようにしてもよい。ローパスフィルタリングを用いることにより、偏差パラメータ算出部70は、移動平均を用いた場合と比較して、周波数パラメータ700の短期的な変動に伴って第2期間周波数パラメータが長時間影響を受けることを抑えることができる。なお、偏差パラメータ算出部70は、第2期間周波数パラメータ720bに示したように、第2期間の開始タイミングから予め定められた範囲の一部期間における周波数パラメータが代表値に与える影響のウェイトを移動平均よりも小さくしたローパスフィルタリングを用いてよい。これにより、周波数パラメータ700は、第2期間周波数パラメータの変動を移動平均よりも早く抑えるようにすることができる。偏差パラメータ算出部70は、ローパスフィルタとして、IIRフィルタまたはFIRフィルタを用いてよい。
【0071】
また、本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0072】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0073】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0074】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0075】
図8は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0076】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0077】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0078】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD−ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD−ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0079】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0080】
プログラムが、DVD−ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0081】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0082】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD−ROMドライブ2226(DVD−ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0083】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0084】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0085】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0086】
例えば、以上に示したパワーコンディショナ30は、上述の様々な構成・機能を具備する。これに代えて、パワーコンディショナ30は、必要に応じて上述の様々な構成・機能のうちの一部を具備しない構成とすることも可能である。
【0087】
例えば、パワーコンディショナ30内の検出装置60は、電力業者からの指令を受信する機能を有しない場合には、通信部90を有しない構成としてもよい。また、検出装置60は、フリッカを検出したことに応じて偏差パラメータの算出方法を変更する機能を有しない場合には、フリッカ検出部85を有しない構成としてもよい。また、検出装置60は、第1期間および第2期間の間の時間差を変更する機能を有しない場合には、時間差変更部92を有しなくてもよい。また、検出装置60は、第2期間を変更する機能を有しない場合には、期間変更部94を有しなくてもよい。
【0088】
また、以上に示した偏差パラメータ算出部70は、第1期間および第2期間の間の時間差時間差変更部92から受け取って、これらに応じて偏差パラメータを算出する構成をとる。これに代えて、偏差パラメータ算出部70は、第1期間および第2期間の間の時間差を予め定められた複数の時間差のそれぞれとした場合に対応する偏差パラメータを並列または並行に算出し、時間差変更部92は、複数の時間差に対応する複数の偏差パラメータのうち変動量がより小さいものをより優先して選択するようにしてもよい。これにより、偏差パラメータ算出部70および時間差変更部92は、処理に伴う演算量が大きくなるが、可能な選択肢の中から適切な設定をより効率よく選択することができる。
【0089】
同様に、偏差パラメータ算出部70は、第2期間を予め定められた複数通りのそれぞれとした場合に対応する偏差パラメータを並列または並行に算出し、時間差変更部92は、複数通りの第2期間に対応する複数の偏差パラメータのうち変動量がより小さいものをより優先して選択するようにしてもよい。
【0090】
また、以上に示した検出装置60は、フリッカの発生及び/又は電力業者からの指示をトリガとして偏差パラメータの算出方法を変更したが、検出装置60は、他の事象をトリガとして偏差パラメータの算出方法を変更してもよい。例えば、検出装置60は、パワーコンディショナ30のユーザまたは設置業者等がマニュアルで偏差パラメータの算出方法を入力したことに応じて、偏差パラメータ算出部70における偏差パラメータの算出方法を変更してもよい。
【0091】
また、検出装置60は、予め定められたインターバル、またはランダムなタイミング等において、第1期間および第2期間の間の時間差、及び/又は第2期間の長さ等の偏差パラメータを動的に切り替えていくようにしてもよい。これにより、検出装置60は、偏差パラメータの算出方法を固定した場合に生じうる励振状態を抑えることが可能となる。
【0092】
また、以上においては第2期間における周波数パラメータの代表値を算出するための各種の算出方法を示したが、第1期間における周波数パラメータの代表値の算出方法も移動平均値に限らず適宜変更してもよい。
【0093】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0094】
1 系統連系システム
10 系統電源
20 分散電源
30 パワーコンディショナ
40 電力変換部
42 インバータ
44 インバータ制御部
50 連系リレー
60 検出装置
65 周波数パラメータ算出部
70 偏差パラメータ算出部
75 単独運転検出部
80 無効電力注入部
85 フリッカ検出部
90 通信部
92 時間差変更部
94 期間変更部
200 周波数パラメータシーケンス
205 時間差
210a〜c 第1期間
220a〜c 第2期間
230 偏差パラメータシーケンス
232a〜c 偏差パラメータ
400a〜c 周波数パラメータ
410a〜c 第1期間周波数パラメータ
420a〜c 第2期間周波数パラメータ
430a〜c 偏差パラメータ
600 周波数シーケンス
620a〜c 第2期間
700 周波数パラメータ
710 第1期間周波数パラメータ
720a〜b 第2期間周波数パラメータ
2200 コンピュータ
2201 DVD−ROM
2210 ホストコントローラ
2212 CPU
2214 RAM
2216 グラフィックコントローラ
2218 ディスプレイデバイス
2220 入/出力コントローラ
2222 通信インタフェース
2224 ハードディスクドライブ
2226 DVD−ROMドライブ
2230 ROM
2240 入/出力チップ
2242 キーボード
【要約】
【課題】様々な特性の電力系統と連系して適切に単独運転を検出する。
【解決手段】電源から供給される電力の周波数に応じた周波数パラメータを算出する周波数パラメータ算出部と、第1期間における周波数パラメータ、および第1期間よりも過去の第2期間における周波数パラメータに基づいて、周波数偏差に応じた偏差パラメータを算出する偏差パラメータ算出部と、偏差パラメータに基づいて、電源が単独運転しているか否かを検出する単独運転検出部と、第1期間および第2期間の間の時間差を変更する時間差変更部とを備える検出装置を提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8