(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
船体の船尾管の後端に取り付けられるプロペラの側方に配置する二枚の舵板と、二枚の前記舵板を駆動軸を介して駆動する駆動手段を備えた二枚舵システムであって、二枚の前記舵板の内側にキャンバーを形成し、二枚の前記舵板を前記駆動手段により独立して駆動可能に構成し、二枚の前記舵板は、非旋回時に前記舵板の前部が前記舵板の上端より下方に位置する前記船体の船尾部の終端よりも後方で前記プロペラよりも前方になるように配置され、かつ前記駆動軸は前記船体に対する前後方向の位置が前記プロペラと略同位置に配置され、旋回時に一方の前記舵板の前記前部が前記船尾部に近づくように前記駆動手段により同方向に同じ舵角で動作するとともに、制動時に前記駆動手段により互いに反対方向に動作することを特徴とする二枚舵システム。
さらに旋回性を必要とする場合に、他方の前記舵板の角度が前記舵角と異なるように前記駆動手段により動作することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二枚舵システム。
前記舵板の上端より下方に位置する前記船尾部を、船体中心線からの幅をほぼ同じにした二次元的な形状とした、又は前記舵板を前記船体に近接させた操舵時に一方の前記舵板の前記前部と前記船体との隙間が少なくなりフラップ的に作用する形状としたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の二枚舵システムを装備した船舶。
【背景技術】
【0002】
舵は、操舵力を高め、またプロペラの加速流を利用する目的で、プロペラの後方に配置されることが一般的である。
しかしながら、幅広な肥大船においては、船尾の流れが不安定になるため、進路安定性が極端に劣化する。さらに操縦力を向上させるために、舵を大型化しているが、船尾におけるプロペラと舵の収納スペースが不十分となり、プロペラが極端に船体に近づき推進性能を劣化させていた。
船舶の歴史からみて、船舶を推進する手段は過去の帆による帆船時代から、主機関によりプロペラを駆動するプロペラ時代に代わっているが、舵についてはその形や位置が帆船時代となんら変わっていない。現在の地球温暖化防止の対策が求められる時代において、舵を本来の舵だけでなく積極的に省エネ装置として利用することの追求が必要である。
【0003】
特許文献1及び特許文献2は、プロペラの後方に舵を配置した船舶である。
特許文献3では、二枚の舵板をプロペラの側方に配置する構成が提案されている(
図8及び段落番号(0019))。
特許文献4は、プロペラより前方に舵が位置するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2では、プロペラの後方に舵を配置しているため、舵推力を発生させるものではない。
特許文献3は、二枚の舵板をプロペラの側方に配置しているが、二枚の舵板は、外側に湾曲面を形成し、内側を平坦面としてキャンバーを形成しておらず、二枚の舵板の間を流れるプロペラ後流の整流化を図っている。
すなわち、特許文献3では、舵板の外側の湾曲によって外側の流れが早くなり、舵板の前縁で内側から外側へ向かう流れが生じ、結果的に内側の流れが減速される。そのため、揚力は舵板の外側の方向に生じるがその向きは、舵板に入る流れが船体中心に向かう方向のため、船首方向では無く、抗力となる船尾方向に向いている。従って、特許文献3では、プロペラ推力は向上するが、舵推力は発生しない。
なお、特許文献4は、アジスマ推進器に関するものであり、単に舵がプロペラより前方にあるというものにすぎなく、舵システムとしての基本構成がそもそも異なるものである。
【0006】
本発明は、舵板によって舵推力を発生させ、推進性能を高める二枚舵システム、及び二枚舵システムを装備した船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の本発明に対応した二枚舵システムにおいては、船体の船尾管の後端に取り付けられるプロペラの側方に配置する二枚の舵板と、二枚の舵板を駆動軸を介して駆動する駆動手段を備えた二枚舵システムであって、二枚の舵板の内側にキャンバーを形成し、二枚の舵板を駆動手段により独立して駆動可能に構成し、二枚の舵板は、
非旋回時に舵板の前部が舵板の上端より下方に位置する船体の船尾部の終端よりも後方でプロペラよりも前方になるように配置され、かつ駆動軸は船体に対する前後方向の位置がプロペラと略同位置に配置され、旋回時に一方の舵板の前部が
船尾部に近づくように駆動手段により同方向に同じ舵角で動作するとともに、制動時に駆動手段により互いに反対方向に動作することを特徴とする。請求項1に記載の本発明によれば、舵板によって船尾流れの整流効果を生じさせるとともに流れを縮流させ舵推力を発生させることができる。また、二枚の舵板が互いに反対方向に動作することで船舶の制動距離を短くすることができる。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の二枚舵システムにおいて、二枚の舵板を、船体の船尾部の縮流によるキャンバーの効果、又は船尾部の流れに対する迎角の効果により船体を前方に推進する推力を発生する構成としたことを特徴とする。請求項2に記載の本発明によれば、二枚の舵板を船尾部において船体中心方向に向かう流れの中で、内側にキャンバーを形成した舵板として配置することで船体を前方に推進する推力を発生させることができる。例えば、二枚の舵板の前方幅を後方幅に対して大きくし、船体中心線に対して0度以上10度以内傾けることで、揚力の増加に対して抵抗が少ない最適な舵板となり、大きな舵推力を得ることができる。
【0009】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の二枚舵システムにおいて、さらに旋回性を必要とする場合に、他方の舵板の角度が舵角と異なるように駆動手段により動作することを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、例えば一方の舵板を船体に近接させた後に、他方の舵板を更に駆動させることで船体に大きな横力を生じさせることができ、旋回性が向上する
。
【0010】
請求項
4記載の本発明は、請求項1から請求項
3のいずれかに記載の二枚舵システムにおいて、駆動軸の一端を船体から延出されプロペラの下方に配置するプロペラガードで支持したことを特徴とする。請求項
4に記載の本発明によれば、駆動軸を両端支持することで、舵板からの負荷に対する強度を高めることができる。なお、舵板の下端を連結しその部分をプロペラが海底や漂流物に接触しないようプロペラガードとして利用することも可能である。
【0011】
請求項
5記載の本発明に対応した二枚舵システムを装備した船舶においては、請求項1から請求項
4のいずれかに記載の二枚舵システムを船舶に装備したことを特徴とする。請求項
5に記載の本発明によれば、舵推力を利用した低燃費の船舶を実現できる。
【0012】
請求項
6記載の本発明は、請求項
5に記載の二枚舵システムを装備した船舶において、船舶が、方形係数が0.7以上又は長さ幅比(L/B)が5以下の肥大船であることを特徴とする。請求項
6に記載の本発明によれば、船尾の流れが不安定な肥大船において、推進性能を高め、舵推力による低燃費化を図ることができる。
【0013】
請求項
7記載の本発明は、請求項
5又は請求項
6に記載の二枚舵システムを装備した船舶において、舵板の上端より下方に位置する船尾部を、船体中心線からの幅をほぼ同じにした二次元的な形状とした、又は舵板を船体に近接させた操舵時に一方の舵板の前部と船体との隙間が少なくなりフラップ的に作用する形状としたことを特徴とする。請求項
7に記載の本発明によれば、一方の舵板を船体に近接させた操舵時に、その舵板と船体との隙間を極力小さくしフラップ効果を高めるとともに、他方の舵板を更に舵角を大きく取り、ガイドベーンのように作用させることで旋回力を向上させることができる。
【0014】
請求項
8記載の本発明は、請求項
5から請求項
7のいずれかに記載の二枚舵システムを装備した船舶において、船尾管の後端から船体の船尾後端部までの距離を、船体の長さに対して3%以下としたことを特徴とする。請求項
8に記載の本発明によれば、プロペラを後方に位置させることができ、従来船と比較して水線形状を長くすることができ、抵抗の少ない船尾形状としたり船尾部の船倉容積を増すことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、舵板によって船尾流れの整流効果を生じさせるとともに流れの縮流によりプロペラ効率を向上させ、また舵推力を発生させることができ、舵を本来の舵だけでなく積極的に省エネ装置として機能させることができる。また、二枚の舵板が互いに反対方向に動作することで船舶の制動距離を短くすることができる。
【0016】
また、二枚の舵板を、船体の船尾部の縮流によるキャンバーの効果、又は船尾部の流れに対する迎角の効果により船体を前方に推進する推力を発生する構成とした場合には、例えば二枚の舵板の前方幅を後方幅に対して大きくし、船体中心線に対して0度以上10度以内傾けることで、揚力の増加に対して抵抗が少ない最適な舵板となり、大きな舵推力を得ることができる。
【0017】
また、他方の舵板の角度が舵角と異なるように駆動手段により動作する場合には、例えば一方の舵板を船体に近接させた後に、他方の舵板を更に駆動させることで船体に大きな横力を生じさせることができ、旋回性がさらに向上する
。
【0018】
また、駆動軸の一端を船体から延出されプロペラの下方に配置するプロペラガードで支持した場合には駆動軸を両端支持することで、舵板からの負荷に対する強度を高めることができる。
【0019】
また、本発明によれば、二枚舵システムを船舶に装備した場合には、舵推力を利用した低燃費の船舶を実現できる。
【0020】
また、船舶が、方形係数が0.7以上又は長さ幅比(L/B)が5以下の肥大船である場合には、船尾の流れが不安定な肥大船において、推進性能を高め、舵推力による低燃費化を図ることができる。
【0021】
また、舵板の上端より下方に位置する船尾部を、船体中心線からの幅をほぼ同じにした二次元的な形状とした、又は舵板を船体に近接させた操舵時に一方の舵板の前部と船体との隙間が少なくなりフラップ的に作用する形状とした場合には、一方の舵板を船体に近接させた操舵時に、その舵板と船体との隙間を極力小さくしフラップ効果を高めるとともに、他方の舵板を更に舵角を大きく取り、ガイドベーンのように作用させることで旋回力を向上させることができる。
【0022】
また、船尾管の後端から船体の船尾後端部までの距離を、船体の長さに対して3%以下とした場合には、プロペラを後方に位置させることができ、従来船と比較して水線形状を長くすることができ、抵抗の少ない船尾形状としたり船尾部の船倉容積を増すことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態による二枚舵システムを装備した船舶について説明する。
図1は同実施の形態による二枚舵システムを装備した船舶を示す要部側面構成図、
図2は同船舶の要部平面構成図、
図3は
図2において操舵時の状態を示す要部平面構成図である。
【0025】
本発明の実施形態による船舶は、船体10の船尾管11の後端12に取り付けられるプロペラ20と、二枚の舵板30と、二枚の舵板30を駆動軸40を介して駆動する駆動手段50を備えている。
二枚の舵板30は、プロペラ20の側方に配置するとともに二枚の舵板30の内側にはキャンバー(翼弦と中心線の差)31を形成している。二枚の舵板30は、後述するように、プロペラ20の前方に配置してもよい。
【0026】
駆動軸40は、舵板30の前後方向の中心よりも前方に配置する。
図2に示すように、舵板30の前後方向の長さをEとしたとき、駆動軸40は、舵板30の前端から1/2Eまでの位置、より好ましくは舵板30の前端から1/3Eまでの位置に配置する。このように、駆動軸40を舵板30の前後方向の中心よりも前方に配置することで、小さな駆動負荷で舵板30を動作させることができる。
【0027】
本実施の形態によれば、二枚の舵板30を、プロペラ20の側方に配置するとともに二枚の舵板30の内側にはキャンバー31を形成することで、舵板30によって船尾流れの整流効果を生じさせるとともに流れを縮流させ舵推力を発生させることができる。
二枚の舵板30は、船体10の船尾部の流れを縮流させるキャンバー31の効果により、船体10を前方に推進する推力を発生する形状としている。船体10を前方に推進する推力を発生する形状は、例えば二枚の舵板30の前方幅Aを後方幅Bに対して大きくし、船体10の中心線に対して0度以上10度以内傾けることで、船体10の船尾部の流れに対して適度な迎角を有した配置を確保でき、プロペラ効率を増し、揚力の増加に対して抵抗が少ない最適な舵板30となり、大きな舵推力を得ることができる。
【0028】
船尾管11の後端12から船体10の船尾後端部13までの距離Dは、通常は船体10の長さ(Lpp)に対して3.5%を超えるが、本実施の形態では、二枚の舵板30を、プロペラ20の前方又は側方に配置するとともに二枚の舵板30の内側にはキャンバー31を形成することで、操縦力を向上させるために舵板30を大型化する必要が無いため、
3%以下とすることができる。このため、船体10の船尾部を後方にずらすことができ、船尾部を抵抗の少ない細長い形状としたり、船尾部の船倉の容積を増すことが可能となる。
【0029】
図3に示すように、二枚の舵板30は、連結手段32で連結され、駆動軸40を介して駆動手段50にて二枚の舵板30を同じ角度で動作させている。駆動手段50にて二枚の舵板30を同じ角度で動作させることで、舵板30の動作を安定的に行わせることができ、また、一つの駆動手段50で駆動することができる。
操舵時には、一方の舵板30を船体10に当接させ、舵板30の前端と船体10との隙間を無くすことが好ましい。
【0030】
図4は、大型肥大船として本実施の形態による二枚舵システムを装備したモデル船を用いて水槽実験を行った結果を示すグラフである。
図4では、横軸をプロペラ推力(kg)、縦軸を舵推力(kg)として、本実施の形態による二枚舵システムを装備したモデル船と通常舵を装備したモデル船とを比較している。
ここで用いたモデル船は、垂線間長さ(Lpp)を225m、船の幅(B)を48.8m、方形係数(Cb)を0.8、喫水深さ(d)を13.4mとした。
【0031】
本実施の形態による二枚舵システムを装備したモデル船では、プロペラ推力が1.300から1.500kgの範囲では、プロペラ推力の7から8%の推力が発生している。一方、通常舵を装備したモデル船では6%程度の船体抵抗が生じている。
従って、本実施の形態による二枚舵システムを装備したモデル船は、通常舵を装備したモデル船と比較して15%以上の馬力節減となっている。
【0032】
図5は、
図4と同じ二枚舵システムを装備したモデル船と通常舵を装備したモデル船とを比較し、通常舵を装備したモデル船に対する二枚舵システムを装備したモデル船の馬力低減率を示すグラフであり、横軸を船速(ノット)、左縦軸を馬力(kw)、右縦軸を馬力低減率(%)としている。
船速が大きいほど通常舵を装備したモデル船に対する二枚舵システムを装備したモデル船の馬力低減率は向上する。実際の航行時の船速を14.5ノットとすると12%程度の馬力低減率、実際の航行時の船速を16.5ノットとすると15%程度の馬力低減率となる。
【0033】
図4及び
図5に示すように、二枚舵システムを船舶に装備した場合には、舵推力を利用した低燃費の船舶を実現できる。
【0034】
図6は、本発明の実施形態による二枚舵システムを装備した場合の船体の改良を示す説明図である。
図6では、本実施の形態の船体10のプロペラ軸心ライン及び本実施の形態の船体10の舵板上端ラインと、通常舵船の船体のプロペラ軸心ライン及び通常舵船の船体の舵板上端ラインとを示している。なお、通常舵船の船体の舵板上端ラインは、本実施の形態の船体10の舵板上端ラインと同じ高さとしている。
【0035】
本実施形態による二枚舵を装備する場合には、プロペラ20を通常舵船の舵位置まで移動することができる。従って、通常舵船と比較して、船尾を細長く変形でき、船体抵抗を減らし大幅な性能改善が可能となる。
【0036】
図7は、本発明の実施形態による二枚舵システムを装備した場合の船体の他の改良を示す要部構成図である。なお、
図7では、舵板30と船尾部14の一部だけを示し、その他の構成は説明の都合上省略している。
本実施の形態では、舵板30の上端より下方に位置する船尾部14を、船体中心線からの幅をほぼ同じにした二次元的な形状としている。すなわち、舵板30の上端ラインにおける船尾部ライン14aと、舵板30の下端ラインにおける船尾部ライン14bとは、平面視でほぼ一致させた船体形状としている。
【0037】
このように、舵板30の上端より下方に位置する船尾部14を、垂直方向には角度を持たせない、あるいは角度を小さく設定した二次元的な船体形状とすることで、一方の舵板30を船体10に近接させた操舵時に、一方の舵板30と船体10(船尾部14)との隙間を無くし、一方の舵板30がフラップのように作用することで、舵推力を更に高めることができる。
【0038】
図8は、本発明の実施形態による二枚舵システムを装備した場合の船体の更に他の改良を示す説明図である。
図8に示す船舶は、垂線間長さ(Lpp)を300m、船の幅(B)を65m、喫水深さ(d)を17.9mとした船体10を示している。
通常舵船では、船尾管11の後端12aから船体10の船尾後端部13までの距離Daは、14m以上であり、船体10の長さ(Lpp=300m)に対して4.7%である。
【0039】
本発明の実施形態による二枚舵システムを装備した場合には、船尾管11の後端12bから船体10の船尾後端部13までの距離Dbは、9m以下とすることができ、船体10の長さ(Lpp=300m)に対して3%以下とすることができる。
このように、船尾管11の後端12bから船体10の船尾後端部13までの距離Dbを、船体10の長さに対して3%以下とすることで、プロペラ20を後方に位置させることができ、従来船と比較して水線形状を長くすることができる。あるいは、船尾部の船倉の容積を増すことが可能となる。
【0040】
図9は本発明の他の実施の形態による二枚舵システムを装備した船舶を示す要部側面構成図である。
図1と同一構成部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態による二枚舵システムを装備した船舶は、駆動軸40の一端41を船体10から延出されプロペラ20の下方に配置するプロペラガード60で支持している。なお、本実施の形態においても、プロペラガード60で支持している以外は、
図2及び
図3と同じ構成であり、同じ動作を行う。
【0041】
本実施の形態によれば、駆動軸40を両端支持することで、舵板30からの負荷に対する強度を高めることができる。
【0042】
図10は本発明の更に他の実施の形態による二枚舵システムを装備した船舶を示す要部平面構成図、
図11は
図10において操舵時の状態を示す要部平面構成図である。
図1から
図3と同一構成部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態による二枚舵システムを装備した船舶は、二枚の舵板30を、プロペラ20の前方に配置している以外は、
図1と同じ構成であり、同じ動作を行う。
【0043】
本実施の形態によれば、二枚の舵板30を、プロペラ20の前方に配置するとともに二枚の舵板30の内側にはキャンバー31を形成することで、舵板30によって船尾流れの整流効果を生じさせるとともに流れを縮流させ舵推力を発生させることができる。
【0044】
なお、
図1から
図3に示すように、二枚の舵板30をプロペラ20の側方に配置する場合には舵推力が大きくなり、
図10及び
図11に示すように、二枚の舵板30をプロペラ20の前方に配置する場合には推進性能(針路安定性)がより高まる傾向となる。
このような舵推力と推進性能のどちらを重視するか、また水線形状を長くすることや船倉の容積を増すことの必要性に応じて、二枚の舵板30はプロペラ20の側方から前方の任意の位置に配置することができる。
【0045】
図12は本発明の更に他の実施の形態による二枚舵システムを装備した船舶を示す要部平面構成図、
図13は
図12において操舵時の状態を示す要部平面構成図である。
図1から
図3と同一構成部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態による二枚舵システムを装備した船舶は、二枚の舵板30を、独立した動作を行える駆動手段50a、50bを備えた以外は、
図1から
図3と同じ構成である。
本実施の形態では、駆動手段50a、50bにより二枚の舵板30を独立して駆動することができ、
図13では、駆動手段50aよりも駆動手段50bが舵板30に対して大きな動作を与えた場合を示している。
【0046】
本実施の形態によれば、例えば一方の舵板30を船体10に近接させた後に、他方の舵板30を更に駆動させることで船体10に大きな横力を生じさせることができ、旋回性が向上する。また、本実施の形態によれば、二枚の舵板30を互いに反対方向に開閉することで船舶の制動距離を短くすることができる。また、船尾部の流れの状態や、船体10の操船状況に応じ、駆動手段50a、50bにより二枚の舵板30を独立して任意に駆動することができる。
本実施の形態による二枚舵システムを装備した船舶では、方形係数が0.7以上又は長さ幅比(L/B)が5以下の肥大船において、特に、推進性能を高め、舵推力による低燃費化を図ることができる。
【0047】
図14は本発明の更に他の実施の形態による二枚舵システムを装備した船舶を示す要部構成図である。
図1から
図3と同一構成部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施の形態による二枚舵システムを装備した船舶は、二枚の舵板30を、舵板上端部30aでは前方幅を後方幅に対して大きくして外開きとし、舵板下端部30bでは前方幅と後方幅を同じとして船体10の中心線に対してほぼ平行とした以外は、
図1から
図3と同じ構成である。
舵板上端部30aでは前方幅を後方幅に対して大きくして外開きとすることにより、舵板30の上方ほど傾向として強い、入ってくる流れの斜流度に対応させて舵板30の迎角を最適化する効果を有している。
また、舵板上端部30aでは前方幅を後方幅に対して大きくして外開きとすることは、プロペラ20の中心軸より上側で相対的に遅い船尾部の流れをより加速し、舵推力やプロペラ推力を高めることができる。また、舵板下端部30bでは前方幅と後方幅を同じとして船体10の中心線に対してほぼ平行とすることにより、プロペラ20の中心軸より下側で相対的に早い船尾部の流れを加速せずに、上側とバランスを取った上で舵推力を得て、プロペラに作用させることができる。
本実施の形態による二枚舵システムを装備した船舶では、更に舵推力やプロペラ効率を高めることができる。
【0048】
なお、二枚の舵板30を二枚のフィン状に構成し、又はプロペラ20の両側にわたるダクト状に構成することで、推力と舵板30と同様の旋回力を得ることも可能である。この場合、二枚の舵板30の広義の定義にフィンやダクトも入る。また、本来の二枚の舵板30に、フィン状やダクト状の付加物を組み合わせ、更に推力や旋回力を増すことも可能である。
【0049】
以下に、既存船舶に対する本実施の形態による二枚舵システムの設計方法について説明する。
図15は、既存船舶に対する二枚舵システムを適用する上での設計方法を示すフローチャートである。
まず、二枚の舵板30をプロペラ20の前方もしくは側方に移動する(ステップ1)。なお、ステップ1では、その後に、プロペラ20の位置を二枚の舵板30とともに、船体10の船尾後端部13の方向に移動させてもよい。
次に、可能であれば、舵板30の上端より下方に位置する船尾部14を、垂直方向には角度を持たせない二次元的な船体形状に修正する(ステップ2)。
ステップ1の後、又はステップ2の後に、二枚の舵板30を、船体10による縮流に沿わせた形状に設計する(ステップ3)。
ステップ3の後に、プロペラ縮流により最大推力が発生するように二枚の舵板30のキャンバー31を修正設計する(ステップ4)。
ステップ4の後に、操舵時の舵板30と船体10との干渉を確認する(ステップ5)。
ステップ5において、問題があれば、ステップ1に戻って舵板30の位置を変更する。
【0050】
以上の設計方法により、既存船舶に対して本実施の形態による二枚舵システムを適用することができる。
以上で述べたように、本実施の形態によれば、二枚の舵板30によって船尾部14の流れの整流効果を生じさせるとともに流れを縮流させ舵板30による推力を発生させることができ、舵板30を本来の舵機能としてだけでなく積極的に省エネ装置として機能させることができる。