(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源から発せられた光を被検眼上で走査するための光スキャナと、光源から発せられた測定光と参照光との干渉信号を検出する検出器と、を有し、被検眼の断層像を得るための干渉光学系を備える眼科撮影装置であって、
被検眼上で設定された撮影位置に基づいて、前記干渉光学系を制御して複数の断層像を取得し、記憶手段に記憶させる画像取得手段と、
前記記憶手段に記憶された前記複数の断層像の複合処理によって複合画像を取得する画像複合手段と、
検者によって操作される操作手段からの第1の操作信号と第2の操作信号を受信するための受信手段と、
前記画像取得手段によって前記設定された撮影位置に基づく前記複数の断層像を取得させる撮影動作を開始し、前記撮影動作中に該受信手段によって前記第1操作信号を受信した場合に、該第1操作信号が受信されるまでの間に前記記憶手段に記憶された複数の断層像から複合画像を取得する制御手段と、
前記受信手段によって前記第2操作信号を受信した場合に、前記画像取得手段による次の撮影動作に移行させる移行手段と、
を備えることを特徴とする眼科撮影装置。
光源から発せられた光を被検眼上で走査するための光スキャナと、光源から発せられた測定光と参照光との干渉信号を検出する検出器と、を有し、被検眼の断層像を得るための干渉光学系を備える、眼科撮影装置の動作を制御する制御装置において実行される眼科撮影プログラムであって、
前記制御装置のプロセッサによって実行されることで、
被検眼上で設定された撮影位置に基づいて、前記干渉光学系を制御して複数の断層像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップの撮影動作を開始し、前記撮影動作中に、検者によって操作される操作手段からの第1の操作信号と第2の操作信号を受信するための受信手段によって、前記第1操作信号を受信した場合に、該第1操作信号が受信されるまでの間に記憶手段に記憶された複数の断層像から複合画像を取得する制御ステップと、
前記受信手段によって前記第2操作信号を受信した場合に、前記画像取得ステップによる次の撮影動作に移行させる移行ステップと、
を前記制御装置に実行させることを特徴とする眼科撮影プログラム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜
図7は本実施形態に係る眼科撮影装置の構成について説明する図である。なお、本実施形態においては、被検者眼(眼E)の軸方向をZ方向、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向として説明する。眼底の表面方向をXY方向として考えても良い。
【0012】
<概要>
本発明の実施形態に係る眼科撮影装置の概要について説明する。本実施形態に関わる眼科撮影装置(光コヒーレンストモグラフィーデバイス)10は、干渉光学系100、制御部(CPU)70、観察光学系200、操作部(操作手段)74を備える。
【0013】
干渉光学系100は、走査手段(光スキャナ)108、検出器120を有し、被検眼の断層画像を得る。光スキャナ108は、光源102から発せられた光を被検眼上で走査する。検出器120は、光源から発せられた測定光と参照光との干渉信号を検出する。
【0014】
操作部74は、検者によって操作される。操作部74には、例えば、マウス74a、トラックボール、タッチパネルなどのユーザーインターフェースが用いられる。
【0015】
観察光学系200は、被検眼を照明する照明光学系と、被検眼からの反射光を受光する受光光学系と、を有する。観察光学系200は、受光光学系からの受光信号に基づいて被検眼の正面画像を取得する。例えば、SLO(スキャニングレーザオフサルモスコープ(SLO))や眼底カメラが挙げられる。
【0016】
本実施形態において、制御部70は、画像取得手段と、画像複合手段と、受信手段と、制御手段と、移行手段と、を兼ねる。もちろん、それぞれ異なる制御部が設けられる構成でもよいし、一部の制御部が兼用される構成としてもよい。なお、受信手段は、操作部74からの操作信号を受信するための構成である。
【0017】
制御部70は、被検眼上で設定された撮影位置に基づいて、干渉光学系100を制御して複数の断層像を取得し、記憶手段(メモリ72)に記憶させる。制御部70は、メモリ72に記憶された複数の断層像の複合処理によって複合画像を取得する。
【0018】
例えば、複合画像としては、加算平均処理によって取得される加算平均画像、超解像度画像処理によって取得される超解像画像、差分処理によって取得される差分画像等が挙げられる。
【0019】
制御部70は、設定された撮影位置に基づく複数の断層像を取得させる撮影動作を開始し、撮影動作中に、第1操作信号を受信した場合に、第1操作信号が受信されるまでの間にメモリ72に記憶された複数の断層像から複合画像を取得する。
【0020】
そして、制御部70は、第2操作信号を受信した場合に、次の撮影動作に移行させる。
【0021】
例えば、第1操作信号が一時停止信号である場合、制御部70は、メモリ72へ断層像を記憶させる制御を一時的に停止させてもよい。また、制御部70は、一時停止信号が受信されるまでの間にメモリ72に記憶された複数の断層像から複合画像を取得し、取得された複合画像を出力してもよい。
【0022】
例えば、第2操作信号が撮影再開信号(撮影復帰信号)である場合、制御部70は、次の撮影動作として、メモリ72へ断層像を記憶させる制御を再開し、第1操作信号を受信するまでにメモリ72に記憶された断層像の取得枚数より断層像を追加して記憶させてもよい。
【0023】
また、例えば、第2操作信号が再撮影信号である場合、次の撮影動作として、メモリ72へ断層像を記憶させる制御を再開し、第1操作信号を受信するまでにメモリ72に記憶された断層像の取得枚数をリセットし、再度、メモリ72に断層像を記憶させてもよい。
【0024】
なお、本件発明は、複数の撮影位置(横断位置)において、断層像を取得する構成においても適用可能である。すなわち、本件発明は、単一のスキャン(例えば、ラインスキャン、サークルスキャン等)で断層像を取得する構成への適用のみに限定されない。異なる撮影位置での複数のスキャンを組み合わせて構成されたスキャンパターン(マルチスキャン、ラスタースキャン、ラジアルスキャン、クロススキャン等)で断層像が取得する構成にも適用可能である。例えば、制御部70は、被検眼上で設定された異なる複数の撮影位置にて、光スキャナを制御して、測定光を走査し、各撮影位置にて複数の断層像を取得し、メモリ72に記憶させるてもよい。制御部70は、設定された複数の撮影位置において、それぞれ複数の断層像を取得させる撮影動作を開始するしてもよい。制御部70は、撮影動作中に第1操作信号を受信した場合に、第1操作信号が受信された際に撮影中の第1撮影位置において、第1操作信号が受信されるまでの間にメモリ72に記憶された第1撮影位置の複数の断層像から複合画像を取得してもよい。
【0025】
この場合、例えば、第2操作信号に撮影位置変更信号が適用できる。第2操作信号が撮影位置変更信号である場合、制御部70は、次の撮影動作として、第1撮影位置から第2撮影位置へと断層像の取得位置を変更させてもよい。そして、制御部70は、第2撮影位置にて断層像を取得させる撮影動作を開始してもよい。
【0026】
この場合、第1操作信号と第2操作信号を兼用する構成としてもよい。例えば、制御部70は、第2操作信号が撮影位置変更信号である場合、撮影動作中に撮影位置変更信号を受信すると、一時停止させることなく、次の撮影位置に撮影位置を変更させてもよい。
【0027】
なお、上記記載の眼科撮影装置において、トラッキング制御が行われる。例えば、制御部70は、観察光学系200によって取得された正面像において、所定の正面像を基準画像として設定してもよい。制御部70は、基準画像と他の正面像とのずれを画像処理により検出する。制御部70は、検出結果に基づいて光スキャナ108の駆動を制御し、設定された撮影位置にて複数の断層像を取得してもよい。なお、例えば、他の正面像とは、断層像取得時における正面像を用いる構成が挙げられる。
【0028】
なお、本実施形態においては、上記実施形態に記載した装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う眼科撮影ソフトウェア(プログラム)をネットワークや各種記憶媒体を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置のコンピュータ(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。
【0029】
例えば、眼科撮影プログラムは、眼科撮影装置の動作を制御する制御装置において実行される。この場合、眼科撮影プログラムは、制御装置のプロセッサによって実行されることで、被検眼上で設定された撮影位置に基づいて、干渉光学系100を制御して複数の断層像を取得する画像取得ステップと、画像取得ステップの撮影動作を開始し、撮影動作中に、操作部74からの操作信号を受信するための受信手段によって、第1操作信号を受信した場合に、第1操作信号が受信されるまでの間にメモリ72に記憶された複数の断層像から複合画像を取得する制御ステップと、受信手段によって、第2操作信号を受信した場合に、画像取得ステップによる次の撮影動作に移行させる移行ステップと、を制御装置に実行させる。
【0030】
<実施例>
以下、本実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本実施例に係る眼科撮影装置の構成について説明する概略構成図である。以下の説明においては、眼科撮影装置として、被検眼の眼底撮影を行う眼底撮影装置を例に挙げて説明を行う。もちろん、眼科撮影装置としては、眼底撮影装置に限定されず、被検眼の前眼部撮影を行う前眼部撮影装置等が挙げられる。なお、本実施例においては、被検者眼(眼E)の軸方向をZ方向、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向として説明する。眼底の表面方向をXY方向として考えても良い。
【0031】
装置構成の概略を説明する。本装置は、被検者眼Eの眼底Efの断層像を撮影するための光コヒーレンストモグラフィーデバイス(OCTデバイス)10である。OCTデバイス10は、干渉光学系(OCT光学系)100と、正面観察光学系200と、固視標投影ユニット300と、演算制御部(CPU)70と、を含む。
【0032】
OCT光学系100は、眼底に測定光を照射する。OCT光学系100は、眼底から反射された測定光と、参照光との干渉状態を受光素子(検出器120)によって検出する。OCT光学系100は、眼底Ef上の撮像位置を変更するため、眼底Ef上における測定光の照射位置を変更する照射位置変更ユニット(例えば、光スキャナ108、固視標投影ユニット300)を備える。制御部70は、設定された撮像位置情報に基づいて照射位置変更ユニットの動作を制御し、検出器120からの受光信号に基づいて断層像を取得する。
【0033】
<OCT光学系>
OCT光学系100は、いわゆる眼科用光干渉断層計(OCT:Optical coherence tomography)の装置構成を持ち、眼Eの断層像を撮像する。OCT光学系100は、測定光源102から出射された光をカップラー(光分割器)104によって測定光(試料光)と参照光に分割する。そして、OCT光学系100は、測定光学系106によって測定光を眼Eの眼底Efに導き,また、参照光を参照光学系110に導く。その後、眼底Efによって反射された測定光と,参照光との合成による干渉光を検出器(受光素子)120に受光させる。
【0034】
検出器120は、測定光と参照光との干渉状態を検出する。フーリエドメインOCTの場合では、干渉光のスペクトル強度が検出器120によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。例えば、Spectral-domain OCT(SD−OCT)、Swept-source OCT(SS−OCT)が挙げられる。また、Time-domain OCT(TD−OCT)であってもよい。
【0035】
光スキャナ108は、測定光源から発せられた光を被検眼眼底上で走査させる。例えば、光スキャナ108は、眼底上で二次元的(XY方向(横断方向))に測定光を走査させる。光スキャナ108は、瞳孔と略共役な位置に配置される。光スキャナ108は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構50によって任意に調整される。
【0036】
これにより、光源102から出射された光束はその反射(進行)方向が変化され、眼底上で任意の方向に走査される。これにより、眼底Ef上における撮像位置が変更される。光スキャナ108としては、光を偏向させる構成であればよい。例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられる。
【0037】
参照光学系110は、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系110は、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー)によって形成され、カップラー104からの光を反射光学系により反射することにより再度カップラー104に戻し、検出器120に導く。他の例としては、参照光学系110は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラー104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。
【0038】
参照光学系110は、参照光路中の光学部材を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を変更する構成を有する。例えば、参照ミラーが光軸方向に移動される。光路長差を変更するための構成は、測定光学系106の測定光路中に配置されてもよい。
【0039】
<正面観察光学系>
正面観察光学系(正面像観察デバイス)200は、眼底Efの正面画像を得るために設けられている。観察光学系200は、例えば、光源から発せられた測定光(例えば、赤外光)を眼底上で二次元的に走査させる光スキャナと、眼底と略共役位置に配置された共焦点開口を介して眼底反射光を受光する第2の受光素子と、を備え、いわゆる眼科用走査型レーザ検眼鏡(SLO)の装置構成を持つ。
【0040】
なお、観察光学系200の構成としては、いわゆる眼底カメラタイプの構成であってもよい。また、OCT光学系100は、観察光学系200を兼用してもよい。すなわち、正面画像は、二次元的に得られた断層像を形成するデータを用いて取得されるようにしてもよい(例えば、三次元断層像の深さ方向への積算画像、XY各位置でのスペクトルデータの積算値、ある一定の深さ方向におけるXY各位置での輝度データ、網膜表層画像、等)。
【0041】
なお、観察光学系200がSLOや眼底カメラの場合、制御部70は、観察光学系200によって取得された正面像と、干渉光学系100によって取得された正面像(例えば、三次元画像データに基づくOCT正面像(例えば、積算画像))との位置合わせ(マッチング)する。これにより、干渉光学系100によって取得された断層像と、観察光学系200によって取得された正面像との対応付けが行われる。
【0042】
<固視標投影ユニット>
固視標投影ユニット300は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。投影ユニット300は、眼Eに呈示する固視標を有し、複数の方向に眼Eを誘導できる。
【0043】
例えば、固視標投影ユニット300は、可視光を発する可視光源を有し、視標の呈示位置を二次元的に変更させる。これにより、視線方向が変更され、結果的に撮像部位が変更される。例えば、撮影光軸と同方向から固視標が呈示されると、眼底の中心部が撮像部位として設定される。また、撮影光軸に対して固視標が上方に呈示されると、眼底の上部が撮像部位として設定される。すなわち、撮影光軸に対する視標の位置に応じて撮影部位が変更される。
【0044】
固視標投影ユニット300としては、例えば、マトリクス状に配列されたLEDの点灯位置により固視位置を調整する構成、光源からの光を光スキャナを用いて走査させ、光源の点灯制御により固視位置を調整する構成、等、種々の構成が考えられる。また、投影ユニット300は、内部固視灯タイプであってもよいし、外部固視灯タイプであってもよい。
【0045】
<制御部>
制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。制御部70のCPUは、眼科撮影装置10の制御を司る。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70のROMには、眼科撮影装置10の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。
【0046】
制御部70には、不揮発性メモリ(記憶手段)72、操作部(コントロール部)74、および表示部(モニタ)75等が電気的に接続されている。不揮発性メモリ72は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、眼科撮影装置10に着脱可能に装着されるUSBメモリ等を不揮発性メモリ72として使用することができる。不揮発性メモリ72には、眼科撮影装置10による正面画像および断層画像の撮影を制御するための撮影制御プログラムが記憶されている。また、不揮発性メモリ72には、撮影された二次元の断層画像、三次元画像、正面画像、断層画像の撮影位置の情報等、撮影に関する各種情報が記憶される。操作部74には、検者による各種操作指示が入力される。
【0047】
操作部74は、入力された操作指示に応じた信号を制御部70に出力する。操作部74には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかを用いればよい。
【0048】
モニタ75は、眼科撮影装置10の本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)のディスプレイを用いてもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。また、モニタ75は、タッチパネルであってもよい。なお、モニタ75がタッチパネルである場合に、モニタ75が操作部として機能する。モニタ75には、眼科撮影装置10によって撮影された断層画像および正面画像を含む各種画像が表示される。
【0049】
なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。例えば、PCに設けられた設定制御部と、OCT光学系100等の動作を制御する動作制御部とによって、眼科撮影装置10の制御部70が構成されてもよい。この場合、例えば、PCの設定制御部は、PCに接続された操作部の操作信号を受信して、受信した操作信号に基づいて、各種の制御動作を動作制御部に指示すればよい。すなわち、設定制御部は、操作信号からの操作信号を受信する受信手段の役割を行う。動作制御部は、設定制御部からの指示に従って、眼科撮影装置10の各構成による撮影動作を制御すればよい。また、受光信号に基づいて画像を生成(取得)する処理は、動作制御部および設定制御部のいずれで行ってもよい。なお、本実施例において、制御部70は、画像取得手段と、画像複合手段と、受信手段と、制御手段と、移行手段と、を兼ねる。もちろん、それぞれ異なる制御部が設けられる構成でもよいし、一部の制御部が兼用される構成としてもよい。
【0050】
なお、マウス74aには、検者の手によってマウス74a本体が二次元的に移動されたときの移動信号を検出するセンサと、検者の手によって、押圧されたことを検知するための左右2つのマウスボタンと、左右2つのマウスボタンの間に前後方向に回転可能なホイール機構とが設けられている。
【0051】
制御部70は、OCT光学系100の検出器120から出力される受光信号に基づいて画像処理により断層像を取得すると共に、正面観察光学系200の受光素子から出力される受光信号に基づいて正面像を取得する。また、制御部70は、固視標投影ユニット300を制御して固視位置を変更する。
【0052】
<制御動作>
以上のような構成を備える装置において、その制御動作について説明する。制御部70は、メモリ72に記憶された制御プログラムに従って、処理を実行する。検者は、固視標投影ユニット300の固視標を注視するように被検者に指示した後、図示無き前眼部観察用カメラで撮影される前眼部観察像をモニタ75で見ながら、被検眼の瞳孔中心に測定光軸がくるように、操作部74(例えば、図示無きジョイスティック)を用いて、アライメント操作を行う。
【0053】
そして、制御部70は、光スキャナ108の駆動を制御し、眼底上で測定光を所定方向に関して走査させ、走査中に検出器120から出力される出力信号から所定の走査領域に対応する受光信号を取得して断層像を形成する。また、制御部70は、OCT光学系100を制御し、断層像を取得すると共に、観察光学系200を制御し、眼底正面像を取得する。そして、制御部70は、OCT光学系100によって断層像、観察光学系200によって眼底正面像(正面像)を随時取得する。
【0054】
以下、本実施例においては、異なる横断位置での複数のスキャンを組み合わせて構成されたスキャンパターン(マルチスキャン、ラスタースキャン、ラジアルスキャン、クロススキャン等)で断層像が取得される場合を例に挙げて説明をする。もちろん、本件発明は、単一のスキャン(例えば、ラインスキャン、サークルスキャン等)においても適用可能である。
【0055】
以下、複数のスキャンを組み合わせて構成されたスキャンパターンとして、マルチスキャンを例に挙げて説明をする。本実施例のマルチスキャンとしては、例えば、縦方向に5ライン、横方向に5ラインのスキャンラインによって構成されるマルチスキャンを例に挙げて説明する。もちろん、スキャンラインのライン数は、これに限定されず、変更可能である。
【0056】
図2は、マルチスキャンにて撮影を行う場合におけるモニタ75に表示される撮影画面の一例を示す図である。制御部70は、モニタ75上に、観察光学系200によって取得された正面像20、指標25、断層像30、を表示する。指標25は、正面像20上における断層像の測定位置(取得位置)及びスキャンパターンを表す指標である。すなわち、スキャンパターンが変更されると、制御部70は、変更されたスキャンパターンに基づいて、指標の表示パターンを変更する。指標25は、モニタ75上の正面像上に電気的に重畳表示される。
【0057】
断層像30としては、例えば、第1断層像30aと第2断層像30bがモニタ75上に表示される。例えば、第1断層像30aは、指標25を横方向(X方向)に通過する切断位置にて取得される断層像を示している。また、例えば、第2断層像30bは、指標25を縦方向(Y方向)に通過する切断位置にて取得される断層像を示している。
【0058】
なお、本実施例において、マルチスキャンの撮影時における初期設定として、撮影画面の第1断層像30a及び第2断層像30bに表示される断層像は、マルチスキャンの中心位置26における横方向及び縦方向のスキャンの断層像を表示する構成としている。もちろん、異なるスキャン位置の画像が撮影時に表示されるようにしてもよい。また、第1断層像30a及び第2断層像30bに表示される断層像は、操作部の操作によって、変更可能である。例えば、マウス74aを操作し、検者が断層像の確認したい位置におけるスキャンラインを選択すると、選択されたスキャンラインで取得される断層像へと表示が変更される。
【0059】
以下、断層像の撮影方法について説明する。
図2に示されるように、断層像及び正面像が同一画面上に表示されたら、検者は、リアルタイムで観察されるモニタ75上の正面像から検者の撮影したい断層像の位置を設定する。ここで、検者は、マウス74aを用いて、ドラッグ操作を行うことによって、正面像に対して指標25を移動させていき、走査位置を設定する。
【0060】
検者によって指標25が正面像20に対して移動されると、制御部70は、随時走査位置の設定を行い、これに対応する走査位置の断層像を取得する。そして、取得された断層画像を随時モニタ75の表示画面上に表示する。また、制御部70は、マウス74aから出力される操作信号に基づいて測定光の走査位置を変更すると共に、変更された走査位置に対応する表示位置に指標25を表示する。なお、走査位置の変更とともに、スキャンスキャンパターン設定欄35を操作部74によって選択することによって、スキャンパターンを変更することが可能である。
【0061】
検者によって、スキャンパターンや走査位置等が設定され、図示無き撮影スイッチが選択されると、制御部70は、設定された走査位置に基づいて、正面像及び断層像の取得を行う。
【0062】
制御部70は、マルチスキャンでの撮影開始時に取得した正面像と、その正面像上で設定されたマルチスキャンの走査位置の情報をメモリ72に記憶させる。なお、正面像は、再撮影時のトラッキング制御時に用いられる(詳細は後述する)。
【0063】
また、制御部70は、正面像20上に設定された指標25の表示位置に基づいて、指標25の位置に対応する眼底の断層像が得られるように、光スキャナ108を駆動させて測定光を走査させる。なお、指標25の表示位置(モニタ75上における座標位置)と光スキャナ108による測定光の走査位置との関係は、予め定まっているので、制御部70は、設定した指標25の表示位置に対応する走査範囲に対して測定光が走査されるように、光スキャナ108の2つのガルバノミラーを適宜駆動制御する。
【0064】
断層像の取得時において、制御部70は、複数のスキャンで構成されるスキャンパターンでの撮影の場合、各スキャン毎に順に断層像の取得を行う。例えば、上記記載のマルチスキャンで撮影を行う場合、横方向の全てのスキャンラインでの撮影を完了した後、縦方向の全てのスキャンラインでの撮影を行う。例えば、横方向の各スキャンラインでの撮影を行っていく場合、上端に位置するスキャンラインから順に下方向に向けて撮影を行っていく。すなわち、指標25における横方向上端の指標25aから下端の指標25bに向けて順に横方向の撮影を行っていく。
【0065】
このとき、各スキャンラインにおいて、ノイズ成分を抑制した1枚の断層像(Bスキャン画像)を得るために、各スキャンラインでの断層像の撮影を複数回行う。例えば、制御部70は、上端の指標25aの位置での撮影を複数回行い、複数の断層像を生成し、メモリ72に記憶させる。ここで、制御部70は、随時、メモリ72に記憶される複数の断層像を加算処理して平均化(加算平均処理)させる。これによって、各スキャンライン毎に複数の断層像から加算平均画像を取得する。
【0066】
詳細には、まず、制御部70は、設定された走査位置に関して、光スキャナ108を用いて測定光を所定の走査領域(撮影位置)において、断層像が予め設定された複数のフレーム枚数(加算平均処理に使用される枚数)取得できるように、複数回走査する。そして、制御部70は、同一の走査位置領域における断層像を複数フレーム枚数(n枚(n≧2))生成する。制御部70は、生成された複数の断層像を、随時メモリ72に記憶させる。制御部70は、複数の断層像が取得されている間、正面像の取得動作を繰り返す。このような制御により、制御部70は、断層像が連続的に取得されている間の眼の移動を監視する。すなわち、制御部70は、トラッキング制御を行う(詳細は後述する)。
【0067】
そして、制御部70は、随時、メモリ72に記憶された断層像を加算平均処理し、加算平均処理に用いた複数の断層像のフレーム枚数が所定の枚数に到達した場合に、その撮影位置における撮影を完了し、次のスキャンラインの撮影位置へと移行する。なお、加算平均処理に用いる断層像のフレーム枚数は、予め、スキャンパターン毎に設定されている構成であってもよい。もちろん、検者によって、任意に、フレーム枚数が設定可能な構成としてもよい。
【0068】
ここで、加算平均処理について説明する。例えば、制御部70は、OCT光学系100よって取得された複数の断層像を加算平均処理することにより加算平均画像を取得する。制御部70は、各スキャンライン毎に、各スキャンラインの位置において、最初に取得された(メモリ72に記憶された)断層像を基準画像として設定し、加算平均処理を行う。制御部70は、各スキャンラインの位置で取得された断層像毎に、基準画像とその他の複数の断層像とのずれを画像処理により検出する。そして、制御部70は、ずれ検出結果に基づいて、加算処理の適否を判定処理すると共に、基準画像と各断層像とのずれを補正し、基準画像に対して複数の断層像を加算処理していく。なお、本実施形態においては、基準画像を最初に取得された正面像(最新の撮影画像)に設定したがこれに限定されない。例えば、複数の断層像の内で加算処理の基準とする基準画像設定をしてもよい。
【0069】
制御部70は、基準画像に対して断層像を順に加算平均処理していく。そして、各断層像と基準画像とのずれ量を断層像毎に検出し、基準画像に対して各断層像の位置合わせを行う。すなわち、基準画像と各断層像を比較して、基準画像に対する各断層像の位置ずれ方向及び位置ずれ量を断層像毎に、画像処理により検出する。
【0070】
ずれ量の検出方法としては、種々の画像処理手法(各種相関関数を用いる方法、フーリエ変換を利用する方法、特徴点のマッチングに基づく方法)を用いることが可能である。
【0071】
例えば、所定の基準画像(最初に取得した断層像)又は対象画像(基準画像を除く断層像)を1画素ずつ位置ずれさせ、基準画像と対象画像を比較し、両データが最も一致したとき(相関が最も高くなるとき)の両データ間の位置ずれ方向及び位置ずれ量を検出する手法が考えられる。また、所定の基準画像及び対象画像から共通する特徴点を抽出し、抽出された特徴点の位置ずれ方向及び位置ずれ量を検出する手法が考えられる。
【0072】
本実施例においては、基準画像に対する各正面像を1画素単位でずらしながら、相関値(値が大きいほど画像間の相関が高くなる(最大1))を逐次算出する。そして、制御部70は、相関値が最大となるときの画素の偏位量(ずらした画素数)を位置ずれ量とし、また、ずらした方向を位置ずれ方向として算出する。
【0073】
判定方法として、ずれ検出時に算出した相関値を用いて判定を行う。例えば、相関値が所定の閾値(例えば、0.4)より小さい場合に、加算平均処理に用いる断層像の対象から除外する。すなわち、相関値が小さい場合には、固視微動や装置と眼の間のずれ等が原因となって、基準画像と断層像で、撮影領域が大きく異なっている可能性が高い。なお、加算平均処理に用いる画像として、適正な画像であるか否かの判定においてはこれに限定されない。例えば、検出される位置ずれ量が許容範囲を超えた断面像を加算平均処理の対象から除外するようにしてもよい。また、例えば、正面像間のずれ量を考慮する構成としてもよい。例えば、断層像が取得された際の正面像の位置ずれ量が許容範囲を超えた断面像を加算平均処理の対象から除外する。
【0074】
以上のように、位置ずれ量及び位置ずれ方向が検出され、加算平均処理に用いる画像としての適否が判定される。そして、制御部70は、加算平均処理用の画像として適正であると判定された画像に対して、位置ずれが補正されるように、位置ずれ量分、各正面像を基準画像に対して、それぞれ変位させる。そして、位置ずれ補正後、制御部70は、基準画像に対して、断層像の画素値を加算させる。
【0075】
このように、各スキャンラインでの複数の断層像を用いて、加算平均処理することによって、取得される断層像の画質が向上する。
【0076】
横方向の撮影完了後、横方向の撮影と同様にして、縦方向の各スキャンラインでの撮影を行っていく。例えば、縦方向の各スキャンラインでの撮影を行っていく場合、左端に位置するスキャンラインから順に右方向に向けて撮影を行っていく。すなわち、指標25における縦方向の左端の指標25cから右端指標25dに向けて順に縦方向の撮影を行っていく。なお、撮影順序は上記に限定されない。例えば、縦方向のスキャンラインでの撮影が完了した後、横方向のスキャンラインでの撮影を行う構成としてもよい。また、縦方向と横方向のスキャンラインでの撮影が交互に行われる構成としてもよいし、複数の撮影毎に縦方向と横方向のスキャンラインでの撮影が切り換わる構成としてもよい。
【0077】
上記のようにして、撮影が完了すると、制御部70は、取得した断層像をメモリ72に記憶させる。
【0078】
なお、本発明は、断層像撮影中において、種々の操作が可能な構成となっている。以下、断層像撮影中の動作について説明する。
図3は、所定の撮影位置における複数の断層像を取得している撮影画面の一例を示す図である。
【0079】
制御部70は、スキャンパターン及び走査位置が設定され、撮影が開始されると、各スキャンパターンの撮影位置において、複数の断層像の撮影を開始する。このとき、被検眼の固視微動等によって、正面像が走査位置(撮影位置)に対してずれた場合、走査位置を設定した位置と同一の位置の断層像を取得するためには、走査位置を補正する制御が(トラッキング制御)必要がある。
【0080】
以下、トラッキング制御について説明する。制御部70は、メモリ72に記憶されたマルチスキャンでの撮影開始時に取得した正面像と、その正面像上で設定されたマルチスキャンの走査位置情報を用いて、複数の断層像を取得する際の走査位置の補正を行う。制御部70は、まず、メモリ72に記憶された正面像と現在の正面像とを比較する。制御部70は、マルチスキャンでの撮影開始時に取得した正面像に対する現在の正面像の位置ずれ方向及び位置ずれ量を画像処理により検出(演算)する。
【0081】
制御部70は、マルチスキャンでの撮影開始時に取得した正面像データを基準画像とし、その基準画像とリアルタイムで取得される正面像との位置ずれを算出する。これにより、マルチスキャンでの撮影開始時に取得した正面像に対する位置ずれ情報が得られる。
【0082】
上記のようにして、位置ずれが検出されると、制御部70は、過去に撮影した際のスキャンライン28の位置と、現在のスキャンライン28の位置との位置ずれが補正されるように、光スキャナ108の2つのガルバノミラーを適宜駆動制御する。これによって、走査位置が補正される。このようにして、被検眼がずれた場合であっても、走査位置が補正され、常時、撮影位置を設定した部位と同一の部位の断層像が取得される。従って、加算平均処理に用いることのできる断層像が増加し、取得される断層像の画質の向上に繋がる。また、検者によって選択された撮影位置と異なる部位を撮影してしまう可能性を低くし、断層像の取得ミスの低減に繋がる。
【0083】
なお、上記トラッキング制御において、2つの画像間の位置ずれを検出する手法としては、上記記載の加算平均処理と同様にして、種々の画像処理手法(各種相関関数を用いる方法、フーリエ変換を利用する方法、特徴点のマッチングに基づく方法)を用いることが可能である。
【0084】
図3に示されるように、スキャンパターン及び走査位置が設定され、撮影が開始されると、各スキャンパターンの撮影位置において、複数の断層像の撮影を開始する。
【0085】
例えば、モニタ75上には、正面像60、断層像65が表示される。正面像60には、現在取得中の正面像が表示されている。断層像65には、複数のスキャンラインによって構成されるマルチスキャンの内で、スキャンライン28の位置で取得されている断層像(加算平均処理が行われていない断層像)が表示される。すなわち、スキャンライン28は、マルチスキャンを構成する各スキャンラインの内で、現在の断層像の撮影位置を示している。
【0086】
また、パラメータ41、数値表示41a、ポーズスイッチ43、ネクストスイッチ45、リトライスイッチ47、が表示される。
【0087】
パラメータ41は、加算平均処理に用いた断層像のフレーム枚数を示している。パラメータ41は、加算平均処理の進行状況を把握するために用いられる。例えば、パラメータ41は、スキャンライン28において、加算平均処理が実行された断層像のフレーム枚数をグラフィック表示したものである。すなわち、制御部70は、スキャンライン28における断層像の加算平均処理のフレーム枚数が増加するとともに、パラメータ41の斜線部(ハッチング部)を増加させる。また、数値表示41aは、加算平均処理が実行された断層像のフレーム枚数を数値で表示したものである。例えば、各スキャンラインの撮影位置における断層像の取得フレーム枚数が10フレームである場合において、加算平均処理が実行された断層像のフレーム枚数が4枚であるとすると、制御部70は、数値表示41aに4/10と表させる。
【0088】
ポーズスイッチ43は、断層像取得中の撮影位置において、断層像を記憶させる制御を一時的に停止させるために用いられる(詳細は後述する)。ネクストスイッチ45は、断層像取得中の撮影位置における撮影を終了させ、次の撮影動作に移行させるために用いられる(詳細は後述する)。リトライスイッチ47は、断層像取得中の撮影位置における断層像を記憶させる制御を初めからやり直すために用いられる。従って、断層像取得中の撮影位置におけるメモリ72に記憶された断層像が消去される(詳細は後述する)。
【0089】
撮影が開始されると、制御部70は、設定された撮影位置に基づく複数の断層像を取得し、メモリ72へ断層像を記憶させる。制御部70は、撮影動作中において、第1操作信号を受信した場合に、第1操作信号が受信されるまでの間にメモリ72に記憶された複数の断層像から複合画像を取得する。また、制御部70は、第2操作信号を受信した場合に、次の撮影動作に移行させる。
【0090】
例えば、検者は、スキャンライン28において、パラメータ41や数値表示41aを確認し、加算平均処理の進行状態が遅い場合や停止状態である場合に、操作部74を操作して、ポーズスイッチ43を選択する。スキャンライン28において、複数の断層像を取得中に、検者によって操作部74が操作され、ポーズスイッチ43が選択されると、一時停止信号が出力される。制御部70は、一時停止信号を受信すると、メモリ72へ断層像を記憶させる制御を一時的に停止させる。制御部70は、一時停止信号が受信されるまでの間にメモリ72に記憶された複数の断層像から複合画像を取得し、取得された複合画像を出力する。なお、本実施例においては、複合画像として、複数の断層像の加算平均処理によって取得される加算平均画像が取得される。なお、本実施例においては、複合画像として、加算平均画像を用いる構成としたがこれに限定されない。例えば、複合画像としては、超解像度画像処理(例えば、特願2011−173028参照)をして取得する超解像画像、差分処理によって取得される差分画像等が挙げられる。
【0091】
制御部70は、スキャンライン28において、メモリ72に記憶された断層像を加算平均処理し、加算平均画像を取得する。制御部70は、取得した加算平均画像をモニタ75上に表示する。
図4は、一時停止時の撮影画面の一例を示す図である。
【0092】
モニタ75上において、制御部70は、ポーズスイッチ43からリスタートスイッチ46へと表示スイッチを変更する。リスタートスイッチ46は、一時停止状態から、メモリ72へ断層像を記憶させる制御を開始するために用いられる。また、断層像65には、スキャンライン28における一時停止時までに取得された断層像の加算平均処理によって取得された加算平均画像が表示される。従って、
図3の断層像65よりも
図4の断層像65は、ノイズが除去された断層像(点線部の少ない断層像)が表示される。
【0093】
ここで、例えば、検者は、加算平均画像を確認することによって、加算平均処理の進行状態が遅い場合や停止状態である場合等の撮影状態が良好でない原因を確認することができる。すなわち、検者は、装置における各部材の調整状態の確認や、装置と被検眼とのアライメント状態の確認、検者の開瞼状態の確認等を行うことができる。そして、検者は、装置における各部材の調整や、装置と被検眼とのアライメント調整、被検眼の状態の調整等を行うことによって、撮影状態を良好にする。このように、断層像の撮影中に一時停止し、撮影中の断層像(加算平均画像)を確認することができるため、容易に撮影を成功させることができる。もちろん、本発明においては、撮影状態の良否に関わらず、断層像取得中においても、一時停止し、撮影中の断層像を確認することに用いることもできる。すなわち、一時停止後、必ずしも各種の調整を行う必要はない。
【0094】
次いで、検者は、加算平均画像を確認し、操作部74を操作して、ネクストスイッチ45、リスタートスイッチ46、リトライスイッチ47の何れかを選択して、次の撮影動作に移行する。
【0095】
例えば、検者によって、操作部74が操作され、ネクストスイッチ45が選択されると、撮影位置変更信号が出力される。制御部70は、撮影位置変更信号を受信すると、次の撮影動作として、加算平均処理が予め設定された断層像のフレーム枚数にて取得されていない場合であっても、その撮影位置(第1撮影位置)での撮影を終了させ、次の撮影位置(第2撮影位置)へと断層像の撮影位置を変更する。このとき、スキャンライン28の撮影位置において、一時停止時に取得された加算平均画像がスキャンライン28における断層像として、メモリ72に記憶される。
図5は、撮影位置が変更された場合の撮影画面の一例を示している。
図5に示されるように、制御部70は、断層像の撮影位置をスキャンライン28からスキャンライン29へと変更する。制御部70は、スキャンライン29の撮影位置において、複数の断層像の取得を開始する。なお、すべての撮影位置での撮影が完了している場合には、撮影位置を変更することなく、撮影を終了する。このような構成によって、所定の撮影位置での設定されたフレーム枚数の断層像撮影が完了していない場合であっても、次の撮影位置への撮影に移行できるため、スムーズに次の撮影を行うことができる。特に、複数の撮影位置において、断層像を取得するスキャンパターンにおいて、スムーズに撮影を完了することができるため有用である。従って、撮影が完了していない場合であっても、加算平均画像がある程度良好であった場合に、次の撮影位置に移行でき、ストレスなく容易に撮影を完了できるため利便性が高い。
【0096】
例えば、検者によって、操作部74が操作され、リスタートスイッチ46が選択されると、撮影再開信号が出力される。制御部70は、撮影再開信号を受信すると、次の撮影動作として、一時停止時に断層像を取得していた撮影位置において、メモリ72へ断層像を記憶させる制御を再開する。また、制御部70は、一時停止信号を受信するまでにメモリ72に記憶された断層像の取得枚数より断層像を追加して記憶させる。
図6は、断層像を記憶させる制御を一時停止状態から再開した場合の撮影画面の一例を示している。すなわち、
図6に示されるように、制御部70は、スキャンライン28において、一時停止状態から断層像の撮影を再開する。このとき、断層像のフレーム枚数は、一時停止状態のフレーム枚数より、追加されてメモリ72に記憶される。例えば、制御部70は、一時停止時までに、メモリ72に記憶され、加算平均処理が行われた断層像のフレーム枚数が4フレームであった場合に、再開時にメモリ72に記憶される断層像は、5フレーム目の断層像として記憶される(
図6のパラメータ41及び数値表示41a参照)。制御部70は、断層像を追加してメモリ72に記憶させていき、予め設定されたフレーム枚数(例えば、
図6においては10フレーム)に到達した場合に、次の撮影位置へと撮影位置を変更する。このような構成によって、断層像の撮影途中から再開可能であるため、断層像の取得時間を短縮することができる。
【0097】
例えば、検者によって、操作部74が操作され、リトライスイッチ47が選択されると、再撮影信号が出力される。制御部70は、再撮影信号を受信すると、次の撮影動作として、一時停止時に断層像を取得していた撮影位置において、メモリ72へ断層像を記憶させる制御を再開する。このとき、制御部70は、一時停止時までに、メモリ72に記憶された断層像の取得枚数をリセットし、再度、メモリ72に断層像を記憶させる。
図7は、断層像を記憶させる制御を一時停止状態から再開し、再度、再撮影を行う場合の撮影画面の一例を示している。
図7に示されるように、制御部70は、スキャンライン28において、一時停止状態から断層像の撮影を再開する。このとき、制御部70は、一時停止時までに、メモリ72に記憶された断層像を消去する。そして、制御部70は、再度、1フレーム目より断層像をメモリ72に記憶させていく(
図7のパラメータ41及び数値表示41a参照)。制御部70は、断層像をメモリ72に記憶させていき、予め設定されたフレーム枚数に到達した場合に、次の撮影位置へと撮影位置を変更する。このような構成によって、一時停止時までに取得した断層像が良好でない場合(例えば、加算平均処理の基準画像(断層像)が良好でなかった場合)に、再度、最初から再撮影を行うことができるため、良好な断層像を容易に取得できる。
【0098】
なお、本実施例においては、一時停止状態であっても、トラッキング制御を継続して行う。一時停止中であってもトラッキング制御を行うことによって、例えば、一時停止状態から断層像の撮影を再開する場合や、次の撮影位置にて断層像の撮影を行う場合に、撮影位置を再設定する必要がないため、スムーズに撮影動作に移行することができる。なお、一時停止状態の間は、トラッキング制御を停止させるようにしてもよい。この場合、例えば、一時停止状態から断層像の撮影を再開する場合や、次の撮影位置にて断層像の撮影を行う場合に、一時停止前にメモリ72に記憶された正面像と現在の正面像との位置ずれに基づいて、トラッキング制御が行われる。
【0099】
制御部70は、各スキャンラインにおいて、順に断層像の取得を行う。制御部70は、各スキャンラインにおける撮影位置において、加算平均画像が取得されると、撮影を終了する。
【0100】
以上のような構成によって、断層像取得途中の断層像を確認することができるため、わざわざ、撮影を終了させ、撮影画面から確認画面や解析画面に移行した後に、、取得された画像にて確認をする必要がない。また、撮影の途中で、撮影状態の調整を確認や調整を行うことができる。従って、本発明は、撮影時間を短縮できるとともに、検者や被検者の負担を軽減することができる。また、容易に良好な断層像を取得することができる。
【0101】
<変容例>
なお、本実施例において、制御部70は、設定された複数の撮影位置において、撮影動作中に第1操作信号(例えば、一時停止信号)を受信した場合に、一時停止させ、第2操作信号(例えば、撮影位置変更信号)を受信した場合に、次の撮影動作に移行させる構成としたがこれに限定されない。第1操作信号と第2操作信号が兼用される構成としてもよい。この場合、制御部70は、撮影動作中に撮影位置変更信号を受信した場合に、一時停止させることなく、次の撮影位置に撮影位置を変更させる。このような構成とすることによって、検者は、所定の撮影位置にて撮影中であっても、任意に次の撮影位置の撮影に移行させることが可能となるため、撮影時間を短縮し、スムーズに撮影を完了することができる。また、検者が任意に撮影動作を調整できるため、利便性が高くなる。
【0102】
また、制御部70は、撮影動作中に再撮影信号を受信した場合に、一時停止させることなく、メモリ72に記憶された断層像の取得枚数をリセットし、再度、初めから、メモリ72に断層像を記憶させるようにしてもよい。このような構成とすることによって、検者は、例えば、加算平均処理の基準画像(断層像)取得時の撮影位置に対して、現在の撮影位置がずれてしまい、加算平均処理の進行状態が良好でない場合に、有用である。すなわち、加算平均処理に用いられる基準画像の再取得が行われるため、現在の撮影位置において取得される断層像が基準画像として新たに再設定される。このため、基準画像と現在の断層像との撮影位置のずれがなくなり、撮影状態が改善される。これによって、撮影時間を短縮し、スムーズに撮影を完了することができる。
【0103】
なお、本実施例において、被検眼上で設定された異なる複数の撮影位置にて、光スキャナ103を制御して、測定光を走査し、各撮影位置にて複数の断層像を取得する構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。設定された撮影位置に基づく複数の断層像を取得する構成であれば適用可能である。例えば、単一のスキャンにおいても適用可能である。すなわち、本発明をラインスキャンにて適用する場合、制御部70は、設定されたラインスキャンの撮影位置にて、複数の断層像の取得を行う。特に、本発明は、加算平均処理に用いる断層像のフレーム枚数(例えば、120フレーム)を多くする場合には、撮影時間がかかるため、上記記載のように有用となる。
【0104】
なお、本実施例においては、一時停止時において、撮影途中であっても次の撮影位置に移行する場合において、撮影途中であった撮影位置における一時停止時までに取得された断層像によって、加算平均画像を取得し、撮影画像として、メモリ72に記憶させる構成としたがこれに限定されない。次の撮影位置に移行時には、撮影位置移行前の撮影位置における加算平均画像を撮影画像として記憶しない構成としてもよい。例えば、制御部70は、撮影の一時停止状態から、次の撮影位置に移行させる制御を実行する場合に、一時停止状態時に撮影を行っていた撮影位置において取得された撮影画像を記憶させない。そして、制御部70は、次の撮影位置に移動する際に、メモリ72より一時停止状態時に撮影を行っていた撮影位置において取得された断層像を消去する。この場合、撮影完了後、複数の撮影位置の内で、一時停止を行った撮影位置における加算平均画像(断層像)は、取得されていない。検者は、必要があれば、再撮影を行うことによって、一時停止を行った撮影位置における加算平均画像を取得する。このような構成によって、撮影の進行状態が遅い撮影位置をとばして撮影を行うことができるため、スムーズに撮影を行うことができる。
【0105】
なお、本実施例において、撮影途中(一時停止時)において、加算平均処理に用いられる断層像のフレーム枚数を変更する構成としてもよい。この場合、検者が任意のフレーム枚数に変更可能な構成としてもよいし、所定の撮影位置における撮影時間が所定の時間経過した時点で、制御部70が自動的にフレーム枚数を変更する構成としてもよい。これによって、スムーズに撮影を完了することができる。
【0106】
なお、本実施例においては、眼科撮影装置として、眼底を撮影する光断層像撮影装置について説明したがこれに限定されない。本発明は、前眼部の断層像を撮影する光断層像撮影装置においても、適用可能である。
【0107】
なお、本発明においては、本実施例に記載した装置に限定されない。例えば、上記実施例の機能を行う眼科撮影ソフトウェア(プログラム)をネットワークや各種記憶媒体を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置のコンピュータ(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。