(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置を表す模式的断面図である。
図2は、本実施形態にかかるトイレ装置の要部構成を表すブロック図である。
図2は、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
【0019】
図1に表したトイレ装置10は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、トイレ装置本体400と、便座200と、便蓋300と、を備える。便座200と便蓋300とは、トイレ装置本体400にそれぞれ取り付けられ、トイレ装置本体400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。言い換えれば、便座200と便蓋300とは、便器800に対してそれぞれ開閉可能である。但し、便器800は、必ずしも設けられていなくともよい。
【0020】
便器800は、ボウル部801を有する。便蓋300が閉じている状態では、ボウル部801は、便蓋300により覆われる。ボウル部801の表面には、光触媒層(「光触媒膜」ともいう)803が形成されている。
【0021】
本願明細書において、「光触媒」とは、光を照射すると、酸化作用および還元作用の少なくともいずれかが促進されるものをいう。その結果、雑菌や細菌や臭気物質などの有機物を分解する分解作用と、表面が水に濡れやすい親水作用と、菌の繁殖を抑制するあるいは菌の活動を停止させる抗菌作用と、を得ることができる。光触媒層803が形成されたボウル部801は、汚物の付着を抑制したり、汚物を分解したり、付着した水垢を容易に除去できるため、便器800の清掃負担を軽減し、きれいな便器800を維持することができる。
【0022】
具体的には、光触媒層803が形成されたボウル部801の表面に紫外線を照射すると、その紫外線および空気中の水や酸素などにより、ボウル部801の表面に活性酸素が発生する。その活性酸素は、ボウル部801の表面に付着した汚れや雑菌や細菌や臭気物質などを分解する。また、その活性酸素は、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)なども分解する。そのため、光触媒の分解作用により、ボウル部801の表面の抗菌や防汚や防臭を行うことができる。
【0023】
また、光触媒層803が形成されたボウル部801の表面に紫外線を照射すると、その表面には周囲の水との結合による親水基(−OH)が表出する。これにより、ボウル部801の表面は、水になじむようになり、濡れやすくなる(親水作用)。すなわち、ボウル部801の表面には水滴ができず、水が表面に濡れ広がるようになる。そして、予めボウル部801の表面を親水化することにより、汚れは、ボウル部801の表面に濡れ広がった水の表面に付着することになる。さらに、ボウル部801の洗浄に用いる洗浄水がボウル部801の表面とその表面に付着した汚れとの間に入り込み、汚れを浮かして流す。そのため、光触媒の親水作用により、ボウル部801の表面の防汚や防曇が可能となる。
【0024】
これらによれば、紫外線の照射と、光触媒の分解作用、親水作用および抗菌作用と、の相乗効果により効果的にボウル部801の抗菌や防汚や防臭を行うことができる。このような「光触媒」の材料としては、例えば、金属の酸化物を用いることができる。そのような酸化物としては、例えば、酸化チタン(TiO
X)、酸化亜鉛(ZnO
X)、酸化スズ(SnO
X)、酸化ジルコニウム(ZrO
X)などを挙げることができる。これらのうちでも、特に、酸化チタンは、光触媒として活性であり、また、安定性や安全性などの点でも優れる。
【0025】
本願明細書において、「紫外線」とは、波長が約388nm以下の光をいう。本実施形態の光触媒層803は、波長が約388nm以下の紫外線をより多く吸収する特性を有する。つまり、本実施形態の光触媒層803は、波長が約388nm以下の紫外線が照射されると励起され、光触媒活性を発現する。光触媒層803の具体例については、後に詳述する。なお、本実施形態では、光触媒層803は、必ずしも設けられていなくともよい。
【0026】
図1に表したように、便蓋300は、光源装置310を有する。光源装置310は、便蓋300の内部に設けられている。但し、光源装置310の設置形態は、これだけに限定されるわけではない。例えば、光源装置310は、トイレ装置本体400の内部に設けられていてもよいし、トイレ装置本体400の表面に付設されていてもよいし、便座200の裏面もしくはクッション部に付設されてもよい。光源装置310は、ボウル部801に紫外線を含む光を照射することができる。光源装置310としては、例えば冷陰極管やLED(Light Emitting Diode)などが用いられる。
【0027】
図2に表したように、例えばトイレ装置本体400の内部には、制御部410と、入室検知センサ451と、人体検知センサ453と、着座検知センサ455と、便蓋開閉検知センサ457と、便蓋開閉駆動装置420と、が設けられている。制御部410は、例えば入室検知センサ451、人体検知センサ453あるいは着座検知センサ455から送信される検知信号に基づいて制御信号を送信し、便蓋開閉駆動装置420や光源装置310などの動作を制御することができる。
【0028】
入室検知センサ451は、トイレ室(トイレルーム)のドアを開けて入室した直後の使用者や、トイレ室に入室しようとしてドアの前に存在する使用者を検知することができる。つまり、入室検知センサ451は、トイレ室に入室した使用者だけではなく、トイレ室に入室する前の使用者、すなわちトイレ室の外側のドアの前に存在する使用者を検知することができる。このような入室検知センサ451としては、焦電センサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。マイクロ波のドップラー効果を利用したセンサや、マイクロ波を送信し反射したマイクロ波の振幅(強度)に基づいて被検知体を検出するセンサなどを用いた場合、トイレ室のドア越しに使用者の存在を検知することが可能となる。つまり、トイレ室に入室する前の使用者を検知することができる。
【0029】
人体検知センサ453は、便器800の前方にいる使用者、すなわち便座200から前方へ離間した位置に存在する使用者を検知することができる。つまり、人体検知センサ453は、トイレ室に入室して便座200に近づいてきた使用者を検知することができる。このような人体検知センサ453としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサもしくは焦電センサなどを用いることができる。
【0030】
着座検知センサ455は、使用者が便座200に着座する直前において便座200の上方に存在する人体や、便座200に着座した使用者を検知することができる。すなわち、着座検知センサ455は、便座200に着座した使用者だけではなく、便座200の上方に存在する使用者を検知することができる。このような着座検知センサ455としては、例えば、赤外線投受光式の測距センサもしくは着座スイッチなどを用いることができる。
【0031】
便蓋開閉検知センサ457は、便蓋300の開閉状態を検知することができる。便蓋開閉検知センサ457としては、例えば、ホールICと磁石との組み合わせ、またはマイクロスイッチなどが用いられる。
便蓋開閉駆動装置420は、制御部410から送信された信号に基づいて便蓋300を開いたり閉じたりすることができる。
【0032】
本実施形態にかかるトイレ装置10は、給水手段401から供給された水をおしり洗浄ノズル439に導く第1の流路23を有する。第1の流路23の上流側には、分岐金具403が設けられている。第1の流路23は、分岐金具403により、おしり洗浄ノズル439へ洗浄水などを導く流路(第1の流路23)と、洗浄手段810へ洗浄水を導く第2の流路25と、に分岐される。分岐金具403の下流における第1の流路23には、第1のバルブ413aが設けられている。一方、分岐金具403の下流における第2の流路25には、第2のバルブ413bが設けられている。第1のバルブ413aおよび第2のバルブ413bは、開閉可能な電磁バルブであり、制御部410からの指令に基づいて水の供給を制御する。
【0033】
洗浄手段810は、ボウル部801の表面を洗浄する。ボウル部801の表面を洗浄する洗浄水は、第1の流路23および第2の流路25を通して給水手段401により供給される。使用者が便器洗浄の操作を行うと、あるいは使用者が便座200から立ち上がって所定時間が経過することで、便器洗浄すなわちボウル部801の表面を洗浄する動作が自動的に実行される。便器洗浄が開始されると、リム吐水とジェット吐水とによりボウル部801に吐出された洗浄水は、ボウル部801の洗浄を行いつつトラップ806(
図1参照)に満たされる。これにより、サイホンが発生する。そして、トラップ806に吐出された洗浄水は、溜水805(
図1参照)の中にある汚物などを、トラップ806を通して外へ排出する。続いて、洗浄水がボウル部801へ再び供給されることにより、溜水805が確保される。このようにして、ボウル部801の表面が洗浄される。
なお、前述した洗浄動作は、本実施形態にかかるトイレ装置10の洗浄動作の一例であり、これだけに限定されるわけではない。
【0034】
第1のバルブ413aの下流には、熱交換器ユニット415が設けられている。熱交換器ユニット415は、図示しない温水ヒータを有し、供給された水を加熱して所定の温水にする。
【0035】
熱交換器ユニット415の下流には、殺菌水生成装置440が設けられている。殺菌水生成装置440は、例えば次亜塩素酸などを含む殺菌水(機能水)を生成する。殺菌水生成装置440の具体例については、後に詳述する。殺菌水生成装置440の下流には、VB(バキュームブレーカ)付きストレーナ419が設けられている。VB付きストレーナ419を通過した洗浄水は、電磁ポンプ435および流量調整弁437を介しておしり洗浄ノズル439へ導かれる。そして、洗浄水は、おしり洗浄ノズル439に設けられた図示しない吐水口から便座200に着座した使用者の「おしり」などへ向かって噴射される。
なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0036】
流量調整弁437は、おしり洗浄ノズル439や噴霧ノズル(噴霧手段、ケイ酸成分重合抑制手段)473への給水の開閉や切替を行う。第1の流路23は、流量調整弁437により、おしり洗浄ノズル439へ洗浄水などを導く流路(第1の流路23)と、噴霧ノズル473へ洗浄水や酸性水などを導く第3の流路27と、に分岐される。
【0037】
第3の流路27の上流側には、酸性水生成装置(ケイ酸成分重合抑制手段)120が設けられている。酸性水生成装置120の具体例については、後に詳述する。酸性水生成装置120の下流側には、流路切替弁432が設けられている。
【0038】
本実施形態では、流路切替弁432は、酸性水生成装置120から供給されたアルカリ性水を便器800の排水管に直接排出する。これによれば、アルカリ性水が便器800のボウル部801の表面に接触することがない。そのため、アルカリ性水が酸性水の殺菌作用を低減させることを抑制することができる。
あるいは、流路切替弁432は、本実施形態の水垢抑制効果を阻害しない範囲内において酸性水生成装置120から供給されたアルカリ性水を便器800へ流してもよい。
【0039】
また、流路切替弁432は、酸性水生成装置120から供給された酸性水を金属イオン水生成装置(ケイ酸成分重合抑制手段)130へ導く。続いて、金属イオン水生成装置130は、酸性水生成装置120により生成された酸性水を使用し金属イオン酸性水(ケイ酸成分重合抑制剤)を生成する。金属イオン水生成装置130により生成された金属イオン酸性水は、噴霧ノズル473へ導かれる。
【0040】
図1に表したように、噴霧ノズル473は、トイレ装置本体400に設けられている。噴霧ノズル473は、トイレ装置本体400の内部に設けられていてもよいし、トイレ装置本体400の外部に付設されていてもよい。噴霧ノズル473は、殺菌水生成装置440から供給された殺菌水、あるいは金属イオン水生成装置130から供給された金属イオン酸性水をボウル部801へ噴霧する。
【0041】
ここで、一般的には、種々の形状の便器800が存在する。また、殺菌水が便器800の外部に飛び散ると例えばトイレルームの床などが濡れるため、このようなことを防止する必要がある。そのため、殺菌水を便器800のボウル部801に万遍なく噴霧し、便器800の縁の裏などに噴霧することは困難である。
【0042】
そのため、例えば便器800のリム部821の裏面(ボウル部801を臨む面)823(例えば便器800の後部のリム部821の裏面823)などのように、便器800の洗浄水が比較的流れにくいところには、噴霧された殺菌水が行きわたりにくい。そのため、便器800の洗浄水が比較的流れにくいところには、カビや菌などが繁殖するおそれがある。すると、その部分が起点となり、便器800が汚れるおそれがある。
【0043】
これに対して、本実施形態の制御部410は、便蓋300を閉じ、光源装置310からボウル部801の表面に対して紫外線を照射し、紫外線の照射中に噴霧ノズル473から殺菌水を噴霧する動作を開始する制御を実行する。あるいは、本実施形態の制御部410は、便蓋300を閉じ、光源装置310からボウル部801の表面に対して紫外線を照射し、紫外線の照射が終了してから所定時間内に噴霧ノズル473から殺菌水を噴霧する動作を開始する制御を実行する。ここで、「所定時間」とは、便器800と便蓋300とで囲まれた空間の温度差が略ゼロとなるまでの時間をいうものとする。
【0044】
これによれば、光源装置310から発生する熱により、便器800と便蓋300とで囲まれた空間において熱の流れが発生する。具体的には、
図1に表した矢印A1〜矢印A5のように、光源装置310から発生する熱により温められた空気は、上方へ流れ、さらに、
図1に表した矢印A6のように、便蓋300とトイレ装置本体400との間を流れ、トイレ装置10の外部へ排出される。これにより、便器800と便蓋300とで囲まれた空間において、上昇気流が発生する。
【0045】
すると、
図1に表した矢印A7のように、上昇気流の影響により、便器800と便蓋300とで囲まれた空間の空気よりも冷たい空気が、トイレ装置10の前側の外部から便蓋300と便座200との間を通って便器800と便蓋300とで囲まれた空間へ入り込む。これにより、便器800と便蓋300とで囲まれた空間において、トイレ装置10の前側から後側へ向かって空気の流れが発生する。
【0046】
噴霧ノズル473から噴霧された殺菌水は、ミストとして噴霧される。ミストの粒径には分布があるため、粒径が約100μm以下の小さいミストは、空気の流れに乗ってリム部821の裏面823(例えば便器800の後部のリム部821の裏面823)まで行きわたる。また、光源装置310がボウル部801の表面に対して紫外線を照射するため、トイレ装置10のうちで相対的に汚れが付着しやすいボウル部801の表面をより殺菌することができる。これにより、ボウル部801の表面だけではなくリム部821の裏面823を含め、便器800のボウル部801の略全面を清潔に維持することができる。
なお、光源装置310が紫外線を照射した状態において、便器800と便蓋300とで囲まれた空間の温度分布については、後に詳述する。
【0047】
また、
図1に表したように、光源装置310は、便蓋300の略中心部に設けられている。つまり、光源装置310のうちの少なくとも一部は、便蓋300の略中心部に設けられている。
これによれば、トイレ装置10の前側の外部から便蓋300と便座200との間を通って入り込んだ冷たい空気は、光源装置310により比較的早く温められる。そのため、空気の流れは、光源装置310が便蓋300の略中心部以外の位置に設けられた場合と比較して速い。そのため、噴霧ノズル473から噴霧された殺菌水は、リム部821の裏面823(例えば便器800の後部のリム部821の裏面823)までより行きわたりやすい。これにより、ボウル部801の表面だけではなくリム部821の裏面823を含め、便器800のボウル部801の略全面をより清潔に維持することができる。
【0048】
また、光触媒層803がボウル部801の表面に形成されているため、光触媒層803による殺菌効果と殺菌水による殺菌効果とで、より清潔なトイレ装置10を提供することができる。
【0049】
また、前述した洗浄動作が終了した後にボウル部801に残った残水が蒸発してボウル部801の表面が乾燥すると、水垢がボウル部801に付着することがある。通常、残水中の水分が蒸発する過程でケイ酸濃度が増加すると、ケイ酸の重合が促進される。これにより、コーヒーステイン現象(液滴中の溶媒の蒸発によって溶質が液滴の外郭へ流動しリング状に堆積する現象)が起き、強固な水垢が形成される。水垢がボウル部801に付着すると、ボウル部801が汚れてしまう。また、水垢はボウル部801に強固に付着しているため、水垢を取り除くことは難しい。
【0050】
さらに、前述した殺菌水の噴霧の場合と同様に、ケイ酸成分重合抑制剤を便器800のボウル部801に万遍なく噴霧し、便器800の縁の裏などに噴霧することは困難である。そのため、例えば便器800のリム部821の裏面823(例えば便器800の後部のリム部821の裏面823)などのように、便器800の洗浄水が比較的流れにくいところには、噴霧されたケイ酸成分重合抑制剤が行きわたりにくい。そのため、便器800の洗浄水が比較的流れにくいところには、ケイ酸成分が付着するおそれがある。すると、その部分において、水垢が生成し、表面が撥水化するおそれがある。
【0051】
これに対して、本実施形態の制御部410は、便蓋300を閉じ、光源装置310からボウル部801の表面に対して紫外線を照射し、紫外線の照射中に噴霧ノズル473からケイ酸成分重合抑制剤を噴霧する動作を開始する制御を実行する。あるいは、本実施形態の制御部410は、便蓋300を閉じ、光源装置310からボウル部801の表面に対して紫外線を照射し、紫外線の照射が終了してから所定時間内に噴霧ノズル473からケイ酸成分重合抑制剤を噴霧する動作を開始する制御を実行する。
【0052】
これによれば、前述した殺菌水の噴霧の場合と同様に、噴霧ノズル473から噴霧されたケイ酸成分重合抑制剤は、空気の流れに乗ってリム部821の裏面823(例えば便器800の後部のリム部821の裏面823)まで行きわたる。
【0053】
ケイ酸成分重合抑制剤は、例えば金属イオンを含む酸性度の高い水溶液(酸性水)である。つまり、本実施形態にかかるトイレ装置10は、ボウル部801に残った残水を、金属イオンを含む酸性度の高い水溶液に置き換える。あるいは、本実施形態にかかるトイレ装置10は、ボウル部801に残った残水に酸性度の高い水溶液又は金属イオンを含む酸性度の高い水溶液を添加する。
【0054】
これによれば、ケイ酸の重合を抑制し水垢の生成を抑制することができる。また、生成した水垢を容易に除去することができる。また、ボウル部801の表面だけではなくリム部821の裏面823を含む面において、光触媒層803が形成された便器800の撥水化の原因となるケイ酸成分による水垢を抑制することができる。
【0055】
次に、本実施形態にかかるトイレ装置10の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図3は、本実施形態にかかるトイレ装置の動作の具体例を例示するタイミングチャート図である。
【0056】
例えば使用者がトイレルームに入室すると、入室検知センサ451は、トイレルームに入室した人体を検知し制御部410へ信号を送信する(タイミングt1)。すると、便蓋開閉駆動装置420は、制御部410から送信された信号に基づいて便蓋300を開く。これにより、便蓋開閉検知センサ457は、便蓋300が開いたことを検知する(タイミングt1)。
【0057】
このとき、光源装置310が紫外線を照射している場合には、制御部410は、入室検知センサ451の検知信号に基づいて光源装置310の動作を停止させ、光源装置310からの紫外線の照射を停止させる(タイミングt1)。
【0058】
続いて、使用者が便座200に着座すると、着座検知センサ455は、便座200に着座した使用者を検知する(タイミングt2)。使用者は、排泄行為を終了した後、便座200から離座する。すると、着座検知センサ455は、使用者が便座200に着座していないことを検知し制御部410へ信号を送信する(タイミングt3)。
【0059】
続いて、使用者がトイレルームから退室すると、入室検知センサ451は、トイレルームに人体が存在しないことを検知し制御部410へ信号を送信する(タイミングt4)。入室検知センサ451がトイレルームに人体が存在しないことを検知してから第1の所定時間(タイミングt4〜t5の時間)が経過すると、便蓋開閉駆動装置420は、制御部410から送信された信号に基づいて便蓋300を閉じる。これにより、便蓋開閉検知センサ457は、便蓋300が閉じたことを検知する(タイミングt5)。
【0060】
続いて、便器800が使用されない時間が第2の所定時間(タイミングt5〜t6の時間)を経過すると、光源装置310は、制御部410から送信された信号に基づいて、紫外線をボウル部801に照射する(タイミングt6〜t9)。タイミングt6〜t9における紫外線の照射時間は、例えば約1〜2時間程度である。
【0061】
続いて、便蓋300が開いたことを便蓋開閉検知センサ457が検知した直後、もしくは、紫外線の照射中(タイミングt6〜t9の間)に、殺菌水生成装置440は、制御部410から送信された信号に基づいて殺菌水の生成を開始する(タイミングt7)。また、制御部410から送信された信号に基づいて、第1のバルブ413aが開く。また、流量調整弁437は、制御部410から送信された信号に基づいて、水を第3の流路27へ導く状態に切り替える。これにより、殺菌水生成装置440において生成された殺菌水が、噴霧ノズル473からボウル部801の表面に噴霧される(タイミングt7〜t8)。
【0062】
あるいは、紫外線の照射中(タイミングt6〜t9の間)に、酸性水生成装置120は、制御部410から送信された信号に基づいて酸性水の生成を開始する(タイミングt7)。また、第1のバルブ413aおよび流量調整弁437は、前述した動作と同様の動作を行う。これにより、金属イオン水生成装置130から供給された金属イオン酸性水が噴霧ノズル473からボウル部801の表面に噴霧される(タイミングt7〜t8)。
【0063】
続いて、便器800が使用されない時間が第3の所定時間(例えば約8〜10時間程度)を経過すると(タイミングt9〜t10)、光源装置310は、制御部410から送信された信号に基づいて、紫外線をボウル部801に再び照射する(タイミングt10〜t13)。タイミングt10〜t13における紫外線の照射時間は、例えば約1〜2時間程度である。
【0064】
続いて、紫外線の照射中(タイミングt10〜t13の間)に、タイミングt7〜t8に関して前述した動作と同様の動作が実行される(タイミングt11〜t12)。
【0065】
図4は、本実施形態にかかるトイレ装置の動作の他の具体例を例示するタイミングチャート図である。
タイミングt21〜t25における動作は、
図3に表したタイミングt1〜t5に関して前述した動作と同様である。
【0066】
続いて、便器800が使用されない時間が第4の所定時間(タイミングt25〜t26の時間)を経過すると、光源装置310は、制御部410から送信された信号に基づいて、紫外線をボウル部801に照射する(タイミングt26〜t27)。タイミングt26〜tにおける紫外線の照射時間は、例えば約1〜2時間程度である。
【0067】
続いて、紫外線の照射が終了してから第5の所定時間内(タイミングt27から所定時間内)に、殺菌水生成装置440は、制御部410から送信された信号に基づいて殺菌水の生成を開始する(タイミングt28)。また、制御部410から送信された信号に基づいて、第1のバルブ413aが開く。また、流量調整弁437は、制御部410から送信された信号に基づいて、水を第3の流路27へ導く状態に切り替える。これにより、殺菌水生成装置440において生成された殺菌水が、噴霧ノズル473からボウル部801の表面に噴霧される(タイミングt28〜t29)。
【0068】
あるいは、紫外線の照射が終了してから第5の所定時間内(タイミングt27から所定時間内)に、酸性水生成装置120は、制御部410から送信された信号に基づいて酸性水の生成を開始する(タイミングt28)。また、第1のバルブ413aおよび流量調整弁437は、前述した動作と同様の動作を行う。これにより、金属イオン水生成装置130から供給された金属イオン酸性水が噴霧ノズル473からボウル部801の表面に噴霧される(タイミングt28〜t29)。
【0069】
続いて、便器800が使用されない時間が第6の所定時間(例えば約8〜10時間程度)を経過すると(タイミングt27〜t30)、光源装置310は、制御部410から送信された信号に基づいて、紫外線をボウル部801に再び照射する(タイミングt30〜t31)。タイミングt30〜t31における紫外線の照射時間は、例えば約1〜2時間程度である。
【0070】
続いて、紫外線の照射が終了してから第7の所定時間内(タイミングt31から所定時間内)に、タイミングt28〜t29に関して前述した動作と同様の動作が実行される(タイミングt32〜t33)。
【0071】
次に、光源装置310が紫外線を照射した状態において、便器800と便蓋300とで囲まれた空間の温度分布について、図面を参照しつつ説明する。
図5は、便器と便蓋とで囲まれた空間の温度分布の測定結果の一例を例示するグラフ図である。
図5に表したグラフ図の横軸は、紫外線の照射の開始から経過した時間を表す。
図5に表したグラフ図の縦軸は、紫外線の照射の前後での温度差を表す。
【0072】
本発明者は、光源装置310からボウル部801の表面に紫外線を照射させ、便器と便蓋とで囲まれた空間の温度分布を測定した。温度分布の測定結果は、
図5に表した通りである。すなわち、紫外線の照射の開始から約60分程度が経過すると、光源装置310の付近の温度は、約7℃程度上昇した。一方、紫外線の照射の開始から約60分程度が経過すると、便座200の表面、ボウル部801の表面およびボウル部801内の温度は、約1℃程度上昇した。これにより、紫外線の照射の開始から約60分程度が経過すると、光源装置310の付近と、便座200の表面、ボウル部801の表面およびボウル部801内と、の間において、約6℃程度の温度差が生じていることが分かった。また、紫外線の照射の開始から約60分程度が経過する前でも、光源装置310の付近と、便座200の表面、ボウル部801の表面およびボウル部801内と、の間において、有意差(温度差)が生じていることが分かった。
【0073】
次に、各装置等の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図6は、本実施形態の殺菌水生成装置の具体例を例示する断面模式図である。
本実施形態の殺菌水生成装置440は、例えば電極を有する電解槽ユニットである。
【0074】
図6に表したように、本具体例の殺菌水生成装置440は、その内部に陽極板441および陰極板442を有し、制御部410からの通電の制御によって、内部を流れる水道水を電気分解できる。ここで、水道水は、塩化物イオンを含んでいる。この塩化物イオンは、水源(例えば、地下水や、ダムの水や、河川などの水)に例えば食塩(NaCl)や塩化カルシウム(CaCl
2)などとして含まれている。そのため、その塩化物イオンを電気分解することにより次亜塩素酸が生成される。その結果、殺菌水生成装置440において電気分解された水(電解水)は、次亜塩素酸を含む液に変化する。
【0075】
次亜塩素酸は、殺菌成分として機能し、その次亜塩素酸を含む液すなわち殺菌水は、アンモニアや油分などによる汚れを効率的に除去あるいは分解したり、殺菌することができる。
なお、殺菌水生成装置440において生成される殺菌水(電解水、機能水)は、銀イオンや銅イオンなどの金属イオンを含む液であってもよい。あるいは、殺菌水生成装置440において生成される殺菌水は、電解塩素やオゾンなどを含む液であってもよい。あるいは、殺菌水生成装置440において生成される殺菌水は、酸性水やアルカリ水であってもよい。あるいは、殺菌水生成装置440は、電解槽ユニットに限定されるわけではない。すなわち、殺菌水は、殺菌剤および殺菌液を水に溶解させることによって生成される殺菌水であってもよい。これらの中でも、次亜塩素酸を含む溶液は、より強い殺菌力を有する。
【0076】
図7は、本実施形態の酸性水生成装置および金属イオン水生成装置を例示する断面模式図である。
図7(a)に表したように、本実施形態の酸性水生成装置120は、その内部に陽極板124および陰極板125を有し、制御部410からの通電の制御によって、陽極板124と、陰極板125と、の間の空間(流路)を流れる水道水を電気分解できる。この際、陰極板125においては酸(H
+)が消費され、陰極板125の近傍ではpHが上昇する。すなわち、陰極板125の近傍では、アルカリ水が生成される。一方、陽極板124においてはアルカリ(OH
−)が消費され、陽極板124の近傍ではpHが下降する。すなわち、陽極板124の近傍では、酸性水が生成される。
【0077】
本具体例では、金属イオン水生成装置130において溶解する金属イオンがアルミニウムイオン(Al
3+)である場合を例に挙げて説明する。
図7(b)に表したように、本実施形態の金属イオン水生成装置130は、タンク131と、タンク131内に設置されたアルミニウム133と、を有する。酸性水生成装置120から流路切替弁432を介して供給された酸性水は、タンク131内に貯留される。そして、タンク131内に設置されたアルミニウム133は、タンク131内に貯留された酸性水により浸漬された状態となっている。
【0078】
すると、酸性水に浸漬されたアルミニウム133は、例えば約1〜2分間かけて溶解(徐溶)する。これにより、タンク131内の酸性水は、アルミニウムイオンを含む酸性水(アルミニウムイオン酸性水)となる。つまり、金属イオン水生成装置130において、金属イオン(本具体例ではAl
3+)を含む酸性度の高い水溶液が生成される。
【0079】
図8は、光触媒層の一例を例示する模式的断面図である。
光触媒層803は、バリア層803aと、機能層803bと、を有する。例えば、光触媒層803としては、TiO
2/ZrO
2系触媒焼成膜が用いられる。例えば、バリア層803aにおけるTiO
2とZrO
2との配合比率は、機能層803bにおけるTiO
2とZrO
2との配合比率とそれぞれ異なる。但し、
図8に表した光触媒層803は、一例である。本実施形態の光触媒層803は、これだけに限定されるわけではない。
【0080】
図9は、本実施形態の光触媒層の吸光特性の一例を例示するグラフ図である。
図10は、冷陰極管のスペクトルの一例を例示するグラフ図である。
図9に表したグラフ図の横軸は、波長(nm)を表す。
図9に表したグラフ図の縦軸は、吸光特性(任意単位:a.u.)を表す。
図10に表したグラフ図の横軸は、冷陰極管が放射する光の波長(nm)を表す。
図10に表したグラフ図の縦軸は、冷陰極管が放射する光の強度(a.u.)を表す。
【0081】
図9に表したように、本実施形態の光触媒層803は、波長が約400nm以下の紫外線をより多く吸収する特性を有する。つまり、本実施形態の光触媒層803は、波長が約400nm以下の紫外線が照射されると励起され、光触媒活性を発現する。また、本実施形態の光触媒層803は、波長が300nm以上の紫外線において、波長が相対的に短い紫外線に対して相対的に高い励起効率(吸光特性)を有する。
【0082】
そのため、光源装置310が比較的短い波長の紫外線をボウル部801に照射すると、ボウル部801の励起効率は、比較的高くなる。これによれば、光触媒層803の光触媒活性を効率的に発現させ、分解作用、親水作用および抗菌作用を得ることができる。そのため、分解作用、親水作用および抗菌作用を考慮すると、光源装置310は、比較的短い波長の紫外線をボウル部801に照射することがより望ましい。
【0083】
一方で、比較的短い波長の紫外線については、人体に影響を及ぼしたり、樹脂を変色あるいは劣化させることが知れられている。そのため、人体への影響や、樹脂の変色あるいは劣化などを考慮すると、光源装置310は、比較的長い波長の紫外線をボウル部801に照射することがより望ましい。
【0084】
そこで、例えば
図9に表したように、本実施形態の光源装置310は、300nm以上、350nm以下の波長に極大を有する紫外線を放射する。そして、光源装置310は、300nm以上、350nm以下の波長に極大を有する紫外線をボウル部801に照射する。
【0085】
これによれば、紫外線による人体への影響を抑制することができるとともに、励起効率が比較的高い波長の紫外線をボウル部801に照射することができる。そのため、紫外線の照射時間を比較的短くすることができる。これにより、光源装置310の長寿命化を実現することができる。また、清潔なトイレ装置を提供することができる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、トイレ装置10およびトイレ装置本体400などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや噴霧ノズル473の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。