特許第6160870号(P6160870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6160870水酸基含有重合性共重合体及びその製造方法、並びに活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160870
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】水酸基含有重合性共重合体及びその製造方法、並びに活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/58 20060101AFI20170703BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C08G63/58
   C08F290/14
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-87643(P2014-87643)
(22)【出願日】2014年4月21日
(65)【公開番号】特開2015-205996(P2015-205996A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2015年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石嶋 優樹
(72)【発明者】
【氏名】白石 広大
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 滋
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−035601(JP,A)
【文献】 特開2010−013558(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0153230(US,A1)
【文献】 特許第4262097(JP,B2)
【文献】 米国特許第04310640(US,A)
【文献】 特開昭55−152745(JP,A)
【文献】 特開2004−035600(JP,A)
【文献】 特開昭51−150595(JP,A)
【文献】 特開昭61−047728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00−64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸単独重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、および無水マレイン酸−アクリロニトリル共重合体からなる群から選択される1種以上の環状酸無水物(A)と、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルからなる群から選択される1種以上の分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有するグリシジル化合物(B)とをトリフェニルホスフィン(C)の存在下で重合反応させて得られる、水酸基含有重合性共重合体。
【請求項2】
(A)成分が無水フタル酸であり、かつ(B)成分がアリルグリシジルエーテルである、請求項1の水酸基含有重合性共重合体。
【請求項3】
さらにポリオール(D1)、ロジン類(D2)、ポリカルボン酸(D3)及び分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有しないグリシジル化合物(D4)からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応成分とする請求項1又は2の水酸基含有重合性共重合体。
【請求項4】
環状酸無水物(A)と、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有するグリシジル化合物(B)とをトリフェニルホスフィン(C)の存在下で重合反応させることを特徴とする、水酸基含有重合性共重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかの共重合体又は請求項4の製造法で得られる水酸基含有重合性共重合体と、多官能アクリレート類とを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内に水酸基と重合性炭素−炭素二重結合を併有する水酸基含有重合性共重合体及びその製造方法、並びに当該共重合体を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂組成物(以下、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物という。)は、通常、反応性希釈剤、樹脂、光重合開始剤及び添加剤から構成されており、省エネルギー型の工業材料としてコーティング剤や塗料、印刷インキなどの用途に提供されている。
【0003】
反応性希釈剤としては、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化性や被膜硬度などが優れていることから、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートやトリメチロールプロパンテトラアクリレート等の多官能アクリレートが汎用されている。また、樹脂としては、当該多官能アクリレートとの相溶性に優れる点で、ジアリルフタレート樹脂が用いられることがある(特許文献1及び2を参照)。
【0004】
しかし、ジアリルフタレート樹脂は水と混和しやすく、これを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、長時間安定な乳化物を形成するなど耐乳化性が悪い。また、ジアリルフタレート樹脂は、ジアリルフタレートモノマーを重合させたものであるが、分子内に水酸基などの官能基を有しないため更なる変性ができないといった欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−80326号公報(段落[0003]等)
【特許文献2】特開2010−100821号公報(段落[0003]等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ジアリルフタレート樹脂に代替し得る共重合体を提供することを課題とする。すなわち、水酸基を有するため各種変性が可能であり、かつ、ジアリルフタレート樹脂と同様に各種反応性希釈剤と良好に相溶し、しかも該反応性希釈剤を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に優れた硬化性及び耐乳化性を付与する新規な共重合体を提供することを主たる課題とする。
【0007】
また、本発明は、皮膜状態で良好な硬化性を示し、かつ耐乳化性にも優れる新規な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、及び該樹脂組成物から得られる硬化物を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討の結果、各種環状酸無水物とラジカル重合性のグリシジル化合物とを所定の触媒の存在下で重合反応させて得られる水酸基含有重合性共重合体がジアリルフタレート樹脂を代替可能な共重合体足り得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、環状酸無水物(A)と、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有するグリシジル化合物(B)とをトリフェニルホスフィン(C)の存在下で重合反応させて得られる水酸基含有重合性共重合体;環状酸無水物(A)と、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有するグリシジル化合物(B)とをトリフェニルホスフィン(C)の存在下で重合反応させることを特徴とする、水酸基含有重合性共重合体の製造方法;当該共重合体及び多官能アクリレート類を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物;当該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させてなる硬化物、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の共重合体は、各種反応性希釈剤、特にジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート類との相溶性に優れる。そのため、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物における反応性の粘度調整剤として有用である。また、ジアリルフタレート樹脂に比べて活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の耐乳化性を高めることができる。また、本発明の共重合体は水酸基を有するために、それを利用した樹脂の更なる変性が可能である。
【0011】
本発明の水酸基含有重合性共重合体は、水酸基を有するため各種変性が可能である。また、ジアリルフタレート樹脂と同様に各種反応性希釈剤と良好に相溶するため、不溶物がなく、硬化性及び耐乳化性に優れる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を与える。該共重合体は、ジアリルフタレート樹脂についての従来の用途、例えば紫外線硬化型インキのバインダー樹脂や、成形材料及び化粧版等の材料に供し得る。また、該共重合体は、分子内に重合性炭素−炭素二重結合と水酸基を有するため、それらを利用することにより、例えばコーティング剤等の他の用途にも供し得る。
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、硬化性と耐乳化性が良好であるため、これら属性を利用した用途として、例えば、紫外線硬化型インキ等のバインダー樹脂組成物として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る水酸基含有重合性共重合体(以下、単に共重合体ということがある。)は、環状酸無水物(A)(以下、(A)成分という。)と、分子内に重合性炭素−炭素二重結合を有するグリシジル化合物(B)(以下、(B)成分という。)とを、トリフェニルホスフィン(C)(以下、(C)成分という。)の存在下で重合反応(開環共重合反応)させてなる、分子内に水酸基と重合性炭素−炭素二重結合を併有する高分子量体である。
【0014】
(A)成分としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族系酸無水物や、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の脂環族系酸無水物、無水グルタル酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸及びブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族系酸無水物、これら酸無水物化合物を原料とする重合体(無水マレイン酸単独重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸−スチレン共重合体、無水マレイン酸−アクリロニトリル共重合体等)が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でも、多官能アクリレートとの相溶性や硬化性の観点より芳香族系酸無水物が、特に無水フタル酸が好ましい。
【0015】
(B)成分としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジル等のビニル基含有グリシジル化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの中でも、多官能アクリレートとの相溶性や硬化性の観点よりアリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0016】
(A)成分と(B)成分の使用重量比は特に限定されないが、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化性及び耐乳化性等を考慮すると、通常、前者:後者のモル比が1:1〜1:2程度である。
【0017】
(C)成分は、(A)成分と(B)成分の反応に用いる触媒であり、本発明では特に耐乳化性の観点よりトリフェニルホスフィンを用いる。また、その使用量は特に制限されないが、(A)成分100重量部に対して0.01〜1.00重量部であり、好ましくは0.30〜0.50重量部である。
【0018】
なお、本発明においては、(C)成分とともに、他の触媒として、例えば2−メチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール、トリエチルアミン、ジフェニルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酸化亜鉛及びオクチル酸亜鉛等も併用可能であるが、これらは単独で用いると(A)成分と(B)成分の反応途中でゲル化が生じたり、得られた水酸基含有重合性共重合体を用いた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の耐乳化性が不十分になったりする傾向にある。
【0019】
本発明の共重合体は、前記(A)成分及び(B)成分に加え、更にポリオール(D1)(以下、(D1)成分という。)、ロジン類(D2)(以下、(D2)成分という。)、ポリカルボン酸(D3)(以下、(D3)成分という。)、及び分子内に炭素−炭素二重結合を有しないグリシジル化合物(D4)(以下、(D4)成分という。)からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応成分とすることができる。これらは本発明の共重合体の分子量やガラス転移点、分岐度等の調節の目的で使用する任意成分である。
【0020】
(D1)成分としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、ビスフェノールA及び水添ビスフェノールA等のジオール類(但し、後述のロジンジオールを除く。)や、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール及び1,2,4−ブタントリオール等のトリオール類、ペンタエリスリトール及びジグリセロール等のテトラオール類、並びにジペンタエリスリトール等のヘキサオール類などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
(D2)成分(但し無水環を形成しているものを除く。)としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、天然ロジン(ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなど)、天然ロジンを各種公知の方法で安定化処理したロジン(水添ロジン、不均化ロジンなど)、天然ロジンや安定化処理したロジンを各種公知の方法で処理してなる重合ロジン、これらロジンとα,β不飽和カルボン酸類とのディールスアルダー反応物(マレイン化ロジン、マレイン化ロジン水素化物、アクリル化ロジン、アクリル化ロジン水素化物など)、前記天然ロジン又は安定化処理ロジンとジエポキシ化合物を樹脂酸:該ジエポキシ化合物が2:1となるように反応させてなるロジンジオール(特開平5−155972号参照)などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
(D3)成分(但し無水環を形成しているものを除く。)としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンヘキサカルボン酸などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
(D4)成分としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、ブチレンオキシド、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルトリルエーテル、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸グリシジルエステル、グリセロールグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
(D1)成分〜(D4)成分の使用量は特に限定されないが、通常、(A)成分及び(B)成分の合計モルに対して、通常0.1〜50モル%程度である。
【0025】
(A)成分及び(B)成分並びに必要に応じて用いる(D1)成分、(D2)成分、(D3)成分及び(D4)成分を反応させる条件は特に制限されず、各種公知の方法を採用できる。具体的には、これら成分を(C)成分の存在下、通常100℃〜210℃程度(好ましくは140〜160℃)、30分〜5時間程度(好ましくは1時間〜3時間)、反応させればよい。なお、必要に応じて反応系を減圧して残留モノマーを除いてもよい。
【0026】
こうして得られる本発明の共重合体の物性は特に限定されないが、反応性希釈剤(多官能アクリレート化合物)との相溶性や、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としたときの硬化性及び耐乳化性の観点より、通常、水酸基価が1〜200mgKOH/g程度、酸価が0〜200mgKOH/g程度、重量平均分子量が500〜100,000程度、ガラス転移温度が−30〜100℃程度である。
【0027】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、本発明の共重合体と、反応性希釈剤である多官能アクリレート類とを含有する組成物である。
【0028】
前記多官能アクリレート類としては、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリロイル基を少なくとも3つ有する化合物などが挙げられる。;ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、前記ポリエステルポリ(メタ)アクリレート等のオリゴマー;(メタ)アクリロイル基等の重合性官能基と水酸基を分子中に複数有するアクリル樹脂などの非共重合体型材料などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等のモノ(メタ)アクリレート類も併用可能である。
【0029】
本発明の共重合体と前記多官能アクリレート類の比率は特に限定されないが、該組成物の相溶性、硬化性及び耐乳化性のバランスを考慮すると、通常前者/後者が20/80〜80/20程度であるのが好ましい。
【0030】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を紫外線で硬化させる場合には、さらに光重合開始剤を含めることができる。光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルーフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−シクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン等が挙げられ、これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。光重合開始剤の量は、通常、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物100重量部に対して、1〜10量部である。
【0031】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、各種公知の有機溶剤の溶液として利用できる。該有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンの低級ケトン類、トルエン等の芳香族炭化水素類、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、その使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の固形分重量が通常10〜50重量%程度となる範囲である。
【0032】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、重合禁止剤、顔料、着色剤、光増感剤、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤等の添加剤を含有させることもできる。
【0033】
本発明の硬化物は、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を各種基材に塗工し、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化させてなるものである。
【0034】
基材としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、紙(アート紙、キャストコート紙、フォーム用紙、PPC紙、上質コート紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙等)の他、プラスチック基材(ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)が挙げられる。
【0035】
塗工方法としては、例えば、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工などが挙げられる。また、塗工量は特に限定されないが、通常は、乾燥後の重量が0.1〜30g/m程度、好ましくは1〜20g/m程度である。
【0036】
紫外線の光源としては、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、UV−LEDなどが挙げられる。光量や光源配置、搬送速度は特に限定されないが、例えば、高圧水銀灯を使用する場合には、通常80〜160W/cm程度の光量を有するランプ1灯に対して、搬送速度が通常5〜50m/分程度である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
<共重合体の合成>
製造例1
撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた反応容器に無水フタル酸100.0部、アリルグリシジルエーテル115.6部を仕込み、140℃まで昇温した。ついで、トリフェニルホスフィン0.4部を添加し、150℃で2時間30分間撹拌した。その後、45分間、−0.08MPaで減圧しながら、210℃へ昇温し、内容物を取り出した。こうして、酸価が0.4mgKOH/g、水酸基価が9.2mgKOH/g、重量平均分子量が37,000、ガラス転移点が7℃の固体状の水酸基含有重合性共重合体を得た。
【0039】
製造例2
製造例1と同様の反応容器に無水フタル酸100.0部、アリルグリシジルエーテル115.6部、水添無水マレイン化ロジン(荒川化学工業(株)製)10部を仕込み、140℃まで昇温した。ついで、トリフェニルホスフィン0.4部を添加し、150℃で1時間20分間撹拌した。その後、30分間、−0.08MPaで減圧しながら、210℃へ昇温し、内容物を取り出した。こうして、酸価が4.1mgKOH/g、水酸基価が18.0mgKOH/g、重量平均分子量が11,000、ガラス転移点が10℃の固体状の水酸基含有重合性共重合体を得た。
【0040】
製造例3
製造例1と同様の反応容器に無水フタル酸100.0部、アリルグリシジルエーテル115.6部、ロジンジオール(製品名:パインクリスタル D−6011、荒川化学工業(株)製)10部を仕込み、140℃まで昇温した。ついで、トリフェニルホスフィン0.4部を添加し、150℃で1時間20分間撹拌した。その後、30分間、−0.08MPaで減圧しながら、210℃へ昇温し、内容物を取り出した。こうして、酸価が0.5mgKOH/g、水酸基価が16.8mgKOH/g、重量平均分子量が11,000、ガラス転移点が14℃の固体状の水酸基含有重合性共重合体を得た。
【0041】
製造例4
製造例1と同様の反応容器に無水フタル酸100.0部、アリルグリシジルエーテル77.1部、エチレングリコール12.6部、トリフェニルホスフィン1.8部を仕込み、100℃で3時間撹拌して、内容物を取り出した。こうして、酸価が8.5mgKOH/g、水酸基価が106.6mgKOH/g、重量平均分子量が1,100、ガラス転移点が−16℃のワニス状の水酸基含有重合性共重合体を得た。
【0042】
比較製造例1
製造例1と同様の反応容器に無水フタル酸100.0部、アリルグリシジルエーテル77.1部、エチレングリコール12.6部、トリエタノールアミン0.4部を仕込み、100℃で8時間撹拌して、内容物を取り出した。こうして、酸価が35.7mgKOH/g、水酸基価が94.2mgKOH/g、重量平均分子量が1,000、ガラス転移点が−16℃のワニス状の水酸基含有重合性共重合体を得た。
【0043】
比較製造例2
製造例1と同様の反応容器に無水フタル酸100.0部、アリルグリシジルエーテル77.1部、エチレングリコール12.6部、N,N−ジメチルベンジルアミン0.9部を仕込み、100℃で4時間撹拌して、内容物を取り出した。こうして、酸価が17.9mgKOH/g、水酸基価が110.7mgKOH/g、重量平均分子量が1,100、ガラス転移点が−16℃のワニス状の水酸基含有重合性共重合体を得た。
【0044】
比較製造例3
製造例1と同様の反応容器に無水フタル酸100.0部、アリルグリシジルエーテル115.6部、を仕込み、140℃まで昇温した。ついで、水酸化ナトリウム0.1部を添加し、150℃で1時間20分間撹拌したが、反応系がゲル化したため、後の評価に供しなかった。
【0045】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
実施例1
撹拌装置、冷却管を備えた反応容器に製造例1で製造した共重合体40.5部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(製品名:ビームセット700、荒川化学工業(株)製)59.4部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製)を0.09部と同じく重合禁止剤としてQ−1301(和光純薬工業(株)製)を0.05部仕込み、90〜95℃で3時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物1を得た。なお、該組成物1の外観は透明であり、相溶性は良好であった。次いで、当該組成物1を5.00部、光重合開始剤としてイルガキュア907(チバ・ジャパン(株)製)を0.25部、及び希釈溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)を5.50部、よく混合し、硬化皮膜作成用の組成物1’を調製した。
【0046】
実施例2
実施例1と同様の反応容器に製造例2で製造した共重合体を50.0部、ビームセット700を49.9部、メトキノンを0.09部、Q−1301を0.05部仕込み、90〜95℃で3時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物2を得た。次いで、当該組成物2を5.00部、イルガキュア907を0.25部、MEKを5.50部、よく混合し、硬化皮膜作成用の組成物2’を調製した。
【0047】
実施例3
実施例1と同様の反応容器に製造例3で製造した共重合体45.5部、ビームセット700を54.4部、メトキノンを0.09部、及びQ−1301を0.05部仕込み、90〜95℃で3時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物3を得た。次いで、当該組成物3を5.00部、イルガキュア907を0.25部、MEKを5.50部、よく混合し、硬化皮膜作成用の組成物3’を調製した。
【0048】
実施例4
実施例1と同様の反応容器に製造例4で製造した共重合体26.4部、ビームセット700を73.5部、メトキノンを0.10部、及びQ−1301を0.05部仕込み、90〜95℃で3時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物4を得た。な次いで、当該組成物4を5.00部、イルガキュア907を0.25部、MEKを5.50部、よく混合し、硬化皮膜作成用の組成物4’を調製した。
【0049】
比較例1
実施例1と同様の反応容器にジアリルフタレート樹脂(製品名:ダイソーダップA、ダイソー化学(株)製)26.4部、ビームセット700を73.5部、メトキノンを0.10部、及びQ−1301を0.05部仕込み、90〜95℃で3時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(ア)を得た。次いで、当該組成物(ア)を5.00部、イルガキュア907を0.25部、MEKを5.50部、よく混合し、硬化皮膜作成用の組成物(ア’)を調製した。
【0050】
比較例2
実施例1と同様の反応容器に比較製造例1で得た共重合体26.4部、ビームセット700を73.5部、メトキノンを0.10部、及びQ−1301を0.05部仕込み、90〜95℃で3時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(イ)を得た。次いで、当該組成物(イ)を5.00部、イルガキュア907を0.25部、MEKを5.50部、よく混合し、硬化皮膜作成用の組成物(イ’)を調製した。
【0051】
比較例3
実施例1と同様の反応容器に比較製造例2で得た共重合体26.4部、ビームセット700を73.5部、メトキノンを0.10部、及びQ−1301を0.05部仕込み、90〜95℃で3時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(ウ)を得た。次いで、当該組成物(ウ)を5.00部、イルガキュア907を0.25部、MEKを5.50部、よく混合し、硬化皮膜作成用の組成物(ウ’)を調製した。
【0052】
<硬化皮膜の作製>
実施例1で得られた組成物1’を未処理PETフィルム(ルミラー75T60)にバーコーター#4を用いて塗布し、80℃で30秒間、順風乾燥機中で加熱し、MEKを除いた。その後、紫外線照射機(120W/cm、照射距離25cm、コンベア速度50m/分)で紫外線照射し、硬化膜を作製した。組成物2’、3’及び4’、並びに組成物(ア’)、(イ’)及び(ウ’)についても同様にして硬化膜を作製した。
【0053】
<性能評価>
実施例及び比較例の各組成物について以下の試験を行った。
【0054】
<相溶性>
実施例及び比較例の各組成物の外観を目視観察し、以下の基準で相溶性を評価した。
○・・・不溶物が確認できない
×・・・不溶物が確認できる
【0055】
<硬化速度>
硬化皮膜の作製の際に要した照射量を表1に示す。照射量が少なくても硬化しているものが硬化性良好である。
【0056】
<耐乳化性>
実施例1に係る組成物1の10部をキシレン20部に溶解した。次いで、当該溶液の7.5部を岩城硝子(株)製のガラス試験管(内径18mm×高さ180mm、商品名PYREX TEST18)に入れ、更に蒸留水7.5部を入れて栓をした。次いで、これを上下20回振とうし、乳化させた後、整地静置して水層と有機層が分離するまでの時間を測定した。その結果を表1に示す。分離時間が短いほど、耐乳化性が良好である。組成物2、3及び4、並びに組成物(ア)、(イ)及び(ウ)についても同様にして耐乳化性を評価した。
【0057】
【表1】