特許第6160922号(P6160922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160922
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   B23Q3/06 303C
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-33170(P2014-33170)
(22)【出願日】2014年2月24日
(65)【公開番号】特開2015-157335(P2015-157335A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】福井 千明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一義
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅治
【審査官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−279698(JP,A)
【文献】 特開2001−162473(JP,A)
【文献】 特開2008−194801(JP,A)
【文献】 特開2015−037827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一組のクランプアームを回動させることで、一方のクランプアームと他方のクランプアームとの間にワークをクランプするクランプ装置において、
ボディと、
前記ボディに設けられ、軸方向に沿って変位する変位体を有した駆動部と、
前記ボディに対して回動自在に支持され、互いに対向するように配置された一組のクランプアームと、
前記クランプアームの端部を押圧する押圧部を有し、前記駆動部に連結され、該駆動部の軸方向に沿った駆動力を前記クランプアームへと伝達し、該クランプアームを回動させる駆動力伝達機構と、
前記軸方向に対して所定角度傾斜した押圧面を有し、前記クランプアームの端部に設けられ、前記駆動力伝達機構の押圧部が前記押圧面に当接し該押圧部によって押圧されるカム部材と、
前記クランプアームによる前記ワークのクランプ状態を手動で解除する手動解除手段と、
を備え
前記手動解除手段は、前記押圧部を前記軸方向に沿って付勢する付勢部材を備え、該付勢部材は前記ボディに対して回動自在に設けられたレバーであり、該レバーを回動させることで前記押圧部を移動させることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
請求項記載のクランプ装置において、
前記ボディには、前記レバーを保持するホルダが設けられることを特徴とするクランプ装置。
【請求項3】
請求項記載のクランプ装置において、
前記ホルダは、前記レバーの回動方向に沿った開口部を有し、前記開口部を通じて前記ホルダの内部に前記レバーが収納されることで回動動作が規制されることを特徴とするクランプ装置。
【請求項4】
請求項記載のクランプ装置において、
前記押圧部には、前記ボディの外部へと突出した突出部が設けられ、前記突出部が前記付勢部材に当接することで付勢されることを特徴とするクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動組立ライン等においてワークをクランプするクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車の自動組立ラインにおいて、成形されたフレームを重ね合わせた状態でクランプ装置によってクランプを行い、前記フレーム同士を溶接する組立工程が行われている。
【0003】
このようなクランプ装置としては、特許文献1に開示されているように、左右に一対で設けられたクランプアームを備え、該クランプアームがピンを介してそれぞれ回動自在に設けられると共に、前記クランプアームの端部を駆動部に接続されたベースを介して軸支することにより、該クランプアームの先端部を開閉動作させる。これにより、一対のクランプアームの先端部によってフレーム等のワークが左右から把持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4950123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなクランプ装置が設置された製造ラインにおいて、例えば、何らかの原因で該製造ラインを緊急停止させる場合に、駆動部に対する通電や圧力流体の供給が停止し、該駆動部による駆動力が滅勢されることで、クランプアームによってワークをクランプした状態のままロックしてしまうことがある。
【0006】
このような状況において、例えば、トラブル原因の究明のためにワークを取り出すことがある。しかしながら、ワークがクランプアームによってクランプされた状態のままであるためにクランプ装置から取り出すことができないという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、駆動部からの出力が停止した場合に手動でクランプ状態の解除を容易且つ確実に行うことが可能なクランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、一組のクランプアームを回動させることで、一方のクランプアームと他方のクランプアームとの間にワークをクランプするクランプ装置において、
ボディと、
ボディに設けられ、軸方向に沿って変位する変位体を有した駆動部と、
ボディに対して回動自在に支持され、互いに対向するように配置された一組のクランプアームと、
クランプアームの端部を押圧する押圧部を有し、駆動部に連結され、駆動部の軸方向に沿った駆動力を前記クランプアームへと伝達し、該クランプアームを回動させる駆動力伝達機構と、
軸方向に対して所定角度傾斜した押圧面を有し、クランプアームの端部に設けられ、駆動力伝達機構の押圧部が押圧面に当接し押圧部によって押圧されるカム部材と、
クランプアームによるワークのクランプ状態を手動で解除する手動解除手段と、
を備え
手動解除手段は、押圧部を軸方向に沿って付勢する付勢部材を備え、付勢部材はボディに対して回動自在に設けられたレバーであり、レバーを回動させることで押圧部を移動させることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、一組のクランプアームの端部にカム部材を有したクランプ装置において、カム部材が駆動部の駆動作用下に駆動力伝達機構の押圧部によって押圧され一組のクランプアームの端部がそれぞれ回動することでワークをクランプする。そして、何らかの原因で駆動部が停止して駆動力が滅勢された場合でも、手動解除手段によってクランプ状態を容易且つ確実に解除することができるため、ワークを確実に取り出すことが可能となる。
【0012】
さらにまた、ボディには、レバーを保持するホルダを設けるとよい。
【0013】
またさらに、ホルダは、レバーの回動方向に沿った開口部を有し、開口部を通じてホルダの内部にレバーを収納することで回動動作を規制するとよい。
【0014】
また、押圧部に、ボディの外部へと突出した突出部を設け、突出部を付勢部材に当接させることで付勢するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0016】
すなわち、一組のクランプアームの端部にカム部材を有したクランプ装置において、カム部材が駆動部の駆動作用下に駆動力伝達機構の押圧部によって押圧され一組のクランプアームの端部がそれぞれ回動することでワークをクランプする。そして、何らかの原因で駆動部が停止して駆動力が滅勢された場合でも、手動解除手段によってクランプ状態を容易且つ確実に解除することができるため、ワークを確実に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るクランプ装置の外観斜視図である。
図2図1のクランプ装置における手動解除機構の分解斜視図である。
図3図1のクランプ装置のクランプ状態における正面図である。
図4図3のクランプ装置から第1プレート体を取り外した状態を示す一部省略正面図である。
図5図3のV−V線に沿った断面図である。
図6図3のクランプ装置のアンクランプ状態における正面図である。
図7図6のクランプ装置から第1プレート体を取り外した状態を示す一部省略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るクランプ装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係るクランプ装置を示す。
【0019】
このクランプ装置10は、図1図7に示されるように、ボディ12と、該ボディ12に対して回動自在に軸支される一対の第1及び第2クランプアーム14、16と、前記ボディ12に固定される駆動部18と、前記駆動部18の駆動力を前記第1及び第2クランプアーム14、16へと伝達する駆動力伝達機構20と、前記第1及び第2クランプアーム14、16によるワークWのクランプ状態を手動で強制解除可能な手動解除機構22とを含む。
【0020】
ボディ12は、例えば、平板状に形成され水平方向に沿って配置されるベース24と、前記ベース24の両側面に対してそれぞれ連結され、互いに所定間隔離間して配置された一組の第1及び第2プレート体26、28とからなり、前記第1及び第2プレート体26、28は前記ベース24に対して直交し、上方(矢印A方向)に向かって所定高さで形成される。そして、第1プレート体26には手動解除機構22が装着されている。
【0021】
このベース24は、例えば、床面等に載置され、図示しないボルト等によって固定されることにより、クランプ装置10が固定される。
【0022】
また、ボディ12の上部には、第1プレート体26の端部と第2プレート体28の端部とを接続するように天井部29が設けられ、該天井部29は、第1及び第2プレート体26、28の延在方向(矢印A、B方向)に対して直交し、且つ、ボディ12における幅方向(矢印C方向)の略中央部に配置される。そして、天井部29には、第1及び第2クランプアーム14、16によってクランプされるワークWが載置される。
【0023】
第1及び第2クランプアーム14、16は、略対称形状に形成され、ボディ12における第1プレート体26と第2プレート体28との間に設けられ、その長手方向に沿った略中央部に挿通されたアームピン30を介してそれぞれボディ12に回動自在に支持される。
【0024】
この第1及び第2クランプアーム14、16は、図4及び図7に示されるように、ベース24側(矢印B方向)に配置される一端部には、互いに向かい合う側面にカム部材32がそれぞれ装着される。
【0025】
このカム部材32は、例えば、ブロック状に形成され、第1及び第2クランプアーム14、16の一端部の側面に形成された凹部に装着されると共に、クランプ装置10の幅方向内側に形成されたカム面(押圧面)34を有する。このカム面34は、第1及び第2クランプアーム14、16の他端部側(矢印A方向)に向かって徐々に幅狭状となるように所定角度で傾斜している。
【0026】
そして、カム部材32は、カム面34がクランプ装置10の中央側に臨むように配置された状態で、図示しない取付ボルトを介して第1及び第2クランプアーム14、16の一端部に対して着脱自在に設けられる。
【0027】
一方、第1及び第2クランプアーム14、16の他端部には、ワークWをクランプするための把持部36が形成され、前記把持部36は、断面略長方形状で互いに向かい合う把持面が該第1及び第2クランプアーム14、16の長手方向と略平行な鉛直面となるように形成される。
【0028】
また、アームピン30は、軸状に形成され、第1及び第2クランプアーム14、16における一端部と他端部との間となる位置において、該第1及び第2クランプアーム14、16の長手方向と直交するようにそれぞれ挿通される。そして、アームピン30の両端部が第1及び第2プレート体26、28に対してそれぞれ支持される。これにより、第1及び第2クランプアーム14、16は、略中央部に挿通されたアームピン30を介してボディ12に回動自在に支持される。
【0029】
駆動部18は、第1プレート体26と第2プレート体28との間に配置されると共に、第1及び第2プレート体26、28及びベース24の中央となる位置に設けられる。
【0030】
この駆動部18は、有底筒状のシリンダチューブ38と、該シリンダチューブ38の内部に変位自在に設けられるピストン40と、前記ピストン40に連結されるピストンロッド42と、前記シリンダチューブ38の開口部に設けられ、該ピストンロッド42を変位自在に支持するロッドカバー44とを含む。シリンダチューブ38の側面には、該シリンダチューブ38の軸方向(矢印A、B方向)と直交方向に貫通した第1及び第2ポート46、48が形成され、前記第1及び第2ポート46、48を通じて前記シリンダチューブ38の内部と外部とが連通する。第1ポート46は、シリンダチューブ38の底部側となる一端部側(矢印A方向)に設けられ、第2ポート48は、ロッドカバー44側(矢印B方向)となる前記シリンダチューブ38の他端部側に設けられる。
【0031】
そして、第1及び第2ポート46、48には、それぞれ継手を介して図示しない圧力流体供給源に接続された配管が接続され、図示しない切換装置による切換作用下に第1ポート46、第2ポート48のいずれか一方に選択的に圧力流体が供給される。なお、シリンダチューブ38は、図示しないボルトによって天井部29に対して固定されている。
【0032】
ピストン40は、例えば、円盤状に形成され、その中心にはピストンロッド42の一端部が挿通され一体的に加締められることで連結されている。また、ピストンロッド42の他端部は、ロッドカバー44を通じてシリンダチューブ38の外部へと突出している。このピストンロッド42の他端部には、一旦縮径した後に再び拡径した接続部50が形成され、該接続部50には、駆動力伝達機構20を構成するブロック体52が接続される。
【0033】
ロッドカバー44は、シリンダチューブ38の内部に挿入された後、該シリンダチューブ38の内周面に係合された係止リング54によって係止され、その中心にピストンロッド42が変位自在に挿通される。
【0034】
なお、ベース24には、ピストンロッド42の下方(矢印B方向)となる位置にブロック状のストッパ56が固定され、駆動部18の駆動作用下にピストン40及びピストンロッド42が下降した際、該ピストンロッド42に連結されたブロック体52(後述する)が当接することでさらなる変位を規制する。
【0035】
駆動力伝達機構20は、ピストンロッド42の他端部に連結されるブロック体52と、該ブロック体52の両端部近傍にそれぞれ軸支される一対のローラ(押圧部)58a、58bと、前記ローラ58a、58bを軸支するローラピン60と第1及び第2クランプアーム14、16のリンクピン62との間に支持される一対のリンクアーム64a、64bとを含む。
【0036】
ブロック体52は、ピストンロッド42の軸方向(矢印A、B方向)と直交方向(矢印C方向)に延在し、その中心部には前記ピストンロッド42の接続部50が挿入される溝部が形成されている。そして、ブロック体52の溝部に接続部50が挿入されることで、前記ブロック体52が、前記ピストンロッド42の軸方向と直交した状態で連結され一体的に変位する。
【0037】
また、ブロック体52は、幅方向(矢印C方向)に沿って所定長さを有し、その両端部がピストンロッド42の軸線を中心として均等な距離となるように形成されると共に、前記両端部には、該ブロック体52の延在方向と直交するように設けられたローラピン60を介して一対のローラ58a、58bが回転自在に軸支される。このローラ58a、58bは、二股状に形成されたブロック体52の両端部の間となるように配置され、前記両端部に対して第1及び第2クランプアーム14、16側に突出するように設けられる。
【0038】
そして、ローラ58a、58bは、ブロック体52の両端部によって両側面が覆われ、しかも、第1クランプアーム14側に設けられた一方のローラ58aと、第2クランプアーム16側に設けられた他方のローラ58bとがそれぞれカム部材32のカム面34に臨んで、その外周面が該カム面34に当接する。
【0039】
さらに、リンクアーム64a、64bは、軸方向に所定長さを有し、その一端部には長手方向に沿って長尺な長円状に開口したリンク溝66が形成され、それぞれローラピン60が挿通されている。一方、リンクアーム64a、64bの他端部は、第1及び第2クランプアーム14、16の一端部に軸支されたリンクピン62が孔部(図示せず)を介して挿通される。これにより、リンクアーム64a、64bは、図示しない孔部に挿通されたリンクピン62を介して一端部側が回動自在に設けられると共に、リンク溝66に挿通されたローラピン60を介してブロック体52の長手方向に所定距離だけ移動可能に設けられる。
【0040】
そして、駆動部18の駆動作用下にブロック体52が下降することにより、ローラ58a、58bがカム部材32のカム面34に当接した状態で回転し、且つ、前記カム面34を介して第1及び第2クランプアーム14、16の一端部を所定の押圧力で互いに離間させる方向(矢印C方向)に押圧する。一方、ブロック体52が上昇することにより、リンクアーム64a、64bによって第1及び第2クランプアーム14、16の一端部が互いに接近する方向へと引張される。
【0041】
手動解除機構22は、例えば、図1図3に示されるように、ボディ12の第1プレート体26に回動自在に設けられた解除レバー(付勢部材)68と、前記解除レバー68を保持するホルダ70と、駆動力伝達機構20を構成するローラピン60に連結され前記解除レバー68によって押圧される連結ピン(突出部)72とを含む。なお、連結ピン72は、別体でローラピン60に対して連結される構成に限定されるものではなく、例えば、前記ローラピン60と一体的に形成されていてもよい。
【0042】
解除レバー68は、例えば、所定厚さを有した板材からなり、第1プレート体26の側面に対して回動自在に設けられている。そして、解除レバー68は、固定ボルト74によって第1プレート体26に支持された支持部76と、該支持部76の上端部に形成され作業者の操作する操作部78と、前記支持部76の下端部から断面略円弧状に延在して駆動力伝達機構20の一部を押圧する付勢部80とを備える。なお、操作部78は、支持部76に対して略直交するように延在し、付勢部80は、前記支持部76に対して操作部78とは反対方向に延在するように形成される。
【0043】
この操作部78は、第1プレート体26より幅方向外側に突出するように配置され、一方、付勢部80は、下方(矢印B方向)に向かって凸状となるように湾曲して形成されている。
【0044】
連結ピン72は、駆動力伝達機構20を構成するローラピン60の端部から突出し、且つ、同軸となるように設けられ、第1プレート体26に開口した挿通溝82にそれぞれ挿通されることで、該第1プレート体26の外側へと所定長さだけ突出している。この挿通溝82は、鉛直方向(矢印A、B方向)に沿って所定長さで延在している。
【0045】
ホルダ70は、例えば、弾性変形可能な板材等から断面略U字状に形成され、第1プレート体26の側面にボルト84で固定されると共に、前記第1プレート体26の幅方向外側が開口するように設けられる。そして、ホルダ70の内部には、図3に示されるように、解除レバー68の支持部76が挿入可能であり、該ホルダ70の開口部近傍に設けられた係止突起部86によって係止され回動動作が規制される(図5参照)。
【0046】
なお、手動解除機構22は、上述したようにボディ12の第1プレート体26側に設けられる場合に限定されるものではなく、第2プレート体28側に設けるようにしてもよい。
【0047】
本発明の実施の形態に係るクランプ装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、以下の説明においては、第1及び第2クランプアーム14、16の把持部36が互いに離間したアンクランプ状態を初期位置として説明する。この初期位置においては、図7に示されるように、駆動部18における第2ポート48に圧力流体が供給され、ピストン40が上昇することで駆動力伝達機構20のブロック体52、ローラ58a、58bを介して第1及び第2クランプアーム14、16は、アームピン30を支点として把持部36同士が互いに離間する方向(矢印D1方向)に回動した状態にある。
【0048】
ここで、上述したクランプ装置10によって把持されるワークWについて図3図4を参照しながら簡単に説明する。このワークWは、例えば、車両のフレームを構成する断面U字状の第1フレームW1と、該第1フレームW1に組み合わせられる断面U字状の第2フレームW2とからなる。第1フレームW1は、下方(矢印B方向)に向かって開口した状態で第1及び第2クランプアーム14、16における把持部36の間に配置され、一方、第2フレームW2は、その側壁が開口部側に向かって徐々に拡幅するように傾斜して形成され、該開口部が上方(矢印A方向)となるように配置される。そして、第2フレームW2の内部に第1フレームW1が挿入された状態で天井部29に対して載置される。
【0049】
このようにワークWがクランプ装置10における所定位置にセットされた状態で、先ず、図示しない切換装置の切換作用下に駆動部18の第2ポート48へと供給されていた圧力流体を第1ポート46へと供給する。これにより、図4に示されるように、シリンダチューブ38内に導入された圧力流体によってピストン40がロッドカバー44側(矢印B方向)へと押圧され、該ピストン40と共にピストンロッド42及びブロック体52が一体的に下降する。
【0050】
これにより、ブロック体52と共に一対のローラ58a、58bが下降し、該ローラ58a、58bは外周面が当接しているカム部材32のカム面34に沿って下降することで、断面円弧状に窪んだカム面34を介して第1及び第2クランプアーム14、16の一端部を互いに離間する方向(矢印C1方向)へと押圧する。
【0051】
これにより、第1及び第2クランプアーム14、16は、アームピン30を支点として他端部である把持部36が互いに接近する方向(矢印D2方向)に回動し始め、ローラ58a、58bによるカム部材32への押圧力が略一定となるため、前記第1及び第2クランプアーム14、16は略一定の回動力で回動する。
【0052】
また、駆動部18の駆動作用下にさらにブロック体52が下降することによってローラ58a、58bがカム部材32のカム面34をさらに押圧し、該カム部材32を介して前記第1及び第2クランプアーム14、16の一端部が互いに離間する方向(矢印C1方向)へとさらに押圧され、それに伴って、前記第1及び第2クランプアーム14、16の把持部36が、アームピン30を支点として互いに接近する方向へとさらに回動し、第2フレームW2の側壁を互いに接近させる方向、すなわち、第1フレームW1側(矢印D2方向)に向かって押圧して変形させていく。
【0053】
さらにブロック体52が下降することで、ローラ58a、58bによって一対のカム部材32が互いに離間する方向(矢印C1方向)へと押圧され、それに伴って、第1及び第2クランプアーム14、16の一端部が互いに離間する方向(矢印C1方向)へと押圧され移動することで、該第1及び第2クランプアーム14、16の把持部36が互いに接近する方向(矢印D2方向)へとさらに回動し、第2フレームW2の側壁を互いに接近させるように押圧して変形させ、該第2フレームW2の側壁が第1フレームW1の側壁に当接し、且つ、略平行となった状態でクランプが完了したクランプ状態となる。
【0054】
最後に、第1及び第2クランプアーム14、16によって第1及び第2フレームW1、W2がクランプされた状態で、例えば、図示しない溶接装置によって前記第1及び第2フレームW1、W2の側壁同士が溶接される。
【0055】
このように、駆動部18の駆動作用下に駆動力伝達機構20のブロック体52が下降することで、一対のローラ58a、58bによってカム面34を押圧し、カム部材32を介して第1及び第2クランプアーム14、16の一端部が互いに離間する方向(矢印C1方向)に略一定の力で押圧される。これにより、第1及び第2クランプアーム14、16をアームピン30を支点として回動させることができるため、前記第1及び第2クランプアーム14、16の回動し始めから回動動作が完了するまで、常に一定のクランプ力でワークWの第2フレームW2を第1フレームW1側に向かって押圧してクランプする。
【0056】
一方、第1及び第2クランプアーム14、16によるワークWのクランプ状態を解除する場合には、図示しない切換装置の切換作用下に駆動部18の第1ポート46へと供給されていた圧力流体を第2ポート48へと供給する。これにより、ピストン40が圧力流体による押圧作用下に上昇し、それに伴って、ピストンロッド42及びブロック体52が一体的に上昇する。
【0057】
そして、ブロック体52の両端部に対してローラピン60で支持されたリンクアーム64a、64bの他端部が上昇し、それに伴って、第1及び第2クランプアーム14、16の一端部が該リンクアーム64a、64bとの接続作用下に互いに接近する方向へと引張される。その結果、第1及び第2クランプアーム14、16は、アームピン30によって支持された部位を支点として把持部36が互いに離間する方向(矢印D1方向)へと回動し、図6及び図7に示されるようなワークWのクランプが解除されたアンクランプ状態となる。
【0058】
次に、上述したクランプ装置10において、第1及び第2クランプアーム14、16によるワークWのクランプ状態で駆動部18への圧力流体の供給が停止した場合について説明する。なお、図4に示されるこのクランプ状態においては、駆動部18のピストン40及びピストンロッド42が下降し、それに伴って、ブロック体52及びローラ58a、58bが下降しているため、連結ピン72が挿通溝82の下端近傍に位置している状態にある。
【0059】
例えば、製造ラインの緊急停止時において、駆動部18への圧力流体の供給が停止した状況では、第1及び第2クランプアーム14、16によるワークWのクランプ状態でロックしてしまい解除することができない。
【0060】
このような場合、先ず、図3及び図4に示される状態で図示しない作業者が解除レバー68の操作部78を把持し下方(矢印B方向)へと押圧することで、支持部76の支持部位を支点として反時計回り(矢印E1方向)に回動させる。それに伴って、支持部76がホルダ70の係止突起部86に当接して弾性変形させながら該係止突起部86を乗り越えて開口部から前記ホルダ70の外側へと移動する。そして、解除レバー68がホルダ70の外部へと完全に離脱することで回動動作の規制状態が解除される。
【0061】
また、操作部78の下方(矢印B方向)への押圧によって付勢部80が支持部76を支点として上方(矢印A方向)へと回動し、それに伴って、図6及び図7に示されるように、前記付勢部80が連結ピン72に当接した後、上方へと押し上げる。これにより、連結ピン72に連結されたローラピン60、ブロック体52、ピストンロッド42及びピストン40が一体的に上方(矢印A方向)へと押圧される。
【0062】
その結果、ローラ58a、58bがカム部材32のカム面34に沿って上昇し、第1及び第2クランプアーム14、16はそれぞれ把持部36が互いに離間するように回動してアンクランプ状態となる。この場合、クランプ状態にある第1及び第2クランプアーム14、16には、ローラ58a、58bによって押圧されたカム部材32によって増力された大きな力が付勢されているが、固定ボルト74を支点として所定距離だけ離間した付勢部80によって連結ピン72へと押圧力を付与することで、前記第1及び第2クランプアーム14、16に対するローラ58a、58bからの押圧力に打ち勝って前記第1及び第2クランプアーム14、16をアンクランプ動作させることが可能となる。
【0063】
このように手動解除機構22によってアンクランプ状態とすることで、製造ラインの緊急停止時においてもワークWのクランプ状態を容易且つ確実に解除して該ワークWを取り出すことが可能となる。
【0064】
そして、手動解除機構22の解除レバー68によるクランプ状態の解除を行った後、図示しない作業者が操作部78を把持して上方(矢印A方向)へと押し上げることで、解除レバー68が支持部76を支点として時計回り(矢印E2方向)に回動し、前記支持部76をホルダ70の内部へと挿入して係止突起部86へと係止させることで再び解除レバー68を回動できないロック状態として解除作業が完了する。
【0065】
以上のように、本実施の形態では、例えば、ボディ12を構成する第1プレート体26の外側に回動自在に手動解除機構22を構成する解除レバー68を設け、駆動部18への圧力流体の供給が停止してワークWのクランプ状態でロックしてしまった場合でも、前記解除レバー68を操作することでローラピン60に連結された連結ピン72を押し上げ可能としている。そのため、カム部材32に当接して第1及び第2クランプアーム14、16を幅方向外側へと押圧しているローラ58a、58bを容易且つ確実にカム面34に沿って上方(矢印A方向)へと移動させることで、第1及び第2クランプアーム14、16を容易且つ確実にアンクランプ動作させることが可能となる。
【0066】
また、解除レバー68、連結ピン72及び挿通溝82という簡素な構成で、手動でクランプ状態を解除可能な手動解除機構22を構成できるため、例えば、前記手動解除機構22を前記クランプ装置10に対して選択的に取り付けることで容易にクランプ時における手動解除を行うことができる。さらに、クランプ装置10の設置環境に応じて、解除レバー68の装着する位置を、ボディ12の幅方向に沿った両端部のいずれか一方から選択することができ好適であり、さらには、前記両端部に設けるようにしてもよいし、第1プレート体26ではなく第2プレート体28に設けるようにしてもよい。
【0067】
さらに、解除レバー68を使用しない場合には、その支持部76がホルダ70の内部に収納され確実に保持されているため、前記解除レバー68が誤って回動してしまいクランプ状態を解除してしまうことが阻止される。
【0068】
なお、本発明に係るクランプ装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0069】
10…クランプ装置 12…ボディ
14…第1クランプアーム 16…第2クランプアーム
18…駆動部 20…駆動力伝達機構
22…手動解除機構 26…第1プレート体
30…アームピン 32…カム部材
36…把持部 42…ピストンロッド
52…ブロック体 58a、58b…ローラ
60…ローラピン 68…解除レバー
70…ホルダ 72…連結ピン
76…支持部 78…操作部
80…付勢部 86…係止突起部
W…ワーク W1…第1フレーム
W2…第2フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7