【文献】
黒河、一村、野中、北條,水晶摩擦真空計を用いた2成分混合気体の濃度計測,真空,日本,2001年 3月20日,第44巻、第3号,第167〜170頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ヘリウムは、地球上の物質の中で最も沸点及び融点が低い物質であり、かつ、不活性な物質である。また、ヘリウムは、産業、医療、学問の分野において幅広く利用されており、特に、極低温分野では、他の超低温物質よりも低温となるため、寒冷として利用されている。
【0003】
しかしながら、ヘリウムは、大気中に0.0005%しか存在せず、さらに、化学合成により生成することができないため、希少かつ高価である。そのため、一度使用したヘリウムは回収され、再利用されるのが一般的である。
【0004】
ヘリウムの再利用は、ヘリウムガスを回収し、これを液化することにより行う。ヘリウムガスを回収する際に、少量の空気が不純物として混入することが多く、液化する前にヘリウムガスを精製して不純物を十分に取り除く必要がある。そのため、ヘリウムガス中の不純物である空気成分の濃度を監視することが重要となる。
【0005】
ガス中の不純物濃度を測定する方法としては、ガスクロマトグラフ分析装置を用いる方法が一般的である。しかし、ガスクロマトグラフ分析装置は高額であり、さらに、長い分析時間が必要であるため、ガス中の不純物濃度の変化をリアルタイムで測定するのは困難であった。
【0006】
ところで、比較的安価にヘリウムガス中の不純物濃度を測定する方法としては、ヘリウムと空気成分(主に窒素)との熱伝導率の差により検出する方法が知られている(特許文献1を参照)。この方法では、ヘリウムと空気成分との熱伝導率の差を利用して、ピラニ真空素子の信号から測定対象ガスの熱伝導度を測定することで、ヘリウムガス中の不純物濃度を求めている。
【0007】
また、特許文献1には、ピラニ真空計を流用して、700Torr程度の負圧下において、対象ガスの熱伝導度を測定することで窒素や空気に含まれる六フッ化硫黄(SF
6)の濃度を測定する方法が開示されている。この方法では、測定容器内に発熱体(150〜400℃)を設置して、その温度を測定することで、対象ガスの熱伝導度を測定して、対象ガスの組成を推定している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されたガスの混合濃度の測定方法では、測定容器内の圧力が変動するため、ガスの組成を精度良く分析することが困難であるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、混合ガスの組成の分析を高精度に連続して行うことが可能なガス分析方法及びガス分析装置を提供することを課題とする。
【0011】
さらに、本発明は、純度の高い液化ヘリウムを生成することが可能なヘリウム液化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、ガスを少なくとも2種類以上含む混合ガスの組成を分析するためのガス分析方法であって、前記混合ガスの各成分について、ピラニ真空計の指示圧力と他の圧力計における指示圧力との関係を示す検量線を得る工程と、ピラニ真空素子内の前記混合ガスの流れが分子流領域となる圧力に調整した後、前記ピラニ真空計及び前記他の圧力計を用いて当該混合ガスの圧力を測定して、それぞれの測定値を得る工程と、前記検量線と、前記ピラニ真空計による測定値と、前記他の真空計による測定値と、から、前記混合ガスの組成を算出する工程と、を含むことを特徴とするガス分析方法である。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、前記混合ガスは、主成分がヘリウムであり、他の成分が空気であることを特徴とする請求項1に記載のガス分析方法である。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、前記混合ガスは、空気の代わりに、窒素と酸素とを空気の組成比で含むことを特徴とする請求項2に記載のガス分析方法である。
【0015】
また、請求項4に係る発明は、前記ピラニ真空素子内の前記混合ガスの流れが分子流領域となる圧力が、10Pa以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガス分析方法である。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、混合ガスを定圧状態で保持する分析用チャンバと、前記分析用チャンバを減圧するための真空ポンプと、前記分析用チャンバ内の前記混合ガスの圧力を測定するためのピラニ真空計と、前記分析用チャンバ内の前記混合ガスの圧力を測定するための他の圧力計と、を備え
、前記ピラニ真空計は、内部にピラニ真空素子を有し、前記ピラニ真空素子内の混合ガスの流れが、分子流領域となるようにされていることを特徴とするガス分析装置である。
【0017】
また、請求項6に係る発明は、前記混合ガスを前記分析用チャンバに導入するための分析ガス供給管と、前記分析ガス供給管内を流れる前記混合ガスの流量を制限するための流量制限機構と、をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のガス分析装置である。
【0018】
また、請求項7に係る発明は、前記流量制限機構はオリフィスであることを特徴とする請求項6に記載のガス分析装置である。
【0019】
また、請求項8に係る発明は、請求項5乃至7のいずれか一項に記載のガス分析装置と、ヘリウムガスを液化するためのヘリウム液化装置と、前記ヘリウム液化装置にヘリウムガスを供給するためのヘリウムガス供給管と、前記ヘリウム液化装置へのヘリウムガスの供給を制御するための制御部と、を備え、前記ガス分析装置により前記ヘリウムガス供給管内を流れるヘリウムガスの組成を分析し、ヘリウムガス中に含まれる不純物の濃度を基に、前記制御部によりヘリウムガスの供給を制御することを特徴とするヘリウム液化システムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のガス分析方法は、ピラニ真空素子内の混合ガスの流れが分子流領域となる圧力に調整した後、ピラニ真空計及び他の圧力計を用いて上記混合ガスの圧力を測定して、それぞれの測定値を得る工程と、検量線とピラニ真空計による測定値と他の真空計による測定値とから、混合ガスの組成を算出する工程と、を含む構成をとる。そのため、ピラニ真空素子内の混合ガスの流れが分析結果に及ぼす影響を無視することができる。その結果、混合ガスの組成の分析を高精度に連続して行うことができる。
【0021】
また、本発明のガス分析装置は、混合ガスを定圧状態で保持する分析用チャンバと、分析用チャンバを減圧するための真空ポンプと、分析用チャンバ内の混合ガスの圧力を測定するためのピラニ真空計と、分析用チャンバ内の混合ガスの圧力を測定するための他の圧力計と、を備える構成をとり、真空ポンプによりピラニ真空素子内の混合ガスの流れが分子流領域となるように圧力を調整することができる。そのため、ピラニ真空計内の混合ガスの流れが分析結果に及ぼす影響を無視することができる。その結果、混合ガスの組成の分析を高精度に連続して行うことができる。
【0022】
さらに、本発明のヘリウム液化システムは、上記ガス分析装置と、ヘリウムガスを液化するためのヘリウム液化装置と、ヘリウム液化装置にヘリウムガスを供給するためのヘリウムガス供給管と、ヘリウム液化装置へのヘリウムガスの供給を制御するための制御部と、を備える構成をとり、ガス分析装置によりヘリウムガス供給管内を流れるヘリウムガスの組成を分析し、ヘリウムガス中に含まれる不純物の濃度を基に、制御部によりヘリウムガスの供給を制御することができる。その結果、純度の高い液化ヘリウムを生成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の適用した一実施形態であるガス分析装置、ガス分析方法及びヘリウム液化システムについて、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大している場合があり、各構成要素の寸法などが実際と同じであるとは限らない。
【0025】
<ガス分析装置>
図1は、本発明を適用した一実施形態であるガス分析装置の構成を示す系統図である。
図1に示すように、本実施形態のガス分析装置1は、分析用チャンバ2と、分析ガス供給管3と、流量制限機構4と、真空ポンプ5と、ピラニ真空計6と、圧力計7と、を備えて概略構成されている。本実施形態のガス分析装置1は、ピラニ真空計6及び圧力計7を用いて、分析用チャンバ2に供給される混合ガスの組成を分析するための装置である。
【0026】
分析用チャンバ2は、測定対象となる混合ガスを定圧状態で保持するための容器である。分析用チャンバ2としては、混合ガスを定圧状態で保持することができれば、特に限定されないが、具体的には、例えば、耐真空性能を有するヘッダー管等を用いることができる。
【0027】
分析ガス供給管3は、分析用チャンバ2に接続された配管である。分析ガス供給管3により、分析用チャンバ2に混合ガスを供給することができる。分析ガス供給管3の材質としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、SUS304等が挙げられる。
【0028】
流量制限機構4は、分析ガス供給管3に設けられている。流量制限機構4により、分析ガス供給管3内を流れるガスの流量を制限することができる。流量制限機構4としては、ガスの流量を制限することができるものであれば、特に限定されないが、具体的には、例えば、金属製オリフィス等を用いることができる。
【0029】
真空ポンプ5は、排気管8を介して分析用チャンバ2に接続されるように設けられている。真空ポンプ5により、分析用チャンバ2内を排気することにより定圧に保持することができる。真空ポンプ5としては、分析用チャンバ2内を所定の圧力に維持することができる減圧手段であれば、特に限定されないが、具体的には、例えば、油回転ポンプ、ドライポンプ等を用いることができる。
【0030】
ピラニ真空計6は、分析用チャンバ2に設けられている。ピラニ真空計6により、分析用チャンバ2内の圧力を測定することができる。本発明において、ピラニ真空計6により測定した圧力値を「ピラニ真空計指示圧力値」と定義する。
【0031】
ピラニ真空計6は、内部にピラニ真空素子11を有し、ピラニ真空素子11が測定した熱量から圧力へ換算することができる。
図2に本発明を適用した一実施形態であるピラニ真空素子の構成を示す。本実施形態で用いるピラニ真空素子11は、金属筒12と、電極13、14と、金属細線15と、入口部16と、を有して概略構成されている。
【0032】
金属筒12は、測定対象であるガスが供給される金属製の筒である。ガスの導入は、入口部16から行われる。
【0033】
金属細線15は、金属筒12内に設けられており、両端に電極13及び電極14が接続されている。電極13及び電極14を介して、金属細線15に流れる電流又は印加される電圧を常に制御することにより、金属細線15の温度を一定に保つことができる。金属筒12内のガスが金属細線15の熱を奪うことにより、金属細線15に流れる電流又は印加される電圧が変化するため、この変化を測定することにより、金属細線15がガスにより奪われた熱量を算出することができる。さらに、奪われた熱量から、圧力を算出することができる。金属細線15の材質としては、具体的には、例えば、白金等が挙げられる。
【0034】
圧力計7は、分析用チャンバ2に設けられている。圧力計7により、分析用チャンバ2内の圧力を測定することができる。圧力計7としては、測定対象のガスの組成による影響を受けない圧力計であれば、特に限定されるものではない。このような圧力計としては、具体的には、例えば、キャパシタンス真空計等を用いることができる。上述のピラニ真空計6とは別に圧力計7を用いて圧力を測定することで、ピラニ真空計指示圧力値に含まれる誤差を評価することができる。本発明において、圧力計7により測定した圧力値を「圧力計指示圧力値」と定義する。
【0035】
<ガス分析方法>
次に、上述したガス分析装置1を用いた本実施形態のガス分析方法について説明する。
本実施形態のガス分析方法は、混合ガスの各成分について、ピラニ真空計6の指示圧力と圧力計7における指示圧力との関係を示す検量線を得る工程(検量線作成工程)と、ピラニ真空素子11内の混合ガスの流れが分子流領域となる圧力に調整した後、ピラニ真空計6及び圧力計7を用いて上記混合ガスの圧力を測定して、それぞれの測定値を得る工程(圧力測定工程)と、検量線と、ピラニ真空計による測定値(ピラニ真空計指示圧力値)と、他の真空計による測定値(圧力計指示圧力値)と、から、混合ガスの組成を算出する工程(組成算出工程)と、を含むガス分析方法である。以下、測定対象の混合ガスが、主成分としてヘリウムを含み、不純物として酸素及び窒素を含む場合を例として、各工程を詳細に説明する。
【0036】
(ピラニ真空計指示圧力値について)
具体的な説明をする前に、ピラニ真空計6で測定されるピラニ真空計指示圧力値と、圧力計7により測定される圧力計指示圧力値との関係について説明する。ピラニ真空計6は、金属細線15がガスにより奪われた熱量から圧力を換算している。金属細線15から奪われる熱は、気体分子の衝突により奪われる熱であり、この熱量は、一般的に下記式(1)で表される。下記式(1)中、Qは金属細線15から奪われる熱量(単位:W)、γは気体の比熱比(単位:−)、η
0は自由分子粘性係数(単位:−)、Pは圧力(単位:Pa)、αは適応係数(単位:−)、T
1は金属円筒表面温度(単位:K)、T
2は金属円筒表面温度(単位:K)を示す。
Q=π×R
1×(γ+1)/(γ−1)×η
0×P×α×(T
1−T
2) ・・・(1)
【0037】
上記式(1)が示すように、金属細線15から奪われる熱量は、測定対象のガスの物性に依存する。そのため、ピラニ真空計指示圧力値は、測定対象のガスに依存する。本実施形態では、ピラニ真空計6を空気で校正しているため、測定対象の混合ガスが空気以外の場合は、ピラニ真空計指示圧力値に誤差が生じ、圧力計指示圧力値と異なる値を示すことがある。
【0038】
(検量線作成工程)
検量線作成工程では、混合ガスに含まれる各成分について、ピラニ真空計指示圧力値と圧力計指示圧力値との関係を示す検量線を作成する。検量線の作成については、実際にピラニ真空計6及び圧力計7を用いて測定することにより行ってもよいし、文献値を用いて作成してもよい。
【0039】
図3に、ヘリウム、酸素、窒素における、ピラニ真空計指示圧力値と圧力計指示圧力値の関係を示した検量線を示す。なお、検量線は文献(飯島徹穂ら、「真空技術活用マニュアル」、工業調査会)を参考に作成した。例えば、ヘリウムのみが存在する場合、ピラニ真空計指示圧力値が10Paの場合、圧力計指示圧力値は15Paとなる。
【0040】
図3からわかるように、圧力計指示圧力値が200Pa及びそれ以下の範囲では、圧力計指示圧力値とピラニ真空計の指示圧力は両対数グラフに記載すると、対象とするガスの種類に依らずほぼ直線関係となる。また、酸素と窒素については、同じ直線関係となる。そのため、酸素及び窒素については不純物成分としてまとめて扱うことができる。
【0041】
一方、圧力計指示圧力値が400Pa及びそれ以上の範囲では、本実施形態の混合ガスの主成分であるヘリウムに関して、圧力計指示圧力値とピラニ真空計指示圧力値は両対数グラフに記載すると、直線関係は得られない。
【0042】
圧力計指示圧力値が100Pa近傍では、本実施形態の混合ガスの主成分であるヘリウムと、不純物である酸素、窒素に関して、圧力計指示圧力値とピラニ真空計指示圧力値はほぼ同じとなる。つまり、この圧力範囲では、対象ガスがヘリウム、酸素、窒素何れのガスであっても、ピラニ真空計指示値は概略同じ値となる。
【0043】
圧力計指示圧力値が10Pa及び、それ以下の範囲では、ヘリウムに関する圧力計指示圧力値とピラニ真空計指示圧力値との関係と、酸素、窒素に関する圧力計指示圧力値とピラニ真空計指示圧力値との関係は、両対数グラフではそれぞれ直線関係があり、さらに両者は大きく異なる。
【0044】
(圧力測定工程)
圧力測定工程では、分析対象である混合ガスのピラニ真空計指示圧力値及び圧力計指示圧力値を測定する。具体的には、先ず、分析ガス供給管3を介して、混合ガスを分析用チャンバ2に供給する。次に、排気管8を介して真空ポンプ5により、分析用チャンバ2内の圧力を減圧し、ピラニ真空素子11内の混合ガスの流れが分子流領域になるように調整する。分子流領域にすることで、ピラニ真空計6で圧力を測定する際に、測定ガス流体の流れが分析結果に及ぼす影響を無視することができる。ピラニ真空素子11内の混合ガスの流れが分子流領域になった状態で、ピラニ真空計6を用いて、混合ガスのピラニ真空計指示圧力値を測定し、さらに、圧力計7を用いて、混合ガスの圧力計指示圧力値を測定する。
【0045】
ところで、ピラニ真空素子11内のガスの流れを分子流領域にするためには、ガスの平均自由行程をピラニ真空素子11内の金属細線15よりも大きくする必要がある。下記表1に常温(300K)のヘリウムの平均自由行程を記載する。各値は下記式(2)から算出した。下記式(2)中、λは分子の平均自由行程(単位:m)、κはボルツマン定数(単位:−)、Tは気体温度(単位:K)、σは気体分子直径(単位:m)、Pは圧力(単位:Pa)を示す。
λ=κ・T/(2
0.5・π・σ
2・P) ・・・(2)
【0047】
一般的に金属細線15の直径は10〜100μmであるところ、上記表1からわかるように、圧力が10Paの場合、ヘリウム分子の平均自由行程は1.96mm程度となり、金属細線15の直径に対して十分に大きくなる。従って、圧力が10Pa以下であれば、ピラニ真空計6で圧力を測定する際に、測定ガス流体の流れの影響について考慮する必要がなく、高い精度で、混合ガスの組成を分析することができる。
【0048】
(組成算出工程)
組成算出工程では、上述の検量線と、圧力計指示圧力値P
1と、ピラニ真空計指示圧力値P
2とから、混合ガスの不純物成分(酸素及び窒素)の濃度yを下記式(3)から求める。ここで、P
Heは圧力計指示圧力値がP
1の場合であって、ガス流体が全てヘリウムの場合のピラニ真空計による指示圧力であり、P
N2は圧力計指示圧力値がP
1の場合であって、ガス流体が全て酸素、窒素又はその混合物の場合のピラニ真空計指示圧力値である。P
He、P
N2の各値は、P
1から検量線を用いて算出することができる(
図3を参照)。
y=(P
2−P
He)/(P
N2−P
He) ・・・(3)
【0049】
ここで、
図3からわかるように、P
1が10Paよりも大きい場合、P
He、P
N2の各値は近い値となるため、下記式(3)より求めたyの誤差が大きくなる。よって、本実施例では、P
1が10Pa以下の状態で測定を行う必要がある。
【0050】
<ヘリウム液化システム>
図4は、本発明を適用した一実施形態であるヘリウム液化システムの構成を示す系統図である。
図4に示すように、本実施形態のヘリウム液化システム21は、ガス分析装置1と、ヘリウム精製器22と、ヘリウム液化装置23と、真空保冷外槽24と、ヘリウムガス供給管25と、を備えており、さらに、制御部として開閉弁26と、開閉弁27と、を備えて概略構成される。本実施形態のヘリウム液化システム21は、ガス分析装置1によりヘリウムガス供給管25内を流れるヘリウムガスの組成を分析し、ヘリウムガス含まれる不純物の濃度を基に、開閉弁26によりヘリウムガスの供給を制御しながらヘリウムを液化するためのシステムである。なお、ガス分析装置1については上述しているため、説明を省略する。
【0051】
ヘリウム精製器22は、ヘリウムガスを精製するための装置である。ヘリウム精製器22には、ヘリウムガス供給管25を介してヘリウムガスが供給されている。ヘリウム精製器22において精製されたヘリウムガスは、ヘリウム液化装置23に供給される。ヘリウム精製器22としては、ヘリウムガスを精製することができるものであれば、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヘリウム液化機内部精製装置(Linde社製)等を用いることができる。
【0052】
ヘリウム液化装置23は、ヘリウム精製器22により供給されたヘリウムガスを液化するための装置である。ヘリウム液化装置23により生成された液化ヘリウムは、配管28から採取される。ヘリウム液化装置23としては、ヘリウムガスを液化することができるものであれば、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヘリウム液化装置(Linde社製)等を用いることができる。
【0053】
真空保冷外槽24は、ヘリウム精製器22及びヘリウム液化装置23を収納することにより、ヘリウム精製器22及びヘリウム液化装置23を外気と熱的に遮断するための槽である。真空保冷外槽24は、排気管8を介して、真空ポンプ5と接続されており、槽内が真空状態に維持されている。
【0054】
ヘリウムガス供給管25は、ヘリウムガスをヘリウム精製器22に供給するための配管である。また、ヘリウムガス供給管25は、分析ガス供給管3を介してガス分析装置1とも接続されており、ヘリウムガスの一部は、ガス分析装置1に供給される。
【0055】
開閉弁26は、ヘリウムガス供給管25に設けられている。開閉弁26の開閉状態を制御することにより、ヘリウム精製器22へのヘリウムガスの供給を制御することができる。開閉弁26としては、ヘリウムガスの供給を制御することができるものであれば、特に限定されないが、具体的には、例えば、空気圧駆動式ダイヤフラム弁等を用いることができる。
【0056】
開閉弁27は、ヘリウム精製器22とヘリウム液化装置23とを接続する配管に設けられている。開閉弁27の開閉状態を制御することにより、ヘリウム精製器22からヘリウム液化装置23へのヘリウムガスの供給を制御することができる。開閉弁27としては、ヘリウムガスの供給を制御することができるものであれば、特に限定されないが、具体的には、例えば、空気圧駆動式ダイヤフラム弁等を用いることができる。
【0057】
ガス分析装置1は、信号線29を介して、ヘリウム精製器22、開閉弁26、及び開閉弁27と接続している。ガス分析装置1は、ヘリウムガス中に含まれる不純物の濃度を基に、開閉弁26及び開閉弁27の開閉状態を制御することで、ヘリウムガスの供給を制御することができる。例えば、不純物の濃度が10%を超えた場合に、ガス分析装置1により、信号線29を介して開閉弁26及び開閉弁27を閉状態にすることで、ヘリウム液化装置23へのヘリウムガスの供給を停止する。さらに、ガス分析装置1により、信号線29を介してヘリウム精製器22の運転を停止する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のガス分析装置1では、混合ガスを定圧状態で保持する分析用チャンバ2と、分析用チャンバ2を減圧するための真空ポンプ5と、混合ガスのピラニ真空計指示圧力値を測定するためのピラニ真空計6と、混合ガスの圧力計指示圧力値を測定するための圧力計7と、を備える構成をとり、真空ポンプ5によりピラニ真空素子11内の混合ガスの流れが分子流領域となるように圧力を調整することができる。そのため、ピラニ真空素子11内の混合ガスの流れが分析結果に及ぼす影響を無視することができる。その結果、精度良く、連続して混合ガスの組成の分析を行うことができる。
【0059】
また、本実施形態のガス分析方法では、ピラニ真空素子11内の混合ガスの流れが分子流領域となるように圧力を調整した状態で、混合ガスのピラニ真空計指示圧力値及び圧力計指示圧力値を測定し、検量線と、混合ガスのピラニ真空計指示圧力値及び圧力計指示圧力値と、を用いて混合ガスの組成を分析している。そのため、ピラニ真空素子11内の混合ガスの流れが分析結果に及ぼす影響を無視することができる。その結果、精度良く、連続して混合ガスの組成の分析を行うことができる。
【0060】
さらに、本実施形態のヘリウム液化システム21では、上述のガス分析装置1と、ヘリウムガスを液化するためのヘリウム液化装置23と、ヘリウム液化装置23にヘリウムガスを供給するためのヘリウムガス供給管25と、ヘリウム液化装置23ヘのリウムガスの供給を制御するための開閉弁26及び開閉弁27と、を備える構成をとり、ガス分析装置1によりヘリウムガス供給管25内を流れるヘリウムガスの組成を分析し、ヘリウムガス中に含まれる不純物の濃度を基に、開閉弁26及び開閉弁27によりヘリウムガスの供給を制御することができる。そのため、純度の高い液化ヘリウムを生成することができる。
【0061】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した実施形態のガス分析方法では、混合ガスが、主成分としてヘリウムを含み、不純物として酸素及び窒素を含む場合を例として説明したが、混合ガスが主成分としてヘリウムを含み、不純物として水素を含む場合であってもよい。
【0062】
また、上述した実施形態のガス分析方法では、ヘリウム、酸素、及び窒素につて検量線を作成し、酸素と窒素については一つの成分として近似して分析を行ったが、酸素と窒素が空気の組成比である場合は、酸素と窒素の検量線を作成する代わりに、空気の検量線を作成して分析を行ってもよい。つまり、ヘリウムと空気の検量線を作成し、圧力計指示圧力値がP
1の場合であって、ガス流体が全てヘリウムの場合のピラニ真空計指示圧力値P
Heと、ガス流体が全て空気の場合のピラニ真空計指示圧力値P
空とを検量線から求める。下記式(4)と、P
Heと、P
空とから、不純物成分(空気)の濃度yを算出してもよい。
y=(P
2−P
He)/(P
空−P
He) ・・・(4)