【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0060】
1.使用原料
以下の実施例及び比較例においては、以下の材料を使用した。
1−1.正極活物質
硫黄(Aldrich社製、比重2g/cm
3)
1−2.導電性カーボン
活性炭(クラレケミカル社製、YP−80F(BET比表面積:1,933m
2/g))
中空シェル構造を有するファーネスブラック(ライオン社製、ケッチェンブラックEC−600JD(BET比表面積:1,156m
2/g))
アセチレンブラック(電気化学工業社製、OSAB(BET比表面積:850m
2/g))
アセチレンブラック(Strem Chemicals社製、アセチレンカーボンブラック(BET比表面積:75m
2/g))
1−3.負極材料
リチウムシート(フルウチ化学社製、厚さ0.25mm)
インジウムシート(フルウチ化学社製、厚さ0.30mm)
1−4.薄膜硫黄被覆導電性カーボン作製用の有機溶媒
シクロヘキサン(和光純薬工業社製、試薬特級)
1−5.固体電解質作製用の原料
硫化リチウム(フルウチ化学社製、Li
2S)
五硫化二りん(Aldrich社製、P
2S
5)
【0061】
2.固体電解質の作製方法
露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス(美和製作所社製、MDB−1KP型)内で、硫化リチウム0.453gと五硫化二りん0.547gを乳鉢で混合したものと4mmΦのジルコニアボール180gとを容量80mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度250rpm、公転速度500rpm(自転と逆回転)で10時間処理した後、アルゴン雰囲気で220℃、2時間加熱して、固体電解質を作製した。
【0062】
3.全固体型リチウム硫黄電池の作製方法
下記の電池作製は、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
ポリカーボネート製の円筒管治具(内径10mmΦ、外径23mmΦ、高さ20mm)の下側から負極集電体としてSUS304製の円筒治具(10mmΦ、高さ10mm)を差し込み、ポリカーボネート製の円筒管治具の上側から固体電解質70.0mgを入れて、さらに正極集電体としてSUS304製の円筒治具(10mmΦ、高さ15mm)をポリカーボネート製の円筒管治具の上側から差し込んで固体電解質を挟み込み、200MPaの圧力で1分間プレスすることにより直径10mmΦ、厚さ約0.6mmの固体電解質層を作製した。
次に、上側から差し込んだSUS304製の円筒治具(正極集電体)を一旦抜き取り、ポリカーボネート製の円筒管内の固体電解質層の上に正極合材15.0mgを入れ、再び上側からSUS304製の円筒治具(正極集電体)を差し込み、200MPaの圧力で3分間プレスすることで、直径10mmΦ、厚さ約0.1mmの正極合材層を形成した。
次に、下側から差し込んだSUS304製の円筒治具(負極集電体)を抜き取り、負極としてリチウムシートを穴あけポンチで直径8mmΦに打ち抜いたものとインジウムシートを穴あけポンチで直径9mmΦに打ち抜いたものを重ねてポリカーボネート製の円筒管治具の下側から入れて、再び下側からSUS304製の円筒治具(負極集電体)を差し込み、80MPaの圧力で3分間プレスすることでリチウム−インジウム合金負極を形成した。
以上のようにして、下側から順に、負極集電体、リチウム−インジウム合金負極、固体電解質層、正極合材層、正極集電体が積層された全固体型リチウム硫黄電池を作製した。
【0063】
4.評価方法
下記の実施例及び比較例においては、以下の評価を実施した。
(a)BET比表面積
自動比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル株式会社製、BELSORP−mini II)を用いて測定し、BET法により測定した。
(b)放電容量
充放電試験装置(アスカ電子社製、ACD−M01A)を用いて、0.20mA(0.25mA/cm
2)の電流値で充放電を繰り返し、3サイクル目の放電容量を測定した。
測定した放電容量を、正極合材中の薄膜硫黄被覆導電性カーボン(比較例3、4にあっては、硫黄と導電性カーボンの混合物)に含まれる硫黄の重量(g)で除して得た数値を硫黄当たりの放電容量とし、正極合材層の重量(0.015g)で除して得た数値を正極合材層当たりの放電容量とした。
なお、下記表1において、硫黄当たりの放電容量が、理論容量である約1672mAh/gよりも高くなっている実施例がいくつか存在するが、これは、正極合材中の固体電解質に残存する硫化リチウム(Li
2S)の一部も正極活物質として働いているためと考えられる。
【0064】
(比較例1)
硫黄200mgとシクロヘキサン20gを50mlのスクリュー管に入れて、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液に活性炭100mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、活性炭を分散させた。続いて、25℃で48時間、マグネチックスターラーで撹拌して活性炭に硫黄を吸着させることにより、硫黄で活性炭を被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆された活性炭を沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、0.63wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は0.99wt%であるので、73.0mgの硫黄が100mgの活性炭を被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆された活性炭中の硫黄は42.2wt%(表1)になる。用いた活性炭のBET比表面積は1,933m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は0.19nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆された活性炭を硫黄溶液から分離し、70℃で1時間加熱処理することにより、160.9mg(収率93%)の薄膜硫黄被覆活性炭を得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆活性炭100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、140mg(収率70%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0065】
(実施例1)
硫黄500mgとシクロヘキサン20gを50mlのスクリュー管に入れて、50℃に加熱しながら、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液に活性炭100mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、活性炭を分散させた。続いて、50℃で1時間マグネチックスターラーを用いて撹拌した後、3時間かけて25℃まで下げ、その後、25℃で48時間撹拌して活性炭に硫黄を吸着させることにより、硫黄で活性炭を被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆された活性炭を沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、0.78wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は2.44wt%であるので、343.5mgの硫黄が100mgの活性炭を被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆された活性炭中の硫黄は77.5wt%(表1)になる。用いた活性炭のBET比表面積は1,933m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は0.89nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆された活性炭を硫黄溶液から分離し、70℃で1時間加熱処理することにより、418.8mg(収率94%)の薄膜硫黄被覆活性炭を得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆活性炭100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、140mg(収率70%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0066】
(比較例2)
硫黄200mgとシクロヘキサン20gを50mlのスクリュー管に入れて、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液にアセチレンブラック(BET比表面積:75m
2/g)100mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、アセチレンブラックを分散させた。続いて、25℃で48時間、マグネチックスターラーで撹拌してアセチレンブラックに硫黄を吸着させることにより、硫黄でアセチレンブラックを被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆されたアセチレンブラックを沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、0.94wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は0.99wt%であるので、11.2mgの硫黄が100mgのアセチレンブラックを被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆されたアセチレンブラック中の硫黄は10.1wt%(表1)になる。用いたアセチレンブラックのBET比表面積は75m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は0.75nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆されたアセチレンブラックを硫黄溶液から分離し、160℃で1時間加熱処理することにより、102.1mg(収率92%)の薄膜硫黄被覆アセチレンブラックを得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆アセチレンブラック100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、143mg(収率72%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0067】
(比較例3)
露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと硫黄68.4mgとアセチレンブラック(BET比表面積:850m
2/g)31.6mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で1時間処理し、その後25℃で1時間加熱処理し、続いて固体電解質100mgを加えて、さらに遊星ボールミルで、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、142mg(収率71%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0068】
(比較例4)
露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと硫黄68.4mgとアセチレンブラック(BET比表面積:850m
2/g)31.6mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で1時間処理し、その後160℃で1時間加熱処理し、続いて固体電解質100mgを加えて、さらに遊星ボールミルで、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、142mg(収率71%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0069】
(実施例2)
硫黄400mgとシクロヘキサン20gを50mlのスクリュー管に入れて、50℃に加熱しながら、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液にアセチレンブラック(BET比表面積:850m
2/g)100mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、アセチレンブラックを分散させた。続いて、50℃で1時間マグネチックスターラーを用いて撹拌した後、3時間かけて25℃まで下げ、その後、25℃で48時間撹拌してアセチレンブラックに硫黄を吸着させることにより、硫黄でアセチレンブラックを被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆されたアセチレンブラックを沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、0.91wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は1.96wt%であるので、216.8mgの硫黄が100mgのアセチレンブラックを被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆されたアセチレンブラック中の硫黄は68.4wt%(表1)になる。用いたアセチレンブラックのBET比表面積は850m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は1.28nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆されたアセチレンブラックを硫黄溶液から分離し、25℃で1時間加熱処理することにより、298.2mg(収率94%)の薄膜硫黄被覆アセチレンブラックを得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆アセチレンブラック100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、138mg(収率69%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0070】
(実施例3)
実施例2と同じ方法で、硫黄でアセチレンブラックを被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆されたアセチレンブラックを沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、0.91wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は1.96wt%であるので、216.8mgの硫黄が100mgのアセチレンブラックを被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆されたアセチレンブラック中の硫黄は68.4wt%(表1)になる。用いたアセチレンブラックのBET比表面積は850m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は1.28nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆されたアセチレンブラックを硫黄溶液から分離し、160℃で1時間加熱処理することにより、295.2mg(収率93%)の薄膜硫黄被覆アセチレンブラックを得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆アセチレンブラック100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、140mg(収率70%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0071】
(比較例5)
硫黄200mgとシクロヘキサン20gを50mlのスクリュー管に入れて、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液に中空シェル構造を有するファーネスブラック(BET比表面積:1,156m
2/g)100mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、ファーネスブラックを分散させた。続いて、25℃で48時間、マグネチックスターラーで撹拌してファーネスブラックに硫黄を吸着させることにより、硫黄でファーネスブラックを被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、0.78wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は0.99wt%であるので、43.2mgの硫黄が100mgのファーネスブラックを被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラック中の硫黄は30.2wt%(表1)になる。用いたファーネスブラックのBET比表面積は1,156m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は0.19nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを硫黄溶液から分離し、160℃で1時間加熱処理することにより、132.1mg(収率92%)の薄膜硫黄被覆ファーネスブラックを得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、140mg(収率70%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0072】
(実施例4)
硫黄275mgとシクロヘキサン20gを50mlのスクリュー管に入れて、50℃に加熱しながら、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液に中空シェル構造を有するファーネスブラック(BET比表面積:1,156m
2/g)100mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、ファーネスブラックを分散させた。続いて、50℃で1時間マグネチックスターラーを用いて撹拌した後、3時間かけて25℃まで下げ、その後、25℃で48時間撹拌してファーネスブラックに硫黄を吸着させることにより、硫黄でファーネスブラックを被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、0.84wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は1.36wt%であるので、106.0mgの硫黄が100mgのファーネスブラックを被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラック中の硫黄は51.5wt%(表1)になる。用いたファーネスブラックのBET比表面積は1,156m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は0.46nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを硫黄溶液から分離し、160℃で1時間加熱処理することにより、193.5mg(収率94%)の薄膜硫黄被覆ファーネスブラックを得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、139mg(収率70%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0073】
(実施例5)
硫黄500mgとシクロヘキサン20gを50mlのスクリュー管に入れて、50℃に加熱しながら、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液に中空シェル構造を有するファーネスブラック(BET比表面積:1,156m
2/g)100mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、ファーネスブラックを分散させた。続いて、50℃で1時間マグネチックスターラーを用いて撹拌した後、3時間かけて25℃まで下げ、その後、25℃で48時間撹拌してファーネスブラックに硫黄を吸着させることにより、硫黄でファーネスブラックを被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、1.09wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は2.44wt%であるので、280.1mgの硫黄が100mgのファーネスブラックを被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラック中の硫黄は73.7wt%(表1)になる。用いたファーネスブラックのBET比表面積は1,156m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は1.21nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを硫黄溶液から分離し、160℃で1時間加熱処理することにより、357.2mg(収率94%)の薄膜硫黄被覆ファーネスブラックを得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、139mg(収率70%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0074】
(実施例6)
硫黄1,000mgとシクロヘキサン20gを50mlのスクリュー管に入れて、50℃に加熱しながら、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液に中空シェル構造を有するファーネスブラック(BET比表面積:1,156m
2/g)145mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、ファーネスブラックを分散させた。続いて、50℃で1時間マグネチックスターラーを用いて撹拌した後、3時間かけて25℃まで下げ、その後、25℃で48時間撹拌し、続いて3時間かけて15℃まで下げ、その後、15℃で48時間撹拌してファーネスブラックに硫黄を吸着させることにより、硫黄でファーネスブラックを被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、0.92wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は4.76wt%であるので、814.3mgの硫黄が145mgのファーネスブラックを被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラック中の硫黄は84.9wt%(表1)になる。用いたファーネスブラックのBET比表面積は1,156m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は2.43nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを硫黄溶液から分離し、160℃で1時間加熱処理することにより、911.9mg(収率95%)の薄膜硫黄被覆ファーネスブラックを得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、143mg(収率72%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0075】
(実施例7)
硫黄1,000mgとシクロヘキサン20gを50mlのスクリュー管に入れて、50℃に加熱しながら、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液に中空シェル構造を有するファーネスブラック(BET比表面積:1,156m
2/g)105mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、ファーネスブラックを分散させた。続いて、50℃で1時間マグネチックスターラーを用いて撹拌した後、3時間かけて25℃まで下げ、その後、25℃で48時間撹拌し、続いて3時間かけて15℃まで下げ、その後、15℃で48時間撹拌してファーネスブラックに硫黄を吸着させることにより、硫黄でファーネスブラックを被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、1.02wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は4.76wt%であるので、793.9mgの硫黄が105mgのファーネスブラックを被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラック中の硫黄は88.3wt%(表1)になる。用いたファーネスブラックのBET比表面積は1,156m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は3.27nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを硫黄溶液から分離し、160℃で1時間加熱処理することにより、855.3mg(収率95%)の薄膜硫黄被覆ファーネスブラックを得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、142mg(収率71%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0076】
(実施例8)
硫黄1,000mgとシクロヘキサン20gを50mlのスクリュー管に入れて、50℃に加熱しながら、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液に中空シェル構造を有するファーネスブラック(BET比表面積:1,156m
2/g)70mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、ファーネスブラックを分散させた。続いて、50℃で1時間マグネチックスターラーを用いて撹拌した後、3時間かけて25℃まで下げ、その後、25℃で48時間撹拌し、続いて3時間かけて15℃まで下げ、その後、15℃で48時間撹拌してファーネスブラックに硫黄を吸着させることにより、硫黄でファーネスブラックを被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、1.05wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は4.76wt%であるので、787.8mgの硫黄が70mgのファーネスブラックを被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラック中の硫黄は91.8wt%(表1)になる。用いたファーネスブラックのBET比表面積は1,156m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は4.87nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを硫黄溶液から分離し、160℃で1時間加熱処理することにより、813.4mg(収率95%)の薄膜硫黄被覆ファーネスブラックを得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、139mg(収率70%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0077】
(比較例6)
硫黄1,000mgとシクロヘキサン20gを50mlのスクリュー管に入れて、50℃に加熱しながら、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液に中空シェル構造を有するファーネスブラック(BET比表面積:1,156m
2/g)60mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、ファーネスブラックを分散させた。続いて、50℃で1時間マグネチックスターラーを用いて撹拌した後、3時間かけて25℃まで下げ、その後、25℃で48時間撹拌し、続いて3時間かけて15℃まで下げ、その後、15℃で48時間撹拌してファーネスブラックに硫黄を吸着させることにより、硫黄でファーネスブラックを被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、1.10wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は4.76wt%であるので、777.6mgの硫黄が60mgのファーネスブラックを被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラック中の硫黄は92.8wt%(表1)になる。用いたファーネスブラックのBET比表面積は1,156m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は5.61nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを硫黄溶液から分離し、160℃で1時間加熱処理することにより、792.6mg(収率95%)の薄膜硫黄被覆ファーネスブラックを得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、142mg(収率71%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0078】
(実施例9)
硫黄900mgとシクロヘキサン24gを50mlのスクリュー管に入れて、50℃に加熱しながら、マグネチックスターラーで撹拌して硫黄を溶解させた。次に、この硫黄のシクロヘキサン溶液に中空シェル構造を有するファーネスブラック(BET比表面積:1,156m
2/g)174mgを浸漬し、超音波処理(出力100W、発振周波数28Hz、40分間)を行い、ファーネスブラックを分散させた。続いて、50℃で1時間マグネチックスターラーを用いて撹拌した後、3時間かけて25℃まで下げ、その後、25℃で48時間撹拌し、続いて3時間かけて15℃まで下げ、その後、15℃で48時間撹拌してファーネスブラックに硫黄を吸着させることにより、硫黄でファーネスブラックを被覆した。
硫黄被覆後の分散液の内、約2gを抜き取り遠心分離により表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを沈降させ、上澄みの硫黄溶液の固形分含有率を測定したところ、0.97wt%であった。もとの硫黄溶液の濃度は3.61wt%であるので、664.9mgの硫黄が174mgのファーネスブラックを被覆したことになる。従って、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラック中の硫黄は79.3wt%(表1)になる。用いたファーネスブラックのBET比表面積は1,156m
2/gなので、比重2g/cm
3の硫黄は1.65nmの厚みで被覆されていることとなる。
硫黄の被覆量及び膜厚計算のために抜き取った約2g以外の残り全量を吸引ろ過することにより、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを硫黄溶液から分離し、25℃で1時間加熱処理することにより、792.2mg(収率94%)の薄膜硫黄被覆ファーネスブラックを得た。
次に、露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgと固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、143mg(収率72%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0079】
(実施例10)
露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと、実施例9で得た薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgをさらに40℃で1時間加熱処理したものと、固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、142mg(収率71%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0080】
(実施例11)
露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと、実施例9で得た薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgをさらに60℃で1時間加熱処理したものと、固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、143mg(収率72%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0081】
(実施例12)
露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと、実施例9で得た薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgをさらに80℃で1時間加熱処理したものと、固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、140mg(収率70%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0082】
(実施例13)
露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと、実施例9で得た薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgをさらに100℃で1時間加熱処理したものと、固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、141mg(収率71%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0083】
(実施例14)
露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと、実施例9で得た薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgをさらに160℃で1時間加熱処理したものと、固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、138mg(収率69%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0084】
(実施例15)
露点温度が−70℃以下のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、5mmΦのジルコニアボール40gと、実施例9で得た薄膜硫黄被覆ファーネスブラック100mgをさらに250℃で1時間加熱処理したものと、固体電解質100mgを容量45mlのジルコニア製容器(フリッチュ社製、Premium line P−7用)に入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製、Premium line P−7)で、自転速度185rpm、公転速度370rpm(自転と逆回転)で2時間処理することにより、139mg(収率70%)の正極合材を得た。
この正極合材を用いて、上述した電池作製方法に従い電池を作製し、放電容量を測定した。
【0085】
比較例1〜6及び実施例1〜15における、導電性カーボンの種類及びBET比表面積、硫黄被覆の有無、膜厚、表面が硫黄で被覆された導電性カーボン(比較例3、4にあっては、硫黄と導電性カーボンの混合物)中の硫黄及び導電性カーボンの重量比、加熱処理温度(1回目・2回目)、並びに、硫黄1g当たりの放電容量及び正極合材層1g当たりの放電容量を表1に示す。
また、比較例1〜6及び実施例1〜15で作製した正極合材中に含まれる、導電性カーボン、硫黄及び固体電解質の量を表2に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
実施例1の正極合材層当たりの放電容量が670mAh/gであるのに対し、比較例1の正極合材層当たりの放電容量が128mAh/gと小さいのは、薄膜硫黄被覆活性炭の硫黄薄膜の膜厚が0.19nmと薄いためである。
【0089】
実施例2の正極合材層当たりの放電容量が496mAh/gであるのに対し、比較例2の正極合材層当たりの放電容量が83mAh/gと小さいのは、薄膜硫黄被覆アセチレンブラックに用いたアセチレンブラックのBET比表面積が75m
2/gと小さく、正極合材中の硫黄の含有量が少なくなるためである。
【0090】
比較例3の正極合材層当たりの放電容量が451mAh/gであるのに対し、実施例2の正極合材層当たりの放電容量は496mAh/gと大きくなっている。これは、絶縁性である硫黄を薄膜化することにより、硫黄内部の拡散距離が短くなり拡散抵抗が低減されたためと考えられる。
【0091】
比較例3では硫黄とアセチレンンブラックとの混合物を25℃で加熱処理したのに対し、比較例4では160℃で加熱処理した。しかしながら、比較例3の正極合材層当たりの放電容量が451mAh/gであるのに対し、比較例4の正極合材層当たりの放電容量は462mAh/gと、ほとんど変わらなかった。
一方、実施例2では表面が硫黄で被覆されたアセチレンブラックを25℃で加熱処理したのに対し、実施例3では160℃で加熱処理したところ、正極合材層当たりの放電容量が496mAh/gから568mAh/gへと顕著に増加した。
以上のことから、遊星ボールミルで処理した硫黄とアセチレンブラックの混合物は加熱処理の温度を上げても正極合材層当たりの放電容量はほとんど変わらないのに対し、表面が硫黄で被覆されたアセチレンブラックの加熱処理温度を上げると、正極合材層当たりの放電容量が顕著に増加することがわかる。
【0092】
比較例5、6及び実施例4〜8では、ファーネスブラックに被覆した硫黄薄膜の膜厚を変化させているが、硫黄薄膜の膜厚が0.19nmと薄い比較例5の正極合材層当たりの放電容量は、108mAh/gと小さく、また、硫黄薄膜の膜厚が5.61nmと厚い比較例6の正極合材層当たりの放電容量も255mAh/gと小さい。一方、硫黄薄膜の膜厚範囲が0.4〜5.0nmの実施例4〜8では、正極合材層当たりの放電容量は、何れも470mAh/g以上と大きくなっている。特に、硫黄薄膜の膜厚範囲が1.0〜2.5nmの実施例5、6では、正極合材層当たりの放電容量は650mAh/g以上と非常に大きくなっている。
これらのことから、硫黄薄膜の膜厚が薄すぎると正極合材中の硫黄の含有量が少なくなり、結果として正極合材層当たりの放電容量が小さくなる一方、硫黄薄膜の膜厚が厚すぎるとリチウムイオン及び電子の拡散距離が長くなることにより拡散抵抗が増大して、正極合材内の抵抗が増加し、結果として正極合材層当たりの放電容量が減少すると考えられる。
【0093】
実施例9では、表面が硫黄で被覆されたファーネスブラックを25℃で1回のみ加熱処理を行ったのに対し、実施例10〜15では25℃で1回目の加熱処理を行った後、さらに40〜250℃で2回目の加熱処理を行った。その結果、正極合材層当たりの放電容量は、実施例9では404mAh/gであるのに対し、実施例10では458mAh/g、実施例11では642mAh/g、実施例12では662mAh/g、実施例13では710mAh/g、実施例14では751mAh/gと段階的に増加した。実施例15では、正極合材層当たりの放電容量は753mAh/gであり、実施例14の正極合材層当たりの放電容量とほとんど変わらなくなった。