(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160953
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール用取付金具
(51)【国際特許分類】
E04D 13/18 20140101AFI20170703BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20170703BHJP
【FI】
E04D13/18ETD
H02S20/23 A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-116816(P2013-116816)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-111876(P2014-111876A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年5月27日
(31)【優先権主張番号】特願2012-243450(P2012-243450)
(32)【優先日】2012年11月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503341996
【氏名又は名称】エバー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595031731
【氏名又は名称】株式会社神清
(73)【特許権者】
【識別番号】395021066
【氏名又は名称】すてきナイスグループ 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069903
【弁理士】
【氏名又は名称】幸田 全弘
(74)【代理人】
【識別番号】100101166
【弁理士】
【氏名又は名称】斎藤 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100157509
【弁理士】
【氏名又は名称】小塩 恒
(72)【発明者】
【氏名】江原 正也
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昭範
(72)【発明者】
【氏名】平田 恒一郎
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0272545(US,A1)
【文献】
国際公開第2012/129039(WO,A2)
【文献】
仏国特許出願公開第02950375(FR,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01985944(EP,A1)
【文献】
国際公開第2010/140878(WO,A2)
【文献】
特開2012−149441(JP,A)
【文献】
特開昭62−258030(JP,A)
【文献】
特開2002−030773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/18
H02S 20/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
谷部と山部が幅方向に交互に形成されたスレート波板上に、太陽電池モジュールを装着するための取付金具であって、
前記取付金具を構成するプレート主体は、その裏面が前記スレート波板の谷部と、この谷部を介して隣接する各山部、およびこの山部に連続する他の谷部の表面とも密着する波状に形成され、かつ谷部を介して隣接する山部間にアングル材が架橋されていること
を特徴とする太陽電池モジュール用取付金具。
【請求項2】
前記プレート主体は、
前記各山部の中央部にビス孔が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用取付金具。
【請求項3】
前記プレート主体は、
前記山部のいずれか一方の端縁に、前記スレート波板上に顕出する取付ボルトと係合する切欠き部が形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール用取付金具。
【請求項4】
前記切欠き部は、
弧状もしくはU字状であること
を特徴とする請求項3に記載の太陽電池モジュール用取付金具。
【請求項5】
前記アングル材は、
断面チャネル状を有し、開口部の縁部に受け部が形成されていること
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用取付金具。
【請求項6】
前記アングル材は、
縦ラックを装着するための取付用ボルトが、移動自在に装着されていること
を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池モジュール用取付金具。
【請求項7】
前記アングル材は、
前記スレート波板の谷部と相対する部位に長手方向に沿ってガイド溝が形成され、当該ガイド溝内に沿って取付用ボルトが移動可能なように構成されていること
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用取付金具。
【請求項8】
前記アングル材は、
その上面に取付用ボルトを有するスライド板が、移動自在に装着されていること
を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池モジュール用取付金具。
【請求項9】
前記アングル材は、
その上部に太陽電池モジュールを支承するための縦ラックが、アングル材と直交状態で装着されるとともに、前記縦ラックの上部にパネル抑え金具が、縦ラックと直交状態でかつ長手方向に沿って移動自在に装着されていること
を特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池モジュール用取付金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、太陽電池モジュールを屋根に付設するために使用される取付金具に関するものである。
より具体的には、波状の屋根材で葺かれたスレート屋根に、太陽電池モジュールを据え付けるのに最適な取付金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
波板形状を有するスレート屋根などに太陽電池モジュールを付設するに際し、例えば、特開2012−149441号公報(特許文献1)においては、スレート屋根用ソーラーパネル取付台が提案されている。
【0003】
この特許文献1に記載の発明は、山と谷とで波形をしたスレート屋根の二つの山の間に下地受け金具を掛渡してボルトでスレート屋根に固定するとともに、前記下地受け金具上にC形鋼からなるソーラーパネル下地を縦方向に配置したのち、前記ソーラーパネル下地をスレート屋根の谷の部分で固定する。
ついで、前記ソーラーパネル下地に横桟を所定の間隔で載設し、ソーラーパネル下地と横桟とで枡目を形成し、この枡目にソーラーパネルが嵌め込めるようにしたことを特徴とするものである。
【0004】
一方、特開2012−117351号公報(特許文献2)では、太陽電池モジュールを波板構造体の上に取り付ける取付金具として、
図6に具体的なものが示されている。
【0005】
この取付金具は、太陽電池モジュールの下端側と上端側にそれぞれ配置され、前記波板構造体と太陽電池モジュールとの間に十分な空間を形成する機能を有している。
【0006】
具体的には、波板の上面に合わせて下面が形成されたベース部と、このベース部に対して垂直方向に延設された垂直部材と、この垂直部材に設けられブラケットを取り付ける取付部とを備えたもので、前記ベース部は、取付金具を波板上に留めるためのビスが必ず波板の波上部に合致することとなる、とされている。
【0007】
前記取付金具において、下端側の取付金具の取付部には、ボルトによりブラケットが締結され、太陽電池モジュールの下端面を支持している。
したがって、前記ブラケットによって、波板構造体上のゴミや雨水を堰き止めることがなく、波板の重なり部分や釘穴から波板構造体下側へ雨水が浸入することがない、としている。
【0008】
一方、前記ブラケットの上部には、太陽電池モジュール上の雨水を、軒先水切り部材上に案内する雨水案内板が取り付けられ、前記軒先水切り部材を、金属製の板材を折曲して形成し、波板の下流側の開口部を通気可能に覆うとともに、滴下した雨水を軒先側に案内する機能が付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−149441号公報(請求項1,
図1)
【特許文献2】特開2012−117351号公報(
図6,段落0015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1に記載のスレート屋根用ソーラーパネル取付台は、二つの山に跨がって載せられる下地受け金具と、当該下地受け金具の上に縦方向に載設されるソーラーパネル下地と、このソーラーパネル下地の上に横方向に載設される横桟とからなるもので、前記下地受け金具は、ボルトを介して梁に直接固定されている。
【0011】
前記下地受け金具は、スレート波板の隣接する二つの山間に架橋可能な長さを有し、両端は翼状に下がった形状をしたもので、ソーラーパネルの荷重は、前記横桟とソーラーパネル下地を介して直接スレートの山部に作用するため、その負荷は分散される。
【0012】
しかしながら、前記下地受け金具に作用する負荷は、スレート波板の隣接する二つの山の頂部にのみ掛かり、負荷が作用する頂部そのものが損傷するおそれがあるので、弾性ワッシャを介在させて、スレート波板の損傷を防止している。
【0013】
さらに、前記ソーラーパネル下地はC形鋼で構成され、前記下地受け金具に対して、その開口部を下にした状態で取付ける構成を採用しているが、前記下地受け金具とC形鋼の壁部分との間にスペーサを介在させる必要があるなど強度的に問題も問題がある。
【0014】
さらにまた、前記下地受け金具を設置する場所は、スレート屋根にボルトが突出していない場所に限定されるという問題がある。
一方、既設のストレート屋根の多くは、築30年を経過したものが多く存在し、その表面が劣化し、強度自体の低下が指摘されている。
【0015】
前記特許文献2に記載の取付金具は、波板の頂面に合わせて下面が形成され、かつ前記頂面の3つを架橋させる長さを有するベース部と、このベース部に対して垂直方向に延設された垂直部材と、この垂直部材に設けられブラケットを取り付ける取付部とを備えたもので、前記ベース部の中央に位置する頂面からビスを野地板および垂木に打ち込み、波板構造体に固定するものである。
【0016】
すなわち、前記取付金具は、波板の少なくとも3つの山部に架橋するための横幅と、各山部と対応する下面形状が求められるので、取付金具の製造工程が複雑化し、コスト面での改善に問題がある。
【0017】
さらに、太陽電池モジュール(以下、単に「モジュール」という。)の上端部を支持するためのブラケットを、当該取付金具の表面部に装着する必要があるなど、構造が複雑なものであるため、実際の取付作業が複雑で、かつ効率的な取付作業ができないなど改良すべき点を有するものである。
【0018】
さらにまた、既存のスレート波板は、アスベストを含むものが多く、既存のスレート波板を躯体構造体に固定するボルトがスレート波板上に突出する場合は、既存のボルトの座金を外した位置に取付金具を装着する必要がある。
【0019】
特に、アスベストを含むスレート波板を葺き替える場合には、アスベストの発生で作業員や周辺環境に不測の影響を及ぼすことが想定される。
一方、そのまま使用する場合には、ボルトがスレート波板上に突出しているので、太陽電池モジュールを取付けるための取付金具の装着位置が制限されることになる。
【0020】
この発明はかかる現状に鑑み、スレート波板上にモジュールを設置するに際し、当該モジュールによる負荷を均等にスレート波板に分散させることでスレート波板を保護することを主たる目的とするものである。
【0021】
この発明の他の目的は、モジュールを設置しようとするスレート波板上に、当該スレート波板を躯体構造体に固定するための既存のボルトが突出している場合であっても、前記既存のボルトのワッシャを取り外すことなく、モジュールを取付けるための取付金具をスレート波板上に取付けることのできる、太陽電池モジュール用取付金具を提供することを
目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
谷部と山部が幅方向に交互に形成されたスレート波板上に、太陽電池モジュールを装着するための取付金具であって、
前記取付金具を構成するプレート主体は、その裏面が前記スレート波板の谷部と、この谷部を介して隣接する各山部、およびこの山部に連続する他の谷部の表面とも密着する波状に形成され
、かつ谷部を介して隣接する山部間にアングル材が架橋されていること
を特徴とする太陽電池モジュール用取付金具である。
【0023】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の太陽電池モジュール用取付金具において、
前記プレート主体は、
前記各山部の中央部にビス孔が設けられていること
を特徴とするものである。
【0024】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の太陽電池モジュール用取付金具において、
前記プレート主体は、
前記山部のいずれか一方の端縁に、前記スレート波板上に顕出する取付ボルトと係合する切欠き部が形成されていること
を特徴とするものである。
【0025】
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の太陽電池モジュール用取付金具において、
前記切欠き部は、
弧状もしくはU字状であること
を特徴とする
ものである。
【0026】
この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項
1〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用取付金具において、
前記アングル材は、
断面チャネル状を有し、開口部の縁部に受け部が形成されていること
を特徴とするものである。
【0027】
この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項
1〜5のいずれかに記載の太陽電池モジュール用取付金具において、
前記アングル材は、
縦ラックを装着するための取付用ボルトが、移動自在に装着されていること
を特徴とするものである。
【0028】
この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項
1〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュール用取付金具において、
前記アングル材は、
前記スレート波板の谷部と相対する部位に長手方向に沿ってガイド溝が形成され、当該ガイド溝内に沿って
取付用ボルトが移動可能なように構成されていること
を特徴とするものである。
【0029】
この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項
1〜5のいずれかに記載の太陽電池モジュール用取付金具において、
前記アングル材は、
その上面に取付用ボルトを有するスライド板が、移動自在に装着されていること
を特徴とするものである。
【0030】
この発明の請求項9に記載の発明は、
請求項
1〜
6のいずれかに記載の太陽電池モジュール用取付金具において、
前記アングル材は、
その上部に太陽電池モジュールを支承するための縦ラックが、アングル材と直交状態で装着されるとともに、前記縦ラックの上部にパネル抑え金具が、縦ラックと直交状態でかつ長手方向に沿って移動自在に装着されていること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0031】
この発明の太陽電池モジュール用取付金具は、その裏面が前記スレート波板の谷部と、この谷部を介して隣接する各山部およびこの山部に連続する他の谷部の表面とも密着する波状に形成される
とともに、谷部を介して隣接する山部間にアングル材が架橋されたプレート主体からなるので、このプレート主体の裏面を、スレート波板の表面に当接させることによって、プレート主体に作用する負荷を均等にスレート波板に分散させることができる。
【0032】
特に、太陽電池モジュール用取付金具を構成するプレートは、谷部を挟んで隣接する山部に連なる他の谷部とも密着する幅を有するものとしているので、スレート波板と密着する面積が拡大し、よりスレート波板に作用する負荷を分散させ、スレート波板を保護する補強カバーとすることができる。
【0033】
前記プレート主体上に設けられるアングル材は、プレート主体に形成される山部間に架橋され、その側縁にモジュールを支承する受け部を設けることによって、モジュールによる負荷を、アングル材を介して均一にスレート波板に分散させることができる。
【0034】
さらに、前記アングル材に設けるモジュールを支承するための縦ラックと係合する取付用ボルトを、スレート波板の幅方向に移動自在に設けることによって、モジュールの大きさに合わせて縦ラックを設置することができる。
その際、前記縦ラック上に装着するパネル抑え金具を、当該縦ラックに沿って移動自在とすることで、縦ラックの配置が固定された後でも太陽電池パネルの大きさに対応させることができる。
【0035】
その際、この発明においては、前記プレート主体にアングル材を取付けているので、従来製品では必須とされていた横ラックを必要とせず、太陽電池モジュール用取付金具の構成をより簡単にすることができ、施工面での一層の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】この発明にかかる太陽電池モジュール用取付金具の一例を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す太陽電池モジュール用取付金具の平面図である。
【
図3】この発明にかかる太陽電池モジュール用取付金具の他の例を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す太陽電池モジュール用取付金具の平面図である。
【
図5】
図3に示す太陽電池モジュール用取付金具の使用状態を示す説明図である。
【
図6】
図3に示す太陽電池モジュール用取付金具に縦ラックを取付けた状態を示す斜視図である。
【
図8】
図3に示す太陽電池モジュール用取付金具をスレート波板に取付けた状態を示す斜視図である。
【
図9】
図3に示す太陽電池モジュール用取付金具に太陽電池モジュールを装着した状態を示す斜視図である。
【
図10】
図3に示す太陽電池モジュール用取付金具のアングル材に縦ラックを装着するための取付用ボルトの他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、この発明にかかる太陽電池モジュール用取付金具(以下、単に「モジュール用取付金具」という。)の実施の一例を、添付の図面に基づいて具体的に説明する。
なお、この発明は、以下に説明する実施例にのみ限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲内において、種々変更することができるものである。
【0038】
この発明のモジュール取付金具1が装着されるスレート波板STは、
図5および
図8に示されるように、谷部Vと山部Tとが交互に連続するものである。
かかるスレート波板STは、粘板岩を用いた天然スレートあるいは無石綿セメントなどからなる人工の化粧スレートの他、ガルバニウム鋼板やポリカーボネート樹脂でも構成されている。
なお、
図5において、符号Rは、前記スレート波板STを固定するための垂木・母屋などの躯体構造体である。
【0039】
この発明にかかるモジュール用取付金具1は、
図1に示すように、屋根を構成するスレート波板STの表面部に密着させて取付けることのできるプレート主体1aを主要な構成部材とするものである。
【0040】
前記プレート主体1aは、ステンレスなどの鋼材からなる桁方向に所要の幅を有するとともに、所要の奥行を有する矩形状のものである。
その裏面は、
図5に示すように、適用しようとするスレート波板STの谷部V
1 と、この谷部V
1 を介して隣接する山部T
1 ,T
1 と、前記山部T
1 ,T
1 に連続する他の谷部V
2 の表面の一部と密着するよう波状に形成されている。
【0041】
すなわち、このプレート主体1aは、前記スレート波板STの谷部Vおよび山部Tに対応させ、一つの谷部1bを中心に、その左右に連なる山部1c,1cと、この山部1c,1cに連なる他の谷部1d,1dの一部、より好ましくは谷部の半分を覆うことができるように形成されたもので、全体は平面が矩形状を呈するものである。
【0042】
このプレート主体1aの各山部1c,1cの中央部には、当該プレート主体1aを躯体構造体R(
図5参照)に取付けるための取付用ビスの挿通孔1e,1eが設けられるとともに、長手方向における一方の縁部には、各山部1cの端部にそれぞれ取付け切欠き部1fが形成されている。
【0043】
この切欠き部1fは、例えば、
図10に示すように、躯体構造体(図示せず)とスレート波板STとを固定する取付ボルトBの外周部の一部もしくは全部と係合させることによって、既存の取付ボルトBがスレート波板ST上に突出していても、この発明のモジュール用取付金具1を使用できるよう構成したものである。
【0044】
かかるプレート主体1aは、以下の実施例においては、その強度を保持するために短手側の幅は約120mmを想定しているが、使用する材料によっては、その幅が40〜70mm、より好ましくは50〜60mmあれば強度的に問題はない。
【0045】
なお、前記プレート主体1aは、山部1cの一方の端縁に切欠き部1fが形成されているが、あらかじめ幅の狭いものであれば、スレート屋根上に突出する既存のボルトBを回避することが可能なため、前記切欠き部1fはなくてもよい。
【0046】
図3に示すモジュール用取付金具11は、
図10に示すように、スレート波板STと躯体構造体(図示せず)とを固定するための取付ボルトBの先端部が、前記スレート波板ST上に座金Wを介して突出しているタイプの屋根構造に使用ものである。
【0047】
具体的には、
図10に示すように、スレート波板ST上に顕出した座金Wや取付ボルトBに影響されることなく、スレート波板ST上に取付けることができるよう構成されている。
【0048】
すなわち、前記モジュール用取付金具11を構成するプレート主体11aは、
図3に示すように、一つの谷部11bを中心に、その左右に連なる山部11c,11cと、前記各山部11cに連なる他の谷部11d,11dの一部、より好ましくは谷部の半分を覆うことができるように形成されたものである。
【0049】
かかるプレート主体11aは、スレート波板STの2つの山部T
1 と対応する各山部11cには、一端から他端に向かって、所要の幅と深さを有するU字状の切欠き部11eがそれぞれ形成され、この切欠き部11eによってスレート波板ST上に顕出した取付ボルトBと係合する座金Wを回避することができるよう構成されている。
【0050】
このプレート主体11aには、
図3に示すように、アングル材12が取付けられる。
前記アングル材12は、前記モジュール用取付金具1に太陽電池モジュールSCMを取付けるための縦ラック14を装着するためのものである。
【0051】
このアングル材12は、前記プレート主体11aの二つの山部11c,11cに架橋させるのに必要な幅を有するもので、断面チャネル状を有し、開口部の縁部に前記縦ラック14を支承するための受け部12aが形成されている。
さらに、その底面の中央部には、太陽電池モジュールSCMを装着する縦ラック14を取付けるための取付用ボルト13が、前記受け部12aから突出する状態で設けられている。
なお、前記アングル材12は、
図3においては、その先端縁がそれぞれ内側に折り曲げられて受け部12aを形成しているが、単にチャネル状であってもよいものである。
【0052】
前記取付用ボルト13は、前記アングル材12の底面の中央部に長手方向に沿って形成されたガイド溝12bに沿って桁方向に移動自在とすることで、前記縦ラック14の取付位置をずらせて装着することを可能としているが、
図10に示すような構成であってもよい。
【0053】
すなわち、
図10に示すように、各先端縁が内側に折り曲げられ、逆L字状に形成された側壁22aを有するアングル材22の上部に、スライダSを長手方向に沿って移動自在に装着し、このスライダSの上面に取付用ボルト13を取付けたものであってもよい。
【0054】
前記取付用ボルト13の装着位置があらかじめ決められている場合には、図示しないが、前記アングル材12を中空パイプで構成し、その上面に溶着手段によって取付けたものであってもよい。
【0055】
なお、前記プレート主体1aおよび11aは、適用しようとするスレート波板STの表面が劣化している場合もあるので、スレート波板STと当接する面、すなわち、その裏面にクッションとなるようなシート状の緩衝材又は厚手の防水テープを付設するか、もしくはシーリング剤やエポキシ樹脂を塗布することが好ましい。
【0056】
さらに、
図1および
図2に示すモジュール取付金具1も、図示しないが、
図3以下に示すモジュール取付金具11と同様に、実際の使用に際しては、その表面にアングル材が付設される。
【0057】
以下、
図3に示したモジュール用取付金具11を使用した太陽電池モジュールSCMの取付例を説明する。
【0058】
まず、
図5に示すように、モジュール用取付金具11を構成するプレート主体11をスレート波板ST上に密着させ、取付用ビス6を利用して躯体構造体Rに固定する。
【0059】
前記プレート主体11のスレート波板STへの取付けに際しては、アングル材12の底面に形成されたねじ挿通孔(図示せず)を利用し、アングル材12とプレート主体11とを同時にスレート波板STに取付けることが好ましい。
【0060】
前記アングル材12には、あらかじめ取付用ボルト13が長手方向に沿ってスライド自在に設けられているので、太陽電池モジュールSCMを取付けるための縦ラック14の取付位置を一定の範囲内で変更させることが可能となっている。
【0061】
前記縦ラック14には、
図5および
図7に示すように、前記太陽電池モジュールSCMを構成するフレームと係合するパネル抑え金具15が、長手方向に沿って移動自在に付設されている。
したがって、前記の取付用ボルト13の移動可能な構成と相俟って、縦ラック14およびパネル抑え金具15を、スレート波板STの桁方向に移動させて取付けることができる構成となっている。
【0062】
この発明においては、モジュール用取付金具11は、広い範囲でスレート波板STを保護することのできるプレート主体11aを主構成要素とし、このプレート主体11aにアングル材12を付設するとともに、このアングル材12に、縦ラック14を取付けるための取付用ボルト13を移動自在に設けている。
【0063】
したがって、前記取付用ボルト13の固定位置を変えることによって、太陽電池モジュールSCMの取付位置を所定の範囲内で変更することができる。
さらに、前記縦ラック14に付設するパネル抑え金具15も移動自在とすることで、太陽電池モジュールSCMの大きさに合わせて縦ラック14を設置することができる。
【0064】
さらに、主構成部材であるプレート主体11aは、スレート波板STの山部と密着する山部にU字状の切欠き部11e,11eが形成されている。
したがって、スレート波板ST上に、フック部を断面C字状の鋼材からなる躯体構造体の縁部に引っ掛け、
図10に示すように、その軸部をスレート波板ST上に引き出し、スレート波板ST上で座金Wを介してナット止めされて、座金Wや取付ボルトBが顕出していても、切欠き部11e内に前記座金Wや取付ボルトBを位置させることができる。
【0065】
その結果、座金Wや取付ボルトBの位置に影響されることなく、スレート波板ST上にプレート主体11aを取付けることができるので、太陽電池モジュールSCMを設置する位置の選択などに大きな自由度を持たせることができる。
【0066】
かかる作用効果は、
図1に示す太陽電池モジュール用取付金具1を構成するプレート主体1aに、前記と同様のアングル部材を付設することによって達成することができる。
【0067】
さらに、前記実施例の基本となる太陽電池モジュール用取付金具1又は11を構成するプレート主体1a又は11aは、いずれもスレート波板STに装着することによってスレート波板STに作用する負荷の軽減と、当該スレート波板STを保護する補強カバーの役目を果たすものである。
【0068】
かかる構成を有するモジュール用取付金具11は、
図8に示すように、スレート波板STの上面に上下方向に所要の間隔を存して配置し、両者を縦ラック14で一体的に連結させる。
さらに、同様にモジュール用取付金具11を桁方向に間隔を存して配置する。
このモジュール用取付金具11,11間の距離は、このモジュール用取付金具11に取付けようとする太陽電池モジュールSCMの大きさによって決定される。
【0069】
図9は、スレート波板STが葺かれた屋根上に縦ラック14を付設したモジュール用取付金具11を、桁方向に所要間隔を存して配置し、その上面に太陽電池モジュールSCMをそれぞれ配設して太陽光発電装置としたものである。
【0070】
なお、この発明の実施例においては、太陽電池モジュールを装着するための縦ラック14は、断面チャネル状で、その上部開口部の縁部を内側に折り曲げたタイプのもので説明したが、他の構成を有するものであってもよい。
【0071】
例えば、図示しないが、断面チャネル状の鋼材を、その開口部を下方に向けた状態でアングル材上に配置して縦ラックとし、前記縦ラックの開口部に外側に向けて延出させた開口縁を、抑え金具を利用してアングル材に固定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
この発明の太陽電池モジュール用取付金具は、屋根が波型の形状を有するもので構成されていれば、スレート波板に限定されることなく使用可能であるので、多くの屋根に太陽電池モジュールを簡単かつ容易に取付けることが可能で、得られる電力を自家消費電力として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1,11 太陽電池モジュール用取付金具
1a,11a プレート主体
1b,1d プレート主体の谷部
1c プレート主体の山部
1f 切欠き部
6 取付用ビス
11b プレート主体の谷部
11c プレート主体の山部
11e 切欠き部
12 アングル材
12a 受け面
13 取付用ボルト
14 縦ラック
15 パネル抑え金具
B 躯体構造体とスレート波板を固定する取付ボルト
W 取付ボルト用の座金
ST スレート波板
V スレート波板の谷部
T スレート波板の山部
R 躯体構造体