(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6160975
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】歯車
(51)【国際特許分類】
F16H 55/08 20060101AFI20170703BHJP
F16H 55/26 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
F16H55/08 Z
F16H55/26
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-87220(P2016-87220)
(22)【出願日】2016年4月25日
【審査請求日】2016年11月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399011737
【氏名又は名称】中村鉄工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中村 直和
【審査官】
塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−291641(JP,A)
【文献】
特開2014−059016(JP,A)
【文献】
特開昭50−139250(JP,A)
【文献】
特開昭61−244966(JP,A)
【文献】
特開2013−253636(JP,A)
【文献】
特開2016−044769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/08
F16H 55/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各歯に1枚歯のインボリュート歯車の歯形曲線を備えた歯車であって、
前記1枚歯のインボリュート歯車の歯形曲線が複数、その歯先を外向き内向き交互に向けて隣接し合い、
歯車本体の歯先を構成する前記1枚歯のインボリュート歯車の基礎円は、前記歯車本体の基準円に対して内接し、
歯車本体の歯底を構成する前記1枚歯のインボリュート歯車の基礎円は、前記歯車本体の基準円に対して外接していることを特徴とする歯車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
歯車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在一般的なラック工具、ホブ工具を用いて少数歯の歯車を製作すると、アンダーカット切り下げが発生し、歯車の強度の低下や滑らかな回転及び伝動ができないという現象が起きる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−244966号公報
【特許文献2】特開2013−253636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歯車で高強度を得るためには歯形を大きくする必要がある。そのためには、歯車全体が大きな物になってしまう。少数歯車にしようとすると、アンダーカット切り下げが発生し歯車の強度が低下する。
本発明は、これらの問題を解決するためのもので、少数歯であっても高強度の軽量化された歯車である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の
歯車は、各歯に1枚歯のインボリュート
歯車の歯形曲線を備えた歯車であって、前記1枚歯のインボリュート歯車の歯形曲線が複数、その歯先を外向き内向き交互に向けて隣接し合い、歯車本体の歯先を構成する前記1枚歯のインボリュート歯車の基礎円は、前記歯車本体の基準円に対して内接し、歯車本体の歯底を構成する前記1枚歯のインボリュート歯車の基礎円は、前記歯車体の基準円に対して外接していることを特徴とする。
なお、上記歯車にはたとえば、はすば歯車、内歯車、かさ歯車、ウォーム、ウォームホイール等のほか、ラックも含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の
歯車は、少数歯であっても、高強度で軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明に係る実施例1の歯車10の平面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の歯形11の説明図である。
【
図3】
図3は、実施例1の説明図として使用する1枚歯のインボリュート歯車12を表した平面図である。
【
図4】
図4は、本発明における歯形11の噛み合いを表した平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の歯形11とほぼ同一のモジュールで描いた従来の歯形110の噛み合いを表した平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の歯車1歯に加わる最大荷重を求めるための図である。
【
図7】
図7は、本発明の歯形11とほぼ同一のモジュールで描いた従来の歯車100の1歯に加わる最大荷重を求めるための図である。
【
図8】
図8は、本発明の歯形11を歯すじ方向にテーパーにした歯車20である(実施例2)。
【
図9】
図9は、本発明の歯形11を適用した、はすば歯車30である(実施例3)。
【
図10】
図10は、本発明の歯形11を適用した、ラック40とピニオン50である(実施例4)。
【
図11】
図11は、本発明の歯形11を適用した、内歯車60である(実施例5)。
【
図12】
図12は、本発明の歯形11を適用した、かさ歯車70である(実施例6)。
【
図13】
図13は、大きさの異なる1枚歯のインボリュート歯車12を配置した平面図である(
実施例7)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
大きな物体を回転及びコントロールする際、現行では同等の大きな歯車を用いて行っているのが一般的であるが、本発明の歯形を持つ歯車を用いれば小型化できる。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明に係る実施例1の歯形11及び歯車10の平面図である。この歯車10は、
図2に示すように1枚歯のインボリュート歯車12を基準円3に対して、
外向き内向き交互に配置したものであり、
図3に示すように基礎円2に接する直線4と、インボリュート曲線との交点5の位置が、1枚歯のインボリュート歯車12の最大幅となる特徴を利用している。
図1は、これら配置した1枚歯のインボリュート歯車12の互いに接している所を境に、歯車として成立させたものである。
図5に示す従来の歯車100は、アンダーカット切り下げという現象が起こるのに対し、
図4に示す実施例1の歯車10は、アンダーカット切り下げが無く、歯厚も厚いため高強度が得られる。
【0010】
図6は実施例1の歯形11、
図7は従来の歯車110を描いている。
下記数1を使い、それぞれの許容荷重をもとめる
と、
図6に示す歯形11の許容荷重は、Z=20×22.8×22.8/6=1733mm
3 P=1733×191/3.9=84873N
図7に示す従来の歯形110の許容荷重は、Z=20×21.5×21.5/6=1541mm
3 P=1541×191/13=22641N
84873N/22641N≒3.7。よって本発明の歯形11は従来の歯形110より約3.7倍の荷重を加えることができる。
【0011】
表1に数1の記号及び数値の説明を示す。
【0012】
表2に
図6図7の符号の数値を示す。
【0013】
【数1】
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【実施例2】
【0016】
図8に示す実施例2は、本発明の歯形の歯すじ方向をテーパーにした歯車20である。歯車20同士を組み合わせることによってバックラッシュを無くし、正逆回転を必要とするものへ利用できる。
【実施例3】
【0017】
図9に示す実施例3は、本発明の歯形を適用したはすば歯車30である。この歯車も従来の歯車より高強度を得ることができる。
【実施例4】
【0018】
図10に示す実施例4は、本発明の歯形を適用したラック40、ピニオン50である。これらの歯車も従来の歯車より高強度を得ることができる。
【実施例5】
【0019】
図11に示す実施例5は、本発明の歯形を適用した内歯車60である。この歯車も従来の歯車より高強度を得ることができる。
【実施例6】
【0020】
図12に示す実施例6は、本発明の歯形を適用したかさ歯車70である。この歯車も従来の歯車より高強度を得ることができる。
【0021】
また、
図9〜
図12以外にも、やまば歯車、はすば内歯車、はすばラック、ねじ歯車、ウォーム、ウォームホイール、まがりばかさ歯車、冠歯車、などに本発明の歯形を適用できる。
【実施例7】
【0022】
図13に示す実施例7は、大きさの異なる1枚歯のインボリュート歯車12を基準円3に配置した歯車90である。
基礎円2の大きさを変えることで、1枚歯のインボリュート歯車12の歯形の大きさも変わり、1回転する中でより大きな強度を必要とするような場合に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
高荷重や高トルクが加わる所に使用される歯車の小型化や軽量化ができる。
歯車の歯すじをテーパーにし組み合わせることによってバックラッシュを無くし、正逆回転を要する大型の印刷機への利用もできる。
【符号の説明】
【0024】
1 1枚歯のインボリュート曲線
10 歯車
11 歯形
12 1枚歯のインボリュート歯車
2 基礎円
3 基準円
4 基礎円に接する直線
5 1枚歯の最大幅を表す点
6 歯たけ
20 歯すじ方向をテーパーにした歯車
30 はすば歯車
40 ラック
50 ピニオン
60 内歯車
70 かさ歯車
90 歯車
100 従来の歯車
110 従来の歯形
【要約】
【課題】現在一般的なラック工具、ホブ工具を用いて少数歯の歯車を製作すると、アンダーカット切り下げが発生し、歯車の強度の低下や滑らかな回転及び伝動ができないという現象が起きる。
【解決手段】本発明の歯車は、1歯1歯を1枚歯のインボリュート歯車12にすることにより、歯車の歯数が少数で
あっても、アンダーカット切り下げという現象が生じることも無く、小型化しても高強度が得られる。
【選択図】
図1