(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、撮影者の撮影時における手ブレ等により、ブレのある画像が撮影されてしまうことを防止するための手ブレ補正技術が開発され、手ブレ補正技術が実装された撮影装置が多く普及している。
【0003】
撮影者による手ブレは、カメラを三脚等に固定していない限り、通常発生しているものであり、特にスチルカメラの場合、高速なシャッタ速度で撮影する場合には撮影画像に対する手ブレ等の影響は少ないが、低速なシャッタ速度で撮影する場合には撮影画像に対する手ブレ等の影響は顕著となる。
【0004】
例えば高速なシャッタ速度で撮影するための十分な露光量を得ることが困難な光量の少ない環境下では、低速なシャッタ速度で撮影しなければ適正露出の画像を撮影することができない状況がある。
【0005】
低速なシャッタ速度で撮影する場合には、露光時間が長くなるため、撮影している間に手ブレ等が発生すると、撮影開始直後と撮影終了直前とで結像位置が変化してしまい、結果としてブレのある画像が撮影されやすい。すなわち、手ブレ等の影響を受けた失敗写真が撮影されてしまうおそれが大きい。
【0006】
これに対して、従来、手ブレ等による撮影画像への影響を少なくするため、既にいくつかのタイプの手ブレ補正技術が発明されている。
【0007】
手ブレ補正技術の主流なタイプとして、レンズ光学系における一部のレンズ若しくはレンズ群を、光軸に垂直な平面内で移動させることにより結像位置をシフトさせ、結像位置の変位を補正する光学式手ブレ補正技術と、撮像素子を光軸に垂直な平面内で移動させることで結像面をシフトさせ、結像位置の変位を補正する撮像素子シフト式手ブレ補正技術がある。
【0008】
光学式手ブレ補正技術では、カメラのレリーズボタン半押しを制御開始の合図として、ブレ量を検知し、レンズ光学系の一部のレンズ若しくはレンズ群を、検知したブレ量がキャンセルされるように光軸に垂直な平面内においてシフトさせる。
撮影者の手ブレ等により発生してしまった結像位置の変位は、シフトされたレンズ光学系の一部のレンズ若しくはレンズ群が、像面における結像位置をシフトさせることによりキャンセルされる。したがって、手ブレ補正制御が機能している間に撮影を行えば、撮影者等による手ブレの影響がキャンセルされた画像を撮影することが可能である。
【0009】
撮像素子シフト式手ブレ補正技術では、カメラのレリーズボタン全押しを制御開始の合図として、ブレ量を検知し、検知したブレ量をキャンセルするように撮像素子を光軸に垂直な平面内においてシフトさせる。
撮影者の手ブレ等により発生してしまった結像位置の変位は、撮像素子がレンズ光学系に対する像に追随するようにシフトすることでキャンセルされる。すなわち、撮影時に撮像素子をシフトさせることにより、手ブレによる影響がキャンセルされた画像を撮影することが可能である。
【0010】
光学式手ブレ補正技術は、撮影者がレリーズボタンを半押ししてからしばらくの間、レンズ光学系の一部を光軸に垂直な平面内においてシフトさせ続けることが可能であり、手ブレ補正機能は撮影動作をするしないによらず機能する。したがって、撮影者は、ファインダやライブビューを通してブレが補正された被写体を観察できるメリットがある。
すなわち、撮影者は、光学式手ブレ補正技術において、手ブレ等による影響がキャンセルされた状態で、撮影の構図を決定することが可能である。
【0011】
一方、撮像素子シフト式手ブレ補正技術では、特にレンズ交換可能なレンズ交換式カメラシステムにおいて、交換レンズそれぞれに手ブレ補正機構を搭載する必要がないため、カメラシステム全体としてコスト的に優位である。
【0012】
手ブレ補正技術は、上記のように根本的なシステムに着目してタイプ分けするとそれほど多くはないが、手ブレ補正技術を取り巻く様々な課題を解決するため、多くの周辺技術が発明されている。
【0013】
特許文献1(特許3192414号公報)には、光学式手ブレ補正技術の周辺技術として補正光学系の固定手段が記載されている。
【0014】
特許文献1では、補正光学系が非制御時に自由に移動してしまう光学式手ブレ補正機構の問題点を指摘し、解決手段を提示している。
【0015】
光学式手ブレ補正技術では、補正光学系を含む可動部材に対する制御がなくなる、すなわち光学式手ブレ補正機構に対して電源が供給されなくなると、補正光学系はレンズ鏡筒内で重力や慣性により自由に移動してしまう。そのため、レンズ鏡筒が持ち運び時等に振動されると、補正光学系は、その可動端の壁面に衝突を繰り返すこととなり、可動端の壁面を破損させるおそれがある。
【0016】
この課題を解決するため、特許文献1に記載の発明では、カメラボディの電源オフに応答して、補正光学系の光軸が光学系の光軸に一致するように可動中心位置に補正光学系を固定する固定手段を、像振れ防止装置に追加した。
これにより、補正光学系は、交換レンズに電源供給が無い状態であっても、レンズ鏡筒内で光学系の光軸に一致する可動中心位置に物理的に固定されるため、持ち運び時等に補正光学系を含む可動部材が可動端の壁面を破損させてしまうおそれはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献1に記載の像振れ防止装置では、持ち運び時等において補正光学系を含む可動部材が可動端を破損させてしまうことを防止できる効果があるものの、カメラシステムの電源オフからの復帰時、すなわちスリープ解除時に、固定手段を解除する動作が必要となるため、スリープ解除から撮影開始までの時間において、固定手段の無い像振れ防止装置に比べタイムラグが生じてしまう。
【0019】
また、固定手段を有する従来の一般的な像振れ防止装置では、レリーズ半押しの度に固定手段を解除する制御となっているため、ある程度の間隔でレリーズ半押しを繰り返す撮影状況では固定手段の解除・固定の制御を繰り返すこととなり、特にこの場合には固定手段を解除してから撮影可能となるまでの時間におけるタイムラグの影響が大きい。
【0020】
さらに、特許文献1に記載の像振れ防止装置も含めて、光学式手ブレ補正機構では固定手段の有無によらず、スリープ解除後に一定時間中心保持制御を行う必要があり、このことも撮影可能となるまでの時間を長くしてしまう原因となる。
【0021】
スリープ解除後の中心保持制御は、固定手段を有する光学式手ブレ補正機構において、固定手段の解除時に補正光学系が重力方向へ落下してしまい、レリーズ半押しの度に、撮影者が違和感のある映像をファインダ越しに観察してしまうことを防止するために必要である。
【0022】
さらに、中心保持制御開始後においても、手ブレ補正効果が安定するまで、一定時間待機しなければならず、この時間も撮影可能となるまでの時間を長くする原因となる。
この待機時間を無視して撮影すると、ブレを検知するジャイロセンサからの信号が安定しないまま撮影することとなり、十分な手ブレ補正効果のある写真の撮影が期待できない。
【0023】
上述の通り、固定手段の解除制御や中心保持制御のため、手ブレ補正効果の十分ある写真を撮影するには、レリーズ半押しから撮影開始までにある程度のタイムラグが必要である。
このタイムラグを無視してレリーズ半押し後にすぐ撮影可能とすると、特に撮影者がレリーズボタンを一気に押下して撮影しようとした場合に、手ブレ補正効果が十分な写真を撮影することができない。
【0024】
例えば、固定手段が解除完了に至らないまま撮影可能としてしまうと、補正光学系が中心保持されたまま撮影することとなり、手ブレ補正効果が全く得られないブレのある失敗写真が撮影されてしまう。
また、固定手段の解除が完了したとしても、中心保持制御開始から一定時間待機せず、手ブレ補正効果が安定しない状態で撮影してしまうと、手ブレ補正効果が十分に発揮されていないブレのある失敗写真が撮影されてしまう。
【0025】
ところで、光学式手ブレ補正機構に固定手段を設けることは、光学式手ブレ補正機構の周辺技術であり、固定手段を有さない光学式手ブレ補正機構も従来存在している。
固定手段は特許文献1が指摘する課題を解決することを目的としているが、固定手段を有さなくとも可動端の破損を防止することは可能である。
【0026】
光学式手ブレ補正機構の補正光学系を含む可動部材は、撮像素子シフト式手ブレ補正機構の撮像素子を含む可動部材と比べれば軽量である。また、光学式手ブレ補正機構はレンズ光学系ごとに設計されることが通常であるため、可動端の限界範囲等はレンズ光学系ごとに最適に設計することが可能である。
【0027】
したがって、耐久性を満足する材料を用いて可動端の壁面を設計したり、可動端の限界範囲を大きすぎず最適に設計したりする等の対策をとることで、光学式手ブレ補正機構においては固定手段を設けなくとも可動端の破損を防止することが可能である。
【0028】
すなわち、光学式手ブレ補正機構においては、固定手段を排除することにより、固定手段の機構そのものばかりでなく、固定手段を制御するための駆動手段、固定手段を設置するためのスペースを省略することが可能となる。
さらに、固定手段の排除により、レリーズ半押しの度に固定手段を解除・固定するための電力をセーブすることができ、また、固定手段を制御するためのタイムロスも短縮することができる。
【0029】
固定手段を有さない光学式手ブレ補正機構では、固定手段を制御するためのタイムラグを短縮することは可能であるが、依然として固定手段を有する光学式手ブレ補正機構と同様に、レリーズ半押しから撮影可能となるまでに一定時間のタイムラグが残存する。
【0030】
このタイムラグの原因として、固定手段を有さない光学式手ブレ補正機構であっても必要なレリーズ半押し後における中心保持制御がある。
【0031】
固定手段を有さない手ブレ補正機構における中心保持制御は、固定手段を有する手ブレ補正機構における中心保持制御よりもさらに重要である。
【0032】
固定手段を有さない手ブレ補正機構における補正光学系を含む可動部材は、非制御時に固定手段等により固定されていないため、レリーズ半押し直後までは可動端でレンズ鏡筒の重力方向に位置する壁面に接している。
【0033】
したがって、可動端壁面に接した状態の補正光学系を含む可動部材に対して手ブレ補正制御を行おうとする場合、可動部材は可動端よりもさらに外側に駆動され、手ブレ補正開始時の挙動が不安定となるおそれがある。
また、不安定な状態で手ブレ補正が開始されることで、手ブレ補正には関係のない無駄な電力が消費されてしまうおそれがある。
【0034】
これに対して、レリーズ半押し後、手ブレ補正制御を開始する前に可動部材を、中心保持制御によって可動端から一度離すことにより、上記問題を解決することができる。
これにより、固定手段を有さない光学式手ブレ補正機構においても、手ブレ補正制御開始時に一度、中心保持制御を実行することによるタイムラグが発生することとなる。
【0035】
中心保持制御を実行し、手ブレ補正制御を開始した後は、固定手段の有無にかかわらず可動部材の状態が同じとなり、固定手段を有さない光学式手ブレ補正機構においても、固定手段を有する光学式手ブレ補正機構と同様に、手ブレ補正効果が安定するための待機時間が必要である。
【0036】
上記理由のため、手ブレ補正効果のある写真を撮影するには、固定手段を有さない光学式手ブレ補正機構においても、固定手段を有する光学式手ブレ補正機構と同様に、レリーズ半押しから撮影開始までのタイムラグは依然として残存する。
【0037】
また、このタイムラグを無視してレリーズ半押し後にすぐ撮影可能とすると、特に撮影者がレリーズボタンを一気に押下して撮影しようとした場合に、固定手段を有する光学式手ブレ補正機構よりもさらに手ブレ補正効果の十分でない写真が撮影される可能性が高い。
【0038】
固定手段を有さない光学式手ブレ補正ユニットでは、レリーズ半押し直後において、補正光学系を含む可動部材がレンズ鏡筒内で重力方向の可動端に接しているため、レリーズ半押し後の中心保持制御が完了する前に撮影すると、手ブレの影響に加えて、補正光学系の光軸が大きく重力方向へずれた失敗写真が撮影されてしまうおそれがある。また、固定手段を有さない手ブレ補正機構と同様に、手ブレ補正効果が安定しない状態で撮影がされてしまうと、手ブレ補正効果が十分に発揮されていない失敗写真が撮影されてしまう。
【0039】
さらに、この中心保持制御は撮影終了後においても、重要な役割をする。
【0040】
撮影終了直後において、手ブレ補正制御を即座に停止し、そのままにしておくと、固定手段を有さない光学式手ブレ補正機構においては、補正光学系を含む可動部材はまったく駆動制御されないため、レンズ鏡筒内で重力方向へ自由落下してしまう。これにより、撮影者に対して、ファインダ等を通し、撮影終了直後に不快な映像を観察させてしまうことになる。
【0041】
したがって、撮影終了直後には、撮影者が依然としてファインダにて映像を確認していると想定し、所定時間、中心保持制御を維持しておくことが望ましい。
【0042】
しかしながら、従来、撮影終了後の中心保持制御は、手ブレ補正動作の終了合図に従属していたため、一旦中心保持制御を開始してしまうと、カメラシステムのスリープ時などを除いて、カメラボディが決定する任意の時間に中心保持制御を終了させることは困難であった。
【0043】
中心保持制御を、例えば手ブレ補正動作のような他の動作に従属せず、任意の期間に実行できるように制御することにより、特に固定手段を有さない光学式手ブレ補正機構においては次のメリットがある。
【0044】
例えば、カメラボディが三脚に据え付けられている場合や、カメラボディが撮影者により支持されていないリモコン撮影である場合等には、明らかに手ブレ補正制御が不要である撮影設定がある。また、光量が十分で、シャッタースピードが十分に高速であり、明らかに手ブレ補正動作が不要である撮影条件がある。
【0045】
これらの場合、むしろ手ブレ補正制御を動作させると、無駄な手ブレ補正効果を与えてしまうこととなり、逆に撮影画像に不具合を与える可能性がある。
【0046】
ただし、明らかに手ブレ補正動作が不要である場合であっても、特に固定手段を有さない光学式手ブレ補正機構においては、固定手段がないゆえに、補正光学系とレンズ光学系との光軸とが一致するように補正光学系を含む可動部材を維持制御する中心保持制御が必須となる。
【0047】
したがって、特に光学式手ブレ補正機構においては、明らかに手ブレ補正動作が不要である所定の撮影設定及び撮影条件の際、手ブレ補正制御を行わず、中心保持制御のみを独立して行う必要がある。
また、この中心保持制御の開始と終了の命令は、撮影設定及び撮影条件を把握できるカメラボディ主導で行うことが望ましい。
【0048】
本発明は、光学式手ブレ補正機構を採用し、レリーズ半押しから手ブレ補正効果が安定した撮影が可能となるまでのタイムラグを短縮できる、カメラシステム、そのカメラシステムを構成するカメラボディ及び交換レンズ及び手ブレ補正ユニットの提供を目的とする。
【0049】
また、本発明は、手ブレ補正動作と独立した中心保持制御を実行できる、カメラシステム、そのカメラシステムを構成するカメラボディ及び交換レンズ及び手ブレ補正ユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0050】
上記課題を解決するために、本発明のカメラシステムは、カメラボディに対して交換レンズが装着可能であり、前記カメラボディと前記交換レンズとの間で通信を行うカメラシステムにおいて、前記カメラボディは交換レンズへ、手ブレ補正制御開始を命令するための補正開始信号を送信し、手ブレ補正制御終了を命令するための補正終了信号を送信し、前記交換レンズは、レンズ光学系の一部のレンズ又はレンズ群を補正光学系とし、撮影者等による前記カメラシステムのブレ量及び前記補正光学系の現在位置を検知し、前記補正光学系は、無通電にて重力方向の壁面に接しており、前記補正光学系を含む可動部材を固定部材に対して光軸と垂直な平面内で移動させる駆動手段は、前記可動部材側若しくは前記固定部材側に設置されたマグネットとその反対側に設置されたコイルとから構成され、前記可動部材は、前記コイルに電流が供給されることで発生する電磁力により駆動され、前記ブレ量から演算された前記補正光学系の目標位置と前記補正光学系の現在位置との差分をキャンセルさせるように前記補正光学系を光軸と垂直な平面内で移動させることで、手ブレ補正制御を行う光学式手ブレ補正機構を有し、前記カメラボディは、前記カメラボディの電源が操作された後であって、前記カメラボディが交換レンズへ前記補正開始信号を送信する前に、前記交換レンズへ中心保持開始信号を送信し、前記補正終了信号が前記交換レンズへ送信された後に、前記交換レンズへ中心保持終了信号を送信し、前記交換レンズは、前記中心保持開始信号を前記カメラボディより受信した後、前記補正光学系の光軸と前記レンズ光学系の光軸とが一致するように
レリーズ半押し操作前までに中心保持制御を開始し、前記中心保持終了信号を前記カメラボディより受信した後、中心保持制御を終了する、ことを特徴とする。
【0054】
また、本発明の交換レンズは、カメラシステムを構成し、レンズ光学系の一部のレンズ又はレンズ群を補正光学系とし、前記補正光学系は、無通電にて重力方向の壁面に接しており、前記補正光学系を含む可動部材を固定部材に対して光軸と垂直な平面内で移動させる駆動手段は、前記可動部材側若しくは前記固定部材側に設置されたマグネットとその反対側に設置されたコイルとから構成され、前記可動部材は、前記コイルに電流が供給されることで発生する電磁力により駆動される交換レンズであって、電源の操作されたカメラボディから中心保持開始信号を受信した後、前記補正光学系の光軸とレンズ光学系の光軸とが一致するように中心保持制御を
レリーズ半押し操作前までに開始し、さらに、前記カメラボディから補正開始信号を受信した場合には、その後、手ブレ補正制御を開始し、さらに、前記カメラボディから補正終了信号を受信した場合には、その後、手ブレ補正制御を終了し、さらに、前記カメラボディから中心保持終了信号を受信した後、中心保持制御を終了する、ことを特徴とする。
【0055】
また、本発明の手ブレ補正ユニットは、カメラシステムを構成する交換レンズに内蔵された手ブレ補正ユニットであって、レンズ光学系の一部のレンズ又はレンズ群を補正光学系とし、前記補正光学系と、ブレ量検知手段と、補正光学系位置検知手段と、を有し、前記補正光学系は、無通電にて重力方向の壁面に接しており、前記補正光学系を含む可動部材を固定部材に対して光軸と垂直な平面内で移動させる駆動手段は、前記可動部材若しくは前記固定部材側に設置されたマグネットとその反対側に設置されたコイルとから構成され、前記可動部材は、前記コイルに電流が供給されることで発生する電磁力により駆動され、前記交換レンズが、電源の操作されたカメラボディから中心保持開始信号を受信するに従って、
レリーズ半押し操作前までに前記補正光学系の光軸と前記交換レンズのレンズ光学系の光軸とが一致するように中心保持制御を開始し、前記交換レンズが、前記カメラボディから補正開始信号を受信するに従って、前記ブレ量検知手段により検知された撮影者等による前記カメラシステムのブレ量と前記補正光学系位置検知手段により検知された前記補正光学系の現在位置を演算して、前記ブレ量から演算された前記補正光学系の目標位置と前記補正光学系の現在位置との差分をキャンセルさせるように、前記補正光学系の駆動手段により前記補正光学系を光軸に垂直な平面内で駆動させ、前記交換レンズが、カメラボディから中心保持終了信号を受信した後、中心保持制御を終了する、ことを特徴とする。
【0056】
上記の通り、本発明では、カメラボディから交換レンズへの通信において、専用信号として中心保持開始信号及び中心保持終了信号を設け、中心保持制御の開始及び終了をカメラボディ主導で制御可能とし、手ブレ補正動作に従属しない中心保持制御の実行を可能とした。
【0057】
また、本発明では、カメラボディが、撮影の際に、明らかに手ブレ補正動作が不要な撮影設定及び撮影条件を判断することにより、撮影者の手動による切り替えなしに、交換レンズへの手ブレ補正動作の命令を停止することとし、中心保持制御のみを命令することを可能とした。
【発明の効果】
【0058】
本発明により、補正光学系を含む可動部材を、電源オフ時に光軸中心に固定するための固定手段を有さない光学式手ブレ補正機構を採用した場合であっても、レリーズ半押しから手ブレ補正効果が安定した撮影が可能となるまでのタイムラグの短縮が可能な、カメラシステム、そのカメラシステムを構成するカメラボディ及び交換レンズ、及び交換レンズに内蔵される手ブレ補正ユニットを提供することができる。
【0059】
また、本発明のカメラシステムにおいて、カメラボディは、カメラボディの操作系が操作されることにより、交換レンズの手ブレ補正ユニットに対して中心保持制御を開始させることが可能である。
【0060】
さらに、本発明により、中心保持制御を、手ブレ補正動作と独立して制御することが可能である。これにより、手ブレ補正動作が不要な撮影設定及び撮影条件であっても、撮影者による手動の切り替え操作なしに撮影設定及び撮影条件を自動的に判断して、手ブレ補正動作をせず、中心保持制御のみを実行可能とした。
【0061】
また、本発明では、中心保持制御の終了時刻を交換レンズに命令する、中心保持終了信号を設け、中心保持制御の終了時間をカメラボディ主導で任意に設定でき、ひいては中心保持制御の時間を任意に変更設定可能とした。
【0062】
また、中心保持制御の時間を任意に変更設定可能とすることで、特に固定手段を有さない手ブレ補正機構において、最低限必要な中心保持制御の電力量を最適化することができる。
【0063】
また、手ブレ補正動作後に、カメラボディ主導で任意の時間を設定して中心保持制御をすることでき、
手ブレ補正動作直後に、補正光学系を含む可動部材が重力方向へ即座に自由落下してしまうことを防止し、撮影者に不快な映像をファインダから観察させてしまうことを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、図面を用いて本発明に係る実施例について詳細に説明する。
【0066】
本発明の実施例に係るカメラシステムは、カメラボディに対してレンズ交換可能なレンズ交換式カメラシステムとする。また、本発明の実施例に係る手ブレ補正機構のシステムは、光学式手ブレ補正機構を採用している。
【0067】
本発明のカメラシステムについて、
図1を用いて説明する。
【0068】
図1は、本発明に係る実施例のカメラシステム全体を示すシステムブロック図である。100はカメラボディ、200は交換レンズを示している。
【0069】
カメラボディ100の構成について説明する。
【0070】
カメラボディ100において、101はバッテリ、102は電源装置を示している。バッテリ101からは、電源装置102を介してカメラボディ100や交換レンズ200の制御系等に電力が供給されている。また、バッテリ101からは、カメラボディ100や交換レンズ200の駆動系等に電力が供給されている。カメラボディ100から交換レンズ200への電力供給は後述するマウントに設けられた接続端子を介して行われる。
【0071】
103は撮像装置を示している。撮像装置103には撮像素子やシャッタ等が含まれ、一眼レフカメラの場合にはクイックリターンミラー等が含まれる。
【0072】
104はカメラ制御部を示している。カメラ制御部104は、電源装置102から電力供給を受け、カメラボディ100の各種駆動系を制御したり、後述するレンズ制御部との通信を行ったりする。
【0073】
また、カメラ制御部104は各種センサからの信号を処理して各種駆動系を制御している。
【0074】
105はAFセンサ、106はAEセンサを示している。カメラ制御部104は、AFセンサ105により得られた信号値を演算して測距を行い、レンズ制御部へ送信し、交換レンズ200にAF動作を行わせる。また、カメラ制御部104は、AEセンサ106により得られた信号値を演算して測光を行い、撮像装置103の露光量を決定し、レンズ制御部により交換レンズ200の絞り制御を行わせる。
【0075】
107はカメラボディ100の操作系を示している。カメラ制御部104には、操作系107からの命令が入力される。カメラ制御部104は、これに従って制御や通信を行う。操作系には、カメラボディ100の電源を入切する電源ボタンや、撮影方法を設定する露出モードダイヤルや、AF動作や撮影を指示するためのレリーズボタンや、その他メニューボタン等を含む。
【0076】
操作系107のうち、特にレリーズボタンは2段階で押下する機構となっており、1段階押下した状態をレリーズ半押しとし、2段階押下した状態をレリーズ全押しとする。また、レリーズ半押しの際、カメラボディ100は、交換レンズ200に対してAF動作を指示するとともに、交換レンズ200が手ブレ補正機構を有している場合は、手ブレ補正動作を開始するように指示する。さらに、レリーズ全押し状態となることで、カメラボディ100は撮影動作を開始する。
【0077】
108は画像処理部、109は記憶装置、110は表示装置を示している。カメラ制御部104の指示で撮影装置103により取得された画像信号は、画像処理部108に送られ、一連の画像処理が施された後、記憶装置109に格納される。撮影後の画像やカメラボディ100等の設定情報は表示装置110に表示される。
【0078】
カメラボディ100と交換レンズ200との物理的な接続はマウント300を介して行われる。また、カメラボディ100と交換レンズ200との電気的な接続はマウント300に設けられた接点端子群を介して行われる。
【0079】
本実施例のカメラボディ100側の300の接点端子群には、制御用電源端子C_VDD、クロック信号端子C_CLK、コマンド信号端子C_CMD、アンサ信号端子C_ANS、モータ用電源端子C_MP、グランド端子C_GNDが含まれる。
【0080】
制御用電源端子C_VDDからは交換レンズ200のレンズ制御部に対して電力が供給され、モータ用電源端子C_MPからは交換レンズ200の各種駆動系に対して電力が供給される。
コマンド信号端子C_CMDからはカメラボディ100が交換レンズ200に対してレンズデータを求めるコマンド信号CMDが出力され、アンサ信号端子C_ANSへはレンズデータ等のアンサ信号ANSが入力される。
【0081】
次に交換レンズ200の構成について説明する。交換レンズ200には、不図示のレンズ光学系が含まれる。
【0082】
交換レンズ200において、201はレンズ制御部を示している。レンズ制御部201は、カメラボディ100から電力供給を受け、カメラ制御部104と通信を行ったり、交換レンズ200内の各種駆動系を制御したりする。
202はエンコーダを示している。エンコーダ202からの信号値により、レンズ制御部201は、現在の被写体距離を検知し、さらに交換レンズ200がズームレンズの場合には、現在の焦点距離を検知する。
【0083】
交換レンズ200内の各種駆動系として、次の駆動系があげられる。
【0084】
203は絞り、204は絞り駆動部を示す。絞り203は、レンズ制御部201からの命令を受けた絞り駆動部204により駆動される。また、絞り駆動部204には、カメラボディ200から電力が供給される。
205はAFレンズ群、206はAF駆動部を示す。AFレンズ群205は、レンズ光学系の一部であり、レンズ制御部201から命令を受けたAF駆動部206により駆動される。また、AF駆動部206には、カメラボディ100からの電力が供給される。
【0085】
さらに、交換レンズ200内の駆動系として、手ブレ補正動作を行うための手ブレ補正制御部207について説明する。
【0086】
手ブレ補正制御部207は、次の構成要素からなる。
【0087】
208は手ブレ補正スイッチを示している。手ブレ補正スイッチ208の入切により、交換レンズ200の手ブレ補正制御を許可するか否かについて決定する。
【0088】
209は交換レンズ200における手ブレ補正ユニットを示している。手ブレ補正ユニット209には、補正光学系210、VCM駆動部211、主にマグネットとコイルからなるVCM(ボイスコイルモータ)212、角速度センサ(ジャイロセンサ)213、補正光学系位置検知装置(ホール素子)214が含まれる。
VCM212は補正光学系210の駆動手段であり、角速度センサ213はブレ量検知手段、補正光学系位置検知装置は補正光学系位置検知手段である。
【0089】
本実施例の光学式手ブレ補正機構では、交換レンズ200のレンズ光学系における一部のレンズ若しくはレンズ群を補正光学系210として、光軸と垂直な平面内で移動させることにより、結像位置をシフトさせ、撮影者の手ブレ等による結像位置の変位を補正することが可能である。
すなわち、補正光学系210は、交換レンズ200内で可動であり、特に補正光学系210を含む交換レンズ200内の部材を可動部材と呼ぶ。これに対して可動でない部材をまとめて固定部材と呼ぶ。
【0090】
補正光学系210を含む可動部材は、VCM駆動部211とVCM212により駆動される。VCM212は、補正光学系210を光軸に垂直な平面内で駆動させるための駆動手段であり、主に手ブレ補正ユニットの可動部材側若しくは固定部材側に設置されたマグネットとその反対側に設置されたコイルとから構成される。そして、コイルに供給された電流によりコイルとマグネットとの間に電磁力が発生することで、マグネット若しくはコイルが設置された可動部材が駆動され、可動部材に含まれる補正光学系210は光軸に垂直な平面内で移動される。
【0091】
角速度センサ213はジャイロセンサ等からなり、撮影者の手ブレ等による交換レンズ200の角度ブレを検出して、レンズ制御部201に知らせる。また、補正光学系位置検知装置214はホール素子等からなり、補正光学系210を含む可動部材の現在位置を検知して、レンズ制御部201に知らせる。
【0092】
そして、レンズ制御部201は、角速度センサ(ジャイロセンサ)213から得られた交換レンズ200の角度ブレの情報と、補正光学系位置検知装置214から得られた可動部材の現在位置の情報との差分を演算して、この差分が無くなるようにVCM212の駆動量を決定する。
【0093】
図4は、手ブレ補正ユニット209の機構を示す断面図である。部材を示す番号は、すでに上述した各部材の番号と同じである。
【0094】
図4において、210は補正光学系、215はレンズ枠、216はマグネット、217はコイル、214はホール素子(補正光学系位置検知装置)、218は球状転動体、219はヨークを示し、補正光学系210を含むこれら部材群を可動部材とする。
【0095】
球状転動体218により、可動部材が、固定部材に対して光軸に垂直な平面内でなめらかに移動することを可能としている。また、ホール素子(補正光学系位置検知装置)214はマグネット216からの磁気の変化を電気信号に変換し、可動部材の現在位置を検知する。
【0096】
レンズ制御部201は、ホール素子(補正光学系位置検知装置)214からの可動部材の現在位置情報と角速度センサ(ジャイロセンサ)213からの角度ブレ情報との差分を演算し、これに基づいてコイル217に供給する電流量を制御し、マグネット216とコイル217との関係で発生した電磁力により可動部材を駆動制御する。
【0097】
本実施例における手ブレ補正ユニットの機構は、カメラボディ100の電源がオフの時、すなわち交換レンズ200に対して電力が供給されない時に、補正光学系210が、レンズ光学系と光軸を一致させて物理的に固定保持される固定手段を有さない機構として説明する。
【0098】
固定手段を必ずしも設けなくとも、可動部材に対する可動端壁面の耐久性を確保できる設計を行えば、破壊のおそれがない手ブレ補正ユニットを成立させることは可能である。
【0099】
固定手段を有さない手ブレ補正ユニットのメリットとして、固定手段の機構に必要とする多くの部材を要せず、手ブレ補正ユニットのコスト、ひいては交換レンズ全体のコストを抑えられることがあげられる。
さらに、固定手段をAF動作の度に解除駆動・固定駆動させることを要せず、消費電力を抑えることができる。
さらに、固定手段を狭い手ブレ補正ユニット内に設置することを要せず、省スペース化が可能である。
さらに、手ブレ補正制御開始のための固定手段解除駆動の時間を要せず、固定手段を有する手ブレ補正ユニットよりも、レリーズ半押しから手ブレ補正効果のある写真が撮影可能となるまでの時間を短縮することが可能である。
【0100】
図1において、300はマウントを示し、前述した通り、交換レンズ200がカメラボディ100と物理的に接続するための接続部である。また、マウント300には、同様に交換レンズ200とカメラボディ100が電気的に接続するための接点端子群が設けられている。
【0101】
接点端子群として、交換レンズ200においても、前述したカメラボディ100のマウント300に設けられた各接点端子に対応する、制御用電源端子L_VDD、クロック信号端子L_CLK、コマンド信号端子L_CMD、アンサ信号端子L_ANS、モータ用電源端子L_MP、グランド端子L_GNDが設けられている。
【0102】
次にフローチャートを用いて、本発明の実施例に係るカメラシステムの制御について説明する。
【0103】
本発明では、カメラボディから交換レンズへの通信において、カメラボディが交換レンズに対して中心保持制御の開始を指示するための専用信号である中心保持開始信号を新たに設けた。交換レンズは、カメラボディから中心保持開始信号を受信すると、手ブレ補正ユニット内の補正光学系の中心保持制御を開始する。
【0104】
さらに、本発明では、カメラボディから交換レンズへの通信において、カメラボディが交換レンズに対して中心保持制御の終了を指示するための専用信号である中心保持終了信号を新たに設けた。交換レンズは、カメラボディから中心保持終了信号を受信すると、手ブレ補正ユニット内の補正光学系の中心保持制御を終了する。
【0105】
従来、補正光学系の中心保持制御の開始及び終了のタイミングは、交換レンズに予め組み込まれたプログラムによって、カメラボディの制御とは別個に制御されていた。そのため、撮影者のカメラボディにおける操作系の操作や、カメラボディの判断した撮影条件等に関連させて、補正光学系を中心保持制御することができなかった。
【0106】
本発明では、カメラボディから交換レンズへの通信における専用信号として、中心保持開始信号を新たに設けることにより、撮影者によるカメラボディの操作に従って、交換レンズ内の手ブレ補正ユニットの補正光学系を中心保持制御でき、カメラボディのスリープ解除時に補正光学系の中心保持制御を即座に開始させることが可能となる。
すなわち、交換レンズ内の手ブレ補正ユニットの補正光学系を、カメラボディのレリーズ半押しよりも前に中心保持制御させることができ、従来のレリーズ半押し後に中心保持制御を開始するカメラシステムよりも、レリーズ半押しから手ブレ補正効果のある写真が撮影可能となるまでの時間を短縮することができる。
【0107】
さらに、本発明では、カメラボディから交換レンズへの通信における専用信号として、中心保持終了信号を新たに設けることにより、手ブレ補正制御が明らかに不要な撮影条件等において、手ブレ補正制御に従属せず、中心保持制御を終了させることができる。また、カメラボディからの中心保持終了信号の送信タイミングは、撮影者の任意により設定可能となる。
すなわち、カメラボディが、撮影条件等を自動的に判断し、手ブレ補正制御が明らかに不要であると判断した場合には、手ブレ補正制御の実行を命令せず、中心保持制御のみの実行を命令することができる。さらに、特定の撮影条件等において、不要な手ブレ補正動作により失敗写真を撮影してしまったり、不要な手ブレ補正動作のための電力を浪費してしまったり、冗長な中心保持制御が実行されてしまうことを防止することができる。
【0108】
図2を用いて、本実施例に係るカメラボディ100の制御フローについて説明する。
【0109】
まず、撮影者がカメラボディ100の電源ボタンをオン状態にすることにより(S101)、カメラボディ100のスリープが解除される(S102)。
カメラボディ100のスリープ解除は、カメラボディ100の主電源である電源ボタンがオン状態にスイッチされた場合だけではなく、オートパワーオフでスリープしたカメラボディ100の操作系107が、撮影者により操作された場合にも実行される(S103)。
【0110】
カメラボディ100は、スリープが解除されると、交換レンズ200との通信を始める。
【0111】
まず、カメラボディ100は交換レンズ200に対して、交換レンズ200の設定状態等に関するレンズデータを要求するため、コマンド信号CMDを送信する(S104)。
【0112】
交換レンズ200は、カメラボディ100からコマンド信号CMDを受信すると、これに対応するレンズデータを準備し、カメラボディ100へ返答する。
そして、カメラボディ100は交換レンズ200から送信されたレンズデータを受信する(S105)。
レンズデータには、交換レンズ200の手ブレ補正スイッチ208の入切の情報や焦点距離、絞り等の撮影に必要な情報が含まれる。
【0113】
カメラボディ100と交換レンズ200との間で通信が完了すると、カメラボディ100は交換レンズ200に対して中心保持開始信号CSsを送信する(S106)。
中心保持開始信号CSsは、カメラボディ100が交換レンズ200に対して中心保持制御を開始するように命令するための専用信号である。中心保持制御とは、交換レンズ200が、補正光学系210を、手ブレ補正ユニット209内で補正光学系210の光軸とレンズ光学系の光軸とが一致するように維持する制御を指す。
【0114】
カメラボディ100は、S106で中心保持開始信号CSsを交換レンズ200に対して送信した後、60秒間の監視タイマーを一旦クリアして、60秒間の監視タイマーを作動させる(S107)。
【0115】
カメラボディ100は、中心保持開始信号CSsを交換レンズ200へ送信した後、60秒間の間、レリーズボタンが半押しされるかどうか監視する(S108、S109)。
【0116】
S108での60秒間は、カメラボディ100が何も操作されず、交換レンズ200に対して、次にS106で開始を指示した中心保持制御の終了を指示するまでの時間を意味している。
すなわち、この60秒間は、中心保持制御を実行する最大時間を示すものであり、カメラボディ100側においてカメラ制御部104等の記憶部に記憶され、撮影者により変更設定可能な所定時間を示している。
【0117】
S108において、60秒間監視してもカメラボディ100のレリーズボタンが半押しされないと判断された場合には、カメラボディ100は交換レンズ200へ中心保持終了信号CSeを送信してスリープ状態となる(S110、S111)。カメラボディ100は、スリープ状態になると、交換レンズ200とは無通信状態となる。
【0118】
S110で、カメラボディ100が交換レンズ200へ送信した中心保持終了信号CSeは、交換レンズ200に対して中心保持制御の終了を指示する専用信号である。交換レンズ200は、中心保持終了信号CSeを受信すると中心保持制御を終了する。
【0119】
カメラボディ100が、スリープ状態となる前にレリーズ半押しありとS109で判断した場合には、カメラボディ100は交換レンズ200に対して補正開始信号OSsを送信する(S112)。
補正開始信号OSsは、カメラボディ100が交換レンズ200に対して、手ブレ補正ユニット209の手ブレ補正制御を開始させるための命令信号である。これにより、手ブレ補正ユニット209は、撮影者の手ブレ等によるレンズ光学系の結像位置の変位をキャンセルさせるため、補正光学系210を含む可動部材の駆動を開始する。
【0120】
カメラボディ100は、交換レンズ200に補正開始信号OSsを送信した後、6秒間の監視タイマーを一旦クリアして、6秒間の監視タイマーを作動させる(S113)。ここでの6秒間は、カメラボディ100に対してレリーズ全押しの操作がされなかった場合において、カメラボディ100が交換レンズ200に対して命令する手ブレ補正制御開始から手ブレ補正制御終了までの最大時間を意味している。
カメラボディ100は、手ブレ補正制御開始の命令と手ブレ補正制御終了の命令とで、交換レンズ200の手ブレ補正制御を許可するか禁止するかを決定している。交換レンズ200に対して無制限に手ブレ補正制御を許可すると、カメラボディ100自体の電力を浪費してしまうため、交換レンズ200が手ブレ補正制御できる最大時間を制限している。
【0121】
補正開始信号OSsを送信した後、6秒間経たない間は、カメラボディ100はレリーズボタンが全押しになったかどうかを監視する(S114、S115)。
【0122】
S109でレリーズ半押しとなった後、6秒間経過の前にレリーズ全押しになった場合、カメラボディ100は一般的な撮影動作を行う(S116)。撮影動作は、従来の一般的な撮影動作であり、レリーズ全押し後のミラーアップ動作、シャッタ動作、撮像素子による画像信号の取り込み、画像処理、記録等の一連の動作が含まれる。なお、撮影動作については、本発明の大きな特徴ではないため詳細な説明を省略する。
【0123】
S115でレリーズ全押し状態にないと判断した場合には、カメラボディ100は、S116での撮影動作をせず次のステップへと進む。
【0124】
S116の撮影動作が終了した後、カメラボディ100は、依然としてレリーズ半押し状態にあるかどうかを確認する(S117)。撮影者が、連続して撮影しようとする場合等には、レリーズ全押しで撮影動作が終了した後も、AF動作等を継続するためレリーズ半押し状態を維持していることが想定されるからである。
すなわち、この場合には、撮影者が、ファインダ等を通して被写体を観察している可能性が高いので、手ブレ補正制御を即座に終了するのではなく、手ブレ補正制御を継続したまま、次の撮影動作のためのレリーズ全押しがあるかどうかを監視することが望ましい。
【0125】
S117で依然としてレリーズ半押し状態である場合には、レリーズ全押し状態にあるかどうかを判断するためS115に戻る。
【0126】
S117でレリーズ半押し状態にない場合には、S114に戻り、S112で補正開始信号OSsを交換レンズ200へ送信してから継続して6秒間経過したかどうか監視する。
6秒間経過した場合には、レリーズボタンは全く押下されていない状態であり、撮影者による撮影が終了したものであると判断して、交換レンズ200へ補正終了信号OSeを送信する(S118)。その後、S107へ戻る(A)。
【0127】
補正終了信号OSeは、カメラボディ100が交換レンズ200に対して、手ブレ補正ユニット209の手ブレ補正制御を終了させるための命令信号である。これにより、手ブレ補正ユニット209は、撮影者の手ブレ等によるレンズ光学系の結像位置の変位をキャンセルさせるための手ブレ補正制御を終了する。
【0128】
S118で補正終了信号OSeを送信した後、交換レンズ200は、手ブレ補正動作を終了するのみで、中心保持制御は継続する。交換レンズ200は、カメラボディ200から中心保持終了信号CSeが送信されない限り中心保持制御を継続する。
【0129】
S107に戻ると再び60秒間の監視タイマーをクリアして、60秒間の間にレリーズ半押しになるかどうか監視する。60秒間の間にレリーズ半押しとなれば、上述の通り、手ブレ補正動作や撮影動作等を行う制御に進む。
【0130】
60秒間の間にレリーズ半押しとならなければ、撮影者が撮影動作を行うことはないと判断し、中心保持終了信号CSeを交換レンズ200へ送信し、スリープ状態となる(S110、S111)。
【0131】
すなわち、カメラボディ100は、一旦S109でレリーズ半押し状態となった場合には、手ブレ補正動作を行い、レリーズ全押しとなるかどうかを監視して撮影動作を実行するか否かの判断を行い、その後、レリーズボタンが押下されない場合には、中心保持終了信号CSeを最後に送信してスリープ状態となる。
【0132】
したがって、交換レンズ200は、カメラボディ100での撮影動作が終了した後、手ブレ補正動作を終了して即座に補正光学系210を含む可動部材を重力方向へ落下させることはせず、少なくとも60秒間、中心保持制御を継続する。
これにより、撮影者に対して、次の撮影動作を待機している間であっても、補正光学系210の光軸がレンズ光学系の光軸とずれた状態により、ファインダ等から不快な映像を観察させてしまうことを防止することができる。
【0133】
次に、
図3を用いて、交換レンズ200の制御フローについて説明する。
【0134】
まず、交換レンズ200は、カメラボディ100がスリープから復帰したことに連動して、スリープが解除される(S201)。交換レンズ200は、カメラボディ100から電力が供給されるため、カメラボディ100の電源がオンになるとレンズ制御部201が起動してスリープが解除される。
【0135】
交換レンズ200はスリープから復帰すると、カメラボディ100と通信を行い、各種のコマンド信号や手ブレ補正制御のための信号を受信する(S202)。ここで受信した各信号は、以降のステップでそれぞれ判別され、交換レンズ200は、各信号に対応した制御を行う。
【0136】
まず、交換レンズ200は、受信した信号がコマンド信号CMDであるかを判断する(S203)。受信した信号がコマンド信号CMDであると判別された場合には、受信したコマンド信号CMDごとに対応するレンズデータを用意し、カメラボディ100へ逐次返答する(S204)。コマンド信号CMDでないと判別された場合には、次のステップに進む。
【0137】
次に、交換レンズ200は、受信した信号が中心保持開始信号CSsであるかを判断する(S205)。受信した信号が中心保持開始信号CSsであると判別された場合には、交換レンズ200は、カメラボディ100から命令された通り、手ブレ補正ユニット209の補正光学系210をレンズ光学系と光軸を同じに維持するよう制御する、中心保持制御を開始する(S206)。中心保持信号CSsでないと判別された場合には、次のステップに進む。
【0138】
本発明では、上記のように、カメラボディ100から交換レンズ200へ中心保持制御開始を命令するための専用信号として、中心保持開始信号CSsを設けた。交換レンズ200は、交換レンズ200内に予め組み込まれた定型の制御フローではなく、カメラボディ100の命令、すなわち中心保持開始信号CSsに従って、中心保持制御を開始することができる。
【0139】
次に、交換レンズ200は、受信した信号が補正開始信号OSsであるかを判断する(S207)。受信した信号が補正開始信号OSsであると判別された場合には、交換レンズ200は、カメラボディ100から命令された通り、手ブレ補正制御を開始する(S208)。補正開始信号OSsでないと判別された場合には、次のステップに進む。
【0140】
交換レンズ200は、手ブレ補正制御を開始すると、まず、角速度センサ213によりブレ量を検知し、また、補正光学系位置検知装置214により補正光学系210の現在位置を検知する。次に、レンズ制御部201は、手ブレによるブレ量を補正するための目標位置と補正光学系210の現在位置との差分を演算し、この差分が0になるように補正光学系210を含む可動部材を駆動制御する。
【0141】
可動部材を駆動させる手段はVCM212であり、VCM212のコイルに供給する電流量及びその向きを制御することにより、補正光学系210を光軸に垂直な平面上で駆動させる。ブレ量を補正するための目標位置と補正光学系210の現在位置との差分が0になるように補正光学系210を駆動させることで、撮影者の手ブレ等による結像位置の変位をキャンセルすることができ、手ブレによる影響のない画像を撮影することができる。
【0142】
次に、交換レンズ200は、受信した信号が補正終了信号OSeであるかを判断する(S209)。受信した信号が補正終了信号OSeであると判別された場合には、交換レンズ200は、カメラボディ100から命令された通り、手ブレ補正制御を終了する(S210)。補正終了信号OSeでないと判別された場合には、次のステップに進む。
【0143】
次に、交換レンズ200は、受信した信号が中心保持終了信号CSeであるかを判断する(S211)。受信した信号が中心保持終了信号CSeであると判別された場合には、交換レンズ200は、カメラボディ100から命令された通り、中心保持制御を終了する(S212)。中心保持終了信号CSeでないと判別された場合には、次のステップに進む。
【0144】
上述した通り、カメラボディ100は、交換レンズ200に対して、中心保持開始信号CSsを送信してから60秒間経過しなければ中心保持終了信号CSeを送信しない。
【0145】
撮影動作終了後における中心保持制御は、手ブレ補正制御終了後に撮影者がファインダ内を観察する場合の見えを良くし、連続する次の撮影に備えるためである。
【0146】
交換レンズ200において、手ブレ補正制御を単に終了するだけの制御とすると、撮影動作直後に補正光学系210が手ブレ補正ユニット209内で重力方向へ落下してしまう。これにより、継続撮影を行いたい撮影者に対して、補正光学系210が重力方向へ即座に落下してしまうことによる急激な像の変化をファインダ内で観察させることとなってしまう。
【0147】
また、連続して撮影を行うため、撮影後にレリーズ半押しすることを繰り返す撮影者にとっては、補正光学系210が重力方向へ落下したり、中心保持制御されたりすることを繰り返すことにより、非常に落ち着かない不快な像をファインダ内で観察させられることとなってしまう。
【0148】
したがって、手ブレ補正終了後は、単に手ブレ補正制御を終了するだけではなく、直後に所定時間、中心保持制御を実行し、連続する次の撮影操作のために備えることとしている。
【0149】
S202のカメラボディ200との通信において各信号(コマンド信号CMD、中心保持開始信号CSs、補正開始信号OSs、補正終了信号OSe、中心保持終了信号CSe)を受信した場合には、各信号に対応する制御を行い、その後、受信した信号がスリープ信号であるかを判断する(S213)。スリープ信号は、カメラボディ100から交換レンズ200に対して、スリープ状態になることを命令する信号である。受信した信号がスリープ信号であると判別された場合には、交換レンズ200は、カメラボディ100から命令された通り、スリープ状態となる(S214)。スリープ信号でないと判別された場合には、再びS202においてカメラボディ100と通信を行う。
【0150】
(他の実施例:カメラボディ)
次に、
図5を用いて、他の実施例におけるカメラボディ100の制御フローについて説明する。
【0151】
カメラボディ100についての
図5に示した他の実施例のフローチャートは、
図2に示した実施例のフローチャートに手ブレ補正制御の不要を判断する制御を追加したものである。
手ブレ補正制御の不要を判断する制御は、カメラボディ100から交換レンズ200へ、補正開始信号OSsを送信するS112の前と、補正終了信号OSeを送信するS118の前に加えることとした(S10C)。
【0152】
S10Cでは、カメラボディ100において、カメラ制御部104が撮影設定及び撮影条件を参照して、手ブレ補正制御が不要な場合を判別する。
【0153】
手ブレ補正制御が不要な撮影設定とは、具体的に、リモコン撮影や三脚撮影等であって、カメラボディ100が据え付けられており、手ブレの発生が想定されない撮影設定である。
手ブレ補正制御が不要な撮影条件とは、撮影においてシャッタ速度が十分であり、手ブレによる撮影画像への影響が少ないと想定される撮影条件である。
【0154】
S10Cにおいて、手ブレ補正制御が不要であると判別した場合には、カメラボディ100は、交換レンズ200へ手ブレ補正制御の開始を命令する補正開始信号OSsの送信(S112)と終了を命令する補正終了信号OSeの送信(S118)のステップをスキップする。
【0155】
S10Cにおいて、手ブレ補正制御が不要でないと判別した場合には、カメラボディ100は、交換レンズ200へ手ブレ補正制御の実行を命令するため、補正開始信号OSsを送信し(S112)、補正終了信号OSeを送信する(S118)。
【0156】
上記のように、カメラボディ100は、撮影設定及び撮影条件を判断して、手ブレ補正制御の必要性を判断することができるので、撮影者が手ブレ補正制御を許可するためのスイッチを手動で切り替える必要がない。
したがって、手ブレ補正制御が不要な所定の撮影条件及び撮影条件の場合には、カメラボディ100は、自動的に交換レンズ200への補正開始信号OSs及び補正終了信号OSeの送信を停止し、中心保持制御のみを命令するように交換レンズ200を制御することが可能となる。
【0157】
以上に説明した通り、本発明では、カメラボディから交換レンズへ中心保持制御を開始させるための専用信号として、中心保持開始信号を設けた。これにより、手ブレ補正ユニットの補正光学系を含む可動部材を固定する固定手段の有無に関わらず、カメラボディの操作状態に従って、交換レンズの中心保持制御を開始することが可能であるため、手ブレ補正効果が十分に安定して撮影可能となるまでの、撮影タイムラグを短縮することができる。
【0158】
さらに、本発明では、カメラボディから交換レンズへ中心保持制御を終了させるための専用信号として、中心保持終了信号を設けた。これにより、カメラボディは、交換レンズに対して、手ブレ補正制御とは独立した中心保持制御の命令が可能となる。したがって、手ブレ補正制御が不要な撮影設定及び撮影条件においても、手ブレ補正制御とは独立した中心保持制御が可能となる。
【0159】
さらに、本発明では、カメラボディが撮影設定及び撮影条件に基づいて手ブレ補正制御の必要性を判断することにより、撮影者が手動で手ブレ補正制御の許可を決定するためのスイッチを切り替える必要がなく、自動的に中心保持制御のみを交換レンズに対して命令することができる。