(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ミッションケースに、ステアリングハンドルと連動するパワーステアリング機構を設け、前記パワーステアリング機構からの第1出力軸を、前記ミッションケース内の回動軸の上端に連結し、前記回動軸と減速機構を介して、前記ミッションケース下方の操向部材に、前記第1出力軸を連結する作業車の車軸駆動装置において、
前記回動軸の下端に対して同一軸心上で互いに相対回転可能に嵌合する第2出力軸を設け、
前記第2出力軸と前記減速機構を構成する減速軸とを、互いに平行に並設すると共に、前記ミッションケース下部から内方に突出する略板状部材を設け、
前記略板状部材により、前記第2出力軸と減速軸を共に回動可能に支持し、
前記略板状部材は、前記ミッションケースと一体構成の単一部材から成る
ことを特徴とする作業車の車軸駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、
図1の矢印Fで示す方向を田植機1の前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの前進方向を基準として説明するが、これらの位置や方向等は例示であって、適用の変更に応じて様々に変化するものである。
【0009】
まず、本発明に関わる作業車である田植機1の全体構成について、
図1、
図2により説明する。該田植機1は、走行部2の後部に、昇降リンク機構4A・左右傾動機構4Bを介して植付部3を配置したものであり、走行部2によって走行しながら、植付部3によって苗を圃場に植え付けるように構成されている。
【0010】
前記走行部2においては、車体フレーム5の前部上にエンジン6が載置され、該エンジン6は、ボンネット11により上方および側方から覆われると共に、エンジン6後方の車体フレーム5には、前車軸駆動装置7が支持されている。
【0011】
該前車軸駆動装置7は、左右の前輪伝動軸18L・18Rと前車軸12L・12Rを収容する左右の前アクスルケース13L・13Rを、トランスミッション16のミッションケース17の下部の左右両側面に装着すると共に、該ミッションケース17の左側面上部に油圧式無段変速装置19を装着することにより、構成される。
【0012】
そして、前記車体フレーム5の前下部には、前記前アクスルケース13L・13Rを介して、前記前車軸12L・12Rに前輪8L・8Rが駆動支持される一方、前記車体フレーム5の後下部には、後車軸駆動装置9の後アクスルケース15L・15Rを介して、後車軸14L・14Rに後輪10L・10Rが駆動支持される。そして、該後車軸駆動装置9への入力軸9aは、伝動軸32を介して、前記前車軸駆動装置7から後方に突出した後輪駆動PTO軸30に連動連結されている。
【0013】
これにより、前記エンジン6からの動力が、主変速装置である油圧式無段変速装置19からミッションケース17内に入力されると、該ミッションケース17内で副変速されて、前記左右の前輪8L・8Rと左右の後輪10L・10Rとにそれぞれ伝達され、前記走行部2が前進走行または後進走行できるようにしている。
【0014】
そして、前記ボンネット11後部のダッシュボード23には、その上面に操作パネル24が設けられ、該操作パネル24に、ステアリングハンドル25や主変速レバー26・副変速レバー27のような各種操作具が配置されている。
【0015】
また、前記植付部3においては、植付フレーム29の下部中央付近に植付ミッションケース40が支持され、該植付ミッションケース40への入力軸は、図示せぬリンク機構を介して、前記前車軸駆動装置7から後方に突出した植付部駆動PTO軸31に連動連結されている。更に、前記植付フレーム29の後部には、上下のガイドレール41・42を介して、苗載台37が前高後低の傾斜状態で左右往復横送り可能に配置されている。
【0016】
これにより、前記エンジン6からの動力が、前記前車軸駆動装置7から植付ミッションケース40内に入力されると、変速されて、左右に延設される伝動軸ケース33から、後方に延設される複数の植付伝動ケース34を介して、ロータリーケース35に伝達される。すると、該ロータリーケース35が回転し、その前後の植付爪36により、苗が前記苗載台37上のマットから交互に取り出されて圃場に植え付けられる。
【0017】
また、前記昇降リンク機構4Aにおいては、走行部2の後部に立設した枠体43の上下部と、植付部3を支持する門型フレーム44の上下部とが、それぞれ、トップリンク45とロアリンク46とを介して連結されており、前記走行部2に設けた昇降用油圧シリンダ47のロッドを前後に伸縮動させることにより、植付部3を走行部2に対して昇降できるようにしている。
【0018】
更に、前記左右傾動機構4Bにおいては、前記門型フレーム44の下部と、前記植付フレーム29の下部とが、軸芯を略前後方向に伸延させて配設したローリング軸48を介して、左右回動可能に連結される一方、前記門型フレーム44の上面に立設した支持体49と、前記植付フレーム29の上部との間には、両ロッド型の傾動用油圧シリンダ50が介設されている。そして、該傾動用油圧シリンダ50のロッドを左右に伸縮動させることにより、植付部3を走行部2に対して左右傾動できるようにしている。
【0019】
次に、前記前車軸駆動装置7の動力伝達構成について、
図2乃至
図6、
図8により説明する。
図2、
図4、
図5に示すように、該前車軸駆動装置7において、前記ミッションケース17は、車軸12L・12Rの略軸方向55の一側である進行方向左側に深く張り出して閉じるケース本体56と、該ケース本体56よりも略軸方向55に浅い蓋体57とから構成され、該蓋体57によって前記ケース本体56の右開口56hが閉塞されている。そして、このうちのケース本体56の左側面の上部に、前記油圧式無段変速装置19が装着され、蓋体57の右側面の上前部には、該油圧式無段変速装置19のポンプ軸62によって駆動されるタンデムポンプ60が装着されている。
【0020】
該タンデムポンプ60は、前記油圧式無段変速装置19に作動油を補給するためのチャージポンプ58と、前記ステアリングハンドル25のパワステ用のトルクジェネレータ61や前記昇降用油圧シリンダ47・傾動用油圧シリンダ50に作動油を供給する外部油圧取出ポンプ59とから構成される。
【0021】
更に、前記ケース本体56の左側面の下中央部と、前記蓋体57の右側面の下中央部に、それぞれ、前記左右の前アクスルケース13L・13Rが装着されている。
【0022】
図3乃至
図6、
図8に示すように、このようなミッションケース17内には、その上半部に、前から順に、ポンプ駆動軸64、副変速軸65、変速出力軸66、及びPTO伝動軸67が回動可能に機体左右方向に横架され、ミッションケース17内の下半部に、前から順に、同一軸心上にある前記左右の前輪伝動軸18L・18Rと、PTO伝動軸68とが、回動可能に機体左右方向に横架されている。
【0023】
このうちのポンプ駆動軸64の左端は、前記油圧式無段変速装置19内からセンタセクション69・ケース本体56を貫通してミッションケース17内に貫入するポンプ軸62の右端に、カップリング70を介して連結される一方、ポンプ駆動軸64の右端は、前記タンデムポンプ60への入力軸71の左端に、カップリング72を介して連結されている。
【0024】
更に、前記ポンプ軸62の左端は、油圧式無段変速装置19のハウジング73から左方に突出し、該突出端には、冷却ファン51とプーリ74が固設され、該プーリ74と、前記エンジン6の出力軸136に固設されたプーリ137との間には、ベルト75が巻回されている。
【0025】
そして、前記ハウジング73内には、可変容量型の油圧ポンプ138と固定容量型の油圧モータ139とが前後に並設され、前記油圧ポンプ138には可動斜板138aが設けられている。該可動斜板138aより延出された図示せぬトラニオン軸には、主変速操作軸140が連結され、該主変速操作軸140は、図示せぬリンク機構を介して、前記主変速レバー26に連動連係されている。
【0026】
これにより、前記エンジン6のエンジン動力は、出力軸136、プーリ137、ベルト75、プーリ74を介して、前記油圧式無段変速装置19のポンプ軸62に入力された後、そのまま、ポンプ駆動軸64、入力軸71を介してタンデムポンプ60に伝達され、エンジン6稼働中は、常時、前記チャージポンプ58と外部油圧取出ポンプ59が駆動されるようにしている。一方、前記主変速レバー26を傾倒操作すると、前記主変速操作軸140が水平回動して可動斜板138aが傾転され、流体接続された油圧ポンプ138・油圧モータ139間において無段階で主変速された動力が、モータ軸63か出力される。
【0027】
前記副変速軸65において、その左端は、カップリング112を介して、前記モータ軸63の右端に連結されており、油圧式無段変速装置19からの主変速動力が、副変速軸65に伝達されるようにしている。
【0028】
そして、該副変速軸65の右半部に、左から順に、小径の低速ギア77と、該低速ギア77よりも大径の高速ギア78とが固設される一方、該低速ギア77と高速ギア78により左右から挟まれるようにして、前記変速出力軸66の右半部には、大径ギア80a・小径ギア80bを一体的に構成した二連ギアの副変速ギア80が、左右摺動可能かつ相対回転不能にスプライン嵌合されている。
【0029】
該副変速ギア80には、シフトフォーク81が係止され、該シフトフォーク81の上部は、前記ケース本体56内壁から右方に突設されたガイド軸54上に、左右摺動自在に外嵌される。そして、該ガイド軸54上には、操作アーム53の前端が延出して配置される一方、該操作アーム53の後端は、ケース本体56の後部上面に軸支された副変速操作軸52下端に固設されており、該副変速操作軸52は、図示せぬリンク機構を介して、前記副変速レバー27に連動連結されている。
【0030】
これにより、前記副変速レバー27を傾倒操作すると、前記副変速操作軸52が水平回動して操作アーム53の前端が左右動し、前記ガイド軸54に沿ってシフトフォーク81を左右方向に押動させる。すると、該シフトフォーク81によって前記副変速ギア80が軸心方向に摺動され、大径ギア80aが低速ギア77と噛合する低速段、大径ギア80a・小径ギア80bのいずれも低速ギア77・高速ギア78の間に保持されていて噛合することのない中立状態、小径ギア80bが高速ギア78と噛合する高速段のうちのいずれかに切り替えることができ、高低二段変速可能な副変速機構82を構成する。
【0031】
前記変速出力軸66の右端はブレーキ収納部97内に貫入し、該貫入端66aに摩擦多板式の駐車ブレーキ96が配置されている。前記ブレーキ収納部97の内部では、前記貫入端66aに、二段筒状のブレーキハウジング98がスプライン嵌合され、該ブレーキハウジング98の右半部の拡径筒部98aの外周面と、ブレーキ収納部97の周壁97aの内周面との間には、複数枚の摩擦エレメント99がそれぞれ摺動のみ可能に支持されている。
【0032】
該摩擦エレメント99の右側面には、リング状の止め輪101によってブレーキディスク100が抜け止めされ、該ブレーキディスク100の右方に、鉛直のブレーキ操作軸102が軸心回りに回動可能に支持されている。
【0033】
該ブレーキ操作軸102の上端は、前記ブレーキ収納部97外に突出されて、その突出端は、図示せぬリンク機構を介して、前記運転席28近傍のブレーキ操作具に連動連結されている。一方、前記ブレーキ操作軸102の下部は、鉛直平坦なカム面102aを有する平面断面視略半円状のカム部となっており、該カム面102aは、前記ブレーキディスク100と対峙するように配置されている。
【0034】
これにより、ブレーキ操作具を操作すると、カム面102aがブレーキディスク100の鉛直面と直角になり、該カム面102aの縁部がブレーキディスク100を摩擦エレメント99に向かって押し付け、変速出力軸66が制動される。
【0035】
図2、
図4乃至
図6に示すように、前記副変速軸65の左半部には、小径のPTO伝動ギア76が固設される一方、前記変速出力軸66の左半部には、該PTO伝動ギア76よりも大径の中間ギア79が、相対回転可能に外嵌されて前記PTO伝動ギア76と常時噛合され、減速ギア列76・79が形成される。更に、該中間ギア79の右側には、伝動ギア90が固設されている。
【0036】
ここで、前記左右の前輪伝動軸18L・18Rの内端間には、差動装置83が介設される。該差動装置83は、前記前輪伝動軸18L・18Rと同一回転軸心を有するようにミッションケース17内に支持された中空のデフケース84と、該デフケース84の右側外周面にボルト85によって締結固設されるリングギア86と、前記デフケース84内において前記前輪伝動軸18L・18Rと直交配置されデフケース84と一体的に回転するピニオン軸87と、該ピニオン軸87の両端に回動可能に配置されるベベルギアであるピニオン88・88と、前記前輪伝動軸18L・18Rの内端側に固定され前記ピニオン88・88に噛合されるベベルギアであるデフサイドギア89・89とにより構成されている。
【0037】
そして、このうちのリングギア86が、前方で、該リングギア86よりも小径の前記伝動ギア90と常時噛合されて、減速ギア列90・86が形成される。
【0038】
これにより、前記副変速機構82から出力される高低二段の副変速動力を、減速ギア列76・79と減速ギア列90・86で減速してからリングギア86に入力し、差動回転として、左右の前輪伝動軸18L・18Rに伝達することができる。
【0039】
なお、前記差動装置83には、この差動回転をロックするためのデフロック機構91が設けられている。該デフロック機構91は、前記左の前輪伝動軸18Lの内端部外周に軸方向摺動可能に嵌設されるデフロックスライダ92、該デフロックスライダ92でデフサイドギア89側に形成された凸部92a、該凸部92aを係止可能とすべくデフケース84に設けられた係合凹部84a、及び弾性力により前記凸部92aを係合凹部84a側に向かって常時押圧する付勢バネ93より構成されている。そして、このうちのデフロックスライダ92は、ケース本体56から後方に突出したデフロック操作軸122に連結され、該デフロック操作軸122は、リンク機構95を介して、前記運転席28近傍に設けたデフロックレバー94に連動連結されている。
【0040】
これにより、通常は、前記付勢バネ93の弾性力に抗して、前記デフロックスライダ92がデフケース84より離間して配置されており、前記凸部92aが係合凹部84aに係止されていないが、デフロック時には、前記デフロックレバー94を操作して、デフロックスライダ92を軸心方向に摺動させ、凸部92aを係合凹部84aに係止させる。すると、デフケース84と前輪伝動軸18L・18Rが一体的に連結され、左右の前輪伝動軸18L・18Rを同一回転数で駆動させることができる。
【0041】
前記PTO伝動軸67の左半部には、
図6のような爪式のワンウェイクラッチ機構104が備えられている。該ワンウェイクラッチ機構104は、前記PTO伝動軸67の左端部に相対回転可能に嵌設されると共に前記中間ギア79と常時噛合されるクラッチギア105と、該クラッチギア105の右側面の爪部105aに係合する爪部106aを左側面に備える筒状のクラッチハウジング106と、前記PTO伝動軸67に外嵌されて弾性力によりクラッチハウジング106をクラッチギア105側に向かって常時押圧する付勢バネ107とより構成されている。前記クラッチハウジング106は、前記PTO伝動軸67に対して、左右摺動可能かつ相対回転不能にスプライン嵌合されている。
【0042】
そして、前記クラッチギア105が一回転方向、本実施例では前進走行に対応する回転方向(以下、「前進回転方向」とする)に回転する場合にのみ、付勢バネ107によって両爪部105a・106a間が係合するようにしている。
【0043】
更に、PTO伝動軸67の右端部には、ベベルギア113が固設され、該ベベルギア113は、前記植付部駆動PTO軸31の後端に固設されたベベルギア114と常時噛合されている。
【0044】
これにより、油圧式無段変速装置19のモータ軸63から副変速軸65に入力される主変速動力が、PTO伝動ギア76、中間ギア79を介してクラッチギア105に伝達され、該クラッチギア105が前記前進回転方向に回転する場合にのみ、両爪部105a・106a間が係合してクラッチ「入」となり、クラッチギア105からクラッチハウジング106に動力が伝達される。すると、前記PTO伝動軸67が回動され、ベベルギア113・114を介して、植付部駆動PTO軸31から植付動力が出力されて、図示せぬリンク機構を介して前記植付ミッションケース40に入力され、前述した、苗の植え付けや苗載台37上での苗マットの移動等が行われるのである。
【0045】
すなわち、爪式のワンウェイクラッチ機構104を、植付部駆動PTO軸31の伝動上手側の直前の軸であるPTO伝動軸67上に設けるので、ローラ式のワンウェイクラッチ機構に比べて、衝撃荷重や回転変動への耐性を高めることができ、クラッチの信頼性を向上できると共に、PTO伝動軸67周囲の空間を利用してワンウェイクラッチ機構104を設置することができ、空間の有効利用により、車軸駆動装置である前車軸駆動装置7のコンパクト化を図ることができる。
【0046】
前記PTO伝動軸68は、その右半部に伝動ギア128が固設され、該伝動ギア128は、前方で前記リングギア86と常時噛合される一方、PTO伝動軸68の左端部には、ベベルギア129が固設され、該ベベルギア129は、前記後輪駆動PTO軸30の前端に固設されたベベルギア130と常時噛合されている。
【0047】
これにより、前記差動装置83を介して左右の前輪8L・8Rに伝達される走行動力が、伝動ギア128、PTO伝動軸68、ベベルギア129・130を介して、後輪駆動PTO軸30から出力される。そして、前記伝動軸32を介して後車軸駆動装置9に入力され、左右の後輪10L・10Rに伝達される。
【0048】
次に、以上のような前車軸駆動装置7のミッションケース17に備える操舵構成について、
図1、
図2、
図4、
図7乃至
図9、
図11について説明する。該ミッションケース17のケース本体56の上面前部には筒状の設置部56fが立設され、該設置部56f上に、前記トルクジェネレータ61が配置されている。そして、該トルクジェネレータ61への入力軸61aが、上方に突出し、自在継手125等を介して、前記ステアリングハンドル25を支持するハンドル軸108の下部に連動連結されている。
【0049】
一方、前記トルクジェネレータ61からの出力軸61bは、ミッションケース17内に貫入し、ケース本体56の上部に回動可能に設けられたカップリング115の上半部と、相対揺動自在かつ相対回転不能に、同一軸心126上でスプライン嵌合され、該カップリング115の下半部には、ケース本体56内で上下方向に延設される回動軸109の上端部が、相対揺動自在かつ相対回転不能に、同一軸心126上でスプライン嵌合されている。そして、該回動軸109は、前記ポンプ駆動軸64と直交するように、該ポンプ駆動軸64とケース本体56前壁との間の空間を利用して垂設されている。
【0050】
これにより、ステアリングハンドル25を回動操作すると、該回転動力が、前記入力軸61aからトルクジェネレータ61に入力され、該トルクジェネレータ61によってトルクが付与された後、出力軸61bから出力され、該出力軸61bと同一軸心126上の回動軸109に伝達される。
【0051】
また、該回動軸109の下方には、同一軸心126上にピットマンアーム軸111が配置されている。
【0052】
該ピットマンアーム軸111の下半部の途中部は、前記ケース本体56のケース下部56aのボス部56a1に、軸受け123aを介して軸支されると共に、ピットマンアーム軸111の下端は、ミッションケース17から下方に突出し、前記軸心126周りに揺動可能なピットマンアーム120と連結される。
【0053】
該ピットマンアーム120は、前記左右の前輪8L・8Rを設けた前アクスルケース13L・13Rのナックルアーム13La・13Raに、左右のタイロッド121L・121Rを介して連動連結されている。
【0054】
これにより、ピットマンアーム軸111が回動すると、ピットマンアーム120が軸心126周りに揺動し、タイロッド121L・121Rを介して、前アクスルケース13L・13Rが略水平回動され、前輪8L・8Rの向きが左右に変化して前輪操舵が行われる。
【0055】
また、このようなピットマンアーム軸111と前記回動軸109との間には、前記回動軸109からの回転動力を減速してトルクを高める減速機構124が介設されている。
【0056】
該減速機構124においては、前記回動軸109の下端部を縮径して差し込み部109aを形成すると共に、該差し込み部109aを挿入して前記軸心126周りに相対回転可能な筒状のボス部111aを、前記ピットマンアーム軸111の上端部に形成している。
【0057】
更に、前記回動軸109の後方には、減速軸110が平行に配置され、該減速軸110の下端部は、前記ピットマンアーム軸111と同様に、前記ケース本体56のケース下部56aのボス部56a2に、軸受け123bを介して軸支される。
【0058】
このようなピットマンアーム軸111の上端部と減速軸110の上半部の途中部は、それぞれ、本発明に係わる中間壁56bに上下方向に穿孔したボス部56b1・56b2と、軸受け123c・123dを介して軸支されている。そして、該中間壁56bは、前記ミッションケース17のケース本体56における前壁56cの内側から、内方に向かって略同一平面上を突出されている。詳しくは、中間壁56bの上面56b3が、前記略軸方向55に沿うようにして、ケース本体56の内側面56eから蓋体57の内側面57eに向けて延設されている。
【0059】
そして、このような中間壁56bよりも上方では、前記回動軸109の差し込み部109aの直上位置に小径ギア116が外嵌固定され、該小径ギア116よりも大径の大径ギア117が、前記減速軸110の上端部に外嵌固定されて、前記小径ギア116と常時噛合されており、第1減速ギア列116・117が形成される。
【0060】
一方、前記中間壁56bとケース下部56aとの間の隙間空間127では、前記減速軸110の途中部に小径ギア118が外周に形成され、該小径ギア118よりも大径の大径ギア119が、前記ピットマンアーム軸111の途中部に外嵌固定されて、前記小径ギア118と常時噛合されており、第2減速ギア列118・119が形成される。
【0061】
これにより、回動軸109に伝達されてきた回転動力は、このような減速機構124において、前記第1減速ギア列116・117と第2減速ギア列118・119から成る2組の減速ギア列を介して減速されてトルクが高められた後に、ピットマンアーム軸111に伝達される。
【0062】
以上のような構成において、ステアリングハンドル25を回動操作すると、その回転動力がトルクジェネレータ61と減速機構124によってトルクが高められた後、ピットマンアーム軸111、ピットマンアーム120、タイロッド121L・121Rを介し、操舵力として前アクスルケース13L・13Rに伝達され、前輪8L・8Rの向きを変更して前輪操舵を行うことができる。
【0063】
そして、このうちの減速機構124においては、ミッションケース17の一部である単一の中間壁56bを設けるだけで、ピットマンアーム軸111と減速軸110を回動支持できるようにしている。
【0064】
すなわち、ミッションケース17に、ステアリングハンドル25と連動するパワーステアリング機構であるトルクジェネレータ61を設け、該トルクジェネレータ61からの第1出力軸である出力軸61bを、ミッションケース17内の回動軸109の上端に連結し、該回動軸109と減速機構124を介して、前記ミッションケース17下方の操向部材であるピットマンアーム120に前記出力軸61bを連結する作業車である田植機1の車軸駆動装置である前車軸駆動装置7において、前記回動軸109の下端に対して同一軸心上で互いに相対回転可能に嵌合する第2出力軸であるピットマンアーム軸111と、前記減速機構124の減速軸110とは、互いに平行に並設すると共に、前記ミッションケース17下部から内方に突出する略板状部材である中間壁56bによって回動可能に支持し、該中間壁56bは、前記ミッションケース17と一体構成の単一部材から成るので、前記ピットマンアーム軸111と減速軸110の支持構造を単純化させることができ、前記減速機構124周囲におけるミッションケース17の内部構造の複雑化を避けて、組み立て性の向上や、加工コストの減少を図ることができる。
【0065】
更に、前記減速機構124は、前記回動軸109から減速軸110への第1減速ギア列116・117と、該減速軸110から前記第2出力軸であるピットマンアーム軸111への第2減速ギア列118・119とを備え、該第2減速ギア列118・119を、前記略板状部材である中間壁56bとミッションケース17下部との隙間空間127に配置する一方、前記第1減速ギア列116・117を、前記中間壁56bよりも上方に配置することにより、前記ピットマンアーム軸111の上端部と減速軸110の途中部を中間壁56bと略同一平面上に設定可能とするので、前記ピットマンアーム軸111と減速軸110を単一部材である中間壁56bによって回動可能に支持することができ、減速機構124の構成を大きく変更する必要がなく、従来部品の利用による部品コスト・管理コストの低減を図ることができる。更に、前記隙間空間127内には第2減速ギア列118・119のみを配置するので、隙間空間127内に第1減速ギア列116・117も一緒に収容する場合と比べ、中間壁56bをミッションケース17下部に近接して配置することができ、減速機構124の筐体部分のコンパクト化を図ることができる。
【0066】
加えて、前記ミッションケース17は、車軸12L・12rの略軸方向55の一側である進行方向左側に深く張り出して閉じると共に該略軸方向55の他側である進行方向右側を開口するケース本体56と、該開口である右開口56hを閉塞すると共に前記ケース本体56よりも略軸方向55に浅い蓋体57とを組み合わせて構成し、該ケース本体56に前記略板状部材である中間壁56bを設け、該中間壁56bは、板面である上面56b3が前記略軸方向55に沿うように、前記進行方向左側から進行方向右側に向けて延設するので、ミッションケース17をケース本体56と蓋体57の2分割式に構成して、ケース本体56内へのアクセスを容易にすると共に、ケース本体56の内容積を増大させて、十分な大きさの作業空間を確保することができ、ケース本体56内部への中間壁56bの成形加工が容易となり、加工性が著しく向上する。
【0067】
次に、前記ミッションケース17における油路構成について、
図5、
図6、
図8乃至
図12により説明する。
図8、
図11に示すように、該ミッションケース17の下半部には油溜まり153が設けられ、該油溜まり153の油面153aよりも上方に、前記ポンプ駆動軸64、副変速軸65、変速出力軸66、PTO伝動軸67、及び植付部駆動PTO軸31が配置されている。
【0068】
図5、
図6、
図8乃至
図10に示すように、このうちの軸65・67と、該軸65・67に付随する被潤滑部位に対しては、ケース本体56の内側面56eと一体構成した戻り油路189により、油圧式無段変速装置19からの作動油を供給可能に構成している。
【0069】
該戻り油路189は、前記油圧式無段変速装置19のハウジング73内に一端が連通する連通孔174と、該連通孔174の他端が開口する溝状凹部186とから構成される。そして、該溝状凹部186は、前記副変速軸65の前方から前輪伝動軸18Lまで後斜め下方に延びる前リブ187と、前記連通孔174の下方から前方に延出した後に副変速軸65の外周前部に沿うようにして前輪伝動軸18Lまで後斜め下方に延びる後リブ188との間に凹設され、該前リブ187・後リブ188の延出両端を連結して閉塞することにより形成される。
【0070】
これにより、油圧式無段変速装置19のハウジング73内に溜まった作動油が連通孔174を通って溝状凹部186内に流入し、該溝状凹部186内を流下して油溜まり153内に戻される。
【0071】
更に、該溝状凹部186を覆うL字板状のカバー体190が設けられており、ボルト191・191を、該カバー体190の固定孔190a・190bに通してネジ孔199・200に螺挿することにより、カバー体190を前後のリブ187・188に対して着脱可能に締結固定する。
【0072】
これにより、該カバー体190によって、前記溝状凹部186の下方延出端186aの周辺を除いて、前記溝状凹部186の開口部を閉塞することができ、前記戻り油路189を、下端のみが油溜まり153内に開口した密閉型に形成することができる。
【0073】
加えて、前記副変速軸65・PTO伝動軸67の左端外周には、それぞれボス部194・197が形成され、該ボス部194・197には、それぞれ内方に開いたU字状の油溝194a・197aが凹設されており、前記連通孔174から溝状凹部186内に流入した作動油が、前リブ187・後リブ188とカバー体190間の隙間から漏出すると、前記油溝194a・197aを通って、ボス部194・197内に流入するようにしている。
【0074】
これにより、油圧式無段変速装置19のハウジング73内の作動油が、潤滑油として軸65・67と、該軸65・67に付随する被潤滑部位であるギア76・77・78・105、ワンウェイクラッチ機構104、軸受け201・202、及びカップリング112に供給される。
【0075】
なお、ケース本体56の後部から後方には、筒状のボス部56gが突出され、該ボス部56g内に前記後輪駆動PTO軸30が回動支持されている。そして、該後輪駆動PTO軸30のベベルギア130と噛合するベベルギア129を左端部に固設した前記PTO伝動軸68の右端部と、前記前輪伝動軸18Rの左端部とは、それぞれ、軸受板232の後半部に凹状に形成した後支持部232aと、軸受板232の前半部に穿孔した前支持部232bとによって、軸支されている。
【0076】
該軸受板232は、前記ケース下部56aの右側面56a3に、複数のボルト233によって着脱可能に締結されており、これにより、PTO伝動軸68・後輪駆動PTO軸30の軸受部や差動装置83へのアクセスを容易にしている。
【0077】
また、
図5、
図6、
図11、
図12に示すように、前記軸64・66・31と、該軸64・66・31に付随する被潤滑部位に対しては、蓋体57の内側面57eと一体構成した戻り油路221により、外部油圧装置である前記傾倒用油圧シリンダ50から戻ってきた作動油を供給可能に構成している。
【0078】
該戻り油路221は、一端が傾倒用油圧シリンダ50からの油路に連通する連通孔173と、該連通孔173の他端が開口する溝状凹部220とから構成される。そして、該溝状凹部220は、前記連通孔173の下方から前後方向に延出する貯溜リブ204と、該貯溜リブ204の前後の延出リブ218・219と、これらリブ204・218・219に対向位置にある蓋体57外周縁の突き合わせリブ57fとの間に凹設される。
【0079】
更に、前記前延出リブ218の途中における変速出力軸66・ポンプ駆動軸64の左端外周には、それぞれボス部207・211が形成され、該ボス部207・211には、それぞれ内方に開いたU字状の油溝207b・211bが凹設される。一方、前記後延出リブ219の延出端における蓋体57には、油孔215が形成され、該油孔215は、前記植付部駆動PTO軸31でベベルギア114近傍を軸支する軸受け216と軸受け217との間に連通される。
【0080】
これにより、作動油が連通孔173から貯溜リブ204内に流入すると、前方に流出した作動油は、前延出リブ218を通って油溝207b・211bに到達すると共に、到達するまでの間に、前延出リブ218の内端から流下し、油溜まり153内に戻される。同様に、後方に流出した作動油は、後延出リブ219を通って油孔215に到達すると共に、到達するまでの間に、後延出リブ219の内端から流下し、油溜まり153内に戻される。
【0081】
そして、油溝207b・211b、油孔215に到達した作動油は、ボス部207・211・230内に流入し、前記軸64・66・31と、該軸64・66・31に付随する被潤滑部位であるギア79・80・90・114、駐車ブレーキ96、軸受け216・217・222・223、及びカップリング72に供給される。
【0082】
加えて、前記貯溜リブ204には、その突設端縁204bを覆う側板205が設けられており、ボルト224を、側板205を通してネジ孔204cに螺挿することにより、側板205を着脱可能に締結固定し、蓋体57の内側面57e、貯溜リブ204、及び側板205によって3方が囲まれ上方のみが開いた樋225が形成される。そして、該樋225の後面は、貯溜リブ204の後部を上に屈曲して形成した後仕切り部204aによって閉塞されている。
【0083】
これにより、ミッションケース17が略水平の場合は、該後仕切り部204aによって後方への作動油が堰き止められており、前方の油溝207b・211bを介してボス部207・211内にのみ、作動油が潤滑油として供給される。これに対し、前記植付部3に苗を載せる等して作業中に機体後方が重くなると、ミッションケース17が前高後低に傾斜して作動油が後仕切り部204aからも溢れ出し、油孔215を介して、ボス部230内にも、作動油が潤滑油として供給され、前記植付部3に大きなPTO駆動力を出力している植付部駆動PTO軸31を適時潤滑することができる。