(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161009
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】鞄
(51)【国際特許分類】
A45C 5/00 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
A45C5/00 C
A45C5/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-38410(P2015-38410)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-158730(P2016-158730A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2015年7月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 PROTECA RECEPTION PARTY 開催場所 エース株式会社本社(東京都渋谷区神宮前1−4−16 神宮前M−SQUARE) 開催日 平成26年11月26日 (刊行物等)発行者名 株式会社日本経済新聞出版社 刊行物名 日本經濟新聞 発行年月日 平成26年12月9日 (刊行物等)掲載アドレス http://www.ace.jp/ 掲載年月日 平成27年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102304
【氏名又は名称】エース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100174768
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】若生 然太
【審査官】
遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−265116(JP,A)
【文献】
登録実用新案第039876(JP,Z2)
【文献】
実開昭49−078309(JP,U)
【文献】
特開2005−137523(JP,A)
【文献】
特開2001−120323(JP,A)
【文献】
米国特許第08251192(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状とした本体(1)から箱状とした蓋体(2)を見開き状態に開閉操作ができるようにしており、前記蓋体(2)を閉じた状態において、この蓋体(2)の内側に沿うようにすると共に、収納した荷物の出入れ口(4)を有したテント状内装体(5)を、前記本体(1)の開口周縁部(1a)に設けた鞄であって、前記テント状内装体(5)は、天面部(5a)と側周面部(5b)により略四角屋根状に形成されており、側周面部(5b)を構成する外生地(6)と内生地(7)の間に保持板(8)を内装して、下端周縁部を前記本体(1)の開口周縁部(1a)に縫着していることを特徴とする鞄。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、箱状とした本体と箱状とした蓋体からなる鞄に関し、特に大型の旅行用鞄等として用いられるのに好ましい鞄に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の鞄としては、例えば
図6に示したように、箱状とした本体11と箱状とした蓋体12とをそれぞれ合成樹脂材で一体成形し、その一辺部をそれぞれヒンジ連結して見開き状態に開放できるようにしており、本体11の開口部に仕切り生地13を設けたものが存在する(特許文献1)。
【0003】
そして、前記鞄の本体11の開口部に設けられた仕切り生地13は、本体11を仕切るために使用するものであり、本体11を奥側と開口側とに仕切るようにしている。さらに、この仕切り生地13は内蓋としての機能もあり、蓋体12を上から被せるようにして閉じる際に収納物が落ちないようにする使用目的にも対応できる。したがって、この仕切り生地13は、本体11側に代え、または本体11側と共に、蓋体12側に設けてもよいとしている。
【0004】
さらに、この種の鞄としては、例えば
図7に示したように、バックシェル(本体)21とフロントシェル(蓋体)22を備え、フロントシェル(蓋体)22の内側に広がる底層23および最上層24を有しており、底層23および最上層24の周縁部は第二線ファスナー25に連結され、最上層24は開口部と、開口部の周りに装着された第三線ファスナー26を有したものが存在する(特許文献2)。
【0005】
そして、前記鞄を使用する際には、底層23と最上層24との間に荷物を収め、そののち第三線ファスナー26を完全に閉めれば、鞄をいきなり開けても中の荷物が落ちてしまうような事態を防止することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3822560号公報
【特許文献2】実用新案登録第3173563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の鞄は、蓋体を開いた状態では、仕切り生地13または最上層24を設けていない本体側または蓋体側が開け放されているので、収納した荷物が露出しており、見掛けがよくないという問題点を有していた。
【0008】
さらに、上記従来の鞄は、鞄内に荷物を満杯に収納する場合に、一般的には本体側と蓋体側に分けて収納し、仕切り生地13または最上層24を設けた本体側または蓋体側を閉じなければならない。そのため、従来の鞄では、本体側と蓋体側に分けて荷物を収納するのが、二度手間で面倒であるという問題点を有していた。さらに、従来の鞄では、閉じようとする蓋体側にも荷物が収納されているので、この荷物の荷重が掛かって操作がし難く、また蓋体を開く場合にも、同様にその荷物の荷重が掛かって操作がし難いという問題点を有していた。
【0009】
また、上記従来の鞄は、いずれも蓋体の開閉時に仕切り生地13または最上層24を設けた本体側または蓋体側に収納した荷物が落ちないようにしているが、
図6に示したように、鞄を立てたままにして蓋体を開くと、仕切り生地13または最上層24を設けていない本体側または蓋体側に収納した荷物が落ちてしまう。したがって、従来の鞄では、仕切り生地13または最上層24を設けていない本体側または蓋体側に収納した荷物が落ちてしまわないようにするには、
図7に示したように、鞄を横にした状態にして、仕切り生地13または最上層24を設けた本体側または蓋体側を開かなければならないという問題点を有していた。
【0010】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、蓋体を開いた状態でも収納した荷物が露出して見掛けが悪くなることがなく、また本体側と蓋体側に分けて荷物を収納する必要がなく、さらに蓋体を開閉操作する場合にも荷物の荷重が掛からずその操作がし易く、しかも鞄を立てたままにして蓋体を開いても収納した荷物が落ちてしまうことがない鞄を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのため、この発明の鞄は、箱状とした本体1から箱状とした蓋体2を見開き状態に開閉操作ができるようにしており、前記蓋体2を閉じた状態において、この蓋体2の内側に沿うようにすると共に、収納した荷物の出入れ口4を有したテント状内装体5を、前記本体1の開口周縁部1aに設け
たものとしており、前記テント状内装体5は、天面部5aと側周面部5bにより略四角屋根状に形成されており、側周面部5bを構成する外生地6と内生地7の間に保持板8を内装して、下端周縁部を前記本体1の開口周縁部1aに縫着している。
【発明の効果】
【0015】
この発明の鞄は、以上に述べたような構成としているので、蓋体を開いた状態でも収納した荷物が露出することなく見掛けが悪くなることがない。したがって、蓋体を開け放したままの状態にしておくことができ、また蓋体を長期間、開け放したままの状態にしておいても、荷物に塵や埃が溜まってしまうようなことはない。
【0016】
そして、この発明の鞄は、本体側に荷物を収納するだけでよく、荷物を収納するのが二度手間になるようなことはなく便利なものとなった。
【0017】
さらに、この発明の鞄は、蓋体を開閉操作する場合にも荷物の荷重が掛からずその操作がし易いものとなる。したがって、老人や子供等の力の弱い鞄使用者によっても力を入れることなく簡単に蓋体の開閉操作ができるものとなる。
【0018】
また、この発明の鞄は、鞄を立てたままにして蓋体を開いても収納した荷物が落ちてしまうことがない。したがって、鞄を横にする暇がなく、緊急に鞄に収納した荷物を取り出したい場合にも対処することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の鞄の蓋体を開いた状態において、テント状内装体の出入れ口を閉じた状態にしている斜視図である。
【
図2】この発明の鞄の蓋体を開いた状態において、テント状内装体の出入れ口を開いた状態にしている斜視図である。
【
図3】この発明の鞄の蓋体を開いた状態において、テント状内装体の出入れ口を開いた状態にし、このテント状内装体を本体の内側に折り返した状態にしている斜視図である。
【
図4】この発明の鞄の
図1中の丸で囲んだ部分の概略断面図である。
【
図5】この発明の鞄の
図3中の丸で囲んだ部分の概略断面図である。
【
図6】従来の鞄の一例を示しており、その鞄の蓋体を開いた状態にしている斜視図である。
【
図7】従来の鞄の他の例を示しており、その鞄の蓋体を開いた状態にしている斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の鞄を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
この発明の鞄は、
図1〜3に示したように、箱状とした本体1と箱状とした蓋体2とからなり、本体1から蓋体2を見開き状態に開閉操作ができるようにしている。前記本体1と蓋体2は、いずれも合成樹脂の成形品としており、一般的には本体1を蓋体2より深く形成しているが、同一に形成することもできる。また、場合によっては本体1を蓋体2より浅く形成することもできる。
【0022】
この発明の鞄において、本体1から蓋体2を見開き状態に開閉操作ができるようにするには、図示したように、本体1と蓋体2のそれぞれの開口周縁部1a、2aに沿ってエンドレス状に一対の鞄用ファスナー体3a、3bを装着し、開閉操作時にはこの鞄用ファスナー体3a、3bを全開しないで、一側縁で一部を噛み合わせたままにして、その部分から見開き状態に開閉操作ができるようにしているが、その構造は限定されることはない。例えば、本体1と蓋体2のそれぞれの開口部の一側縁間にヒンジ(図示せず)を介在させたものとして、このヒンジから見開き状態に開閉操作ができるようにしたり、本体1の開口部と蓋体2の開口部のそれぞれの一側縁を残して三側縁に沿って前記鞄用ファスナー体3a、3bを装着し、その三側縁の鞄用ファスナー体3a、3bを全開し、残りの一側縁から見開き状態に開閉操作ができるようにしてもよい。
【0023】
そして、この発明の鞄は、前記本体1には、前記蓋体2を閉じた状態において、この蓋体2の内側に沿うようにすると共に、収納した荷物の出入れ口4を有したテント状内装体5を、その本体1の開口周縁部1aに張り出すようにして設けている。
【0024】
前記テント状内装体5は、合成樹脂地等からなり、天面部5aと側周面部5bにより略四角屋根状に形成されている。さらに、テント状内装体5は、
図4、5に示したように、側周面部5bを構成する外生地6と内生地7の間に保持板8を内装して、下端周縁部を前記本体1の開口周縁部1aに縫着するなどすることにより、
図1、2に示したように、本体1の開口周縁部1aに張り出すようにして設け、必要に応じて
図3に示したように、本体1の内周面部1bに沿うようにして内側に折り返せるようにしている。なお、保持板8は、側周面部5bを自立した状態に保持しておけるものであればよく、柔軟性を有する合成樹脂シート等から作成されているが、特にその材質は限定されることがない。また、テント状内装体5は、図示していないが、必要に応じ天面部5aの表側に、小物を収納するためのポケット等を設けておくことができる。
【0025】
前記出入れ口4は、図示したように、テント状内装体5の天面部5aの周縁部分と側周面部5bの上端周縁部分に沿ってエンドレス状に一対の内装体用ファスナー体9a、9bを装着し、この内装体用ファスナー体9a、9bを全開しないで、一側縁で一部を噛み合わせたままにして、その部分から見開き状態に開いて、その部分を出入れ口4とするようにしているが、その構造は限定されることはない。例えば、
図6に示した従来の鞄のように、テント状内装体5の天面部5aに、略コの字状にファスナー体(図示せず)を装着し、このファスナー体を全開して、その部分を出入れ口4としたり、また図示していないが、テント状内装体5の側周面部5bの中間部分において全周にエンドレス状に一対の内装体用ファスナー体9a、9bを装着し、前記したのと同様に出入れ口4とするようにしてもよい。なお、前記出入れ口4は、このように見開き状態にして大きく開かなくても、必要に応じてファスナー体の一部を開くことにより、その部分を出入れ口4とすることもできる。
【0026】
以上のように構成したこの発明の鞄を使用するには、次のようにして行なう。
【0027】
先ず、鞄に荷物を収納する場合には、
図1に示したように、鞄用ファスナー体3a、3bを図面後方の一側縁を噛み合わせたままにして、他の三側縁の鞄用ファスナー体3a、3bを開き、蓋体2を起こすことによりこの蓋体2を開く。そして、
図2に示したように、内装体用ファスナー体9a、9bを図面後方の一側縁を噛み合わせたままにして、他の三側縁の内装体用ファスナー体9a、9bを開き、天面部5aを起こすことによりテント状内装体5の出入れ口4を開く。この開いた出入れ口4から荷物を鞄内に収納し、本体1内からテント状内装体5内に至るまで荷物を詰め込んでから、天面部5aを倒し、開いた三側縁の内装体用ファスナー体9a、9bを閉じ、出入れ口4を閉じる。さらに、前記蓋体2を倒し、開いた三側縁の鞄用ファスナー体3a、3bを閉じることにより、蓋体2を閉じればよい。
【0028】
次に、鞄に収納した荷物を取り出す場合は、前記した鞄に荷物を収納する場合と同様にして、鞄の蓋体2およびテント状内装体5の出入れ口4を開いて、本体1内からテント状内装体5内に至るまで詰め込んだ荷物を取り出せばよい。
【0029】
さらに、この発明の鞄は、テント状内装体5の側周面部5bを、
図2に示した状態から
図3に示したように、本体1の内周面部1bに沿うようにして内側に折り返せるようにしている。したがって、鞄を使用しないときには、このような状態にしておき、鞄を使用するときに、テント状内装体5の側周面部5bを起こして、
図2に示した状態に戻すこともできる。さらに、鞄に収納する荷物が少ない場合などには、このようにテント状内装体5の側周面部5bを折り返した状態にして鞄を使用することもできる。なお、このような場合には、本体1内に別途止めバンド(図示せず)を備えるなどして、本体1内に収納する荷物を落ちないにしておけばよい。
【0030】
以上のように構成したこの発明の鞄は、荷物を収納した状態で蓋体2を開いても、収納した荷物がテント状内装体5に被われており、露出することないので見掛けが悪くなることがない。したがって、蓋体2を開いたままの状態にしておくことができ、また蓋体2を長期間、開いたままの状態にしておいても、荷物に塵や埃が溜まってしまうようなことはない。
【0031】
そして、この発明の鞄は、荷物を収納する場合にも、本体1側のみに、すなわち本体1内からテント状内装体5内に至るまで荷物を詰め込めばよいので、本体側1と蓋体側2に分けて荷物を収納する必要がなく、荷物を収納するのが二度手間になるようなことはなく便利なものとなった。
【0032】
さらに、この発明の鞄は、蓋体2を開閉操作する場合にも鞄に収納した荷物の荷重が掛からずその操作がし易いものとなる。したがって、老人や子供等の力の弱い鞄使用者によっても力を入れることなく簡単に蓋体2の開閉操作ができるものとなる。
【0033】
また、この発明の鞄は、鞄を立てたままにして蓋体2を開いても、収納した荷物が落ちてしまうことがない。したがって、鞄を横にする暇がなく、鞄に収納した荷物を緊急に取り出したい場合にも対処することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 本体
1a 開口周縁部
1b 内周面部
2 蓋体
4 出入れ口
5 テント状内装体
5a 天面部
5b 側周面部
6 外生地
7 内生地
8 保持板