特許第6161019号(P6161019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6161019レーダ信号処理支援装置およびレーダ信号生成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161019
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】レーダ信号処理支援装置およびレーダ信号生成装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/292 20060101AFI20170703BHJP
   G01S 13/28 20060101ALI20170703BHJP
   G01S 13/53 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G01S7/292 204
   G01S13/28 200
   G01S13/53
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-35925(P2011-35925)
(22)【出願日】2011年2月22日
(65)【公開番号】特開2012-173157(P2012-173157A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2014年2月24日
【審判番号】不服-17741(P-17741/J1)
【審判請求日】2015年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】時枝 幸伸
(72)【発明者】
【氏名】高山 卓也
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 酒井 伸芳
【審判官】 大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−6031(JP,A)
【文献】 特開2002−82162(JP,A)
【文献】 特開2010−261845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/00- 7/42 G01S13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス幅および占有帯域幅が異なる複数pのパルス波の反射波としてそれぞれ到来した第1ないし第pの受信波に前記複数pのパルス波に個別に整合した処理を施し、第1ないし第pのパルスを得る受信処理手段と、
Aスコープ上で前記第1ないし第pのパルスにパルス幅と占有帯域幅との積の相違によって付帯するレベルの格差を圧縮するレベル補正を施すことにより、前記第1ないし第pのパルスの瞬時値の最大値を揃え、前記補正の下で得られた第1ないし第pのパルスの瞬時値に、レンジ方向に対応する瞬時値の最大値に対する偏差が大きいほど小さな重みによる重み付けを施してレーダ信号処理または指示の対象とするクラッタ抑圧手段と
を備えたことを特徴とするレーダ信号処理支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダ信号処理支援装置において、
前記重みの内、
前記第ないし第pのパルスに対して前記レンジ方向に対応する瞬時値の最大値以外の重み付けに供される重みが「0」である
ことを特徴とするレーダ信号処理支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置において、受信波に含まれるクラッタの成分を抑圧してレーダ信号処理の対象とするレーダ信号処理支援装置と、そのレーダ信号処理支援装置に適合して送信されるべきパルス波を生成するレーダ信号生成装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、レーダ装置の多くは、スイープ間やスキャン間におけるレーダ信号の積分処理に基づいて海面波や雨雲等のクラッタ源から到来した反射波の成分を抑圧することにより、性能の向上と運用条件の拡大とが図られている。
【0003】
なお、本発明に関連性がある先行技術としては、以下のものがあった。
(1) 特許文献1
「復調後のレーダ・ビデオ信号をコヒーレント積分する第1の手段と、予測されるクラッタの電力スペクトルの形状を参照信号として生成する第2の手段と、上記第1及び第2の手段によって得られた両信号の相互相関関数を算出する第3の手段と、上記第3の手段で得られた相互相関関数からクラッタの電力スペクトルの諸元を推定してクラッタ信号を抑圧するためのディジタル・ノッチ・フィルタの係数を算出する第4の手段と、上記第4の手段で得られたフィルタ係数を用いたディジタル・ノッチフィルタとを備える」ことにより、「クラッタのドップラ周波数がゼロでない場合や、クラッタと目標のドップラ周波数が比較的接近している場合でも、クラッタ信号のみを抑圧する」点に特徴があるクラッタ抑圧装置が開示されている。
【0004】
(2) 非特許文献1
「クラッタ源に該当しない目標から到来するレーダ信号の電力が、そのレーダ信号が到来したレーダ装置によって送信されたパルス波の占有帯域幅とパルス幅との双方に比例する」ことに併せて、「クラッタ源から到来したレーダ信号の電力が同様のパルス波のパルス幅に比例する」ことが開示されている。
【0005】
(3) 非特許文献2
「最新のスキャンと先行して行われたスキャンとにおいてクラッタ源からそれぞれ到来したレーダ信号の間における相関性が小さいことを利用することにより、スキャン間におけるレーダ信号の積分処理に基づいて海面反射等のクラッタ波の抑圧が可能である」ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−142339号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「改訂レーダ技術」、電子情報通信学会、第4刷、吉田孝著、p63〜67,p276〜278
【非特許文献2】F.X.Hofele,"Scan-to-Scan Integration-Correlation for the Detection of Small FastTargets" Radar,2001 CIE International Conference on,Proceedings,p380~p384
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したスイープ間やスキャン間における積分処理は、先行して行われたスイープやスキャンの過程で得られたレーダ信号が記憶され、かつ適宜参照されることによって実現される。
【0009】
すなわち、クラッタを抑圧する従来のレーダ装置は、大量のレーダ信号を記憶するための記憶装置に併せて、これらの蓄積されたレーダ信号を効率的に参照して所定の処理を施すことができる処理装置とが備えなければならなかった。
【0010】
したがって、クラッタの抑圧や除去の要求は、レーダ装置のハードウェアやソフトウェアの構成が複雑化したり大規模し、さらに、低廉化や小型化が妨げられる要因となっていた。
【0011】
本発明は、構成の複雑化や大規模化を伴うことなくクラッタ源から到来した受信波の成分の抑圧を可能とするレーダ信号処理支援装置およびレーダ信号生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載の発明では、受信処理手段は、パルス幅および占有帯域幅が異なる複数pのパルス波の反射波としてそれぞれ到来した第1ないし第pの受信波に前記複数pのパルス波に個別に整合した処理を施し、第1ないし第pのパルスを得る。クラッタ抑圧手段は、Aスコープ上で前記第1ないし第pのパルスにパルス幅と占有帯域幅との積の相違によって付帯するレベルの格差を圧縮するレベル補正を施すことにより、前記第1ないし第pのパルスの瞬時値の最大値を揃え、前記補正の下で得られた第1ないし第pのパルスの瞬時値に、レンジ方向に対応する瞬時値の最大値に対する偏差が大きいほど小さな重みによる重み付けを施してレーダ信号処理または指示の対象とする。
【0015】
このようなレーダ信号処理または指示の対象となる積和の列は、上記特定の極大値が揃った第1ないし第pのパルスの瞬時値の内、クラッタ源ではない目標から到来した反射波の成分と、クラッタ源から到来した反射波の成分との間に生じる瞬時値の格差が強調された瞬時値の列として与えられる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のレーダ信号処理支援装置において、前記重みの内、前記第ないし第pのパルスに対して前記レンジ方向に対応する瞬時値の最大値以外の重み付けに供される重みが「0」である。
【0017】
このようなレーダ信号処理または指示の対象となる積和の列は、上記大値が揃った第1ないし第pのパルスの瞬時値の内、クラッタ源から到来した反射波の成分との間に生じる瞬時値の格差に基づいて選択され、かつクラッタ源ではない目標から到来した反射波の成分の瞬時値の列として与えられる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のレーダ信号処理支援装置において、前記値の降順に小さい重みの内、前記値の最大値以外に対応する重みが「0」である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、過去に受信された複数pのパルス波の瞬時値の積分処理が行われることなく、クラッタ源から到来した反射波の抑圧が実現される。
【0023】
また、本発明は、上記複数pのパルス波にパルス圧縮レーダ方式とパルスレーダ方式とに適合したパルス波を少なくとも1つ含む場合であっても、適用可能となる。
【0024】
したがって、本発明が適用されたレーダ装置では、構成の複雑化や大規模化を伴うことなくクラッタ波の抑圧が実現され、かつランニングコストの節減に併せて、信頼性および応答性が総合的に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態を示す図である。
図2】本実施形態の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図において、制御部11の第一および第二の出力は信号生成部12の対応する入力に接続され、その信号生成部12の出力は送信部13を介して空中線系14の送信入力に接続される。空中線系14の受信出力は受信部15を介して標本化部16の入力に接続される。標本化部16の第一および第二の出力は、それぞれ検波部17-1、17-2の入力に接続される。検波部17-1、17-2の出力は、レベル補正部18の第一および第二の入力にそれぞれ接続される。レベル補正部18が有する2つの制御端子には、制御部11の第三および第四の出力ポートがそれぞれ接続される。レベル補正部18の第一および第二の出力は不要波抑圧部19が有する2つの入力にそれぞれ接続され、その不要波抑圧部19の出力は対数変換部20を介して指示機21の入力に接続される。
【0027】
図2は、本実施形態の動作を説明する図である。
以下、図1および図2を参照して本実施形態の動作を説明する。
制御部11は、以下の2通りの送信波のパルス幅および占有帯域幅を信号生成部12およびレベル補正部18に与える。
(1) パルス幅がTであり、かつ占有帯域幅がBである第一の送信波
(2) パルス幅がT(≠T)であり、かつ占有帯域幅がB(≠B)である第二の送信波
【0028】
ここに、これらの第一の送信波と第二の送信波とは、何れもパルス圧縮レーダ方式に適合したチャーピングの下でパルス波として生成され、上記占有帯域幅B,Bはそのチャーピングにより生じる周波数偏移の幅に該当する。
【0029】
信号生成部12は、このようにパルス幅と占有帯域幅とが異なる第一の送信波と第二の送信波とを既定のインターバルτ(>T,>T)で交互に生成する。
【0030】
送信部13は、これらの第一の送信波と第二の送信波とを周波数軸上における所望の無線周波帯域にシフトさせ、かつ空中線系14を介して目標やクラッタ源が存在し得る地域に放射する。
【0031】
このようにして放射された第一の送信波と第二の送信波は、目標やクラッタ源(海面や雨雲等を含む)でそれぞれ反射することによって、空中線系14に第一の反射波および第二の反射波として到来する。
【0032】
受信部15は、上記第一の反射波と第二の反射波とを受信してそれぞれ第一の中間周波信号と第二の中間周波信号に変換する。
【0033】
標本化部16は、これらの第一の中間周波信号および第二の中間周波信号を既定のサンプリングクロックに同期して標本化し、検波部17-1、17-2にそれぞれ与える。
【0034】
検波部17-1、17-2は、このようにしてディジタル信号としてそれぞれ与えられた第一および第二の中間周波信号にパルス圧縮処理を施し、さらに、直交復調することによって、互いに位相が90度異なる2対の信号(I,Q)、(I,Q)を生成する。
【0035】
レベル補正部18は、これらの信号(I,Q)、(I,Q)に、制御部11によって与えられる既述のパルス幅Tと占有帯域幅Bとの積の平方根の逆数(=1/(T・B)0.5)と、パルス幅Tと占有帯域幅Bとの積の平方根の逆数(=1/(T・B)0.5)とをそれぞれ乗じることによって、第一の受信信号(I′,Q′)と第二の受信信号(I′,Q′)とを得る。
【0036】
ところで、これらのパルス幅Tと占有帯域幅Bとの積と、パルス幅Tと占有帯域幅Bとの積とは、それぞれ既述の第一の送信波と第二の送信波との圧縮比に相当する。
【0037】
また、非特許文献1に開示されるように、クラッタ源に該当しない目標から到来した反射波の電力はその反射波が到来したレーダ装置が送信したパルス波の占有帯域幅とパルス幅との積(=T・BまたはT・B)に比例するが、クラッタ源から到来したレーダ信号の電力は、同様のパルス波のパルス幅T(=TまたはT)に比例する。
【0038】
したがって、上記第一の受信信号(I′,Q′)および第二の受信信号(I,Q)のそれぞれのベクトル和として与えられる第一の信号および第二の信号の振幅は、以下の通りとなる。
(1) クラッタ源ではない共通の目標から到来した場合には同じとなる(図2(a)(1))。
(2) 共通のクラッタ源から到来した場合には異なる(図2(a)(2))。
【0039】
不要波抑圧部19は、上記第一の信号および第二の信号の内、レンジ方向に対応する瞬時値が小さい一方の信号(以下、「小振幅信号」という。)の瞬時値を他方の信号(以下、「大振幅信号」という。)の瞬時値との格差が大きいほど小さく重み付け、その重み付けの結果と大振幅信号の該当する瞬時値との和の列(以下、このような和の列として与えられる信号を単に「信号処理結果」という。)を時系列の順(レンジの昇順)に生成する。
【0040】
したがって、瞬時値がこのような和として与えられる信号(以下、「不要波抑圧信号」という。)は、図2(a)、(b)の対比として示されるように、雑音とクラッタ源から到来した反射波との双方の成分が抑圧されて含まれる。
【0041】
対数変換部20は上記信号処理結果の瞬時値を対数変換し、指示機21はその対数変換の下で与えられる信号処理結果をPPIスコープ等として表示する。
【0042】
すなわち、本実施形態では、空中線系に到来した反射波に含まれるクラッタは、その反射波を過去の瞬時値やこれらの瞬時値に施された所定の処理の結果を蓄積する記憶手段が備えられなくても抑圧され、しかも、このような抑圧のために行われる処理に要する処理量は従来例に比べて大幅に削減される。
【0043】
したがって、本実施形態に係るレーダ装置によれば、従来例に比べて低廉化に併せて構成の簡略化が図られるにもかかわらず、クラッタ源に該当しない目標の識別が確度高く安定に実現される。
【0044】
なお、本実施形態では、第一の送信波と第二の送信波とは、時間軸上で既述のインターバルτに亘って隔たった期間に個別に送信されている。
【0045】
しかし、本発明はこのような構成に限定されず、これらの第一および第二の送信波は、例えば、以下の何れかに該当する場合には、クラッタ源の反射体としての特性が定常と見なされる程度に短い期間内に順次送信され、あるいは同時に送信されてもよい。
(1) 占有帯域幅B 、B が周波数軸上で十分に隔たっている。
(2) 直接拡散方式その他の多元接続方式の下で分離可能である。
【0046】
また、本実施形態では、信号(I,Q)、(I,Q)に逆数(=1/(T・B)0.5)、(=1/(T・B)0.5)をそれぞれ乗じる既述の処理は、これらの信号(I,Q)、(I,Q)の瞬時値が先行して対数に変換され、かつ逆数(=1/(T・B)0.5)、(=1/(T・B)0.5)がそれぞれ対数として与えられる場合には、対数軸上における加算として行われてもよい。
【0047】
さらに、本実施形態では、既述の第一の送信波と第二の送信波との何れもがパルス圧縮レーダ方式に適合したチャーピングの下で生成されている。
【0048】
しかし、本発明は、このような構成に限定されず、例えば、これらの送信波の一方もしくは双方がパルスレーダ方式に適合したパルス波である場合であっても、以下に列記する事項の下で、パルス圧縮レーダ方式における圧縮比(=(T・BまたはT・B)=送信波のパルス幅と占有帯域幅(周波数偏移幅)との積)が「1」であると見なされるために、周波数偏移幅がパルス幅の逆数であると見なされることにより、同様に適用可能である。
【0049】
(1) パルス圧縮レーダ方式に適合した反射波は、一般に、送信波のパルス幅と周波数偏移幅との積(=圧縮比)倍の振幅を有すると見なすことが可能である。
(2) 一方、クラッタ源から到来した反射波の電力は上記送信波のパルス幅に比例する。
(3) 上記反射波や受信波に重畳される雑音の受信電力は、送信波の周波数偏移幅に比例する。
【0050】
また、本実施形態では、クラッタが抑圧されるべき比率が所望の値に設定されるべき場合には、既述の不要波抑圧信号を生成するために不要波抑圧部19によって行われる処理は、その所望の値に相当する抑圧計数kと、第一の信号の電力P1と、第二の信号の電力P2とに対して、その不要波抑圧信号の電力Pが下式で与えられる処理として実現されてもよい。
P=[min(P1,P2)]k+1/[max(P1,P2)]
【0051】
さらに、本実施形態では、既述の信号処理結果は、第一の信号および第二の信号の内、瞬時値が小さい小振幅信号の瞬時値を他方の大振幅信号の瞬時値との格差が大きいほど小さく重み付け、その重み付けの結果と大振幅信号の該当する瞬時値との和の列として生成されている。
【0052】
しかし、このよう信号処理結果は、例えば、所望の目標を示す成分のSN比の低下が許容される場合には、上記大振幅信号の瞬時値に対する小振幅信号の瞬時値の比率が少ないほどその小振幅信号の瞬時値が小さく重み付けられ、かつ大振幅信号の瞬時値に加えられることによって得られてもよい。
【0053】
また、このような信号処理結果は、小振幅信号の瞬時値の重み付けに供される重みが「0」に設定されることによって生成され、あるいはその小振幅信号との峻別が図られた大振幅信号の瞬時値のみの列として得られてもよい。
【0054】
さらに、本実施形態では、レベル補正部18によって第一の受信信号(I′,Q′)と第二の受信信号(I,Q)とが得られる処理は、既述の信号(I,Q)、(I,Q)に逆数(=1/(T・B)0.5)、(=1/(T・B)0.5)をそれぞれ乗じる処理ではなく、例えば、「所望の目標(クラッタ源ではない。)から到来したことが既知である第一の信号と第二の信号とのAスコープ上における瞬時値の極大値が揃う利得で、これらの第一の信号および第二の信号とのレベルの格差を圧縮する処理」で代替されてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、クラッタ源から到来した反射波の成分および雑音の成分が小さく重み付けられる処理は、既述の第一の信号と第二の信号との瞬時値の重み付き加算として実現されている。
【0056】
しかし、このような重み付き加算は、信号生成部12がパルス幅と占有帯域幅とが異なる送信波を複数p(≧3)生成し、これらの送信波にそれぞれ対応する第一ないし第pの信号の瞬時値の重み付き加算として行われてもよい。
【0057】
さらに、本発明に基づくクラッタ波の抑圧処理は、本実施形態では、レーダ装置内で行われる本来的なレーダ信号処理に以下の何れの形態で適用されてもよい。
(1) 本来的なレーダ信号処理に先行して行われる。
(2) 本来的なレーダ信号処理の所望の過程で行われる。
(3) 本来的なレーダ信号処理に後続して行われる。
(4) 所望の指示方式に基づいて指示機21によって行われる指示の対象に対して画像処理として施される。
【0058】
また、本発明は、上記本来的なレーダ信号処理の過程でクラッタ波の抑圧処理が別途行われる場合には、その抑圧処理に先行してあるいは後続して適用されることにより、クラッタ波の抑圧をより精度よく安定に実現するために適用されてもよい。
【0059】
さらに、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0060】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」に記載しなかった発明の構成、作用および効果を「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄の記載に準じた様式により列記する。
[1] パルス幅および占有帯域幅が異なる複数pのパルス波の反射波としてそれぞれ到来した第1ないし第pの受信波に前記複数pのパルス波に個別に整合した処理を施し、第1ないし第pのパルスを得る受信処理手段と、
前記第1ないし第pのパルスにレベル補正を施すことにより前記第1ないし第pのパルスの瞬時値の特定の極大値を揃え、前記レベル補正の下で得られた第1ないし第pのパルスの瞬時値を値の降順に小さい重みとの積和の列としてレーダ信号処理または指示の対象とするクラッタ抑圧手段と
を備えたことを特徴とするレーダ信号処理支援装置。
[2] パルス幅および占有帯域幅が異なる複数pのパルス波の反射波としてそれぞれ到来した第1ないし第pの受信波に前記複数pのパルス波に個別に整合した処理を施し、第1ないし第pのパルスを得る受信処理手段と、
前記第1ないし第pのパルスにレベル補正を施すことにより前記第1ないし第pのパルスの瞬時値の特定の極大値を揃え、前記レベル補正の下で得られた第1ないし第pのパルスの瞬時値を最大値に対する偏差の降順に小さい重みとの積和の列としてレーダ信号処理または指示の対象とするクラッタ抑圧手段と
を備えたことを特徴とするレーダ信号処理支援装置。
[3] パルス幅および占有帯域幅が異なる複数pのパルス波の反射波としてそれぞれ到来した第1ないし第pの受信波に前記複数pのパルス波に個別に整合した処理を施し、第1ないし第pのパルスを得る受信処理手段と、
前記第1ないし前記第pのパルスにレベル補正を施すことにより前記第1ないし第pのパルスの瞬時値の特定の極大値を揃え、前記レベル補正の下で得られた第1ないし第pのパルスの瞬時値の内、値が最大である瞬時値の列をレーダ信号処理または指示の対象とするクラッタ抑圧手段と
を備えたことを特徴とするレーダ信号処理支援装置。
[4] 目標の反射体としての特性が定常と見なされ得る期間内に、パルス幅および占有帯域幅が異なり、かつパルス圧縮レーダ方式に適合した複数pのパルス波を生成する
ことを特徴とするレーダ信号生成装置。
[5] 目標の反射体としての特性が定常と見なされ得る期間内に、パルス幅および占有帯域幅が異なり、かつパルス圧縮レーダ方式とパルスレーダ方式とにそれぞれ適合したパルス波を少なくとも1つ含む複数pのパルス波を生成する
ことを特徴とするレーダ信号生成装置。
【0061】
上記[またはに記載のレーダ信号処理支援装置において、
前記クラッタ抑圧手段は、
前記第1ないし第pのパルスの内、前記特定の極大値が最大であるパルス以外のパルスの全てまたは一部に前記重みとして「0」を適用する
ことを特徴とするレーダ信号処理支援装置。
【0062】
このような構成のレーダ信号処理支援装置では、上記[またはに記載のレーダ信号処理支援装置において、前記クラッタ抑圧手段は、前記第1ないし第pのパルスの内、前記特定の極大値が最大であるパルス以外のパルスの全てまたは一部に前記重みとして「0」を適用する。
【0063】
すなわち、クラッタ源から到来した反射波の成分との間に生じる瞬時値の格差に基づいて行われる「クラッタ源ではない目標から到来した反射波の成分の瞬時値の列」の取得は、その格差を圧縮する積和演算の手順が変更されることなく、実現される。
【0064】
したがって、構成が基本的に変更されることなく、クラッタ源から到来した反射波の成分の抑圧が柔軟に実現される。
【0065】
上記[の何れか1項に記載のレーダ信号処理支援装置において、
前記複数pのパルス波には、
パルスレーダ方式とパルス圧縮レーダ方式とにそれぞれ適合したパルス波が少なくとも1つずつ含まれる
ことを特徴とするレーダ信号処理支援装置。
【0066】
このような構成のレーダ信号処理支援装置では、上記[の何れか1項に記載のレーダ信号処理支援装置において、前記複数pのパルス波には、パルスレーダ方式とパルス圧縮レーダ方式とにそれぞれ適合したパルス波が少なくとも1つずつ含まれる。
【0067】
これらの複数pのパルス波は、パルスレーダ方式に適合した特定のパルスが含まれる場合であっても、一般に、その特定のパルスは、パルス圧縮レーダ方式における圧縮比が「1」に設定されたパルスに相当するために、占有帯域幅がパルス幅の逆数であると見なされ得る。
【0068】
したがって、複数pのパルス波にパルスレーダ方式とパルス圧縮レーダ方式とにそれぞれ適合したパルス波が少なくとも1つずつ含まれる場合であっても、上記[の何れか1項に記載のレーダ信号処理支援装置と同様に、過去に受信された複数pのパルス波の瞬時値の積分処理が行われることなく、クラッタ源から到来した反射波の抑圧が実現される。
【0069】
上記[の何れか1項に記載のレーダ信号処理支援装置において、
前記特定の極大値は、
前記第1ないし第pのパルスの個々の瞬時値の列に含まれ、かつ既知の共通の目標から到来した受信波に相当するパルスの瞬時値の極大値である
ことを特徴とするレーダ信号処理支援装置。
【0070】
このような構成のレーダ信号処理支援装置では、上記[の何れか1項に記載のレーダ信号処理支援装置において、前記特定の極大値は、前記第1ないし第pのパルスの個々の瞬時値の列に含まれ、かつ既知の共通の目標から到来した受信波に相当するパルスの瞬時値の極大値である。
【0071】
すなわち、過去に受信された複数pのパルス波の瞬時値の積分処理が行われることなくクラッタ源から到来した反射波を抑圧する処理は、上記共通の目標から到来したことが既知である受信波の瞬時値の極大値を基準として実現される。
【0072】
したがって、このような基準が与えられない場合に比べて、クラッタ源から到来した反射波の抑圧が精度よく達成される。
【0073】
上記[の何れか1項に記載のレーダ信号処理支援装置において、
前記複数pは「2」である
ことを特徴とするレーダ信号処理支援装置。
【0074】
このような構成のレーダ信号処理支援装置では、上記[の何れか1項に記載のレーダ信号処理支援装置において、前記複数pは「2」である。
【0075】
すなわち、クラッタ源から到来した反射波の成分との間に生じる瞬時値の格差に基づくその反射波の抑圧は、その抑圧の処理の過程で参照されるべき瞬時値の列の数が最小の「2」に設定されて実現される。
【0076】
したがって、このような反射波の抑圧のために行われる処理の演算対象が最少に抑えられ、ランニングコストに併せて、応答性が高められる。
【0077】
10上記[またはに記載のレーダ信号生成装置において、
前記複数pのパルス波は、
所定の多元接続方式に基づいて個別に識別可能である
ことを特徴とするレーダ信号生成装置。
【0078】
このような構成のレーダ信号処理支援装置では、上記[またはに記載のレーダ信号生成装置において、前記複数pのパルス波は、所定の多元接続方式に基づいて個別に識別可能である。
【0079】
すなわち、上記複数pのパルス波が送信されるべききっかけや期間は、自在に設定可能となる。
【0080】
したがって、本発明は、多様な周波数配置、多元接続方式および変復調方式に柔軟に適用可能となる。
【0081】
11上記[]、[10の何れか1項に記載のレーダ信号生成装置において、
前記複数pは「2」である
ことを特徴とするレーダ信号生成装置。
【0082】
このような構成のレーダ信号処理支援装置では、上記[]、[10の何れか1項に記載のレーダ信号生成装置において、前記複数pは「2」である。
【0083】
すなわち、上記レーダ信号生成装置によって生成された2つのパルス波が目標やクラッタ源に反射して生じた反射波が到来するレーダ装置では、クラッタ源から到来した反射波の成分との間に生じる瞬時値の格差に基づくその反射波の抑圧は、その抑圧のために参照されるべき瞬時値の列の数が最小の「2」に設定されて実現される。
【0084】
したがって、このような反射波の抑圧のために行われる処理の演算対象が最少に抑えられ、ランニングコストに併せて、応答性が高められる。
【符号の説明】
【0085】
11 制御部
12 信号生成部
13 送信部
14 空中線系
15 受信部
16 標本化部
17 検波部
18 レベル補正部
19 不要波抑圧部
20 対数変換部
21 指示機
図1
図2