【実施例1】
【0023】
以下、本発明の一実施例に係る放射能検査装置を
図1に示す。
図1に示すように、本実施例の放射能検査装置は、プラスチックシンチレーション検出器10、光電子増倍管20、マルチチャンネルアナライザ30、パソコン40、シーケンサ(PLC)50及び操作部60とから構成される。
プラスチックシンチレーション検出器10は、シンチレータ(図示省略)として、蛍光物質を含むプラスチックシンチレータを用いる。プラスチックシンチレータは、検査対象から放出された放射線により蛍光を発するものであり(
図5参照)、安くて加工しやすいという利点がある。但し、プラスチックシンチレータ自体は、NaIシンチレータに比較して、エネルギー分解能が低い。
【0024】
光電子増倍管20は、プラスチックシンチレータから発せられた蛍光が光電面に当たることにより光電子が飛び出し、これが複数のダイノードで衝突を繰り返して増倍され、陽極で捕捉されて電気信号として取り出される(
図5参照)。
マルチチャンネルアナライザ30は、光電子増倍管20により出力された電気信号を、エネルギーに応じた複数のチャンネルに区分してマルチチャンネルでのスペクトル分析を行うものである。例えば、バックグラウンド(BG)、放射性セシウム(Cs134,Cs137)、放射性カリウム(K40)をそれぞれ単独で測定した結果を
図3に示す。
図3において、横軸は、エネルギーに応じて区分された複数のチャンネルであり、縦軸は、各チャンネル毎に測定されたカウントである。
【0025】
パソコン40は、マルチチャンネルアナライザ30によるマルチチャンネルでのスペクトル分析の結果により、検査対象の放射性セシウムの放射能量を演算するコンピュータである。具体的には、解析ソフトをインストールすることにより、領域設定部41、補正係数演算部42、換算係数演算部43及び放射能量演算部44により実現される。なお、領域設定、補正係数計算、換算係数計算は、スペクトルを見ながら手計算で行っても良い。
【0026】
領域設定部41は、マルチチャンネルでのスペクトル分析の結果、放射性セシウムを特徴づけるチャンネルの区分をセシウム領域とすると共に、放射性カリウムを特徴づけるチャンネルの区分をカリウム領域とする。
具体的には、
図3に示すバックグラウンド(BG)、放射性セシウム(Cs134,Cs137)、放射性カリウム(K40)をそれぞれ単独でマルチチャンネルでのスペクトル分析した結果に基づき、セシウム領域(Cs領域)としては、チャンネル20からチャンネル38を設定し、カリウム領域(K領域)としては、チャンネル65からチャンネル105を設定する。
【0027】
セシウム領域は、バックグランドや放射性カリウムに比較して放射性セシウム(Cs134,Cs137)のカウントが比較的高い領域であり、その下限値であるチャンネル20を下回ると、バックグランドや放射性カリウムのカウントが上昇したり、ノイズが混入しやすくなり、また、その上限値であるチャンネル38を上回ると、放射性セシウムのカウントが急激に減少する。
【0028】
カリウム領域は、放射性セシウムに比較して放射性カリウムのカウントが比較的高い領域であり、その下限値であるチャンネル65を下回ると放射性カリウムのカウントがなだらかに減少し、また、その上限値であるチャンネル105を上回ると放射性カリウムのカウントがなだらかに減少する。
なお、チャンネルとエネルギーとの関係については別途の手法にて特定する。
【0029】
補正係数演算部42は、検査対象として放射性カリウムの校正体を測定した時のセシウム領域計数率(nk)からバックグラウンド放射線測定時のセシウム領域計数率(nb)を減じた値を分子(nk−nb)とし、校正体を測定した時のカリウム領域計数率(nkk)からバックグラウンド放射線測定時のカリウム領域計数率(nbk)を減じた値を分母(nkk−nbk)とする補正係数(α=(nk−nb)/(nkk−nbk))を求める。
【0030】
放射性カリウムの校正体とは、放射性カリウムの単一線原であり、バックグラウンドを除き放射性カリウムのみが検出される。
校正体を測定した時のセシウム領域計数率(nk)とは、
図3のセシウム領域における放射性カリウムのカウントを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル20とチャンネル38と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積である。
【0031】
バックグラウンド放射線測定時のセシウム領域計数率(nb)とは、
図3のセシウム領域におけるバックグラウンドのカウントを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル20とチャンネル38とバックグラウンドのカウントを示す折れ線で囲まれた領域の面積である。
従って、分子(nk−nb)は、
図3のセシウム領域における放射性カリウムのカウントからバックグラウンドを減じた値を各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル20とチャンネル38と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積からチャンネル20とチャンネル38とバックグランドのカウントを示す折れ線で囲まれた面積を減じた面積である。
【0032】
校正体を測定した時のカリウム領域計数率(nkk)とは、
図3のカリウム領域における放射性カリウムのカウントを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル65とチャンネル106と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた領域の面積である。
【0033】
バックグラウンド放射線測定時のカリウム領域計数率(nbk)とは、
図3のカリウム領域におけるバックグラウンドのカウントを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル65とチャンネル106とバックグラウンドのカウントを示す折れ線で囲まれた領域の面積である。
【0034】
従って、分母(nkk−nbk)は、
図3のカリウム領域における放射性カリウムのカウントからバックグラウンドを減じた値を各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル65とチャンネル106と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積からチャンネル65とチャンネル106とバックグラウンドのカウントを示す折れ線で囲まれた面積を減じた面積である。
このようにして求めた補正値(α=(nk−nb)/(nkk−nbk))は、バックグラウンドを除き、カリウム領域で計測された放射性カリウムのカウントに対するセシウム領域で計測された放射性カリウムのカウントの比率を示す指数である。
【0035】
換算係数演算部43は、検査対象として質量及び単位質量あたりの放射線量が既知の標準体を測定した時のセシウム領域計数率(nh)からバックグラウンド放射線測定時のセシウム領域計数率(nb)を減じ、標準体を測定した時のカリウム領域計数率(nhk)からバックグラウンド放射線測定時のカリウム領域計数率(nbk)を減じた値(nhk−nbk)に補正係数(α)を乗じて減じることにより、標準体測定時のセシウム領域正味計数率(nth=nh−(nhk−nbk)・α−nb)を求め、標準体の単位質量当たりの放射性セシウムの放射能量(C)と標準体の質量(W)の積(C・W)を標準体測定時のセシウム領域正味計数率(nth)で除することにより換算係数(K=C・W/nth)を求める。
【0036】
標準体は、質量及び単位質量あたりの放射線量が既知であり、放射性セシウムと放射性カリウムの両方が計測される混合線原である。一般的には、試料と同一質量であり、試料の種類に応じて作成される。
標準体を測定した時のセシウム領域計数率(nh)とは、
図3のセシウム領域における放射性カリウムからバックグラウンドを減じたもの、放射性セシウムからバックグラウンドを減じたもの、バックグラウンドのカウントを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル20とチャンネル38と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積及びチャンネル20とチャンネル38と放射性セシウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積の和からチャンネル20とチャンネル38とバックグラウンドのカウントを示す折れ線で囲まれた領域の面積を減じた面積である。
【0037】
標準体を測定した時のカリウム領域計数率(nhk)とは、
図3のカリウム領域における放射性カリウムからバックグラウンドを減じたもの、放射性セシウムからバックグラウンドを減じたもの、バックグラウンドのカウントを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル65とチャンネル106と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積及びチャンネル65とチャンネル106と放射性セシウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積の和からチャンネル65とチャンネル106とバックグラウンドのカウントを示す折れ線で囲まれた領域の面積を減じた面積である。但し、チャンネル65とチャンネル106と放射性セシウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積は小さく、0とみなすことができる。
【0038】
従って、値(nhk−nbk)は、
図3のカリウム領域における放射性カリウムのカウントからからバックグラウンドを減じたものを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル65とチャンネル106と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積からチャンネル65とチャンネル106とバックグランドのカウントを示す折れ線で囲まれた面積を減じた面積となる。
そのため、標準体測定時のセシウム領域正味計数率(nth=nh−(nhk−nbk)・α−nb)は、
図3のセシウム領域における放射性セシウムのカウントのみ(正味)を各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル20とチャンネル38と放射性セシウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積からチャンネル20とチャンネル38とバックグランドのカウントを示す折れ線で囲まれた面積を減じた面積となる。
【0039】
即ち、値(nhk−nbk)に補正係数αを乗じることにより、
図3のセシウム領域における放射性カリウムのカウントのみを各チャンネルにわたり総和したもの、具体的には、チャンネル20とチャンネル38と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積からチャンネル20とチャンネル38とバックグランドのカウントを示す折れ線で囲まれた面積を減じた面積を求めたことになる。
そのため、標準体を測定した時のセシウム領域計数率(nh)から、(nhk−nbk)・αを減じ、更に、バックグラウンド放射線測定時のセシウム領域計数率(nb)を減じれば、セシウム領域においてバックグラウンドや放射性カリウムを含まない放射性セシウムのみを計測したセシウム領域正味計数率(nth=nh−(nhk−nbk)・α−nb)を求めることができる。
【0040】
なお、標準体測定時のセシウム領域正味計数率(nth=nh−(nhk−nbk)・α−nb)は、チャンネル20とチャンネル38と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積からチャンネル20とチャンネル38とバックグランドのカウントを示す折れ線で囲まれた面積を減じた面積である。
【0041】
換算係数(K=C・W/nth)は、標準体の単位質量当たりの放射性セシウムの放射能量(C)と標準体の質量(W)の積(C・W)を標準体測定時のセシウム領域正味計数率(nth)で除することにより求める。
このようにして求めた換算係数とは、セシウム領域において放射性セシウムのみを計測したセシウム領域正味計数率(nth)に対する、標準体の放射性セシウムの放射能量(C)を示す指標となるものである。
【0042】
放射能量演算部44は、検査対象として放射線量が未知の試料を測定した時のセシウム領域計数率(ns)からバックグラウンド放射線測定時のセシウム領域計数率(nb)を減じ、試料を測定した時のカリウム領域計数率(nsk)からバックグラウンド放射線測定時のカリウム領域計数率(nbk)を減じた値(nsk−nbk)に補正係数(α)を乗じて減じて、試料を測定した時のセシウム領域正味計数率(nt=ns−(nsk−nbk)・α−nb)を求め、試料測定時のセシウム領域正味計数率(nt)と換算係数(K)の積(nt・K)を試料の質量(W')で除することにより試料の単位質量あたりの放射性セシウムの放射能量(D=nt・K/W')を求める。ただし、標準体を作成するときに試料と同じ質量とするので、W=W'である。そのため、以下では、標準体の質量Wを用いて、試料の単位質量あたりの放射性セシウムの放射能量(D=nt・K/W)と示す。
【0043】
ここで、検査対象として放射線量が未知の試料とは、実際に放射性セシウムの放射線量を求める対象であり、バックグラウンドの他に放射性セシウム、放射性カリウムを含む、例えば、米等の食料品である。
試料を測定した時のセシウム領域計数率(ns)とは、
図4中にセシウム領域における、試料のカウント各チャンネルにわたり総和したものである。即ち、
図3に示すように、セシウム領域における試料に含まれる放射性カリウム、放射性セシウム、バックグラウンドのカウントを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル20とチャンネル38と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積及びチャンネル20とチャンネル38と放射性セシウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積の和からチャンネル20とチャンネル38とバックグラウンドのカウントを示す折れ線で囲まれた領域の面積を減じた面積である。
【0044】
バックグラウンド放射線測定時のセシウム領域計数率(nb)とは、
図4中のセシウム領域におけるバックグラウンドのカウントを各チャンネルにわたり総和したものである。即ち、
図3のセシウム領域におけるバックグラウンドのカウントを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル20とチャンネル38とバックグラウンドのカウントを示す折れ線で囲まれた領域の面積である。
【0045】
試料を測定した時のカリウム領域計数率(nsk)とは、
図4中にカリウム領域における、試料のカウント各チャンネルにわたり総和したものである。即ち、
図3に示すように、カリウム領域における試料に含まれる放射性カリウムからバックグランドを減じたもの、放射性セシウムからバックグランドを減じたもの、バックグラウンドのカウントを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル65とチャンネル106と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積及びチャンネル65とチャンネル106と放射性セシウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積の和からチャンネル65とチャンネル106とバックグラウンドのカウントを示す折れ線で囲まれた領域の面積を減じた面積である。但し、但し、チャンネル65とチャンネル106と放射性セシウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積は小さく、0とみなすことができる。
【0046】
バックグラウンド放射線測定時のカリウム領域計数率(nbk)とは、
図4中のカリウム領域におけるバックグラウンドのカウントを各チャンネルにわたり総和したものである。即ち、
図3のカリウム領域におけるバックグラウンドのカウントを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル65とチャンネル106とバックグラウンドのカウントを示す折れ線で囲まれた領域の面積である。
従って、値(nsk−nbk)は、
図3のカリウム領域における放射性カリウムのカウントからバックグランドを減じたものを各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル65とチャンネル106と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積からチャンネル65とチャンネル106とバックグラウンドのカウントを示す折れ線で囲まれた面積を減じた面積となる。
【0047】
そのため、試料測定時のセシウム領域正味計数率(nt=ns−(nsk−nbk)・α−nb)は、
図3のセシウム領域における放射性セシウムのカウントのみ(正味)を各チャンネルにわたり総和したものであり、具体的には、チャンネル20とチャンネル38と放射性セシウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積からチャンネル20とチャンネル38とバックグランドのカウントを示す折れ線で囲まれた面積を減じた面積となる。
即ち、値(nsk−nbk)に補正係数αを乗じることにより、
図3のセシウム領域における放射性カリウムのカウントのみを各チャンネルにわたり総和したもの、具体的には、チャンネル20とチャンネル38と放射性カリウムのカウントを示す折れ線で囲まれた面積からチャンネル20とチャンネル38とバックグランドのカウントを示す折れ線で囲まれた面積を減じた面積を求めたことになる。
【0048】
そのため、試料を測定した時のセシウム領域計数率(ns)から、(nsk−nbk)・αを減じ、更に、バックグラウンド放射線測定時のセシウム領域計数率(nb)を減じれば、バックグラウンドや放射性カリウムを含まないセシウム領域正味計数率(nt=ns−(nsk−nbk)・α−nb)を求めることができる。
試料の単位質量あたりの放射性セシウムの放射能量(D=nt・K/W)は、試料測定時のセシウム領域正味計数率(nt)と換算係数(K)の積(nt・K)を試料の質量(W')と同じ標準体の質量(W)で除することにより求められる。
【0049】
シーケンサ(PLC)50は、パソコン40により求められた試料の放射性セシウムの放射線量に基づいて各種の動作を行わせるものであり、例えば、プラスチックシンチレーション検出器10に対して試料を運搬するコンベア(図示省略)のコンベア駆動用モータや、プラスチックシンチレーション検出器10を配した検査空間と外部との間の扉(図示省略)を開閉する扉開閉用モータを動作させるものであり、駆動部制御用検出器に基づいて動作を行わせる。
【0050】
シーケンサ(PLC)50には、その他、パソコン40により求められた試料の放射性セシウムの放射線量が所定の閾値を超えるか否かを判定する判定部を設けても良い。ここで用いる所定の閾値としては、食品中の放射性セシウムスクリーニング法で定められた基準値である100 Bq/kgに対する装置固有のスクリーニングレベルを使用するか、或いはこれに、一定比率を乗じた値(安全側であることが必要)を用いることができる。
シーケンサ(PLC)50には、更に、上記判定部の結果により合否を表示するためのアラーム表示灯を接続しても良い。
操作部60は、パソコン40又はシーケンサ50を作業員が操作するための装置である。
【0051】
このような構成を有する本実施例の放射能検査装置により、放射能検査方法を実施する手順について、
図2に示すフローチャートを参照して説明する。
先ず、バックグラウンド(BG)、放射性セシウム(Cs134,Cs137)、放射性カリウム(K40)をそれぞれ単独で測定する(ステップS1)。その結果を
図3に示す。
図3に示すように、横軸はエネルギー毎に区分されたチャンネルであり、バックグラウンド(BG)、放射性セシウム(Cs134,Cs137)、放射性カリウム(K40)は、各チャンネル毎に異なる値を示している。
【0052】
引き続き、領域設定部41により、上述した通り、セシウム(Cs)領域とカリウム(K)領域を設定する(ステップS2)。具体的には、
図3に示すバックグラウンド(BG)、放射性セシウム(Cs134,Cs137)、放射性カリウム(K40)をそれぞれ単独で測定した結果に基づき、セシウム領域(Cs領域)としては、チャンネル20からチャンネル38を設定し、カリウム領域(K領域)としては、チャンネル65からチャンネル105を設定する。
【0053】
そして、補正係数演算部42により、上述した通り、数1で示す数式に基づき、バックグラウンド(BG)と放射性カリウム(K40)測定結果から補正係数αを決定する(ステップS3)。
【0054】
【数1】
【0055】
但し、
nk :校正体(K-40)測定時のCs領域計数率(cps)
nkk:校正体(K-40)測定時のK領域計数率(cps)
nb :BG測定時のCs領域計数率(cps)
nbk:BG測定時のK領域計数率(cps)
更に、標準体を測定し、換算係数演算部43により、上述した通り、数2で示す数式に基づいて値(nth)を求め、更に、数3に示す数式に基づいて換算係数Kを決定する(ステップS4)。
【0056】
【数2】
【0057】
【数3】
【0058】
但し、
nth:標準体測定時のCs領域正味計数率(cps)
nhk:標準体測定時のK領域計数率(cps)
nh :標準体測定時のCs領域計数率(cps)
K :換算係数(Bq/cps)
C :標準体の単位質量あたりの放射性セシウムの放射能量(Bq/kg)
W :標準体の質量(kg)、試料の質量と同じ
【0059】
その後、運用を開始する(ステップS5)。運用中は日々エネルギー校正を実施する。
運用中においては、試料を測定し、数4で示す数式に基づいて補正係数αを使用することにより値(nt)を求め、更に、数5に示す数式に基づいて換算係数Kを使用することにより、試料の単位質量あたりの放射性セシウムの放射能量Dを算出する(ステップS6)。
【0060】
【数4】
【0061】
【数5】
【0062】
但し、
nt :試料測定時のCs領域正味計数率(cps)
nsk:試料測定時のK領域計数率(cps)
ns :試料測定時のCs領域計数率(cps)
D :試料の単位質量あたりの放射性セシウムの放射能量(Bq/kg)
【0063】
更に、試料の単位質量あたりの放射性セシウムの放射能量Dの値をスクリーニングレベルと比較することにより食品中の放射性セシウムスクリーニング法に準拠した判定を行う(ステップS7)。
なお、試料としては、米等の食料品を想定しているため、食品中の放射性セシウムスクリーニング法に準拠しているが、必ずしもこの法律に準拠せず、他の基準に準拠して判定することも可能である。
【0064】
このように説明したように、本実施例では、エネルギー分解能の悪いプラスチックシンチレーション検出器を使用してマルチチャンネルでのスペクトル分析をエネルギー分解能を高く行うことができる。即ち、プラスチックシンチレータの分解能を高くすることはできない。プラスチックシンチレータは分解能が悪いので、従来ではスペクトル分析による核種の同定ができないため放射線測定には用いられず、大型の物を制作しやすい利点を利用し、ゲートモニタ等のγ線があるかないかだけを判定する目的に使用されるケースがほとんどであったが、本発明のように対象核種が限定されている場合、分解能が悪くともスペクトル分析を行い、その領域をある程度の幅で決めることにより特定の核種の放射能量を測定できるようにしたものです。また、分解能が悪いのでNaIのようなピークが現れないため多少チャンネルのリフトがあっても測定精度が悪くなりにくい利点もある。しかもプラスチックシンチレータはほかの検出器に比べて温度依存があまりなく、結果的に高い精度での測定が可能となる。要するに、通常プラスチックシンチレーション検出のスペクトルは分解能が悪く、特定の核種を同定することは困難であったが、本発明では、それを可能にするものである。また、スペクトル分析することにより核種に対応した領域を比較的厳密に決めることが出来る。
【0065】
更には、スペクトル分析することによりソフトによるエネルギー校正を実施できるため温度等によるチャンネルのドリフトを考慮せずに領域を決められる。
従って、本発明は、検出効率が高く、精度のよい安価な放射能検査装置及び放射能検査方法を提供すること、言い換えると、検出効率が高く、精度のよい検査装置が安価で製作できる。