特許第6161062号(P6161062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161062
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】マスク及びその製法
(51)【国際特許分類】
   A62B 18/02 20060101AFI20170703BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   A62B18/02 C
   A41D13/11 B
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-89475(P2013-89475)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-212798(P2014-212798A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】510259585
【氏名又は名称】樫村 有紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 有紀子
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−172836(JP,A)
【文献】 特開2010−082278(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3089858(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 18/02
A41D 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻孔を覆う基材と、当該基材の左右側方に耳掛け部を備えたマスクであって、前記基材はフロント面基材とフェース接触面基材の二層構造であって、フロント面基材複数のプリーツを、フェース接触面基材一つ又は複数のプリーツを夫々備え、かつ両面基材の上端を開放構造とするとともにフロント面基材とフェース接触面基材とが下端にて一体に連続していることによりポケットが設けられ、
前記フェース接触面基材の前記一つ又は複数のプリーツの各々が前記フロント面基材の前記複数のプリーツの各々と分離した状態であることにより、前記ポケット内の空洞は前記上端から前記下端まで延在され、
前記フロント面基材の前記複数のプリーツ及び前記フェース接触面基材の前記一つ又は複数のプリーツは、プリーツ基端側が前記空洞と連通されると共に、プリーツ折り返し端となる先端部が前記空洞に対して基布より外側でありかつ前記プリーツ基端側より下側に位置することを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記先端部は、前記プリーツの長手方向に沿って縫製されている、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
プリーツの形成は縫製又は熱圧着による癖付けである請求項1記載のマスク。
【請求項4】
ポケット内に機能性シートを差し込んでなる請求項1記載のマスク。
【請求項5】
機能性シートは通気性のあるシートであり、有害物の体内への侵入を阻止する機能を有する請求項4記載のマスク。
【請求項6】
フロント面とフェース接触面を一体に構成する基材を裁断する工程、フロント面に複数のプリーツを、フェース接触面に一つ又は複数のプリーツを夫々癖付けする工程、前記基材を折り返すと共にフロント面とフェース接触面の上端を引き揃えて、前記上端から下端まで延在される空洞を有するポケットを形成する工程、前記下端を癖付けする工程、前記基材の左右側方に耳掛け部を装着する工程、前記上端よりポケット内に機能性シートを差し込む工程、とを含み、
前記プリーツを癖付けする工程において、前記フロント面の前記複数のプリーツ及び前記フェース接触面の前記一つ又は複数のプリーツは、前記機能性シートを収納可能な領域に癖付けされ、前記フロント面の前記複数のプリーツは、前記フェース接触面の前記一つ又は複数のプリーツと別個に癖付けされ、前記フロント面の前記複数のプリーツ及び前記フェース接触面の前記一つ又は複数のプリーツは、完成品においてプリーツ基端側が前記空洞と連通されると共に、プリーツ折り返し端となる先端部が前記空洞に対して基布より外側でありかつ前記プリーツ基端側より下側に位置するように癖付けされることを特徴とするマスクの製法。
【請求項7】
各癖付け工程は、縫製又は熱圧着による工程である請求項6記載のマスクの製法。
【請求項8】
耳掛け部の装着工程は、縫製によるものである請求項6記載のマスクの製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鼻孔のカバーが可能であり、かつ各種の機能シートを内蔵するに足るポケット部を備えたマスクに関するものである。
更に言えば、機能シートを内蔵しても鼻孔や顎へのフィット性に優れたマスクを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
大気中に浮遊する細菌、花粉、カビ、粉塵、ウイルス等(以下、有害物という)の体内への侵入を阻止するため、各種のマスクが提案されている。これら有害物はその性状や大きさなどが大きく異なるため、その目的に適したマスクが選択使用されている。
【0003】
即ち、これら有害物の体内への侵入を阻止するため、鼻孔を覆うマスクに夫々の目的に応じた機能性シートを添えて用いるマスクも多く提案されている。
ごく一般のマスクは、通気性を疎外しない程度の微孔性を有する織布、編布、不織布、樹脂シート等の基材にて構成され、左右に耳掛け部を備えるとともに、横方向にプリーツが設けられるものがある(特許文献1)。
このプリーツによってマスクが上下に大きく開くことができるようになり、鼻孔、口、顎等を覆うことを可能としたが、有害物を積極的に取り除こうとする考えはない。
【0004】
他方、有害物を体内への侵入を防ぐため、機能性シートをマスクと併用使用と摺るものもある。例えば、マスク基材を袋体とし、機能性シートをこの袋に収納する提案がある(特許文献2)。
しかるに前記したようなプリーツを備えることができないので上下に伸びることはなく、鼻孔はともかく顎まで覆うことはできない。そのため、マスクの周囲に隙間ができてしまい、有害物の阻止機能は不十分である。
【0005】
このため、特許文献1に示されたプリーツを備えたマスク基材に機能性シートを収納するポケットを一体化したマスクが提案されている(特許文献3、4)。
しかるに、特許文献3のマスクにあっては、プリーツ付きマスクに対してその裏面に機能性シートを収納するためのポケットを逢着したものである。しかしながら、プリーツが備えられてはいてもポケットが邪魔をするためこれが上下に伸びることがほとんどなく、鼻孔や顎を効果的に覆うことはできない。
【0006】
特許文献4におけるマスクは、プリーツを備えたマスク基材に対して別途作成したポケットをその上部でのみ縫合したものである。このため、マスクとポケットは基本的に別体となっており、従って、プリーツを上下に伸ばすことが可能であり、マスク基材にて鼻孔、口、顎等を覆うことは可能である。
しかるに、このマスクはマスク基材とポケットを別体に作成し、これを縫合するため、材料が多く必要であり、材料費や製造コストがかかりマスクを安価に提供することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−105872号公報
【特許文献2】特開2005−177320号公報
【特許文献3】実用新案登録第3150339号公報
【特許文献4】特開2012−135598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来の技術では解決できなかったマスクを提供するものであり、詳しくは、目的とする機能性に優れ、かつ鼻孔や顎へのフィット性に優れたマスクを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の第1は、マスク自体の構造に関するものであり、鼻孔を覆う基材と、当該基材の左右側方に耳掛け部を備えたマスクであって、前記基材はフロント面基材とフェース接触面基材の二層構造であって、フロント面基材複数のプリーツを、フェース接触面基材一つ又は複数のプリーツを夫々備え、かつ両面基材の上端を開放構造とするとともにフロント面基材とフェース接触面基材とが下端にて一体に連続していることによりポケットが設けられ、前記フェース接触面基材の前記一つ又は複数のプリーツの各々が前記フロント面基材の前記複数のプリーツの各々と分離した状態であることにより、前記ポケット内の空洞は前記上端から前記下端まで延在され、前記フロント面基材の前記複数のプリーツ及び前記フェース接触面基材の前記一つ又は複数のプリーツは、プリーツ基端側が前記空洞と連通されると共に、プリーツ折り返し端となる先端部が前記空洞に対して基布より外側でありかつ前記プリーツ基端側より下側に位置するマスクである。
【0010】
本発明の第2は、上記のマスクの製法に関するものであり、フロント面とフェース接触面を一体に構成する基材を裁断する工程、フロント面に複数のプリーツを、フェース接触面に一つ又は複数のプリーツを夫々癖付けする工程、前記基材を折り返すと共にフロント面とフェース接触面の上端を引き揃えて、前記上端から下端まで延在される空洞を有するポケットを形成する工程、前記下端を癖付けする工程、前記基材の左右側方に耳掛け部を装着する工程、上端よりポケット内に機能性シートを差し込む工程、とを含み、前記プリーツを癖付けする工程において、前記フロント面の前記複数のプリーツ及び前記フェース接触面の前記一つ又は複数のプリーツは、前記機能性シートを収納可能な領域に癖付けされ、前記フロント面の前記複数のプリーツは、前記フェース接触面の前記一つ又は複数のプリーツと別個に癖付けされ、前記フロント面の前記複数のプリーツ及び前記フェース接触面の前記一つ又は複数のプリーツは、完成品においてプリーツ基端側が前記空洞と連通されると共に、プリーツ折り返し端となる先端部が前記空洞に対して基布より外側でありかつ前記プリーツ基端側より下側に位置するように癖付けされるマスクの製法である。そして、好ましくは、各癖付け工程は、縫製又は熱圧着による工程を採るマスクの製法である。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明のマスクの好適な形態に絞ってその効果を記せば、第1にポケット内に必要な機能性シートを差し込むことにより有害物の体内への侵入を効果的に阻止することが可能となったものであり、更に、フロント面に複数のプリーツを、そしてフェース接触面に一つ又は複数のプリーツを配置することによって、マスクが顔に完全にフィットすることが可能となったもので、マスクとしての優れた効果をもたらすものとなった。特に言えば、フェースに接触する基材にプリーツを備えたことにより、フロント面の引き伸ばしにつれてこの面も充分に上下に伸ばすことができることとなり、鼻孔や口のみならず顎までも完全に覆うことができるため、有害物の体内への侵入が抑えられることとなったものである。
【0012】
第2の発明はマスクの製法にあるが、フロント面とフェース接触面とを同一基材にて構成し、夫々の面をなす部位に予めプリーツラインを癖付けしておき、しかも基材の半ばで折り返すことによってポケットを構成するもので、製造過程の簡略化とマスクの上下への伸びを確実に実現できたものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は第1発明の第1実施例におけるマスクの全体図である。
図2図2図1のA−A線での断面図である。
図3図3は第2実施例における図2と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、第1発明及び第2発明を合わせて説明するが、用いられる基材は、通気性のある柔軟な素材であれば特に制限はなく、織布、織布、編織布、不織布等が用いられ、場合によっては多数の微孔を有する有機材料であっても良い。フロント面とフェース接触面の基材は一体のものが好ましいが、装飾的に或いはフェースとの柔らかな接触を考慮して別材質の基材を採用しても良い。
【0015】
基材に形成されるプリーツは一般には縫製手段が採用されるが、熱圧着、熱ロール等によって癖付けされる手段も採用される。
【0016】
フロント面とフェース接触面の基材の上端は引き揃えられるが、フェース接触面側をやや後退させて引き揃えられることが好ましい。これは外見上の見栄えのよさもあるが、機能性シートの差込が容易となるからである。
【0017】
耳掛け部は伸縮性のあるものであれば特に制限はない。
【0018】
さて、基材はフロント面とフェース接触面を構成し、その間にポケットを形成するが、このポケット内に上端より機能性シートが差し込まれてマスクが完成する。かかる機能性シートは使用目的によって種々のシートに交換される。
この機能性シートの材料は特に限定されるものではなく、大気中に浮遊する細菌、花粉、カビ、粉塵、ウイルス等の有害物の体内への侵入を阻止するためのシートであり、柔軟性で通気性のある材料、例えば織布、織布、編織布、不織布等が用いられ、場合によっては多数の微孔を有する有機材料であっても良い。具体的には、ガーゼや連通気泡性のスライスされたウレタンフォーム材である。勿論、その目的によりシートに防塵性、吸着性、湿潤性、抗菌性等の各種の必要な機能を付与しておくのが望ましい。
【0019】
尚、本発明でいう機能性シートには、例えば活性炭を担持させて吸着性能をアップさせたり、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、カテキン等を担持させて抗菌性をアップさせることができる。又、香料を浸み込ませることもよく、例えば車等の臭い消し機能を持たせることも本発明の範疇に属するものである。更には、夏の日差しなどに対してUVカット機能を持たせたものも採用できる。
【0020】
尚、フロント面基材の上端等にノーズワイヤを備えることが出来ることは言うまでもない。
【0021】
第2発明にあって、プリーツを夫々癖付けする工程と一緒に、ポケット状にする前にフロント面とフェース接触面の下端の癖付けする工程を行っても良い。
【実施例1】
【0022】
図1は第1発明の第1実施例におけるマスクの全体図であり、図2はA−A線での拡大断面斜視図である。図中、符号1はマスク基材(ガーゼ)であり、基材1の左右側方に耳掛け部(ゴムバンド)2、2を備えたもので、基材1はフロント面基材3とフェース接触面基材4の二層構造である。かかるフロント面基材3には複数のプリーツ(この例では三つのプリーツ)A1、A2、A3を、フェース接触面基材4には一つのプリーツB1を夫々形成したものである。「基布」はフロント面基材3及びフェース接触面基材4のプリーツ以外の部分をいう。
【0023】
そして、両面基材3、4の上端5、6を開放構造とするとともに下端7を連続閉鎖してポケット8を形成したもので、通常、このポケット8内に使用目的に応じた機能性シー10を差し込んでなるマスクである。この例では、基材1にあって、フロント面基材3とフェース接触面基材4とは、ポケット8の下端7にて一体に連続しているが、場合によっては、別体をもって構成され、下端7にて縫合されるものであっても良い。
【0024】
この実施例にあって、フロント面基材3に形成されるプリーツA1、A2、A3及びフェース接触面基材4に形成されたプリーツB1はいずれもアイロン等によって熱をかけ、圧着によって癖付けした例である。
【0025】
ここで使用された機能性シート10は吸着性をアップさせたもので、材質はガーゼ等でも良いが、ここでは連通気泡性のスライスされたウレタンフォーム材(発泡倍率20〜30)が用いられ、80〜120g/cmの活性炭が担持されている。
【0026】
尚、基材3、4の上端5、6にあって、好ましくはフェース接触面基材4の上端6は、フロント面基材側3の上端5よりもやや低くして取り揃えられるのが良い。これは機能性シート10が差し込まれる際に、指先で、ポケット8を確認し、機能性シート10を差し込むことができるからである。
【0027】
この種マスクのフェースへの装着の際には、鼻孔、口、顎を覆って有害物を完全にシャットアウトすることが望まれるところ、機能性シート10を採用するためにポケット8を形成した従来のマスクにあっては、フェース接触面基材4に伸び代がなく、顎まで覆うことはできなかった。
しかるに、上記のマスクにあっては、フロント面基材3に複数のプリーツA1、A2、A3が形成されているために上下に伸びることは勿論、フェース接触面基材4にもプリーツB1を形成したことによりこの基材4も伸びが充分であり、このため、基材1が顎まで充分に覆うことができるようになったものである。
【実施例2】
【0028】
図3は第2実施例における図2と同様の断面図である。即ち、この例にあっては各プリーツの外側に出る部位を縫合9してなり、内側にある部位は熱圧着によってのみ癖付けした例である。プリーツラインが明確に現されるとともに収納時(折り畳み時)にこれに沿ってよりきれいに折り畳むことができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は以上の通りであり、フロント面及びフェース接触面にプリーツを配置することによって、マスクが顔に完全にフィットすることが可能となり、更に、機能性シートを差し込むことによって有害物の体内への侵入を効果的に阻止することが可能となったものである。このため、本発明のマスクは、家庭用、医療用、産業用等のあらゆる分野に適用可能であり、細菌、花粉、カビ、粉塵、ウイルス、脱臭、抗菌、化学物質過敏等のマスクに広く適用される。
【符号の説明】
【0030】
1 マスク基材
2 耳掛け部
3 フロント面基材
4 フェース接触面基材
5 フロント面基材の上端
6 フェース接触面基材の上端
7 ポケット下端
8 ポケット
9 縫合
10 機能性シート
A1、A2、A3、B1 プリーツ
図1
図2
図3