(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161119
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】仮設足場用手摺
(51)【国際特許分類】
E04G 5/14 20060101AFI20170703BHJP
E04G 7/34 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
E04G5/14 301G
E04G7/34 303A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-143970(P2013-143970)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-4261(P2015-4261A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 実
(72)【発明者】
【氏名】西川 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】梅原 登博
(72)【発明者】
【氏名】原田 浩司
【審査官】
生駒 勇人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−297704(JP,A)
【文献】
特開2012−082652(JP,A)
【文献】
特開2006−169919(JP,A)
【文献】
特開2013−104295(JP,A)
【文献】
米国特許第04782914(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/14−16
E04G 7/32−34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を隔てて立設された隣り合う支柱と、前記隣り合う支柱同士の間に設けられる足場板とを有する仮設足場において、前記支柱間に、前記支柱に設けられる被嵌挿体に対して取付けられることにより敷設される仮設足場用手摺であって、
略水平方向に延びた水平材と、
前記水平材の少なくとも一端近傍の下面から下方向に延びて設けられ、前記水平材の延出方向に沿った面を有する本体と、前記本体の一辺に形成され、前記本体の表面と直交する方向に延出された当接片とからなる延出部材と、
前記延出部材の下部に回動自在に支持されるとともに、前記支柱に取付けられた状態では両端が前記支柱の前記被嵌挿体に保持される略棒状の斜材と、を備え、
前記当接片は、
前記斜材が前記水平材側に回動されるとき、前記斜材が所定の回動角度で当接することにより、前記斜材の回動角度を規制する規制部材としての機能を有し、
前記本体は、
下方向に延びて形成されることにより、前記足場板からの前記水平材の高さを嵩上げする機能を有することを特徴とする、仮設足場用手摺。
【請求項2】
前記当接片は、
前記斜材が前記当接片に当接されたとき、前記水平材及び前記斜材が略棒状になるように、上下方向の長さが設定されている、請求項1に記載の仮設足場用手摺。
【請求項3】
前記斜材の一端には、前記被嵌挿体に形成された係止孔に掛止されるフックが形成されており、
前記斜材の他端には、前記被嵌挿体とは異なる他の被嵌挿体に形成された係止孔に固定される固定部材が設けられている、請求項1または2に記載の仮設足場用手摺。
【請求項4】
前記被嵌挿体は、少なくとも一つの係止孔を有するフランジである、請求項1ないし3のいずれかに記載の仮設足場用手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築現場等で組み立てられる仮設足場において、現場作業者が足場板から転落するのを防止するための仮設足場用手摺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、仮設足場は、例えばビル等の建築工事現場において建築物に沿うようにして設けられ、現場作業者が建築物の補修等の工事を行うために用いられる。仮設足場としては、各部材の連結に例えばくさびが用いられたくさび緊結式足場が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
くさび緊結式足場では、建築物の外面に沿って上下方向に複数の支柱が設けられ、隣り合う支柱同士の間に現場作業者が通行するための足場板や、現場作業者が足場板から転落するのを防止するための仮設足場用手摺等が敷設される。
【0004】
図8は、支柱及びそれに取付けられた仮設足場用手摺の一例を示す図である。同図によると、左右方向に所定の間隔を隔てて複数の支柱31が立設されており、支柱31には、例えば複数のフランジ32が高さ方向に所定の間隔を隔てて設けられている。これら隣り合う支柱1の複数のフランジ32には、これらを利用して仮設足場用手摺33(以下、単に「手摺33」という。)が取付けられる。
【0005】
手摺33は、例えば水平方向に延び、通常、安全帯等が掛着される水平材34と、水平材34の両端に設けられフランジ32に掛止される掛止フック35と、各掛止フック35に一端側が接続され、各掛止フック35にそれぞれ回動自在に支持された2本の斜材36と、斜材36の他端側に設けられフランジ32に斜材36を固定するための固定部材37とによって構成される。
【0006】
手摺33では、フランジ32に形成された係止孔(図略)に2つの掛止フック35がそれぞれ掛止される。また、他のフランジ32の係止孔に2つの固定部材37のクサビ38が打ち込まれて2つの固定部材37がそれぞれ固着される。これにより、手摺33は、隣り合う支柱31間に取付けられる。なお、例えば固定部材37が固定された高さ位置には、ほぼ同じ高さに足場板39が敷設される。
【0007】
上記手摺33は、現場作業者が足場板39から転落するのを防止するために設けられるが、近年、日本人の平均身長は伸び傾向にあり、現場作業者の作業中の安心感を与える観点からも、足場板39から水平材34までの高さH0を適切な高さ位置まで高くしてほしいといった要請がある。
【0008】
図9は、そのような要請に応えた仮設足場用手摺の他の例を示す図である。なお、同図に示す支柱31には、
図8に示すフランジ32に代えて中空状のポケット40が設けられ、手摺33Aはポケット40に取付けられる。
【0009】
同図によると、水平材34Aの両端は、掛止フック35Aの上部から上方に延びかつ湾曲して形成され、中央の水平部分が
図8に示す手摺33に比べ、その高さ位置が高くなるようにされている。そのため、この手摺33Aを用いれば、水平材34Aの水平部分の高さ位置が高くなるので、現場作業者に安心感を与えることができる。
【0010】
ところで、上記の手摺33,33Aでは、運搬時や梱包時において支柱31から取り外された場合、斜材36が掛止フック35,35Aを基点にして回動されることにより折り畳まれる。そして、通常、複数の手摺33,33Aが束ねられて運搬、梱包される。
【0011】
ところが、
図9に示す手摺33Aでは、水平材34Aの両端が湾曲して形成されているため、運搬時や梱包時に折り畳まれたとき、
図10に示すように、水平材34Aのための平面的なスペースが必要となり全体的に嵩張ることになる。そのため、運搬時や梱包時に手摺33Aを束ねるようにしても、広範な梱包スペースを要するといった問題点がある。
【0012】
それに対し、
図8に示す手摺33は、
図11に示すように、折り畳まれた状態では略棒状となる。そのため、運搬時や梱包時には、複数の手摺33を束ねても密な状態となり、その梱包スペースも比較的コンパクトとされる。
【0013】
しかしながら、上記手摺33の運搬時や梱包時では、以下の問題点がある。すなわち、上記手摺33では、斜材36が掛止フック35を基点にして回動されて折り畳まれるが、
図12に示すように、斜材36が水平材34側に回動し過ぎて水平材34と交差してしまうことが多い。
【0014】
そのため、例えば複数の手摺33を束ねて梱包された状態から一つの手摺33を取り出すとき、斜材36のみや水平材34のみを手で把持して引っ張り出すと、
図12に示す状態になり、手摺33同士が絡み合って、一つの手摺33の取り出しがスムーズにできないといったことがある。
【0015】
すなわち、複数の手摺33から一つの手摺33を取り出すとき、水平材34及び2本の斜材36をまとめて把持して取り出せばよいのであるが、手摺33と他の手摺33の部材同士が混在して絡み合っていると、どの部材が一つの手摺33を構成するのかが現場作業者には不明となり、手摺33の取り出しが非常に困難となる。
【0016】
また、複数の手摺33から一つの手摺33を取り出すとき、手摺33と他の手摺33の部材同士が混在して絡み合っていると、斜材36と水平材34との間に手を挟んだり、斜材36の一端が広がり過ぎてその端部が他の障害物と衝突し損傷したりすることが生じる。
【0017】
さらに、斜材36が水平材34側に回動し過ぎて水平材34と交差してしまう状態は、斜材36の回動軸と水平材34との距離が離れているほど、斜材36が水平材34の反対側に回動する角度が大きくなる。そのため、
図9に示した水平材34Aの両端が湾曲状になった手摺33Aでは、その傾向がより顕著となり、手摺33Aの取り出しがより困難になるといった問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2011−111888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、水平材の高さ位置についての要請に応えつつ折り畳み時に斜材が水平材側に必要以上に回動することのない仮設足場用手摺を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によって提供される仮設足場用手摺は、所定の間隔を隔てて立設された隣り合う支柱
と、前記隣り合う支柱同士の間に設けられる足場板とを有する仮設足場において、前記支柱間に、前記支柱に設けられる被嵌挿体に対して取付けられることにより敷設される仮設足場用手摺であって、略水平方向に延びた水平材と、前記水平材の少なくとも一端近傍
の下面から下方向に延びて設けられ
、前記水平材の延出方向に沿った面を有する本体と、前記本体の一辺に形成され、前記本体の表面と直交する方向に延出された当接片とからなる延出部材と、前記延出部材の下部に回動自在に支持されるとともに、前記支柱に取付けられた状態では両端が前記支柱の前記被嵌挿体に保持される略棒状の斜材と、
を備え、前記当接片は、前記斜材が前記水平材側に回動されるとき、
前記斜材が所定の回動角度で当接することにより、前記斜材の回動角度を規制する規制部材と
しての機能を有し、前記本体は、下方向に延びて形成されることにより、前記足場板からの前記水平材の高さを嵩上げする機能を有することを特徴としている。
【0022】
本発明の仮設足場用手摺において、前記当接片は、前記斜材が前記当接片に当接されたとき、前記水平材及び前記斜材が略棒状になるように、上下方向の長さが設定されているとよい。
【0023】
本発明の仮設足場用手摺において、前記斜材の一端には、前記被嵌挿体に形成された係止孔に掛止されるフックが形成されており、前記斜材の他端には、前記被嵌挿体とは異なる他の被嵌挿体に形成された係止孔に固定される固定部材が設けられているとよい。
【0024】
本発明の仮設足場用手摺において、前記被嵌挿体は、少なくとも一つの係止孔を有するフランジであるとよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、仮設足場用手摺は、水平材に対して延出部材が下方向に延びて設けられているので、足場板の表面から水平材までの高さを、従来の構成に比べ高くすることができ、現場作業者の安心感を高めることができる。また、仮設足場用手摺が折り畳まれて斜材が回動されたとき、当接片が斜材の回動角度を規制するため、仮設足場用手摺は、略棒状の状態となる。そのため、例えば複数の仮設足場用手摺を束ねて梱包された状態から一つの仮設足場用手摺を取り出すときであっても、仮設足場用手摺同士が絡み合う可能性を低くすることができ、従来の構成に比べ、よりスムーズに取り出すことができる。
【0026】
また、仮設足場用手摺を取り出すとき、斜材と水平材との間に手を挟んだり、斜材の一端が広がり過ぎてその端部が他の障害物と衝突して損傷したりすることを抑制することができる。さらに、複数の仮設足場用手摺を梱包する際にも、一つの仮設足場用手摺が略棒状となるため、複数の仮設足場用手摺を整然と並べて梱包することができ、また梱包スペースを極力コンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る仮設足場用手摺が支柱に取付けられた状態を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す仮設足場用手摺の掛止部を示す部分側面図である。
【
図3】
図1に示す仮設足場用手摺の掛止部を示す部分平面図である。
【
図4】
図1に示す仮設足場用手摺の固定部材を示す部分側面図である。
【
図5】
図1に示す仮設足場用手摺の固定部材を示す部分平面図である。
【
図6】折り畳まれた状態の仮設足場用手摺を説明するための部分側面図である。
【
図7】折り畳まれた状態の仮設足場用手摺を説明するための全体側面図である。
【
図8】従来の仮設足場用手摺が支柱に取付けられた状態を示す側面図である。
【
図9】従来の他の仮設足場用手摺が支柱に取付けられた状態を示す側面図である。
【
図10】
図9に示す他の仮設足場用手摺が折り畳まれた状態を示す全体側面図である。
【
図11】
図8に示す仮設足場用手摺が折り畳まれた状態を示す全体側面図である。
【
図12】
図8に示す仮設足場用手摺が必要以上に折り畳まれた状態を示す全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る仮設足場用手摺が支柱に取付けられた状態を示す側面図である。
図2は、
図1に示す仮設足場用手摺の掛止部を示す部分側面図である。
図3は、
図1に示す仮設足場用手摺の掛止部を示す部分平面図である。
【0030】
本発明に係る仮設足場用手摺は、例えばクサビ緊結式足場に適用される。クサビ緊結式足場においては、水平方向に所定の間隔を隔てて立設された複数の支柱1を備えている。各支柱1には、上下方向に所定の間隔を隔てて複数の被嵌挿体としてのフランジ2が設けられている。
【0031】
フランジ2は、
図3に示すように、平面視で略花びら状に形成され、中央に支柱1が貫通する円形孔2aが形成され、円形孔2aから四方に延びた係止孔2bがそれぞれ形成されている。係止孔2bは、先端近傍の左右方向にそれぞれ凸部を有し、この係止孔2bには、後述する斜材12の掛止部14やくさび19が嵌装される。
【0032】
隣り合う支柱1間には、
図1に示すように、仮設足場用手摺10(以下、単に「手摺10」という。)が敷設される。また、手摺10の後述する固定部16が取付けられる高さ位置には、現場作業者が歩行するための足場板3が取付けられる。
【0033】
手摺10は、主として現場作業者が足場板3から転落することを防止するためのものである。手摺10は、略水平方向に延びる水平材11と、水平材11の一方端側及び他方端側にそれぞれ接続された2本の斜材12とを備えている。
【0034】
水平材11は、現場作業者が手摺として利用したり安全帯を掛着させたりする部材として用いられる。水平材11は、所定長さを有する略円筒状のパイプ材であり、隣り合う支柱1の間の長さ(例えば約1.8m)よりやや短く形成されている。
【0035】
水平材11の一方端及び他方端のそれぞれの湾曲下面には、延出部材13が例えば溶接によってそれぞれ接合されている。延出部材13は、例えば足場板3からの水平材11の高さを嵩上げするとともに、斜材12を水平材11側に回動させたときに斜材12が必要以上に回動することを防止するためのものである。
【0036】
延出部材13は、
図3に示すように、平面視で略L字状に形成されている。延出部材13は、水平材11の延出方向に平行にかつ上下方向に延びて形成され、側面視(
図2参照)で略長靴状に形成された本体13aと、本体13aの支柱1側とは反対側の一辺から水平材11の本体13aの表面と直交する方向に延びて形成された当接片13bとを有する。
【0037】
当接片13bは、斜材12が折り畳まれて回動されたとき、その回動角度を規制する、すなわち斜材12が必要以上に回動することを規制するためのものである。当接片13bの幅(
図2における奥行方向の長さ)は、平面視(
図3参照)で水平材11の外表面から突出しないような長さとされている。換言すれば、当接片13bの幅は、斜材12を回動させたときに斜材12と当接されるのに十分な長さとされている。
【0038】
延出部材13の本体13aの下部には、斜材12が回動軸13cを中心にして回動自在に支持されている。斜材12は、それを支柱1のフランジ2に掛止させるための掛止部14と、長尺状の長尺部15と、手摺10をフランジ2に固定させるための固定部16とを備えている。長尺部15の一端には、掛止部14が例えば溶接で接合され、長尺部15の他端には、固定部16が例えば溶接で接合されている。
【0039】
掛止部14は、延出部材13の本体13aに枢結された平坦部14aと、平坦部14aの支柱1側の一辺に設けられ、フランジ2の係止孔2bに掛止されるフック14bとを有する。
【0040】
平坦部14aには、
図2に示すように、フック14bが係止孔2bに掛止されたとき、支柱1側の反対側から右斜め下方向(
図2の場合)に延びるようにして長尺部15が接合される。フック14bは、その厚みがフランジ2の係止孔2bの大きさに適合するように平坦部14aより大とされている。
【0041】
斜材12の長尺部15は、現場作業者の足場板3からの転落を防止する目的で、水平材11の下方であって足場板3との間の開口を可能な限り遮るためのものであり、その長さが水平材11より大とされている。長尺部15は、円筒状のパイプ部15aと、パイプ部15aの両端部が平板状に形成された2つの平板部15bとを有する。
【0042】
一方端の平板部15bは、手摺10が折り畳まれた状態で延出部材13の当接片13bに当接される。これにより、斜材12は、水平材11と交差する状態にはならず、手摺10は、折り畳まれたときに略棒状となるようにされる。
【0043】
固定部16は、他方端の平板部15bに設けられている。固定部16は、
図4及び
図5に示すように、平板部15bに接続された平面視略Z字状のZ字状部材17と、Z字状部材17に固定された断面視略コ字状のコ字状部材18と、長尺状のクサビ19とによって構成されている。固定部16は、フランジ2の係止孔2bに係止されつつ固定される。
【0044】
コ字状部材18の平面部分には、クサビ19を挿通するための挿通孔18aが形成されている。この固定部16では、コ字状部材18をフランジ2にかざし、フランジ2の係止孔2b及び挿通孔18aを貫通するようにしてクサビ19を打ち込むことにより、支柱1のフランジ2と固定部16とが固定される。
【0045】
次に、手摺10を支柱1に取付けるときの手順について説明する。なお、本実施形態に係る手摺10は、一つ上の層を組み立てる際、一つ上の層の足場板3を敷設する前に先行的に支柱1に取付けるものであり、このような手摺10は「先行手摺」と呼称される。
【0046】
まず、例えば
図1に示す左側の支柱1のフランジ2の係止孔2bに、水平材11の一方端に設けられた掛止部14のフック14bを嵌挿する。次いで、左側の支柱1と隣り合う右側の支柱1のフランジ2の係止孔2bに、水平材11の他方端に設けられた掛止部14のフック14bを嵌挿する。
【0047】
次に、左側の支柱1のフランジ2の下方に設けられている他のフランジ2に対して、一方の斜材12の他方端に設けられた固定部16のコ字状部材18をかざす。次いで、クサビ19を他のフランジ2の係止孔2bに上方から嵌挿し、ハンマー等で打ち込むことにより、クサビ19を固定部16に固定する。
【0048】
その後、右側の支柱1のフランジ2の下方に設けられている他のフランジ2に対して、他方の斜材12の他方端に設けられた固定部16のコ字状部材18をかざす。次いで、クサビ19を他のフランジ2の係止孔2bに上方から嵌挿し、ハンマー等で打ち込むことにより、クサビ19を固定部16に固定する。
【0049】
上記のように、手摺10は支柱1に容易に取付けることができる。特に、斜材12は掛止部14と長尺部15とが一体的に設けられているため、現場作業者は、下の層からも長尺部15を自在に取り扱って掛止部14をフランジ2の係止孔2bに容易にかつ確実に嵌挿することができる。なお、手摺10を支柱1から取り外すときの手順は、上記した取付けるときの手順の逆の手順となる。
【0050】
次に、本実施形態に係る手摺10の作用について説明する。
【0051】
従来の構成の手摺33では、水平材34に掛止フック35のみ(
図8参照)が直接的に設けられており、掛止フック35の回動軸は、掛止フック35が掛止されるフランジ32の高さ位置とほぼ同じ位置に設定されていた。
【0052】
しかしながら、本実施形態に係る手摺10では、水平材11に対して延出部材13が下方向に延びて設けられており、延出部材13における掛止部14の回動軸13cは、掛止部14が掛止されるフランジ2の高さ位置よりやや上方に位置している。
【0053】
そのため、足場板3の表面から水平材11の上端までの高さH(
図1参照)を、ほぼ延出部材13の上下方向の長さ分、従来の構成(
図8参照)に比べ高くすることができる。例えば、足場板3の表面と一つ上の層に設けられる他の足場板3の表面同士の間隔が約1900mmの場合、足場板3の表面から水平材11の上端までの高さを、約1900mmの半分以上の例えば約1000mm以上にすることができる。したがって、現場作業者の安心感を高めることができる。
【0054】
上記のように、水平材11の下方に延出部材13を設けると、水平材11と斜材12との間が広がることになる。そのため、手摺10が折り畳まれて斜材12が回動されるとき、従来の構成の手摺33のように水平材34と斜材36との隙間が狭い場合に比べ、斜材12が水平材11と交差して斜材12が必要以上に回動することになる。
【0055】
しかしながら、本実施形態では、延出部材13に当接片13bが設けられているため、手摺10が折り畳まれて斜材12が回動されたとしても、
図6に示すように、斜材12の平板部15bが延出部材13の当接片13bに当接される。そのため、斜材12が水平材11と交差することがなく、すなわち斜材12は必要以上に回動することがない。それゆえ、手摺10は、
図7に示すように、略棒状の状態となり、例えば複数の手摺10を束ねて梱包された状態から一つの手摺10を取り出すとき、手摺10同士が絡み合う可能性を低くすることができる。
【0056】
したがって、従来の構成に比べ、よりスムーズに一つの手摺10を取り出すことができる。また、手摺10を取り出すとき、斜材12と水平材11との間に手を挟んだり、斜材12の一端が広がり過ぎてその端部が他の障害物と衝突して損傷したりすることを抑制することができる。
【0057】
また、複数の手摺10を梱包する際にも、一つの手摺10が略棒状となるため、複数の手摺10を整然と並べて梱包することができるので、梱包スペースを極力コンパクトにすることができる。
【0058】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態においては、支柱1にフランジ2が設けられている場合にそのフランジ2に対して取付けられる手摺10について説明したが、支柱1には、フランジ2に代えて、中空状のポケットが備えられてもよく、上記手摺10は、このポケットに取付けられる構成とされてもよい。
【0059】
また、上記実施形態における手摺10を構成する部材の形状、大きさ、数量等は、上記実施形態に限るものではなく、適宜設計変更可能である。例えば、延出部材13は、本体部13aと当接片13bとが一体的に設けられるのではなく、分離されて設けられていてもよい。また、延出部材13の上下方向の長さは、水平材11の高さ位置に応じて逐次変更されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 支柱
2 フランジ
2b 係止孔
3 足場板
10 仮設足場用手摺
11 水平材
12 斜材
13 延出部材
13a 本体
13b 当接片
13c 回動軸
14 掛止部
14a 平坦部
14b フック
15 長尺部
16 固定部
19 クサビ