(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーを利用する発電システムである太陽光発電の普及が急速に進められている。太陽光発電をするための太陽電池モジュールは、
図27に示すように、光が入射する面に配置された光透過性基板502と、光入射面とは反対側に位置する裏面側に配置されたバックシート501と、光透過性基板502及びバックシート501の間に配置された多数の太陽電池セル503とを有している。また、太陽電池セル503は、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム等の封止材504に挟まれて封止されている。
【0003】
従来、太陽電池モジュールにおいては、多数の太陽電池セル503,503・・・が、幅1〜3mmの配線材505で電気的に直列に接続されていた。太陽電池セル503は、太陽の受光面である表面側にマイナス電極(N型半導体電極)、裏面側にプラス電極(P型半導体電極)が設けられている構造を有する。このため、配線材505によって互いに隣接する太陽電池セル503を接続すると、太陽電池セル503の受光面の上に配線材505が重なることになり、光電変換の面積効率が低下する傾向にあった。
【0004】
そこで、これに対応すべく、例えば、特許文献1には、プラス電極及びマイナス電極の両電極が太陽電池セルの裏面に設置され、これら電極を基板上に設けられた回路層により電気的に接続するバックコンタクト方式の太陽電池セルが提案されている。この方式の太陽電池セルは、セル裏面において複数の太陽電池セルを直列に接続することが可能であり、セル表面の受光面積が犠牲にならず光電変換の面積効率の低下を防止できる。なお、複数の太陽電池セルは、これら太陽電池セルの裏面側に配置される金属箔パターン積層体によって電気的に接続される。即ち、金属箔パターン積層体は、基材上に金属箔パターンが形成された積層構造を形成しており、前記金属箔パターンを回路層として用いることで複数の太陽電池セルが互いに電気的に接続される。
【0005】
このような金属箔パターン積層体における金属箔パターンを形成する手法としては、エッチングによる腐食加工が用いられてきた。この手法では、金属箔上に耐エッチング性のあるレジスト材料等をパターニングし、その後でエッチング液等に浸漬することで、レジスト材料の無い部分の金属箔を除去することができる。
一方で、この手法ではレジスト材料をパターニングする必要があり、金属箔の大面積化にともないレジスト材料のパターニングが困難となる課題があった。また、金属箔を腐食させるエッチング液を大量に使用するため、エッチング液の処理に要求される設備の設置及び環境対策等のために多大なコストが必要となる。
【0006】
この問題を解決するための他の金属箔のパターニング手法として、たとえば、特許文献2に記載されたような、金型の刃部による打ち抜き加工手法が開発されている。金型の種類により、耐久性,形状精度,加工面積に差異があるが、近年における金型の高精度化及び大面積化の要求に応じて、数百μm程度の微細なパターン加工も可能となっている。
【0007】
また、上述した
図27に示す従来の太陽電池モジュールだけでなく、2層の封止用フィルムを備えた太陽電池モジュールも従来から知られている。具体的に、このような太陽電池モジュールは、
図28に示すように、光が入射する面に配置された透光性基板620と、光入射面とは反対側に位置する裏面側に配置された太陽電池モジュール用基材(バックシート)610と、透光性基板620と太陽電池モジュール用基材610の間に封止された多数の太陽電池セル630とを有している。また、太陽電池セル630は、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルム等の封止用フィルム640a,640bに挟まれて封止されている。
従来、太陽電池モジュールにおいては、多数の太陽電池セル630が、配線材650で電気的に直列に接続されていた。太陽電池セル630は、太陽光の受光面630aである表面側にマイナス電極631、裏面側にプラス電極632が設けられている構造を有する。このため、配線材650によって互いに隣接する太陽電池セル630を接続すると、太陽電池セル630の受光面630aの上に配線材650が重なり、光電変換の面積効率が低下する欠点があった。
【0008】
また、上述した電極631,632の配置では、太陽電池モジュールは、配線材650が太陽電池セル630の表側から裏側に回り込む構造を有するため、太陽電池モジュールを構成する複数の部材の熱膨張率の差が原因で配線材650が断線するおそれがあった。
そこで、特許文献1,3では、プラス電極及びマイナス電極の両電極がセルの裏面に設置されたバックコンタクト方式の太陽電池セルが提案されている。この方式の太陽電池セルは、セル裏面において複数の太陽電池セルを直列に接続することが可能であり、セル表面の受光面積が犠牲にならず受光効率と光電変換の面積効率の低下を防止できる。また、配線材を表側から裏側に回り込む構造にしなくてもよいため、太陽電池モジュールを構成する複数の部材の熱膨張率の差による配線材の断線も防止できる。
【0009】
このような太陽電池モジュールでは、絶縁性の基材の表面に接着剤層を介して太陽電池セルに接続するための回路パターン(配線パターン)を有する金属箔が被着された積層体を、太陽電池用バックシートに被着(積層)することによって構成された部品が市場に流通することがある。
例えば、
図29に示す太陽電池モジュール用基材として用いられるバックシート610では、バックシート610の表面に、基材601の上に接着剤層602を介して回路パターンが形成された金属箔603を接着することによって構成された積層体を、積層させている。この積層体では、金属箔603における回路パターンを形成する際に、シート状の金属箔603にフォトレジストを塗布し、回路パターンと同じパターンを有するマスクを露光装置に載置して露光を行う。その後、不要なレジストを除去し、金属箔603上に設けられたレジストパターン通じてエッチングすることによって金属箔603に所定の回路パターンが形成される。このようにして得られた金属箔603の回路パターンにおいては、
図29に示すように、金属箔603の端面がエッチングによって垂直に切除されている。
【0010】
また、導電性パターンとして回路パターンを形成する金属箔パターン積層体としては、特許文献4に記載された構造が提案されている。この金属箔パターン積層体は、基材の表面に接着剤層と金属箔とが積層された金属箔シートであり、加熱された打ち抜き刃で金属箔を打ち抜いて不要な部分を除去し、仮止めされた金属箔の回路パターンを、金型等を用いて基材に熱圧着することによって金属箔パターン積層体を形成している。このようにして、金属箔シートを、例えば、ICタグのアンテナの製造に利用されている。この場合も、金属箔の回路パターンは
図29に示すように打ち抜き刃によって端面が垂直に切除されている。
【0011】
また、上述した
図29に示すバックシートだけでなく、例えば、
図30に示すバックシートも知られている。
図30に示す太陽電池モジュール用基材として用いられるバックシート610では、基材601の上に接着剤層602を介して配線パターン603aが形成された金属箔603を接着することによって構成された積層体604を、バックシート610の表面に積層させている。
この積層体604では、金属箔603による配線パターン603aを形成する際に、シート状の金属箔603にフォトレジストを塗布し、配線パターン603aと同じパターンを有するマスクを露光装置に載置して露光を行う。その後、不要なレジストを除去し、金属箔603上に設けられたレジストパターンを通じてエッチングすることによって金属箔603に所定の配線パターン603aが形成される。このようにして得られた金属箔603の配線パターン603aは、
図30に示すように、金属箔603の端面がエッチングによって垂直に切除されている。
【0012】
また、配線パターンを有する金属箔積層体としては、特許文献4に記載された構造が提案されている。この金属箔積層体は、基材の表面に接着剤層を介して金属箔が積層されており、加熱された打ち抜き刃で金属箔を打ち抜いて不要な部分を除去し、仮止めされた金属箔の配線パターンを、金型等を用いて基材に熱圧着することによって金属箔積層体を形成している。このようにして、金属箔積層体は、ICタグのアンテナの製造に利用されている。この場合も、金属箔の配線パターンは
図30に示すように打ち抜き刃によって端面が垂直に切除されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、基材上に接着層を介して積層された金属箔を型抜きする場合、型抜き後に、金属箔における不要な部分である不要領域を接着層上から除去する必要がある。金属箔の不要領域が接着層と一体となって接着層上に形成されている場合、例えば、巻取りによりこの不要な部分を連続的に剥離することが可能となる。
【0015】
また、基材上に接着層を介して積層された金属箔を型抜きする場合、型抜き後に、金属箔における不要な部分である不要領域を接着層上から除去する必要がある。さらに、経年劣化により、金属箔パターンが基材から剥離してしまうことも考えられ、さらなる耐久性の向上が望まれている。
【0016】
しかしながら、この巻取りの際に、金属箔の不要領域のみならず、金属箔パターンとして残存すべき必要領域も剥離してしまうおそれがある。また、経年劣化により、金属箔パターンが基材から剥離してしまうことも考えられ、さらなる耐久性の向上が望まれている。
【0017】
また、金型の刃部による型抜きの際には、刃部の切り込み量を適切に設定しているが、刃部の先端が金属箔の裏面に到達しなければ、前記金属箔を確実に切断することができない。一方、刃部による切り込み量が大き過ぎれば、刃部の先端が基材の表面を傷付けてしまい、製品の信頼性を低下させてしまう。したがって、金属箔を確実に切断しつつ基材を傷付けてしまうことを回避するには、刃部の先端を接着層内で止めるべく切り込み量を厳密に設定する必要がある。ところが、接着層の厚みは、例えば、10μm程度と薄く、切り込み量の調整が困難であった。
【0018】
また、
図28及び
図29に示した金属箔パターン積層体においては、エッチングで金属箔に回路パターンを形成する場合には、フォトレジスト等のレジスト類、エッチング液、残ったレジストの除去液等、多くの薬液又は材料を必要とするために煩雑で製造コストが高い。しかも、エッチング液又はレジスト除去液等の薬液で金属箔等が損傷することがある等の不具合があった。
また、エッチングによる場合だけでなく、打ち抜き刃で金属箔を打ち抜いて回路パターンを製作する場合、金属箔の回路パターンの端面が基材に対して垂直に形成されているために、回路パターンの上に絶縁材層を積層すると絶縁材層が回路パターンの金属箔から剥離するおそれがあり、金属箔パターン積層体が不良品となることがあった。
【0019】
しかも、上述した金属箔パターン積層体から太陽電池モジュール等を製造する場合、回路パターンの表面に封止材を形成し、封止材内に太陽電池セルを実装して太陽電池セルの裏面に設けた電極を回路パターンに接続させる構造を採用している。このため、金属箔の回路パターンの端面が垂直に形成されているために、太陽電池セルを封止している封止材が回路パターンの金属箔から剥離したり、回路パターンの金属箔に対して封止材の位置ずれが起きたりすることがあり、アライメント不良により太陽電池セルの電極と回路パターンの電極とが接触不良を生じることがあった。
【0020】
また、
図28及び
図30に示した配線パターンを有する金属箔積層体においては、エッチングで金属箔に配線パターンを形成する場合、レジスト類、エッチング液、残ったレジストの除去液等、多くの薬液又は材料を必要とするために煩雑で製造コストが高かった。
しかも、エッチング又は打ち抜き等によって配線パターンを製作した場合、金属箔の配線パターンの端面の断面形状は、基材に対して垂直に形成されている形状である。このため、例えば、
図30に示すように、配線パターン603aを構成する金属箔603の上面にはんだ等の導電性ペースト600を載置し、導電性ペースト600を加熱溶融させて太陽電池セルの裏面の電極等と接合させると、高温のはんだが金属箔603の上面から流出し、隣の配線パターン603aに向けて流れ、配線パターン603aの間が短絡するおそれがあった。
【0021】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、金属箔パターンの剥離を防止して耐久性を向上させることができるとともに、製品の信頼性を高く維持することが可能な金属箔パターン積層体,太陽電池モジュール,及び金属箔パターン積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【0022】
また、本発明は、導電性パターンの金属箔に対して絶縁材層の位置がずれたり、金属箔から絶縁層が剥離したりすることなく、金属箔に絶縁層を正確に実装できるようにした金属箔パターン積層体、及び金属箔パターン積層体を備えた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【0023】
また、本発明は、溶融した導電性部材が配線パターンから流動することなく、導電性部材とは異なる部材の電極又は配線に導電性部材を正確に接合できるようにした金属箔積層体、及び金属箔積層体を備えた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述した課題を解決するため、本発明は以下の態様を提案している。
本発明の第1態様の金属箔パターン積層体は、基材と、開口部と金属部とによって構成された金属箔パターンを含む金属箔と、前記開口部と前記金属部との境界において前記金属箔に設けられた突部と、を備える。
本発明の第1態様の金属箔パターン積層体においては、前記基材の表面の上方に配置された接着層を備え、金属箔パターンは、前記接着層を介して前記基材に積層され、前記突部は、前記基材に向かって屈曲し、前記接着層内に形成されている。
突部とは、金属などを加工した時に、被加工物の端部に形成されるめくれが生じている部位であり、例えば、バリ部である。
本発明の第1態様の金属箔パターン積層体においては、前記接着層は、前記基材の前記表面に配置されており、前記金属箔パターンは、前記基材の前記表面に配置された前記接着層を介して前記基材に積層されていることが好ましい。
本発明の第1態様の金属箔パターン積層体においては、前記基材と前記接着層との間に配置された緩衝層を備え、前記接着層は、前記緩衝層上に配置されており、前記金属箔パターンは、前記緩衝層上に配置された前記接着層を介して前記基材に積層されていることが好ましい。
本発明の第1態様の金属箔パターン積層体によれば、バリ部が接着層内に突出するように形成され、埋め込まれることにより、バリ部と接着層とによって生じるアンカー効果が発現される。これによって、金属箔パターンを接着層に対して強固に固定することができる。
また、基材と接着層との間に緩衝層が形成されている場合、金型の刃部により切断によって金属箔パターンを形成する際に、刃部が基材の表面に到達してしまうことを回避できる。
【0025】
本発明の第1態様の金属箔パターン積層体においては、前記突部は、前記金属箔パターンの前記端部に向かうに従って前記基材に向けて延在する傾斜面を有していることが好ましい。
これにより、金属箔パターンの表面に照射される光を傾斜面によって反射させることができる。したがって、例えば、太陽電池セルを裏面側において、金属箔パターン積層体を用いて複数の太陽電池セルを互いに電気的に接続した場合には、太陽電池セルの間を通過して傾斜面に到達した光を反射させ、太陽電池セルに入射させることができる。これにより、光利用効率を向上させることが可能となる。
【0026】
本発明の第1態様の金属箔パターン積層体においては、前記接着層に、前記傾斜面に沿った切り込み部が形成されていることが好ましい。
これにより、金属箔パターン積層体の表面に、金属箔パターン積層体とは異なる材料(他の材料)で構成された被覆層を積層させた場合に、被覆層と接着層とによって生じるアンカー効果が発現される。これによって、被覆層を接着層に対してより強固に固定することができる。
【0027】
本発明の第1態様の金属箔パターン積層体においては、前記切り込み部が、前記接着層及び前記基材に連続的に形成されていることが好ましい。
これにより、金属箔パターン積層体の表面に、金属箔パターン積層体とは異なる材料(他の材料)で構成された被覆層を積層させた場合に、被覆層と接着層とによって生じるアンカー効果に加えて、被覆層と基材とによって生じるアンカー効果が発現される。これによって、被覆層を金属箔パターン積層体に対してより強固に固定することができる。
【0028】
本発明の第1態様の金属箔パターン積層体においては、前記接着層及び前記緩衝層に、前記傾斜面に沿った切り込み部が形成されていることが好ましい。
これにより、金属箔パターン積層体の表面側に金属箔パターン積層体とは異なる材料(他の材料)で構成された被覆層を積層させた場合に、被覆層と接着層及び緩衝層とによって生じるアンカー効果が発現される。これによって、被覆層を接着層に対してより強固に固定することができる。
【0029】
本発明の第1態様の金属箔パターン積層体においては、前記緩衝層は、PETフィルムであることが好ましい。
これにより、安価に緩衝層を形成することができるため、コストの低減を図ることができる。
【0030】
本発明の第2態様の太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルと、前記太陽電池セルを封止し、裏面を有する封止層と、前記封止層の前記裏面側に配置され、前記複数の太陽電池セルを互いに電気的に接続する、上述した第1態様の金属箔パターン積層体とを備える。
本発明の第2態様の太陽電池モジュールによれば、バリ部と接着層とによって生じるアンカー効果により金属箔パターンを接着層に対して強固に固定することができるため、耐久性を向上させることが可能となる。
更に、基材と接着層との間に緩衝層が形成されている場合、金型の刃部による切断によって金属箔パターンを形成する際に、刃部が基材の表面に到達してしまうことを回避できる。したがって、太陽電気モジュール製品の信頼性を高く維持することができる。
【0031】
本発明の第3態様の金属箔パターン積層体の製造方法は、少なくとも接着層を介して基材に金属箔を積層し、前記金属箔に刃部の先端を押し当てて前記金属箔を切断しながら、前記刃部の先端を少なくとも前記接着層まで到達させ、前記金属箔の必要領域と不要領域とを分離し、前記不要領域に形成された前記金属箔を剥離させることによって、前記必要領域に金属箔パターンを形成する。
本発明の第3態様の金属箔パターン積層体の製造方法においては、前記基材に前記金属箔を積層する際に、前記接着層は前記基材の表面に積層され、前記金属箔パターンは、前記基材の前記表面に配置された前記接着層を介して前記基材に積層されることが好ましい。
本発明の第3態様の金属箔パターン積層体の製造方法においては、前記基材に前記金属箔を積層する際に、前記基材の表面に、緩衝層、前記接着層、及び前記金属箔を順次積層することが好ましい。
本発明の第3態様の金属箔パターンの製造方法によれば、刃部の先端が少なくとも接着層まで到達するため、刃部による切断箇所となる金属箔の端部が基材に向かって、即ち、接着層の内部に向かって突出する。即ち、金属箔の端部はバリ部となる。これによって、バリ部と接着層とによって生じるアンカー効果により金属箔パターンを接着層に対して強固に固定することができる。
また、接着層と基材との間に緩衝層が設けられている場合には、刃部の先端が基材の表面に到達してしまうことを回避できる。
【0032】
本発明の第4態様の金属箔パターン積層体は、基材と、前記基材の一方の面に設けられた接着剤層と、前記接着剤層を介して前記基材上に配設された導電性パターンと、逆テーパ形状を有して傾斜している端面とを有する金属箔と、前記金属箔を被覆する絶縁材層と、を備える。
本発明の第4態様の金属箔パターン積層体においては、金属箔の端面が逆テーパ形状を有するように傾斜しており、絶縁材層は端面に密着するように金属箔パターン積層体に充填され、絶縁材層は金属箔を被覆するように積層されている。このため、逆テーパ形状の金属箔端面に絶縁材層が嵌合し、絶縁材層が金属箔から剥離したり横方向の衝撃等で位置ズレしたりすることを確実に防止できる。
【0033】
本発明の第5態様の金属箔パターン積層体は、上述した第1態様の金属箔パターン積層体を構成しており、前記基材の一方の面に設けられた接着剤層と、前記金属箔を被覆する絶縁材層と、を備え、前記金属箔パターンは、前記接着剤層を介して前記基材上に配設された導電性パターンであり、前記金属箔は、逆テーパ形状を有して傾斜している端面を有し、前記突部は、前記端面に設けられ、前記絶縁材層に突出している。
本発明の第5態様の金属箔パターン積層体においては、金属箔の端面が逆テーパ形状を有するように傾斜しており、端面から突部が絶縁材層に突出している。このため、逆テーパ形状の金属箔端面に絶縁材層が密着して嵌合し、突部が絶縁材層に突出してアンカー効果が発揮され、絶縁材層が金属箔から剥離したり横方向の衝撃等で位置ズレしたりすることを確実に防止できる。
【0034】
本発明の第5態様の金属箔パターン積層体においては、前記突部の断面形状は、略三角形であり、前記突部は、前記金属箔の前記端面の延長上に、前記端面から突出していることが好ましい。
突部の断面形状が、略三角形であり、突部が金属箔の端面の延長上に絶縁材層に突き刺すように突出しているため、アンカー効果を発揮できる。
【0035】
本発明の第4態様及び第5態様の金属箔パターン積層体においては、前記基材に対する前記金属箔の前記端面の傾斜角度(α)は55°〜85°の範囲とされていることが好ましい。
金属箔の端面の逆テーパ形状の傾斜角度(α)が55°〜85°の範囲であれば、絶縁材層が金属箔の端面の間に設けられた間隙に密着・充填され、金属箔から絶縁材層が剥離することを防止できる。一方、端面の傾斜角が55°未満であると、金属箔の形成時に金属箔を切断するための切刃部の刃先角が大きくなりすぎてスムーズな切断ができない。また、端面の傾斜角が85°より大きいと、傾斜角が直角に近づくため、絶縁材層が剥離し易くなる不具合がある。
【0036】
本発明の第4態様及び第5態様の金属箔パターン積層体においては、前記突部の頂角(β)は、0°より大きく45°以下であり、前記金属箔の厚みをdとした場合に、前記接着剤層に接着された前記金属箔の面とは反対側の表面からの高さ(h)が0より大きく0.5d以下であることが好ましい。
突部の頂角(β)が0°より大きく45°以下の範囲であるので、絶縁材層に対するアンカー効果を発揮できて、絶縁材層の剥離に対する耐性が高く、横方向の衝撃に起因して絶縁材層の位置と金属箔の位置とが横方向にずれることを防止する優れた効果が得られる。
また、金属箔の表面からの突部の高さ(h)は、金属箔の膜厚をdとした場合、0より大きく0.5d以下の範囲とされている。このため、金属箔に積層される絶縁材層に対して高いアンカー効果を発揮できる。一方、突部の高さ(h)が0以下である場合には、十分なアンカー効果又は横方向のズレを防止する効果が得られない。また、突部の高さ(h)が0.5dより大きい場合、突部を形成することは困難であり、突部の強度が小さくなり、絶縁材層の剥離を防止する効果が十分に得られない。また、アンカー効果も低下する。また、突部は必ずしも端面の延長上に設けられていなくてもよく、この場合、金属箔の表面からの突部の高さに関わらず突部を形成できる。
【0037】
本発明の第6態様の太陽電池モジュールは、回路パターンを有する金属箔を備えた第4態様及び第5態様の金属箔パターン積層体と、前記絶縁材層の内部に封止された太陽電池セルと、前記金属箔が設けられている前記絶縁材層の面とは反対側の面に積層された透光性前面板と、を備える。
本発明の第6態様の太陽電池モジュールにおいては、太陽電池セルを封止する絶縁材層を、逆テーパ形状を有する金属箔の端面に密着させることができる。また、絶縁材層の剥離又は絶縁材層の位置ズレを防止できる。更に、金属箔の端面に突部が突出している場合には、絶縁材層に突部が嵌合し、アンカー効果を発揮できる。このため、絶縁材層が金属箔から剥離したり、絶縁材層の位置と金属箔の位置とがずれたりすることを一層確実に防止でき、太陽電池セルの電極と金属箔の電極との良好なアライメントを確保できる。
【0038】
本発明の第7態様の金属箔積層体は、基材と、前記基材の一方の面に設けられた接着剤層と、前記接着剤層を介して前記基材上に配設された配線パターンを有する金属箔と、前記金属箔における導電性部材を設置すべき領域の周囲に設けられた突部と、を備える。
本発明の第7態様の金属箔積層体においては、配線パターンを有する金属箔に導電性部材を載置すべき領域の周囲に突部が設けられたことにより、接合時に加熱溶融した導電性部材が流動性を有しても、突部によって導電性部材が堰き止められて保持される。このため、導電性部材が流出して互いに隣接する配線パターンの金属箔又は他の配線等と短絡することがなく、金属箔上に設けられた導電性部材と、導電性部材とは異なる部材の電極又は配線とを確実に接合できる。
【0039】
本発明の第7態様の金属箔積層体においては、前記金属箔における前記導電性部材を設置すべき領域に流動性を有する前記導電性部材が載置され、前記導電性部材が前記突部で堰き止められていることが好ましい。
本発明の第7態様の金属箔積層体においては、金属箔の導電性部材を設置すべき領域に導電性部材が載置され、かつ、導電性部材が突部によって堰き止められる。このため、配線パターンを有する金属箔を他の電極又は配線と電気的に接合させる場合、流動性を得た導電性部材が金属箔から漏出して隣接する配線パターン等と接続されて短絡することを防止できる。
【0040】
本発明の第7態様の金属箔積層体においては、前記突部の断面形状は、略三角形であり、前記突部は、前記金属箔の側面から突出していることが好ましい。
これによって、金属箔の導電性部材を載置すべき領域に導電性部材が保持されたとしても、導電性部材を載置すべき領域の周囲において盛り上がっている突部が設けられているので、突部によって導電性部材が溜められ、突部から外側に導電性部材が漏出することを防止できる。
【0041】
本発明の第7態様の金属箔積層体においては、前記突部は、金属箔の切断時に生成されるバリからなることが好ましい。
金属箔積層体を製作するに際し、金属箔シートを切刃部で切り込むと、金属箔は切り込まれた端面が突出してバリが形成され、このバリを突部として利用することができる。
【0042】
本発明の第7態様の金属箔積層体においては、前記導電性部材は、はんだ又は銀ペーストであることが好ましい。
これによって、加熱によって導電性部材は流動性を得るので、導電性部材によって金属箔と他の配線や電極とを容易に接合できる。
【0043】
本発明の第8態様の太陽電池モジュールは、第7態様の金属箔積層体と、前記導電性部材を介して前記金属箔の配線パターンに電気的に接続されている電極が裏面に設けられている太陽電池セルと、前記太陽電池セルを封止する封止材と、前記金属箔が設けられている前記封止材の面とは反対側の面に積層された透光性前面板と、備える。
本発明の第8態様の太陽電池モジュールにおいては、配線パターンを有する金属箔における導電性部材を設置すべき領域の周囲に突部が設けられているので、太陽電池セルと金属箔とを接合する時に、導電性部材が流動性を有しても突部によって堰き止められ、金属箔上に保持される。このため、導電性部材を介して太陽電池セルの電極と金属箔とを確実に接合でき、溶融した導電性部材が突部から漏出することに起因して互いに隣接する配線パターンの他の金属箔等と短絡することを防止できる。
【0044】
本発明の第9態様の金属箔積層基板は、ステージ基材と、前記ステージ基材上に設けられた粘着フィルムと、前記粘着フィルム上に設けられ、パターニングされた金属箔シートとを備える。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、バリ部の接着層に対するアンカー効果によって、金属箔パターンの剥離が防止されるため、耐久性を向上させることが可能となる。
【0046】
本発明によれば、バリ部の接着層に対するアンカー効果によって耐久性を向上させることができる。また、緩衝層の寄与により基材表面が傷付いてしまうことを回避でき、製品の信頼性を高く維持することができる。
【0047】
本発明によれば、基材に接着剤層を介して積層された金属箔を被覆する絶縁材層を備え、分断された金属箔の端面が逆テーパ形状を有するように傾斜しており、その端面に絶縁材層が密着して嵌合されている。このため、絶縁材層が金属箔から剥離したり、位置ズレが生じたりすることを防止でき、一体化された金属箔パターン積層体の形状を確保できる。
【0048】
本発明によれば、金属箔の端面が逆テーパ形状を有するように傾斜していると共に端面から突部が絶縁材層に突出している。このため、逆テーパ形状を有する金属箔の端面に絶縁材層が密着して嵌合し、突部が絶縁材層に突き出てアンカー効果が発揮され、絶縁材層が金属箔から剥離したり、位置ズレが生じたりすることを確実に防止でき、一体化された金属箔パターン積層体の形状を確保できる。
【0049】
本発明によれば、太陽電池セルを封止する絶縁材層が逆テーパ形状を有する金属箔の端面に密着するように被覆される。更に、突部が設けられた場合には、突部が絶縁材層に突き出てアンカー効果が発揮される。このため、絶縁材層が金属箔から剥離したり、位置ズレが生じたりすることを確実に防止できる。そして、太陽電池セルの電極と金属箔の電極との良好なアライメントを確保できる。
【0050】
本発明によれば、配線パターンを有する金属箔における導電性部材を設置すべき領域の周囲に突部が設けられたことにより、金属箔と他の配線パターンとを接合する時に導電性部材が流動性を有しても、突部によって導電性部材が堰き止められて保持される。このため、互いに隣接する他の配線パターン等と短絡することなく、導電性部材とは異なる部材の電極や配線と接合できる。
【0051】
また、本発明によれば、配線パターンを有する金属箔における導電性部材を設置すべき領域の周囲に突部が設けられたことにより、太陽電池セルと金属箔とを接合する時に導電性部材が流動性を有しても、突部によって導電性部材が堰き止められて保持される。このため、互いに隣接する配線等と短絡させることなく、太陽電池セルの電極と確実に接合できる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態の金属箔パターン積層体10を備えた太陽電池モジュール100について
図1〜
図6を参照して詳細に説明する。
図1に、第1実施形態の太陽電池モジュール100の縦断面図を示す。この太陽電池モジュール100は、金属箔パターン積層体10と、金属箔パターン積層体10の裏面側(
図1における金属箔パターン積層体10の下側、金属箔パターン積層体10の裏面に近い位置)に設けられたバックシート50と、金属箔パターン積層体10の表面側(
図1における金属箔パターン積層体10の上側、金属箔パターン積層体10の表面に近い位置)に設けられた複数の太陽電池セル60と、複数の太陽電池セル60を金属箔パターン積層体10上で封止する封止材80と、封止材80の表面側(
図1における封止材80の上側、封止材80の表面に近い位置)に設けられた透光性基板90とを備えている。また、第1実施形態においては、金属箔パターン積層体10と太陽電池セル60とを接続するために導電性接続材70を用いている。
【0054】
金属箔パターン積層体10は、第1実施形態ではバックコンタクト方式の太陽電池セル60の接続に用いられる部材であって、基材20と、接着層30と、金属箔パターン40(金属箔)とから構成されている。
基材20としては、例えば、イミド系樹脂等の絶縁材料がシート状に形成された基材が用いられ、第1実施形態においてイミド系樹脂としてポリイミドを採用している。このポリイミドは、高分子中で最高レベルの耐熱性、機械的特性、化学的安定性を備えている。
【0055】
接着層30としては、例えば、エポキシ系樹脂の接着剤が用いられている。このエポキシ系の接着剤は、ウレタン系樹脂又はポリエステル系の接着剤と比較して、耐熱性において優れた性質を有している。この接着層30は、基材20の表面全域に積層されている。
【0056】
金属箔パターン40は、太陽電池セル60に電気的に接続される層であって、基材20の表面に接着層30を介して積層されている。この金属箔パターン40は、金属箔パターン積層体10上に積層される複数の太陽電池セル60を電気的に直列に接続するためのパターンを有しており、この金属箔パターン40の表面41の一部が太陽電池セル60に電気的に接続される電極として機能する。
金属箔パターン40は、金属箔に設けられた所定のパターンであって、開口部と金属部とによって構成されている。開口部とは、金属箔が部分的に除去された部位である。金属部とは、金属箔を部分的に除去することによって開口部を形成した後に、金属箔パターン40に残っている部位である。
図2において、接着層30が露出している部分が開口部であり、接着層30上に設けられている(残留している)金属箔が金属部である。
この金属箔パターン40の材料としては、例えば、銅,アルミニウム,及びアルミニウムの各種合金等が用いられる。また、この他、金属箔パターン40の材料としては、ニッケル、金、銀、亜鉛、真鍮、及びこれらの積層金属等、プリント配線板等で用いられる材料ならばいかなる材料を用いてもよい。
【0057】
図2に詳しく示すように、金属箔パターン40の側部、即ち、金属箔パターン40における積層方向(
図1及び
図2の上下方向)に直交する方向における金属箔パターン40の端部には、金属箔パターン40の表面41から裏面42に向かって屈曲するバリ部43(突部)が形成されている。バリ部43は、前記開口部と前記金属部との境界において前記金属箔に設けられている。これにより、バリ部43は、金属箔パターン40の側部から裏面42に突出するようにして接着層30内に形成されている。換言すると、バリ部43は、接着層30の端部における表面を覆うように形成されている。
【0058】
このようなバリ部43は、第一傾斜面(傾斜面)44と第二傾斜面(傾斜面)45とを備えている。
第一傾斜面44は、金属箔パターン40の表面41から連続して前記金属箔パターン40の側方部位(バリ部43の先端部)に向かうに従って、裏面側に向けて(基材20に向けて)延在するように後退している。
第二傾斜面45は、金属箔パターン40の裏面42から連続して前記金属箔パターン40の側方部位(バリ部43の先端部)に向かうに従って、基材20に向けて延在するように後退している。この第二傾斜面45は、その全域にわたって接着層30内に形成され、前記接着層30と密着している。
【0059】
基材20に最も近い位置に形成されているバリ部43の端部において、第一傾斜面44及び第二傾斜面45は互いに交差するように接続されている。そして、第1実施形態においては、第一傾斜面44及び第二傾斜面45の交差稜線となるバリ部43の先端部が、接着層30と基材20との境界まで到達している。なお、このバリ部43の先端部は、接着層30と基材20との境界まで到達していなくとも、接着層30の内部に形成されていればよい。
【0060】
また、上述したようにバリ部43が設けられていることに伴って、接着層30内にはバリ部43の第一傾斜面44に沿った切り込み部47が形成されている。この切り込み部47は、金属箔パターン40の表面41側に向かって開口している。切り込み部47は、バリ部43の第一傾斜面44と、この第一傾斜面44に対して積層方向に直交する方向に対向する接着層傾斜面31とによって画成されている。なお、切り込み部47の先端(基材20に最も近い位置)において、バリ部43の第一傾斜面44と接着層傾斜面31とは、互いに交差している。これにより、切り込み部47の形状は、縦断面視において略三角形である。
【0061】
バックシート50は、例えば、空気透過性を調整する役割を有している。このバックシート50としては、耐候性、絶縁性など長期信頼性を有する材料が使用され、例えば、フッ素樹脂フィルム、低オリゴマー・耐熱ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム/ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、シリカ(SiO
2)蒸着フィルム、アルミニウム箔などが使用される。第1実施形態においては、このバックシート50としてポリフッ化ビニルを主剤とする樹脂層が形成されている。
【0062】
複数の太陽電池セル60は、金属箔パターン積層体10の表面側において積層方向に直交する方向に間隔をあけて設けられている。この太陽電池セル60としては、例えば、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、化合物型、色素増感型等が用いられている。これらの中でも、発電効率に優れる点では、単結晶シリコン型が好ましい。この太陽電池セル60の裏面側は、プラス極及びマイナス極の電極が設けられている。
【0063】
導電性接続材70は、金属箔パターン40と太陽電池セル60との電気的接続を補助する部材である。この導電性接続の材料としては、電気抵抗が低い材料が使用される。中でも、金属箔パターン40に対する電気抵抗が低くなることから、銀、銅、錫、鉛、ニッケル、金、ビスマスよりなる群から選ばれる1種以上の金属を含有する材料が好ましい。さらに、この導電性接続材70は、粘度が高く、容易に所望の形状に変形できることから、銀、銅、錫、半田(銅と鉛が主成分である。)よりなる群から選ばれる1種以上の金属を含有することが好ましい。
【0064】
封止材80は、封止用フィルムにより形成される。封止用フィルムとしては、例えば、EVAシート、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂フィルムなどが一般的に使用される。第1実施形態においては、封止材80として、EVAシートが採用されている。通常、封止用フィルムは、太陽電池セル60を挟み込むように2枚以上で使用される。金属箔パターン40の接着層30と反対側の表面には絶縁材層として封止材80が積層されている。
なお、金属箔パターン40と封止材80との間に、絶縁性部材を別途設けてもよい。このような絶縁性部材としては、例えば、ソルダーレジストが挙げられる。
【0065】
透光性基板90としては、例えば、ガラス基板、透明樹脂基板などが挙げられる。透明樹脂基板を構成する透明樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0066】
次に、第1実施形態の太陽電池モジュール100の製造方法について説明する。
まず、金属箔パターン積層体10を製造する。この金属箔パターン積層体10は、
図3に示すように、積層工程S1,切断工程S2,及び剥離工程S3の3つのステップを順次経て製造される。
【0067】
積層工程S1では、
図4に示すように、基材20上に、接着層30及び金属箔110を順次積層することによって積層構造体105を作製する。即ち、基材20の表面全域に接着層30を塗布した状態で前記接着層30の表面に金属箔110を積層することでこれら3つの層からなる積層構造体105を作製する。金属箔110は上記金属箔パターン40と同様の材料から形成されている。
なお、この積層工程S1においては、例えば、ロール状に基材20が巻かれている基材ロールと、同様に、ロール状に金属箔110が巻かれている金属箔ロールとを準備する。このロールから基材20及び金属箔110を順次繰り出しながら、繰り出された基材20の表面に接着層30として用いられる接着剤を塗布し、前記接着層30上に金属箔110を貼り合わせることによって、積層構造体105を作製することが好ましい。
【0068】
切断工程S2においては、
図5に示すように、金属箔110に対向するように複数の刃部120を備えた金型を配置し、金属箔110の表面に複数の刃部120の先端を押し当てる。これにより、金属箔110を切断しながら、刃部120の先端は、少なくとも接着層30の内部まで到達する。第1実施形態では、刃部120の先端は、接着層30と基材20との境界まで到達する。
これにより、金属箔110は、
図5に示すように、金属箔パターン40として残存すべき必要領域110Aと、基材20及び接着層30上から剥離されるべき不要領域110Bとに分離される。第1実施形態では、金属箔110における一対の刃部120の間の領域が不要領域110Bであり、不要領域110Bの外側の部分が必要領域110Aである。
なお、この切断工程S2における刃部120としてはピナクル刃を用いることが好ましい。これによって連続的に金属箔110を切断することができる。
【0069】
また、このような切断工程S2により、必要領域110A及び不要領域110Bに分断された金属箔110の側部、即ち、積層方向に直交する方向における金属箔110の端部は、刃部120の押圧によって基材20に向けて屈曲し、バリ部43となる。特に、第1実施形態では、刃部120の先端が少なくとも接着層30内まで到達することから、バリ部43も接着層30内に突出するように屈曲する。
【0070】
続いて、剥離工程S3が行われる。この剥離工程S3においては、例えば、切断工程S2が施された積層構造体105の表面(金属箔110側)が外周側となるように、積層構造体105をロールに巻き取きつけることによって行われる。これによって、
図6に示すように、金属箔110における不要領域110Bのみを接着層30から剥離させ、金属箔110の必要領域110Aのみを金属箔パターン40として接着層30上に残存させる。
【0071】
なお、このように金属箔110の不要領域110Bのみを剥離させるためには、例えば、金属箔110における不要領域110Bの接着層30に対する接触面積を、必要領域110Aの接着層30に対する接触面積よりも小さく設定するとともに、ロール状に巻き付けを行う際の曲率を適宜調整すればよい。
以上の3ステップによって、
図2に示すように、バリ部43を有する金属箔パターン40を備えた金属箔パターン積層体10を得ることができる。
【0072】
続いて、
図1に示すように、この金属箔パターン積層体10を用いて太陽電池モジュール100を製造する。
まず、金属箔パターン積層体10における金属箔パターン40の表面41に導電性接続材70を形成するとともに、太陽電池セル60の電極に導電性接続材70が対向するように、太陽電池セル60を金属箔パターン積層体10に配置する。そして、これら金属箔パターン積層体10,導電性接続材70,及び太陽電池セル60を外部から加熱加圧する。これにより、金属箔パターン積層体10の金属箔パターン40上に太陽電池セル60が実装される。
【0073】
次いで、太陽電池セル60の周囲を覆うようにして、太陽電池セル60を封止材80により封止する。これにより、金属箔パターン積層体10における金属箔110及び接着層30は封止材80と密着した状態となる。この際、接着層30の切り込み部47内にも封止材80が充填される。
その後、金属箔パターン積層体10における基材20の裏面側(金属箔パターン40が形成されている基材20の面とは反対の面)に、バックシート50を積層する。また、封止材80の表面に透光性基板90を一体に固定する。これにより、
図1に示すように、太陽電池セル60が金属箔パターン40により電気的に直列に接続された太陽電池モジュール100を得ることができる。
【0074】
以上のような太陽電池モジュール100の金属箔パターン積層体10によれば、バリ部43が接着層30内に突出するように形成することにより、バリ部43と接着層30とによって生じるアンカー効果が発現される。即ち、バリ部43における第二傾斜面45がその全域にわたって接着層30と密着するため、バリ部43が設けられていない場合に比べて金属箔パターン40と接着層30との接触面積を増大させることができる。これによって、金属箔パターン40を接着層30に対して強固に固定することができる。したがって、金属箔パターン40の剥離を防止することができるため、金属箔パターン40及び金属箔パターン40を用いた太陽電池モジュール100の耐久性を向上させることが可能となる。
【0075】
また、第1実施形態では、金属箔パターン40におけるバリ部43が、金属箔パターン40の端部側に向かうに従って裏面側に後退する第一傾斜面44を有しているため、第一傾斜面44の表面に照射される光を第一傾斜面44によって反射させることができる。したがって、互いに隣接する太陽電池セル60の間を通過して第一傾斜面44に到達した光を反射させて太陽電池セル60に入射させることができる。これにより、太陽電池モジュール100の光利用効率を向上させることが可能となる。
さらに、太陽電池モジュール100においては、第一傾斜面44と封止材80とによって生じるアンカー効果が発現されるため、金属箔パターン40と封止材80との密着強度をより向上させることができる。
【0076】
また、第1実施形態では、接着層30内に第一傾斜面44に沿った切り込み部47が形成されている。このため、金属箔パターン積層体10の表面に金属箔パターン積層体とは異なる材料(他の材料)で構成された被覆層を積層させた場合、即ち、太陽電池モジュール100を構成する際に封止材80を金属箔パターン積層体10の表面に積層させた場合には、封止材80と接着層30の切り込み部47とによって生じるアンカー効果が発現される。これによって、封止材80を接着層30に対して強固に固定することができ、太陽電池モジュール100の強度をより向上させることが可能となる。
【0077】
そして、太陽電池モジュール100における金属箔パターン積層体10の製造方法によれば、刃部120の先端は、少なくとも接着層30まで到達する。このため、刃部120による切断箇所となる金属箔110の端部は、バリ部43となり、バリ部43は基材20に向かって、即ち、接着層30の内部に向かって突出する。これによって、バリ部43と接着層30とによって生じるアンカー効果により金属箔パターン40を接着層30に対して強固に固定することができる。
【0078】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の金属箔パターン積層体15について
図7を参照して説明する。
図7において、
図2と同様の構成要素については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
この第2実施形態の金属箔パターン積層体15は、切り込み部47の形状について第1実施形態と相違する。
【0079】
第2実施形態の切り込み部47は、接着層30の内部及び基材20の内部に連続的に形成されている。即ち、この切り込み部47は、第一の基材傾斜面21aと、接着層傾斜面31と、第二の基材傾斜面21bとによって画成されている。ここで、第一の基材傾斜面21aは、第一傾斜面44に連続しているとともに、第一傾斜面44に沿って延在するように、基材20の内部に形成されている。
第二の基材傾斜面21bは、第一の基材傾斜面21aに対して積層方向に直交する方向に対向する傾斜面である。第一傾斜面44と第一の基材傾斜面21aとは同一平面上にあり、接着層傾斜面31と第二の基材傾斜面21bとは同一平面上にある。
【0080】
なお、基材20の内部に形成されている切り込み部47の先端において、一対の基材傾斜面21a,21bは、互いに交差している。これにより、切り込み部47の形状は、縦断面視において略三角形状である。
このような切り込み部47は、金属箔パターン積層体15の製造の際の切断工程S2において、刃部120の先端が基材20内部まで到達するように刃部120を積層構造体15に押圧することによって形成される。
【0081】
これにより、金属箔パターン積層体15の表面に金属箔パターン積層体とは異なる材料(他の材料)で構成された被覆層、即ち、封止材80を積層させた場合に、封止材80と接着層30とによって生じるアンカー効果に加えて、封止材80と基材20とによって生じるアンカー効果が発現される。これによって、封止材80を金属箔パターン積層体15に対してより強固に固定することができ、太陽電池モジュール100の強度をより向上させることが可能となる。
【0082】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態においては、金属箔パターン積層体10,15をバックコンタクト方式の複数の太陽電池セル60を互いに接続するために用いたが、太陽電池セルの接続構造に限定されることはなく、他の実装部材又は電子部材等を電気的に接続するために金属箔パターン積層体を用いてもよい。
【0083】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の金属箔パターン積層体210を備えた太陽電池モジュール100について
図8〜
図12を参照して詳細に説明する。
第3実施形態においては、上述した第1実施形態及び第2実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
図8に、第3実施形態の太陽電池モジュール200の縦断面図を示す。この太陽電池モジュール200は、金属箔パターン積層体210と、前記金属箔パターン積層体210の裏面側(
図8における金属箔パターン積層体210の下側、金属箔パターン積層体210の裏面に近い位置)に設けられたバックシート50と、金属箔パターン積層体210の表面側(
図8における金属箔パターン積層体210の上側、金属箔パターン積層体210の表面に近い位置)に設けられた複数の太陽電池セル60と、複数の太陽電池セル60を金属箔パターン積層体210上で封止する封止材80と、封止材80の表面側に設けられた透光性基板90とを備えている。また、第3実施形態においては、金属箔パターン積層体210と太陽電池セル60とを接続するために導電性接続材70を用いている。
【0084】
金属箔パターン積層体210は、第3実施形態ではバックコンタクト方式の太陽電池セル60の接続に用いられる部材であって、基材20と、緩衝層25と、接着層30と、金属箔パターン40とから構成されている。即ち、緩衝層25は、基材20と接着層30との間に配置されている。
【0085】
緩衝層25は、基材20の表面に積層されており、緩衝層25の材料としては、例えば、PETフィルム等の比較的安価なポリマー樹脂又は接着剤を用いることができる。なお、この緩衝層25の厚みは、例えば、接着層30と同程度かそれよりも大きく設定されている。
【0086】
接着層30の材料としては、上述した実施形態と同様の材料が用いられる。また、接着層30の厚みは、例えば、10μm程度に設定されている。
【0087】
金属箔パターン40は、太陽電池セル60に電気的に接続される層であって、基材20の表面に接着層30を介して積層されている。この金属箔パターン40は、金属箔パターン積層体210上に積層される複数の太陽電池セル60を電気的に直列に接続するためのパターンを有しており、金属箔パターン40の表面41の一部が太陽電池セル60に電気的に接続される電極として機能する。
【0088】
図9に詳しく示すように、金属箔パターン40の側部、即ち、金属箔パターン40における積層方向(
図8及び
図9の上下方向)に直交する方向における金属箔パターン40の端部には、金属箔パターン40の表面41から裏面42に向かって屈曲するバリ部43が形成されている。これにより、バリ部43は、金属箔パターン40の側部から裏面42に突出するようにして接着層30内に形成されている。
【0089】
このようなバリ部43は、上述した実施形態と同様に、第一傾斜面(傾斜面)44と第二傾斜面(傾斜面)45とを備えている。ただし、緩衝層25が接着層30と基材20との間に形成されている点で、第3実施形態は上述した実施形態とは異なる。
【0090】
基材20に最も近い位置に形成されているバリ部43の端部において、第一傾斜面44及び第二傾斜面45は互いに交差するように接続されている。そして、第3実施形態においては、第一傾斜面44及び第二傾斜面45の交差稜線となるバリ部43の先端部が、接着層30と緩衝層25との境界まで到達している。
なお、このバリ部43の先端部は、接着層30と緩衝層25との境界まで到達していなくとも、接着層30の内部に形成されていればよい。また、バリ部43の先端部は、接着層30の内部及び緩衝層25の内部の両方に形成されてもよい。
【0091】
また、上述したようにバリ部43が設けられていることに伴って、接着層30及び緩衝層25内にはバリ部43の第一傾斜面44に沿った切り込み部47が形成されている。この切り込み部47は、金属箔パターン40の表面41側に向かって開口している。切り込み部47は、第一の緩衝層傾斜面26と、接着層傾斜面31と、第二の基材傾斜面21bとによって画成されている。ここで、第一の緩衝層傾斜面26は、第一傾斜面44に連続しているとともに、第一傾斜面44に沿って緩衝層25に向かって延在するように、緩衝層25の内部に形成されている。接着層傾斜面31は、第一傾斜面44に対して積層方向に直交する方向に対向している。第二の緩衝層傾斜面26は、第一の緩衝層傾斜面26に対して積層方向に直交する方向に対向している。第一傾斜面44と第一の緩衝層傾斜面26とは同一平面上にあり、接着層傾斜面31と第二の緩衝層傾斜面26と同一平面上にある。
なお、緩衝層25の内部に形成されている切り込み部47の先端において、一対の緩衝層傾斜面26は、互いに交差している。これにより、切り込み部47の形状は、縦断面視において略三角形状である。
【0092】
次に、第3実施形態の太陽電池モジュール200の製造方法について説明する。
まず、金属箔パターン積層体210を製造する。この金属箔パターン積層体210は、上述した第1実施形態の
図3を参照して説明したように、積層工程S1,切断工程S2,及び剥離工程S3の3つのステップを順次経て製造される。
【0093】
積層工程S1では、
図10に示すように、基材20上に、緩衝層25,接着層30,及び金属箔110が順次積層された積層構造体205を作製する。即ち、基材20の表面に緩衝層25を積層させて固定させた後、前記緩衝層25の表面に接着層30を塗布した状態で前記接着層30の表面に金属箔110を積層することでこれら4つの層からなる積層構造体205を作製する。金属箔110は上記金属箔パターン40と同様の材料から形成されている。
なお、この積層工程S1において積層構造体205を作製する際には、例えば、ロール状に基材20が巻かれている基材ロールと、同様に、ロール状に緩衝層25が巻かれている緩衝層ロールとを準備する。このロールから基材20及び緩衝層25を順次繰り出しながら互いに積層させる。その後に、前記緩衝層25の表面に接着層30として用いられる接着剤を塗布し、前記接着層30上に金属箔110を貼り合わせることによって、積層構造体205を作製することが好ましい。また、上述した実施形態において述べたように、ロール状に金属箔110が巻かれている金属箔ロールを準備し、金属箔ロールから金属箔110を繰り出しながら、接着層30上に金属箔110を貼り合わせてもよい。
【0094】
切断工程S2においては、
図11に示すように、金属箔110に対向するように複数の刃部120を備えた金型を配置し、金属箔110の表面に複数の刃部120の先端を押し当てる。これにより、金属箔110を切断しながら、刃部120の先端は、接着層を貫通し、刃部120の先端は、緩衝層25と基材20との境界まで到達する。
【0095】
これにより、金属箔110は、
図11に示すように、金属箔パターン40として残存すべき必要領域110Aと、基材20及び接着層30上から剥離されるべき不要領域110Bとに分離される。第3実施形態では、金属箔110における一対の刃部120の間の領域が不要領域110Bであり、不要領域110Bの外側の部分が必要領域110Aである。
なお、この切断工程S2における刃部120としてはピナクル刃を用いることが好ましい。これによって連続的に金属箔110を切断することができる。
【0096】
また、このような切断工程S2により、必要領域110A及び不要領域110Bに分断された金属箔110の側部、即ち、積層方向に直交する方向における金属箔110の端部は、刃部120の押圧によって基材20に向けて屈曲し、バリ部43となる。特に、第3実施形態では、刃部120の先端が少なくとも接着層30内まで到達することから、バリ部43も接着層30内に突出するように屈曲する。
【0097】
続いて、剥離工程S3が行われる。この剥離工程S3においては、例えば、切断工程S2が施された積層構造体205の表面(金属箔110側)が外周側となるように、積層構造体205をロール状に巻き取きつけることによって行われる。これによって、
図12に示すように、金属箔110における不要領域110Bのみを接着層30から剥離させ、金属箔110の必要領域110Aのみを金属箔パターン40として接着層30上に残存させる。
【0098】
なお、このように金属箔110の不要領域110Bのみを剥離させるためには、例えば、金属箔110における不要領域110Bの接着層30に対する接触面積を、必要領域110Aの接着層30に対する接触面積よりも小さく設定するとともに、ロール状に巻き付けを行う際の曲率を適宜調整すればよい。
以上の3ステップによって、
図9に示すように、バリ部43を有する金属箔パターン40を備えた金属箔パターン積層体210を得ることができる。
【0099】
続いて、
図8に示すように、この金属箔パターン積層体210を用いて太陽電池モジュール200を製造する。
まず、金属箔パターン積層体210における金属箔パターン40の表面41に導電性接続材70を形成するとともに、太陽電池セル60の電極に導電性接続材70が対向するように、太陽電池セル60を金属箔パターン積層体210に配置する。そして、これら金属箔パターン積層体210,導電性接続材70,及び太陽電池セル60を外部から加熱加圧する。これにより、金属箔パターン積層体210の金属箔パターン40上に太陽電池セル60が実装される。
【0100】
次いで、上述した実施形態と同様に、太陽電池セル60を封止材80により封止する。
その後、上述した実施形態と同様に、基材20の裏面側にバックシート50を積層し、封止材80の表面に透光性基板90を一体に固定する。これにより、
図8に示すように、太陽電池セル60が金属箔パターン40により電気的に直列に接続された太陽電池モジュール200を得ることができる。
【0101】
以上のような太陽電池モジュール200の金属箔パターン積層体210によれば、バリ部43が接着層30内に突出するように形成されることにより、バリ部43と接着層30とによって生じるアンカー効果が発現される。即ち、バリ部43における第二傾斜面45がその全域にわたって接着層30と密着するため、バリ部43が設けられていない場合に比べて金属箔パターン40と接着層30との接触面積を増大させることができる。これによって、金属箔パターン40を接着層30に対して強固に固定することができる。したがって、金属箔パターン40の剥離を防止することができるため、金属箔パターン40及び金属箔パターン40を用いた太陽電池モジュール200の耐久性を向上させることが可能となる。
【0102】
また、基材20と接着層30との間に緩衝層25が形成されているため、金型の刃部120の切断により金属箔パターン40を形成する際に、刃部120が基材20の表面に到達してしまうことを回避できる。
具体的に、金型の刃部120の先端の切り込み量を接着層30の膜厚以内に留めることが好ましい。しかしながら、接着層30の厚みが小さい場合にはその調整が困難であり、刃部120の先端が接着層30よりも裏面側に到達してしまうおそれがある。これに対して、第3実施形態では、接着層30と基材20との間に緩衝層25が介在されているため、刃部120の先端が接着層30を貫通して基材20に近づいた場合であっても、緩衝層25によって刃部120の先端が基材20に到達してしまうことを回避できる。これによって、金属箔パターン積層体210及び太陽電池モジュール200によって構成された製品の信頼性を高く維持することができる。
【0103】
また、第3実施形態では、金属箔パターン40におけるバリ部43が、金属箔パターン40の端部側に向かうに従って裏面側に後退する第一傾斜面44を有しているため、第一傾斜面44の表面に照射される光を第一傾斜面44によって反射させることができる。したがって、互いに隣接する太陽電池セル60の間を通過して第一傾斜面44に到達した光を反射させて太陽電池セル60に入射させることができる。これにより、太陽電池モジュール200の光利用効率を向上させることが可能となる。
さらに、太陽電池モジュール200においては、第一傾斜面44と封止材80とによって生じるアンカー効果が発現されるため、金属箔パターン40と封止材80との密着強度をより向上させることができる。
【0104】
また、第3実施形態では、接着層30内に第一傾斜面44に沿った切り込み部47が形成されている。このため、金属箔パターン積層体210の表面に金属箔パターン積層体とは異なる材料(他の材料)で構成された被覆層を積層させた場合、即ち、太陽電池モジュール200を構成する際に封止材80を金属箔パターン積層体210の表面に積層させた場合には、封止材80と接着層30及び緩衝層25の切り込み部47とによって生じるアンカー効果が発現される。これによって、封止材80を接着層30及び緩衝層25に対して強固に固定することができ、太陽電池モジュール200の強度をより向上させることが可能となる。
【0105】
そして、太陽電池モジュール200における金属箔パターン積層体210の製造方法によれば、刃部120の先端は、少なくとも接着層30まで到達する。このため、刃部120による切断箇所となる金属箔110の端部は、バリ部43となり、バリ部43は基材20に向かって、即ち、接着層30の内部に向かってバリ部43として突出する。これによって、バリ部43と接着層30とによって生じるアンカー効果により金属箔パターン40を接着層30に対して強固に固定することができる。
【0106】
以上、本発明の第3実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第3実施形態においては、金属箔パターン積層体210をバックコンタクト方式の複数の太陽電池セル60を互いに接続するために用いたが、太陽電池セルの接続構造に限定されることはなく、他の実装部材又は電子部材等を電気的に接続するために金属箔パターン積層体を用いてもよい。
【0107】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態の太陽電池モジュール等に用いる金属箔パターン積層体について
図13A〜
図18により説明する。
図13A及び
図13Bに示す第4実施形態による金属箔パターン積層体1は、例えば、太陽電池モジュールのバックシートに積載して用いられる。太陽電池用バックシートを構成する部材としては、湿度遮蔽性もしくは酸素遮断性を有する金属箔膜、もしくは金属箔膜と樹脂とによって構成された複合積層フィルムを使用することもできる。
第4実施形態による金属箔パターン積層体1は、例えば、絶縁性の基材2の表面に接着剤層3を介して所定の回路パターンが形成された金属箔4が積層されて一体化されている。そして、金属箔4の接着剤層3と反対側の表面には絶縁材層として封止材5が積層されている。
なお、金属箔4と封止材5との間に、絶縁性部材を別途設けてもよい。このような絶縁性部材としては、例えば、ソルダーレジストが挙げられる。
【0108】
ここで、基材2は、フィルム状またはシート状に形成される。基材2の材料としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ウレタン、エポキシ、メラミン、スチレン、またはこれらの材料が共重合した樹脂を用いることが可能である。断熱性、弾力性、光学特性の制御のため、必要に応じて基材2中に有機または無機フィラー等を混入することも可能である。
また、太陽電池用バックシート上に金属箔パターンを形成する場合、上述した基材2を太陽電池バックシートとして用いることもできる。この場合、基材2を構成する部材としては、湿度遮蔽性もしくは酸素遮断性を有する、金属箔膜、もしくは金属箔膜と上記樹脂とによって構成された複合積層フィルムを使用することもできる。
【0109】
接着剤層3は、例えば、熱硬化性樹脂であるウレタン、アクリル、エポキシ、ポリイミド、オレフィン、またはこれらの材料が共重合した段階硬化型接着剤を加熱して硬化させることで形成されている。また、接着剤層3として、段階硬化型でない接着剤層を用いても良い。
また、封止材5は、通常の封止材、例えば、EVA等で形成されている。封止材5は、封止用フィルムまたはワニスにより形成されるが、ワニスは封止用フィルムよりも安価であり、好ましい。封止材5として、封止用フィルムを用いた場合、例えば、EVAフィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂フィルムなどが使用される。封止用フィルムは、太陽電池セル24を挟み込むように2枚以上を積層して形成してもよい(
図18参照)。
封止材5内にはフィラーは混入されていないが、フィラーが混入されていてもよく、封止材5内に混入されたフィラーとして導電性フィラーが用いられてもよい。
【0110】
次に、金属箔4の構成について
図13A及び
図13Bにより説明する。
また、金属箔4には、配線パターン又は回路パターン等の導電性パターン(金属箔パターン)が形成されている。導電性パターンの形状に応じて切除されて封止材5が充填される間隙7が金属箔4に形成されている。間隙7に対面する金属箔4の側面である端面4aの断面形状は、逆テーパ形状(逆傾斜形状)である。
図13A及び
図13Bにおいて、導電性パターン40は、開口部と金属部とによって構成されている。開口部とは、金属箔4が部分的に除去された部位である。金属部とは、金属箔4を部分的に除去することによって開口部を形成した後に、金属箔パターン40に残っている部位である。
図13Aにおいて、隙間7、即ち、封止材5と接着剤層3とが接触している部位が開口部であり、接着剤層3上に設けられている金属箔4が金属部である。また、端面4aは、開口部と金属部との境界に設けられている。
逆テーパ形状において、基材2(及び接着剤層3)に対する金属箔4の端面4aの傾斜角αは55°〜85°の範囲に設定されている。端面4aの逆テーパの傾斜角αがこの範囲であれば、封止材5が金属箔4の間隙7内に充填されて硬化後に金属箔4から封止材5が剥離することを防止できる。
一方、傾斜角αが55°未満であると、後述するように金属箔4の製造時に金属箔4の端面4aを切断で形成するための金型16の切刃部16aの刃先角が大きくなりすぎてスムーズな切断ができない。傾斜角αが85°より大きいと端面4aの傾斜角が直角に近づくため、封止材5が剥離し易くなる不具合がある。接着剤層3に対する封止材5の接着力は、金属箔4に対する接着力に対して低いため、傾斜角αが85°を超えると特に、封止材5が剥離しやすくなる。
なお、望ましくは、傾斜角αは55°〜75°の範囲に設定することがより好ましい。
【0111】
そして、金属箔4の端面4aと接着剤層3に対向する表面4bとの交差部には、例えば、端面4aの延長面上(端面4aが延長された仮想面上)に突出する突部9が形成されている。
突部9は、開口部と金属部との境界において金属箔4に設けられている。また、突部9は、端面4aに設けられ、絶縁材層である封止材5に突出している。
突部9の厚さは、突部9の根元から先端に向かうに従って徐々に小さくなっており、即ち、突部9は先細りする形状を有する。
この突部9の形状は、
図13A及び
図13Bでは、先端に頂部を有する断面三角形状であるが、突部9の形状はこの形状に限定されない。突部9は、必ずしも端面4aの延長面上に設けられてはおらず、端面4aに対して適宜の角度で形成され得る。
ここで、突部9の頂角βは0°<β≦45°の範囲とされている。頂角βが上記の範囲であれば封止材5に対して強いアンカー効果が得られ、横方向の衝撃に起因して封止材5の位置と金属箔4の位置とが横方向にずれることを防止する優れた効果が得られるため、封止材5が金属箔4から剥離しない。
【0112】
また、突部9の金属箔4の表面4bからの高さh(金属箔4の鉛直方向における高さ)は、金属箔4の膜厚をdとした場合、0°<h≦0.5dの範囲である。例えば、d=35μmである場合には、高さhは、15μm以下であることが好ましい。また、突部9は必ずしも端面4aの延長面上に設けられていなくてもよく、端面4aの傾斜角αと異なる傾斜角を有していてもよい。この場合、金属箔4の表面4bから突部9の先端まで高さhに関わらず突部9を形成できるが、封止材5の横方向における耐衝撃性を得るとともに横方向に位置がずれることを防止するためには高さhは0より大きいことが好ましい。
そして、高さhが0°<h≦0.5dの範囲であれば金属箔4に積層される封止材5に対して高いアンカー効果を発揮できる。一方、突部9の高さhが0以下である場合には、十分なアンカー効果を発揮できない。突部9の高さhが0.5dより大きい突部9を形成するのは、金属箔4の材質又は製造特性の観点で困難である。また、この条件下で突部9を形成できたとしても、突部9の剛性又は強度が小さくなる。このため、封止材5に剥離応力が働くと、アンカー効果が小さく、剥離防止効果を十分に得られないので、好ましくない。
【0113】
金属箔4は、例えば、銅、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、コバルト、或いはこれらの合金等で形成された金属シートを、後述する金型16を用いて切断することにより形成される。また、金属箔4を形成する材料としては、上記以外にも所望の金属を用いることができる。
金型による型抜き性を考慮すると、金属箔4の膜厚は5μm以上、1mm以下であることが好ましい。膜厚が5μm未満であると金属箔4のハンドリングが困難になり、膜厚が1mmを超えると型抜きが困難になる。更に、金型の耐久性を考えると金属箔4の膜厚は200μm以下であることが望ましい。
【0114】
次に、上述した構成を備えた第4実施形態による金属箔パターン積層体1の製造方法について、
図14〜
図17により説明する。
図14において、ステージ基材12上に、粘着フィルム13を介して、回路パターンを形成するためのシート状の金属箔シート4Aを接着する。得られた金属箔シート4Aの積層体14に対して、切断用の金型16の切刃部16aとして、例えば、ピナクル刃を対向させる。金型16は、ベース部16bから断面三角形の切刃部16aが突出して形成された構造を有する。切刃部16aの刃先角aは、例えば、40°〜60°の範囲、図に示す例では刃先角a=50°とした。
【0115】
金型16としては、腐食金型又は切削金型等を使用することができるが、金型16はこれら金型に限られない。金型16の材料としては、ガラス、プリハードン鋼、焼入焼戻鋼、析出硬化鋼、タングステン・カーバイドとコバルトとの合金、その他の超硬度合金等を使用することができるが、金型16の材料はこれら材料に限られない。金属箔シート4Aを高精度に型抜きする場合、切刃部16aの刃先角aが鋭角であることが望ましい。
刃先角aを小さくするほど切断時に金属箔シート4Aに形成されるバリ等が小さくなるが、金型16の耐久性が低下する。一般的には、刃先角aは40°から60°程度とすることが望ましく、金属箔シート4Aと刃先角aとの関係で適度にバリを生じさせるように刃先角aを設定する。
【0116】
ここで、切刃部16aを金属箔シート4Aに切り込むことでバリ9Aを形成できる。金属箔シート4Aの材料としては、上述したように、例えば、銅、アルミニウム、亜鉛、鉄、ニッケル、コバルト、或いはこれらの合金等が用いられている。金属箔シート4Aの材料として銅を用いると、切刃部16aによって裂けるようにバリが発生する。アルミニウムは、比較的柔らかい材質であるため、この材料を用いた場合にはバリが発生し易く変形し易い。アルミニウムは、銅よりも安価ではあるが、バリ9Aが変形し易い。銅は、アルミニウムと比較して、尖鋭な断面略三角形のバリ9Aができ易いため、信頼性が高い。
【0117】
次に、第4実施形態の金属箔パターン積層体1の製造方法について説明する。
まず、
図14に示すように、金属箔シート4Aを備えた積層体14に対向するように切刃部16aを備える金型16を配置する。
次に、切り込み工程として、金属箔シート4Aに切刃部16aの刃先を積層体14の厚み方向に切り込んで金属箔シート4Aを切断し、刃先が粘着フィルム13の中間部近くに達するように切刃部16aを粘着フィルム13に押し込み、その後、切込みを止める(ハーフカット工法)。これによって、金属箔シート4Aを切断する。ハーフカット工法においては、積層体14の厚み方向において、金型16の切刃部16aが積層体14の表面から内部に向かって押し込まれる(切り込まれる)深さが適切な深さになるように、切り込みを停止させる。このためには、金属箔シート4Aを切断して粘着フィルム13内に押し込まれている切刃部16aの刃先が粘着フィルム13の中間部に近い位置に到達し、かつ、ベース部16bが金属箔シート4Aの表面に接触して切込みが停止するように、切刃部16aの長さが適切に設定される。
【0118】
そして、切刃部16aの切り込みによって、金属箔シート4Aと粘着シート13との接触面は刃先の両側に生じる応力によって変形し、刃先の形状に対応するように、例えば、断面三角形のバリ9Aが形成される。しかも、バリ9Aの形成と共に、金属箔シート4Aと粘着シート13との境界面に作用する応力によって、金属箔シート4Aと粘着シート13との間の接合面が一部剥離して、切刃部16aの切り込みによって設けられたバリ9Aの両側に空間C1が形成される。
ここで、金属箔4に間隙7を形成するためには、
図15に示すように、例えば、3本の切刃部16aによって、金属箔シート4Aに形成すべき間隙7の両端と、間隙7の両端の間に位置する中間部に相当する位置とに、3つの切り込み部18を形成する。すると、切刃部16aの切り込みで形成されるバリ9Aとバリ9Aの間に形成された2つの空間C1が互いに連通し、空間C1の幅の略2倍の幅を有する空間Cとなるように空間が成長する。これによって、金属箔シート4Aに形成される3つの切り込み部18と、成長した空間Cとで仕切られた金属箔不要部分4Fが分離可能となる。
【0119】
そして、
図16に示すように、金属箔不要部分4Fが切り込み部18と空間Cによって分離除去されることで、金属箔シート4Aの間に間隙7が形成され、間隙7の両端部に金属箔シート4Aの端面4a´を形成する順テーパの傾斜面がそれぞれ形成される。
こうして切削加工によって間隙7を形成することによって金属箔不要部分4Fが金属箔シート4Aから分離され、金属箔シート4Aが粘着シート13から剥離される。これによって、金属箔積層基板が得られる。
この金属箔積層基板は、ステージ基材12と、ステージ基材12上に設けられた粘着フィルム13と、粘着フィルム13上に設けられ、パターニングされた金属箔シート4Aとを備える。
【0120】
次に、この金属箔テープ4Aを反転させ、予め用意した基材2の表面に接着剤層3を介して金属箔シート4Aを接着させる。これによって、
図17に示すように、基材2,接着剤層3,及び金属箔シート4Aを反転させてなる金属箔4が積層された金属箔パターン積層体1Aが形成される。この金属箔パターン積層体1を構成する最上層に位置する金属箔4においては、間隙7に対面する端面4aが逆テーパ形状の傾斜面を有する。端面4aの延長上にバリ9Aが突出するように突部9が構成する。換言すると、端面4aに沿ってバリ9Aが突出するように突部9が形成されている。
そして、
図17に示す金属箔パターン積層体1Aの金属箔4の全面と、間隙7に露出している接着剤層3の表面とに封止材5を被覆するように、封止材5を金属箔4及び接着剤層3に積層することで、
図13A及び
図13Bに示す金属箔パターン積層体1を製造できる。
【0121】
次に、
図18に、本発明の第4実施形態である
図13A及び
図13Bに示す金属箔パターン積層体1を用いた太陽電池モジュール20について説明する。
第4実施形態の太陽電池モジュール20においては、上述した金属箔パターン積層体1の最下層に位置する基材2にバックシート22が接着されている。このバックシート22は、接着剤層3が設けられている基材2の面とは反対側の面に接着されている。
バックシート22においては、シールド材として用いられるバリア層が設けられている。バックシート22のバリア層としては、湿度遮蔽性又は酸素遮断性を有する、金属箔膜、又は金属箔膜と基材2の樹脂材料とによって構成された複合積層フィルムを使用することができる。
【0122】
そして、金属箔パターン積層体1の接着剤層3上には、回路パターンを形成する金属箔4が間隔7を開けて配列されている。この金属箔4の上には、はんだ又は銀ペースト等からなる導電性接続材23が設置され、これら導電性接続材23の上に太陽電池セル24が設置され、太陽電池セル24の裏面に設けられた電極に導電性接続材23が接続されている。
また、金属箔パターン積層体1の金属箔4及び接着剤層3上には太陽電池セル24を封止して絶縁する封止材5が積層されている。更に、封止材5の表面には、ガラスパネル等の透光性基板125(透光性前面板)が接着されている。
【0123】
この太陽電池モジュール20においても、金属箔4の端面4aが逆テーパの傾斜角αを有している。また、金属箔4の1または2つの逆テーパの端面4aの間に形成された間隙7内に封止材5が充填されて固化されている。このため、硬化後に封止材5が金属箔4又は接着剤層3から剥離したり分離したりすることを防止できる。しかも、金属箔4の端面4aの延長面上にはバリ9Aからなる突部9が封止材5内に突出して形成されているため、アンカー効果によって封止材5が金属箔4から剥離したり分離したりすることを防止できる。
【0124】
上述のように第4実施形態による金属箔パターン積層体1によれば、封止材5が充填される間隙7を形成する金属箔4の端面4aが逆テーパ形状の傾斜面を有する。このため、封止材5と間隙7にて開口している接着剤層3との間の接合力が、封止材5と金属箔4との間の接合力より小さいとしても、封止材5が金属箔4又は接着剤層3から剥離したり分離したりすることを防止できる。
更に、金属箔4の端面4aにおいては、端面4aの延長面上に突出する突部9が設けられ、突部9が封止材5に埋め込まれている。このため、突部9を有する端面4aと封止材5との間にアンカー効果が生じ、より一層、封止材5が金属箔4から剥離したり分離したりすることを防止できる。
また、上述した金属箔パターン積層体1を備えた太陽電池モジュール20においても、同様に、バックシート22を接合した金属箔パターン積層体1において、金属箔4と封止材5の耐剥離強度を高く維持できて封止材5が金属箔4から剥離又は分離することを防止できる。
【0125】
なお、本発明による金属箔パターン積層体1とこれを含む太陽電池モジュール20は上述の第4実施形態に限定されない。本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0126】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態による金属箔パターン積層体130について、
図19により説明する。
図19に示す金属箔パターン積層体130は、上述した第4実施形態による金属箔パターン積層体1と略同一構成を備えており、金属箔4に突部9を設けていない点において、第5実施形態と第4実施形態とは相違する。
【0127】
なお、第5実施形態による金属箔パターン積層体130において、製造時に金型16の切刃部16aによって金属箔シート4Aに切り込んでバリ9Aが形成されたとしても、コイニングによって金属箔シート4Aの表面を平坦化できる。或いは、金型16の切刃部16aを金属箔シート4Aに切り込ませることによって金属箔不要部分4Fを分離し切除した金属箔シートをロールに巻き取ることで、ロール時の金属箔シート4Aに生じる圧力によってバリ9Aが生じている金属箔シート4Aの表面を平坦化できる。或いはバリ9Aを切除してもよい。
【0128】
第5実施形態による金属箔パターン積層体130においても、封止材5が充填される間隙7が形成される金属箔4の端面4aに逆テーパ形状の傾斜面が設けられているので、封止材5が金属箔4又は接着剤層3から剥離したり分離したりすることを防止できる。
【0129】
なお、上述した第4実施形態及び第5実施形態の各々では、金属箔パターン積層体1,130において、間隙7の両側に位置するとともに間隙7を形成する金属箔4の端面4aに逆テーパ形状をする傾斜面を形成した。更に、は基材に対する傾斜面の角度は、傾斜角αに設定した。本発明においては、間隙7の両側に位置する端面4aの形状が必ずしも逆テーパ形状である必要はなく、少なくとも片側の端面4aが、傾斜角αの逆テーパ形状を有していればよい。
また、金属箔4の端面4aに形成される突部9についても、少なくとも一方の端面4aに突部9が形成されていればよい。
【0130】
なお、上述の第4実施形態及び第5実施形態の各々で用いた封止材5は絶縁材層であり、太陽電池モジュール20に封止材5が用いられた場合には、封止材5は、太陽電池モジュール20内において位置決めされた太陽電池セル24を固定したり、絶縁材として用いられたりする。
また、本発明の第4実施形態及び第5実施形態による金属箔パターン積層体1,130は、太陽電池モジュール20に用いることに限定されない。その他、ICタグのアンテナ、導電体、配線パターン、又は回路パターン等の各種の導電性パターンを構成する金属箔4に封止材5等の絶縁材層等を積層することによって、本発明の金属箔パターン積層体を適用することもできる。本発明における封止材5等の絶縁材層を積層した金属箔パターン積層体1,130は、任意の用途に利用される。
【0131】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態の太陽電池モジュール等に用いる金属箔積層体について
図20〜
図25により説明する。
第6実施形態においては、上述した第4実施形態及び第5実施形態と同一部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
図20に示す第6実施形態による金属箔積層体51は、例えば、太陽電池モジュールのバックシートに積載して用いられる。このバックシートを構成する部材としては、湿度遮蔽性もしくは酸素遮断性を有する、アルミニウム箔膜、もしくはアルミニウム箔膜と樹脂とによって構成された複合積層フィルムを使用することができる。
第6実施形態による金属箔積層体51は、例えば、絶縁性の基材52の表面に接着剤層53を介して所定の配線パターンが形成された金属箔54が積層されて一体化されている。
【0132】
基材52の材料としては、上述した第4実施形態と同様の材料が用いられる。
また、太陽電池用バックシート上に配線パターンを形成する場合、上述した基材52を太陽電池バックシートとして用いることもできる。この場合、基材52を構成する部材としては、湿度遮蔽性もしくは酸素遮断性を有する、アルミニウム箔膜、もしくはアルミニウム箔膜と上記樹脂とによって構成された複合積層フィルムを使用することもできる。
【0133】
接着剤層53の材料としては、上述した第4実施形態と同様の材料が用いられる。
【0134】
次に、金属箔54の構成について説明する。
金属箔54は間隙76で分割された配線パターンを有する。金属箔54の上面領域56には、はんだペースト又は銀ペースト等の導電性ペーストが載置され、上面領域56は導電性ペーストを介して後述する太陽電池セル63の裏面に設けた電極に接合される。
図20及び
図21に示す例では、はんだ57が上面領域56上に載置される。また、金属箔54の上面領域56を囲む側面54aの延長面上(側面54aが延長された仮想面上)には突部58が形成されている。
図21に示すように、突部58は、上面領域56から盛り上っており、熱溶融されて流動性を有するはんだ57が金属箔54の周囲に漏れ落ちないようにはんだ57を堰き止めている(囲んでいる)。
突部58は、金属箔54の側面54aの全周に形成されていることが好ましいが、必ずしも全周でなくてもよい。突部58と突部58の間に隙間があっても溶融したはんだ57の表面張力で漏出を防止できる。
【0135】
そして、金属箔54の突部58は、
図20では、先端に頂部を有する断面三角形状を有するが、突部58の形状はこの形状に限定されない。突部58は必ずしも側面54aの延長面上に設ける必要はない。側面54aに対して適宜の角度を有するように突部58を形成することができる。
なお、金属箔54は、例えば、アルミニウム、または銅、亜鉛、鉄、ニッケル、コバルト、或いはこれらの合金等で形成された金属シートを、後述する金型72の切刃部73で切断することにより形成される。アルミニウムは他の金属よりも柔らかく粘りが大きいので、金属箔54としてアルミニウム箔を用いて金型72の切刃部73で切り込んで型抜きする際、バリが大きくできるため、バリからなる突部58を大きく形成できるために好ましい。
このバリからなる突部58によって、
図21に示すように、接合用のはんだ57の流動性を有するペーストを上面領域56に大量に保持することができる。このため、上面領域56から流動性ペーストが漏れ落ちて、互いに隣接する金属箔54の配線パターンが導通して短絡することを防止できる。
【0136】
次に、
図22により、本発明の第6実施形態である
図20に示す金属箔積層体51を用いた太陽電池モジュール61について説明する。
第6実施形態の太陽電池モジュール61においては、上述した金属箔積層体51の最下層に位置する基材52にバックシート62が接着されている。このバックシート62は、接着剤層53が設けられている基材52の面とは反対側の面に接着されている。バックシート62においては、シールド材として用いられるバリア層が設けられている。バックシート62のバリア層としては、湿度遮蔽性や酸素遮断性を有する、アルミニウム箔膜又はアルミニウム箔膜と基材52の樹脂材料とによって構成された複合積層フィルムを使用できる。
【0137】
そして、金属箔積層体51の接着剤層53上には、配線パターンを形成する金属箔54が間隙76を開けて配列されている。この金属箔54の上面領域56には、導電性部材としてはんだ57が設置され、はんだ57の上に太陽電池セル63が設置され、太陽電池セル63の裏面に設けられた電極にはんだ57が接続されている。
また、金属箔積層体51の金属箔54及び接着剤層53上には太陽電池セル63を封止して絶縁する、例えば、EVAフィルムからなる封止材64が積層されている。更に、封止材64の表面には、ガラスパネル等の透光性基板65が接着されている。封止材64は、太陽電池セル63を挟み込むように2枚以上のEVAフィルムが積層された構造を有してもよい。
【0138】
この太陽電池モジュール61の組立に際し、
図22において、金属箔積層体51の金属箔54の上面領域56上にはんだ57を載置して加熱溶融させるか、或いは加熱溶融したはんだ57を金属箔54の上面領域56に滴下する。この状態で、溶融したはんだ57は金属箔54の上面領域56の上で、上面領域56の周囲に設けられた突部58によって堰き止められ、溶融はんだ57は盛り上がるように上面領域56上に溜められ、溶融はんだ57が突部58の外側に漏れ出ることを防止できる。
そして、金属箔54の突部58で囲まれた領域内において、表面張力の作用によってはんだ57が盛り上がった状態に保持され、はんだ57の上に太陽電池セル63の裏面に設けられた電極が載置され、はんだ57を冷却することで、金属箔54の配線パターンと太陽電池セル63の裏面に設けられた電極とが導通状態で、太陽電池セル63が太陽電池モジュール61の内部に固定される。
【0139】
次に、上述した構成を備えた第6実施形態による金属箔積層体51の製造方法について、
図23〜
図25により説明する。
図23において、ステージ基材68上に、粘着フィルム69を介して、配線パターンを形成するためのシート状の金属箔シート54Aを接着する。得られた金属箔シート54Aの積層体71に対して、切断用の金型72の切刃部73として、例えば、ピナクル刃を対向させる。金型72は、ベース部74から断面三角形の切刃部73が突出して形成された構造を有する。切刃部73の刃先角αは、例えば、40°〜60°の範囲、図に示す例では刃先角α=50°とした。
【0140】
金型72としては、腐食金型又は切削金型等を使用することができるが、金型72はこれら金型に限られない。金型72の材料としては、ガラス、プリハードン鋼、焼入焼戻鋼、析出硬化鋼、タングステン・カーバイドとコバルトとの合金、その他の超硬度合金等を使用することができるが、金型72の材料はこれら材料に限られない。金属箔シート54Aを高精度に型抜きする場合、切刃部73の刃先角αが鋭角であることが望ましい。
刃先角αを小さくするほど切断時に金属箔シート54Aに形成されるバリ等が小さくなるが、金型72の耐久性が低下する。一般的には、刃先角αは40°から60°程度とすることが望ましく、金属箔シート54Aと刃先角αの関係で適度にバリを生じさせるように刃先角αを設定する。
【0141】
図23において、切刃部73を金属箔シート54Aに切り込むことでバリ58Aを形成できる。銅は、比較的剛性を有する金属であるため、金属箔シート54Aの材料として銅を用いると、金属箔シート54Aが裂けるようにバリが発生する。また、アルミニウム合金は、比較的柔らかい材質であるため、金属箔シート54Aとしてアルミニウム合金を用いると、バリ58Aが発生し易く且つバリ58Aが成長し易い。アルミニウムは、銅に比べて、安価でありバリ58Aが大きく形成され易いので、バリ58Aからなる突部58の高さ(上面領域56から鉛直方向の高さ)が高く、はんだ57を保持できるとともに、溜められるはんだ57の液量を増やすことができる。
第6実施形態では、金属箔シート54Aとしてアルミニウムを用いることで、長いバリ58Aを形成できて、金属箔54の上面領域56上に比較的多量のはんだ57を保持できる。
【0142】
次に、金属箔54に突部58を形成する方法について説明する。
まず、
図23に示すように、金属箔シート54Aを備えた積層体71に対向するように切刃部73を備える金型72を配置する。
次に、切り込み工程として、金属箔シート54Aに金型72の切刃部73の刃先を積層体71の厚み方向に切り込んで金属箔シート54Aを切断し、刃先が粘着フィルム69の中間部近くに達するように切刃部73を粘着フィルム69に押し込み、その後、切込みを止める(ハーフカット工法)。これによって、金属箔シート54Aを切断する。ハーフカット工法においては、積層体71の厚み方向において、金型72の切刃部73が積層体71の表面から内部に向けて押し込まれる(切り込まれる)深さが適切な深さになるように、切り込みを停止させる。このためには、金属箔シート54Aを切断して粘着フィルム69内に押し込まれている切刃部73の刃先が粘着フィルム69の中間部に近い位置に到達し、かつ、ベース部74が金属箔シート54Aの表面に接触して切込みが停止するように、切刃部73の長さが適切に設定される。
【0143】
そして、切刃部73の切り込みによって、金属箔シート54Aと粘着シート69との接触面は刃先の両側に生じる応力によって変形し、刃先の形状に対応するように、例えば、断面三角形のバリ58Aが形成される。しかも、バリ58Aの形成と共に、金属箔シート54Aと粘着シート69との境界面に作用する応力によって、金属箔シート54Aと粘着シート69との間の接合面が一部剥離して、切刃部73の切り込みによって設けられたバリ58Aの両側に空間C1が形成される。
ここで、金属箔54からなる配線パターンを仕切る間隙76を形成するために、
図24に示すように、例えば、3本の切刃部73によって、金属箔シート54Aに形成すべき間隙76の両端と、間隙76の両端の間に位置する中間部に相当する位置とに、3つの切り込み部77を形成する。すると、切刃部73の切り込みで形成されるバリ58Aとバリ58Aの間に形成された2つの空間C1が互いに連通し、空間C1の幅の略2倍の幅を有する空間Cとなるように空間が成長する。これによって、金属箔シート54Aに形成される3つの切り込み部77と、成長した空間Cとで仕切られた金属箔不要部分54Fが分離可能となる。
【0144】
そして、
図25に示すように、金属箔不要部分54Fが切り込み部77と空間Cによって分離除去されることで、金属箔シート54Aの間に間隙76が形成され、間隙76の両端部に金属箔シート54Aの側面54a´と側面54a′に形成されるバリ58Aがそれぞれ形成される。
こうして切削加工によって間隙76を形成することによって金属箔不要部分4Fが金属箔シート4Aから分離され、且つ、側面54a′にバリ58Aが形成された金属箔シート54Aが粘着シート69から剥離される。これによって、金属箔積層基板が得られる。
この金属箔積層基板は、ステージ基材68と、ステージ基材68上に設けられた粘着フィルム69と、粘着フィルム69上に設けられ、パターニングされた金属箔シート54Aとを備える。
【0145】
次に、この金属箔シート54Aを反転させ、予め用意した基材52の表面に接着剤層53を介して金属箔シート54Aを接着させる。これによって、
図20に示すように、基材52,接着剤層53,及び金属箔シート54Aを反転させてなる金属箔54が積層された金属箔積層体51が形成される。この金属箔積層体51を構成する最上層に位置する金属箔54においては、間隙76によって配線パターンが仕切られている。各配線パターンを形成する金属箔54は、上面領域56とその側面54aの延長上に突出するバリ58Aからなる突部58とを有している。このようにして金属箔積層体51を製造できる。
【0146】
上述のように、第6実施形態による金属箔積層体51によれば、配線パターンを有する金属箔54におけるはんだ57を設置すべき上面領域56の周囲にバリ58Aからなる突部58が設けられている。この構造によって、接合時に加熱溶融されたはんだ57が流動性を有する状態で、金属箔54の上面領域56にはんだ57が保持された際に、上面領域56から盛り上がっている突部58によってはんだ57が堰き止められ、加熱溶融されたはんだ57が金属箔54の周囲に漏れ出ることを防止できる。このため、互いに隣接する配線パターンの金属箔54等と短絡することなく、太陽電池セル63等の部材の電極又は配線とはんだ57とを確実に接合できる。
【0147】
また、第6実施形態の太陽電池モジュール61によれば、配線パターンを有する金属箔54の上面領域56の周囲に突部58が設けられ、上面領域56上にはんだ57が搭載されている。このため、接合時にはんだ57が加熱によって流動性を有しても、突部58によってはんだ57が堰き止められ、表面張力の作用によってはんだ57が上面領域56から盛り上がるように保持される。このため、互いに隣接する配線等が短絡することがなく、太陽電池セル63の電極と確実に接合できる。
【0148】
なお、本発明による金属箔積層体51と、金属箔積層体51を含む太陽電池モジュール61は、上述の第6実施形態に限定されない。本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上述の第6実施形態では、配線パターンの金属箔54と太陽電池セル63の電極とを接合する導電性部材としてはんだ57を設けたが、本発明ははんだ57に限定されることなく、銀ペースト等、適宜の溶融性を有する導電性部材を用いることができる。
【0149】
また、上述の第6実施形態の金属箔積層体51においては、基材52上にシート状の接着剤層53が積層され、配線パターンの形状に沿って間隙76で分割して配列された金属箔54が接着剤層53上に形成されている。この構成に代えて、金属箔54の配線パターンと同様に、接着剤層53が間隙76で分割され、この接着剤層53が基材52上に積層されてもよい。
【0150】
さらに、上述の第6実施形態においては、金属箔シート54Aを金型72の切刃部73で切断することによって、配線パターンに沿うように形成された金属箔54が接着剤層53上に配列されている。金属箔54は、間隙76によって分割されたパターンを有する。これによって、
図20及び
図21に示すように、金属箔54の側面54aは、基材52に対して略垂直に形成されている。なお、金属箔54の側面54aは、基材52に略垂直に形成されていなくてもよい。例えば、
図26に示す第6実施形態の変形例のように、切刃部73の切り込みに沿って金属箔54の側面54aの形状が逆テーパ状であってもよい。この場合には、金属箔54の上鉛直方向に向けてバリ58Aからなる突部58は、外側に広がるように傾斜する逆テーパ形状を有する。このため、上面領域56において突部58によって囲まれている面積が増加し、はんだ57を収容する金属箔54の容量が増大し、太陽電池セル63の電極等と金属箔54の接合の確実性及び接合力が向上する。
なお、上述した変形例における金属箔54では、金属箔54の側面54aに、逆テーパ形状を有する傾斜面が形成され、接着剤層53に対する側面54aの角度が鋭角であった。必ずしも両側の側面54aの形状が逆テーパ形状である必要はなく、順テーパ等、適宜の形状を採用できる。
【0151】
また、本発明の第6実施形態における金属箔積層体51は、太陽電池モジュール61に用いることに限定されない。その他、ICタグのアンテナ、導電体、又は回路パターン等の各種の導電性パターンを構成する金属箔54として、上述した金属箔積層体を用いることもできる。本発明における金属箔積層体51は、任意の用途に利用される。