(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の塗料組成物についてさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明の塗料組成物は、水酸基含有樹脂(A)、アミノ樹脂(B)、四級アンモニウム塩基含有化合物(C)、及びアルキルリン酸エステル(D)を含有し、かつ四級アンモニウム塩基含有化合物(C)及びアルキルリン酸エステル(D)を特定量及び特定割合で含有するものである。
【0013】
水酸基含有樹脂(A)
本発明において水酸基含有樹脂(A)は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの1種又は2種以上を挙げることができる。なかでも、ポリエステル樹脂を好適に使用することができる。
【0014】
上記水酸基含有樹脂(A)として使用できるポリエステル樹脂としては、オイルフリーポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、及びこれらの樹脂の変性物、例えばウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂などが包含される。
【0015】
上記ポリエステル樹脂の数平均分子量は、耐水性及び仕上がり外観等の塗膜性能の観点から、1,500〜35,000、好ましくは2,000〜25,000の範囲であることが好適である。
【0016】
上記ポリエステル樹脂の水酸基価は、耐水性及び仕上がり外観等の塗膜性能の観点から、10〜200mgKOH/g、好ましくは20〜150mgKOH/gの範囲であることが好適である。
【0017】
上記ポリエステル樹脂の酸価は、耐水性及び仕上がり外観等の塗膜性能の観点から、0〜50mgKOH/g、好ましくは1〜20mgKOH/gの範囲であることが好適である。
【0018】
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0019】
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物からなるものである。多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸及びこれらの酸、酸の無水物の低級アルキルエステル化物などのエステル形成性誘導体が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。
【0020】
多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。
【0021】
これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができる。
【0022】
アルキド樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂の酸成分及びアルコール成分に加えて、油脂肪酸をそれ自体既知の方法で反応せしめたものであって、油脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸などを挙げることができる。アルキド樹脂の油長は30%以下、特に5〜20%程度のものが好ましい。
【0023】
ウレタン変性ポリエステル樹脂としては、上記オイルフリーポリエステル樹脂、又は上記オイルフリーポリエステル樹脂の製造の際に用いられる酸成分及びアルコール成分を反応させて得られる低分子量のオイルフリーポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが挙げられる。
また、ウレタン変性アルキド樹脂は、上記アルキド樹脂又は上記アルキド樹脂製造の際に用いられる各成分を反応させて得られる低分子量のアルキド樹脂を、ポリイソシアネート化合物と反応せしめたもの、ポリエステル樹脂又はアルキド樹脂の製造時にポリイソシアネート化合物を添加して反応せしめたものが挙げられる。
【0024】
ウレタン変性ポリエステル樹脂及びウレタン変性アルキド樹脂を製造する際に使用しうるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどが挙げられる。上記のウレタン変性樹脂は、一般に、ウレタン変性樹脂を形成するポリイソシアネート化合物の量がウレタン変性樹脂に対して30質量%以下の量となる変性度合のものを好適に使用することができる。
【0025】
エポキシ変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基とエポキシ基含有樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂中の水酸基とエポキシ樹脂中の水酸基とをポリイソシアネート化合物を介して結合した生成物などの、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂との付加、縮合、グラフトなどの反応による反応生成物を挙げることができる。かかるエポキシ変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、エポキシ樹脂の量がエポキシ変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜30質量%となる量であることが好適である。
【0026】
アクリル変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基又は水酸基にこれらの基と反応性を有する基、例えばカルボキシル基、水酸基又はエポキシ基を含有するアクリル樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂に(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルなどをパーオキサイド系重合開始剤を使用してグラフト重合してなる反応生成物を挙げることができる。
【0027】
かかるアクリル変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、アクリル樹脂の量がアクリル変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜50質量%となる量であることが好適である。以上に述べたポリエステル樹脂のうち、なかでもオイルフリーポリエステル樹脂、アルキド樹脂が、耐水性及び仕上がり外観等の塗膜性能の観点から好適である。
【0028】
水酸基含有樹脂(A)として使用できるアクリル樹脂は、水酸基含有モノマー及び該水酸基含有モノマーと共重合可能なその他のモノマーからなるモノマー混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下に溶液重合法等の常法によって共重合させることによって得ることができる。
上記水酸基含有モノマ−としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシエチルビニルエ−テル、2−ヒドロキシプロピルビニルエ−テル、2−ヒドロキシエチルアリルエ−テルなどを挙げることができる。
【0029】
上記水酸基含有モノマ−と共重合可能なその他のモノマ−としては、例えば(メタ)アクリル酸;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;メチル(メタ)アクリレ−ト、エチル(メタ)アクリレ−ト、n−プロピル(メタ)アクリレ−ト、i−プロピル(メタ)アクリレ−ト、(n−、i−、t−)ブチル(メタ)アクリレ−ト、ヘキシル(メタ)アクリレ−ト、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレ−ト、n−オクチル(メタ)アクリレ−ト、デシル(メタ)アクリレ−ト、ラウリル(メタ)アクリレ−ト、ステアリル(メタ)アクリレ−ト、イソボルニル(メタ)アクリレ−ト等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜24のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルエ−テル、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、さらにこれらのモノマ−の1種及び/又はそれ以上のモノマ−の重合体で、片末端に重合性不飽和基を有する、いわゆるマクロモノマ−も共重合可能なモノマ−として挙げることができる。本発明において、「(メタ)アクリレ−ト」は、「アクリレ−ト又はメタアクリレ−ト」を意味する。
【0030】
本発明の塗料組成物において水酸基含有樹脂(A)の含有量は、耐水性及び仕上がり外観等の塗膜性能の観点から、合計樹脂固形分を基準として、50〜90質量部、好ましくは60〜80質量部の範囲であることが望ましい。
【0031】
アミノ樹脂(B)
本発明においてアミノ樹脂(B)としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂及び尿素樹脂等が挙げられるが、なかでも、耐水性及び仕上がり外観等の塗膜性能の観点からメラミン樹脂を使用することが好ましい。
【0032】
上記メラミン樹脂としては、メチロール化メラミンのメチロール基の一部又は全部を炭素数1〜8の1価アルコール、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等で、エーテル化した部分エーテル化又はフルエーテル化メラミン樹脂が挙げられる。
【0033】
メラミン樹脂の市販品としては、例えばサイメル202、サイメル232、サイメル235、サイメル238、サイメル254、サイメル266、サイメル267、サイメル272、サイメル285、サイメル301、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル701、サイメル703、サイメル1141(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、ユーバン20SE60、ユーバン122、ユーバン28−60(以上、三井化学社製)、スーパーベッカミンJ−820−60、スーパーベッカミンL−127−60,スーパーベッカミンG−821−60(以上、DIC社製)等が挙げられる。
【0034】
本発明の塗料組成物においてアミノ樹脂(B)の含有量は、耐水性及び仕上がり外観等の塗膜性能の観点から、合計樹脂固形分を基準として、10〜50質量部、好ましくは20〜40質量部の範囲であることが望ましい。
【0035】
四級アンモニウム塩基含有化合物(C)
本発明において四級アンモニウム塩基含有化合物(C)は、例えばテトラアルキル(またはアリール)アンモニウム化合物が挙げられる。具体的には、
テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、
テトラデシルアンモニウムクロライド、トリメチルセチルアンモニウムクロライド、トリエチルセチルアンモニウムクロライド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、
トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、
フェニルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリエチルアンモニウムクロライド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、
デシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロライド、
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドコセニルオクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、やしアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、アルキル(炭素数8〜18)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルアセチルジメチルエチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルアルキル(炭素数8〜18)アンモニウムクロライド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド、(3−クロロ−2−ヒドロキシ−n−プロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジメチルベンジルフェニルアンモニウムクロライド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラ−n−アミルアンモニウムクロライド等;
テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、
テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルアンモニウムブロマイド、トリメチルセチルアンモニウムブロマイド、
トリエチルセチルアンモニウムブロマイド、トリエチルメチルアンモニウムブロマイド、ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、
ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、
ベンジルトリブチルアンモニウムブロマイド、フェニルトリメチルアンモニウムブロマイド、
フェニルトリエチルアンモニウムブロマイド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイド、
オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、デシルトリメチルアンモニウムブロマイド、
ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドコセニルオクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド、ジステアリルジメチルアンモニウムブロマイド等;
エチルトリメチルアンモニウムアイオダイド、エチルトリ−n−プロピルアンモニウムアイオダイド、フェニルトリエチルアンモニウムアイオダイド、フェニルトリメチルアンモニウムアイオダイド、テトラ−n−アミルアンモニウムアイオダイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラ−n−オクチルアンモニウムアイオダイド、テトラ−n−プロピルアンモニウムアイオダイド、トリエチルベンジルアンモニウムアイオダイド等;
テトラブチルアンモニウムフルオライド、テトラエチルアンモニウムフルオライド等;
酢酸テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、酢酸ベンジルトリメチルアンモニウム、酢酸ベンジルトリエチルアンモニウム、酢酸ベンジルトリブチルアンモニウム、硫酸水素テトラメチルアンモニウム、硫酸水素テトラエチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウム等;
テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、モノハイドロキシエチル・トリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等;
ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムアセテート、ベンジルジメチルアンモニウムパークロレイトなどが挙げられる。
【0036】
なかでも本発明において四級アンモニウム塩基含有化合物(C)としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等が特に好ましいものとして挙げられる。
【0037】
上記四級アンモニウム塩基含有化合物(C)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明の塗料組成物において四級アンモニウム塩基含有化合物(C)の含有量は、塗着効率及び貯蔵安定性等の観点から、塗料固形分を基準として、0.20〜0.75質量%、好ましくは0.25〜0.60質量%の範囲であることが望ましい。
【0039】
アルキルリン酸エステル(D)
本発明においてアルキルリン酸エステル(D)としては、例えば下記式(1)で表される化学構造を有するものを挙げることができる。
【0040】
POR
n(OH)
3−n ・・・式(1)
(上記式中、Rは炭素数が4以上、好ましくは6〜20のアルキル基を表す。該アルキル基は直鎖状でも分岐状でもよいが、好ましくは分岐状である。また、nは1以上3以下の整数である。また、n個のRは、それぞれ同じでも異なっていても良い。)
上記アルキルリン酸エステル(D)として使用できる市販品は例えば、NACURE4054J(商品名、KING INDUSTRIES社製)、Korantin SMK(商品名、BASF社製)、NIKKOLホステンHLP(商品名、日光ケミカルズ社製)、フォスファノールRS−410、同RS−610、同RS−710、同RD−510Y、同RD−720、同RB−410、同RL−210、同RL−310、同ML−200、同ML−220、同RE−410、同PE−510、同RE−610、同RE−960、同RM−410、同RM−510、同RM−710、同RE−210、同RP−710(以上、商品名、東邦化学工業社製)、プライサーフA212C、同A215C,同A208B、同A219B、同A210G、同A208F、同A212E(以上、商品名、第一工業製薬社製)等が挙げられる。これらはそのままでも、アルカリ金属や有機塩基で中和した塩としても使用できる。また、2種以上を併用しても良い。
【0041】
本発明の塗料組成物においてアルキルリン酸エステル(D)の含有量は、塗着効率及び貯蔵安定性等の観点から、塗料固形分を基準として、0.10〜1.88質量%、好ましくは0.30〜1.0質量%の範囲であることが望ましい。
【0042】
本発明の塗料組成物において四級アンモニウム塩基含有化合物(C)およびアルキルリン酸エステル(D)の配合比は、塗着効率及び貯蔵安定性等の観点から、四級アンモニウム塩基含有化合物(C)/アルキルリン酸エステル(D)=1/0.5〜1/2.5、好ましくは1/0.8〜1/1.5の範囲内であることが好適である。
【0043】
その他の成分
本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて、着色顔料、体質顔料、有機溶剤、シランカップリング剤、硬化触媒、増粘剤、消泡剤、表面調整剤、造膜助剤などの塗料用添加剤などを含有することができる。
【0044】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄土、黄色酸化鉄、ハンザエロー、ピグメントエロー、クロムオレンジ、クロムバーミリオン、パーマネントオレンジ、アンバー、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン、ファストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、ピグメントグリーン、ナフトールグリーン、アルミペーストなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0045】
なかでも本発明の塗料組成物は、上記酸化チタンを含有することが好ましい。該酸化チタンの含有量は塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として90〜120質量部、好ましくは95〜110質量部であることが白色塗料を得るために好ましい。
【0046】
体質顔料としては、例えば、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、亜鉛華(酸化亜鉛)などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0047】
有機溶剤としては、例えば、前述の樹脂成分を混合して溶解乃至分散できるものであれば特に制限されず、例えば脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等の溶剤が挙げられる。塗着効率及び貯蔵安定性等の観点からなかでも特に芳香族系炭化水素系溶剤及びアルコール系溶剤が好ましい。芳香族炭化水素系溶剤としては、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール等の低級アルコールであることが好ましくなかでもメタノール、n−ブタノールが特に好ましい。
【0048】
シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジアルコキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3−クロロプロピルトリアルコキシシラン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリアルコキシシランなどを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0049】
硬化触媒としては、スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適に用いられる。スルホン酸化合物の代表例としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などを挙げることができる。スルホン酸化合物のアミン中和物におけるアミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれであってもよい。これらのうち、塗料安定性、反応促進効果、得られる塗膜物性などの点から、p−トルエンスルホン酸のアミン中和物及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物が好適である。該硬化触媒の量は、本発明の塗料組成物における合計樹脂固形分100質量部に対して、硬化触媒中の酸の量、例えばスルホン酸化合物のアミン中和物の場合には、スルホン酸化合物の量に換算した値で0.1〜2.0質量部、好ましくは0.2〜1.5質量部である。
【0050】
本発明の塗料組成物は、体積固有抵抗値が1〜20MΩ・cm、好ましくは5〜15MΩ・cmであることが塗着効率の点から好ましい。
【0051】
ここで体積固有抵抗値は「ANALOG MΩ HiTESTER IR4013」(装置名、日置電機社製)を用いて測定して得られたものである。
【0052】
具体的には、粘度24〜25秒/フォードカップNo.4粘度計/20℃となるように希釈した塗料組成物中に、「ANALOG MΩ HiTESTER IR4013」の電極(電極面積:1cm
2、電極間距離:1cm)を浸漬したときの抵抗値を読み取ったものが体積固有抵抗値である。
【0053】
本発明の塗料組成物が適用される被塗物としては、特に限定されるものではないが、例えば、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ステンレス鋼板、錫メッキ鋼板等の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等の金属基材;各種プラスチック素材等を挙げることができる。またこれらにより形成された自動車、二輪車、コンテナ等の各種車両の車体であってもよい。
【0054】
また、被塗物としては、上記金属基材や車体の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。更に、被塗物としては、上記金属基材や車体等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜が形成されたものであってもよく、該下塗り塗膜及び中塗り塗膜が形成されたものであってもよく、下塗り塗膜、中塗り塗膜及びベースコート塗膜が形成されたものであってもよく、下塗り塗膜、中塗り塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤコート塗膜が形成されたものであってもよい。
【0055】
本塗料の塗装方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法が挙げられ、これらの方法によりウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法では、必要に応じて、静電印加してもよい。本発明においては静電印加した、静電塗装であることが好ましい。静電塗装のうちでは、回転霧化塗装が特に好ましい。本塗料の塗布量は、通常、硬化膜厚として、25〜50μm、好ましくは30〜40μmとなる量とするのが好ましい。
【0056】
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装を行う場合には、本塗料の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップNo.4粘度計において、20℃で20〜30秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0057】
被塗物に本塗料を塗装してなるウエット塗膜の硬化は、加熱することにより行われ、加熱は公知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、特に制限されるものではなく例えば90〜180℃、好ましくは110〜150℃の範囲内にあるのが好適である。加熱時間は、特に制限されるものではなく例えば、10〜60分間、好ましくは20〜40分間の範囲内であるのが好適である。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
【0059】
水酸基含有樹脂(A)の製造
製造例1
温度計、攪拌機、加熱装置及び精留搭を具備した反応装置に、やし油脂肪酸292部、無水フタル酸403部、トリメチロールプロパン379部を仕込み、160℃まで昇温してこれら原料を溶解させた後、160℃〜230℃まで3時間かけて徐々に昇温した。
【0060】
次いで、230℃で30分間反応を続けた後、精留搭を水分離機と置換し、内容部にキシレン124部を加え、縮合水を共沸により留去し、酸価が4mgKOH/gになるまで反応させた。次にこれを冷却し、シクロヘキサノン855部を加えて、固形分55%のポリエステル樹脂(A−1)溶液を得た。得られた樹脂は、水酸基価99mgKOH/g、数平均分子量4,800を有していた。
【0061】
製造例2
温度計、攪拌機、加熱装置及び精留搭を具備した反応装置に、ヘキサヒドロフタル酸349部、アジピン酸119部、無水フタル酸152部、ネオペンチルグリコール382部、トリメチロールプロパン88部を仕込み、160℃まで昇温してこれら原料を溶解させた後、160℃〜230℃まで3時間かけて徐々に昇温した。
【0062】
次いで、230℃で30分間反応を続けた後、精留搭を水分離機と置換し、内容部にキシレン124部を加え縮合水を共沸により留去し、酸価が7mgKOH/gになるまで反応させた。次にこれを冷却し、シクロヘキサノン855部を加えて、固形分55%のポリエステル樹脂(A−2)溶液を得た。得られた樹脂は、水酸基価62mgKOH/g、数平均分子量3,300を有していた。
【0063】
塗料組成物の作製
実施例1
ポリエステル樹脂(A−1)43部(固形分)、ポリエステル樹脂(A−2)27部(固形分)、「ユーバン28−60」(注1)30部(固形分)、テトラメチルアニモニウムブロマイド0.75部(固形分)、「NACURE4054J」(注2)0.75部、及び「JR−806」(注3)100部の混合物を、「スワゾール#1000」(注4)/イソプロパノール=9/1の混合溶剤に混合しに混合し、粘度25秒/フォードカップ#4/20℃となる塗料組成物(1)を得た。
(注1)ユーバン28−60:商品名、三井化学社製、ブチル化メラミン樹脂
(注2)NACURE4054J:商品名、KING INDUSTRIES社製、2−エチルヘキシルリン酸エステル
(注3)JR−806:商品名、テイカ社製、酸化チタン
(注4)スワゾール#1000:商品名、丸善石油化学社製、芳香族炭化水素系溶剤。
【0064】
実施例2〜14及び比較例1〜3
実施例1において、配合組成を表1に示すとおりとする以外は実施例1と同様に操作して、各塗料組成物(2)〜(17)を得た。
【0065】
尚、表1の配合は固形分表示であり、表1中の(注1)〜(注3)は上記のとおりである。
【0066】
性能試験
上記各塗料組成物について以下の性能試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0067】
体積固有抵抗値:表1に記載した配合組成の混合物を、「スワゾール#1000」(注4)を用いて、粘度25秒/フォードカップ#4/20℃となるように希釈した塗料組成物を得た。該塗料組成物中に、ANALOG MΩ HiTESTER IR4013(装置名、日置電機社製)の電極(電極面積:1cm
2、電極間距離:1cm)を浸漬したときの抵抗値を読み取った。
【0068】
塗着効率:地面に対して垂直方向に設置した、幅500mm×縦1000mmのアルミ箔に対して各実施例及び比較例で得られた塗料組成物を静電塗装した。静電塗装は、ランズバーグ社製のマイクロベル(ベル径50mmφ)を用いて、塗料吐出量200cc/分、ベルヘッドの回転数30,000rpm、ベルヘッドの印加電圧−60kV、塗装機のベルヘッドと被塗面との距離25cmの条件で行なった。塗着効率を下記式により算出した。
塗着効率(%)=(アルミ箔に塗着した塗料の固形分重量)/(塗装に使用した塗料の固形分重量)×100
◎:塗着効率が85%以上、
○:塗着効率が80%以上〜85%未満、
×:塗着効率が80%未満。
【0069】
貯蔵安定性:表1に記載した配合組成の混合物を、「スワゾール#1000」(注4)を用いて、粘度25秒/フォードカップ#4/20℃となるように希釈した塗料組成物を50℃雰囲気下で72時間静置した。その後、20℃に戻し、塗料の状態を目視にて観察し、次の基準で評価した。
◎ :沈降物の発生が認められない、
○ :沈降物が発生しているが、10分程度攪拌すれば貯蔵前の状態に戻る、
× :沈降物が発生し、10分以上攪拌しても沈降物が消えない。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】