【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度〜平成24年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究(事前研究一体型)/快適・省エネヒューマンファクターに基づく個別適合型冷暖房システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記体温調整動作部は、前記生体に対して加温および冷却の両方の動作を実行可能であり、外気温に基づいて加熱又は冷却の動作を前記体温調整動作部に実行させることを特徴とする請求項1又は2に記載の体温調節装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る体温調節装置について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本体温調節装置は実施形態の構成には限定されない。
〈実施形態1〉
《装置構成》
図1は、本実施形態1に係る体温調節装置の構成を示す図である。
図1に示すように、体温調節装置10は、生体としての利用者(以下単に利用者とも称す)90の胸部91に取り付けられるセンサ装置20と、センサ装置20と無線で通信可能な本体装置30とを備えている。
【0014】
図2は、センサ装置20の外観斜視図である。
図2に示すように、センサ装置20は、裏面21aで利用者90(
図1参照。)の胸部91(
図1参照。)に貼り付けられる粘着シート21と、粘着シート21の表面21b側に着脱可能に取り付けられる筐体22とを備えている。粘着シート21は、利用者90の心臓から発せられる起電力を読み取るための図示していない2つの電極が設けられている。これらの電極は、粘着シート21の表面21b側に図示していない突起部を有しており、この突起部が筐体22に形成された図示していない2つの穴にそれぞれ挿し込まれることによって筐体22と電気的に接続されるとともに筐体22を粘着シート21に固定するようになっている。また、これらの電極のうち粘着シート21の裏面21a側の部分は、利用者90の胸部91に貼り付けられる粘着剤であって上述した突起部と電気的に接続された導電性の粘着剤によって形成されていても良いし、上述した突起部の根本が粘着シート21の裏面21a側に貫通することによって形成されていても良いし、その他の構成によって形成されていても良い。センサ装置20は、利用者90に取り付けられるので、小型で軽量のものが望ましい。
【0015】
図3は、センサ装置20の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、センサ装置20は、装置全体を制御するための制御部22aと、制御部22aによって実行されるプログラムなどが記憶された記憶部22bと、利用者90(
図1参照。)の心臓から発せられる起電力によって生体の異なる部位に生じる電位差を測定する心電計22cと、心電計22cによって測定されたデータを本体装置30(
図1参照。)に無線で送信する送信部22dとを備えている。制御部22aは、CPU(Central Processi
ng Unit)などによって構成されている。記憶部22bは、ROM(Read Only Memory)などによって構成されている。心電計22cは、利用者90の心臓
から発せられる起電力によって生体の異なる部位に生じる電位差を、粘着シート21の上述した電極を介して測定するようになっている。制御部22a、記憶部22b、心電計22cおよび送信部22dは、筐体22(
図2参照。)の内部に収納されている。また、筐体22の内部には、制御部22aなどに電力を供給するための図示していない電池も収納されている。
【0016】
図4Aは、本体装置30の外観斜視図である。
図4Aに示すように、本体装置30は、内側の面31aで利用者90(
図1参照。)の頸部92(
図1参照。)に接触する体温調整動作部としての頸部冷暖部31を備えている。頸部冷暖部31は、利用者90の頸部92に取り付けられるために略U字型に形成されており内側に面31aを有するU字部31bと、U字部31bの外側の面に複数個取り付けられた四角形のブロックであるペルチェ素子31cと、U字部31bの内側の面に設けられ利用者90の頸部92の温度、即ち利用者90の体温を測定する頸部温度計31dとを備えている。また、本体装置30は、一部が頸部冷暖部31のペルチェ素子31cのうちU字部31b側とは反対側の面に密接して取り付けられて内部に水を循環させるチューブ32と、頸部冷暖部31のペルチェ素子31cに接続された電力供給用のケーブル33と、チューブ32およびケーブル33が接続された筐体34と、筐体34に接続された電力供給用のケーブル35と、ケーブル35が接続された筐体36とを備えている。頸部冷暖部31は、利用者90の体温のうち深部体温を調節するための動作として、利用者90に対して加温および冷却を実行するようになっている。ペルチェ素子31cは、U字部31bに接する面と、チューブ32に接する面とのうち一方が発熱して、他方が吸熱するように、頸部冷暖部31に配置されている。ペルチェ素子31cのうちU字部31bに接する面が発熱するとき、U字部31bは、ペルチェ素子31cで発生した熱を利用者90の頸部92の全周に伝達することによって、利用者90に対して加温を実行するようになっている。また、ペルチェ素子31cのうちU字部31bに接する面が吸熱するとき、U字部31bは、利用者90の頸部92の全周の熱をペルチェ素子31cに伝達することによって、利用者90に対して冷却を実行するようになっている。筐体34および筐体36は、利用者90が身に付けているベルト93(
図1参照。)に取り付けられるようになっている。筐体34の内部には、チューブ32の内部の水を冷却するための図示していないラジエータが収納されている。
【0017】
本体装置30の構成は、
図1,
図4Aの構成に限らず、
図4B,
図4Cの構成としても良い。
図4B,
図4Cの例では、頸部冷暖部31を略C字型とし、このC字型とした開口部を拡げ、利用者90の頸部92前方から頸部冷暖部31を装着する構成とした。即ち、頸部冷暖部31の開口部が利用者90の後頭部側に位置し、利用者90の頸部92前方にも頸部冷暖部31のC字部31bが位置する。
図4B,
図4Cの例では、利用者90の頸部92前方にもペルチェ素子31cを設けたことにより、利用者90の頸部92前方を加温及び冷却でき、頸部92前方付近を通る顎動脈を介して効果的に深部体温を調節することができる。
【0018】
図5は、本体装置30の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、本体装置30は、頸部冷暖部31(
図4A,
図4C参照。)を構成する上述したペルチェ素子31c
と、上述したラジエータを冷却するファン34aと、チューブ32(
図4参照。)の内部の水を循環させるためのポンプ34bと、装置全体を制御するための制御部36aと、制御部36aによって実行されるプログラムなどが記憶された記憶部36bと、センサ装置20(
図1参照。)の送信部22d(
図3参照。)によって送信されたデータを無線で受信する受信部36cと、頸部温度計31dと、利用者90の周囲の環境温度を測定する環境温度計36dと、利用者90の生理信号を検出する生理信号検出部36eと、体温調節装置10の暴走を止める稼動状態監視部36fとを備えている。ファン34aおよびポンプ34bは、筐体34(
図4参照。)の内部に収納されている。制御部36aは、CPUなどによって構成されている。記憶部36bは、ROMなどによって構成されている。制御部36a、記憶部36bおよび受信部36cは、筐体36(
図4参照。)の内部に収納されている。また、筐体36の内部には、制御部36aなどに電力を供給するための図示していない電池も収納されている。
【0019】
なお、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度がペルチェ素子31cによって下げられるとき、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面の温度は上がる。ここで、制御部36aは、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げるときに、ファン34aおよびポンプ34bにも電圧を供給するようになっている。これによって、チューブ32の内部の水は、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面と、上述したラジエータとの間をポンプ34bによって循環させられる。その結果、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面に発生した熱は、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面からチューブ32の内部の水に吸収された後、チューブ32の内部の水からラジエータを介してファン34aによって外気に放出される。したがって、頸部冷暖部31は、内側の面31aによって利用者90(
図1参照。)の頸部92(
図1参照。)を効率的に冷却することができる。
【0020】
また、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度がペルチェ素子31cによって上げられるとき、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面の温度は下がる。ここで、制御部36aは、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を上げるときに、ファン34aおよびポンプ34bにも電圧を供給するようになっている。これによって、チューブ32の内部の水は、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面と、上述したラジエータとの間をポンプ34bによって循環させられる。その結果、外気の熱は、ファン34aによってラジエータを介してチューブ32の内部の水に吸収された後、チューブ32の内部の水からペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面に放出される。したがって、頸部冷暖部31は、内側の面31aによって利用者90の頸部92を効率的に加温することができる。
【0021】
生理信号検出部36eは、心臓、肺、血管、
汗腺、褐色脂肪細胞などの体温調節に係る効果器の状態を生体信号として検出する。例えば、皮膚表面の湿度や皮膚の電気伝導度を測定して発汗の状態を検出する。センサ装置20と生理信号検出部36eは、状態検出部の一形態である。
【0022】
稼動状態監視部36fは、頸部冷暖部31の状態、例えば頸部温度計31dによる計測地やペルチェ素子31cへの電流を監視し、加熱温度や加熱時間、冷却温度、冷却時間等が所定値を超える場合に体温調節装置10の暴走と判断し、頸部冷暖部31への電力供給を停止する保護回路である。
【0023】
次に、体温調節装置10(
図1参照)の動作について説明する。センサ装置20(
図3参照。)の制御部22a(
図3参照)は、センサ装置20の電源が入っている間、心電計22c(
図3参照)によって測定されたデータを送信部22d(
図3参照。)によって本体装置30(
図5参照。)に無線で送信し続けている。そして、本体装置30の制御部3
6a(
図5参照。)は、本体装置30の電源が入っている間、センサ装置20の送信部22dによって送信されたデータを受信部36c(
図5参照。)によって無線で受信し続けている。なお、これらの通信は、間欠的に行われるようになっていても良く、どの程度の期間を置いて繰り返されるかは設計次第である。
【0024】
図6は、体温調節装置10を用いて利用者90の体温を調節する制御の説明図である。
【0025】
図6においては、利用者90を点線の矩形で表し、この矩形内に利用者の身体(生体システム)が体温を保つ機能を模式的に示した。例えば、利用者の身体各部における温度受容体が温度刺激(熱刺激や冷刺激)を受容し、この温度刺激が各部毎の閾値(
図6ではセットポイント)を超えた場合に、温度受容体が活性化され、温度刺激に応じた電気信号(刺激信号)を温度制御中枢に伝達する。例えば熱刺激の感受性を持つ温度受容体が、閾値以上の熱刺激を受容することで活性化し、刺激信号を温度制御中枢に送ることで、暑いことが知覚される。また、冷刺激の感受性を持つ温度受容体が、閾値以下の冷刺激を受容することで活性化し、刺激信号を温度制御中枢に送ることで、寒いことが知覚される。
【0026】
温度制御中枢は、この刺激信号に基づいて内分泌系を司る自律神経系を制御する。例えば、暑い場合に血管を司る交感神経を減退させる。或いは寒い場合に血管を司る交感神経を亢進させる。この交感神経の亢進或いは減退といった自律神経の制御に伴う効果器の機能により、熱の放出量や流入量を変えて、体温を調整する。例えば、汗腺の交感神経が亢進することで、発汗し、気化熱によって熱の放出量が増加する。また、血管の交感神経が減退することで、血管が収縮し、熱の放出量が減少する。
【0027】
そして、効果器による体温調整後の温度刺激を温度受容体で受容し、上記制御を繰り返すことで、利用者90の身体は適切な体温に調整する恒常性機能(ホメオスタシス)を備える。即ち、利用者90の生体システムは、体温を検出して適切な体温に調節するようにフィードバック制御を行う。
【0028】
このため特許文献1等に示される従来の装置で利用者90の体温をフィードバック制御しようとすると、利用者90が本来持つ恒常性機能と競合してしまい精度良く体温調整を行うことができない。
【0029】
そこで、本例の体温調節装置10は、体温調節を行う自律神経や効果器の状態をセンサ装置20や生理信号検出部36eで生体信号(バイタルシグナル)として検出し、制御部36aが当該生体信号に基づいて体温の調整方向(昇温又は降温)及び調整量を体温調整指数として求め、この体温調整指数に応じて加温又は冷却を行い利用者90の体温をフィードフォワード制御する。このように本例の体温調節装置10は、利用者90の恒常性機能の状態に基づいて体温の調節を行うので、利用者90の恒常性機能と競合せず、適切に体温調節を行うことができる。
【0030】
図7は、本実施形態1に係る体温調節装置10によるフィードフォワード制御と従来装置によるフィードバック制御の比較例を示す図である。
【0031】
図7では、縦軸に体温、横軸に時間をとり、従来装置でフィードバック制御を行った場合の利用者の体温の推移が一点鎖線で示されている。このようにフィードバック制御で利用者90を加熱した場合、加熱の結果が体温として現れ、体温が目標値に達したことを検知するまで加熱が続くので、利用者の体温が一旦目標値をオーバーシュートし、体温を目標値に戻すようフィードバックがかかり、体温が目標値よりも低下すると再度加熱するといった処理を繰り返すので、利用者90の体温が目標値に収束するまでに時間がかかる。
【0032】
これに対し、本実施形態1に係る体温調節装置10では、生体信号に基づいて体温調整指数を決め、必要且つ十分な熱を加えるようにフィードフォワード制御を行うので、
図7の実線で示すように、体温がオーバーシュートすることなく、速やかに目標温度に収束する。
【0033】
なお、フィードバック制御でループ利得を高めて、破線で示すようにフィードフォワード制御と同様に体温を立ち上げることも考えられるが、この場合、オーバーシュートも大きくなるため、例えば生理的限界値を超えることが考えられるため、フィードバック制御でフィードフォワード制御と同様に体温を収束させることはできない。
【0034】
図8は、フィードフォワード制御に用いる生体信号の説明図である。
図8に示すように、外気温が中立領域から外れて寒くなると、生体の自律神経や効果器などが耐寒反応を示す。例えば、血管交換神経の亢進により、血管を収縮させて熱の放出を防ぐ。一方、外気温が中立領域から外れて暑くなると、生体の自律神経や効果器などが耐暑反応を示す。例えば、血管交換神経の減退により、血管を拡張させて熱の発散を促進する。また、汗腺の交感神経の亢進により、発汗して体温を低下させる。
【0035】
図9は、上記生体信号に基づき体温調節装置10が実行する体温調節方法のフローチャートである。
【0036】
まず、体温調節装置10は、環境温度計36dにより、利用者90の周囲の環境温度(外気温)を測定する(ステップS10)。
【0037】
次に体温調節装置10は、センサ装置20や生理信号検出部36e等の状態検出部から生体信号を取得する(ステップS20)。
【0038】
制御部36aは、生体信号に基づいて体温調整指数を算出する(ステップS30)。なお、体温調整指数の算出については、後述する。
【0039】
制御部36aは、体温調整指数に基づいて頸部冷暖部31のペルチェ素子31cに電力を供給して利用者90に対する加熱や冷却を行い(ステップS40)、これらのステップS10〜40を適宜繰り返して体温調節を実行する。
【0040】
図10は、センサ装置20による生体信号取得(ステップS20)の詳細を示すフローチャートである。
【0041】
まず、センサ装置(心電計)20は、心臓の動作に伴う電気信号(所謂心電図)を取得する(ステップS210)。
【0042】
制御部36aは、センサ装置20で取得した電気信号(データ)から心拍数の時系列データ、即ち心拍数の変化を求める。なお、心拍数は、心拍毎に求まる離散的な値となるため、単位時間(等時間)間隔で心拍数の値を補完しても良い(ステップS220)。
【0043】
また、制御部36aは、所定区間(例えば200秒)の電気信号(データ)をフーリエ変換して周波数分布を求め(ステップS230)、帯域毎のパワー(積分値)を計算する(ステップS240)。この帯域は、例えば、0.2Hzより高い周波数帯を副交感神経の帯域HF、0.04〜0.2Hzを交感神経の帯域LF、0.04未満の周波数帯を体温調節に係る交換神経の帯域VLFとする。なお、この帯域の値は、これに限らず、他の値を用いても良い。
【0044】
更に制御部36aは、所定周波数(例えば0.1Hz)のローパスフィルタを用いて、電気信号(データ)から緩やかな変動成分を抽出する(ステップS250)。
【0045】
そして、制御部36aは、帯域毎のパワーから自律神経活動指標(例えばHF/LFやLF/(HF+LF))を求め、この自律神経活動指標や心拍数の時系列データ、緩やかな変動成分、帯
域VLFのパワー(積分値)を生体信号とする(ステップS260)。
【0046】
また、生体信号としては、
図11(A)に示す発汗センサを用いて、皮下の電気伝導度(GSR)を測定しても良い。例えば、皮下に発汗がある場合には電気伝導度が高くなり、発汗が無い場合には電気伝導度が低くなるため、この電気伝導度によって発汗の状態を検出できる。
図11(B)は、皮下の電気伝導度を測定した場合の時系列データを示す。
【0047】
なお、発汗の状態は、GSRに限らず、皮膚表面に湿度計(不図示)を装着し、皮膚表面の湿度を測定することにより検出しても良い。
【0048】
図12は、生体信号として脳波を測定する場合の説明図である。
【0049】
生理信号検出部36eとして脳波計(不図示)を用い、利用者90の脳波を測定する(ステップS)270。
【0050】
制御部36aは、脳波計36eで測定した脳波信号からα波とβ波を抽出する(ステップS280)。
【0051】
そして制御部36aは、α波とβ波の所定期間(例えば2秒)の時系列パワー(積分値)を求め(ステップS290)、この比(α/β)を生体信号(交換神経活性化指標)とする(ステップS295)。この生体信号(交換神経活性化指標)は、高いほど交感神経が減退し、低いほど交感神経が亢進していることを示す。
【0052】
図13は、体温調整指数の導出手順の説明図である。
【0053】
制御部36aは、センサ装置20のデータに基づく自律神経活動指標(例えばHF/LFやLF/(HF+LF))や脳波による交換神経活性化指標(α/β)が所定の閾値以上か否かによっ
て交感神経が優位か否かを判定する(ステップS310)。
【0054】
次に制御部36aは、センサ装置20によるデータの緩やかな変動成分に基づいて、前記交感神経が優位な状態が一時的なもの、例えば圧反射によるものか否かを判定する。例えば、利用者90が、急に立ち上がった際に交感神経が優位となり血管が収縮するような場合は、圧反射による一時的なもので、温度調節とは関係が無いので、このようなノイズか否かを判定する。
【0055】
一時的なものでなければ、制御部36aは、環境温度計36dによって求めた外気温に応じて温調の方向、即ち加熱か冷却かを決定する。例えば外気温が所定値より高ければ冷却、外気温が所定値より低ければ加熱する。
【0056】
また、制御部36aは、体温調節に係る生体信号、例えばVLFや発汗量に応じて加熱或は冷却の制御量を決定する。このVLFや発汗量が高ければ制御量を大きくし、低ければ制御量を小さくする。そして、前記温調方向と制御量を体温調整指数とする(ステップS340)。
【0057】
以上のように本実施形態1によれば、利用者(生体)90の状態に基づいて体温調整指
数を求め、体温調整指数に応じた温調を行うことで、適切に利用者90の体温を調節できる。
〈実施形態2〉
次に本発明の実施形態2に係る体温調節装置10について説明する。本実施形態2は、前述の実施形態1と比べて、過去の動作履歴に基づいて体温調整指数を求める構成が異なっており、その他の構成は同じである。このため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省力する。
【0058】
図14は、本実施形態2に係る体温調節方法のフローチャートである。
図14に示すように本実施形態2では、前述の
図9の処理に加えて動作履歴の記録を行う(ステップS50)。
【0059】
例えば、体温調整指数や外気温、ステップS310の判定結果等を時刻と共に順次記憶部36bに記録し、この時系列データを動作履歴とする。
【0060】
これにより例えば、外気温が何度の時に、どれ位の体温調整指数で温調を実行した場合に快適になったか(例えばステップS310で交換神経が優位で無いと判定されたか)、即ち温調が成功したパターンを動作履歴から抽出できる。
【0061】
そこで、ステップS30で体温調整指数を決定する際に、動作履歴を参照し、外気温や生体信号が一致或は近似し、所定時間以内に温調が成功した(快適な状態となった)場合の体温調整指数を読み出し、これを体温調整指数として決定する或は体温調整指数の決定に反映させる。
【0062】
本実施形態によれば、動作履歴を記録していくことで、利用者固有の条件を蓄積でき、更に適切に体温調節を行うことができる。
〈実施形態3〉
次に本発明の実施形態3に係る体温調節装置10について説明する。本実施形態3は、前述の実施形態1と比べて、利用者による操作履歴に基づいて体温調整指数を求める構成が異なっており、その他の構成は同じである。このため、同一の要素には同符号を付すなどして再度の説明を省力する。
【0063】
図15は、本実施形態3に係る本体装置30の概略構成図である。
図15に示すように、本実施形態3の本体装置30は、利用者90により加熱或は冷却のON/OFFなどの操作を行う操作部を備えた。操作部30gは、利用者90が手動で切り換えるスイッチ等に限らず、音声認識によりON/OFF等の操作を行うものでも良い。なお、ON/OFFに限らず、加熱或は冷却の強度(制御量)を調整する操作を行うものであっても良い。
【0064】
利用者90は、暑いと感じた場合には冷却するように操作し、寒いと感じた場合には加熱するように操作するので、この操作の履歴は、生体の状態を反映させたものになる。そこで、本実施形態3の本体装置30は、利用者90による操作を外気温や時刻と共に順次記憶部36bに記録し、この時系列データを操作履歴とする。そして、制御部36aは、この操作履歴に基づいて体温調整指数を決定する。このとき制御部36aは、操作履歴と合わせて、前述の実施形態1,2で用いた自律神経や効果器の状態に基づいて体温調整指数を求めても良いが、本実施形態3では、操作履歴のみから体温調整指数を求めている。このため、変実施形態3では、センサ装置20や本体装置30の受信部36c、生理信号検出部36eを省略している。
【0065】
図16は、本実施形態3に係る体温調節方法のフローチャートである。
【0066】
まず、体温調節装置10は、環境温度計36dにより、利用者90の周囲の環境温度(外気温)を測定する(ステップS10)。
【0067】
次に体温調節装置10は、操作履歴を参照し、外気温や時刻が一致或は近似し
た場合の操作を読み出し、これに基づいて体温調整指数を決定する。
【0068】
制御部36aは、体温調整指数に基づいて頸部冷暖部31のペルチェ素子31cに電力を供給して利用者90に対する加熱や冷却を実行する(ステップS40)。
【0069】
そして、実行した制御や利用者による操作の履歴を操作履歴として記録し(ステップS55)これらのステップS10〜55を適宜繰り返して体温調節を実行する。
【0070】
以上のように本実施形態3によれば、心電図の測定や発汗の測定といった利用者への負荷が無く、簡素な構成で体温調節を行うことができる。
【0071】
なお、以上の実施形態では、加熱或は冷却する手段としてペルチェ素子を用いたが、これに限らず、電熱ヒータによる加熱やファンにより冷却する手段であっても良い。
【0072】
また、生体の一例として人の例を示したが、これに限らず、生体とは、犬や馬等の動物であっても良い。