特許第6161154号(P6161154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161154
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】波力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/22 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   F03B13/22
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-102463(P2013-102463)
(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公開番号】特開2014-222063(P2014-222063A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】513119440
【氏名又は名称】渋谷 明
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 明
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3155320(JP,U)
【文献】 実開平03−063784(JP,U)
【文献】 特開平09−184471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海面から所定の距離を有して海面の上方に設置した基板と、
この基板と略平行に当該基板の中央上部に支持された回転軸と、
前記基板に設置され、前記回転軸の回転が伝動される出力軸を有する発電機と、
前記回転軸に一方の方向にのみ回転を伝達するラチェット装置を介して、基端部を前記回転軸に連結し、先端部が相反する向きに向かう一対以上のクランクアームと、
このクランクアームの先端部に一端部が回動可能に連結し、他端部が海面に向かって垂下する揺動リンクと、
この揺動リンクの他端部と上部が回動可能に連結し、当該揺動リンクを介して、前記クランクアームの先端部に吊り下げられた円筒状の浮力体と、
上端縁を前記基板の下面に固定し、前記浮力体が波の力で昇降自在及び遊動自在に運動できるように、当該浮力体を囲うと共に、両端面を開口した筒状のシリンダ部材と、を備え、
前記回転軸は、正四角柱状に形成された回り止用の軸部を中間部に備え、
前記ラチェット装置は、
前記回転軸の軸部に嵌合する正四角状の嵌合開口を中心部に形成し、複数のラチェット歯を外周に形成したラチェット車と、
前記クランクアームの動作に連動して、前記回転軸が一方の方向のみに回転するように、前記ラチェット歯に係止する戻り止用の爪と、を備える、波力発電装置。
【請求項2】
前記シリンダ部材は、波が外周方向から内部を通過容易な複数の通水穴を外周に開口している請求項1記載の波力発電装置。
【請求項3】
前記回転軸は、歯数の多い大歯車を一方の端部に有し、
前記発電機の出力軸は、前記大歯車と噛み合う、歯数の少ない小歯車を有する請求項1又は2記載の波力発電装置。
【請求項4】
前記大歯車は、前記回転軸と同軸上にフライホイールを固定している請求項3記載の波力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波力発電装置に関する。特に、短期的かつ不定期に昇降する波の運動エネルギーを機械的な回転エネルギーに一次変換して発電する波力発電装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電は、石油を代表とする化石燃料を燃焼して得られた熱エネルギーを電力に変換して発電している。しかし、火力発電に用いるこれらの化石燃料は、いずれ枯渇することが予測されている。原子力発電は、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を排出しないことが利点であるが、核廃棄物の処理が問題点の一つとして取り上げられている。
【0003】
太陽光発電又は風力発電は、太陽光又は風力といった自然エネルギーを利用しており、地球温暖化への影響が少ない発電方法である。しかし、四方を海に囲まれた我が国において、波エネルギーを利用した波力発電が進展すれば、その恩恵は我が国にとって大きいものとなる。
【0004】
このような、波エネルギーを利用した波力発電としては、波力が瞬間的に作用する場合にも、安定した作動状態を維持して、安定した発電状態を維持できる波力発電装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−528463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1による波力発電装置は、扁平な箱状の浮力構造物の両端部に立設された一対の門型の固定フレームと、一端部が一方の固定フレームに回転自在に支持され、他端部が他方の固定フレームに固定された発電機の入力軸と同軸上に連結した回転軸と、回転軸が一方の方向にのみ回転するように回転軸と連結したワンウェイクラッチを有し、回転軸の軸方向に連設された複数のプーリと、プーリの両翼に配置され、所定の円弧軌跡を描くように、固定フレームに対して揺動可能に連結された一対の浮きと、一端部側が引張りコイルばねを介してプーリに巻かれ、他端部を浮き側に係留して、浮きの揺動運動をプーリの回転運動に変換するロープと、を備えている。
【0007】
特許文献1による波力発電装置は、基端部に回転支持部を有し、海中に向かって延びる先端部に浮きを固定する揺動腕を十分長くすると共に、この揺動腕の浮き側にロープの他端部を係留することで、揺動腕に生ずる大きな回転モーメントをプーリに伝動できる、としている。なお、特許文献1では、上記の揺動腕を3点リンクと記載している。
【0008】
又、特許文献1による波力発電装置は、回転軸の他端部と発電機の入力軸にフライホイールを介在して、回転軸と入力軸を連結することで、安定した発電状態を維持できると、している。
【0009】
しかしながら、特許文献1による波力発電装置は、部品点数も多く、構成を複雑にしているという問題がある。波力発電装置の構成を簡易にして、製造原価の低減に寄与できれば、この波力発電装置の普及が促進されると考えられる。
【0010】
又、波の挙動は、所定の周期で波高が変化する縦波と波が伝播する方向に変化する横波が合成されたものと考えられる。そして、特許文献1による波力発電装置は、3点リンクの回転の際における揺れを防止するため、3点リンクの中央リンクの前後方向に一対の支持部材を取り付け、中央リンクを補強している(特許文献1の段落[0024]、及び図4、参照)。
【0011】
このように、特許文献1による波力発電装置は、複数の浮きに作用する横波のエネルギーが装置全体を波が伝播する方向に移動させる力として消費され、波エネルギーを有効に活用していない、という問題がある。波エネルギーを有効に活用した波力発電装置が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、構成が簡易であると共に、波エネルギーを有効に活用した波力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、発電機の入力軸と連結した回転軸に一方の方向にのみ回転を伝達するラチェット装置を介して、相反する向きに向かう一対のクランクアームの基端部を連結し、これらのクランクアームの先端部に揺動リンクを介して円筒状の浮力体を吊り下げると共に、波の力で浮力体が昇降自在及び遊動自在に運動できるように、両端面が開口された筒状のシリンダ部材で囲うことで、これらの課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな波力発電装置を発明するに至った。
【0014】
(1)本発明による波力発電装置は、海面から所定の距離を有して海面の上方に設置した基板と、この基板と略平行に当該基板の中央上部に支持された回転軸と、前記基板に設置され、前記回転軸の回転が伝動される出力軸を有する発電機と、前記回転軸に一方の方向にのみ回転を伝達するラチェット装置を介して、基端部を前記回転軸に連結し、先端部が相反する向きに向かう一対以上のクランクアームと、このクランクアームの先端部に一端部が回動可能に連結し、他端部が海面に向かって垂下する揺動リンクと、この揺動リンクの他端部と上部が回動可能に連結し、当該揺動リンクを介して、前記クランクアームの先端部に吊り下げられた円筒状の浮力体と、上端縁を前記基板の下面に固定し、前記浮力体が波の力で昇降自在及び遊動自在に運動できるように、当該浮力体を囲うと共に、両端面を開口した筒状のシリンダ部材と、を備える。
【0015】
(2)前記シリンダ部材は、波が外周方向から内部を通過容易な複数の通水穴を外周に開口していることが好ましい。
【0016】
(3)前記回転軸は、歯数の多い大歯車を一方の端部に有し、前記発電機の出力軸は、前記大歯車と噛み合う、歯数の少ない小歯車を有することが好ましい。
【0017】
(4)前記大歯車は、前記回転軸と同軸上にフライホイールを固定していることが好ましい。
【0018】
(5)前記回転軸は、正四角柱状に形成された回り止用の軸部を中間部に備え、前記ラチェット装置は、前記回転軸の軸部に嵌合する正四角状の嵌合開口を中心部に形成し、複数のラチェット歯を外周に形成したラチェット車と、前記クランクアームの動作に連動して、前記回転軸が一方の方向のみに回転するように、前記ラチェット歯に係止する戻り止用の爪と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明による波力発電装置は、構成が簡易であると共に、波の力で浮力体が昇降自在及び遊動自在に運動できるように、浮力体を囲う筒状のシリンダ部材を備えているので、波の挙動を大幅に阻止することなく、波エネルギーを有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による波力発電装置の構成を示す斜視図である。
図2】前記実施形態による波力発電装置の構成を示す正面図である。
図3】前記実施形態による波力発電装置の構成を示す平面図である。
図4】前記実施形態による波力発電装置の要部を拡大した斜視図である。
図5】前記実施形態による波力発電装置の構成を示す斜視分解組立図である。
図6】前記実施形態による波力発電装置に備わる一方のクランクアームの基端部に設けたラチェット装置の縦断面図である。
図7】前記実施形態による波力発電装置に備わる他方のクランクアームの基端部に設けたラチェット装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[波力発電装置の構成]
最初に、本発明の一実施形態による波力発電装置の構成を説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態による波力発電装置の構成を示す斜視図である。図2は、前記実施形態による波力発電装置の構成を示す正面図である。図3は、前記実施形態による波力発電装置の構成を示す平面図である。
【0023】
(全体構成)
図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態による波力発電装置10は、基板1、回転軸2、及び発電機3を備えている。又、波力発電装置10は、ラチェット装置4a・4bを介して、基端部が回転軸2に連結した一対一組のクランクアーム5a・5bと四つの揺動リンク6を備えている。更に、波力発電装置10は、四つの円筒状の浮力体7と四つの筒状のシリンダ部材8を備えている。
【0024】
図1から図3を参照して、基板1は、例えば、海岸に設けた堤防から片持ち状に支持することができ、海面Wfから所定の距離を有して海面Wfの上方に設置できる(図2参照)。又、基板1の両翼にフロート(図示せず)設けて、海面Wfから所定の距離を有して海面Wfの上方に基板1を設置してもよい(図2参照)。
【0025】
図1から図3を参照すると、回転軸2は、基板1と略平行に、基板1の中央上部に支持されている。基板1は、所定の距離に離間した一対の支持部材21・21を立設している。回転軸2は、その両端部が一対の支持部材21・21に回転支持されている。回転軸2の両端部は、オイルレスメタルなどの軸受部材21aを介して(図1又は図4参照)、一対の支持部材21・21に回転支持されることが好ましい。
【0026】
図1から図3を参照すると、発電機3は、発電機本体3mと取り付け台3nで構成している。発電機本体3mは、取り付け台3nを介して、基板1に設置されている。又、発電機本体3mは、一方の端部に突出した出力軸31mを有している。そして、出力軸31mに回転軸2の回転が伝動されることで、発電機本体3mを発電できる。
【0027】
図1から図3を参照すると、ラチェット装置4aは、一方のクランクアーム5aの先端部が下降すると、クランクアーム5aの基端部が回転軸2に連結でき、クランクアーム5aの先端部が上昇すると、クランクアーム5aの基端部と回転軸2の連結が解除され、回転軸2を時計方向Rにのみ回転できる。
【0028】
一方、図1から図3を参照すると、ラチェット装置4bは、他方のクランクアーム5bの先端部が下降すると、クランクアーム5bの基端部と回転軸2の連結が解除され、クランクアーム5bの先端部が上昇すると、クランクアーム5bの基端部が回転軸2に連結でき、回転軸2を時計方向Rにのみ回転できる。なお、クランクアーム5aとクランクアーム5bとは、配置が異なるだけで、実質的に同じものであることから、クランクアーム5aを代表して説明することがある。
【0029】
図1から図3を参照すると、揺動リンク6は、クランクアーム5aの先端部に一端部が回動可能に連結している。一方、揺動リンク6は、基板1に設けた開口1hを介して、他端部が海面Wfに向かって垂下している(図2参照)。
【0030】
図1から図3を参照すると、浮力体7は、その上部が揺動リンク6の他端部と回動可能に連結している。又、浮力体7は、揺動リンク6を介して、クランクアーム5aの先端部に吊り下げられている。
【0031】
図1から図3を参照すると、シリンダ部材8と、その上端縁にフランジ8fを設けて基板1の下面に固定している。シリンダ部材8は、浮力体7が波Weの力で昇降自在及び遊動自在に運動できるように、浮力体7を囲うと共に、両端面を開口している。
【0032】
引き続き、実施形態による波力発電装置10の構成を説明する。図4は、前記実施形態による波力発電装置の要部を拡大した斜視図である。図5は、前記実施形態による波力発電装置の構成を示す斜視分解組立図である。
【0033】
図6は、前記実施形態による波力発電装置に備わる一方のクランクアームの基端部に設けたラチェット装置の縦断面図である。図7は、前記実施形態による波力発電装置に備わる他方のクランクアームの基端部に設けたラチェット装置の縦断面図である。
【0034】
(回転軸の構成)
図1から図4を参照すると、回転軸2は、正四角柱状に形成された回り止用の軸部2aを中間部に備えている。軸部2aは、後述するラチェット車41の中心部に嵌合できる(図6又は図7参照)。軸部2aのスラスト方向(軸方向)の適宜な位置にラチェット車41を固定することで、ラチェット車41の回転を軸部2aに確実に伝達できる。
【0035】
(歯車伝動装置の構成)
図1から図3を参照すると、回転軸2は、歯数の多い大歯車21gを一方の端部に取り付けている。大歯車21gは、発電機3の出力軸31mに固定された歯数の少ない小歯車31gと噛み合っている。そして、大歯車21gは、小歯車31gと噛み合うことで、回転軸2の回転を増速して発電機3の出力軸31mに伝動できる。大歯車21gと小歯車31gは、回転運動を確実に伝動する歯車伝動装置を構成している。
【0036】
(フライホイールの構成)
図1から図3を参照すると、大歯車21gは、回転軸2と同軸上にフライホイール2wを固定している。なお、実態形態では、フライホイール2wを回転軸2と同軸上に固定し、大歯車21gをフライホイール2wに固定している。フライホイール2wは、回転軸2の間欠的な回転エネルギーを蓄勢すると共に、回転軸2の間欠的な回転運動を比較的円滑な回転運動に変化できる。フライホイール2wは、外縁側に質量が偏るように構成することが好ましい。又、大歯車21gに回転軸2を直結することなく、図示しないトルクリミッタを用いて、大歯車21gと回転軸2を連結することで、回転軸2が急激に回転したときに、大歯車21gへの過剰なトルク伝達を制限できる。これにより、例えば、大歯車21gの歯、又は小歯車31gの歯に対する衝撃荷重を緩和できる。
【0037】
(発電機の構成)
図1から図3を参照すると、発電機3は、発電機本体3mの内部に複数のコイルを配置している。一方、出力軸31mは、複数のコイルに囲まれた永久磁石を直結している。回転軸2の回転に連動して、永久磁石が回転すると電磁誘導現象により、コイルに電流が流れ、発電機3は、交流電力を出力できる。そして、発電機本体3mには、交流電力を取り出すための端子台3tを設けている(図3参照)。なお、発電機3は、中心軸にコイルを配置し、このコイルを囲う外筒の内部に永久磁石を配置し、外筒を回転することで、中心軸側から交流電力を取り出す交流発電機を用いてもよい。又、発電機3は、直流発電機を用いてもよい。
【0038】
(ラチェット装置の構成)
図1又は図4及び図6を参照すると、ラチェット装置4aは、クランクアーム5aの基端部に取り付けている。ラチェット装置4aは、ラチェット車(爪車)41と板カム状の揺動レバー42で構成している。ラチェット車41は、ラジアル方向(円周方向)には回転が可能であるが、スラスト方向(軸方向)には移動が困難なように、クランクアーム5aの基端部に保持されている。ラチェット車41は、連続する複数の台形歯41aを外周上に形成している。揺動レバー42は、台形歯41aに係合する戻り止用の爪42aを一方の端部に形成している。
【0039】
一方、図1又は図4及び図7を参照すると、ラチェット装置4bは、クランクアーム5bの基端部に取り付けている。ラチェット装置4bは、ラチェット車41と板カム状の揺動レバー43で構成している。ラチェット車41は、ラジアル方向(円周方向)には回転が可能であるが、スラスト方向(軸方向)には移動が困難なように、クランクアーム5bの基端部に保持されている。ラチェット車41は、連続する複数の台形歯41aを外周上に形成している。揺動レバー43は、台形歯41aに係合する戻り止用の爪43aを一方の端部に形成している。
【0040】
図6を参照すると、揺動レバー42は、軸4sによって揺動可能に支持されている。軸4sは、ラチェット車41の外周円の接線方向に配置されている。そして、ラチェット車41を中心にクランクアーム5aの先端部がR方向(時計方向)に回転すると、戻り止用の爪42aが台形歯41aに係止して、回転軸2をR方向に回転できる。
【0041】
一方、図6を参照すると、ラチェット車41を中心にクランクアーム5aの先端部がL方向(反時計方向)に回転すると、戻り止用の爪42aが台形歯41aから逃げるように回動するので、回転軸2を回転することなく、クランクアーム5aの先端部がL方向(反時計方向)に回転することを許容できる。
【0042】
図6を参照すると、揺動レバー42は、半円弧状に形成された隅部42bを端部に設けている。一方、クランクアーム5aは、隅部42bに当接するボール44と、ボール44を隅部42bに向けて力を付勢する圧縮コイルばね45を備えている。
【0043】
図6を参照すると、ボール44及び圧縮コイルばね45は、揺動レバー42の揺動運動(間欠運動)を担保している。ラチェット車41を中心にクランクアーム5aの先端部がL方向に回転すると、戻り止用の爪42aが一つの台形歯41aを乗り越えるが、ボール44に付勢され、戻り止用の爪42aを次の台形歯41aに移動できる。
【0044】
図7を参照すると、揺動レバー43は、軸4sによって揺動可能に支持されている。軸4sは、ラチェット車41の外周円の接線方向に配置されている。そして、ラチェット車41を中心にクランクアーム5bの先端部がR方向(時計方向)に回転すると、戻り止用の爪43aが台形歯41aに係止して、回転軸2をR方向に回転できる。
【0045】
一方、図7を参照すると、ラチェット車41を中心にクランクアーム5bの先端部がL方向(反時計方向)に回転すると、戻り止用の爪43aが台形歯41aから逃げるように回動するので、回転軸2を回転することなく、クランクアーム5bの先端部がL方向(反時計方向)に回転することを許容できる。
【0046】
図7を参照すると、ボール44及び圧縮コイルばね45は、揺動レバー43の揺動運動(間欠運動)を担保している。ラチェット車41を中心にクランクアーム5bの先端部がL方向に回転すると、戻り止用の爪43aが一つの台形歯41aを乗り越えるが、ボール44に付勢され、戻り止用の爪43aを次の台形歯41aに移動できる。
【0047】
このように、図1又は図4を参照すると、ラチェット装置4aは、クランクアーム5aの先端部が下降するときには、回転軸2をR方向に回転でき、クランクアーム5aの先端部が上昇するときは、回転軸2への回転伝動が解除され、回転軸2を一方の方向のみに回転できる(図1又は図2参照)。
【0048】
同様に、図1又は図4を参照すると、ラチェット装置4bは、クランクアーム5bの先端部が上昇するときには、回転軸2をR方向に回転でき、クランクアーム5bの先端部が下降するときは、回転軸2への回転伝動が解除され、回転軸2を一方の方向のみに回転できる(図1又は図2参照)。
【0049】
(揺動リンクの構成)
図5を参照すると、揺動リンク6は、圧入穴6hを両端部に開口している。一方、クランクアーム5a又はクランクアーム5bは、二山クレビス形の軸受部51を先端部に備えている(図1又は図2参照)。軸受部51に貫通した軸穴51hの中心と一方の圧入穴6hの中心を一致させて、軸ピン61pを圧入することで、クランクアーム5a又はクランクアーム5bの先端部と揺動リンク6の一方の端部を回動自在に連結できる(図1又は図2参照)。
【0050】
図5を参照すると、キャップ部材72は、浮力体本体71の上部を封止している。キャップ部材72は、その上部に二山クレビス形の軸受部721を備えている。軸受部721に貫通した軸穴72hの中心と他方の圧入穴6hの中心を一致させて、軸ピン62pを圧入することで、浮力体7の上部と揺動リンク6の他方の端部を回動自在に連結できる(図1又は図2参照)。
【0051】
(浮力体の構成)
図2又は図5を参照すると、浮力体7は、円筒状の浮力体本体71、キャップ部材72、及び調整錘73を備えている。雌ねじ部71aは、内部に空洞を有し、上部が開口された筒型容器からなっている。浮力体本体71は、上部に雌ねじ部71aを設けている。シールリング71rを介して、キャップ部材72を雌ねじ部71aに締結することで、浸水が困難に浮力体本体71を密閉できる。そして、浮力体7に所定の浮力を付与できる。
【0052】
図2又は図5を参照すると、浮力体本体71は、下部に雄ねじ部71bを設けている。調整錘73を雄ねじ部71bに締結することで、浮力体7の重量を増加させて、浮力体7を所定の喫水に下げることができ、浮力体7の重心を下げて、復原性を増加することもできる。
【0053】
図2又は図5を参照すると、浮力体本体71は、内部にバラスト水を充填して、重量と浮力のバランスを調整できる。この場合、浮力体本体71を透明な合成樹脂などで構成することが好ましく、浮力体本体71の内部に充填したバラスト水の容量を容易に確認できるので便利である。更に、浮力体本体71の外部又は内部に目盛りを設けると、更に便利である。
【0054】
(シリンダ部材の構成)
図1又は図2及び図5を参照すると、シリンダ部材8は、フランジ8fを上部に備えている。ビスなどの締結部材を用いて、フランジ8fを基板1の下面に固定できる。又、シリンダ部材8は、複数の通水穴8hを外周に開口している。これらの通水穴8hには、波Weがシリンダ部材8の外周方向から内部を容易に通過できる。
【0055】
[波力発電装置の作用]
次に、実施形態による波力発電装置10の作用及び効果を説明する。図1から図3を参照すると、実施形態による波力発電装置10は、クランクアーム5aとクランクアーム5bを共用できるなど、従来技術により波力発電装置と比較して、構成が簡易であり、製造原価の低減に寄与できる。
【0056】
図1から図3を参照すると、波力発電装置10は、「てこの原理」を利用して回転軸2を回転させている。波力発電装置10は、クランクアーム5a又はクランクアーム5bの各先端部に働く波Weの小さな力をクランクアーム5a・5bの長さに依存した大きな回転モーメントに増幅して回転軸2に作用している。
【0057】
図2を参照すると、クランクアーム5a又はクランクアーム5bの全長を長くすることで、回転軸2に作用する回転モーメントを大きくできるが、波Weの波高が同じであれば、回転軸2の回動角度(ステップ角)が小さくなる。この場合、図1又は図3に示すように、先端部が相反する向きに向かう一対のクランクアーム5a・5bを回転軸2の軸方向に連設することで、回転軸2の回動角度を累積することで解決できる。波Weの想定される特性に対応して、クランクアーム5a・5bの全長と配列数を均衡させることが好ましい。
【0058】
図1又は図2及び図5を参照すると、波力発電装置10は、クランクアーム5a又はクランクアーム5b、揺動リンク6、浮力体7、及びシリンダ部材8で構成されるリンク機構がフレキシブルである。例えば、シリンダ部材8は、浮力体7が波Weの力で昇降自在及び遊動自在に運動できるように、浮力体7を囲っている。これにより、縦波と横波が混在した波Weの挙動をクランクアーム5a又はクランクアーム5bの揺動運動に確実に変換でき、波エネルギーを有効に活用できる。
【0059】
又、図1又は図2及び図5を参照すると、シリンダ部材8は、波Weが外周方向から内部を通過容易な複数の通水穴8hを外周に開口しているので、縦波と横波が混在した波Weの挙動が浮力体7に伝えることができ、波エネルギーを有効に活用できる。シリンダ部材8の強度が保障される範囲内において、通水穴8hの面積を大きくすることが好ましく、通水穴8hの個数を確保することが好ましい。
【0060】
本発明による波力発電装置は、高価なタービン又は大掛かりな設備工事を必要とせず、波エネルギーを有効に活用した、費用対効果の大きい波力発電装置である。又、本発明による波力発電装置は、火力発電又は原子力発電と異なり、海面に発生するクリーンな波エネルギーを利用しており、安心かつ安全に発電できる。
【符号の説明】
【0061】
1 基板
2 回転軸
3 発電機
4a・4b ラチェット装置
5a・5b クランクアーム
6 揺動リンク
7 浮力体
8 シリンダ部材
10 波力発電装置
31m 出力軸
We 波
Wf 海面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7