特許第6161195号(P6161195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6161195信号発生装置の冷却機構およびそれを備えた携帯型地絡点探査信号発生器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161195
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】信号発生装置の冷却機構およびそれを備えた携帯型地絡点探査信号発生器
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20170703BHJP
   G01R 31/02 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   H05K7/20 G
   G01R31/02
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-107037(P2013-107037)
(22)【出願日】2013年5月21日
(65)【公開番号】特開2014-229692(P2014-229692A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱井 保徳
(72)【発明者】
【氏名】安藤 賢二
(72)【発明者】
【氏名】東田 浩典
【審査官】 白石 圭吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−064570(JP,A)
【文献】 特開平05−273291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
G01R 31/02
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周波数の周期信号を発生させる信号発生ユニットと前記信号発生ユニットに動作電圧を供給する電源ユニットとを備えた信号発生装置の冷却機構であって、
前記信号発生ユニットおよび前記電源ユニットが、上面が開口した一つの筐体内に隣り合って収容され、前記筐体の上面が蓋体により覆われており、
前記筐体において、前記電源ユニットに近い第1の側壁部に前記筐体内から外へ向かう気流を発生させる冷却ファンが、前記信号発生ユニットに近い第2の側壁部に前記筐体内に外気を流入させるための開口部がそれぞれ設けられており、
前記筐体が、上面が開口した外箱に収容され、前記外箱の内部が前記筐体の前記第1および第2の側壁部で仕切られて吸気用および排気用の小空間がそれぞれ形成されている、ことを特徴とする信号発生装置の冷却機構。
【請求項2】
前記開口部の直近に前記信号発生ユニットが配置されており、
前記開口部の大きさが、前記筐体内に流入する外気を前記信号発生ユニットに直接当てるのに必要最小限の大きさである、請求項1に記載の信号発生装置の冷却機構。
【請求項3】
前記冷却ファンおよび前記開口部が互いに対向して配置されている、請求項1および2のいずれか一つに記載の信号発生装置の冷却機構。
【請求項4】
前記各小空間の上面が前記蓋体により覆われており、
前記蓋体において、前記各小空間を覆う部分に通気用のスリットが形成されている、請求項1から3のいずれか一つに記載の信号発生装置の冷却機構。
【請求項5】
直流電路の地絡点探査のための所定周波数の周期信号を発生させて前記直流電路に前記周期信号を注入する信号発生ユニットと、前記直流電路の直流電圧をDC−DC変換して前記信号発生ユニットに動作電圧を供給する電源ユニットとを備えた携帯型地絡点探査信号発生器であって、
請求項1から4のいずれか一つに記載の冷却機構を備えている、ことを特徴とする携帯型地絡点探査信号発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号発生装置の冷却機構に関し、特に、電路の地絡点探査用の交流探査信号を発生させる携帯型地絡点探査信号発生器などに好適な冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や変電所などの大規模プラントにおいては各種設備機器の制御に直流回路が用いられる。かかる直流回路には、通常、JEM1090(日本工業規格1090)で定められた直流地絡過電圧継電器64Dなどが接続されており、直流電路に地絡が発生したことが検出できるようになっている。さらに、その他の保護継電器や保護機器を接続することで、地絡が発生した回路への電源供給遮断などができるようになっている。
【0003】
例えば直流電路の地絡点探査には、直流電路のP側母線とアース間およびN側母線とアース間にそれぞれ地絡点探査用の交流探査信号を注入し、直流電路の各箇所で抵抗成分漏れ電流を測定することにより行われる方式がある。抵抗成分漏れ電流は、直流電路の任意の箇所で変流器を用いて漏れ電流を測定し、それを、交流探査信号を基準にして同期整流やベクトル演算などを行うことで測定することができる。このため、直流電路の直流成分漏れ電流を測定する装置に、直流電路に注入される交流探査信号を位相のずれなく正確に伝送する必要がある。
【0004】
かかる問題に関して、従来、直流電路に交流探査信号を注入する携帯型の装置(親機)および直流電路の抵抗成分漏れ電流を測定する携帯型の装置(子機)からなる直流電路地絡点探査装置において、地絡点の探査開始前に子機を親機に同期させて親機で発生する交流探査信号が子機内部で正確に再現されるようにしてから親機と子機を分離し、当該分離された子機単体で抵抗成分漏れ電流を高精度に測定することを可能にしている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−273291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の直流電路地絡点探査装置の親機を始めとする所定周波数の周期信号を発生させる信号発生装置の発振源として水晶振動子を用いた水晶発振器がよく用いられる。水晶振動子とは、水晶片の表面を薄膜電極で挟み、これを機械的支持部材と電気的リードを兼ねた支持薄板を有する保持器内に密封したものである。
【0007】
水晶発振器は比較的安価である反面、その周波数温度特性はあまり優れてない。すなわち、水晶発振器は環境温度に影響を受けやすく、その発振周波数または位相特性は環境温度の変化により大きく変動しがちである。また、信号発生装置でよく用いられるフィルター回路を構成する容量素子などの電子部品も環境温度に影響を受けやすい。特に直流電路地絡点探査装置の親機は直流電路から高電圧の直流電圧(例えば、DC110V)を受けて動作するため、DC−DC変換動作に係る発熱量が大きいという事情がある。このため、当該親機の内部温度は親機の起動後しばらくの間は上昇し、この間は交流探査信号を安定的に供給することができない。もし親機と子機の同期が完了した後に親機の交流探査信号が変動すると、直流電路に注入されている交流探査信号と子機内部で再現する交流探査信号の位相がずれてしまい、子機において抵抗成分漏れ電流を正確に測定できなくなるおそれがある。このため、従来の直流電路地絡点探査装置では、親機を起動してその内部温度が上昇して安定するまで十分に長い時間(例えば、数十分)待ってから親機と子機の同期を完了させる必要があった。しかし、これは、直流電路に地絡が発生した場合に速やかに地絡点の探査を開始することを阻害する要因となり得る。
【0008】
したがって、直流電路地絡点探査装置の親機に限らず、水晶発振器やフィルター回路などの環境温度に影響されやすい電子部品を備えた信号発生装置全般について、その内部温度を速やかに安定化させる必要性がある。かかる問題に鑑み、本発明は、信号発生装置の内部温度を安定化させるための冷却機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に従った信号発生装置の冷却機構は、所定周波数の周期信号を発生させる信号発生ユニットと前記信号発生ユニットに動作電圧を供給する電源ユニットとを備えた信号発生装置の冷却機構であって、前記信号発生ユニットおよび前記電源ユニットが、上面が開口した一つの筐体内に隣り合って収容され、前記筐体の上面が蓋体により覆われており、前記筐体において、前記電源ユニットに近い第1の側壁部に前記筐体内から外へ向かう気流を発生させる冷却ファンが、前記信号発生ユニットに近い第2の側壁部に前記筐体内に外気を流入させるための開口部がそれぞれ設けられているものである。
【0010】
これによると、筐体内部において信号発生ユニットから電源ユニットへ向かう方向に外気を強制的に循環させて、主に電源ユニットから発生する熱により暖められた空気を効率よく装置外部に排出して装置内部の温度上昇を抑制することができる。
【0011】
上記冷却機構において、前記開口部の直近に前記信号発生ユニットが配置されていてもよく、また、前記開口部の大きさが、前記筐体内に流入する外気を前記信号発生ユニットに直接当てるのに必要最小限の大きさであってもよい。
【0012】
これによると、信号発生ユニットに効果的に外気を当てて温度変化に敏感な信号発生ユニットを冷却することができる。
【0013】
上記冷却機構において、前記冷却ファンおよび前記開口部が互いに対向して配置されていてもよい。
【0014】
これによると、筐体内部において全体的に外気の通りがよくなり、筐体内部の空気の淀みが少なくなってより効果的に装置内部の温度上昇を抑制することができる。
【0015】
上記冷却機構において、前記筐体が、上面が開口した外箱に収容され、前記外箱の内部が前記筐体の前記第1および第2の側壁部で仕切られて吸気用および排気用の小空間がそれぞれ形成されていてもよい。また、前記各小空間の上面が前記蓋体により覆われており、前記蓋体において、前記各小空間を覆う部分に通気用のスリットが形成されていてもよい。
【0016】
これによると、見た目に冷却ファンがあることをわからなくするとともに、外部から信号発生装置の内部に異物が流入することを防止することができる。
【0017】
また、本発明の別の局面に従った携帯型地絡点探査信号発生器は、直流電路の地絡点探査のための所定周波数の周期信号を発生させて前記直流電路に前記周期信号を注入する信号発生ユニットと、前記直流電路の直流電圧をDC−DC変換して前記信号発生ユニットに動作電圧を供給する電源ユニットとを備えた携帯型地絡点探査信号発生器であって、上記の冷却機構を備えているものである。
【0018】
これによると、携帯型地絡点探査信号発生器の内部温度上昇を抑制することができ、起動してから短時間で、直流電路の地絡点探査のための所定周波数の周期信号を安定的に出力することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、水晶発振器やフィルター回路などの環境温度に影響されやすい電子部品を備えた信号発生装置の内部温度の上昇を抑制して安定的な周期信号を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る信号発生装置の外観図
図2】本発明の一実施形態に係る信号発生装置の主要部の回路構成図
図3】本発明の一実施形態に係る信号発生装置の分解斜視図
図4】本発明の一実施形態に係る信号発生装置の別の角度からの分解斜視図
図5】本発明の一実施形態に係る信号発生装置の平面視断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
本発明の一実施形態に係る信号発生装置は、例えば、直流電路地絡点探査装置の親機として用いられ、直流電路の地絡点探査用の交流探査信号を発生させる携帯型地絡点探査信号発生器(以下、親機と称する)である。親機は持ち運び可能な大きさおよび重量の機器である。直流電路の地絡点を探査する場合、親機を機器室などに持ち込んで直流電路に接続する。親機は直流電路から直流電圧(例えば、DC110V)を受けて動作し、交流探査信号を発生させて直流電路に注入する。当該交流探査信号は、正弦波、パルス(矩形波など)、三角波などの周期信号であり、その周期は、例えば0.2sec(周波数5Hz)である。
【0023】
一方、直流電路地絡点探査装置の子機として用いられる直流電路地絡点携帯検出器(以下、子機と称する)は親機よりも小型および軽量の機器である。子機はバッテリーで駆動することができる。直流電路の地絡点を探査する場合、子機を現場に持ち出して直流電路の各箇所における漏れ電流を測定する。子機は分割型変流器を備え、当該分割型変流器で直流電路の単線または複数線をクランプして交流探査信号に起因する漏れ電流を測定する。測定前に子機と親機を同期させることで、親機が生成する交流探査信号が子機内部で正確に再現されるようになっている。子機は、測定した漏れ電流を内部で再現した交流探査信号を基準にして同期整流やベクトル演算などを行うことで、抵抗成分漏れ電流、容量成分漏れ電流、抵抗成分漏れ電流と測定した漏れ電流との位相差(例えば、位相角の余弦として与えられる)、抵抗成分漏れ電流と容量成分漏れ電流のベクトル合成和、地絡抵抗値、および対地静電容量値などを算出してディスプレイに表示する。また、子機は、測定した各値を測定日時とともに装置内部に記録できるようになっている。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る信号発生装置の外観を示す。本実施形態に係る信号発生装置10は直流電路地絡点探査装置の親機(携帯型地絡点探査信号発生器)である。信号発生装置10は板厚5.5mmのベニヤ板と板厚0.3mmのエンボス加工されたアルミニウム板で形成されたケース構造(外箱)に収容されている。外箱の各エッジ部および各コーナー部はさらにアルミニウム製の保護部材により補強されている。外箱は上部(外箱蓋部)と下部(外箱本体部)とからなり、これらは分離できるようになっている。図1は、外箱蓋部を取り外した状態の信号発生装置10を表している。装置外形は縦約25cm、横約35cm、高さ約20cm(外箱蓋部および外箱本体部を含む)の略直方体形状であり、重量は約9kgである。
【0025】
信号発生装置10において、外箱本体部101の前側面に持ち運び用の取手102が取り付けられている。外箱の奥側面において、図示しない外箱蓋部と外箱本体部101との境界部分に約20cmの間隔をあけて二つの抜差蝶番103が均等配置されている。このように、外箱蓋部はその前側面が上方に移動可能となるように外箱本体部101に対して回動自在かつ着脱自在に設けられている。また、外箱の前側面において、外箱蓋部と外箱本体部101との境界部分に約20cmの間隔をあけて二つのパチン錠104が均等配置されている。信号発生装置10を持ち運ぶ際には、二つのパチン錠104で外箱蓋部を外箱本体部101に固定して外箱蓋部が開かないようにすることができる。
【0026】
外箱本体部101の開口した上面は板厚1.2mmの冷間圧延鋼板(SPCC)でできたフロントパネル105により覆われている。フロントパネル105には、ケーブルコネクター106,107、ヒューズ108,109、ディスプレイ110、電源スイッチ111、クランプコイル112、および光コネクター113が配置されている。また、フロントパネル105の左右両端にはスリット114L,114Rがそれぞれ形成されている。
【0027】
ケーブルコネクター106には図示しない2本のリード線が接続される。そのうち1本は直流電路のP側母線に接続するリード線であり、他の1本はN側母線に接続するリード線である。ケーブルコネクター107には図示しない1本のリード線が接続される。当該リード線はアースに接続される。
【0028】
ヒューズ108は直流電路のP側母線から信号発生装置10に流れ込む過電流から信号発生装置10を保護するためのヒューズである。ヒューズ109は直流電路のN側母線から信号発生装置10に流れ込む過電流から信号発生装置10を保護するためのヒューズである。ヒューズ108,109の定格値は、例えばDC1Aである。
【0029】
ディスプレイ110はバックライト付きの液晶ディスプレイ装置で構成することができる。ディスプレイ110には、信号発生装置10のウォーミングアップ時や子機との同期処理時には各種メッセージが表示され、直流電路への交流探査信号の注入中はP極地絡抵抗値、N極地絡抵抗値、総合地絡抵抗値、並列地絡抵抗値、電路の電圧、および地絡点の電圧などが表示される。
【0030】
電源スイッチ111は、信号発生装置10の動作のオン/オフを切り替えるメインスイッチである。ケーブルコネクター106に接続された図示しない2本のリード線を直流電路のP側母線およびN側母線にそれぞれ接続した状態で電源スイッチ111をオンにすると、信号発生装置10は直流電路から直流電圧(例えば、DC110V)を受けて動作を開始する。
【0031】
クランプコイル112は、後述するように直流電路のP側母線とN側母線との間に接続された例えば二つのコンデンサの中点とアースとの間に接続されたコイルである。クランプコイル112は、当該コイルの一部を保護部材で保護してフロントパネル105の表面に露出させたものである。クランプコイル112は、図示しない子機を信号発生装置10に同期させる際に当該子機の分割型変流器によりクランプされて使用される。子機は、クランプコイル112をクランプした分割型変流器により、クランプコイル112に流れる同期調整用信号を検出する。なお、クランプコイル112を子機の分割型変流器でクランプしやすいように、フロントパネル105においてクランプコイル112が配置される箇所に適当な大きさの凹みが形成されている。
【0032】
光コネクター113には信号発生装置10と子機とを接続するための図示しない光ファイバーコードが接続される。信号発生装置10において、例えば交流探査信号の周期のパルス信号が生成される。当該パルス信号は光信号に変換されて光ファイバーコードを通じて子機に伝送される。
【0033】
子機と信号発生装置10との同期は、子機の分割型変流器でクランプコイル112をクランプするとともに子機と信号発生装置10とを光ファイバーコードで接続した状態で行われる。子機は、交流探査信号の周期よりも十分に短い周期(例えば、0.2μsec)で基準パルス信号を発生させる基準パルス発振源を備えている。子機は、光ファイバーコードを介して受信したパルス信号の分周信号を生成し、当該分周信号のオンデューティ期間中に発生する基準パルス信号のパルス数をカウントし、当該カウント値を当該オンデューティ期間に分割型変流器で検出した交流探査信号に存在する波数で割ることで、直流電路に注入された交流探査信号の周期を算出する。そして、子機は、分割型変流器で検出した交流探査信号のゼロクロス点のタイミングで、当該算出した周期のパルス信号の生成を開始する。以上の一連の操作により、子機と信号発生装置10の同期が完了する。
【0034】
同期が完了すると、クランプコイル112から分割型変流器を外すとともに光ファイバーコードを取り外して子機を信号発生装置10から完全に分離することができる。同期が完了し、信号発生装置10から分離された子機内部では、信号発生装置10で生成される交流探査信号が正確に再現される。
【0035】
次に、信号発生装置10の回路構成について説明する。図2は、信号発生装置10の主要部の回路構成を示す。信号発生装置10は、電源ユニット11および信号発生ユニット12を備えている。また、ケーブルコネクター106を介して信号発生装置10内に引き込まれた直流電路のP側母線とN側母線との間に二つのコンデンサ13,14が直列接続されて挿入されており、これらコンデンサ13,14の接続点とケーブルコネクター107を介して信号発生装置10内に引き込まれたアースとの間にクランプコイル112が接続されている。さらに、信号発生装置10は、クランプコイル112に流れる電流を検出する変流器15、およびアースに流れる電流を検出する変流器16を備えている。
【0036】
電源ユニット11は、直流電路に印加されている直流電圧(例えば、DC110V)から、信号発生装置10における各種回路要素の動作電圧(例えば、半導体回路駆動用のDC5Vなど)を生成する電気回路である。電源ユニット11は、ステップダウン型のDC−DCコンバータを主要部材とし、さらにダイオードやコンデンサなどの周辺部材で構成されている。
【0037】
信号発生ユニット12は、交流探査信号を発生させて直流電路に交流探査信号を注入する電気回路である。信号発生ユニット12において、注入回路121は、直流電路のP側母線とアース間およびN側母線とアース間にそれぞれ交流探査信号を注入する電気回路である。注入回路121はPWM変調器で構成されており、マイコン122の制御により交流探査信号の位相および電圧が容易に調整できるようになっている。交流探査信号はPWM変調された疑似正弦波交流信号である。
【0038】
電圧測定回路123は、直流電路のP側母線、N側母線、およびアースに接続されており、P側母線とアース間の電圧および抵抗値、ならびにN側母線とアース間の電圧および抵抗値を測定する電気回路である。注入位相・電位モニター回路124は、直流電路のP側母線およびN側母線のそれぞれに注入された交流探査信号の位相および電位をモニターする電気回路である。注入電圧モニター回路125は、変流器15の検出電流に基づいて、注入回路121により直線電路に注入される交流探査信号の電圧レベルをモニターする電気回路である。電圧レベルは、例えば、交流探査信号のピーク値や平均振幅などである。外部静電容量測定回路126は、変流器16の検出電流に基づいて外部静電容量(対地静電容量)を測定する電気回路である。なお、注入位相・電位モニター回路124、注入電圧モニター回路125、および外部静電容量測定回路126は、いずれも低域通過フィルターなどの図示しないフィルター回路を備えており、当該フィルター回路により各種信号のフィルタリング処理を行う。
【0039】
アナログ−デジタル変換回路(ADC)127は、電圧測定回路123、注入位相・電位モニター回路124、注入電圧モニター回路125、および外部静電容量測定回路126から出力される各信号を受け、これらアナログ信号をデジタル信号に変換してマイコン122に出力する。水晶発振器128は、発振源として水晶振動子を用いており、当該水晶振動子の発振に基づいてマイコン122およびADC127の動作クロック信号を生成する。
【0040】
マイコン122は、直流電路に所定の電圧レベルの交流探査信号が注入されるように、ADC127から受信したデジタル信号に基づいて注入回路121をPWM制御する。また、マイコン122は、ディスプレイ110に各種情報を表示する。例えば、マイコン122は、信号発生装置10の起動時にはウォーミングアップのメッセージを、信号発生装置10と子機との同期が完了すると同期完了を通知するメッセージを、ディスプレイ110に表示する。また、マイコン122は、交流探査信号の注入時には、ADC127から受信したデジタル信号に基づいてP極地絡抵抗値、N極地絡抵抗値、総合地絡抵抗値、並列地絡抵抗値、電路の電圧、および地絡点の電圧などを算出し、これら値をディスプレイ110に表示する。
【0041】
また、マイコン122は、例えば交流探査信号の周期パルス信号を生成して光信号変換部129に出力する。光信号変換部129は、マイコン122から受信したパルス信号を光信号に変換して光コネクター113に出力する。当該光信号は、信号発生装置10と子機との同期処理において、図示しない光ファイバーコードを通じて子機に伝送される。
【0042】
次に、信号発生装置10の冷却機構について説明する。図3は、信号発生装置10の分解斜視図である。図4は、信号発生装置10の別の角度からの分解斜視図である。
【0043】
信号発生装置10は、外箱本体部101および外箱蓋部101’からなるケース構造(外箱)に収容されている。電源ユニット11および信号発生ユニット12などの信号発生装置10の各種電気回路ユニットは、上面が開口した略直方体形状の筐体17に収容されている。筐体17は、例えば、RoHS指令に対応した板厚0.8mmの電気亜鉛メッキ鋼板・熱延材(SEHC)でできている。筐体17は外箱本体部101に収容されている。
【0044】
筐体17の高さは外箱本体部101の内寸の高さとほぼ同じであり、前側壁部17Fとそれに対向する背側壁部17Bとの離隔は外箱本体部101の縦内寸よりも数cm短い約21cmであり、右側壁部17Rとそれに対向する左側壁部17Lとの離隔は外箱本体部101の横内寸よりも数cm短い約32cmである。前側壁部17Fおよび背側壁部17Bの横幅は外箱本体部101の横内寸とほぼ同じである。前側壁部17Fおよび背側壁部17Bのそれぞれの上端には外側に向けて直角に折り曲げられた約2cm幅のアングル部171が形成されている。また、外箱本体部101の内側の前側面および奥側面の各上端にはパネル取り付け用のアングル部材116が設けられている。フロントパネル105、筐体17のアングル部171、および外箱本体部101のアングル部材116はネジ止め固定される。これにより、筐体17および外箱本体部101の各開口した上面がフロントパネル105により覆われて、筐体17はフロントパネル105により略密閉される。
【0045】
筐体17において、右側に電源ユニット11が、左側に信号発生ユニット12が、それぞれ配置されている。すなわち、電源ユニット11と信号発生ユニット12は筐体17内に隣り合って収容されている。さらに、筐体17において、電源ユニット11に近い右側壁部17Rには電動の冷却ファン18を取り付けるための適当な大きさの円形の開口部172が設けられている。開口部172に合わせて冷却ファン18が右側壁部17Rの内側に取り付けられる。
【0046】
冷却ファン18は、例えば、DCブラシレスモーターと当該モーターのローターに軸着されたプロペラ翼を有し、電源ユニット11により直流駆動されて筐体17内から外へ向かう軸流方向に気流を発生させるDC軸流ファンである。冷却ファン18として、例えば、フレームサイズ60mm、定格入力24V、最大風量0.61m/minのDC軸流ファンを用いることができる。
【0047】
一方、筐体17において、左側壁部17Lには矩形の開口部173が設けられている。開口部173は、筐体17内に外気を流入させるためのものであり、その大きさは、筐体17内に流入する外気が一定程度の勢い(流勢)を持って信号発生ユニット12に直接かつ集中的に当たって信号発生ユニット12において発生する熱量を一定量奪い、筐体17の内部温度を外気温と同程度に保つことができるような必要最小限の大きさであればよい。すなわち、開口部173の大きさは、あまり大き過ぎると筐体17内に流入する外気の流勢が低下するため好ましくなく、逆にあまり小さすぎても筐体17内への外気の流入量が低下するため好ましくない。開口部173の大きさは、例えば、縦25mm、横95mm程度である。なお、筐体17に収容されるユニットによって筐体17内部で発生する熱量がさまざまに変わるため、開口部173の大きさは、筐体17に実際に収容される各ユニットの発熱量を考慮して決定するとよい。
【0048】
なお、開口部173から筐体17内へ異物が流入するのを防ぐために、開口部173を適当な大きさのパンチ鋼板19で覆ってもよい。ただし、パンチ鋼板19として、筐体17内へ必要十分な量の外気を流入させることができるような適当な大きさおよび量の穿孔がなされたものを採用すべきである。
【0049】
前側壁部17Fにもいくつか孔があるが、これらは、信号発生装置10の検査およびデバッグのために信号発生ユニット12における各種信号端子にアクセスするための孔である。これら孔からも筐体17内に外気が流入する。
【0050】
図5は、信号発生装置10の平面視断面図であり、電源ユニット11、信号発生ユニット12、開口部173、および冷却ファン18の配置位置関係および装置内部に発生する気流を模式的に示す。上述したように、外箱本体部101の横内寸よりも筐体17の左側壁部17Lと右側壁部17Rとの離隔が短いため、外箱本体部101の内部は筐体17の左側壁部17Lおよび右側壁部17Rで仕切られて小空間101L,101Rがそれぞれ形成されている。小空間101L,101Rの上面はフロントパネル105により覆われており、フロントパネル105において、小空間101L,101Rを覆う部分に通気用のスリット114L,114Rがそれぞれ形成されている。これにより、見た目に冷却ファン18があることをわからなくするとともに、外部から信号発生装置10の内部に異物が流入することを防止している。
【0051】
冷却ファン18が駆動されると、スリット114Lから小空間101Lに外気200が吸気され、開口部173を通じて外気200が筐体17の内部に流れ込み、開口部172を通じて小空間101Rへ外気200が流れ出て、スリット114Rから装置外部へ外気200が排気される。このように、冷却ファン18により外気200を強制的に循環させて信号発生装置10内部に外気循環経路を作り出すことにより、信号発生装置10の内部温度の上昇を抑制して内部温度を安定化させることができる。特に、筐体17において、環境温度の変化により特性が変動しがちな水晶発振器やフィルター回路などの電子部品を有する信号発生ユニット12を気流上流側に配置し、発熱量が大きい電源ユニット11を気流下流側に配置していることで、電源ユニット11によって暖められた空気が信号発生ユニット12に運ばれずに効率よく装置外部に排出される。また、必要最小限の大きさの開口部173の直近に信号発生ユニット12を配置していることで、信号発生ユニット12に一定量の外気200を直接的かつ効果的に当て続けることができる。これにより、筐体17内で電源ユニット11などの発熱の影響を受けずに信号発生ユニット12を外気温とほぼ同じに保つことができる。
【0052】
以上のように、本実施形態によると、直流電路の地絡点探査用の交流探査信号を発生させる携帯型地絡点探査信号発生器(信号発生装置10)おいて、装置内部における発熱量と冷却ファン18および開口部173などで構成される冷却機構による冷却能力とが拮抗することにより装置内部温度を外気温とほぼ同じに保つことができる。すなわち、携帯型地絡点探査信号発生器(信号発生装置10)の内部温度、特に環境温度に影響を受けやすい信号発生ユニット12の温度上昇を抑制することができる。これにより、親機は起動してから短時間(およそ数分で)で安定的な交流探査信号を出力することができ、直流電路の地絡点探査を速やかに開始することができるようになる。
【0053】
なお、本実施形態では開口部173および冷却ファン18が互いに対向して配置されているが、本発明はそのような配置に限定されない。信号発生ユニット12を電源ユニット11よりも気流上流側に配置すればよく、開口部173および冷却ファン18の配置位置関係は任意である。例えば、冷却ファン18を筐体17の右側壁部17Rではなく、筐体17の上面、すなわち、フロントパネル105に取り付けてもよい。
【0054】
その他、本発明に係る信号発生装置の冷却機構は上記構成以外にさまざまな変形が可能である。例えば、本発明に係る信号発生装置の冷却機構は、絶縁抵抗を測定するための信号を電路に注入することによって電路の絶縁を測定する絶縁抵抗測定装置などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 信号発生装置(携帯型地絡点探査信号発生器)
11 電源ユニット
12 信号発生ユニット
17 筐体
17L 左側壁部(第2の側壁部)
17R 右側壁部(第1の側壁部)
173 開口部
18 冷却ファン
101 外箱本体部(外箱)
101L 小空間(吸気用の小空間)
101R 小空間(排気用の小空間)
105 フロントパネル(蓋体)
114L スリット
114R スリット
200 外気
図1
図2
図3
図4
図5