(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の歪みセンサの実施の形態を、第一〜第十二実施形態、並びにその他の実施形態として、適宜図面を参照にしつつ詳説する。
【0019】
<第一実施形態>
図1の歪みセンサ1は、略帯状体であり、基材層10、この基材層10の表面に積層されるCNT層11、及び一対の電極12を主に備える。歪みセンサ1は、基材層10とCNT層11とで層構造部分を形成している。
【0020】
基材層10は柔軟性を有する略帯状体である。基材層10のサイズとしては特に限定されず、例えば厚みが10μm以上5mm以下、幅が1mm以上5cm以下、長さが1cm以上20cm以下とすることができる。
【0021】
基材層10の材料としては、柔軟性を有する限り特に限定されず、例えば樹脂、不織布、変形可能な形状又は材質の金属や金属化合物等を挙げることができる。基材層10は、絶縁体又は抵抗値の高い材質である必要があるが、金属等の抵抗値の低い材料を用いる場合はその表面に絶縁層又は抵抗値の高い材料をコーティング等すればよい。これらの中でも、樹脂が好ましく、熱可塑性エラストマーやゴム等のエラストマーがより好ましく、ゴムがさらに好ましい。このような材料を用いることで、基材層10の柔軟性をより高めることができる。
【0022】
前記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー(TPS)、オレフィン系エラストマー(TPO)、塩化ビニル系エラストマー(TPVC)、ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリウレタン系エラストマー(TPU)、ナイロン系エラストマー(TPA)等を挙げることができる。
【0023】
前記ゴムとしては、例えば天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(U)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、シリコーンゴム(Q)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム(CSM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)、フッ素ゴム(FKM)、PDMS等を挙げることができる。これらのゴムの中でも強度等の点から天然ゴムが好ましい。
【0024】
CNT層11は、柔軟性を有する略帯状体である。このCNT層11は、複数のCNT繊維13及びエラストマー14を含む。また、CNT層11は、表面に形成される複数の凹部15を有する。
【0025】
複数のCNT繊維13は、一方向(方向A:歪みセンサ1の幅方向)に配向している。CNT繊維13がこのように配向していることにより、方向Aと異なる方向(例えば、方向B:歪みセンサ1の長手方向)へ歪みが加わった場合に、CNT繊維13同士の接触具合に変化が起こり、抵抗変化を得ることができる。
【0026】
各CNT繊維13は、複数のCNT単繊維からなる。ここで、CNT単繊維とは、1本の長尺のCNTをいう。また、CNT繊維13は、CNT単繊維の端部同士が連結する連結部を有し、網目構造を形成している。複数のCNT繊維がこのように網目構造を形成することで、CNT繊維13同士が密接し、CNT層11の抵抗を下げることができる。なお、前記連結部において、各CNT単繊維同士は分子間力により結合している。
【0027】
また、CNT繊維13は、各CNT単繊維が実質的にCNT繊維13の配向方向に配向され、撚糸されていない状態のものである。このようなCNT繊維13を用いることで、CNT層11の均一性を高め、歪みセンサ1としての線形性を高めることができる。
【0028】
CNT単繊維(CNT)としては、単層のシングルウォールナノチューブ(SWNT)や、多層のマルチウォールナノチューブ(MWNT)のいずれも用いることができるが、導電性及び熱容量等の点から、MWNTが好ましく、直径1.5nm以上100nm以下のMWNTがさらに好ましい。
【0029】
前記CNT単繊維(CNT)は、公知の方法で製造することができ、例えばCVD法、アーク法、レーザーアブレーション法、DIPS法、CoMoCAT法等により製造することができる。これらの中でも、所望するサイズのCNT(MWNT)を効率的に得ることができる点から、鉄を触媒とし、エチレンガスを用いたCVD法により製造することが好ましい。この場合、石英ガラス基板や酸化膜付きシリコン基板等の基板に、触媒となる鉄あるいはニッケル薄膜を成膜した上に、垂直配向成長した所望する長さのCNTの結晶を得ることができる。
【0030】
エラストマー14は、CNT層11を形成する複数のCNT繊維13間に充填されている。すなわち、エラストマー14は、複数のCNT繊維13からなる領域に含浸するように存在している。
【0031】
前記エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーやゴムを挙げることができる。これらの具体例は、基材層10の材料として上述したものを挙げることができる。前記エラストマーの中でも、熱可塑性エラストマーが好ましい。かかる熱可塑性エラストマーを用いることで、例えば後述するようにスタンパーにより凹部15の形成を行うことができるなど、成型性等を高めることができる。
【0032】
CNT層11におけるエラストマー14の含有量としては、CNT繊維13及びエラストマー14の合計質量に対して30質量%以上70質量%以下が好ましい。このような含有量とすることで、CNT繊維13の保護機能、伸縮性、後述する凹部15の成形性等のバランスを図ることができる。
【0033】
CNT層11は、さらに導電性添加剤を含有することができる。CNT層11が導電性添加剤を含有することで、CNT層11の電気抵抗を下げることができる。かかる導電性添加剤としては、特に限定されず、例えばカーボンブラックやカーボン繊維等の炭素系添加剤、金属(銀、銅、アルミニウム等)粉や金属繊維等の金属系添加剤などを挙げることができる。これらの中でも、CNTとの親和性に優れ、CNT層11内で均一に分散することができる炭素系添加剤が好ましい。なお、このようにCNT層11にエラストマー14と共に導電性添加剤を含有させる手段としては、導電性ゴム系接着剤の塗布等を挙げることができる。
【0034】
複数の凹部15は、それぞれ歪みセンサ1の長手方向(方向B)に略垂直な方向(方向A)に直線状に形成される凹溝である。複数の各凹部15(凹溝)は、略等間隔に形成される。したがって、直線状の凹部15は、方向Aに配向されたCNT繊維13の配向方向と略平行な方向に形成されている。CNT層11にこのような凹部15が形成されていることで、層構造部分においてこの凹部15が形成されている領域(平面視における領域)が、他の領域と剛性が異なる(他の領域より剛性が低い)異剛性領域となる。そのため、凹部15が形成された領域(異剛性領域)でCNT層11の伸縮や開裂が優先的に生じる。なお、CNT繊維13は、方向Bとは異なる方向で歪みセンサ1として機能するので、方向Aに配向されなくてもよい。その場合は、CNT繊維13と凹部15は交差することになり、当該センサ1の感度やセンシング部位を調整することができる。
【0035】
前記凹部15の断面形状としては、特に限定されず、矩形状、U字状、V字状とすることができる。これらの中でも、応力をより集中させるためには、U字状又はV字状が好ましく、V字状がさらに好ましい。
【0036】
前記凹部15の深さとしては、特に制限されず、例えば、CNT層11の厚さの1/10以上99/100以下とすることができる。このような深さの凹部15を形成することで、この位置での効果的な伸縮等を生じさせつつ、CNT層11の強度の低下を抑えることができる。また、歪みセンサ1の伸縮時にはCNT層11の凹部15の下の部分が変形することになるが、当該部分の上方は空間であるため、歪みセンサ1を伸ばした時に、当該センサ1が厚さ方向へ縮んで抵抗値が逆に低下することを防ぐことをできる。
【0037】
前記凹部15同士の間隔も、特に制限されないが、例えば、10μm以上5mm以下とすることができ、50μm以上1mm以下が好ましい。このような間隔で凹部15を配置することで、より感度やその線形性を高めることなどができる。当該歪みセンサ1の意図的に伸縮させたい部分で、凹部15の数を増やすこともできる。すなわち、凹部15を等間隔で配置してもよいし、不規則な間隔で配置してもよい。さらに、凹部15の方向Bへの幅を部分的に変更したり、当該深さを変更することで、当該歪みセンサ1内での伸縮具合を調整することもできる。また、凹部15を複数個配置しているが、伸縮量が小さくてもよい場合には、一つであってもよい。
【0038】
CNT層11の幅の下限としては、1mmが好ましく、1cmがより好ましい。一方、CNT層11の幅の上限としては、10cmが好ましく、5cmがより好ましい。このようにCNT層11の幅を比較的大きくすることで、CNT層11の抵抗値を下げ、かつ、この抵抗値のバラツキも低減することができる。
【0039】
CNT層11の厚みとしては、特に限定されない。例えば、CNT層11の平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、10μmがさらに好ましい。一方、CNT層11の平均厚みの上限としては、5mmが好ましく、1mmがさらに好ましい。CNT層11の平均厚みが前記下限未満の場合は、このような薄膜の形成が困難になるおそれや、抵抗が上昇しすぎるおそれがある。逆に、CNT層11の平均厚みが前記上限を超える場合は、歪みに対する感受性が低下するおそれがある。
【0040】
一対の電極12は、基材層10の表面の長手方向B(CNT繊維11Aの配向方向(方向A)と略垂直な方向)の両端部分に積層され、CNT層11の両端と電気的に接続されている。このとき、CNT繊維13を含むCNT層11において、CNT繊維13の一部と電極12とが接続されることになる。このようにCNT繊維13の配向方向(方向A)と一対の電極12の対向方向(方向B)とが異なることで、一対の電極12の対向方向(方向B)へ歪みが加わった場合に、CNT繊維13同士の接触具合に変化が起こり、歪みセンサ1をして抵抗変化を得ることができる。なお、より効率よく歪みを検出するためには、各凹部15と一対の電極12の対向方向(方向B)とは、略垂直(例えば80°以上100°以下)が好ましく、垂直であることがより好ましい。また、各凹部15はCNT繊維13の配向方向(方向A)と略平行に配置されていることが好ましい。
【0041】
電極12を形成する材料としては、導電性を有する限り特に限定されないが、導電性接着剤により形成することが好ましい。導電性接着剤を用いることで、基材層10とCNT層11との固着性を高めることができる。さらに、導電性接着剤を用いることで、CNT層11表面に塗布した際、この導電性接着剤が含浸し、CNT層11と接着剤(電極12)とを容易に接触させることができる。
【0042】
CNT層11と電極12との接続部分表面には、固定部材16が積層されている。歪みセンサ1が固定部材16を備えることで、CNT層11と電極12との固着性を高め、性能持続性を高めることができる。固定部材16を形成する材料としては、特に限定されず、樹脂、好ましくは熱可塑性エラストマーやゴム等のエラストマーなどを用いることができる。
【0043】
当該歪みセンサ1によれば、CNT層11に上述のような凹部15が形成されているため、CNT層11の厚さが一対の電極12の対向方向(方向B)に沿って大小交互に変化している。すなわち、一対の電極12間の層構造部分(基材層10とCNT層11との層構造)において、前記凹部15が形成されている領域が、他の領域より剛性の低い異剛性領域となっている。この結果、前記層構造部分の剛性は、前記一対の電極12の対向方向(方向B)に沿ってサインカーブ的に(大小交互に)変化している。従って、当該歪みセンサ1は、CNT層11において、歪みに対して剛性の低い領域(凹部15が形成されている領域)が優先的に伸縮又は開裂することとなる。このように、当該歪みセンサ1は、歪みに対して伸縮又は開裂する領域を固定しているため、測定毎に異なる領域が伸縮又は開裂することが抑制され、その結果、感度の線形性や再現性が高い。
【0044】
(製造方法)
当該歪みセンサ1の製造方法の一例を
図2を参照に説明する。
【0045】
(1−1)スライドガラス20をラテックスや樹脂溶液に浸漬し、その後乾燥させる。乾燥時間としては、例えば常温で8時間程度とすることができる。このようにすることで、スライドガラス20両面に樹脂製の被膜21が形成される(
図2(a)参照)。この被膜21が、平面視矩形状の基材層10となる。なお、スライドガラス20以外の他の板材を用いてもよい。
【0046】
(1−2)次いで、被膜21を形成したスライドガラス20の幅方向にCNT繊維22を巻き付けていき、CNT繊維層23を被膜21上に形成する(
図2(b)参照)。なお、CNT繊維22は、CVD法により基板上に垂直配向成長したCNT単繊維(CNT)の結晶を撚糸せずにそのまま引き出すことで得ることができる。このようにして得られたCNT繊維は、複数のCNT単繊維からなり、このCNT短繊維同士が長手方向に連結する連結部を有する構造となっている。
【0047】
CNT繊維22を巻き付けた後、エタノール等の溶媒をCNT繊維22に噴霧又は浸漬させ、その後乾燥させることが好ましい。この操作を経ることでCNT層11と被膜21(基材層10)との密着性を高めることができると共に、CNT繊維22を高密度化することができる。このようにCNT繊維22を高密度化することによって、CNT繊維22同士の接触面積をあらかじめ増やすことができ、後述するCNT層24(CNT層11)の抵抗を下げて消費電力を下げる効果と、歪みを加えた時に抵抗変化の感度を高める効果を得ることができる。また、CNT単繊維の結晶から引き出したCNT繊維はミクロ(顕微鏡で観察)ではCNT繊維同士が複雑に絡んでいるが、マクロ(肉眼で観察)ではCNT繊維は一方向へ配向しているように確認できる。本願においては前記マクロでの配向によって当該効果を得ることができる。
【0048】
(1−3)CNT繊維層23の表面に希釈した導電性弾性接着剤を塗布し、乾燥させることでCNT層24を形成する(
図2(c)参照)。前記導電性弾性接着剤としては、熱可塑性エラストマー25及び導電性添加剤を含有するものを用いることができる。この希釈した導電性接着剤の固形分濃度としては5質量%以上10質量%以下が好ましい。また、この塗布は複数回(例えば2回)行ってもよい。このようにすることで、導電性接着剤に含まれる熱可塑性エラストマー25と導電性添加剤とがCNT繊維層23中に含浸したCNT層24が形成される。後述のスタンパー26による成形が可能になる程度まで当該エラストマー等の含有率を増やすために、熱可塑性エラストマー25及び導電性添加剤の塗布回数を調整することができる。
【0049】
また、CNT層24は、CNT繊維22の巻き付け及び導電性弾性接着剤の塗布による形成に代えて、別途形成したCNT層24を被膜21上に積層させて形成してもよい。
【0050】
(1−4)次いで、スタンパー26を用いてCNT層24の表面に凹部27を形成する(
図2(d)参照)。このスタンパー26には、複数の直線状の凸部26Aが平行に形成されている。この凸部26Aの方向が歪みセンサ1の長手方向(方向B)に略垂直な方向と同じになるようにスタンパー26をCNT層24の表面に押し当てる。このようにスタンパー26をCNT層24の表面に押し当てた状態で加熱する。CNT層24には、熱可塑性エラストマー25が含浸しているため、スタンパー26の凸部26A形状が転写され、CNT層24の表面に凹部27が形成される。スタンパー26の凸部26Aは、例えばエッチング等により形成することができる。
【0051】
(1−5)次いで、電極28及び固定部材29を積層させる(
図2(e)参照)。具体的には、先ず、被膜21及びCNT層24の長手方向両端部分に導電性ゴムを塗布し、乾燥させることで電極28を形成する。この乾燥は、例えば常温で1時間程度でよい。次に、CNT層24と電極28との境界部分表面に弾性接着剤(エラストマーを含む接着剤)やラテックスを塗布する。その後、これらを硬化又は乾燥させることで、固定部材29が形成される。
【0052】
この後、積層体をスライドガラス20から切り出し、周辺部分等を除去することで、歪みセンサ1を得ることができる。なお、歪みセンサ1の製造方法は、前記製造方法に限定されるものではない。例えば、上述のように板状のスタンパー26により形状を転写させる方法以外にも、例えばローラ等を用いた形状の転写であってもよい。また、CNT層24に対して導電性弾性接着剤を塗布した後の乾燥前の状態でスタンパー26を押し当てることで形状を転写させてもよい。
【0053】
<第二実施形態>
図3の歪みセンサ3は、略帯状体であり、基材層10、この基材層10の表面に積層されるCNT層31、このCNT層31の表面に積層される保護層36及び一対の電極32を主に備える。歪みセンサ3は、基材層10、CNT層31及び保護層36で層構造部分を形成している。
【0054】
基材層10は、
図1の歪みセンサ1と同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
CNT層31は、柔軟性を有する略帯状体である。このCNT層31は、複数のCNT繊維13から形成されている。複数のCNT繊維13は、一方向(方向A:歪みセンサ3の幅方向)に配向している。CNT繊維13は、
図1の歪みセンサ1と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
CNT層31の表面及び裏面は略平坦であり、略均一の厚みからなる。CNT層31の厚みとしては、特に限定されない。例えば、CNT層31の平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、10μmがさらに好ましい。一方、CNT層31の平均厚みの上限としては、5mmが好ましく、1mmがさらに好ましい。CNT層31の幅としては、
図1のCNT層11と同程度である。
【0057】
保護層36は、CNT層31及び電極32の一部を被覆している。なお、一対の電極32の一部は、保護層36に被覆されず、露出している部分を有する。このように保護層36を積層することで、前記保護層36がCNT層31を保護する。
【0058】
保護層36の材質としては、柔軟性を有する限り特に制限されず、基材層10と同様の材質を挙げることができる。但し、保護層36の材質としては、樹脂が好ましく、エラストマー(熱可塑性エラストマーやゴム等)がより好ましい。
【0059】
保護層36は、水性エマルジョンから形成されていることが好ましい。水性エマルジョンとは、分散媒の主成分が水であるエマルジョンをいう。CNTは疎水性が高い。そのため、前記保護層36を水性エマルジョンから形成すると、例えば塗工や浸漬によりこの保護層36を設けた場合、保護層36がCNT層31に含浸せずにCNT層31表面に積層された状態とすることができる。このようにすることで、保護層36を形成する樹脂がCNT層31にしみ込んで、CNT層31の抵抗変化に影響を及ぼすことを抑制し、保護層36の存在によるCNT層31の歪み感受性の低下を抑えることができる。
【0060】
前記水性エマルジョンの分散媒の主成分は、水であるが、その他の例えばアルコール等の親水性分散媒が含有されていてもよい。また、前記エマルジョンの分散質としては、通常樹脂であり、上述したゴムや熱可塑性エラストマー、特には天然ゴムが好ましい。この好ましいエマルジョンは、分散媒を水とし、ゴムを分散質とするするいわゆるラテックスが挙げられ、天然ゴムラテックスが好ましい。天然ゴムラテックスを用いることで、薄くかつ強度のある保護膜を形成することができる。
【0061】
保護層36は、表面に形成される複数の凹部37を有する。各凹部37は、それぞれ歪みセンサ3の長手方向(方向B)に略垂直な方向に直線状に形成される凹溝である。複数の凹部37(凹溝)は、歪みセンサ3の長手方向(方向B)に略等間隔に形成されている。保護層36にこのような凹部37が形成されていることで、層構造部分においてこの凹部37が形成されている領域(平面視における領域)が、他の領域と剛性が異なる(低下している)異剛性領域となる。そのため、凹部37が形成された領域(異剛性領域)の剛性が低下し、この領域で伸縮や開裂が優先的に生じる。なお、保護層36とCNT層31とは固着しており、保護層36の特定領域(凹部37)の優先的な伸縮と共に、その領域に位置するCNT層31の領域が伸縮又は開裂することとなる。
【0062】
凹部37の断面形状、深さ、間隔は、
図1の歪みセンサ1の凹部15と同様である。
【0063】
保護層36の平均厚みとしては、特に限定されず、例えば10μm以上3mm以下とすることができる。
【0064】
一対の電極32は、基材層10の表面側の長手方向Bの両端部分に配設され、CNT層31の両端と接続されている。具体的には、各電極32は、基材層10の表面の長手方向Bの両端部分に配設される一対の第一導電層38の表面にそれぞれ配設されている。
【0065】
各第一導電層38は、CNT層31と電極32との電気的な接続性を高めている。第一導電層38を形成する材料としては、導電性を有する限り特に限定されず、例えば導電性ゴム系接着剤等を用いることができる。第一導電層38としてこのように接着剤を用いることで、基材層10、電極32及びCNT層31の両端の固着性を高めることができる。
【0066】
電極32は、帯状形状を有している。一対の電極32は、基材層10の幅方向に互いに平行に配設されている。電極32を形成する材料としては、特に限定されず、例えば銅、銀、アルミニウム等の金属等を用いることができる。
【0067】
電極32の形状としては、特に限定されず、例えば膜状、板状、メッシュ状等とすることができるが、メッシュ状が好ましい。このようにメッシュ状の電極32を用いることで第一導電層38や後述する第二導電層39との密着性及び固着性を高めることができる。このようなメッシュ状の電極32としては、金属メッシュや、不織布に金属を蒸着又はスパッタさせたものを用いることができる。なお、電極32としては、導電性接着剤の塗布等によって形成したものであってもよい。
【0068】
CNT層31の両端部分と一対の電極32との境界部分表面には、それぞれ第二導電層39が積層されている。一対の第二導電層39は、一対の第一導電層38と共に電極32及びCNT層31の両端部分を挟持している。各第二導電層39は、第一導電層38と同様、電極32とCNT層31との電気的な接続性を高めている。第二導電層39を形成する材料としては、導電性を有する限り特に限定されず、例えば導電性ゴム系接着剤等を用いることができる。第二導電層39としてこのように接着剤を用いることで、電極32及びCNT層31の両端の固着性を高めることができる。
【0069】
当該歪みセンサ3によれば、CNT層31表面に積層された保護層36に上述のような凹部37が形成されているため、保護層36の厚さが一対の電極32の対向方向(方向B)に沿って大小交互に変化している。すなわち、一対の電極32間の層構造部分(基材層10とCNT層31と保護層36とからなる層構造)において、前記凹部37が形成されている領域が、他の領域より剛性の低い異剛性領域となっている。この結果、前記層構造部分の剛性は、前記一対の電極32の対向方向(方向B)に沿ってサインカーブ的に(大小交互に)変化している。従って、当該歪みセンサ3によれば、歪みに対して剛性の低い領域(凹部37が形成されている領域)に対応するCNT層31の特定部分が優先的に伸縮又は開裂することとなる。このように、当該歪みセンサ3は、歪みに対して伸縮又は開裂する領域を固定しているため、測定毎に異なる領域が伸縮又は開裂することが抑制され、その結果、感度の線形性や再現性が高い。
【0070】
(製造方法)
歪みセンサ3の製造方法としては、特に限定されないが、例えば以下の製造工程で製造することができる。
【0071】
(2−1)第一実施形態と同様、スライドガラスをラテックスや樹脂溶液に浸漬し、その後乾燥させる。このようにすることで、スライドガラス両面に樹脂製の平面視矩形状の被膜(基材層10)を形成することができる。
【0072】
(2−2)この基材層10の長手方向両端部分に導電性ゴム系接着剤を塗布し、一対の第一導電層38を形成する。次いで、各第一導電層38の表面に電極32を積層させる。
【0073】
(2−3)次いで、第一実施形態と同様、CNT繊維13をスライドガラス(基材層10)上の電極32間に巻き付けていき、CNT層31を形成する。このようにすることで、一方向(一対の電極32の対向方向と略垂直方向)に配向する複数のCNT繊維13からなるCNT層31を得ることができる。なお、第一実施形態と同様、CNT繊維13の巻き付け後、例えばイソプロピルアルコールやエタノール等の溶媒をCNT層31に噴霧するか、又はこの溶媒に浸した後、乾燥させることが好ましい。
【0074】
(2−4)このCNT層31の長手方向両端部分に、電極32の一部を露出するように導電性ゴム系接着剤を塗布し、一対の第二導電層39を形成する。
【0075】
(2−5)次いで、CNT層31の表面にラテックスを塗布することなどで保護層36を形成する。このようにラテックスを用いることで、保護層36をCNT層31表面に積層させることができる。なお、この際、電極32の一部は露出するように保護層36を形成する。ラテックスは上述のとおり水性エマルジョンであり、親水性を有する。
【0076】
(2−6)次いで、第一実施形態(1−4)と同様に、スタンパー等を用いて保護層36の表面に凹部37を形成する。このようにした後、スライドガラスから切り出し、周辺部分等を除去することで、歪みセンサ3を得ることができる。
【0077】
<第三実施形態>
図4の歪みセンサ4は、基材層10、この基材層10の表面に積層されるCNT層41、及び一対の電極12を主に備える。歪みセンサ4は、基材層10とCNT層41とで層構造部分を形成している。基材層10及び電極12は
図1の歪みセンサ1と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。また、歪みセンサ4は、
図1の歪みセンサ1と同様に、CNT層41と電極12との接続部分表面に、固定部材16が積層されている。
【0078】
CNT層41は、柔軟性を有する略帯状体である。このCNT層41は、複数のCNT繊維13及びエラストマー14を含む。また、CNT層41は、表面に形成される複数の凸部45を有する。CNT層41は、凹部15の代わりに複数の凸部45を有すること以外は
図1の歪みセンサ1のCNT層11と同様であるので、他の説明は省略する。
【0079】
各凸部45は、直線状に形成される凸条である。各凸部45(凸条)は、CNT繊維13の配向方向に平行に、かつ略等間隔に形成されている。CNT層41表面にこのような凸部45が形成されていることで、層構造部分においてこの凸部45が形成されている領域(平面視における領域)が、他の領域と剛性が異なる(他の領域より剛性が高い)異剛性領域となる。そのため、凸部45が形成された領域(異剛性領域)以外の領域(凸部45間)で伸縮や開裂が優先的に生じる。また、この凸部45は、CNT層41本体(CNT繊維13)の保護機能も有する。
【0080】
前記凸部45の材質としては、特に限定されないが、成形性等の点から樹脂が好ましい。前記樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド等を挙げることができる。
【0081】
前記凸部45は、導電性を有していてもよい。凸部45が導電性を有する場合、凸部45が形成されている部分では、この凸部45に優先的に電流が流れる。このため変形が小さい部分(凸部45が形成されている部分)の抵抗値を下げることができ、全体として歪みセンサ4の感度を上げることができる。なお、例えば、導電性添加剤を添加した樹脂により凸部45を形成することで、凸部45に導電性をもたせることができる。
【0082】
前記凸部45同士の間隔としては、特に制限されないが、例えば、10μm以上5mm以下とすることができ、50μm以上1mm以下が好ましい。このような間隔で凸部45を配置することで、より感度やその線形性を高めることなどができる。
【0083】
当該歪みセンサ4によれば、CNT層41に上述のような凸部45が形成されているため、CNT層41の厚さが一対の電極12の対向方向に沿って大小交互に変化している。すなわち、一対の電極12間の層構造部分(基材層10とCNT層41との層構造)において、前記凸部45が形成されている領域が、他の領域より剛性の高い異剛性領域となっている。この結果、前記層構造部分の剛性は、前記一対の電極12の対向方向に沿ってサインカーブ的に(大小交互に)変化している。従って、当該歪みセンサ4は、CNT層41において、歪みに対して剛性の低い領域(凸部45の間の領域)が優先的に伸縮又は開裂することとなる。このように、当該歪みセンサ4は、歪みに対して伸縮又は開裂する領域を固定しているため、測定毎に異なる領域が伸縮又は開裂することが抑制され、その結果、感度の線形性や再現性が高い。
【0084】
当該歪みセンサ4は、
図1の歪みセンサ1の製造方法を参照に製造することができる。凹部15の代わりの凸部45の形成方法としては、CNT層41を形成した後、例えば樹脂製の凸部を形成すればよい。この凸部45の形成には、ディスペンサー等を用いることができる。
【0085】
<第四実施形態>
図5の歪みセンサ5は、基材層10、この基材層10の表面に積層されるCNT層31、このCNT層31の表面に積層される保護層57、及び一対の電極32を主に備える。歪みセンサ5は、基材層10、CNT層31及び保護層57で層構造部分を形成している。保護層57以外は、
図3の歪みセンサ3と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
保護層57は、表面に形成される複数の凸部58を有する。各凸部58は、直線状に形成される凸条である。複数の凸部58(凸条)は、CNT繊維13の配向方向に平行に、かつ略等間隔に形成されている。保護層57にこのような凸部58が形成されていることで、層構造部分においてこの凸部58が形成されている領域(平面視における領域)が、他の領域と剛性が異なる(他の領域より剛性が高い)異剛性領域となる。そのため、凸部58が形成された領域(異剛性領域)以外の領域(凸部間)で伸縮や開裂が優先的に生じる。なお、保護層57とCNT層31とは固着しており、保護層57の特定領域(凸部58間)の伸縮と共に、その領域に位置するCNT層31の領域が伸縮又は開裂することとなる。
【0087】
保護層57は、凹部37の代わりに凸部58を有すること以外は、
図3の歪みセンサ3の保護層36と同様であるので、他の説明は省略する。
【0088】
当該歪みセンサ5によれば、CNT層31表面に積層された保護層57に上述のような凸部58が形成されているため、保護層57の厚さが一対の電極32の対向方向に沿って大小交互に変化している。すなわち、一対の電極32間の層構造部分(基材層10とCNT層31と保護層57とからなる層構造)において、前記凸部58が形成されている領域が、他の領域より剛性の高い異剛性領域となっている。この結果、前記層構造部分の剛性は、前記一対の電極32の対向方向に沿ってサインカーブ的に(大小交互に)変化している。従って、当該歪みセンサ5によれば、歪みに対して剛性の低い領域(凸部58の間の領域)に対応するCNT層31の特定部分が優先的に伸縮又は開裂することとなる。このように、当該歪みセンサ5は、歪みに対して伸縮又は開裂する領域を固定しているため、測定毎に異なる領域が伸縮又は開裂することが抑制され、その結果、感度の線形性や再現性が高い。
【0089】
当該歪みセンサ5は、
図3の歪みセンサ3の製造方法を参照に製造することができる。凹部37の代わりの凸部58の形成は、
図4の歪みセンサ4と同様にディスペンサー等により行うことができる。
【0090】
<第五実施形態>
図6の歪みセンサ6は、基材層60、この基材層60の表面に積層されるCNT層61、及び一対の電極12を主に備える。歪みセンサ6は、基材層60及びCNT層61で層構造部分を形成している。基材層60及びCNT層61以外は、
図1の歪みセンサ1と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
基材層60は、裏面に形成された複数の凹部65を有する。凹部65は、
図1の歪みセンサ1の凹部15と同様に、歪みセンサ6の長手方向(方向B)に略垂直な方向(方向A)に直線状に形成される凹溝である。この凹部65は、CNT繊維13の配向方向と略平行な方向に形成されている。
【0092】
CNT層61は、柔軟性を有する略帯状体である。このCNT層61は、複数のCNT繊維13及びエラストマー14を含む。このCNT層61は、凹部15が形成されていない以外は
図1の歪みセンサ1のCNT層11と同様であるので、他の説明は省略する。
【0093】
当該歪みセンサ6によれば、基材層60に上述のような凹部65が形成されているため、CNT層61の厚さが一対の電極12の対向方向(方向B)に沿って大小交互に変化している。すなわち、一対の電極12間の層構造部分(基材層60とCNT層61との層構造)において、凹部65が形成されている領域が、他の領域より剛性の低い異剛性領域となっている。この結果、前記層構造部分の剛性は、一対の電極12の対向方向(方向B)に沿ってサインカーブ的に(大小交互に)変化している。従って、当該歪みセンサ6は、CNT層61において、歪みに対して剛性の低い領域(凹部65が形成されている領域)が優先的に伸縮又は開裂することとなる。このように、当該歪みセンサ6は、歪みに対して伸縮又は開裂する領域を固定しているため、測定毎に異なる領域が伸縮又は開裂することが抑制され、その結果、感度の線形性や再現性が高い。
【0094】
当該歪みセンサ6は、
図1の歪みセンサ1の製造方法を参照に製造することができる。凹部65の形成は、歪みセンサ6を形成するときに用いる被膜21を形成するライドガラス20(
図2)の表面に凸部を設けておくことにより形成することができる。
【0095】
<第六実施形態>
図7の歪みセンサ6Aは、基材層60、この基材層60の表面に積層されるCNT層61、基材層60の裏面に積層されるアシスト基板60A、及び一対の電極12を主に備える。この歪みセンサ6Aは、基材層60、CNT層61及びアシスト基板60Aで層構造部分を形成している。アシスト基板60Aを設けたこと以外は、
図6の歪みセンサ6と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0096】
アシスト基板60Aは、基材層60の裏面において、凹部65を覆うように形成されている。このアシスト基板60Aの材質としては、柔軟性を有する限り特に制限されず、基材層60と同様の材質を挙げることができる。但し、アシスト基板60Aの材質としては、樹脂が好ましく、エラストマー(熱可塑性エラストマーやゴム等)がより好ましい。
【0097】
アシスト基板60Aは、
図3の歪みセンサ3の保護層36と同様な理由から水性エマルジョンから形成されていることが好ましい。
【0098】
アシスト基板60Aは、基材層60とヤング率が異なる部材として形成してもよい。この場合のアシスト基板60Aの材質としては、ヤング率の設計条件に合わせて適宜選択することが可能であり、合成樹脂やゴム等の他、織布、不織布、ニット等を用いることができる。特にアシスト基板60Aとしてニットを用いた場合、基材層60をニットの繊維層に全体的又は部分的に含浸させることができる。そうすることによって、ニットと基材層60との接合強度が高まり、さらにニットが歪みセンサ6Aの伸び切りを抑制する役目も果たす。
【0099】
アシスト基板60Aのヤング率を基材層60よりも低くする場合、基材層60のヤング率に対するアシスト基板60Aのヤング率の比の上限としては、0.9が好ましく、0.7がより好ましい。前記ヤング率の比が前記上限を超える場合、アシスト基板60Aによる歪みセンサ6Aの動きに対する追従性上昇効果が十分得られないおそれがある。一方、基材層60のヤング率に対するアシスト基板60Aのヤング率の比の下限としては、0.4が好ましく、0.5がより好ましい。前記ヤング率の比が前記下限未満の場合、アシスト基板60Aと基材層60とが伸縮によって剥離し易くなるおそれがある。
【0100】
アシスト基板60Aのヤング率を基材層60よりも高くする場合、基材層60のヤング率に対するアシスト基板60Aのヤング率の比の上限としては、2.5が好ましく、2.0がより好ましい。前記ヤング率の比が前記上限を超える場合、当該歪みセンサ6Aが変形しにくくなって、センサ感度が低下するおそれがある。一方、基材層60のヤング率に対するアシスト基板60Aのヤング率の比の下限としては、1.1が好ましく、1.5がより好ましい。前記ヤング率の比が前記下限未満の場合、アシスト基板60Aによる歪みセンサ6Aの伸縮率調整効果が十分得られないおそれがある。
【0101】
アシスト基板60Aの平均厚みとしては特に限定されないが、例えば10μm以上1000μm以下とすることができる。
【0102】
当該歪みセンサ6Aによれば、
図6の歪みセンサ6と同様な効果を奏する。歪みセンサ6Aはさらに、基材層60の裏面に凹部65を覆うようにアシスト基板60Aを設けることで凹部65をきっかけとして基材層60が裂けてしまうことを抑制することができる。
【0103】
<第七実施形態>
図8の歪みセンサ7Aは、基材層10、この基材層10の表面に積層されるCNT層71A及び一対の電極12を主に備える。この歪みセンサ7Aは、基材層10及びCNT層71Aで層構造部分を形成している。CNT層71A以外は、
図1の歪みセンサ1と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0104】
CNT層71Aは、柔軟性を有する略帯状体である。このCNT層71Aは、複数のCNT繊維73A及びエラストマー74Aを含む。また、CNT層71Aは、表面に形成される複数の凹部75Aを有する。
【0105】
複数のCNT繊維73Aは、一方向(方向B:歪みセンサ7Aの長手方向)に配向している。CNT繊維73Aがこのように配向していることにより、方向A(歪みセンサ7Aの幅方向)へ歪みが加わった場合にCNT繊維73A同士の接触具合に変化が起こり、抵抗変化を得ることができる。また、CNT繊維73A含むCNT層71Aにおいて、CNT繊維73Aの一部と電極12とが接続されることになる。
【0106】
当該歪みセンサ7Aによれば、
図1の歪みセンサ1とはCNT繊維73Aの配向方向が異なっているが、CNT層71Aに凹部75Aが形成されることで、
図1の歪みセンサ1と同様に、CNT層71Aにおいて、歪みに対して剛性の低い領域(凹部75Aが形成されている領域)が優先的に伸縮又は開裂することとなる。このように、当該歪みセンサ7Aは、歪みに対して伸縮又は開裂する領域を固定しているため、測定毎に異なる領域が伸縮又は開裂することが抑制され、その結果、感度の線形性や再現性が高い。
図8では、凹部75Aによって長手方向に分断されているCNT繊維73Aがあるが、凹部75AによってCNT繊維73Aは分断されなくてもよい。CNT繊維73Aよりも歪みセンサ7Aの表面側にあるエラストマー74Aにだけ、凹部75Aを形成しても同様の効果を得られる。また、凹部75Aを形成する際の圧力によって、凹部75Aの下の部分のCNT膜71Aが薄くなってもよい。このように、凹部75Aを深く形成しても、CNT繊維73Aが分断されないので、CNT膜71Aの抵抗値を下げることなく、歪みセンサ7Aの長手方向に大きな剛性分布を形成することができる。
【0107】
<第八実施形態>
図9の歪みセンサ7Bは、略帯状体であり、基材層10、この基材層10の表面に積層されるCNT層71B、このCNT層71Bの表面に積層される保護層36及び一対の電極32を主に備える。この歪みセンサ7Bは、基材層10、CNT層71B及び保護層36で層構造部分を形成している。CNT層71B以外は、
図3の歪みセンサ3と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0108】
CNT層71Bは、柔軟性を有する略帯状体である。このCNT層71Bは、複数のCNT繊維73B及びエラストマー74Bを含む。
【0109】
複数のCNT繊維73Bは、一方向(方向B:歪みセンサ7Bの長手方向)に配向している。CNT繊維73Bがこのように配向していることにより、方向A(歪みセンサ7Bの幅方向)へ歪みが加わった場合に、CNT繊維73B同士の接触具合に変化が起こり、抵抗変化を得ることができる。
【0110】
当該歪みセンサ7Bによれば、
図3の歪みセンサ3とはCNT繊維73Bの配向方向が異なっているが、保護層36に凹部37が形成されることで、
図3の歪みセンサ3と同様に、CNT層71Bにおいて、歪みに対して剛性の低い領域(凹部37が形成されている領域)が優先的に伸縮又は開裂することとなる。このように、当該歪みセンサ7Bは、歪みに対して伸縮又は開裂する領域を固定しているため、測定毎に異なる領域が伸縮又は開裂することが抑制され、その結果、感度の線形性や再現性が高い。
【0111】
<第九実施形態>
図10の歪みセンサ7Cは、略帯状体であり、基材層10、この基材層10の表面に積層されるCNT層71C、及び一対の電極12を主に備える。歪みセンサ7Cは、基材層10とCNT層71Cとで層構造部分を形成している。CNT層71C以外は、
図4の歪みセンサ4と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0112】
CNT層71Cは、柔軟性を有する略帯状体である。このCNT層71Cは、複数のCNT繊維73C及びエラストマー74Cを含む。このCNT層71Cは、表面に形成された複数の凸部45を有する。
【0113】
複数のCNT繊維73Cは、一方向(方向B:歪みセンサ7Cの長手方向)に配向している。CNT繊維73Cがこのように配向していることにより、方向A(歪みセンサ7Cの幅方向)へ歪みが加わった場合に、CNT繊維73C同士の接触具合に変化が起こり、抵抗変化を得ることができる。
【0114】
当該歪みセンサ7Cによれば、
図4の歪みセンサ4とはCNT繊維73Cの配向方向が異なっているが、CNT層71Cに凸部45が形成されることで、
図4の歪みセンサ4と同様に、CNT層71Cにおいて、歪みに対して剛性の低い領域(凸部45の間の領域)が優先的に伸縮又は開裂することとなる。このように、当該歪みセンサ7Cは、歪みに対して伸縮又は開裂する領域を固定しているため、測定毎に異なる領域が伸縮又は開裂することが抑制され、その結果、感度の線形性や再現性が高い。
【0115】
<第十実施形態>
図11の歪みセンサ7Dは、基材層10、この基材層10の表面に積層されるCNT層71D、このCNT層71Dの表面に積層される保護層57、及び一対の電極32を主に備える。歪みセンサ7Dは、基材層10、CNT層71D及び保護層57で層構造部分を形成している。CNT層71D以外は、
図5の歪みセンサ5と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0116】
CNT層71Dは、柔軟性を有する略帯状体である。このCNT層71Dは、及び複数のCNT繊維73Dを含む。
【0117】
複数のCNT繊維73Dは、一方向(方向B:歪みセンサ7Dの長手方向)に配向している。CNT繊維73Dがこのように配向していることにより、方向A(歪みセンサ7Dの幅方向)へ歪みが加わった場合に、CNT繊維73D同士の接触具合に変化が起こり、抵抗変化を得ることができる。
【0118】
当該歪みセンサ7Dによれば、
図5の歪みセンサ5とはCNT繊維73Dの配向方向が異なっているが、保護層57に凸部58が形成されることで、
図5の歪みセンサ5と同様に、CNT層71Dにおいて、歪みに対して剛性の低い領域(凸部45の間の領域)が優先的に伸縮又は開裂することとなる。このように、当該歪みセンサ7Dは、歪みに対して伸縮又は開裂する領域を固定しているため、測定毎に異なる領域が伸縮又は開裂することが抑制され、その結果、感度の線形性や再現性が高い。
【0119】
<第十一実施形態>
図12の歪みセンサ7Eは、基材層60、この基材層60の表面に積層されるCNT層71E、及び一対の電極12を主に備える。歪みセンサ7Eは、基材層60及びCNT層71Eで層構造部分を形成している。CNT層71E以外は、
図6の歪みセンサ6と同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0120】
CNT層71Eは、柔軟性を有する略帯状体である。このCNT層71Eは、複数のCNT繊維73E及びエラストマー74Eを含む。
【0121】
複数のCNT繊維73Eは、一方向(方向B:歪みセンサ7Eの長手方向)に配向している。CNT繊維73Eがこのように配向していることにより、方向A(歪みセンサ7Eの幅方向)へ歪みが加わった場合に、CNT繊維73E同士の接触具合に変化が起こり、抵抗変化を得ることができる。
【0122】
当該歪みセンサ7Eによれば、
図6の歪みセンサ6とはCNT繊維73Eの配向方向が異なっているが、基材層60に凹部65が形成されることで、
図6の歪みセンサ6と同様に、CNT層71Eにおいて、歪みに対して剛性の低い領域(凹部65が形成されている領域)が優先的に伸縮又は開裂することとなる。このように、当該歪みセンサ7Eは、歪みに対して伸縮又は開裂する領域を固定しているため、測定毎に異なる領域が伸縮又は開裂することが抑制され、その結果、感度の線形性や再現性が高い。
【0123】
<第十二実施形態>
図13の歪みセンサ7Fは、基材層60、この基材層60の表面に積層されるCNT層71E、一対の電極12、及びアシスト基板60Aを主に備える。歪みセンサ7Fは、基材層60、CNT層71E及びアシスト基板60Aで層構造部分を形成している。アシスト基板60Aを設けた以外は
図12の歪みセンサ7Eと同様であるので同一の符号を付して説明を省略する。
【0124】
当該歪みセンサ7Fによれば、
図12の歪みセンサ7Eと同様な効果を奏する。歪みセンサ7Fはさらに、基材層60の裏面に凹部65を覆うようにアシスト基板60Aを設けることで、凹部65をきっかけとして基材層60が裂けてしまうことを抑制することができる。
【0125】
<その他の実施形態>
本発明の歪みセンサは前記実施形態に限定されるものではない。例えば、
図14(a)〜
図14(c)の歪みセンサ8A、8B、8CのようにCNT繊維83A、83B、83Cの配向方向と垂直に直線状の凸部又は凹部85A、85B、85Cをさらに形成していてもよい。例えば、両端部分に直線状の凸部85Aを形成することで、伸びたときの形状の安定性を高めることができる(
図14(a)参照)。また、歪みセンサ8Bの伸縮方向(B方向)に略平行に配置した凹部85Bによって、歪みセンサ8Bの伸びに伴う当該センサが幅方向の縮みを吸収することもできる。(
図14(b)参照)。さらに、規則的に、縦及び横方向の直線状の凸部又は凹部85Cを形成することで、層構造部分全体として均等かつ大きな伸縮が可能となる(
図14(c)参照)。さらには、
図14(d)の歪みセンサ8DのようにCNT繊維83Dの配向方向に対して交差するように直線状の凸部又は凹部85Dを形成してもよいし、
図14(e)の歪みセンサ8Eのように平面視で円形状等の凸部又は凹部85Eを形成してもよい。なお、
図14の各歪みセンサは、模式的にCNT繊維の配向方向と凸部又は凹部との関係を示したものであり、電極等の他の構成は省略している。その他、変形しやすい中央付近に凸部を密に形成させたり、感知させたい部分に凹部を密に形成させたりすることもできるし、曲線状の凸部又は凹部としてもよい。このように、伸縮(変形)させたい部分又は伸縮(変形)させたい部分を考慮するなどして、凸部又は凹部の配置位置や方向、形状等を適宜設定することができる。また、前記凸部又は凹部は線状または帯状であって、曲線、波型またはジグザグ形状でもよいし、点線のような離散的なものであってもよいし、それらの幅が場所によって変化するものであってもよい。
図14(e)における凹部や、点線のような線状または帯状の凹部のような離散的な凹部の場合は、凹部のある層構造部分を貫通させてもよい。その場合、貫通しなかった部分で変形をすることになる。貫通していない凹部と、貫通した凹部との両方を凹部として用いてもよい。
【0126】
また、
図15(a)〜
図15(e)の歪みセンサ8F、8G、8H、8I、8Jのように、CNT繊維83F、83G、83H、83I、83Jの配向方向が歪みセンサ8F〜8Jの長手方向Bと略平行である場合においても、
図14(a)〜
図14(e)の歪みセンサ8A〜8Eの凸部又は凹部85A〜85Eと同様な凸部又は凹部85F〜85Jを設けてもよい。
【0127】
また、
図16の歪みセンサ9ように帯状の層構造部分99の側面に複数の凹部95(切り込み)が形成されていてもよい。前記層構造部分99は、
図1の歪みセンサ1等のように基材層及びCNT層並びに必要に応じて他の層を有する。前記CNT層は、層構造部分99の幅方向A又は長手方向Bに配向したCNT繊維を含む。また、この層構造部分99の長手方向両端には、CNT層と連結するように一対の電極92が形成されている。この歪みセンサ9のような形状にすることで、層構造部分99の幅が変化し、凹部95を設けた領域の剛性が低下し、異剛性領域となる。なお、凹部95は帯状の層構造部分99の少なくとも1層の側面に形成すれば、異剛性領域として層構造部分99の一領域の剛性を変化させることができる。
【0128】
さらには、層構造部分を形成する他の層、例えば基材層に凸部や凹部を形成してもよく、一つの層(例えばCNT層)の裏面又は両面に凸部又は凹部を形成してもよい。両面に凸部又は凹部を形成する場合、これらは対向する位置に設けていてもよいし、ずらして設けてもよく、異なる方向に設けてもよい。さらには、各層間に空洞部分が形成されてもよい。また、層の厚み又は幅を変化させる代わりに、例えば、基材層中に弾性率の異なる材質を規則的に含有させることで、剛性の変化を形成することもできる。いずれの方法においても、一対の電極間において、層構造部分に異剛性領域(他の領域より剛性が高い又は低い領域)を存在させることで、歪みに対して伸縮又は開裂する領域を固定することができ、感度の線形性や再現性が高い歪みセンサとすることができる。
【0129】
また、直線状の凸部や凹部はCNT繊維の配向方向とは交差するように、かつそれぞれ平行に形成してもよい。CNT繊維の配向方向と電極の対向方向も、同一方向又は直交する方向に限らず、交差する方向(直交方向を除く)であってもよい。これらの方向の関係は、歪みセンサの用途等に応じて適宜設定すればよい。さらには、層構造部分は、変形させて用いることもできる。例えば、筒状や波状とすることで、当該歪みセンサの用途を広げることができる。