特許第6161207号(P6161207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161207
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】メチン化合物
(51)【国際特許分類】
   C09B 23/00 20060101AFI20170703BHJP
   C09B 67/44 20060101ALI20170703BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C09B23/00 LCSP
   C09B67/44 A
   G02B5/20 101
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-65528(P2014-65528)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-189767(P2015-189767A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正行
【審査官】 新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−301333(JP,A)
【文献】 特開2007−196661(JP,A)
【文献】 特開昭48−52222(JP,A)
【文献】 旧東ドイツ国経済特許第244348(DD,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 23/00
C09B 67/44
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式(1)中、Aは炭素数1〜4のアルキル基を、R〜R3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表されるメチン化合物。
【請求項2】
式(1)におけるAがメチル基である請求項1に記載のメチン化合物。
【請求項3】
式(1)におけるR〜Rがそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルコキシ基である請求項1に記載のメチン化合物。
【請求項4】
式(1)におけるR〜Rが水素原子である請求項3に記載のメチン化合物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のメチン化合物及び油溶性有機溶媒を含有する油性染料組成物。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のメチン化合物及び水性媒体を含有する水性染料組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の油性染料組成物または請求項6に記載の水性染料組成物を用いて得られる印刷物。
【請求項8】
請求項5に記載の油性染料組成物または請求項6に記載の水性染料組成物を用いて得られるカラーフィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は染料として有用な新規なメチン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
色素は一般に染料と顔料とに大きく分類される。顔料は耐光性、耐溶剤性といった堅牢性が高いものの、溶媒に不溶なため、取り扱いが難しい。例えば、カラーフィルター等、光学用途への応用を想定した場合、高い透明性の確保が必要不可欠であり、溶剤に不溶な顔料を微細化する技術や溶媒に分散させるための高度な分散技術が必要となる。一方、染料は一般に溶媒に可溶であるため取り扱い易く、高い着色力、透明性を示すことが知られているが、染料であっても必ずしも全ての溶媒に対して良好な溶解性を有する訳ではなく、ある特定の溶媒に対しては難溶性を示すものがほとんどである。
【0003】
溶媒に対する溶解性の乏しい染料を用いて物体を着色する方法としては、例えば、前記した顔料のように高度な分散技術を用いた湿式着色法を用いる他、真空蒸着などの気相から物体上へ染料分子を析出させる乾式着色法などがある。湿式着色法は、溶媒に対する溶解性の乏しい染料を溶媒中に微細に分散するために長時間の分散工程を必要とする上、分散助剤として種々の添加剤を加える必要があり、必ずしも適用範囲が広いとは言えない。また、乾式着色法は、真空装置のような大型の設備が必要であり、更に染料を気化させる高温条件に耐える耐久性の良い色素は数が限られているため、必ずしも適用範囲が広いとは言えない。
【0004】
また、溶媒に対する溶解性の乏しい染料骨格に、嵩高い置換基を導入し、溶媒に対する溶解性を得ることも可能であるが、導入した置換基効果の影響を受けるため、必ずしも物性が元の化合物と等しくなるとは限らない。
【0005】
メチン化合物は、色相が鮮明で、高発色性を有しており、光や熱等に対して堅牢であることから、染料として広く使用されており、各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用など幅広い用途での応用がなされている。このような染料として例えば、非特許文献1に記載されているような下記式(100)で表されるメチン化合物が知られている。
しかしながら、本発明者らが検討した結果、下記式(100)で表されるメチン化合物はカラーフィルター用着色樹脂組成物に用いられるシクロペンタノンや乳酸エチルなどの溶剤への溶解性が不充分であった。
【0006】
【化1】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dyes and pigments(2007)、74(2)、306−312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、溶剤溶解性に優れたメチン化合物、該メチン化合物を含有する染料組成物及び該染料組成物を用いて得られるカラーフィルターの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の構造を有する新規のメチン化合物は、従来公知のメチン染料(化合物)に比べて著しく溶剤溶解性が優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)下記式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)中、Aは炭素数1〜4のアルキル基を、R〜R3はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表されるメチン化合物、
(2)式(1)におけるAがメチル基である前項(1)に記載のメチン化合物、
(3)式(1)におけるR〜Rがそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルコキシ基である前項(1)に記載のメチン化合物、
(4)式(1)におけるR〜Rが水素原子である前項(3)に記載のメチン化合物、
(5)前項(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のメチン化合物及び油溶性有機溶媒を含有する油性染料組成物、
(6)前項(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のメチン化合物及び水性媒体を含有する水性染料組成物、
(7)前項(5)に記載の油性染料組成物または前項(6)に記載の水性染料組成物を用いて得られる印刷物、
(8)前項(5)に記載の油性染料組成物または前項(6)に記載の水性染料組成物を用いて得られるカラーフィルター、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のメチン化合物(以下、単に「本発明の化合物」ともいう)は鮮明性および発色性に優れ、溶剤溶解性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のメチン化合物は、前記式(1)で表される。
式(1)中、Aは炭素数1〜4のアルキル基を表し、該炭素数1〜4のアルキル基は炭素数1〜4のアルキル基であれば直鎖状または分岐鎖状の何れにも限定されない。また、該アルキル基は置換基を有していてもよい。
式(1)のAが表す炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基及びt−ブチル基が挙げられる。
【0015】
式(1)のAが表すアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えばハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、iso−プロポキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基等)、カルボキシル基、アミド基(例えば、アセトアミド基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、プロパンスルホンアミド基等)及びスルホ基等が挙げられる。
式(1)におけるAとしては、炭素数1〜4の直鎖アルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0016】
式(1)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
式(1)のR〜Rが表す炭素数1〜4のアルキル基としては、式(1)のAが表す炭素数1〜4のアルキル基の項で述べたものと同様である。式(1)のR〜Rが表す炭素数1〜4のアルキル基は置換基を有していてもよく、該有していてもよい置換基としては、式(1)のAが表すアルキル基が有していてもよい置換基の項で述べたものと同様である。
式(1)のR〜Rが表すハロゲン原子及び炭素数1〜4のアルコキシ基の具体例としては、式(1)のAが表すアルキル基が有していてもよい置換基としてのハロゲン原子及びアルコキシ基の項で述べたものと同様である。
式(1)におけるR〜Rとしては、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルコキシ基であることが好ましく、R〜Rの全てが水素原子であるか若しくはR及び/またはRが炭素数1〜4のアルコキシ基であってその他が水素原子であることがより好ましく、R〜Rの全てが水素原子であるか若しくはR及び/またはRが炭素数1〜2のアルコキシ基であってその他が水素原子であることが更に好ましく、全てが水素原子であることが特に好ましい。
【0017】
本発明の式(1)で表されるメチン化合物としては、上記のA、R、R及びRのそれぞれについて好ましいものを組み合せた化合物が好ましく、より好ましいものを組み合せた化合物がより好ましい。好ましいものと、より好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
【0018】
本発明の式(1)で表されるメチン化合物は、種々の方法で製造されるが、例えば、Dyes and pigments(2007)、74(2)、306−312に記載の方法を参考に、定法で合成可能であり、市販品としても入手可能な下記式(AA)で表されるホルミル誘導体と、下記式(B)で表されるアニリン誘導体を酢酸中、で反応させることにより得ることができる。尚、下記式(AA)〜(B)中のA、R、R及びRは、それぞれ上記式(1)におけるのと同じ意味を表す。
【0019】
【化2】
【0020】
上記式(1)で表されるメチン化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0021】
【化3】




【0022】
【化4】




【0023】
本発明の油性または水性染料組成物は、本発明の式(1)で表されるメチン化合物及び、油性染料組成物の場合は油溶性有機溶媒を、水性染料の場合は水性媒体を含有する。本発明の油性または水性染料組成物における式(1)で表されるメチン化合物の含有量は、通常0.1〜50質量%、好ましくは0.2〜40質量%、より好ましくは0.5〜20質量%である。
【0024】
本発明の油性染料組成物は、少なくとも1種類の油溶性有機溶媒に本発明の式(1)で表されるメチン化合物を溶解または分散させて調製する事ができる。用いられる油溶性有機溶媒としては、例えば、エタノール、ペンタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、テトラフルオロプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコール誘導体;メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;ブチルフェニルエーテル、ベンジルエーテル、ヘキシルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリル、DMF、ジメチルスルホキシド、スルホラン、NMP、2−ピロリドン等の極性有機溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0025】
本発明の水性染料組成物は、水性媒体に本発明の式(1)で表されるメチン化合物を溶解または分散させて調製する事ができる。水性媒体としては、水または水溶性有機溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール及びベンジルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,3−ペンタンジオール及び1,5−ペンタンジオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びモルホリン等のアミン類;2−ピロリドン、NMP、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0026】
水性染料組成物には、酸またはアルカリを添加してもよい。水性染料組成物に添加し得る酸としては、塩酸、硫酸及びリン酸等の無機酸並びにシュウ酸及びクエン酸等の有機酸等が挙げられる。
水性染料組成物に添加し得るアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物並びに炭酸ナトリウム、炭酸リチウム及び炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等が挙げられる。水性染料組成物に添加し得る酸またはアルカリの含有量は、通常0.1〜30質量%、好ましくは0.2〜20質量%、より好ましくは0.3〜15質量%である。
【0027】
本発明の油性または水性染料組成物には、色相の調整などの目的で必要に応じて前記式(1)で表されるメチン化合物以外の色材を併用してもよい。併用し得る色材としては、例えば酸性染料、反応性染料、直接性染料、カチオン染料及び塩基性染料等の水溶性染料;分散染料及びソルベント染料等の油溶性染料;有機顔料並びにカーボンブラック等が挙げられるがこれらに限定されず、溶媒に溶解した状態あるいは分散した状態で添加される。
【0028】
本発明の染料組成物をカラーフィルター用途で用いる場合には、有機顔料を併用することが好ましい。併用し得る有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド2、5、17、31、32、41、122、123、144、149、166、168、170、171、175、176、177、178、179、180、185、187、202、206、207、209、214、220、221、224、242、243、254、255、262、264、272等の赤色顔料、C.I.ピグメントイエロー1、3、12,13、14、15、16、17、20,24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、128、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173、194、214等の黄色顔料、C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、71、73等のオレンジ色顔料、C.I.ピグメントグリーン7、36、58等のグリーン色顔料などがある。これらのうち、赤色カラーフィルターとしてはC.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントイエロー138及びC.I.ピグメントイエロー150よりなる群から選ばれる少なくとも一種を併用することが好ましく、緑色カラーフィルターとしてはC.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントイエロー138及びC.I.ピグメントイエロー150よりなる群から選ばれる少なくとも一種を併用することが好ましい。
【0029】
本発明の油性または水性染料組成物における併用し得る色材の使用量は特に限定されず、式(1)で表されるメチン化合物に対して、通常15質量%以下、好ましくは5〜10%質量が用いられる。
【0030】
本発明の油性染料組成物及び水性染料組成物には、式(1)で表されるメチン化合物の分散性を改善する目的で、必要により分散剤を併用することが出来る。
【0031】
油性染料組成物に用い得る分散剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートのアンモニウム塩、ポリオキシアルキルエーテル燐酸エステル塩等公知のアニオン界面活性剤、ビニルナフタレン誘導体、α、β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、スチレン、スチレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、無水マレイン酸、無水マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体等から選ばれた少なくとも2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、或いはランダム共重合体、またはこれらの塩等の高分子分散剤等が挙げられ、これらの1種以上が、式(1)で表されるメチン化合物及び必要により併用される色材に対して、通常500質量%以下、好ましくは10〜450質量%、より好ましくは100〜400質量%用いられる。
【0032】
水性染料組成物に用い得る分散剤としては、界面活性剤の他、顔料分散液を調整するのに慣用されている分散剤、例えば高分子分散剤を好適に使用することができる。高分子分散剤の具体例としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリルニトリル共重合体、アクリル酸塩−アクリルニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、及び酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等の酢酸ビニル系共重合体及びそれらの塩が挙げられる。式(1)で表されるメチン化合物及び必要より併用される色材に対して通常100質量%以下、好ましくは10〜70質量%用いられる。
【0033】
式(1)で表されるメチン化合物を微粒状に分散させる方法としては、サンドミル(ビーズミル)、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、マイクロフルイダイザー等を用いる方法が挙げられるが、これらの中でもサンドミル(ビーズミル)が好ましい。またサンドミル(ビーズミル)を用いて分散を行う場合は、径の小さいビーズを使用したり、ビーズの充填率を大きくすること等、粉砕効率を高め得る条件で処理することが好ましく、更に粉砕処理後に濾過、遠心分離などで素粒子を除去することも好ましい。
【0034】
本発明の染料組成物にはその他の添加剤として表面調整剤、消泡剤、防腐・防黴剤、pH調整剤等を含んでも良い。表面調整剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物等の公知のノニオン系、ポリシロキサン系あるいはポリジメチルシロキサン系の界面活性剤、消泡剤としては、シリコーン系、アセチレン系の公知の消泡剤、防腐・防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン塩等の公知の防腐・防黴剤、pH調整剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の3級アミン類等の公知のpH調整剤が挙げられ、これらはそれぞれ必要に応じて添加する事ができる。
【0035】
また本発明の油性または水性染料組成物には被着色体への染料の定着性を向上させる目的で、組成中の媒体と相溶性のあるポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系又はポリアクリル系樹脂並びにエチレン性不飽和基を有するモノマーやオリゴマー等のバインダー樹脂を含有させることが好ましく、また、バインダー樹脂が重合性を有する場合には、更に重合開始剤や硬化剤等を併用することがより好ましい。本発明の染料組成物をカラーフィルター用途で用いる場合は、通常熱及び/または光により硬化する化合物(樹脂成分)を併用するのが一般的であり、必要によりフォトリソグラフィーの手法を施した後、光及び/または熱により硬化させた硬化物がカラーフィルターとして用いられる。バインダー樹脂は、染料組成物中の式(1)で表されるメチン化合物及び必要により併用される色材に対して通常10000質量%以下が用いられる。尚、重合開始剤や硬化剤等は、バインダー樹脂の使用量に応じて適当量を用いればよい。本発明の油性または水性染料組成物は上記各成分を溶媒に溶解あるいは分散及び混合することによって調製することができる。
【0036】
本発明の式(1)で表されるメチン化合物は、油性染料組成物または水性染料組成物として各種塗料、水性インキ、油性インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用着色組成物に用いられる。油性染料組成物および水性染料組成物は、例えば普通紙、コート紙、プラスチックフィルム、プラスチック基板などの被着色材料に用いられる。また、本発明の染料組成物を被着色材料に付与する方法としては、オフセット印刷、凸版印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの各種印刷方法あるいはスピンコーター、ロールコーターなどによる塗工方法が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下に本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準であり、また反応温度は内温である。合成した化合物のうち、λmax(最大吸収波長)を測定したものについては、Agilent Tecnology社製、Agilent 1100 Series HPLC Systemのダイオードアレイ検出器による測定値を記載した。なお、測定の際の移動相としては、5mM酢酸アンモニウム水溶液/アセトニトリル溶媒系を用いた。
【0038】
実施例1
酢酸20部中に下記式(2)で表されるホルミル誘導体2.0部、下記式(3)で表される4−アミノフタルイミド2.0部を添加し、40℃にて6時間撹拌することにより得られた液を室温まで冷却した後、水50部に注ぎ、30分間撹拌した後、析出固体をろ過分取、水洗後に乾燥することにより、上記具体例のNo.1で表されるメチン化合物(λmax:435nm)1.5部を得た。
【0039】
【化5】
【0040】
合成例1
式(3)で表される化合物2.0部を下記式(4)で表される化合物1.9部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、上記式(100)で表される比較用のメチン化合物(λmax:422nm)を1.4部得た
【0041】
【化6】
【0042】
実施例2(油性染料組成物の調製)
実施例1で得られたメチン化合物20mgとシクロペンタノン980mgを20mLサンプル管中で混合した後、室温で5分間超音波振とう機にて振とうさせてメチン化合物濃度が2%の本発明の油性染料組成物1を調製した。得られた油性染料組成物1には、目視による残差は確認されなかった。
【0043】
実施例3
シクロペンタノンを乳酸エチルに変更したこと以外は実施例2に準じて、本発明の油性染料組成物2を調製した。得られた油性染料組成物2には、目視による残差は確認されなかった。
【0044】
比較例1
実施例1で得られたメチン化合物を合成例1で得られた比較用のメチン化合物に変更したこと以外は実施例2に準じて、比較用の油性染料組成物1を調製した。得られた油性染料組成物1には、目視による残差が確認された。
【0045】
比較例2
実施例1で得られたメチン化合物を合成例1で得られた比較用のメチン化合物に変更したこと以外は実施例3に準じて、比較用の油性染料組成物2を調製した。得られた油性染料組成物2には、目視による残差が確認された。
【0046】
実施例及び比較例より、本発明の式(1)で表されるメチン化合物が、油溶性有機溶媒への溶解性に優れていることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のメチン化合物は、油溶性有機溶媒への溶解性が高く取り扱いやすい。よって、本発明のメチン化合物は染料着色体に利用可能であり、カラーフィルター用インキやインクジェット用インキ等の幅広い用途に使用できる。