(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6161229
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】自動仕訳システムおよび自動仕訳プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/00 20120101AFI20170703BHJP
【FI】
G06Q40/00 420
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-29674(P2017-29674)
(22)【出願日】2017年2月21日
【審査請求日】2017年2月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505210610
【氏名又は名称】アーバン・コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101982
【弁理士】
【氏名又は名称】久米川 正光
(72)【発明者】
【氏名】田上 龍二
【審査官】
川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−21147(JP,A)
【文献】
特開2003−16206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動仕訳システムにおいて、
少なくとも取引情報を含む入力データと、分類すべき勘定科目を示す出力データとが対応付けられた教師データを用いた教師あり学習によって、自己が有する関数の内部パラメータが調整された学習器と、
前記教師データとして与えられた取引情報が前記学習器において正しい勘定科目に分類されている確率を示す分類適合率を勘定科目に対応付けて記憶する適合率記憶部と、
ユーザより仕訳を依頼された取引に関する取引情報を含む入力データを前記学習器に入力し、前記学習器より出力された出力データに基づいて前記取引を仕訳すると共に、当該出力データによって特定された勘定科目に関する前記分類適合率に応じて、ユーザに対する仕訳結果の提示形態を選択する仕訳処理部と
を有することを特徴とする自動仕訳システム。
【請求項2】
前記仕訳処理部は、前記分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザに内容の確認を促す確認フラグを前記仕訳結果に付することを特徴とする請求項1に記載された自動仕訳システム。
【請求項3】
前記仕訳処理部は、前記分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザによって予め設定された通知先に対して、前記仕訳結果を通知することを特徴とする請求項1に記載された自動仕訳システム。
【請求項4】
前記所定のしきい値は、ユーザが任意に設定可能であることを特徴とする請求項2または3に記載された自動仕訳システム。
【請求項5】
ユーザより仕訳を依頼された取引に関して、前記入力データと、前記出力データとを対応付けた仕訳結果を記憶する仕訳結果データベースと、
前記仕訳結果データベースに記憶された前記仕訳結果を前記教師データとした教師あり学習によって、前記学習器の内部パラメータを更新する更新処理部と
をさらに有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載された自動仕訳システム。
【請求項6】
前記仕訳処理部は、前記分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザに内容の確認を促す確認フラグを前記仕訳結果に付した上で、前記仕訳結果データベースに記憶し、
前記更新処理部は、前記仕訳結果データベースに記憶された前記仕訳結果のうち、前記確認フラグが付されていないものを前記教師データとして用いることを特徴とする請求項5に記載された自動仕訳システム。
【請求項7】
前記入力データは、仕訳を依頼したユーザの業種を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載された自動仕訳システム。
【請求項8】
自動仕訳プログラムにおいて、
ユーザより仕訳を依頼された取引に関する取引情報を含む入力データを学習器に入力し、前記学習器より出力された出力データに基づいて前記取引を仕訳する第1のステップと、
前記出力データによって特定された勘定科目に関する分類適合率に応じて、ユーザに対する仕訳結果の提示形態を選択する第2のステップと
を有する処理をコンピュータに実行させ、
前記学習器は、少なくとも取引情報を含む入力データと、分類すべき勘定科目を示す出力データとが対応付けられた教師データを用いた教師あり学習によって、自己が有する関数の内部パラメータが調整されており、
前記分類適合率は、前記教師データとして与えられた取引情報が前記学習器において正しい勘定科目に分類されている確率を示し、かつ、勘定科目に対応付けて設定されていることを特徴とする自動仕訳プログラム。
【請求項9】
前記第2のステップは、前記分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザに内容の確認を促す確認フラグを前記仕訳結果に付するステップであることを特徴とする請求項8に記載された自動仕訳プログラム。
【請求項10】
前記第2のステップは、前記分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザによって予め設定された通知先に対して、前記仕訳結果を通知するステップであることを特徴とする請求項8に記載された自動仕訳プログラム。
【請求項11】
前記所定のしきい値は、ユーザが任意に設定可能であることを特徴とする請求項9または10に記載された自動仕訳プログラム。
【請求項12】
ユーザより仕訳を依頼された取引に関して、前記入力データと、前記出力データとを対応付けた仕訳結果を記憶する仕訳結果データベースを有し、
前記仕訳結果データベースに記憶された前記仕訳結果を前記教師データとした教師あり学習によって、前記学習器の内部パラメータを更新する第3のステップをさらに有することを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載された自動仕訳プログラム。
【請求項13】
前記第2のステップは、前記分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザに内容の確認を促す確認フラグを前記仕訳結果に付した上で、前記仕訳結果データベースに記憶するステップであり、
前記第3のステップにおいて、前記仕訳結果データベースに記憶された前記仕訳結果のうち、前記確認フラグが付されていないものが前記教師データとして用いられることを特徴とする請求項12に記載された自動仕訳プログラム。
【請求項14】
前記入力データは、仕訳を依頼したユーザの業種を含むことを特徴とする請求項8から13のいずれかに記載された自動仕訳プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動仕訳システムおよび自動仕訳プログラムに係り、特に、ユーザより依頼された取引の自動仕訳に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、仕訳作業者の負担を軽減すべく、人工知能を利用して仕訳を自動的に行うクラウドサービスが提案されている。例えば、特許文献1には、クラウドコンピューティングによる会計処理を行うための会計処理装置が開示されている。この処理装置が備えるウェブサーバは、ユーザ側のコンピュータより受信したウェブ明細データを取引毎に識別し、特定の勘定科目に自動的に仕訳する。この自動仕訳では、取引内容の記載がキーワード(形態素)に分節され、機械学習によって生成されたラーンド・データベースを参照することによって、勘定科目が推測される。ラーンド・データベースには、キーワードに対応付けられた勘定科目の出現頻度が登録されており、各キーワードの出現頻度をスコアとして合計した結果、最も高いスコアとなる勘定科目に分類される。ウェブサーバによって作成された仕訳データは、ユーザ側のコンピュータに送信され、仕訳処理画面として表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5936284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人工知能を利用した自動仕訳では、ユーザにとって正しい期待結果が必ず得られるとは限らず、期待していない仕訳となる可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザにとって正しい期待結果でない可能性がある仕訳の抽出作業や修正作業の効率化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、学習器と、適合率記憶部と、仕訳処理部とを有する自動仕訳システムを提供する。学習器は、教師データを用いた教師あり学習によって、自己が有する関数の内部パラメータが調整されている。この教師データは、少なくとも取引情報を含む入力データと、分類すべき勘定科目を示す出力データとが対応付けられている。適合率記憶部は、教師データとして与えられた取引情報が学習器において正しい勘定科目に分類されている確率を示す分類適合率を勘定科目に対応付けて記憶している。仕訳処理部は、ユーザより仕訳を依頼された取引に関する取引情報を含む入力データを学習器に入力し、学習器より出力された出力データに基づいて取引を仕訳する。それとともに、仕訳処理部は、この出力データによって特定された勘定科目に関する分類適合率に応じて、ユーザに対する仕訳結果の提示形態を選択する。
【0007】
ここで、第1の発明において、上記仕訳処理部は、分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザに内容の確認を促す確認フラグを仕訳結果に付することが好ましい。また、上記仕訳処理部は、分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザによって予め設定された通知先に対して、仕訳結果を通知してもよい。さらに、上記所定のしきい値は、ユーザによって任意に設定可能であることが望ましい。
【0008】
第1の発明において、仕訳結果データベースと、更新処理部とを設けてもよい。仕訳結果データベースには、ユーザより仕訳を依頼された取引に関して、入力データと、出力データとを対応付けた仕訳結果が記憶される。また、更新処理部は、実績データベースに記憶された仕訳結果を教師データとした教師あり学習によって、学習器の内部パラメータを更新する。この場合、上記仕訳処理部は、分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザに内容の確認を促す確認フラグを仕訳結果に付した上で、仕訳結果データベースに記憶し、上記更新処理部は、実績データベースに記憶された仕訳結果のうち、確認フラグが付されていないものを教師データとして用いることが好ましい。
【0009】
第2の発明は、ユーザより仕訳を依頼された取引に関する取引情報を含む入力データを学習器に入力し、学習器より出力された出力データに基づいて取引を仕訳する第1のステップと、この出力データによって特定された勘定科目に関する分類適合率に応じて、ユーザに対する仕訳結果の提示形態を選択する第2のステップとを有する処理をコンピュータに実行させる自動仕訳プログラムを提供する。ここで、学習器は、少なくとも取引情報を含む入力データと、分類すべき勘定科目を示す出力データとが対応付けられた教師データを用いた教師あり学習によって、自己が有する関数の内部パラメータが調整されている。また、分類適合率は、教師データとして与えられた取引情報が学習器において正しい勘定科目に分類されている確率を示し、かつ、勘定科目に対応付けて設定されている。
【0010】
ここで、第2の発明において、上記第2のステップは、分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザに内容の確認を促す確認フラグを仕訳結果に付するステップであることが好ましい。また、上記第2のステップは、分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザによって予め設定された通知先に対して、仕訳結果を通知するステップであってもよい。さらに、上記所定のしきい値は、ユーザが任意に設定可能であることが望ましい。
【0011】
第2の発明において、ユーザより仕訳を依頼された取引に関して、入力データと、出力データとを対応付けた仕訳結果を記憶する仕訳結果データベースを用意しておき、この仕訳結果データベースに記憶された仕訳結果を教師データとした教師あり学習によって、学習器の内部パラメータを更新する第3のステップをさらに設けてもよい。この場合、上記第2のステップは、分類適合率が所定のしきい値よりも小さい場合、ユーザに内容の確認を促す確認フラグを仕訳結果に付した上で、仕訳結果データベースに記憶するステップであり、上記第3のステップにおいて、仕訳結果データベースに記憶された仕訳結果のうち、確認フラグが付されていないものを教師データとして用いることが好ましい。
【0012】
さらに、第1または第2の発明において、上記入力データは、仕訳を依頼したユーザの業種を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、勘定科目に対応付けて記憶された分類適合率に応じて、例えば、ユーザに内容の確認を促したり、予め設定された通知先に仕訳結果を通知するといった如く、ユーザに対する仕訳結果の提示形態を変更することで、ユーザにとって正しい期待結果でない可能性がある仕訳の抽出作業や修正作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】仕訳結果データベースの概略的な構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本実施形態に係る自動仕訳ネットワークシステムの全体図である。この仕訳ネットワークシステム1は、取引の仕訳を依頼するユーザが操作する多数のクライアント2と、仕訳サーバ3とを主体としたサーバクライアント型のネットワーク構成を有している。仕訳サーバ3は、クライアント2からの仕訳依頼を受信した場合、この依頼に係る取引の仕訳を自動的に行い、仕訳結果をクライント2に送信する。
【0016】
図2は、仕訳サーバ3のブロック図である。この仕訳サーバ3は、入力部4と、仕訳処理部5と、学習器6と、更新処理部7と、出力部8と、ユーザデータベース9と、仕訳結果データベース10と、適合率記憶部11とを主体に構成されている。入力部4は、インターネット等のネットワークを介して、「取引」の仕訳依頼の必要情報として、ユーザによって入力された取引情報をクライアント2より受信し、これらを仕訳処理部5に転送する。ここで、「取引」とは、企業等が所有する財産(資産,負債)、資本、収益、費用の増加・減少を伴う簿記上の取引や、簿記上の取引以外においても、記帳(記録)に必要な取引のことをいう。
【0017】
仕訳処理部5は、ユーザデータベース9を参照しつつ、取引情報に基づいて入力データを生成し、この入力データを学習器6に入力する。また、仕訳処理部5は、学習器6より出力された出力データに基づいて取引を仕訳し、仕訳結果を仕訳結果データベース10に追加・記憶する。この仕訳結果データベース10は、ユーザより仕訳を依頼された取引に関して、入力データと、出力データとを対応付けた仕訳結果を取引毎に記憶する。
【0018】
学習器6は、所定の関数Y=f(X,θ)を有している。ここで、入力Xは、少なくとも取引情報を特徴化したm次元の入力データ(特徴ベクトル)であり、出力Yは、n(<m)次元の出力データである。また、θは、この関数の内部パラメータであり、取引の仕訳処理に先だち、教師データを用いた教師あり学習によって、予め調整されている。教師あり学習としては、ニューラルネットワークやサポートベクターマシン(SVM)を含めて、周知の手法を広く用いることができる。
【0019】
更新処理部7は、教師データを用いた教師あり学習によって、学習器6の内部パラメータθを更新する。教師データとしては、仕訳結果データベース10に記憶された多数の仕訳結果、すなわち、入力データと出力データとのペアが用いられる。具体的には、入力に対する出力の合否が「教師ベクトル」として学習器6にフィードバックされる。これに基づいて、学習器6は、正しい出力が得られるように、内部パラメータθ(例えば、ニューラルネットワークの結合重み)の値を更新する。このような処理を仕訳結果データベース10に記憶された全ての仕訳結果について繰り返すことで、内部パラメータθの学習(調整)が行われる。なお、仕訳結果データベース10の蓄積数が少なく、内部パラメータθの学習が十分に行うことができない初期状況においては、予想される様々なケースのサンプルを多数用意しておき、これらに基づいて必要量の学習を行うことが好ましい。
【0020】
図3は、ユーザデータベース9の概略的な構成を示す図である。このユーザデータベース9は、ユーザ単位で設けられた多数のユーザレコードによって構成されている。1つのユーザレコードは、「ユーザID」、「ユーザ情報」、「業種」、「申告区分」、「しきい値LV1」、「しきい値LV2」、「通知アドレス」等のフィールドを有している。ここで、「ユーザID」は、ユーザ毎に採番されたユーザ固有の識別記号であり、「ユーザ情報」は、ユーザの名称、住所、電話番号等である。「業種」は、製造業、販売業、小売業の如く、ユーザの業種が記述される。「申告区分」は、個人/法人の別が記述される。「しきい値LV1」、「しきい値LV2」および「通知アドレス」は、ユーザが任意に設定可能であり、後述するように、これらの設定内容に応じてシステムの振る舞い、具体的には、ユーザに対する仕訳結果の提示形態が変化する。
【0021】
図4は、仕訳結果データベース10の概略的な構成を示す図である。この仕訳結果データベース10は、取引単位で設けられた多数の仕訳結果レコードによって構成されている。1つの仕訳結果レコードは、「入力データ」および「出力データ」のセットと、「確認フラグ」とを有する。「入力データ」は、「取引情報」と、「ユーザ情報」とを有する。「取引情報」は、「取引目的語」、「未来区分」、「場所」、「用途」、「支払方法」の如く、取引の内容を特徴付けるキーワードによって構成されている。また、「ユーザ情報」は、「業種」、「ユーザID」、「申告区分」等を含む。本実施形態において、「入力データ」として、「取引情報」のみならず「ユーザ情報」も含める理由は、「取引情報」が同一でも、ユーザによって仕訳(勘定科目)が異なるケースが存在するので、それに対処するためである。例えば、工具を購入した場合、製造業では[借方](製)消耗品費となるのに対して、販売業では[借方]消耗品費となる。また、例えば、荷物の宅配(運送)を依頼した場合、運送業では[借方]外注費となるのに対して、販売業では[借方]荷造運賃となる。同様のことは、[申告区分]における個人/法人でも該当する。このような事情に鑑み、入力データとしてユーザに関する情報も特徴付けておくことで、学習器6の分類精度を高まり、ユーザの業種等にマッチした仕訳が期待できる。また、「確認フラグ」については、ユーザに仕訳結果の内容確認を促す状態を「1」、それ以外の状態(仕訳結果の内容の確認済を含む。)を「0」とする。
【0022】
また、仕訳処理部5は、適合率記憶部11を参照して、出力データによって特定される勘定科目に関する分類適合率を抽出し、この分類適合率に応じて、ユーザに対する仕訳結果の提示形態を選択する。適合率記憶部11には、分類適合率が勘定科目に対応付けて記憶されている。ここで、「分類適合率」とは、学習器6の学習が完了した状態において、教師データとして与えられた取引情報が学習器6において正しい勘定科目に分類されている確率のことである。
【0023】
図5に示すように、縦方向を真の勘定科目のクラス(A,B,C,D,・・・)、横方向を学習器6によって分類された推論結果のクラス(A,B,C,D,・・・)とし、両者の交差欄に分類確率(%)が記述されている。例えば、クラスAについて正しい推論結果が得られる確率は89.3%である。一方、クラスBについて正しい推論結果が得られる確率は79.8%であり、これは、クラスAよりも期待結果の信頼度が低いことを意味する。なお、勘定科目のクラスは、貸方勘定科目と借方勘定科目とを別けて、それぞれを個別に分類してもよいし、両者のセットとして分類してもよい。
【0024】
分類適合率の算出に際しては、まず、所定数の教師データを用いた学習によって、学習器6の内部パラメータを調整し、その後、あらためて教師データを個別に入力して、出力(推論結果)をクラス毎に投票する。これにより、ある勘定科目(例えばA)について、推論結果Aの個数をm、この勘定科目Aに関する推論結果(A,B,C,D,・・・)の全体数をnとすると、勘定科目Aの分類適合率は、m/n×100(%)として算出される。
【0025】
なお、分類適合率と勘定科目との対応付けは、1対1である必要は必ずしもなく、1対多等であっても構わない。例えば、商品(消耗品)を販売し、その売掛金の代金が差引振込で入金されたという取引に関しては、[借方]普通預金、[借方]支払手数料、[貸方]売掛金となり、2つの借方勘定科目が発生する。このような場合、2つの借方勘定科目に対して1つの分類適合率を共通で割り当ててもよい。
【0026】
つぎに、
図6を参照しながら、仕訳サーバ3にて行われる自動仕訳の処理について詳述する。この仕訳処理は、仕訳サーバ3に
図6の処理を実行させるコンピュータプログラムをインストールすることによって実行される。
【0027】
まず、ステップ1において、入力部4は、クライアント2から取引の仕訳依頼と共に取引情報を受け付ける。取引情報は、取引情報の入力画面をユーザに提示し、ユーザが必要事項を入力することによって取得することができる。また、取引明細等の写真をユーザより取得し、OCR(Optical Character Reader)や形態素解析を通じて、取引情報を取得することも可能である。
【0028】
つぎに、ステップ2において、仕訳処理部5は、取得した取引情報に基づいて入力データ(特徴ベクトル)を生成する。入力データは、今回の仕訳対象となる取引に関する取引情報だけあってもよいが、取引主体となるユーザに関するユーザ情報を含めてもよい。取引情報が同一であっても、業種や申告区分(個人/法人)によって仕分内容が異なることがある。入力データにユーザ情報を含めることで、このような仕訳にも有効に対応でき、学習器6の分類精度を高めることができる。また、学習器6の分類精度を高めるという観点から、入力データに、そのユーザに関する過去の取引情報を含めてもよい。
【0029】
ステップ3において、仕訳処理部5は、入力データを学習器6に入力する。そして、学習器6から出力された出力データに基づいて取引の仕訳が行われ、仕訳結果が仕訳結果データベース10に追加される(ステップ4)。例えば、
図4の表における1行目のレコードは、取引目的語を「ノート」とする入力データに対して、[貸方]事務用品費、[借方]現金とする出力データが学習器6より出力され、これらの入出力データのセットが仕訳結果として追加されたことを示している。
【0030】
ステップ5において、仕訳処理部5は、適合率記憶部11を参照して、学習器6からの出力データ(勘定科目)に対応する分類適合率LVを抽出する。例えば、
図5に示したように、勘定科目のクラスがAの場合、分類適合率LV=89.3%が抽出される。なお、分類適合率LVとしては、適合率記憶部11に記憶された値を取引情報のキーワードの寄与率等で補正し、この補正値を分類適合率として用いてもよい。
【0031】
ステップ6において、仕訳処理部5は、ユーザデータベース9を参照して、仕訳を依頼しているユーザに関する必要情報として、「しきい値LV1」、「しきい値LV2」および「通知アドレス」を取得する。
【0032】
ステップ7において、ステップ5で取得した分類適合率LVがしきい値LV1よりも小さいか否かが判断される。ステップ7の判断結果が否定の場合、学習器6によって推論された勘定科目は適切であるとみなし、「確認フラグ」が0(ユーザ確認不要)にセットされた上で(ステップ8)、本ルーチンを抜ける。これに対して、ステップ7の判断結果が肯定の場合、学習器6によって推論された勘定科目は適切でないとみなされ、「確認フラグ」が1(ユーザ確認要)にセットされた上で(ステップ9)、本ルーチンを抜ける。「確認フラグ」が1にセットされたことにより、この取引に関する仕訳結果として、
図7に示すような確認要求が表示される。ユーザは、仕訳帳画面に表示された仕訳一覧において、確認要求が付された仕訳(すなわち、ユーザにとって正しい期待結果でない可能性がある仕訳)を視覚的に容易に抽出できる。また、プルダウンリスト等で勘定科目の候補を提示すれば、ユーザは容易に修正作業を行うことができる。
【0033】
ステップ10において、ステップ5で取得した分類適合率LVがしきい値LV2よりも小さいか否かが判断される。ステップ10の判断結果が否定の場合、本ルーチンを抜ける。これに対して、ステップ10の判断結果が肯定の場合、「通知アドレス」に対して仕訳結果を通知した上で(ステップ11)、本ルーチンを抜ける。「通知アドレス」として、SNSや税理士のアドレスを設定しておけば、ユーザ以外の者と情報を共有することができる。
【0034】
このように、本実施形態によれば、勘定科目に対応付けて記憶された分類適合率LVに応じて、例えば、ユーザに内容の確認を促したり、予め設定された通知先に仕訳結果を通知するといった如く、ユーザに対する仕訳結果の提示形態を変更することで、ユーザにとって正しい期待結果でない可能性がある仕訳の抽出作業や修正作業の効率化を図ることができる。その際、分類適合率LVとの比較に用いられるしきい値LV1,LV2を、ユーザが任意に設定できるようにすれば、ユーザの事情に即してシステムの挙動を柔軟性に設定でき、ユーザにとっての利便性をより高めることができる。
【0035】
また、本実施形態では、仕訳結果データベース10に記憶された仕訳結果を用いた教師あり学習によって、学習器6の更新学習を適宜行うことで、仕訳実績を学習器6に反映でき、より精度の高い仕訳が可能になる。
【0036】
なお、上述した実施形態において、更新処理部7は、仕訳結果データベース10に蓄積された仕訳結果を教師データとした学習器6の更新学習をバッチ処理にて行うが、その際に用いる教師データは、確認フラグが付されていない仕訳結果(確認フラグ=0)のみを用いることが好ましい。未確定の仕訳結果(確認フラグ=1)を除外することで、更新学習の精度を高めることができる。
【0037】
また、上述した自動仕訳ネットワークシステムは、曖昧な取引を税理士等がチェックする用途で用いることもできる。この場合、顧客毎の事情に応じてしきい値LV1等を個別に設定しておき、確認要求(警告)が付された仕訳を曖昧な仕訳とみなして、税理士等が内容をチェックする。これにより、税理士等にとってのチェック作業の効率化を図ることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 仕訳ネットワークシステム
2 クライアント
3 仕訳サーバ
4 入力部
5 仕訳処理部
6 学習器
7 更新処理部
8 出力部
9 ユーザデータベース
10 仕訳結果データベース
11 適合率記憶部
【要約】
【課題】ユーザにとって正しい期待結果でない可能性がある仕訳の抽出作業や修正作業の効率化を図る。
【解決手段】学習器6は、教師データを用いた教師あり学習によって、自己が有する関数の内部パラメータが調整されている。この教師データは、少なくとも取引情報を含む入力データと、分類すべき勘定科目を示す出力データとが対応付けられている。適合率記憶部11は、教師データとして与えられた取引情報が学習器6において正しい勘定科目に分類されている確率を示す分類適合率を勘定科目に対応付けて記憶している。仕訳処理部5は、ユーザより仕訳を依頼された取引に関する取引情報を含む入力データを学習器6に入力し、学習器6より出力された出力データに基づいて取引を仕訳する。それとともに、仕訳処理部5は、この出力データによって特定された勘定科目に関する分類適合率に応じて、ユーザに対する仕訳結果の提示形態を選択する。
【選択図】
図2