(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161254
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】防寒ソックス
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
A41B11/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-244026(P2012-244026)
(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公開番号】特開2014-91889(P2014-91889A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】596047805
【氏名又は名称】トモエ繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 勝弘
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−194775(JP,U)
【文献】
特開2001−115302(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3172040(JP,U)
【文献】
特開2005−240239(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3040659(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3051367(JP,U)
【文献】
米国特許第05319807(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00 − 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲側部分の編組織と足底部分の編組織とが、難燃繊維と、ポリウレタン糸をポリプロピレン糸でカバーリング加工した裏糸と、吸湿発熱繊維とを用いて編成されており、前記甲側部分の編組織と足底部分の編組織とはパイル編みされており、前記吸湿発熱繊維のパイルループは難燃繊維のパイルループよりも小さく構成されていることを特徴とする防寒ソックス。
【請求項2】
甲側部分の編組織は2本の難燃繊維を用いて編成され、足底部分の編組織は3本の難燃繊維を用いて編成されていることを特徴とする請求項1に記載の防寒ソックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足の冷えを防止する防寒ソックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内を暖房する場合には、室内の上部に熱が溜まりやすく室内の下部が暖まりにくいので、足元が冷えやすくなる。床がフローリングなどの場合には、フローリングを暖房し、畳敷きの和室などでは畳に床暖房カーペットを敷いて足元を暖めることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フローリングの床暖房や床暖房カーペットなどを用いることなく防寒ソックスを用いて足の冷えを防止し、あるいは防寒ソックスを用いることによってフローリングの床や床暖房カーペットの設定温度を下げることができれば、足にやさしく、節電をして環境に配慮することができる。
【0004】
本発明の目的は、保温性に優れた防寒ソックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために請求項1に係る発明は、甲側部分の編組織と足底部分の編組織と
が、難燃繊維と、ポリウレタン糸をポリプロピレン糸でカバーリング加工した裏糸と
、吸湿発熱繊維とを用いて編成されており、前記甲側部分の編組織と足底部分の編組織とはパイル編みされており、前記吸湿発熱繊維のパイルループは難燃繊維のパイルループよりも小さく構成されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明では、甲側部分の編組織は2本の難燃繊維を用いて編成され、足底部分の編組織は3本の難燃繊維を用いて
編成されている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、難燃繊維は生地の密度が高く、ポリプロピレン糸は熱伝導率が低く、吸湿発熱繊維は吸湿性が高く湿気を繊維内に吸収するときに発熱するので、甲側部分と足底部分とが冷えにくい防寒ソックスを提供することができる。
またパイル編みされていることで、クッション性に優れた足にやさしい防寒ソックスとすることができる。さらに吸湿発熱繊維のパイルループは難燃繊維のパイルループよりも小さく構成されていることから、空気と比べて熱伝導率が高く水分を保持した吸湿発熱繊維が足に直接接触して足が冷えることを防止することができる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、冷えを感じ易い甲側部分を2本の難燃繊維を用いて編成し、甲側部分よりもさらに冷えを感じ易い足底部分を3本の難燃繊維を用いて編成することによっていっそう快適な防寒ソックスとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る防寒ソックスの側面図である。
【
図2】同防寒ソックスの口ゴム部分の編み組織図である。
【
図3】同防寒ソックスの甲側部分の編み組織図である。
【
図4】同防寒ソックスの足底部分の編み組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1に示すように、防寒ソックス1は、口ゴム部分2と甲側部分3と足底部分4とを備えている。口ゴム部分2は足首を覆い、甲側部分3は足の甲、アキレス腱およびくるぶしを覆う。足底部分4は足裏と足裏の周縁部と爪先とを覆う。
【0012】
口ゴム部分2は3本の難燃繊維5とゴム糸6とで編成され、保温性を高めるために2重編みされている。甲側部分3は、2本の難燃繊維5と裏糸7と吸湿発熱繊維8とで編成されている。足底部分4は3本の難燃繊維5と裏糸7と吸湿発熱繊維8とで編成されている。
【0013】
難燃繊維5は、アクリル成分(アクリロニトリル)が35%〜85%含有され通常のアクリル繊維よりアクリル成分の含有量が少ないモダアクリル繊維が90%、ウールが10%の混紡糸が用いられる。モダアクリル繊維として株式会社カネカ製カネカロン(登録商標)が用いられる。カネカロンはアクリルニトリルと塩化ビニルとを共重合したポリマーを原料としている。塩化ビニルは難燃性に優れており、モダアクリル繊維は繊維樹脂自体が難燃性を有しているので、洗濯などによって難燃効果が衰えたり消え落ちたりすることがない。混紡糸は、保温性を向上させるために25%収縮するバルキー加工が施されている。
【0014】
裏糸7としては、ポリウレタンにポリプロピレンのカバーリング加工を施したFTY(フィラメントツイストヤーン)が用いられる。ポリプロピレンの熱伝導率は0.12(W/(m・K))と小さく保温性に優れている。
【0015】
吸湿発熱繊維8としてエクス混紡糸が用いられる。エクス混紡糸には、アクリル繊維が70%含有され、日本エクスラン株式会社製エクス(登録商標)が30%含有されている。エクス混紡糸は、繊維内に湿気を吸着するときに熱(吸着熱という。)を発生する。なお、防寒ソックス1の内面側に位置する難燃繊維5と吸湿発熱繊維8とのパイル部は空気を蓄えやすくするために起毛部9が設けられている。
【0016】
防寒ソックス1の甲側部分3と足底部分4とにおいて用いられる
吸湿発熱繊維8と難燃繊維5とを別々に給糸して、空気と比べて熱伝導率が高く水分を保持した吸湿発熱繊維8のパイルループを難燃繊維5のパイルループよりも小さくすることによって、吸湿発熱繊維8が足に直接接触して足が冷えることを防止することができる。
【0017】
なお、本実施形態に係る防寒ソックス1の消費熱量を測定したところ1.6×10
−3W/cm
2・℃であった。比較例として他の2足の防寒ソックスについて消費熱量を測定したところ1.8×10
−3W/cm
2・℃と2.0×10
−3W/cm
2・℃であった。
【0018】
このように、甲側部分3の編組織と足底部分4の編組織とは難燃繊維5とポリウレタン糸をポリプロピレン糸でカバーリング加工した裏糸7と吸湿発熱繊維8とを用いて編成されているので、甲側部分3と足底部分4とが冷えにくい防寒ソックス1とすることができる。
【0019】
さらに、冷えを感じ易い甲側部分3を2本の難燃繊維5を用いて編成し、甲側部分3よりもさらに冷えを感じ易い足底部分4を3本の難燃繊維5を用いて編成することによっていっそう快適な防寒ソックス1とすることができる。
【0020】
さらに、甲側部分の編組織と足底部分の編組織とはパイル編みされているので、クッション性に優れた足にやさしい防寒ソックスとすることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 防寒ソックス
2 口ゴム部分
3 甲側部分
4 足底部分
5 難燃繊維
6 ゴム糸
7 裏糸
8 吸湿発熱繊維
9 起毛部