特許第6161280号(P6161280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161280
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】口唇化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20170703BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20170703BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20170703BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20170703BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20170703BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/86
   A61K8/891
   A61Q1/04
   A61Q1/06
   A61K8/06
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-279034(P2012-279034)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-122180(P2014-122180A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】依田 恵子
【審査官】 中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0258812(US,A1)
【文献】 特開2009−035511(JP,A)
【文献】 特開平05−148120(JP,A)
【文献】 特開平07−330544(JP,A)
【文献】 特開2006−273769(JP,A)
【文献】 特開平07−017831(JP,A)
【文献】 特開昭63−002916(JP,A)
【文献】 特開2002−193743(JP,A)
【文献】 特開2004−026681(JP,A)
【文献】 特開平05−309260(JP,A)
【文献】 特開2009−242355(JP,A)
【文献】 特開平10−182352(JP,A)
【文献】 特開2008−081413(JP,A)
【文献】 特開2004−137226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)平均粒子径0.1〜5μmのフッ素化合物処理した有機粉体 0.1〜10質量%、
(B)25℃で液状のフッ素系油剤 20〜70質量%、
(C)成分(B)を除く、25℃で液状の油剤 10〜70質量%
を含有するF/O乳化型口唇化粧料。
【請求項2】
成分(B)が、パーフルオロポリエーテル及びフッ素変性シリコーン油から選ばれる1種又は2種以上を含む請求項1記載の口唇化粧料。
【請求項3】
成分(A)及び(B)の質量割合(A)/(B)が、0.003〜0.5である請求項1又は2記載の口唇化粧料。
【請求項4】
成分(A)が、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の口唇化粧料。
【請求項5】
成分(A)の平均粒子径が、0.2〜3μmである請求項1〜4のいずれか1項記載の口唇化粧料。
【請求項6】
成分(A)及び(C)の質量割合(A)/(C)が、0.003〜1である請求項1〜5のいずれか1項記載の口唇化粧料。
【請求項7】
成分(A)が球状である請求項1〜6のいずれか1項記載の口唇化粧料。
【請求項8】
成分(B)が、下記一般式(4)及び(5)
【化1】
(式中、Rfは炭素数6の直鎖又は分岐鎖のパーフルオロアルキル基を示し、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、mは2〜6の数を示し、nは1〜6の数を示し、pは3〜50の数を示し、sは1〜5の数を示し、p及びsの割合が、0.66≦p/(p+s)≦0.9である)
で表されるポリシロキサン単位を有するフッ素変性シリコーンである請求項1〜7のいずれか1項記載の口唇化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口唇化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
口紅の色移りを防止するため、フッ素系油剤と非フッ素系油剤を組み合わせた化粧料が検討されている。例えば、特許文献1には、フッ素系油剤が非フッ素系油剤中に分散したゲル化剤を含む固形化粧料が、経時安定性、使用感、化粧持ち、色移り防止の点で優れることが記載され、特許文献2には、フッ素系油剤が非フッ素系油剤中に分散したフッ素系高分子を含む口紅組成物が、乳化安定性が良好で、色移り防止効果に優れることが記載され、特許文献3には、液状のエステル油とこれに溶解しないフッ素系油剤、これに溶解するフッ素系油剤を組み合わせた化粧料が、色移り防止効果に優れていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−193743号公報
【特許文献2】特開2004−26681号公報
【特許文献3】特開2004−137226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、フッ素系油剤を含有する口唇化粧料においては、塗布時に唇上で上滑りを生じ、唇の表面にむらづきしやすい、という課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、特定の有機粉体を、フッ素系油剤の非フッ素系油剤中への分散剤として用いることにより、長時間の色移り防止効果のみならず、唇塗布時の上滑りを抑制し、むらづきが抑制される口唇化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)平均粒子径0.1〜5μmのフッ素化合物処理した有機粉体 0.1〜10質量%、
(B)25℃で液状のフッ素系油剤 20〜70質量%、
(C)成分(B)を除く、25℃で液状の油剤 10〜70質量%
を含有するF/O乳化型口唇化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の口唇化粧料は、塗布時に唇上で上滑りを抑え、むらづきを抑制するものである。また、長時間経過後も色移りしにくく、色持ち(唇への付着性)にも優れている。さらに、口紅断面(内部)がきめ細かく均一で、なめらかであり、表面は発汗しにくいものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)の有機粉体は、平均粒子径0.1〜5μmであり、25℃で液状のフッ素油剤を安定に乳化させ、口紅断面(内部)がきめ細かく均一で、表面の発汗を抑制し、塗布時に唇上で上滑りを生じず、むらづきを抑制する点から、平均粒子径0.2〜3μmのものが好ましい。
なお、本発明において、成分(A)の平均粒子径は、電子顕微鏡観察、レーザー回折/散乱法による粒度分布測定機によって、測定される。具体的には、レーザー回折/散乱法の場合、エタノールを分散媒として、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(例えば、堀場製作所製、LA−920)で測定する。
【0009】
有機粉体としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、例えば、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ四フッ化エチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリメチルベンゾグアナミン樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂;ジメチルシリコーンを架橋したシリコーンエラストマーやポリメチルシルセスキオキサン等のシリコーン樹脂;アクリル酸ブチル・酢酸ビニル共重合体、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、(メタクリル酸ラウリル/ジメタクリル酸エチレングリコール)コポリマー等の、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキレングリコールから選ばれる1種または2種以上の重合体または共重合体のパウダー等の架橋型あるいは非架橋型の有機粉体が挙げられる。
これらのうち、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂がより好ましく、ポリメタクリル酸メチルが更に好ましい。
【0010】
また、成分(A)の有機粉体は、25℃で液状のフッ素油剤を安定に乳化させ、口紅断面(内部)がきめ細かく均一で、表面の発汗を抑制し、塗布時に唇上で上滑りを抑え、むらづきを抑制する点から、球状の形状であるのが好ましい。球状とは、形状が略球形の粉体をいい、回転楕円体、表面に凹凸がある球状粉体等であってもよく、完全な球形であることを必要としない。
【0011】
成分(A)の有機粉体は、フッ素化合物で処理されたものである。
粉体を処理するのに用いるフッ素化合物としては、例えば、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル(米国特許第3632744号)、フルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩のモノエステル体及びジエステル体(特開昭62-250074号公報)、パーフルオロアルキル基を有する樹脂(特開昭55-167209号公報)、四フッ化エチレン樹脂、パーフルオロアルコール、パーフルオロエポキシ化合物、スルホアミド型フルオロリン酸、パーフルオロ硫酸塩、パーフルオロカルボン酸塩、パーフルオロアルキルシラン(特開平2-218603号公報)、パーフルオロポリエーテル基を有する化合物(特開平8-133928号公報)等が挙げられ、25℃で液状のフッ素系油剤を安定に乳化させ、口紅断面(内部)がきめ細かく均一で、表面の発汗を抑制し、塗布時に唇上で上滑りを抑え、むらづきを抑制し、長時間経過後も色移りしにくく、色持ち(唇への付着性)にも優れている点から、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル、フルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩のモノエステル体及びジエステル体、パーフルオロアルキルシランが好ましく、塗布時に唇上で上滑りを抑え、むらづきを抑制する点から、パーフルオロアルキルシランがより好ましい。
【0012】
フッ素化合物としては、下記式で示されるトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランが好ましい。
3C−(CF2)5−(CH2)2−Si−(OCH2CH3)3
粉体を表面処理するフッ素化合物のうちでも、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体を用いることにより、安定性に優れ、肌なじみが良く、つっぱり感やムラづきを抑制し、しっとりした使用感を得ることができる。トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランとしては、デグサ社製、F8261が好適である。
【0013】
粉体をフッ素化合物で表面処理する方法としては、例えば、フッ素化合物をミキサー内で滴下または添加して粉体と混合した後、熱処理を行い、必要に応じて解砕する方法や、フッ素化合物を溶解又は分散させた有機溶剤液と粉体とを混合した後、有機溶剤を除去し、乾燥後解砕する方法などが挙げられる。
中でも、フッ素化合物を有機溶剤に溶解又は分散させ、粉体とミキサー内で混合しながら、ミキサーを減圧下で加温して有機溶剤を除去した後、必要に応じて熱処理及び解砕する製造方法が好ましい。ここで用いる有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ジクロロメタンに代表される極性有機溶剤や、ノルマルヘキサン、トルエン、キシレンのような炭化水素系有機溶剤が適当である。
【0014】
フッ素化合物の処理量は粉体によって異なるが、25℃で液状のフッ素油剤を安定に乳化させ、口紅断面(内部)がきめ細かく均一で、表面の発汗を抑制し、塗布時に唇上で上滑りを抑え、むらづきを抑制し、長時間経過後も色移りしにくく、色持ち(唇への付着性)にも優れている点から、成分(A)のフッ素処理粉体100質量%に対して、下限は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。また、上限は、7質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましく、4質量%以下が更に好ましい。また、フッ素化合物の処理量は、成分(A)のフッ素処理粉体100質量%に対して、0.1〜7質量%であるのが好ましく、0.5〜6質量%がより好ましく、1〜4質量%が更に好ましい。
有機粉体は、フッ素化合物以外の化合物で併せて処理されていても良い。
【0015】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、25℃で液状のフッ素油剤を安定に乳化させ、口紅断面(内部)がきめ細かく均一で、表面の発汗を抑制し、塗布時に唇上で上滑りを抑え、むらづきを抑制し、色持ちに優れている点から、含有量は、全組成中に0.1質量%以上であり、0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。そして、25℃で液状のフッ素油剤を安定に乳化させ、口紅断面(内部)がきめ細かく均一で、表面の発汗を抑制し、塗布時に唇上で上滑りを抑え、むらづきを抑制し、使用感に優れている点から、10質量%以下であり、8質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい。また、成分(A)の含有量は、全組成中に0.1〜10質量%であり、0.3〜8質量%が好ましく、0.5〜7質量%がより好ましい。
【0016】
成分(B)のフッ素系油剤は、25℃で液状のものであり、パーフルオロポリエーテル、フッ素変性シリコーン油が好ましい。
パーフルオロポリエーテルとしては、下記一般式(1)
【0017】
【化1】
【0018】
(式中、R1、R3、R4及びR5は、同一又は異なって、フッ素原子、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルオキシ基を示し、R2はフッ素原子又はパーフルオロアルキル基を示し、a、b及びcは分子量が500〜100,000となる0以上の数を示す。ただし、a=b=c=0となることはない。ここで、カッコ内に示される各パーフルオロアルキレンオキシ基はこの順で並んでいる必要はなく、またランダム重合でもブロック重合でも構わない)
で表わされるパーフルオロポリエーテルが好ましい。
このようなパーフルオロポリエーテルとしては、例えば一般式(2)
【0019】
【化2】
【0020】
(式中、d及びeは分子量が500〜10,000となる数を示し、d/eは0.2〜2である)
で表わされるFOMBLIN HC−04(動粘度測定法で測定した重量平均分子量1,500)、FOMBLIN HC−25(同3,200)、FOMBLIN HC−R(同6,600)(以上、SOLVAY SOLEXIS社製)や、一般式(3)
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、fは4〜500の数を示す)
で表わされるデムナムS−20(重量平均分子量25,000)、デムナムS−65(同4,500)、デムナムS−100(同5,600)、デムナムS−200(同8,400)(以上、ダイキン工業社製)等の市販品を用いることができる。
【0023】
また、成分(B)のうち、フッ素変性シリコーン油としては、下記一般式(4)及び(5)
【0024】
【化4】
【0025】
(式中、Rfは炭素数6の直鎖又は分岐鎖のパーフルオロアルキル基を示し、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、mは2〜6の数を示し、nは1〜6の数を示し、pは3〜50の数を示し、sは1〜5の数を示し、p及びsの割合が、0.66≦p/(p+s)≦0.9である)
で表されるポリシロキサン単位を有するフッ素変性シリコーンが好ましい。
【0026】
式中、R1 、R2 及びR3 で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基等の分岐鎖アルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状アルキル基などが挙げられる。
【0027】
また、mは2〜6の数を示し、好ましくは2〜5、より好ましくは3である。nは1〜6の数を示し、好ましくは1〜4、より好ましくは2である。
pは3〜50の数を示し、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜6である。sは1〜5の数を示し、好ましくは1〜3、より好ましくは1である。
【0028】
また、p及びsの割合、すなわち、一般式(4)で表されるポリシロキサン単位pの、一般式(4)及び(5)で表されるポリシロキサン単位の合計p+sに対する変性率は、色移りを抑え、色持ち、使用感に優れ、化粧料の塗布ムラを抑える点から、0.66≦p/(p+s)≦0.9であり、0.75≦p/(p+s)≦0.83が好ましい。
【0029】
このようなフッ素変性シリコーンは、例えば、特開平6−184312号公報に記載の方法に従って、製造することができる。
フッ素変性シリコーンとしては、次の一般式(6)で表されるものが好ましい。
【0030】
【化5】
【0031】
(式中、p及びsは、前記と同じ意味を示し、qは5の数を示す)
【0032】
成分(B)としては、フッ素変性シリコーン油が好ましく、前記一般式(4)及び(5)で表されるポリシロキサン単位を有するフッ素変性シリコーンがより好ましく、前記一般式(6)で表されるものが更に好ましい。
【0033】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、色移りを抑え、色持ちに優れる点から、含有量は、全組成中に20質量%以上であり、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。そして、色移りを抑え、色持ち、使用感に優れる点から、70質量%以下であり、65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。また、成分(B)の含有量は、20〜70質量%であり、25〜65質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。
【0034】
本発明において、成分(A)及び(B)の質量割合(A)/(B)は、25℃で液状のフッ素油剤を安定に乳化させ、口紅断面(内部)がきめ細かく均一で、表面の発汗を抑制し、塗布時に唇上で上滑りを抑え、むらづきを抑制し、長時間経過後も色移りしにくく、色持ちに優れている点から、0.003以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.01以上が更に好ましく、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下が更に好ましい。また、成分(A)及び(B)の質量割合(A)/(B)は、0.003〜0.5が好ましく、0.005〜0.3がより好ましく、0.01〜0.2が更に好ましい。
【0035】
成分(C)の油剤は、成分(B)以外の非フッ素系油剤で、25℃で液状のものである。
成分(C)の油剤としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、例えば、シリコーン油、炭化水素油、エステル油、エーテル油、高級アルコール等が挙げられ、安定性、使用性の観点から、炭化水素油、エステル油、高級アルコールが好ましい。
より具体的には、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、水添ポリデセン等の炭化水素油;イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ホホバ油等のエステル油;オクチルドデカノール等の高級アルコールなどが挙げられ、なかでも、イソノナン酸イソトリデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ホホバ油、流動イソパラフィン、オクチルドデカノール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールが好ましい。
【0036】
成分(C)は、1種又は2種以上を用いることができ、安定性、使用性の点から、含有量は、全組成中に10質量%以上であり、15質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましい。そして、安定性、使用性の点から、70質量%以下であり、55質量%以下が好ましく、48質量%以下がより好ましい。また、成分(C)の含有量は、全組成中に10〜70質量%であり、15〜55質量%が好ましく、18〜48質量%がより好ましい。
【0037】
本発明において、成分(A)及び(C)の質量割合(A)/(C)は、口紅断面(内部)がきめ細かく均一で、表面の発汗を抑制し、塗布時に唇上で上滑りを抑え、むらづきを抑制する点から、0.003以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.01以上が更に好ましく、1以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.25以下が更に好ましい。また、成分(A)及び(C)の質量割合(A)/(C)は、0.003〜1が好ましく、0.005〜0.5がより好ましく、0.01〜0.25が更に好ましい。
【0038】
本発明の口唇化粧料は、更に、ワックスを含有することができる。
ワックスは、25℃で固形の油性成分であり、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、例えば、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素;カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ライスワックス、木ロウ、サンフラワーワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス;シリコーンワックス、合成ミツロウ等の合成ワックス;脂肪酸、高級アルコール及びこれらの誘導体が挙げられる。
ワックスは、スティック等の形成、油の染み出し抑制、潤いの付与、塗布膜の持続性向上などの点から、融点50℃以上、140℃以下が好ましく、60℃以上、110℃以下がより好ましい。
【0039】
ワックスは、1種又は2種以上を用いることができ、口紅断面(内部)がきめ細かく均一で、塗布時に唇上で上滑りを抑え、むらづきを抑制し、色持ちに優れている点から、含有量は、全組成中に1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。そして、口紅断面(内部)がきめ細かく均一で、塗布時に唇上で上滑りを抑え、むらづきを抑制する点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。また、ワックスの含有量は、全組成中に1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%が更に好ましい。
【0040】
本発明の口唇化粧料は、前記成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、体質顔料、着色顔料、パール顔料等の粉体;界面活性剤、低級アルコール、多価アルコール、高分子化合物、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、防腐剤、保湿剤、増粘剤、水等を含有することができる。
【0041】
本発明の口唇化粧料は、例えば、成分(C)に色材、他の成分を加熱して混合させ、これに、成分(A)及び(B)の混合物を加熱したものを滴下し、混合した後、冷却することにより、製造することができ、F/O乳化型(油中フッ素系油剤乳化型)とすることができる。尚、油中フッ素系油剤乳化型のフッ素系油剤とは、成分(B)25℃で液状のフッ素系油剤のことであり、油とは、成分(C)で成分(B)を除く、25℃で液状の油剤のことであり、成分(B)が、成分(C)の油相中に乳化分散されている状態である。
また、本発明の口唇化粧料は、固形状、非固形状のものとして得ることができ、口紅、リップクリーム、リップグロス、リップライナーなどとすることができる。
上述した実施形態に関し、本発明は、更に以下の組成物を開示する。
【0042】
<1>次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)平均粒子径0.1〜5μmのフッ素化合物処理した有機粉体 0.1〜10質量%、
(B)25℃で液状のフッ素系油剤 20〜70質量%、
(C)成分(B)を除く、25℃で液状の油剤 10〜70質量%
を含有するF/O乳化型口唇化粧料。
【0043】
<2>成分(A)の含有量は、全組成中に0.1質量%以上であり、0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、10質量%以下であり、8質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましい前記<1>記載の口唇化粧料。
<3>成分(B)の含有量は、全組成中に20質量%以上であり、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、70質量%以下であり、65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい前記<1>又は<2>記載の口唇化粧料。
<4>成分(C)の含有量は、全組成中に10質量%以上であり、15質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましく、70質量%以下であり、55質量%以下が好ましく、48質量%以下がより好ましい前記<1>〜<3>のいずれか1記載の口唇化粧料。
【0044】
<5>成分(B)が、パーフルオロポリエーテル及びフッ素変性シリコーン油から選ばれる1種又は2種以上を含む前記<1>〜<4>のいずれか1記載の口唇化粧料。
<6>成分(A)及び(B)の質量割合(A)/(B)が、0.003以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.01以上が更に好ましく、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下が更に好ましい前記<1>〜<5>のいずれか1記載の口唇化粧料。
<7>成分(A)が、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種又は2種以上を含む前記<1>〜<6>のいずれか1記載の口唇化粧料。
<8>成分(A)の平均粒子径が、0.2〜3μmが好ましい前記<1>〜<7>のいずれか1記載の口唇化粧料。
【0045】
<9>成分(A)及び(C)の質量割合(A)/(C)が、0.003以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.01以上が更に好ましく、1以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.25以下が更に好ましい前記<1>〜<8>のいずれか1記載の口唇化粧料。
<10>成分(A)が球状である前記<1>〜<9>のいずれか1記載の口唇化粧料。
<11>成分(B)が、下記一般式(4)及び(5)
【0046】
【化6】
【0047】
(式中、Rfは炭素数6の直鎖又は分岐鎖のパーフルオロアルキル基を示し、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、mは2〜6の数を示し、nは1〜6の数を示し、pは3〜50の数を示し、sは1〜5の数を示し、p及びsの割合が、0.66≦p/(p+s)≦0.9である)
で表されるポリシロキサン単位を有するフッ素変性シリコーンが好ましい前記<1>〜<10>のいずれか1記載の口唇化粧料。
【実施例】
【0048】
製造例1(フッ素変性シリコーンの製造)
【化7】
【0049】
613−CH2CH2−O−CH2CH=CH2 の合成:
温度計、冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに、FA-6 (ユニマッテク社製)800g(2.2mol)と粒状NaOH(和光純薬社製)175.78g(4.4mol)を加えた。窒素雰囲気下で、テフロン(登録商標)製12cm三日月攪拌翼にて200rpmにて攪拌しながら、加熱し、フラスコ内温度を60℃とした。そこへ臭化アリル(和光純薬社製)398.73g(3.3mol)を2時間かけて滴下した。滴下終了後70℃で1時間、80℃で1時間撹拌した。その後130℃に昇温し、過剰の臭化アリルを除去した。60℃まで冷却後、イオン交換水800gを入れ、30分間攪拌、その後静置して分層させた。上層の水層を抜き出し、さらにイオン交換水800gを入れ、再度攪拌、静置、水層除去を行った。60℃/5KPaにて脱水し、100℃/2KPaにて蒸留し、留分として、C613−CH2CH2−O−CH2CH=CH2 774.9gを得た(収率88%)。
【0050】
温度計を備えた300mLの四つ口フラスコに、下式で表されるハイドロジェンポリシロキサン(信越化学社製)52.89g(111mmol)を加え、窒素雰囲気下、テフロン(登録商標)製8cm三日月翼にて200rpmで攪拌し、2質量%塩化白金酸6水和物/イソプロピルアルコール0.66gを加え、110℃に昇温した。
【0051】
【化8】
【0052】
613−CH2CH2−O−CH2CH=CH2 197.11g(488mmol)を2時間で滴下した。滴下終了後、110℃で2時間撹拌した。その後、70℃まで下げた。0.1%NaOH溶液25.07gを加え、2時間攪拌した。60℃/5KPaにて脱水し、脱水終了後、同温度にてカルボラフィン3(日本エンバイロケミカルズ社製)2.51gを加え、2時間攪拌した。0.1μm PTFEメンブランフィルターにてろ過し、ろ液を100℃/5KPa、水62.5gを用いて水蒸気蒸留し、目的化合物(化合物B1)206.3gを得た(収率89%)。
【0053】
製造例2(2%パーフルオロアルキルリン酸(PF)処理粉体の製造)
内容量2000mLのビーカーに水1000mLを入れ、攪拌しながら、粉体100gを投入し、充分攪拌し、スラリーとした。これに攪拌しながらパーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩(PF)の15質量%水溶液13.5gを徐々に添加し、終了後100分間攪拌を行い、その後、ヌッチエで吸引濾過し、乾燥器内で、60℃で3時間乾燥し、乳鉢で粉砕して、2%PF処理粉体を得た。
なお、パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩(PF)は、以下の成分(混合物)である。
【0054】
【化9】
【0055】
製造例3(2%トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン(FHS)処理粉体の製造)
撹拌装置及び加熱装置を有する反応釜に水10Lを入れ、撹拌しながら、有機粉体1kgを続いて投入し、粉体スラリーを作製した。よく撹拌した後、塩化アルミニウム六水塩12gを水600gに溶解させた塩化アルミニウム六水塩水溶液をゆっくりと添加し、しばらく撹拌した。その後、水洗濾過工程、乾燥工程および粉砕工程を順にそれぞれ行うことにより、塩化アルミニウムが表面処理された有機粉体を得た。こうして得られた塩化アルミニウム処理有機粉体900gをミキサーに入れて撹拌しながら、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン(デグサ社製:F8261)18gをヘキサン180gに溶解させた溶液を添加した。ヘキサン除去のため、ミキサーを加温し必要に応じてミキサー槽内を減圧乾燥した後、粉砕して、2%FHS処理粉体を得た。
【0056】
実施例1〜10及び比較例1〜3
表1に示す組成の口紅を製造し、塗布時の上滑りしにくさ、塗布後の仕上がりのムラになりにくさ、口紅断面のなめらかさ、口紅の発汗しにくさ、色移りしにくさ及び色持ちを評価した。結果を表1に併せて示す。
【0057】
(製造方法)
成分(C)に色材及びその他の成分を加熱して混合し、これに、成分(A)及び(B)を分散して加熱・混合したものを滴下し、混合した後、型に入れ、冷却することにより、口紅を得た。
【0058】
(評価方法)
(1)塗布時の上滑りしにくさ:
口紅を唇に塗布している最中の上滑りしにくさを、5名の専門パネラーが使用し、以下の基準で官能評価した。結果を5名の合計で示す。
5:上滑りしない。
4:あまり上滑りしない。
3:やや上滑りする。
2:上滑りする。
1:かなり上滑りする。
【0059】
(2)塗布後の仕上がりのムラになりにくさ:
口紅を唇に塗布した後の仕上がりのムラになりにくさを、5名の専門パネラーが使用し、以下の基準で官能評価した。結果を5名の合計で示す。
5:ムラなく均一。
4:あまりムラにならない。
3:ややムラになる。
2:ムラになる。
1:かなりムラになり、ダマになっている。
【0060】
(3)口紅断面のなめらかさ:
口紅をカッターで縦に切り、その断面を、5名の専門パネラーが目視にて観察し、以下の基準で評価した。結果を5名の合計で示す。
4:均一でなめらかに見える。
3:粗くざらざらした状態に見える。
2:液滴が見える。
1:分離した大きな液体が見える。
【0061】
(4)口紅の発汗しにくさ:
口紅を40℃、1時間静置し、スティック表面を、目視にて観察した。5名の専門パネラーが目視にて観察し、以下の基準で評価した。結果を5名の合計で示す。
4:表面に油の分離や発汗がない。
3:細かい液滴が見える。
2:大きな液滴が見える。
1:表面全体がぬれている。
【0062】
(5)色移りしにくさ:
5名の専門パネラーが、口紅を唇に塗布し4時間経過後、唇に白いタイル(LIXIL社製、ミスティキラミック ブライト釉 SPKC-100/L00)を押し当てたときの色移りを、以下の基準で官能評価した。結果を5名の合計で示す。
5:色移りしない。
4:あまり色移りしない。
3:やや色移りする。
2:色移りする。
1:かなり色移りする。
【0063】
(6)色持ち:
5名の専門パネラーが、口紅を唇に塗布し4時間経過後の色持ちを、以下の基準で官能評価した。結果を5名の合計で示す。
5:唇に口紅が均一に付着したままになっている。
4:唇に口紅に付着している。
3:唇から口紅が少し取れている。
2:唇から口紅が取れている。
1:唇から口紅がかなり脱落し取れている。
【0064】
【表1】