(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記金型ユニットが前記徐冷室又は加熱室の少なくとも一方の室に搬入されてから搬出されるまでの間に、前記初期相対角度位置から90度又は270度自転した相対角度位置で最も長い時間停止するように前記自転機構を制御する、請求項1に記載のガラス成形体の製造方法。
前記制御部は、前記金型ユニットが前記初期相対角度位置から90度自転した相対角度位置で停止している停止時間と、前記金型ユニットが前記初期相対角度位置から270度自転した相対角度位置で停止している停止時間とが等しくなるように、前記金型ユニットが前記自転機構を制御する、請求項2に記載のガラス成形体の製造方法。
前記少なくとも一方の室に搬入されてから搬出されるまでの時間であるタクトタイムに対する、前記金型ユニットが前記初期相対角度位置から90度自転した相対角度位置である停止時間及び前記金型ユニットが前記初期相対角度位置から270度自転した相対角度位置である停止時間の合計時間の割合が、60%以上85%以下である、請求項5に記載されたガラス成形体の製造方法。
前記金型ユニットは、前記ガラス成形体の形状に対応する成形面を有する成形型と、前記成形型を保持する型支持部材とを有する、請求項1から6の何れか1項に記載されたガラス成形体の製造方法。
前記金型ユニットは、前記ガラス成形体の形状に対応する成形面を有する成形型と、前記成形型を保持する型支持部材とを有する、請求項9に記載されたガラス成形体の製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
図1は、本実施形態のレンズ成形体の製造装置の構成を示す水平断面図、
図2は、
図1におけるII-II断面図、
図3は、
図1におけるIII-III断面図金型ユニットの鉛直断面図である。また、
図4は、金型ユニットの鉛直断面図である。
図1から
図3に示すように、本実施形態のレンズ成形体の製造装置1は、略円柱状に形成された外部ケーシング2と、外部ケーシング2内に設けられたターンテーブル4と、外部ケーシング2内のターンテーブル4の上方に設けられた水平断面円弧状の内部ケーシング6と、を有する。これら外部ケーシング2、内部ケーシング6及びターンテーブル4は同心同軸に配置されている。
【0015】
外部ケーシング2は、内部に略円柱状の空間が画成されており、その側面の一部に金型ユニット8を搬入及び搬出するための開口部2Aが形成されている。また、この開口部2Aにはシャッター(図示せず)が取り付けられており、このシャッターは、金型ユニット8を搬入及び搬出する際に開かれる。外部ケーシング2の内部空間は不活性ガス雰囲気とされている。不活性ガスとしては、窒素やアルゴンなどが使用され、酸素濃度が5ppm以下であることが好ましい。なお、このように内部空間を不活性ガス雰囲気とすることで、金型ユニット8の酸化やガラス材料の表面変質を防止できる。
【0016】
ターンテーブル4は、回転盤10と、回転盤10の中心に接続された駆動軸(図示せず)と、駆動軸を回転させる、例えば、モータなどの駆動機構(図示せず)と、を備える。回転盤10には、所定の半径の円周上に等しい角度間隔で9つの円形の開口10Aが形成されている。この開口10Aは、金型ユニット8を構成する型支持部材12の底部12Aよりも小径であり、かつ、自転機構14の回転軸14Aよりも大径に形成されている。金型ユニット8は、回転盤10の開口10A上に配置され、回転盤10が回転することにより、内部ケーシング6内の各処理室を巡回する。本実施形態では、ターンテーブル4は、駆動機構が所定の停止時間おきに、断続的に一定角度ずつ回転することにより、所定の半径の円周に沿って金型ユニット8を搬送する。この金型ユニット8の搬送される経路が、本発明の搬送経路に相当する。
【0017】
また、ターンテーブル4は、各回転動作の間に、予め設定された所定時間にわたり、停止する。この停止状態では、回転盤10に形成された開口10Aが、各処理室に設けられた自転機構14の直上に位置する。なお、このターンテーブル4の停止時間は、プレス室26におけるプレス処理に要する時間よりも長くなるように決定されている。
【0018】
内部ケーシング6は、外部ケーシング2と同心同軸に水平方向に280度の角度範囲にわたって円弧状に延びる内壁6Aと、内壁6Aの半径方向外側に位置し、水平方向に280度の角度範囲にわたって円弧状に延びる外壁6Bと、内壁6Aと外壁6Bの上部の間を塞ぐ天井部6Cと、内壁6Aと外壁6Bの下部の間を塞ぐ底部6Dとを有する。これら内壁6A、外壁6B、天井部6C、及び底部6Dにより、内部ケーシング6内には水平断面が円弧形状の処理空間が形成されている。内部ケーシング6の底部6Dには、金型ユニット8の搬送経路に沿って、円弧状のスリット6Eが形成されている。このスリット6Eの幅は、金型ユニット8が載置される型支持部材12の中間部12Bの直径よりも大きい。
【0019】
内部ケーシング6の処理空間は、ターンテーブル4の回転方向に一定角度の角度範囲で7つの室に区切られている。これら7つの室は、金型ユニット8の搬送経路に沿って、第1急熱室20、第2急熱室22、均熱室24、プレス室26、第1徐冷室28、第2徐冷室30、第3徐冷室32の順序で並んでいる。内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間には、シャッター(図示せず)が設けられている。
【0020】
第1急熱室20、第2急熱室22、均熱室24、プレス室26、第1徐冷室28、第2徐冷室30、及び第3徐冷室32には、それぞれ、ヒータ34、36、38、40、42、44、46が設けられている。これらヒータ34、36、38、40、42、44、46は、金型ユニット8の搬送経路の両側に設けられており、それぞれ、第1急熱室20、第2急熱室22、均熱室24、プレス室26、第1徐冷室28、第2徐冷室30、及び第3徐冷室32内を所定の温度になるように加熱している。
【0021】
図3に示すように、外部ケーシング2のプレス室26の上方には、それぞれプレス機構47が設けられている。プレス機構47は、外部ケーシング2の天井部の上方に設けられた収容室内に収容された、例えば、油圧ジャッキ等のアクチュエータ47Aと、アクチュエータ47Aのピストン47Bの先端に取り付けられた押圧板47Cとを備える。
【0022】
外部ケーシング2及び内部ケーシング6の天井部2C,6Cのアクチュエータ47A本体の下方には、それぞれ開口が形成されている。アクチュエータ47Aのピストン47Bは、これら外部ケーシング2及び内部ケーシング6の天井部2C,6Cの開口を挿通し、下端が第1及び第2プレス室24、30内まで到達している。そして、アクチュエータ47Aを駆動することにより、押圧板47Cが下降し、第1及び第2プレス室24、30内の金型ユニット8を上方から押圧する。
【0023】
また、第1急熱室20、第2急熱室22、均熱室24、第1徐冷室28、第2徐冷室30、及び第3徐冷室32の下方には、それぞれ、各室内で金型ユニット8を自転させる自転機構14が設けられている。
図2に示すように、自転機構14は、例えばモータなどの回転駆動機構14Bと、回転駆動機構14Bにより回転され、上方向に向かって進退可能な回転軸14Aと、回転軸14Aの先端に設けられた支持部14Cと、を有する。また、各室の自転機構14は制御部15に接続されており、制御部15により回転駆動機構14Bの回転の駆動の開始、停止、及び回転速度を制御することができる。
【0024】
ターンテーブル4の移動時には、自転機構14は、回転軸14A及び支持部14Cがターンテーブル4と干渉しないように、支持部14Cの上面が回転盤10の下面よりも低くなるまで、回転軸14Aを退行させる。なお、以下、このように支持部14Cが回転盤10よりも低くなるまで回転軸14Aを退行させた状態を、自転機構14の待機状態という。
【0025】
自転機構14により金型ユニット8を自転させる際には、まず、回転軸14Aを伸張させ、ターンテーブル4上に載置された金型ユニット8を支持部14Cにより持ち上げる。この際、上記の通り、各処理室内において金型ユニット8に処理を行っている間は、ターンテーブル4は回転盤10に形成された開口10Aが自転機構14の上方に位置した状態で停止しているため、伸張された回転軸14Aは、この開口10Aを挿通することができる。このように金型ユニット8を持ち上げた状態で、回転駆動機構14Bが回転し、回転軸14Aを回転させる。そして、再び、回転軸14Aを退行させて、待機状態へと戻る。
【0026】
制御部15は、ターンテーブル4が停止状態にある時、すなわち、プレス室26以外の各処理室(すなわち、第1急熱室20、第2急熱室22、均熱室24、第1徐冷室28、第2徐冷室30、及び第3徐冷室32)内において金型ユニット8に処理を行っている間に、金型ユニット8が所定の停止角度位置に停止するように自転機構14の回転を制御する。
【0027】
さらに、制御部15は、自転機構14が90度ずつ4回回転させるタイミング、すなわち、停止角度位置における停止時間を制御する。本実施形態では、制御部15は、プレス室26におけるプレス処理の際に生じる金型ユニット8及び内部に収容されたガラス材料60の温度の不均一を打ち消すように自転機構14が回転するタイミングを制御する。
【0028】
図1に示すように、外部ケーシング2内の搬送経路の第3徐冷室32と、急熱室20との間には、急冷部48及び交換部50が形成されている。急冷部48は、第2徐冷室32から搬送された金型ユニット8を急速に冷却するための領域であり、周囲にヒータが配置されておらず装置外部と略同じ温度となっている。また、交換部50は外部ケーシング2の開口2Aを通じて、成形が完了したガラス成形体が収容された金型ユニット8と、成形処理が行われていない新たなガラス材料が収容された金型ユニット8とを交換するための領域である。
【0029】
図4に示すように、金型ユニット8は、金型52と、型支持部材12とを含み、金型52が型支持部材12に取り付けられている。金型(成形型)52は、製造すべきガラス成形体の形状に合わせて形成された成形面を有する上型54、下型56と、これら上型54及び下型56の径方向の相互位置を規制する胴型58とを有する。上型54及び下型56の成形面には離型膜が成膜されている。ガラス材料60は、上型54と下型56の間に挟み込まれた状態で配置されている。ガラス材料60をガラス屈伏点温度以上に加熱した状態で、上下型54、56を相対的に近接する方向に加圧することにより、ガラス材料に成形面形状が転写され、所望の形状のガラス成形体(光学素子)にプレス成形することができる。
【0030】
ここで、上記のガラス成形体の製造装置1では、プレス室26におけるプレス工程の開始時から終了時までの間ずっと、金型ユニット8の両側の面がヒータ40に面しており、前後の面はヒータ40に面していない。このため、金型ユニット8の両側部は、前部及び後部に比べてヒータからの放射熱をより多く受けることとなる。
【0031】
これに対して、本実施形態では、制御部15が、金型ユニット8が各処理室において初期相対角度位置で停止している停止時間よりも、金型ユニット8が初期相対角度位置と異なる相対角度位置で停止している停止時間が長くなるように、自転機構14を制御する。
【0032】
具体的には、制御部15は、自転機構14を、各処理室へ搬入されてから各処理室から搬出されるまでの間に、断続的に金型ユニット8を90度ずつ、4回自転させるように制御する。これにより、金型ユニット8が各処理室へ搬入された直後の搬送経路に対する相対的な角度位置(以下、初期相対角度位置という)と、金型ユニット8が各処理室から搬出される直前の搬送経路に対する相対的な相対角度位置とが等しくなる。
【0033】
さらに、制御部15は、これら4回の回転のタイミングを、金型ユニット8が初期相対角度位置、又は初期相対角度位置に対して180度回転した相対角度位置に停止している時間よりも、金型ユニット8が90度又は270度の相対角度位置に停止している時間が長くなるように、自転機構14を制御する。
【0034】
これにより、プレス室26以外の各処理室において、金型ユニット8のプレスステップにおいてヒータ40に面していない部分が、プレスステップにおいてヒータ40に面している部分に比べて、各室のヒータ34、36、38、42、44、46からより多くの熱量を受けることとなる。したがって、プレスステップにおいて発生する金型ユニット8及び金型ユニット8内のガラス材料60の温度分布の不均一を抑制することができる。
【0035】
さらに、以下に説明するように、プレス室26以外の各室における自転機構14の駆動タイミングを決定することにより、より効率好くガラス材料60の温度分布の不均一の発生を抑制できる。
【0036】
図5は、プレス室26以外の各室における自転機構の駆動タイミングを決定するために想定した各パターンにおける、各角度位置における停止時間の割合を示す図である。本実施形態のガラス成形体の製造装置1のプレス室26以外の各室における自転機構14は、90度ごと断続的に回転する。そこで、
図5に示すように、各室に搬送された直後の金型ユニット8の角度位置を初期角度位置とし、各室に金型ユニットが搬入されてから搬出されるまでの滞在時間に対して、金型ユニット8がこの初期角度位置に対して反時計回りに90度又は270度で停止している時間の割合が、0%、40%、60%、80%、85%、及び100%とした場合について、ガラス成形体(レンズ)を製造し、各場合についてアスの発生を観察した。なお、本実施形態では、金型ユニット8が、初期角度位置に対して90度で停止している時間が、270度で停止している時間と等しくなるように、かつ、金型ユニット8が、初期角度位置に対して0度で停止している時間が、180度で停止している時間と等しくなるように、制御部15が自転機構14を制御する。
【0037】
図6は、金型ユニット8が初期角度位置に対して90度又は270度で停止している時間の割合と、ガラス成形体(レンズ)に生じるアスとの関係を示すグラフである。なお、グラフ中の縦軸は90度又は270度で停止している時間を、金型ユニットが各処理室に滞在している時間の割合(90°(270°)停止時間比率という)が50%の際に発生したアス本数で規格化したアスの発生本数の割合を示している。
同図に示すように、90°(270°)停止時間比率が50%よりも小さい場合には、アスの発生比率が1を超える。これに対して、90°(270°)停止時間比率を50%以上に増加させると、アスの発生比率が低下し、1以下となる。そして、90°(270°)停止時間比率が60%の場合にはアスの発生比率が0.75となり、90°(270°)停止時間比率が85%の場合にはアスの発生比率が0.65となる。また、90°(270°)停止時間比率を85%よりも増加させると、アスの発生比率は増加し、90°(270°)停止時間比率が95%の場合にはアスの発生比率が1となる。
【0038】
このように、90°(270°)停止時間比率が50%以上、かつ、95%以下の場合には、アスの発生比率が1以下となる。さらに、90°(270°)停止時間比率を60%以上、かつ、85%以下とすることにより、アスの発生比率を0.65〜0.75まで抑えることができる。
【0039】
したがって、金型ユニット8が初期角度位置に対して90度又は270度で停止している時間を、金型ユニットが各処理室に滞在している時間の50%以上、かつ、95%以下とすることが好ましい。さらに金型ユニットが各処理室に滞在している時間の60%以上、かつ、85%以下にすることが好ましい。
【0040】
以下、上記の検討を踏まえた本実施形態のガラス成形体の製造装置1により、ガラス成形体を製造する方法を説明する。なお、以下の説明では、一の金型ユニット8に着目して、ガラス成形体を製造する方法を説明するが、本実施形態のガラス成形体の製造装置1では、複数の金型ユニット8がターンテーブル4により連続して搬送経路に沿って搬送され、各処理室で加熱、プレス、徐冷等の処理が並行して行われる。
【0041】
図7は、本実施形態のガラス成形体の製造方法における、ガラス成形のための各処理におけるガラス材料(ガラス成形体)60の温度変化を示すグラフであり、横軸は時間を、縦軸は温度を示している。
【0042】
まず、ターンテーブル4が回転し、成形処理が完了したガラス成形体を収容する金型ユニット8が交換部50に到達すると、外部ケーシング2の開口部2Aのシャッターが開かれる。このように外部ケーシング2の開口部のシャッターが開かれたら、この開口部2Aを通して、成形処理が完了した金型ユニット8を外部へ取り出し、新たなガラス材料が収容された金型ユニット8をターンテーブル4の回転盤10に形成された開口10A上に配置する。
【0043】
そして、前回の回転動作の完了から予め設定されたターンテーブル4の停止時間(以下、タクトタイムという)が経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、ターンテーブル4が平面視反時計回りに一定角度回転する。なお、タクトタイムは、各室に金型ユニット8が搬入されてから、搬出されるまでの時間に略等しい。これにより、金型ユニット8は型支持部材12に保持された状態で、第1急熱室20内に搬送される。この際、内部ケーシング6の底部に設けられたスリット6E内を型支持部材12が通るため、型支持部材12と内部ケーシング6とが干渉することはない。
【0044】
第1急熱室20に金型ユニット8が搬送されると、金型ユニット8を急速加熱する第1急熱ステップが行われる。第1急熱室20内は、搬送経路の両側に設けられたヒータ34により、ガラス屈伏点温度(Ts)と同等もしくはそれ以上の温度に保たれている。そして、第1急熱室20に搬送された金型ユニット8は、搬送経路の両側に設けられたヒータ34により加熱される。
【0045】
また、第1急熱ステップでは、ヒータ34により金型ユニット8を加熱しながら、以下のように、自転機構14により金型ユニット8を自転させる。
すなわち、第1急熱室20に金型ユニット8が搬送されると、自転機構14が、金型ユニット8が平面視で反時計回りに90度回転する。これにより、金型ユニット8は、第1急熱室20に搬送された直後の相対角度位置に対して、90度自転した状態となる。そして、自転機構14は、金型ユニット8が第1急熱室20に予め設定されたターンテーブル4の停止時間(以下、タクトタイムという)の42.5%の時間が経過するまで、停止する。
【0046】
そして、第1急熱室20に滞在している時間の42.5%経過したら、再び、自転機構14が金型ユニット8を平面視で反時計回りに90度回転させる。これにより、金型ユニット8は、第1急熱室20に搬送された直後の相対角度位置に対して、180度自転した状態となる。この状態で、自転機構14は、タクトタイムの7.5%の時間が経過するまで停止する。
【0047】
自転機構14は、タクトタイムの7.5%の時間停止したら、再び、金型ユニット8が平面視で反時計回りに90度回転する。これにより、金型ユニット8は、第1急熱室20に搬送された直後の相対角度位置に対して、270度自転した状態となる。そして、自転機構14は、金型ユニット8がタクトタイムの42.5%の時間が経過するまで、停止する。
【0048】
そして、自転機構14は、タクトタイムの42.5%の時間停止したら、再び、金型ユニット8が平面視で反時計回りに90度回転する。これにより、金型ユニット8は、第1急熱室20に搬送された直後の相対角度位置と等しい状態に戻る。この状態で、自転機構14は、タクトタイムの7.5%の時間が経過するまで停止する。
【0049】
金型ユニット8が自転機構14により第1急熱室20に搬送された直後の相対角度位置と等しい状態まで回転された後、タクトタイムの7.5%の時間が経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、ターンテーブル4が平面視反時計回りに一定角度回転する。これにより、金型ユニット8は型支持部材12に保持された状態で、第2急熱室22内へ搬送される。上記のような、タイミングで自転機構14が金型ユニット8を回転させることにより、金型ユニット8が初期角度位置に対して90度又は270度で停止している時間が、金型ユニットが第1急熱室20に滞在している時間の85%となる。
【0050】
前回のターンテーブル4の回転から予め設定されたタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、ターンテーブル4が平面視反時計回りに一定角度回転する。これにより、金型ユニット8は型支持部材12に保持された状態で、第2急熱室22内に搬送される。
【0051】
第2急熱室22に金型ユニット8が搬送されると、金型ユニット8をガラス屈伏点温度(Ts)程度まで急速加熱する第2急熱ステップが行われる。均熱室22内は、ヒータ36によりガラス屈伏点温度(Ts)と同等もしくはそれ以上の温度に保たれている。これにより、第2急熱室22内に搬送された金型ユニット8内のガラス材料60がガラス屈伏点温度(Ts)程度に到達するまで加熱される。
【0052】
また、これと並行して、第1急熱室20と同様に、制御部15が、金型ユニット8を所定のタイミングで90度ずつ平面視反時計回りに断続的に回転する動作を行うように第2急熱室22の直下の自転機構14を制御する。すなわち、制御部15は、第1急熱室20と同様に、第2急熱室22においても、金型ユニット8が初期相対角度位置に対して90度又は270度で停止している時間が、タクトタイムの85%となるように自転機構14を制御する。
【0053】
前回のターンテーブル4の回転から予め設定されたタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、ターンテーブル4が平面視反時計回りに一定角度回転する。これにより、金型ユニット8は型支持部材12に保持された状態で、均熱室24内に搬送される。
【0054】
均熱室24に金型ユニット8が搬送されると、金型ユニット8及び内部に収容されたガラス材料60を均熱化する均熱ステップが行われる。均熱室24内は、ヒータ38によりガラス屈伏点温度(Ts)程度に保たれている。これにより、金型ユニット8内及び金型ユニット8内のガラス材料60は、その温度がガラス屈伏点温度(Ts)程度で均一な温度分布となるように、均熱化される。
【0055】
また、制御部15は、均熱室24においても、第1急熱室20と同様に、金型ユニット8が初期相対角度位置に対して90度又は270度で停止している時間が、タクトタイムの85%となるように自転機構14を制御する。
【0056】
前回のターンテーブル4の回転から予め設定されたタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、ターンテーブル4が平面視反時計回りに一定角度回転する。これにより、金型ユニット8は型支持部材12に保持された状態で、プレス室26内に搬送される。
【0057】
プレス室26に金型ユニット8が搬送されると、プレスステップが行われる。プレスステップでは、ヒータ42により金型ユニット8をガラス屈伏点温度(Ts)程度に保つように加熱しながら、プレス機構47により金型ユニット8をプレスする。この際、ヒータ42は搬送経路の両側に設けられているため、金型ユニット8の搬送経路の両側の部分が搬送経路の前後の部分に比べて加熱される。しかしながら、上記の通り、第1急熱室20、第2急熱室22、及び均熱室24において、金型ユニット8が初期相対角度位置に対して90度又は270度で停止している時間が、初期相対角度位置で停止している時間よりも長くなるように、自転機構14により自転されているため、金型ユニット8及びガラス材料60に生じる温度分布の不均一を抑制できる。
【0058】
そして、プレスステップが完了し、前回のターンテーブル4の回転からタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、ターンテーブル4が平面視反時計回りに一定角度回転する。これにより、金型ユニット8は型支持部材12に保持された状態で、第1徐冷室28内に搬送される。
【0059】
第1徐冷室28ではヒータ42により金型ユニット8を加熱しながら、ゆっくりと金型ユニット8を冷却する第1の徐冷ステップが行われる。また、第1徐冷室28においても、制御部15は、第1急熱室20と同様に、金型ユニット8が初期角度位置に対して90度又は270度で停止している時間が、金型ユニット8が第1徐冷室28に滞在している時間の85%となるように自転機構14を制御する。
【0060】
そして、第1徐冷ステップが完了し、前回の回転から予め設定されたタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、ターンテーブル4が平面視反時計回りに一定角度回転する。これにより、金型ユニット8は型支持部材12に保持された状態で、第2徐冷室30内に搬送される。
【0061】
第2徐冷室30ではヒータ44により金型ユニット8を加熱しながら、ゆっくりと金型ユニット8を冷却する第2の徐冷ステップが行われる。第2徐冷室32内は、搬送経路の両側に設けられたヒータ44によりガラス転移温度よりも10℃高い温度(Tg+10℃)と同等もしくはそれよりも若干低い温度に保たれている。そして、第2徐冷室30においても、制御部15は、第1急熱室20と同様に、金型ユニット8が初期角度位置に対して90度又は270度で停止している時間が、金型ユニット8が第2徐冷室30に滞在している時間の85%となるように自転機構14を制御する。これにより、金型ユニット8内のガラス成形体(プレス処理が完了したガラス材料)60は、ガラス転移温度よりも10℃高い温度(Tg+10℃)で均熱化される。
【0062】
前回のターンテーブル4の回転からタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各室の間に設けられたシャッターが開かれ、ターンテーブル4が平面視反時計回りに一定角度回転する。これにより、金型ユニット8は型支持部材12に保持された状態で、第2徐冷室30から第3徐冷室32内へ搬送される。
【0063】
第3徐冷室32に金型ユニット8が搬送されると、金型ユニット8をさらに徐冷する第3の徐冷ステップが行われる。第3徐冷室32内は、搬送経路の両側に設けられたヒータ46によりガラス転移温度(Tg)よりも十分に低い温度に保たれている。
【0064】
そして、第3徐冷室32においても、制御部15は、第1急熱室20と同様に、金型ユニット8が初期角度位置に対して90度又は270度で停止している時間が、金型ユニット8が第3徐冷室32に滞在している時間の85%となるように自転機構14を制御する。これにより、金型ユニット8内のガラス成形体(プレス処理が完了したガラス材料)60は、ガラス転移温度(Tg)よりも十分低い温度まで冷却される。
【0065】
前回のターンテーブル4の回転からタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各処理室の間に設けられたシャッターが開かれ、ターンテーブル4が一定角度回転する。これにより、金型ユニット8は型支持部材12に保持された状態で、内部ケーシング6の外部の急冷部48へ搬送される。
【0066】
急冷部48に金型ユニット8が搬送されると、急冷ステップが行われる。急冷部48には、ヒータが設置されておらず、装置の周囲と同程度の温度となっている。このため、金型ユニット8及び内部のガラス成形体60は急速に冷却される。なお、急冷部48には、自転機構14が設けられていないが、これは、第3徐冷室32においてガラス成形体60の温度がガラス転移温度(Tg)よりも十分低い温度まで冷却されて固化いるため、急冷部48でガラス成形体60が変形する可能性が低いためである。
【0067】
さらに、前回のターンテーブル4の回転から予め設定されたタクトタイムが経過すると、内部ケーシング6の周方向端部及び各処理室の間に設けられたシャッターが開かれ、ターンテーブル4が一定角度回転する。これにより、金型ユニット8は型支持部材12に保持された状態で、交換部50へ搬送される。
【0068】
交換部50に金型ユニット8が搬送されると、交換ステップが行われる。ターンテーブル4の回転が完了し、成形処理が完了したガラス成形体を収容する金型ユニット8が交換部50に到達すると、外部ケーシング2の開口部2Aのシャッターが開かれる。外部ケーシング2の開口部2Aのシャッターが開かれたら、この開口部2Aを通して、成形処理が完了した金型ユニット8は外部へ取り出される。そして、新たなガラス材料60が収容された金型ユニット8がターンテーブル4の回転盤10上に載置される。
以上の工程により、ガラス成形体60の製造が完了する。
【0069】
本実施形態のように、搬送経路の両側にヒータ34、36、38、40、42、44、46が設けられているガラス成形体の製造装置1では、金型ユニット8の両側から加熱されるため、ヒータ34、36、38、40、42、44、46から受ける熱が金型ユニット8の部分によって異なり、金型ユニット8の表面に温度分布が発生しやすい。これに対して、本実施形態では、制御部15が、各処理室において、金型ユニット8が初期相対角度位置で停止している停止時間よりも、金型ユニット8が初期相対角度位置に対して90度又は270度で停止している停止時間が長くなるように、自転機構14を制御している。このため、第1急熱室20、第2急熱室22及び均熱室24において搬送方向の両側に位置する部分が加熱された後、自転機構14により金型ユニット8が自転されて、プレス室26内に搬入される。これにより、金型ユニット8の、直前の処理室(第1急熱室20、第2急熱室22及び均熱室24)においてヒータ34、36、38に対向した部分と異なる部分が、プレス室26に配置されているヒータ40に長時間にわたって対向するように配置される。すなわち、直前の処理室(第1急熱室20、第2急熱室22及び均熱室24)と、プレス室26とにおける、金型ユニット8のヒータ34、36、38、40に対する相対位置を変化させるように金型ユニット8を自転させる構成をとることにより、プレスステップにおける金型ユニット8及び金型ユニット8内のガラス材料60の温度分布の不均一を抑制することができ、良質なガラス成形体を製造することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、プレス室26において搬送方向の両側に位置する部分が加熱された後、第1徐冷室28、第2徐冷室30、及び第3徐冷室32において、プレス室26においてヒータ40に対向した部分と異なる部分が、第1徐冷室28、第2徐冷室30、及び第3徐冷室32に配置されているヒータ42、44、46に長時間にわたって対向するように配置される。すなわち、プレス室26と、第1徐冷室28、第2徐冷室30、及び第3徐冷室32とにおける、金型ユニット8のヒータ40、42、44、46に対する相対位置を変化させるように金型ユニット8を自転させる構成をとることにより、わずかなプレスステップにおいて温度分布の不均一が生じたとしても、金型ユニット8及び金型ユニット8内のガラス材料60の温度分布の不均一を抑制した状態で徐冷することができ、良質なガラス成形体を製造することができる。
【0071】
また、本実施形態では、制御部15が、金型ユニット8が初期相対角度位置から90度又は270度自転した相対角度位置で停止するように自転機構14を制御するため、プレスステップにおいて、最もヒータ40から放射熱を受けにくい部分が他のステップにおいて、ヒータから最も放射熱を受けることとなり、より効率よく金型ユニット8及び金型ユニット8内のガラス材料60の温度分布の不均一を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態では、タクトタイムに対する、金型ユニット8が初期相対角度位置から90度自転した相対角度位置である停止時間及び金型ユニット8が初期相対角度位置から270度自転した相対角度位置である停止時間の合計時間の割合が、60%以上85%以下とした。これにより、プレス室26以外の処理室における初期相対角度位置から90度又は270度自転した相対角度位置である停止時間が長すぎることによって、金型ユニット8及びガラス材料60に温度分布の不均一が生じることを防止できる。
【0073】
なお、本実施形態では、プレス室26以外の各処理室20、22、24、28、30、32において、自転機構14の停止角度位置及び停止角度位置における停止時間を制御を行っているが、少なくとも一室において自転機構の回転の制御を行えば、金型ユニット8及びガラス材料60に温度分布の不均一が生じることを防止できる。ただし、この場合、徐冷室において自転機構の回転の制御を行うことが望ましい。
【0074】
また、本実施形態では、プレス室26以外の各処理室20、22、24、28、30、32において、同じように自転機構の回転を制御しているが、これに限らず、各処理室で停止角度位置及び停止角度位置における停止時間を変更してもよい。
【0075】
また、本実施形態では、金型ユニット8を90度ずつ回転させていたが、これに限らず、例えば、60度又は45度ずつ回転させてもよい。なお、このような場合であっても、金型ユニットが各処理室から搬出される角度位置が、搬入された初期相対角度位置と同じであることが望ましい。
【0076】
また、本実施形態では、第1急熱室20、第2急熱室22、均熱室24、プレス室26、第1徐冷室28、第2徐冷室30、及び第3徐冷室32を備えたガラス成形体の製造装置1を例として説明しているが、これに限らず、プレス室が複数設けられている装置や、徐冷室又は急熱室を一室のみしか備えていないような装置であっても、本発明を適用することができる。すなわち、本発明は、金型ユニットの加熱を行う加熱室、金型ユニットにプレス処理を行うプレス室、及び金型ユニットを冷却する冷却室を備えた装置であれば適用することができる。
【0077】
以下、図面を参照して本発明を総括する。
本発明のガラス成形体の製造方法は、
図1に示すように、ガラス材料が内部に配置された金型ユニット8を所定の搬送経路に沿って搬送するターンテーブル4と、ターンテーブル4に沿って設けられたガラス材料に加熱処理を行う急熱室20、22及び均熱室24、ガラス材料にプレス処理を行うプレス室26、並びにガラス材料に徐冷処理を行う第1〜第3徐冷室28、30、32と、これら処理室20、22、24、26、28、30、32の搬送経路の両側に設けられたヒータ34、36、38、40、42、44、46と、を備えたガラス成形体の製造装置1により、ガラス成形体を製造する方法であって、ガラス成形体の製造装置1は、プレス室26以外の各処理室に設けられ、断続的に金型ユニット8を自転させる自転機構14と、自転機構14の停止角度位置及び停止角度位置における停止時間を制御する制御部15と、を備え、急熱室20、22において、ヒータ34、36によりガラス材料に加熱処理を行う加熱ステップと、プレス室26において、ヒータ40によりガラス材料を加熱しながら、ガラス材料にプレス処理を行うプレスステップと、第1〜第3徐冷室28、30、32において、ヒータ42、44、46によりプレスが完了した成形体の温度を制御しながら降下させる徐冷ステップと、を備え、徐冷ステップ又は加熱ステップの少なくとも一方において、断続的に金型ユニット8を自転させ、制御部15は、金型ユニット8が各処理室に搬入された直後の搬送経路に対する初期相対角度位置で停止している停止時間よりも、金型ユニットが初期相対角度位置と異なる相対角度位置で停止している停止時間が長くなるように、自転機構14を制御する。
【0078】
また、本発明のガラス成形体の製造装置1は、
図1に示すように、ガラス材料が内部に配置された金型ユニット8を所定の搬送経路に沿って搬送するターンテーブル4と、ターンテーブル4に沿って設けられたガラス材料に加熱処理を行う急熱室20、22及び均熱室24、ガラス材料にプレス処理を行うプレス室26、並びにガラス材料に徐冷処理を行う第1〜第3徐冷室28、30、32と、これら処理室20、22、24、26、28、30、32の搬送経路の両側に設けられたヒータ34、36、38、40、42、44、46と、を備えたガラス成形体の製造装置であって、さらに、ガラス成形体の製造装置1は、プレス室26以外の処理室に設けられ、断続的に金型ユニット8を自転させる自転機構14と、自転機構14の停止角度位置及び停止角度位置における滞在時間を制御する制御部15と、を備え、制御部15は、金型ユニット8が各処理室に搬入された直後の搬送経路に対する初期相対角度位置で停止している停止時間よりも、金型ユニットが初期相対角度位置と異なる相対角度位置で停止している停止時間が長くなるように、自転機構14を制御する。