(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、針葉樹を製材、合板などに加工し、例えばカラマツ、杉などの針葉樹材を用いた合板は、広葉樹合板と共に、構造用合板、建材、家具、壁材等に利用されている。
【0003】
この針葉樹合板は、針葉樹合板特有の問題、即ち、広葉樹合板に比較して、針葉樹材由来の節目、早晩材の偏り(天然木理の不均一)、材割れ剥離(繊維状めくれ)、干割れ(寒熱水による割れ)等の品質上の問題があるため、まず、構造用合板、コンクリート型枠用合板、フロア用台板等、人目につかない構造用で多く採用されはじめた。
【0004】
ところで、近年、国策で国産材の使用が奨励され、国内に豊富な針葉樹を用いる針葉樹合板を幅広い用途へ使用することが望まれてきており、当然、人目に付く建築物の内装材への使用拡大が望まれているが、それらの用途に使用する際は、前述の針葉樹材由来の問題である、節目、抜け節、木理の偏り、割れ等を解決するため、従来からパテ補修、目止め、ウレタン塗装、圧密、等の塗装樹脂加工を施している。
【0005】
なお、上記針葉樹合板の使用において、更に表面性を良くするため、針葉樹合板の割れや抜け節、凹み等にパテを予め充填し、その表面を切削・研磨することにより平滑化し、その後目止め塗料の塗装等を行い、更に、接着剤の塗布と化粧シート等をラミネートする方法も考え出された(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の方法によって、化粧シート等をラミネートされた針葉樹合板は、人目に付く内装材への適用に適するようになった。しかし、この対策は、針葉樹合板の欠点を覆い隠して目に付かないようにしているものであり、折角、木材由来の天然材料からなる合板を用いても、その木の温もりや肌触りを感じられなくなってしまうものであった。
【0008】
また、前述の針葉樹材由来の問題は十分解消されておらず、特に、節目の処理(抜け節目止め、充填剤の仕上がり)、材剥離、干割れ、木理の偏り(年輪に由来する凹凸)については、従来からの化粧シートの貼り付けや、表面を塗装する方式では満足できるものはなかった。
【0009】
さらに、寒熱、乾湿環境下における干割れ、節目、早晩材の凹凸模様が表層面に浮上する現象については、その環境条件に千差万別に変化することがあり実用性に欠けており、特に化粧シートを表面に貼り付けて欠点を隠すものでは、合板表面に現れた凹凸模様が化粧シートの模様と不一致となり、天然木を利用した合板としては不自然な外観となるという問題があった。
【0010】
そこで、この発明の課題は、針葉樹材由来の問題点である節目凹凸、早晩材の偏り、材割れ剥離、干割れ、節目の処理後の見栄えなどの品質上の欠点を克服し、且つ、針葉樹材特有の天然木理を表面全体に透かし表現した針葉樹加飾板を得るための、新規の加飾シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明者らは、鋭意検討の結果、シート材の表面に、印刷柄、樹脂質層を設けた透明性を有する加飾シートを発明し、この加飾シートを針葉樹材の表面に透明な接着剤を介して板面に貼り合わせることで、針葉樹由来の問題点を克服するとともに、木理の疎部、節部、目止め部に対し、印刷柄によって、偏った木理模様がバランスのとれた全面木理模様となるようにした。
【0012】
また、樹脂質層による表面物性、耐薬品性等の発揮と、木の温もり肌触り、風合いがバランスよく保ちだされる等、天然木として利用価値の悪い針葉樹材を天然木として見劣りのしない化粧板とすること、即ち、天然木理と印刷柄及び樹脂質層の複合によって針葉樹由来の基材欠陥を克服することが可能である加飾シートを見出してこの発明に至った。
【0013】
即ち、この発明は、
カラマツ合板の表面に貼り付けられる加飾シートであって、シート材の一面又は両面に部分的に印刷柄が設けられ、一面側が樹脂質層に覆われ
、シート材中に占める紙質材の重量が、加飾シート総重量の10%以上で、JIS K 5600−4−1の隠ぺい力測定項に準拠した隠ぺい率試験紙上に重ね貼り合わせた加飾シート最表面において、隠ぺい率試験紙の白と黒部との隠ぺい率が10〜
50%となる透明性を有
し、加飾シートの最表面のJIS−P8147に規定する傾斜法による滑り角度が30〜40°である構成を採用したものである。
【0014】
上記加飾シートは、
カラマツ針葉樹合板の表面に貼り付けて針葉樹加飾板とすることにより、この発明の目的を最適に発揮することができる。
【発明の効果】
【0015】
従来の化粧シート、化粧紙、プレコート紙は、下地の欠点を完全に隠ぺいする目的で使用されているが、この発明の加飾シートは、透明性を有し、且つ、印刷柄が針葉樹材にバランスよく加飾され生地の木理(年輪)を透視でき、下地の天然木の良さを最表面に表現することができるので、木の素材を生かしつつ、針葉樹由来の欠陥や過不足を補うことができる。
【0016】
即ち、本発明の加飾シートは、天然木由来の早晩材木理の偏り、節目、割れ、更には抜け節部の目止め痕など、基材の欠陥を、透明なシート上に形成された印刷柄による木目により補完することで克服し、低品質と称される植林木、針葉樹を高品位の化粧板に加飾することができる。
【0017】
また、加飾シートによる加飾と共に、本来の基材(針葉樹合板等)の木目等を透過させて見せることにより、加飾された基材本来の意匠も生かすことができ、完全に基材表面を覆う方式のように、複数の加飾板が画一化されたものとならずに少しずつ変化をつけた加飾板となり、天然素材としての風合いが得られる。
【0018】
更に、針葉樹合板に化粧シートを貼り付けた際に、下地針葉樹の早晩材による凹凸が、表面化粧シートの模様と一致せずに外観が不自然となるという問題があるが、透明な加飾シートにより下地の凹凸を生じる早晩材の模様が透過して見られるので不自然さがなくなる。
【0019】
また、加飾シート最表面のJIS−P8147に規定する傾斜法による滑り角度が
30〜40°である構成を採用した
ので、表面の滑りが少なく、天然木と同様の手触りが得られるので、視覚と共に触覚からも天然素材の風合いが得られることになる。
【0020】
さらに、加飾シートにおいて、シート材中に占める紙質材の重量が、加飾シート総重量の10%以上である構成を採用した
ので、木材由来の紙の存在により、視覚及び触覚からも天然木としての風合いが得られることになる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の加飾シートにつき添付図面を参考にして詳細に説明する。
図1(A)及び
図2(A)には、加飾シート1と、この加飾シート1を貼り付ける針葉樹合板5又は11が示されている。
【0023】
加飾シート1は、例として隠ぺい率が30〜50%の透明性を有する可撓性のあるシートであり、基材となる透明性かつ可撓性のあるシート材2上に部分的に天然木の木理模様と類似するような印刷柄3が設けられている。
【0024】
この加飾シート1の構造は、
図3の部分断面図の加飾シート1の構造に示すように、シート材2の表側(図示上側)に、部分的に印刷柄3が印刷により形成されており、更に表側は樹脂質層4に覆われている。なお、シート材2は透明性を有しているので、印刷柄3は、必ずしもシート材2の表側に形成しなければならないものではなく、シート材2の裏面(図示下側)に形成したり、或いはシート材2の表裏両面に形成することができる。
【0025】
加飾シート1を製造する方法としては、シート材2上に印刷柄3の印刷、および樹脂の樹脂塗工を順に行うことにより、シート材2の表裏いずれか一方面又は両面に印刷柄3を、シート材2の一方面(表側)に樹脂質層4を形成する。
【0026】
このシート材2は、加飾シート1の主要部をなすもので、可撓性のあるシート状となるものであれば、各種シート状の材料が適用でき、例えば、紙、紙質材、フィルム、樹脂、樹脂質材等が適用でき、材料を問わない。
【0027】
シート材2の構成としては、例えば、紙のみからなるもの、紙質材(紙を主体として樹脂と混合したり、紙とフィルムとの積層体、又は紙とフィルムの積層体に樹脂を混合したもの)、又はフィルムのみからなるもの等が挙げられる。
【0028】
シート材2を構成する材料のうち、紙や紙質材の紙原料としては、15〜50g/m
2程度の一般的には薄葉紙と総称されるものから、樹脂、顔料、充填剤などが複合された紙質を含む。薄葉紙に属する紙には、グラシン紙、シガレットペーパー、インディアペーパー、コピー紙、コンデンサー用紙、複写原紙、航空便用紙、ろ紙などがある。
【0029】
また、前述の紙質材に対しPE、PP、その他の樹脂質材を溶融接着、ラミ接着したもの等、紙質材と樹脂質材との積層材料も含み、更に、樹脂質層に合成樹脂あるいは溶融樹脂、フイルム状物質を複合したものでもよい。
【0030】
また、樹脂やフィルムの原料としては、特に限定されず、紙質材になじむものや、シート成形が可能な物などであればよく、樹脂としては、アクリルエマルジョン、アクリル水溶性樹脂等があり、その他、PE、PP等の既知の樹脂が挙げられる。
【0031】
以上のように、シート材2は種々の材料・態様のものが適用でき、要するに、加飾シート1全体が発明で規定する透明性を失わないものであれば、その材料・態様は問わない。
【0032】
シート材2上の印刷柄3は、針葉樹材合板由来の天然木理の不均一や偏り、節部の目止め面、割れの補修面、材色のムラ、汚れ、カビ等の材質欠陥を人工的な印刷柄層にて補い、且つ、天然木の美麗な木理を生かす役割を持っている。即ち、天然木理と印刷柄の複合柄によって天然木理の全体の均一性を図るものである。
【0033】
そのため、主に木材の表面に現れる木理、特に密度があり濃い色合いになる晩材部分を印刷柄3で表現することとなる。但し、下地の天然木材(例えば針葉樹合板)の木理の欠陥・不足部分を補うためのもので、通常の木目調化粧材の表面に現れる木理の模様より粗であってもよい。
【0034】
シート材2の表側又は裏側への印刷柄3の印刷方法としては、シート材2に印刷可能な方法で、グラビヤ印刷が好ましく、グラビヤ印刷に使用される印刷インキとしては、ニトロセルロース樹脂、顔料、界面活性剤、希釈剤、等の組成からなり、油性、水性でもよいが、その他各種の既知のインキ、塗料が使用できる。印刷の版数は、意匠性の要求に沿って1〜4版が可能であるが2版程度が好ましい。また、隠ぺい性のコントロールはベタ版の深度等で行うことができる。
【0035】
樹脂質層4は、シート材2の表側に形成され、前述の印刷柄3が表側に形成された場合はこの印刷柄3を含んだシート材2の全面を覆って加飾シート1の最表面となるものであり、耐薬品性、耐摩耗、光沢、等の塗膜物性を付与する役目のものである。例えばアクリルポリオール、ポリエステルポリオールにイソシアネートを配合した2液ウレタン樹脂塗料、UV塗料等が上げられ加飾シートの要求品質を付与する塗料であれば油性、水性でもよい。
【0036】
また、この樹脂質層4は、加飾シート1の最外層で、内装材として使用された場合に手に触れる部分でもあるため、触感として重要な役割を持ち、木目調の場合、木肌に触れるような自然な手触りとなるように、この発明の請求項で規定する滑りを得る場合の重要な役割を持つ。
【0037】
樹脂質層4の塗膜形成方法としては、グラビヤ印刷及び塗装があり、塗装手法としては、ロールコーター、ダイコーター等があり、特にグラビヤコーターが好ましい。また、印刷や塗装に限られず、プラスティック樹脂のフイルム化などで同様の表面特性が得られれば特に制限されるものではない。
【0038】
樹脂質層4の表面特性を具体的に述べると、例えば天然素材としての風合いを得るために艶消しであることが求められ、具体的には一般的に広く利用されている測定角60度光沢計にて3〜15程度が好ましい。艶消し剤は、シリカ、ガラスビーズ、プラスティックビーズ、など市販品の有機、無機系の何れでもよい。
【0039】
また必要に応じて無機、有機系のスリップ剤、各種添加剤を加えても良い。例えばグラビヤコーターにて前述の塗料を10g/m
2(dry)塗布し150℃/30秒間乾燥することによって透明性のある艶消しの樹脂質層が得られる。それをさらに天然木と同様の肌触り、風合い、感触を持たせるためには、表面の滑り摩擦角度を
30〜40°の範囲とする。
【0040】
次に、この加飾シート1を貼り付ける針葉樹合板5は、その一例として、
図1(A)に示すように、そのままでは早材6と晩材7の部分的な偏りによる天然木理の不均一があり、また、針葉樹材由来の節目、材割れ剥離や干割れ等の品質上の問題に対処するため目止め剤による目止め8を施した節痕がある。
【0041】
この針葉樹合板5を構成する針葉樹としては、国産材はカラマツ、エゾマツ、トドマツ、ヒバ、スギ等で、外材として北米材のベイマツ、ベイツガ、スプルース等、その他にラジアタパイン等がある。これ等の材を製材、スライスして針葉樹合板、集成材、無垢材などに分別されている。このうち、本発明の対象となる針葉樹材は、針葉樹合板(日本農林規格・JAS規格)として利用されるものが特に好ましい。
【0042】
しかしながら、本発明の加飾シート1は、必ずしも
図1に示す針葉樹合板5にのみ用いられるものではなく、広葉樹合板やその他の合板への使用を排除するものではない。
【0043】
図1(B)に示すように、針葉樹合板5の人目に付く表側から、透明性のある加飾シート1を重ねてラミネート(接着)することで、下地の早材6及び晩材7の不均一、木理模様、目止め8痕は少し隠ぺいされ、欠陥が薄れて見える針葉樹加飾板10が得られる。
【0044】
なお、針葉樹合板5と化粧シート1の接着は、
図3に示すように接着剤層9によって接合一体化されており、この接着剤層9の材質としては、酢酸ビニル系接着剤が挙げられるが、その他のものでもよい。しかし、化粧シート1の透明性を確保するため、一般的に配合している小麦粉、炭酸カルシウム、等の材料は透明性を阻害するので添加しないほうがよい。
【0045】
汎用の酢酸ビニル系接着剤の隠ぺい率は8〜10%であった。透明接着剤の隠ぺい率は、アイカ工業株式会社製アイカエコエコボンドA−1400(酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形)を50〜100g/m
2隠ぺい率試験紙に塗布し40℃/20分間乾燥した塗膜の隠ぺい率は8.5%であった。また、同じくボンコートF−30(DIC北日本ポリマ株式会社製)は9%、顔料配合接着剤(S社)は43%であった。
【0046】
一般的なプレコート紙、化粧シートをラミネートする場合は、下地合板、MDF、PB基材等の色相違いをカバーするため、また接着特性を改良するため、接着剤にチタン顔料、酸化鉄黄土、更に炭酸カルシウム、クレー、小麦粉、等を配合することがある。しかし、本発明は、針葉樹材の下地を生かし、且つ、印刷柄を加飾しつつ、透明性を有することが目的であり、接着剤も透明性を有することが必須である。以上のことから接着剤の隠ぺい率は、7〜30%が適用範囲であるが、透明性が要求されるので15%以下が好ましい。
【0047】
このように下地の針葉樹合板5に対して透明性を有する加飾シート1にて加飾することによって得られた針葉樹加飾板10は、印刷柄3による加飾によって、下地の欠点をカバーすると共に、中央部の木理がなかった部分にも加飾シート1の印刷柄3による木理が現れて全体として木目のバランスが取れ、また、目止め8による節痕の上から、加飾シート1による印刷柄3(木目)が加飾され、新たな加飾柄が複合することで、最表面層から透視される意匠性の偏りが解消され、表面全体が新規の柄としてバランスがとれ目止め8による節痕と木理とが複合したバランスの良い意匠が表現できる。
【0048】
図2(A)における針葉樹合板11は、
図1(A)の針葉樹合板5と異なり、目止め痕もなく、天然の木理も少ないものである。この場合も
図1と同様の加飾シート1を貼り付け、
図2(B)のような針葉樹加飾板12を得る。
【0049】
図1(B)の針葉樹合板5と、
図2(B)の針葉樹合板11は、異なった仕上がりの合板基材であるが、加飾シート1を貼り付けることで、加飾シート1の印刷柄3による木理が模様の主体となり、針葉樹加飾板10と12は類似した意匠となる。
【0050】
そして、加飾シート1の透明性により針葉樹合板5、11独自の天然木理等も付加されるので、針葉樹合板5と針葉樹合板11の意匠は完全同一とはならず、複数枚の合板を同一部分に使用した場合、従来の化粧シートの同一のものを貼り付けたもののように、得られる化粧板が同一意匠の画一的なものとはならず、天然木を利用したような自然なバランスが得られる。
【0051】
図4は、
図1(A)で用いた針葉樹合板5を示しており、(A)は目止め処理と表面平滑化処理が行われた状態の針葉樹合板5の斜視図とそのX−X線に沿う断面図であり、(B)は加飾シート1が貼り付けられた状態を示す断面図で、針葉樹合板5の表面に達する黒色部分は、早晩材の晩材7(木目)であり、グレー色部分は、目止め材による目止め8である。
【0052】
これらの硬質な晩材7や目止め8の部分に、一般的な化粧紙、汎用プレコート紙、化粧シート等を接着した場合、接着時の加圧力によって硬質部分(晩材7や目止め8)が凸状態となり、その他の早材6の部分(軟質)は逆に凹むことになる(
図4(B)参照)。更に、温湿熱や寒熱環境によって寸法変化が著しくなり違和感のある凹凸模様が拡大するのである。
【0053】
これらの状況にて、従来からの汎用プレコート紙、化粧シートのような隠ぺい性のある印刷柄を有するものは、この立体的に形成された凹凸模様と異なった印刷柄(木目)を持つため、全体として凹凸と印刷柄(木目)が不揃いで不自然な模様となる。
【0054】
しかし、本発明の透明性を有する加飾シート1では、これ等の凹凸が生じる部分について、基材である針葉樹合板の本来の木理である晩材7の部分が、加飾シート1の透明性により最表面層に透視された模様となって目視できるので、例え、凹凸が発生しても、その模様と同調して木理が現れており違和感がない。むしろ、凹凸部分と木理、節目が同一物体であることから天然木理が盛り上がったことにより自然感がリアルに表現できる。
【実施例】
【0055】
以下、この発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、この発明は以下の実施例に限定されるものではなく、この発明の目的の範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施例中の分量の数値単位「部」は特に断りのない限り質量部を表すものとする。
【0056】
針葉樹合板5は、市販のカラマツ針葉樹合板12mm厚(JAS規格)を用い、水性パテ(アクリルエマルジョン/炭酸カルシウム/クレー/タルク/助剤/水=20/60/10/10/適量/適量)をナイフコーター刃で目止めし、50℃熱風乾燥炉で30分間乾燥し、研磨紙#180で研磨し、それを2回繰り返し針葉樹合板の目止めした基材を作成した。なお、基材の凹凸や目止め効果が少ない場合は、目止め工程を数回実施した。
【0057】
続いて接着剤は、2液水性エマルジョン接着剤、中央理化工業株式会社製、リカボンドBA−10L/BA−11B=100/2.5を、80〜160g/m
2となるよう塗布し、40〜50℃熱風乾燥炉で1〜3分間乾燥し、その上に透明性を有するこの発明の加飾シート(隠ぺい率=45%)を貼り合わせ、常温で48時間養生した。
【0058】
比較例として基材である針葉樹合板に対して、そのまま無加工のものや、表面に各種塗装や従来の化粧紙を貼り付けたものも用意し(No.1〜4)、
加飾シートを用いてJIS−P 8147に規定する傾斜法による滑り角度が本発明の範囲内のもの(No.5〜8)と比較した(表1)。
【0059】
また、各種塗装やシートの隠ぺい率を測定するが、加飾シートの透明性を数値化するため、JIS K 5600−4−1の隠ぺい力測定項に準拠し、隠ぺい率(以下、隠ぺい率*1)を測定した。
測定は、隠ぺい率試験紙上に接合した加飾シート面上から隠ぺい率紙の白部の三刺激値(YW)と黒部の三刺激値(YB)を測定し、YB/YWを百分率で表した。
【0060】
この測定値は、透明性を有する加飾シートを針葉樹材の上に圧着した場合と、隠ぺい率試験紙の白黒部上に圧着した場合の隠ぺい率*1の相関性は、正の関係であった。よって、隠ぺい率試験紙を用いた場合の隠ぺい率*1の試験結果を表2中にて、比較例(No.A〜D
、G)と、本発明の範囲内のもの(No.E
、F、H)とを比較した。
【0061】
即ち、加飾シートの最表面における針葉樹材の木理、節目等の透視性の判断は、隠ぺい率*1を測定することで可能であり妥当性有りとした。従って、針葉樹材の材質、色相、木理等が多少変化しても、隠ぺい率*1の測定値が本発明で規定する範囲を満たすことであればよい。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
以上、実施例からも、本発明の加飾シートを用いた針葉樹合板は、見た目では、天然木本来の節や木理が透視され、自然観が保たれていると共に、パテ、目止め部分が加飾シートの印刷柄により加飾されて、全体的に自然木の感じが得られた。また、JIS−P8147に規定する滑り角度を規定内にしたものは、天然木に類似する肌触りが得られた。