【実施例1】
【0038】
図面を参照して、本発明の試料及び/又は試料メッシュ設置用カートリッジ、試料ホルダー先端部、及び前記試料ホルダー先端部を有する試料ホルダーの一実施態様を説明すれば以下の通りである。
【0039】
図1は、本発明の一実施態様における試料ホルダー先端部(本発明のカートリッジも必然的に含んでいる。本明細書において同じ。)を用いた場合の試料等を取り付ける様子を示す斜視図である。
図1中、1は凸部(例えば、楔状凸部)、2は凸部駆動軸、3はカートリッジ(本発明のカートリッジでもある。)、4は第二の固定手段、5は試料ホルダー軸、6はフレーム、7はカートリッジ受け部(例えば、テーパー受け面)、8は凹部(例えば、テーパー面を有する)、9はスリット、10は固定手段受け部、11は試料及び/又は試料メッシュ設置部位を、それぞれ示す。
図1の本発明の一例における態様によれば、主として、楔と、楔駆動軸と、試料を取り付けるカートリッジと、カートリッジを固定する固定ネジと、ホルダー軸と、フレームとで構成されている。楔状凸部は特に、テーパー受ける斜面であるテーパー受け面7を有している。カートリッジ3は、例えば、テーパー面8、引張を行うためのスリット9、ネジ受け部10で構成されている。図において、丸点線部11は試料及び/又は試料メッシュの固定位置を示している。
【0040】
図2は、本発明の一実施態様における試料ホルダー先端部(本発明のカートリッジも必然的に含んでいる。本明細書において同じ。)を上から見た概略図である。
図2中、1は凸部(例えば、楔状凸部)、2は凸部駆動軸、3はカートリッジ、4は第二の固定手段、5は試料ホルダー軸、6はフレーム、7はカートリッジ受け部(例えば、テーパー受け面を有する)、8は凹部(例えば、テーパー面を有する)、9はスリット、20は引張方向、21は第一の固定手段、22は試料メッシュ、23は引張り応力付与用の間隙を、それぞれ示す。
【0041】
この態様においては、カートリッジ3に試料を直接ボンディングで固定することができる。固定方法をボンディングとすることで、試料にストレスをかけるのを回避することができる。したがって、ボンディング等による固定においては、ネジ締めによる歪の問題、すなわち、ネジ締め毎に試料や試料固定冶具等がずれることによる歪を回避することが可能となる。
【0042】
また、本発明においては、視野の逃げについて、改善が期待できる。従来の片側のみの一つの方向から引張り応力を付与する機構と異なり、試料を両側から、好ましくはほぼ同じ力で引張る(
図2の20の方向へ応力が働く。)ことが可能であるので、視野の逃げが大幅に改善され、その場観察が可能になるという効果を有する。なお、凸部1には適選な材料強度が必要なので適切な厚みが必要である。図は最適な形状の一例を示している。
【0043】
また、
図3(a)は、本発明の一実施態様における試料ホルダー先端部のカートリッジが斜めに取り付けられた場合を示す図である。
図3(a)の上側の間隙23の方が下側の間隙23より広く、斜めに取り付けられているのが分かる。
図3(b)は、本発明の一実施態様において、カートリッジの向きを楔状凸部が修正している様子を示す図である。
図3(a)のような状態でカートリッジが試料ホルダーに設置されても、凹部のテ―パ―面に対応する、凸部のテ―パ―面によって首尾よく修正することが可能であることが図から分かる。
【0044】
すなわち、本発明の一態様において、カートリッジ方向を適宜修正可能である。カートリッジ3はネジ受け部10の部分でネジ止めされ回転するため、正確にカートリッジ3の側面とフレーム6が水平になるように取り付けることは難しい。しかしながら、最悪少し回転していても、ずれている方向のテ―パ―面8にテ―パ―受け面7が先にあたりセンタリングをするため、自動的に方向が修正される。荷重は、テ―パ―面8の両側にテ―パ―受け面7が当たるまで試料にかからない構造にすることができる。したがって、機械加工に起因する
図8に示すような目的ではない歪の問題は解消される。
【0045】
本発明の一実施態様における原理について説明すると以下のようである。丸点線部11上に試料及び/又は試料メッシュを固定し、凸部1を長手方向から挿入する。カートリッジ3の開口を形成する両プレートに試料及び/又は試料メッシュをボンディングする。凸部1を凹部に挿入する力を得て、カートリッジの開口部、スリットがある場合には、スリット9が押し広げられ、試料が引き裂かれるような形態をとる。このとき、理想的には引張方向がY方向となり、既存の引張ホルダーの引張方向と90°回転した方向に引張りを行う。
【0046】
また、凹部8の勾配と凸部9の長さを変える事でアクチュエーターの力(以降、荷重と称す)を任意の比率で変換し伝達する事ができるので、既存のアクチュエータ―を用いても、精密な制御が可能となる。
【0047】
例えば、一例として説明すると、凹部の開き角が60°であれば荷重:ty´=1:1/2の比率でアクチュエーターの力を伝達することができる。凸部9の開き角が小さいほどアクチュエーターの押し量に対する広がり量が少なくなる。したがって、凹部の開口を長く、例えば、一部にスリットを有する凹部の場合には、当該スリットを長くすれば試料までの中心距離が増え、さらに広がり量を小さくできる。
【0048】
また、
図4は、本発明の一実施態様において、微小角での引っ張り方向を示す図である。
図4中、3はカートリッジ、8は凹部(例えば、テーパー面を有する)、9はスリットを、それぞれ示す。
図4を用いて、微小角での引張方向について検討する。まず、引張方向のベクトル(円の接線方向)をty´、それと垂直な方向(円の向心方向)のベクトルをtx´と定義する。カートリッジ3の構造は理論的にはスリットエンド41を中心にRで開いて引張ることになる。一見、Rで開くとRの接線方向と向心方向にベクトルが発生するように思われるが、ナノ領域を観察する場合においては、下記に示すような理由でY方向の一軸のみの引張りが可能となっている。すなわち、引張方向が一軸方向のみになることを説明すると以下の通りである。
【0049】
式1:ty=ty´COSθ
【0050】
スリットエンドから試料中心までをRの半径( 数mm程度)とすると、ナノの領域を観察するときの変位角は微小(θ<<1)とみなせるので、
式2:ty=ty´
となる。したがって、ほぼ理想的な一軸引張方向のみの力を負荷することができる。(実際に、半径を4 mmとして100 nm引張ったと仮定すると、角度で約1.4/1000度斜め方向に引張った計算になり、引張方向に垂直な力の影響はほぼないということになる。)
【0051】
以上のように、本発明によれば、視野ずれをより抑えることが可能なカートリッジ、試料ホルダー先端部を提供することが可能であることが判明した。