(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161341
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、水性塗工液、及び塗膜
(51)【国際特許分類】
C08L 29/04 20060101AFI20170703BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20170703BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20170703BHJP
C09D 129/04 20060101ALI20170703BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
C08L29/04 A
C08K5/07
C08K5/3445
C09D129/04
C09D7/12
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-52922(P2013-52922)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-177563(P2014-177563A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004101
【氏名又は名称】日本合成化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅野 育洋
【審査官】
大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−188661(JP,A)
【文献】
特開昭56−120748(JP,A)
【文献】
特開2011−132403(JP,A)
【文献】
特開2011−084738(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/121241(WO,A1)
【文献】
特開平04−331279(JP,A)
【文献】
特開平10−036757(JP,A)
【文献】
特開平09−292525(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/143286(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0302630(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0227718(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/143286(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 −101/16
C08K 3/00 − 13/08
C09D 1/00 −201/10
C09J 1/00 −201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂、アルデヒド化合物及び下記一般式(1)で表されるイミダゾール化合物を
含有し、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、アルデヒド化合物を1〜10重量部、イミダゾール化合物を0.01〜10重量部含有することを特徴とする樹脂組成物。
【化1】
(R
1〜R
4は水素又はアルキル基を示す。ただし、R
1〜R
4の炭素数の合計が0〜10である。)
【請求項2】
アルデヒド化合物がグリオキシル酸塩であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の樹脂組成物と水を含有することを特徴とする水性塗工液。
【請求項4】
請求項3記載の塗工液を乾燥して得られる塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂と、その架橋剤としてアルデヒド化合物を含有する樹脂組成物に関するものであって、耐水性に優れる皮膜が得られる樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂という)は、代表的な水溶性樹脂として知られており、水溶性という特性を生かして、水系の皮膜形成剤、接着剤、バインダーなどの種々の用途に適用されている。
しかしながら、PVA系樹脂は、水溶性であるがために、これから得られた皮膜は湿気などの水分に弱く、高湿度下で使用される用途に適用しづらいという難点があった。
そこで、PVA系樹脂に耐水性を付与するために、架橋剤を配合し、PVA系樹脂との架橋構造体を形成させることが行われている。中でもアセトアセチル基含有PVA系樹脂(以下、AA化PVAという)は反応性に富むアセトアセチル基(以下、AA基という)を側鎖に有するため、種々の架橋剤により架橋構造体を形成し、優れた耐水性を得ることができることが知られている。
【0003】
かかるAA化PVAに用いられる架橋剤は種々の化合物が知られており、中でも、アルデヒド化合物がAA基との反応性に優れ、比較的低温で架橋反応が進行することから様々な用途に用いられている。
例えば、AA化PVA系樹脂をアルデヒド化合物であるグリオキザールで架橋して得られた架橋高分子は、感熱記録用媒体の表面保護層(例えば、特許文献1参照。)や、偏光板における偏光フィルムと保護フィルムとの接着層(例えば、特許文献2参照。)等に好適に用いられている。
また、エチレン性不飽和単量体に由来する繰り返し構造単位を含む重合体を分散質とし、分散剤としてAA化PVAを用いて得られた水性エマルジョンに対し、架橋剤としてグリオキザールを用い、かかるエマルジョンの乾燥被膜に耐水性を付与した例も知られている(例えば、特許文献3参照。)
【0004】
さらに近年では、臭気がなく、安全性に優れ、さらに、AA化PVAとの混合水溶液の安定性に優れ、耐水性に優れ、経時着色が小さい架橋高分子が得られるアルデヒド化合物系の架橋剤として、グリオキシル酸塩が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平9−164763号公報
【特許文献2】特開平7−198945号公報
【特許文献3】特開平11−279509号公報
【特許文献4】特開2010−077385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PVA系樹脂はガスバリア性に優れることから、その水溶液をフィルムや成形体の表面に塗工、乾燥させ、ガスバリア層を形成することで、食品等の包装材料用途に広く用いられている。
しかしながら、PVA系樹脂は耐水性に乏しいことから、PVA系樹脂層の両側に耐水性に優れる熱可塑性樹脂を保護層として配置するサンドイッチ構造での使用が主であったが、近年は包装材の薄膜化の要求から、保護層を用いず、PVA系樹脂層が表面となる構成が検討されている。そのため、PVA系樹脂層に耐水性が求められている。また、PVA系樹脂層自体の薄膜化も求められているが、薄膜になればなるほど、高度な耐水性が必要となるため、PVA系樹脂層のさらなる耐水性の向上が必要となっている。
そこで、本発明は、薄膜にした場合でも耐水性に優れるPVA系樹脂皮膜が得られる樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、AA化PVA、アルデヒド化合物、及び下記一般式(1)で表されるイミダゾールを
含有し、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、アルデヒド化合物を1〜10重量部、イミダゾール化合物を0.01〜10重量部含有する樹脂組成物によって本発明の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【化1】
(R
1〜R
4は水素又はアルキル基を示す。ただし、R
1〜R
4の炭素数の合計が0〜10である。)
【0007】
本発明の効果の発現メカニズムは、明確には解明されていないが、AA化PVAがアルデヒド化合物によって架橋される際に、イミダゾールの窒素原子が、AA化PVA中のAA基のメチレン水素を引き寄せて、AA基を陰イオン化させ、アルデヒドの陽イオンとの反応を促進するものであると推測される。従って、イミダゾールは、AA基とアルデヒド化合物との反応における触媒のような作用を持っていると推測される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、水性塗工液とし、基材に塗工してガスバリア性皮膜を形成した場合、かかる皮膜が薄膜であっても優れた耐水性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
【0010】
〔AA化PVA〕
本発明に用いるAA化PVAとは、側鎖にアセト酢酸エステル基を有するPVA系樹脂であり、その他の部分は一般のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール系構造単位を主体とし、ケン化度に応じた酢酸ビニル構造単位を有するものである。
本発明で用いられるAA化PVAは、アセト酢酸エステル基を含有する構造単位を有するもので、かかる構造単位は特に限定されるものではないが、例えば下記の一般式(2)で表すものを挙げることができる。
【化2】
【0011】
本発明のAA化PVAの平均重合度は、その用途によって適宜選択すればよいが、通常、200〜4000であり、好ましくは300〜3000、特に好ましくは400〜2000、更に好ましくは400〜1000のものが好適に用いられる。かかる平均重合度が小さすぎると、十分な耐水性が得られなかったり、十分な架橋速度が得られなくなる傾向があり、逆に大きすぎると、水溶液として使用した場合に、その粘度が高くなりすぎ、基材への塗工が困難になるなど、各種工程への適用が難しくなる傾向がある。
【0012】
また、本発明に用いられるAA化PVAのケン化度は、通常、80モル%以上であり、さらには90モル%以上、特には98モル%以上ものが好適に用いられる。かかるケン化度が低い場合には、水溶液とすることが困難になったり、水溶液の安定性が低下したり、得られる架橋高分子の耐水性やガスバリア性が不十分となる傾向がある。なお、平均重合度およびケン化度はJIS K6726に準じて測定される。
【0013】
また、AA化PVAのアセトアセチル基含有量(以下、AA化度という。)は、通常、0.1〜20モル%であり、さらには1〜10モル%、特には3〜7モル%であるものが一般的に広く用いられる。かかる含有量が少なすぎると、耐水性が不十分となったり、十分な架橋速度が得られなくなる傾向があり、逆に多すぎると、水溶性が低下したり、水溶液の安定性が低下する傾向がある。
【0014】
かかるAA化PVAの製造法としては、特に限定されるものではないが、例えば、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法、PVA系樹脂とアセト酢酸エステルを反応させてエステル交換する方法、酢酸ビニルとアセト酢酸ビニルの共重合体をケン化する方法等を挙げることができるが、製造工程が簡易で、品質の良いAA化PVAが得られることから、PVA系樹脂とジケテンを反応させる方法が好ましく用いられ、詳しくは、特開2012−232416号公報の段落番号〔0013〕〜〔0019〕に記載の方法で製造することができる。
【0015】
〔アルデヒド化合物〕
本発明で用いられるアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキシル酸塩等のモノアルデヒド類;グリオキザール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、ジアルデヒド澱粉などのジアルデヒド類が挙げることができる。中でもAA化PVAとの混合水溶液とした時際の安定性に優れ、耐水性に優れるPVA系樹脂皮膜が得られる点で、グリオキシル酸塩が好適に用いられる。
【0016】
かかるグリオキシル酸塩としては、グリオキシル酸の金属塩やアミン塩などが挙げられ、金属塩としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅などの遷移金属、その他の亜鉛、アルミニウムなどの金属とグリオキシル酸の金属塩、また、アミン塩としては、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミンなどのアミン類とグリオキシル酸の塩が挙げられる。
特に、耐水性に優れるPVA系樹脂皮膜が得られる点から金属塩、特にアルカリ金属、およびアルカリ土類金属の塩が好ましく用いられる。
【0017】
かかるアルデヒド化合物の配合量は
、AA化PVA100重量部に対して1〜10重量部、好ましくは1〜8重量部、より好ましくは4〜8重量部である。また、AA基1モルに対して通常、0.1〜2モル、好ましくは0.5〜1.5モルである。かかる配合量が少なすぎると本発明の効果が得られない傾向にあり、多すぎると耐水性が低下する傾向があり好ましくない。
【0018】
〔イミダゾール化合物〕
本発明で用いられるイミダゾール化合物は、下記一般式(1)で表されるものである。
【化3】
(R
1〜R
4は水素又はアルキル基を示す。ただし、R
1〜R
4の炭素数の合計が0〜10である。)
【0019】
本発明で用いられるイミダゾール系化合物としては、置換基の炭素数の合計が0〜10であれば特に限定されないが、例えば、R
1〜R
4が水素であるイミダゾールの他、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール等の1−置換イミダゾール;2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等の2−置換イミダゾール;1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール等の1,2−置換イミダゾール;2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等の2,4−置換イミダゾール等を挙げることができ、中でも扱いやすい点で、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましい。
【0020】
かかるイミダゾール化合物の含有量としては
、AA化PVA100重量部に対して0.01〜10重量部であり、より好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.5〜0.8重量部である。また、アセトアセチル基1モルに対して通常、0.001〜1モル、好ましくは0.001〜0.5モル、特に好ましくは0.05〜0.3モルである。さらに、アルデヒド基1モルに対して通常0.0005〜0.5モル、好ましくは0.0025〜0.1モルである。かかる配合量が少なすぎると本発明の効果が得られない傾向にあり、多すぎると耐水性が低下する傾向があり好ましくない。
【0021】
〔水性塗工液〕
本発明の水性塗工液は、前記のAA化PVA、アルデヒド化合物及びイミダゾール化合物を含有するものであり、各成分の配合方法及び配合順序は特に限定されるものではないが、AA化PVA水溶液にアルデヒド化合物を配合し、かかる水溶液にイミダゾール水溶液を配合する方法が好ましい。
【0022】
かかる水性塗工液の濃度は、通常0.5〜40重量%、好ましくは、0.5〜20重量%、更に好ましくは5〜15重量%である。かかる濃度が大きすぎると流動性が低下する傾向があり、小さすぎると造膜不良になる傾向がある。
【0023】
かかる水性塗工液のpHは通常3〜14で、好ましくは5〜12で、更に好ましくは7〜10である。かかるpHが大きすぎると増粘する傾向があり、小さすぎると耐水性が得られない傾向がある。
【0024】
本発明の水性塗工液には、本発明の趣旨や皮膜性能を損なわない範囲で、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、抗菌・防カビ剤、補強剤(強化材、無機充填材)、難燃剤、着色剤等を添加してもよい。
【0025】
〔塗膜〕
上記のように得られた水性塗工液は、塗工、注型、浸漬等の公知の方法によって各種用途に適用され、その後、乾燥・熱処理によって架橋反応が行われる。
【0026】
かかる架橋反応の温度は、通常60〜200℃であり、更には60〜140℃、特には100〜140℃であることが好ましい。かかる温度が高すぎるとポリビニルアルコール系樹脂が分解してしまい、着色が起こる場合があるため好ましくない。また、温度が低すぎると架橋反応に時間がかかり、生産性が良くないため好ましくない。
架橋反応時間は、通常0.5〜20分、更には0.5〜10分、特には3〜10分であることが好ましい。かかる時間が長すぎると生産性が良くなく、短すぎると十分に架橋した反応物が得られず、耐水性が不十分になる傾向がある。
【0027】
本発明の樹脂組成物は、コーティング剤、フィルム、シート、接着層、バインダーの各種の用途に適用できるが、皮膜として用いる場合の厚さは、通常0.01〜100μm、更には0.1〜50μm、特には0.5〜10μmであるのことが好ましい。かかる皮膜が厚すぎると乾燥時間が長くなる傾向があり、また薄すぎると皮膜強度が低下し、架橋皮膜が破れやすくなる傾向がある。
【0028】
〔ガスバリア性積層体〕
本発明の樹脂組成物はガスバリア性を有するため、ガスバリア性積層体として、紙基材やフィルム基材に塗工することができる。
紙基材とは、洋紙、和紙、板紙などがあるが、一般的にはセルロースを主成分とする植物繊維を、水中で絡み合わせ細かいスクリーン上で得られるフェルト状の薄いシートである。原料に合成繊維や無機繊維を用いたものも含まれる。
また、紙基材と積層させる場合には、ガスバリア性の向上のために、紙基材と本発明の樹脂組成物の間に目止め剤層を設けることが好ましい。かかる目止め層としては、本発明の樹脂組成物との接着性が良好なものなら特に限定されないが、変性されていないPVA、各種の変性PVA系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;クレイとバインダー樹脂の組成物などが挙げられる。
【0029】
フィルム基材の材料して用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂;ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂;アクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル等のスチレン系樹脂;トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロースなどのセルロース系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、液晶ポリマー等のエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。
【0030】
各種基材及び目止め層の厚みはそれぞれ通常、10〜1000μmであり、好ましくは、50〜800μm程度が適当である。
【0031】
上述の各種基材に本発明の水性塗工液を塗工する方法としては、ダイレクトグラビア法、リバースグラビア法などのグラビア法;2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本ロール法等のロールコーティング法、ドクターナイフ法、ダイコート法、ディップコート法、バーコート法、スリットコート法;など、公知の塗工法を用いることができる。
【0032】
本発明の水性塗工液を基材に塗工した後、乾燥によって水分やその他の揮発分が除かれる。その際の乾燥温度は塗工層の厚さによって適宜調節すべきものであるが、通常は、10〜200℃であり、特に20〜150℃、殊に30〜120℃の範囲が好適に用いられる。また、乾燥時間も、揮発分が所定量以下になるように、上述の乾燥温度に応じて適宜調節されるものであるが、通常は0.1〜120分であり、特に0.5〜60分の範囲で行われる。
かかる加熱、乾燥の過程で、本発明のAA化PVA系樹脂は、アルデヒド化合物によって架橋される。従って、本発明のガスバリア性積層体の塗工層には、AA化PVAがアルデヒド化合物で架橋された架橋構造を有するものが含まれる。
【0033】
塗工層の膜厚は、通常0.05〜50μmであり、特に0.1〜30μm、殊に1〜20μmの範囲から好ましく選択される。かかる膜厚が薄すぎると、充分なガスバリア性が得られなくなる場合があり、一方、膜厚が厚すぎると、積層体としたときの柔軟性が損なわれる傾向がある。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0035】
実施例1
平均重合度500、ケン化度99モル%、AA化度5.0モル%であるAA化PVA系樹脂の10%水溶液100重量部に、架橋剤としてグリオキシル酸カルシウムを0.57重量部(AA化PVA系樹脂に対して5.7重量%、AA化PVA系樹脂中のAA基に対して1.0当量)添加して混合撹拌し、樹脂組成物水溶液とした。
かかる樹脂組成物に、1,2−ジメチルイミダゾール(1,2−DMI)の1重量%水溶液0.57重量部(AA化PVAに対して、0.057重量%、AA化PVA中のAA基に対して0.1当量)を添加し、攪拌し、塗工液(pH=8.4)を得た。かかる塗工液をコロナ処理PETフィルム上にバーコーターで、コートを行い、120℃で5分乾燥を行い、厚さ3μmの皮膜を得た。
【0036】
〔耐水性評価〕
得られた皮膜に、23℃の水を、流量2L/minのシャワーにて30秒流水に接触させた。かかる皮膜を親指と人差し指で挟み、親指で4回表面を擦った後、表面が溶解した面積を測定し、全皮膜面積に対する割合を計算した。結果を表1に示す。
【0037】
実施例2
実施例1において、1,2−ジメチルイミダゾールに替えて、2−エチルー4−メチルイミダゾール(2―E―4―MI)を用いた以外は、実施例1と同様に塗工液(pH=8.3)を得て、耐水性を評価した。結果を表1に示す。
【0038】
比較例1
実施例1において、1,2−ジメチルイミダゾールを配合しなかった外は、実施例1と同様に塗工液(pH=4.5)を得て、耐水性を評価した。なお、pHの調整のため水酸化ナトリウムを用いて、pH=8.8になるように調製した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
評価基準
○:皮膜の溶解なし
△:皮膜が一部溶解
×:皮膜が完全溶解
【0040】
かかる結果から、AA化PVAをアルデヒド化合物で架橋する際に、イミダゾール化合物を含有すると、含有しない場合と比較して、耐水性が向上した。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の樹脂組成物を含有する塗工液から得られた塗膜は、薄膜にした際の耐水性に優れるため、紙などの基材のコーティングに適しており、包装材料の最外層に好適に用いられる。