(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザー光透過性または非透過性を有するガラスパネルまたは樹脂パネルからなる第1部材と、筐体からなる第2部材との間に、上記第1部材の周縁部に沿う枠状をなすように形成されたホットメルト型のレーザー接合用接合剤を介在させ、該レーザー接合用接合剤をレーザー光により加熱して上記第1部材及び上記第2部材を接合するレーザー光を用いた接合方法において、
上記第1部材及び上記第2部材の少なくとも一方の接合面に、上記第1部材の周縁部に沿う枠状をなすように上記レーザー接合用接合剤を溶融状態で印刷する工程と、上記第1部材及び上記第2部材の間に介在する基材に、上記第1部材の周縁部に沿う枠状をなすように上記レーザー接合用接合剤を溶融状態で印刷する工程と、セパレータに、上記第1部材の周縁部に沿う枠状をなすように上記レーザー接合用接合剤を溶融状態で印刷して上記第1部材及び上記第2部材の少なくとも一方の接合面に上記レーザー接合用接合剤を付着させる工程とのうち、少なくとも1つの工程を含む接合剤印刷工程と、
上記接合剤印刷工程の後、上記第1部材側からレーザー光を照射し、レーザー光の照射による発熱により上記レーザー接合用接合剤を加熱して溶融または軟化させて上記第1部材及び上記第2部材を接合するレーザー光照射工程とを備えていることを特徴とするレーザー光を用いた接合方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、レーザー光を用いて接合する対象物としては、例えばスマートフォンやタブレット型端末、液晶テレビ、パーソナルコンピュータのように表示画面を有する機器があり、このような機器では、表示画面側の透明パネルと、電子部品等を収容する筐体とを接合することになる。この場合、透明パネルの中央部は画面が位置しているので、画面以外の部分(透明パネルの周縁部)と筐体の周縁部とを接合することになる。従って、透明パネルの周縁部と筐体の周縁部との間にのみレーザー接合用中間部材を配置しなければならない。
【0008】
ところが、特許文献1、2ではレーザー接合用中間部材がシート状のものなので、まず、透明パネルの外形よりも大きいシート状のレーザー接合用中間部材を用意し、その後、透明パネルの周縁部に合致した枠形状となるように打ち抜いて使用しなければならない。このため、枠の内側の部分は使用できず廃棄するしかなく、歩留まりが非常に悪いという問題がある。
【0009】
また、近年、特に表示画面を有する機器においては、画面の表示領域を拡大しながら、外形を小さくしたいという要求が強まっている。この要求を満たすには、透明パネルの接合部分の幅を狭くして対応することが求められ、レーザー接合用中間部材を枠状に打ち抜く際、細くしなければならず、歩留まりがより一層悪化してしまう。
【0010】
また、細い枠状のレーザー接合用中間部材を所定位置に正確に配置すること自体が困難であり、このことも歩留まり悪化の一因となっている。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーザー光を用いて部材を接合する場合に、狭い接合面に狙い通りに無駄なく接合剤を配置できるようにして歩留まりを悪化させることなく、第1部材及び第2部材を所望の強度で接合できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、印刷方式を用いて接合剤を印刷するようにした。
【0013】
第1の発明は、レーザー光透過性または非透過性を有するガラスパネルまたは樹脂パネルからなる第1部材と、筐体からなる第2部材との間に、上記第1部材の周縁部に沿う枠状をなすように形成された
ホットメルト型のレーザー接合用接合剤を介在させ、該レーザー接合用接合剤をレーザー光により加熱して上記第1部材及び上記第2部材を接合するレーザー光を用いた接合方法において、
上記第1部材及び上記第2部材の少なくとも一方の接合面に、上記第1部材の周縁部に沿う枠状をなすように上記レーザー接合用接合剤を
溶融状態で印刷する工程と、上記第1部材及び上記第2部材の間に介在する基材に、上記第1部材の周縁部に沿う枠状をなすように上記レーザー接合用接合剤を
溶融状態で印刷する工程と、セパレータに、上記第1部材の周縁部に沿う枠状をなすように上記レーザー接合用接合剤を
溶融状態で印刷して上記第1部材及び上記第2部材の少なくとも一方の接合面に上記レーザー接合用接合剤を付着させる工程とのうち、少なくとも1つの工程を含む接合剤印刷工程と、
上記接合剤印刷工程の後、上記第1部材側からレーザー光を照射し、レーザー光の照射による発熱により上記レーザー接合用接合剤を加熱して溶融または軟化させて上記第1部材及び上記第2部材を接合するレーザー光照射工程とを備えていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、レーザー接合用接合剤を印刷方式で接合面、基材及びセパレータの少なくとも1つに印刷するようにしているので、例えば、第1部材と第2部材との接合面が細い枠状であった場合に、必要な量のレーザー接合用接合剤を無駄なく使用して接合面の形状に対応した形状の枠を形成することが可能になる。また、基材やセパレータにレーザー接合用接合剤を印刷する場合は、印刷後、第1部材または第2部材にレーザー接合用接合剤を付着させることで、レーザー接合用接合剤を正確な位置に狙い通りに配置することが可能になる。
【0015】
また、レーザー接合用接合剤が接合面に印刷された場合、第1部材や第2部材による熱吸収と雰囲気によって冷却されて固化し始める。また、レーザー接合用接合剤が基材やセパレータに印刷された場合も、それらによる熱吸収と雰囲気によって冷却されて固化し始める。レーザー接合用接合剤が接合面上や、基材、セパレータ上で固化することで、印刷面に対して接着力を持つので、レーザー接合用接合剤を印刷面に所定の形状のまま固定することが可能になる。
【0016】
第
2の発明は、第
1の発明において、接合剤印刷工程におけるレーザー接合用接合剤の上記接合面に対する固着力は、レーザー光照射工程後におけるレーザー接合用接合剤による接合強度よりも低く設定することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、接合剤印刷工程でレーザー接合用接合剤の接合面に対する固着力が低いので、例えば、レーザー接合用接合剤を接合する位置がずれてしまっている場合に、レーザー接合用接合剤を接合面から一旦剥がして正規の位置に配置する修正作業が容易に行える。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、レーザー接合用接合剤を印刷方式により接合面、基材及びセパレータの少なくとも1つに印刷するようにしたので、狭い接合面であっても、その接合面に狙い通りに無駄なくレーザー接合用接合剤を配置でき、歩留まりが良好になるとともに、第1部材及び第2部材を所望の強度で接合できる。
【0019】
また、ホットメルト型のレーザー接合用接合剤を溶融状態で接合面、基材及びセパレータの少なくとも1つに印刷するようにしたので、レーザー接合用接合剤を接合面や、基材、セパレータに所定の形状のまま固定しておくことができ、第1部材と第2部材とを接合するまでにレーザー接合用接合剤が位置ずれするのを防止できる。
【0020】
第
2の発明によれば、接合剤印刷工程におけるレーザー接合用接合剤の接合面に対する固着力を低くしたので、レーザー接合用接合剤の位置の修正作業を容易に行うことができ、歩留まりをより一層向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態にかかるレーザー光を用いた接合方法を使用して製造されたスマートフォンAの側面図である。スマートフォンAは、ガラスパネル(第1部材)10と、筐体(第2部材)20とを備えている。ガラスパネル10は、該ガラスパネル10の裏側に配設された液晶表示装置(図示せず)に表示された画像を透過させることができるように無色透明である。よって、ガラスパネル10は、レーザー光を透過させるレーザー光透過性を有している。レーザー光透過性とは、レーザー光を殆ど反射も吸収もせずに透過させることのできる性質をいい、レーザー光の全てを透過させるものも含む。ガラスパネル10は薄く着色されていてもよい。ガラスパネル10は、レーザー光非透過性を有するものであってもよい。
【0024】
尚、ガラスパネル10の代わりに樹脂パネルやフィルム、シート等を使用することもできる。
【0025】
このスマートフォンAでは、画面の表示領域を最大限確保しており、いわゆる狭額縁化されている。すなわち、スマートフォンAでは、液晶表示装置の端子等が画面の周囲に存在しており、これらがガラスパネル10の表側から見えないように、ガラスパネル10の周縁部には額縁部と呼ばれる枠状の着色層が形成されている。この着色層の色は例えば黒色であり、着色層の形成方法としては、例えば印刷等である。このような額縁部を設ける場合、スマートフォンAの外形を変えることなく、画面の表示領域を拡大していくと必然的に額縁部が細くなっていく。この額縁部を細くしていくことが狭額縁化である。ガラスパネル10の筐体20との接合面10aは、レーザー接合用接合剤30がガラスパネル10の表側から見えないようにするために枠状の額縁部とされ、額縁部からはみ出ないようになっている。従って、狭額縁化によって接合面10aが狭くなっている。また、ガラスパネル10の表側にはタッチセンサー(図示せず)も設けられている。
【0026】
筐体20は、電子部品やバッテリー等を収容可能な箱形に形成されており、着色された樹脂材で構成されている。よって、筐体20は、レーザー光を吸収するレーザー光吸収性を有している。レーザー光吸収性とは、レーザー光を通さないレーザー光非透過性のことであり、レーザー光を一部透過及び/または反射しても残りを吸収する性質をいう。これにはレーザー光を全く透過させないものも含む。筐体20は、金属製であってもよい。
【0027】
筐体20の開放部分がガラスパネル10によって覆われる。筐体20の周縁部は、ガラスパネル10の接合面10aと接合する接合面20aとされている。この筐体20の接合面20aの形状は、ガラスパネル10の額縁部の形状、即ち、ガラスパネル10の接合面10aの形状と同じ枠状である。
【0028】
レーザー接合用接合剤30は、レーザー光の照射により額縁部が発熱した際に溶融または軟化するホットメルト型の接合剤である。レーザー接合用接合剤30は、常温付近でゴム弾性を示す高分子化合物(エラストマー)及びそのアロイであり、熱可塑性を有するものである。レーザー接合用接合剤30を構成する材料としては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、塩ビ系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリブタジェン系エラストマー、イソプレン系エラストマー、イオンクラスターと非晶性PEエラストマー、フッ素系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー等を挙げることができ、これらを単独または混合して使用することができる。
【0029】
また、粘着性を付与するために粘着付与剤、いわゆるタッキファイアやオイル、液状オリゴマー等をレーザー接合用接合剤30に添加することができる。タッキファイアとしては、例えば、ロジン系粘着付与剤やテルペン系粘着付与剤、炭化水素系粘着付与剤を単独または混合して使用することができ、液状オリゴマーとしてはアクリル系、スチレン系、ゴム系、ポリエステル系の分子量数百から数千程度の高粘度の重合体を使用することができる。
【0030】
レーザー接合用接合剤30を構成する材料には、レーザー光吸収剤を混合してもよい。レーザー光吸収剤としては、例えば、有機染料や有機顔料、市販のレーザー光吸収材があり、具体的には、無機物ではカーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、グラファイト等、金属酸化物ではチタンブラック、二酸化マンガン、二酸化チタン等がある。また、ミアニン色素、チオニールニッケル錯体、スクアリリニウム色素、ポリメチン系色素、インモニウム系色素、フタロシアン系色素、トリアリルメタン系色素、ナフトキノシ系色素等を使用することもできる。これらを単独または混合して使用することもできる。
【0031】
レーザー接合用接合剤30のレーザー光吸収性は、レーザー光吸収剤の種類や配合量によって任意に設定することができる。この実施形態では、レーザー接合用接合剤30のレーザー光吸収率を30%以上100%以下に設定している。レーザー接合用接合剤30のレーザー光吸収率の好ましい範囲は、50%以上100%以下である。レーザー接合用接合剤30のレーザー光吸収率が30%未満であると、レーザー光の照射時間が長時間化したり、照射するレーザー光の出力を高めなければならず、省エネルギの観点から好ましくない。
【0032】
カーボンブラックや二酸化チタンのように溶解しない成分を上記エラストマー中に分散させるためには、ボールミル、ビーズミルや3本ロールなどを用いて分散させればよい。
【0033】
次に、
図3、
図4に示すレーザー接合用接合剤の印刷装置40,50について説明する。
図3の印刷装置40は、レーザー接合用接合剤30を定量印刷できる凹版印刷装置であり、回転シリンダー41の周面に、接合面10a,20aの形状に対応した枠状の凹部42が形成されている。溶融状態のレーザー接合用接合剤30を凹部42に充填することで、レーザー接合用接合剤30を計量することができる。凹部42内のレーザー接合用接合剤30の量は、凹部42の深さと幅により規定される。回転シリンダー41の周面上において凹部42以外の部分に付着したレーザー接合用接合剤30は、ドクターブレード43によって掻き取られて回転シリンダー41の周面上から除去されるので、必要な部分(凹部42)のみ所定の厚みでレーザー接合用接合剤30を回転シリンダー41に保持できる。この計量した一定量のレーザー接合用接合剤30を、ガラスパネル10の接合面10aに印刷する。
【0034】
レーザー接合用接合剤30は、ガラスパネル10の接合面10aに印刷することなく、基材B(
図5、
図6に示す)及びセパレータ(図示せず)の少なくとも一方に転写・印刷してもよい。基材Bとしては、樹脂製フィルムやシート材を用いることができる。この基材Bの両面にレーザー接合用接合剤30を印刷してガラスパネル10の接合面10aと筐体20の接合面20aとの間に介在させるようにする。この工程が、ガラスパネル10及び筐体20の間に介在する基材Bにレーザー接合用接合剤を印刷する工程である。
【0035】
また、セパレータに印刷する場合には、印刷後、レーザー接合用接合剤30をガラスパネル10の接合面10aと筐体20の接合面20aとの少なくとも一方に転写する。この工程が、セパレータにレーザー接合用接合剤30を印刷してガラスパネル10及び筐体20の少なくとも一方の接合面10a,20aにレーザー接合用接合剤30を付着させる工程である。
【0036】
離型性の高いセパレータに印刷する場合には、セパレータに対する転写性を上げるために印刷部分以外のレーザー接合用接合剤30を回転シリンダー41の周面上に薄く残した状態とし、ドクターブレード43によって完全に掻き取らなくてもよい。
【0037】
レーザー接合用接合剤30を回転シリンダー41の凹部42に充填して計量する際、レーザー接合用接合剤30はホットメルトタイプであるため、回転シリンダー41や回転シリンダー41に転写させる容器(ホットメルトパン)等は、レーザー接合用接合剤30の溶融温度以上に保っておく。これにより、レーザー接合用接合剤30の流動性が維持される。
【0038】
ガラスパネル10の接合面10a、基材B、セパレータに転写・印刷されたレーザー接合用接合剤30は、それら接合面10a、基材B、セパレータによる熱吸収と、雰囲気(外気)によって冷却されて瞬時に固化する。こうして必要な量のレーザー接合用接合剤30が必要な部分のみに印刷されるので無駄のないレーザー接合用接合剤30のパターンが得られる。
【0039】
図4の印刷装置50は、レーザー接合用接合剤30を定量印刷できる孔版印刷装置であり、スクリーン(版)51の乳剤のパターンの孔52で計量した一定量のレーザー接合用接合剤30を接合面10aや基材B、セパレータ上に転写・印刷する。レーザー接合用接合剤30の計量はスクリーンメッシュの開度とスクリーン51の乳剤膜厚より規定される。
【0040】
この印刷装置50では、接合面10aや基材B、セパレータに一定量を転写するためにスクィージ53を用いて孔52にレーザー接合用接合剤30を充填した後、再度、スクィージ53によって圧力を加えてレーザー接合用接合剤30を接合面10aや基材B、セパレータに印刷する。
【0041】
この時、レーザー接合用接合剤30はホットメルトタイプであるためスクリーン51やスクリーン51を囲む雰囲気はレーザー接合用接合剤30の溶融温度以上に保っておく。これにより、レーザー接合用接合剤30の流動性が維持される。
【0042】
転写・印刷されたレーザー接合用接合剤30は、凹版印刷と同様に瞬時に固化する。こうして必要な量のレーザー接合用接合剤30が必要な部分のみに印刷されるので無駄のないレーザー接合用接合剤30のパターンが得られる。
【0043】
尚、レーザー接合用接合剤30の印刷方式は、上記した方式に限られるものではなく、その他の方式として、凸版印刷や平版印刷等を用いることができ、凸版印刷や平版印刷は、レーザー接合用接合剤30が薄い膜厚の場合に好適である。
【0044】
また、レーザー接合用接合剤30には、印刷適性を上げるためにレーザー接合用接合剤30を溶解する有機溶剤を添加することも可能である。
【0045】
ホットメルトでの印刷の場合は、100℃から200℃の範囲に加熱した時のレーザー接合用接合剤30の粘度が500mPa・sから150,000mPa・sの範囲にあるのが好ましく、さらに好ましくは120℃から160℃の範囲に加熱したときのレーザー接合用接合剤30の粘度が1,000mPa・sから100,000mPa・sの範囲にあるのが好ましい。加熱温度は、印刷性が良好で、かつ、レーザー接合用接合剤30が熱分解しない温度が適切である。
【0046】
有機溶剤を添加する場合は、常温から80℃に加熱した時のレーザー接合用接合剤30の粘度が500mPa・sから150,000mPa・sの範囲にあるのが好ましく、さらに好ましくは5,000Pa・sから50,000Pa・sの範囲である。加熱温度は、印刷性が良好で、かつ、有機溶剤の蒸発が少なく粘度変動が少ない温度が適切である。
【0047】
以上が接合剤印刷工程である。このように、レーザー接合用接合剤30は、ガラスパネル10の接合面10aに固着することができる。接合剤印刷工程におけるレーザー接合用接合剤30の接合面10aに対する固着力は、後述するレーザー光照射工程を経た後におけるレーザー接合用接合剤30による接合強度よりも低く設定している。
【0048】
このように接合剤印刷工程におけるレーザー接合用接合剤30の接合面10aに対する固着力を低くしているので、例えばレーザー接合用接合剤30が接合面10aからはみ出た状態で印刷された場合に、レーザー接合用接合剤30を容易に剥がすことができ、正規の位置に配置する修正作業が容易に行える。レーザー接合用接合剤30が基材Bの所定箇所からはみ出た場合、セパレータの所定箇所からはみ出た場合も同様に修正作業が容易に行える。
【0049】
また、印刷されたレーザー接合用接合剤30がその直後から固化していくので、レーザー接合用接合剤30の接合面10aからの高さH(
図7に示す)は、容易に高くすることができる。レーザー接合用接合剤30の接合面10aからの高さHは、例えば、100μm以上が好ましく、より好ましくは200μm以上である。基材Bまたはセパレータからの高さも同様に高くすることができる。
【0050】
そして、レーザー接合用接合剤30が接合面10a上や、基材B、セパレータ上で固化することで、接合面10a、基材B、セパレータに対して接着力を持つので、レーザー接合用接合剤30を接合面10a、基材B、セパレータ上に所定の形状のまま、所定位置に固定することが可能になる。これにより、筐体20と接合する前にガラスパネル10や基材B、セパレータを搬送する際、レーザー接合用接合剤30の位置ずれを防止することができる。
【0051】
レーザー接合用接合剤30を基材Bまたはセパレータに印刷した工程の場合で、レーザー接合用接合剤30の形状や寸法に高い精度が要求される場合には、
図6に示すように、印刷形成された部分にダイカット(金型による打抜き加工)を行ってレーザー接合用接合剤30の幅やエッジ部を調整することができる。この場合は、レーザー接合用接合剤30を枠状に印刷するときの枠の幅を、最終的に製品に転写するレーザー接合用接合剤30の枠の幅よりも広くする必要がある。
【0052】
また、レーザー接合用接合剤30の断面形状は、
図7(a)に示すように半円に近い形状であってもよいし、
図7(b)に示すように台形であってもよく、特に限定されない。
【0053】
レーザー接合用接合剤30をガラスパネル10の接合面10aに印刷した場合には、そのガラスパネル10と筐体20とを合わせて所定の力でクランプする。また、レーザー接合用接合剤30を基材Bに印刷した場合には、基材Bをガラスパネル10と筐体20との間に介在させてガラスパネル10と筐体20とを合わせて所定の力でクランプする。また、レーザー接合用接合剤30をセパレータに印刷した場合には、セパレータのレーザー接合用接合剤30を、ガラスパネル10の接合面10aと筐体20の接合面20aとの少なくとも一方に転写した後、ガラスパネルと筐体20とを合わせて所定の力でクランプする。
【0054】
クランプ後、
図1に示すようにレーザー光Lをガラスパネル10側からレーザー接合用接合剤30に向けて照射する。これがレーザー光照射工程である。
【0055】
この実施形態では、ガラスパネル10に額縁部があるので、レーザー光Lは額縁部で吸収されて額縁部が発熱する。額縁部の熱は隣接するレーザー接合用接合剤30に伝わり、レーザー接合用接合剤30が軟化または溶融する。従って、額縁部がある場合には、レーザー接合用接合剤30にレーザー光吸収剤を添加しなくてもよい。
【0056】
レーザー光Lの全てがガラスパネル10の額縁部で吸収されなかった場合には、残りのレーザー光Lはガラスパネル10を透過してレーザー接合用接合剤30に達する。このとき、レーザー接合用接合剤30にレーザー吸収剤を添加している場合、レーザー光Lはレーザー接合用接合剤30に吸収される。レーザー光Lを吸収したレーザー接合用接合剤30はそれ自体が発熱する。よって、レーザー接合用接合剤30が確実に軟化または溶融する。
【0057】
また、レーザー接合用接合剤30のレーザー光吸収率が低い場合でも、筐体20にレーザー光が吸収され筐体20の接合面20aが発熱する。これにより、レーザー接合用接合剤30が軟化または溶融する。
【0058】
照射するレーザー光Lは、波長750nm以上の赤外域のレーザー光であればよく、半導体レーザー、ファイバーレーザーや固体レーザー、ガスレーザーなどを使用できるが、取り扱い容易性の点から半導体レーザーが好ましい。
【0059】
レーザー光Lの出力としては、ガラスパネル10の額縁部が破損せずに、かつ、レーザー接合用接合剤30がレーザー光Lの照射によって発生した熱で軟化または溶融する程度が好ましい。
【0060】
ガラスパネル10に額縁部が無い場合にも本発明を適用することができるが、この場合、レーザー接合用接合剤30が熱分解して発泡しない程度で、レーザー接合用接合剤30が軟化または溶融する程度のレーザー光出力が適当である。
【0061】
この場合、レーザーの光を吸収して発熱し、パネルの見栄えを良くするためにレーザー接合用接合剤30をレーザー光吸収性に着色することが望ましい。
【0062】
レーザー接合用接合剤30が確実に軟化または溶融することで、濡れ性が向上し、ガラスパネル10の接合面10aや筐体20の接合面20aに均一に、かつ、確実に密着する。その結果、強力な接着力が得られる。
【0063】
また、レーザー接合用接合剤30のガラスパネル10側の面が均一に軟化または溶融してガラスパネル10の接合面10aに密着するので、ガラスパネル10側からの見栄えが良くなる。
【0064】
レーザー光Lの照射後、レーザー接合用接合剤30の温度が常温まで低下すると強力な接着力を発現する。このときの接合強度が、レーザー光照射工程を経た後におけるレーザー接合用接合剤30による接合強度である。
【0065】
ガラスパネル10と筐体20とを接合した後、例えば、スマートフォンAを落下させた場合、ガラスパネル10と筐体20とが分離することはない。これは、レーザー接合用接合剤30がガラスパネル10及び筐体20に確実に密着していることと、レーザー接合用接合剤30の印刷後の高さHを高くして、レーザー接合用接合剤30により形成される弾性層を厚くし、この弾性層の変形量を大きくして衝撃吸収性を向上させていることによるものである。
【0066】
さらに、ガラスパネル10の液晶やタッチパネルか、筐体20に組み込まれている電子機器が不良で、接合したガラスパネル10を筐体20から剥離する必要が発生した場合、接合用レーザーLを照射した位置と全く同じ位置に再度レーザー光(剥離用レーザー光)を照射することにより、レーザー接合用接合剤30が軟化して筐体20からガラスパネル10を容易に剥離することができる。
【0067】
また、レーザー接合用接合剤30が引っ張り強度の高いエラストマー組成なので、レーザー接合用接合剤30を指で剥がしても、破断することなく容易に剥離することができる。
【0068】
以上説明したように、この実施形態にかかるレーザー光を用いた接合方法によれば、レーザー接合用接合剤30を印刷方式を用いてガラスパネル10の接合面10aに印刷するようにしたので、ガラスパネル10の接合面10aと筐体20の接合面20aとが細い枠状であった場合に、必要な量のレーザー接合用接合剤30を無駄なく使用して接合面10a,20aの形状に対応した形状の枠を形成することが可能になる。また、基材Bやセパレータにレーザー接合用接合剤30を印刷する場合は、印刷後、ガラスパネル10の接合面10aまたは筐体20の接合面20aの少なくとも一方にレーザー接合用接合剤30を転写することで、レーザー接合用接合剤30を正確な位置に狙い通りに配置することが可能になる。したがって、狭い接合面10a,20aであっても、その接合面10a,20aに狙い通りに無駄なくレーザー接合用接合剤30を配置でき、歩留まりを良好にできるとともに、ガラスパネル10及び筐体20を所望の強度で接合できる。
【0069】
また、ホットメルト型のレーザー接合用接合剤30を溶融状態で接合面10a、基材B及びセパレータの少なくとも1つに印刷することができる。これにより、レーザー接合用接合剤30をガラスパネル10の接合面10aや筐体20の接合面20aに所定の形状のまま固定しておくことができ、ガラスパネル10と筐体20とを接合するまでにレーザー接合用接合剤30が位置ずれするのを防止できるとともに、レーザー接合用接合剤30の形状が変形するのも防止できる。
【0070】
また、接合剤印刷工程後、かつ、レーザー光照射工程前におけるレーザー接合用接合剤30の固着力を、レーザー光照射工程後の固着力よりも低くしたので、レーザー光照射工程前であれば、レーザー接合用接合剤30の位置の修正作業を容易に行うことができる。
【0071】
また、上記実施形態では、レーザー接合用接合剤30をガラスパネル10または基材Bまたはセパレータに印刷するようにしているが、これに限らず、筐体20の接合面20aに印刷するようにしてもよい。また、レーザー接合用接合剤30をガラスパネル10及び筐体20の両方に印刷するようにしてもよい。
【0072】
また、本発明は、スマートフォンAの製造以外にも、パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、デジタルカメラ等のモバイル機器をはじめ、例えば家庭用電気機器、住宅設備機器、自動車部品等、複数の部材をレーザー光を用いて接合する場合に広く適用することができる。
【0073】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0074】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0075】
スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物いわゆるSBS(Kraton製D−1118)56重量部とSBS(JSR株式会社製TR2601)44重量部およびタッキファイアとしてテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製YSポリスターT−115)50重量部、オイル(株式会社クラレ製 LBR−305)10重量部、酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製 イルガノックス1010) 1重量部をトルエンに溶解して固形分80重量%の粘稠な粘着剤溶液を調整してレーザー接合用接合剤を得た。
【0076】
幅50mm、長さ100mm、厚さ1mmのガラス板(第1部材)を準備し、ガラス板周縁部全周に幅2mmでUVスクリーンインキの黒色(十条ケミカル株式会社製レイキュアGA4100)をスクリーン印刷し、メタルハライドランプを用いて300mJ/cm
2で紫外線硬化させた。これが額縁部である。
【0077】
上記のようにして調整した粘稠な粘着剤溶液を100メッシュ、乳剤厚300μmのスクリーンで印刷幅1.5mm幅となるようにガラス板の額縁部相当部分の全周に印刷した。このときスクリーン版は60℃に保温した。これを室温で10時間乾燥させて枠状のレーザー接合用接合剤を得た。乾燥したレーザー接合用接合剤の厚みは200μmであった。
【0078】
第2部材として幅60mm、長さ120mm、厚さ2mmで中心に15mmの貫通孔のあるポリカーボネート板を準備し、このポリカーボネート板に上記ガラス板を貼り合わせた。
【0079】
ガラス板に別の押えガラスを用いて30kgのクランプ力を加え、レーザー接合用接合剤に沿って、波長940nmの半導体レーザーを出力4W、走査速度10mm/秒の速度で照射した。
【0080】
ガラス板の額縁部相当部分の発熱によりレーザー接合用接合剤は軟化してガラス板はポリカーボネート板に強固に接合した。照射後の試験体(一体化したガラス板及びポリカーボネート板)の貫通孔に直径12mmの押し棒を挿入してガラス板を剥離する方向に5mm/分の速度で移動させ、ガラス板をポリカーボネート板から離脱させるのに要する力を測定した。この時の力は175Nであり、十分な強度が得られた。
【0081】
ガラス板をポリカーボネート板から離脱させていない試験体にクランプをかけずにレーザー光(剥離用レーザー光)を照射した。この剥離用レーザー光の出力は20Wで、走査速度は20mm/秒である。また、剥離用レーザー光は半導体レーザーであり、その照射位置は、上述の接合時にレーザー光Lを照射した部位である。また、剥離用レーザー光の波長は940nmである。剥離用レーザー光は同一部位に15回照射した。
【0082】
剥離用レーザー光の照射後、直ちに試験体の貫通孔に、手で持った押し棒を挿入してガラス板を剥離する方向に押したところ、小さな力で容易にガラス板を剥離することができた。
【0083】
また、ガラス板の剥離後、ガラス板またはポリカーボネート板に残っているレーザー接合用接合剤を指で引っ張ると、途中で破断することなく容易に剥離できた。
【実施例2】
【0084】
スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物いわゆるSBS(Kraton製D−1118)56重量部とSBS(JSR株式会社製TR2601)44重量部およびタッキファイアとしてテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製 YSポリスターT−115)50重量部、オイル(株式会社クラレ製 LBR−305)10重量部、酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製 イルガノックス1010)カーボンブラック0.5重量部を樹脂ロール(関西ロール株式会社製)で130℃の温度で混練して、黒色の樹脂塊(レーザー接合用接合剤)を得た。
【0085】
直径20cmの金属製の回転シリンダー(凹版印刷装置)の周面に、深さ400μm、幅3mmで、ガラス板(第1部材)の接合面の形状より幅広の彫刻を枠状に施した。この彫刻部分は、レーザー接合用接合剤が充填される凹部に相当する。
【0086】
ホットメルトパンと回転シリンダーを160℃に加熱して混練した上記黒色の樹脂塊を入れ、樹脂塊全体を溶融させた。
【0087】
厚さ38μmの易接着PET A−4300(東洋紡製)をフィルム状基材として用意し、この基材の両面に溶融したレーザー接合用接合剤を印刷して片面100μm、両面で膜厚200μmの印刷物を得た。これをダイカットして幅0.7mmの接合用両面粘着テープを得た。
【0088】
この両面粘着テープをガラス板の周縁部に位置合わせして実施例1と同様にガラス板とポリカーボネート板とを合わせた後、レーザー光を照射した。このときのレーザー光の出力は2Wであり、その他の条件は実施例1と同様にした。
【0089】
ガラス板の表面側から観察すると、レーザー接合用接合剤は均一に軟化し、実施例1の印刷された額縁部のように見た目が良好であり、十分な意匠性を有していた。
【0090】
実施例1と同様にレーザー接合用接合剤による接着力を測定したところ200Nと十分な強度が得られた。
【0091】
ガラス板をポリカーボネート板から離脱させていない試験体にクランプ力をかけずにレーザー光(剥離用レーザー光)を照射した。この剥離用レーザー光の出力は10Wで、走査速度は20mm/秒である。また、剥離用レーザー光は半導体レーザーであり、その照射位置は、上述の接合時にレーザー光Lを照射した部位である。また、剥離用レーザー光の波長は940nmである。剥離用レーザー光は同一部位に10回照射した。
【0092】
剥離用レーザー光の照射後、直ちに試験体の貫通孔に、手で持った押し棒を挿入してガラス板を剥離する方向に押したところ、小さな力で容易にガラス板を剥離することができた。
【0093】
また、ガラス板の剥離後、ガラス板またはポリカーボネート板に残っているレーザー接合用接合剤を指で引っ張ると、途中で破断することなく容易に剥離できた。