特許第6161405号(P6161405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コクヨ株式会社の特許一覧 ▶ タカノ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6161405-椅子 図000002
  • 特許6161405-椅子 図000003
  • 特許6161405-椅子 図000004
  • 特許6161405-椅子 図000005
  • 特許6161405-椅子 図000006
  • 特許6161405-椅子 図000007
  • 特許6161405-椅子 図000008
  • 特許6161405-椅子 図000009
  • 特許6161405-椅子 図000010
  • 特許6161405-椅子 図000011
  • 特許6161405-椅子 図000012
  • 特許6161405-椅子 図000013
  • 特許6161405-椅子 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161405
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 5/10 20060101AFI20170703BHJP
   A47C 7/54 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   A47C5/10 B
   A47C7/54 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-108318(P2013-108318)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-226330(P2014-226330A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】北村 卓也
(72)【発明者】
【氏名】加納 隆芳
(72)【発明者】
【氏名】藤本 和男
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖教
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−139607(JP,A)
【文献】 特開2004−194918(JP,A)
【文献】 特開2012−095931(JP,A)
【文献】 特開2003−111642(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0127551(US,A1)
【文献】 特開2012−130413(JP,A)
【文献】 特開平09−084660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 5/10
A47C 7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のパイプ材により構成され、後脚と、この後脚の下端部に連続させて前方に延出するベースと、このベースの前端に連続し上方に起立する前脚と、この前脚の上端に連続し後方に延出する座受とを共通のパイプ材により一体に形成し、側面視において閉ループ構造を有した支持フレームと、この支持フレームに肘掛けを介して支持された背凭れとを備えてなる椅子であって、
前記背凭れと前記肘掛けとが樹脂により一体に成形されたものであり、
前記肘掛けが、前後方向に延び後端が前記背凭れに連設された肘掛け本体と、この肘掛け本体の前端に設けられ前記後脚の上端部に備えた取付部に取り付けられる被取付部とを備えてなり、
前記肘掛け本体と前記被取付部とを側面視においてくの字状に屈曲した形状をなすように一体に成形しているものであることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記パイプ材として直径13.1mm〜15mmのものが適用されている請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記肘掛け本体の肘当てが、水平面に対して前傾する肘当て面を当該肘当ての上面全域に有したものである請求項1又は2記載の椅子。
【請求項4】
前記座受の後端が、側面視において前記後脚と前記座受とが交差する位置よりも後方に位置している請求項1、2又は3記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、背凭れと肘掛けとが樹脂により一体に成形された椅子が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このものは、一定の強度を確保するため、支持フレームが、比較的大きな径をなすパイプ素材により構成されており、当該支持フレームを構成する後脚の上端部分が、肘掛けの前側の部位に接続するようになっている。
【0003】
ところが、従来のものでは、背凭れ及び肘掛けにかかる荷重の殆どが、後脚により受け付けられる構造になっているため、支持フレームの強度を確保するための設計自由度が低いものとなっており、例えば、支持フレームを小径化するにあたっては一定の限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−194918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、背凭れと肘掛けとが樹脂により一体成形された椅子において、支持フレームの強度を確保するための設計自由度の高い椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の椅子は次の構成をなしている。
【0007】
請求項1に記載の椅子は、金属製のパイプ材により構成され、後脚と、この後脚の下端部に連続させて前方に延出するベースと、このベースの前端に連続し上方に起立する前脚と、この前脚の上端に連続し後方に延出する座受とを共通のパイプ材により一体に形成し、側面視において閉ループ構造を有した支持フレームと、この支持フレームに肘掛けを介して支持された背凭れとを備えてなる椅子であって、前記背凭れと前記肘掛けとが樹脂により一体に成形されたものであり、前記肘掛けが、前後方向に延び後端が前記背凭れに連設された肘掛け本体と、この肘掛け本体の前端に設けられ前記後脚の上端部に備えた取付部に取り付けられる被取付部とを備えてなり、前記肘掛け本体と前記被取付部とを側面視においてくの字状に屈曲した形状をなすように一体に成形しているものである。
【0009】
請求項に記載の椅子は、請求項1に係る構成において、前記パイプ材として直径13.1mm〜15mmのものが適用されているものである。
【0010】
請求項に記載の椅子は、請求項1又は2に係る構成において、前記肘掛け本体の肘当てが、水平面に対して前傾する肘当て面を当該肘当ての上面全域に有したものである。
【0011】
請求項に記載の椅子は、請求項1、2又は3に係る構成において、前記座受の後端が、側面視において前記後脚と前記座受とが交差する位置よりも後方に位置しているものである。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、背凭れと肘掛けとが樹脂により一体成形された椅子において、支持フレームの強度を確保するための設計自由度の高い椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
図2】同実施形態における正面図。
図3】同実施形態における平面図。
図4】同実施形態における側面図。
図5】同実施形態における椅子に他の椅子をスタッキングした状態を示す側面図。
図6】同実施形態における分解斜視図。
図7】同実施形態における分解背面図。
図8】同実施形態における後方斜視図。
図9図4におけるA−A線拡大断面図。
図10図4におけるB−B線拡大断面図。
図11図3におけるC−C線拡大断面図。
図12】同実施形態における背カバーを取り付けた状態の中央側断面図。
図13図3におけるD−D線拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜13を参照して説明する。
【0016】
この実施形態は、本発明を細径のパイプ材を使用した椅子Sに適用したものである。この椅子Sは、例えば、オフィスや一般的な会議室、或いは、高齢者の多い施設等において好適に使用される。
【0017】
椅子Sは、肘掛け2及び背凭れである背板3が樹脂により一体に形成されている。そして、肘掛け2の前後方向の寸法は比較的短寸に設定されており、この肘掛け2の前側の部位を、支持フレーム1の左右の後脚11の上端部に接続させている。すなわち、肘掛け2の肘掛け本体21は支持フレーム1によって片持ち梁状に支持されており、背板3は肘掛け2を介して支持フレーム1に支持されている。椅子Sは、図5において具体的に示すように、同一構造をなす他の椅子S’を上下方向に複数スタッキング可能に構成されている。なお、説明の便宜上、図5において、椅子Sと同一構造をなす他の椅子S’の符号には「’」を付している。
【0018】
椅子Sは、支持フレーム1と、この支持フレーム1に支持された肘掛け2、背板3、及び、座4とを備えている。背板3には、背カバーTが着脱可能に取り付けられるようになっている。以下、詳述する。
【0019】
<支持フレーム>
支持フレーム1は、金属製のパイプ材t1を主体に構成されている。本実施形態の椅子Sは、パイプ材t1として直径15mm以下のものを適用することができ、具体的には、直径約13.1mmのパイプ材t1が使用されている。支持フレーム1は、上端部で肘掛け2の前側の部位に接続する後脚11と、後脚11の下端部に連続させて前方に延出するベース12と、ベース12の前端に連続し上方に起立する前脚13と、前脚13の上端に連続し後方に延出する座受14とを備え、これらを共通のパイプ材t1により一体に形成したものである。
【0020】
後脚13と座受14は側面視において交差している。後脚13と座受14とは、側面視における後脚13と座受14とが交差する位置において、水平杆15を介して相互に剛結されている。水平杆15を介して接続する後脚13及び座受14の各部分は左右方向に離間している。座受14は、後脚13よりも内側に位置している。座受14の後端は、側面視において後脚11と座受14とが交差する位置よりも後方に位置している。
【0021】
左右の座受14間には、座4を支持するための帯状をなす前横架材16と後横架材17が架設されている。左右のベース12の前側と後側の部位には、ブロック状をなす樹脂製の接地体18が取り付けられている。図5に示すように、椅子Sに、同一構造をなす他の椅子S’をスタッキングする際には、他の椅子S’の接地体18’の下面が支持フレーム1のベース12の上面に接するようになっている。
【0022】
支持フレーム1は、側面視においてループ構造を有している。具体的には、後脚11と座受14とがこれらに介在する水平杆15に対してそれぞれ溶着されており、後脚11、ベース12、前脚13、座受14、水平杆15とによって、剛性に優れた閉ループ構造を形成している。
【0023】
後脚11は、側面視において床面等の水平面に対して約65〜70°の範囲で前傾している。後脚11の上端部には、肘掛け2の被取付部uが取り付けられる取付部tを備えている。
【0024】
取付部tは、上方に向かって凸形状を成すものであり、金属製のパイプ材t1と、パイプ材t1の中空部t11を埋めるように当該中空部t11に配されるとともに一部分をパイプ材t1の端部から突出させた金属製の芯金部材t2とを備えている。なお、図示している芯金部材t2は、中実のものであるが、中空パイプ状のものであってもよい。また、取付部tは、パイプ材t1の要素と中実の芯金部材t2の要素とを一体的に形成したものであっても良い。芯金部材t2におけるパイプ材t1の端部から突出させた突出部分t21には、芯金部材t2の軸心と直交する方向に第一のねじ孔h1が穿設されている。芯金部材t2は、図6に隠れ線で示すように、後脚11を構成するパイプ材t1の内部にまで延伸し、当該芯金部材t2の下端は、後脚11の下部にまで延びており、パイプ材t1の強度を向上させている。なお、支持フレーム1の取付部tと肘掛け2の被取付部uとの具体的な取り付けについては後述する。
【0025】
ベース12は、床面と略平行に配されるものであり、後脚11の下端と前脚13の下端との間を繋いでいる。
【0026】
<肘掛け>
肘掛け2は、背板3と樹脂により一体に形成されたもので、後端が背板3に連設された肘掛け本体21と、肘掛け本体21の前端に設けられた被取付部uとを備えている。肘掛け本体21と被取付部uとは樹脂により一体に形成されている。
【0027】
肘掛け本体21は、前後方向に延びるブロック状のもので、肘当て211と、肘当て211の下面に添接された補強ブロック212とを備えている。
【0028】
肘当て211は、床面等の水平面に対して約7°前傾する肘当て面を有した平板状のものである。もちろん、肘当て面の前傾角度は7°のものには限定されない。このように肘当て面を前傾に構成することで、着座者がどのような体格であっても肘掛け2の機能を有効に使うことができるものとなるとともに、着座者が立ち上がる際の補助的機能を有効に発揮するものとなる。肘当て211は、その後端部分を背板3における両側端の背面の位置よりも後方に延出させている。肘当て211の内側面は、補強ブロック212の内側面と面一に設定されている。肘当ての211の外側縁は、補強ブロック212の外側縁よりも外方に突出している。
【0029】
補強ブロック212は、上縁を肘当て211の下面に連続させるとともに前縁を被取付部uの外周面に一体化させた複数枚の壁kを備えている。本実施形態では、補強ブロック212は、左右方向に間隔をあけて平行に配された3枚の壁kと、隣接する壁k同士を結合するリブrとを備えている。リブrは、図13に示すように、後方に向かって漸次降下するように傾斜している。また、補強ブロック212の後部には、後方に向かって縦長矩形状に開口した後向き開口穴部p1が2箇所に形成され、当該後向き開口穴部p1は左右に並んで設けられている。なお、補強ブロック212には、複数の壁kの端部とリブrの端部とによって、下方に向かって縦長矩形状に開口した下向き開口穴部p2が6箇所に形成されている。補強ブロック212は、複数の後向き開口穴部p1と下向き開口穴部p2を備えているので、使用者が椅子Sを持ち運びする際に各開口穴部p1、p2に手指が引っ掛かり易いものとなり、滑り止めとしての機能を発揮し得るものとなっている。
【0030】
被取付部uは、支持フレーム1の後脚11に接続する部位をなすもので、下方に開口する有底筒状のものである。被取付部uの前後方向の外径寸法は、被取付部uの左右方向の外径寸法よりも小さく設定されている。被取付部uにおける開口部付近の下端部と肘当て211に連設する上端部を除いた部分、すなわち、被取付部uにおける上下中間部分における左右方向の外径寸法は、略同じ寸法に設定されている。被取付部uは、パイプ材t1の外径よりも小径な突出部分t21に嵌合する嵌合凹部u1と、パイプ材t1に嵌合する外嵌合部u2とを備えている。換言すれば、被取付部uは、突出部分t1が嵌合する小径穴m1と、小径穴m1に連続しパイプ材t1が嵌合する大径穴m2とを具備している。
【0031】
本実施形態の椅子Sは、図5に示すように、同一構造をなす他の椅子S’の被取付部u’が、被取付部uに当接する状態で当該他の椅子S’をスタッキングできるようになっている。より具体的に言えば、他の椅子S’の被取付部u’の背面と、椅子Sの被取付部uの前面とが当接する状態でスタッキングできるようになっている。
【0032】
そして、図10に示すように、被取付部uにおける支持フレーム1の後側に位置する部位ub、すなわち、後脚11の後側に位置する部位ubの肉厚w2は、被取付部uにおける支持フレーム1の前側に位置する部位uf、すなわち、後脚11の前側に位置する部位ufの肉厚w1よりも薄く設定されている。換言すれば、後脚11の後側に位置する部位ubの前後方向の厚み寸法w2は、被取付部uにおける支持フレーム1の前側に位置する部位ufの前後方向の厚み寸法w1よりも短く設定されている。このようにすることで、スタッキングに伴う前後方向のピッチを短くするようにしている。
【0033】
被取付部uは、側部に第一のねじ挿通孔n1を備えている。そして、芯金部材t2の突出部分t21に設けられた第一のねじ孔h1に、第一のねじ挿通孔n1を通過したねじv1を螺着することにより支持フレーム1の取付部tと肘掛け2の被取付部uとを取り付けるようにしてある。被取付部uは、後部に第二のねじ挿通孔n2を備えている。そして、パイプ材t1及び芯金部材t2に、これらパイプ材t1及び芯金部材t2の軸心と直交する方向に連通して設けられた第二のねじ孔h2に、第二のねじ挿通孔n2を通過したねじv2を螺着することにより支持フレーム1の取付部t1と肘掛け2の被取付部uとを取り付けるようにしてある。
【0034】
また、肘掛け2は、図4等に示すように、肘掛け本体21と被取付部uとが側面視においてくの字状に屈曲した形状をなすように樹脂により一体に成形されている。そして、嵌合凹部u1が、肘掛け本体21と被取付部uとによって形成された屈曲部分Fに位置するように設定されている。このように構成することにより、荷重が集中し易い屈曲部分Fにおける樹脂の肉厚を多く得るようにしている。
【0035】
なお、本実施形態の椅子Sは、肘掛け本体21とこの肘掛け本体21の前端に設けられた被取付部uによって側面視くの字形状を構成しており、一般的な肘掛けのように後部分を片持ち支持されて前部分を突出端としているものとは異なった構成となっている。このため、椅子Sは、着座状態から起立する際に着座者の被服等が、肘掛け2に引っ掛かりにくくなり、好適である。
【0036】
<背板>
背板3は、板状をなした樹脂製のものであり、平面視において中央部が平面視において後方に向かって凸となるように湾曲した形状をなしている。背板3は、上端部に側面視において後方に向かって屈曲する屈曲部31と、下端に外方に向けて開放された溝32とを備えている。
【0037】
背板3は、肘掛け2とともに樹脂により一体に成形されたものであり、溝32は、背板3の下縁における左右の肘掛け2間に形成されている。溝32は、下向きに開口しているものである。この溝32は、背カバーTを取り付ける際に用いられるものであるが、下方に向けて開口しているため、背カバーTを取り付けない場合であっても外観に影響を与えにくいようになっている。背板3に対する背カバーTの取り付けについては後述する。
【0038】
背板3の左右幅寸法は、支持フレーム1の左右のベース12間の離間寸法よりも短く設定されている。なお、背板3の左右縁部から外側方に突出した態様で設けられた左右の肘掛け2は、左右のベース12の略真上に位置するように設定されている。
【0039】
<座>
座4は、支持フレーム1に支持されるものであり、樹脂により形成された座本体41と、座本体41の上に配されたクッション42とを備えたものである。座4は、先端部が下方に垂れ下がった形状をなしている。
【0040】
座本体41は、左右側縁部における後側の部位に、支持フレーム1の水平杆15の覆うためのカバー部411を備えている。カバー部411は、水平杆15の周囲と後脚11の前後に位置するようになっており、具体的に言えば、水平杆15の上面側を覆う上カバー部411aと、水平杆15の前後側を覆うとともに後脚11の前後側を覆う位置まで延出した前後カバー部411bとを備えている。
【0041】
クッション22は、クッション性のあるスポンジ素材の外面に張り地を張り設けた通常のものである。
【0042】
<背カバー>
背カバーTは、背板3の少なくとも一部を覆うものである。背カバーTは、背カバー本体T1と、背カバー本体T1の下部に配された挿入部T2とを備えてなる。
【0043】
背カバー本体T1は、布や人工皮革等のシート状の素材により作られるもので、主として背板3の前面側に配される前カバー部T1aと、主として背板3の後面側に配される後カバー部T1bとを備えている。これら前後カバー部T1a、T1bの上縁部及び側縁部同士を縫い合わせることにより、下方に向かって開口された袋状部T11が形成されている。このようにして背カバーTの上部に設けられた袋状部T11は、背板3に被せるためのもので、背板3の屈曲部31と協働して装着時の位置ずれを抑制している。なお、前カバー部T1aの後側や袋状部T11の内面には、クッション性を付与したり装着安定性を付与したりするべく、別途クッション素材を設けるようにしても良い。
【0044】
挿入部T2は、背カバーTを背板3に取り付ける際に、背板3に形成された溝32に挿入されるもので、本実施形態においては、背カバー本体T1の下端に縫いつけられた樹脂製の帯状部材により構成されている。
【0045】
背カバーTの背板3への取り付けは、まず、背板3の上端部に袋状部T11を被せて所定の箇所に位置決めし、しかる後に、背カバー本体T1の下端に設けた挿入部T2の先端を背板3の下端に形成された溝32に差し入れて、背カバー本体T1の下縁部分とともに溝32の内部に押し込むことにより行われる。
【0046】
なお、背カバーTの上部を袋状にして背板3の上部に被せるようにする場合、本実施形態に示すように、背板3の上縁部には溝を設けず、下縁のみに溝32を設けるようにするのが好適である。このようにすると、背カバーTを背板3に装着しない場合には、背板3の上縁部には溝が表出しないため外観がすっきりとするものとなり、背カバーTは上部が袋状をなしているため背板3に対しても位置ずれが抑制された態様で取り付けることができるものとなる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る椅子Sは、金属製のパイプ材t1を主体に構成され側面視においてループ構造を有した支持フレーム1と、この支持フレーム1に支持された背凭れ3及び肘掛け2とを備えてなる椅子Sであり、背凭れ3と肘掛け2とが樹脂により一体に成形されたものであり、支持フレーム1が、肘掛け2の前側の部位に接続しているものである。このため、背凭れ3と肘掛け2とが樹脂一体成形されたものを、ループ構造を有した支持フレーム1により支持しているため、着座者の荷重を、支持フレーム1の全体で受け止めるものとなり、強度に優れた椅子にすることができる。例えば、本実施形態で具体的に示すように、椅子Sにおいて、パイプ材t1として比較的小径のものを適用することができるものとなる。
【0048】
支持フレーム1が、上端部で肘掛け2の前側の部位に接続する後脚11と、後脚11の下端部に連続させて前方に延出するベース12と、ベース12の前端に連続し上方に起立する前脚13と、前脚13の上端に連続し後方に延出する座受14とを共通のパイプ素材により一体に形成したものであるため、後脚11、ベース12、前脚13及び座受14を主体としたループ構造を有した支持フレーム1を構成するものとなり、比較的シンプルにループ構造を構成するものとなる。
【0049】
肘掛け2が、後端が背凭れ3に連設された肘掛け本体21と、肘掛け本体21の前端に設けられた被取付部uとを備えてなり、肘掛け本体21と被取付部uとを側面視において屈曲した形状をなすように一体に成形しているものであるため、ループ構造を有する支持フレーム1が被取付部uと接続し、肘掛け2及び背凭れ3に作用する着座者の荷重を好適に受け付けるものとなる。
【0050】
肘掛け2の肘当て211が、水平面に対して前傾する肘当て面を有したものであるので、着座者がどのような体格であっても肘掛け2の機能を有効に使うことができるものとなるとともに、着座者が立ち上がる際の補助的機能を有効に発揮するものとなる。
【0051】
座受14の後端が、側面視において後脚11と座受14とが交差する位置よりも後方に位置しているものであるため、支持フレーム1が、着座者の荷重をバランスよく受け付けるための設計の自由度に優れたものとなる。
【0052】
座受14と後脚11とを、交差する位置において水平杆15を介して相互に剛結しているものであるため、スタッキングの際に、他の椅子S’の座4’を椅子Sの座4の上に重ね易くするための設計自由度に優れたものとなる。
【0053】
座受14に支持される座4が、水平杆15を覆うカバー部411を備えているものであるため、水平杆15の周囲を外観上好適なものとすることができるとともに、支持フレーム1に座4を取り付ける際には、位置決め部として好適に機能するものとなる。
【0054】
肘掛け本体21が、肘当て211と、肘当て211の下面に添接された補強ブロック212とを備えたものであるため、強度に優れた肘掛け本体21を提供することができ、上下方向の寸法を抑制することによりスタッキング効率の良好に寄与し得るものとなる。
【0055】
補強ブロック212が、上縁を肘当て211の下面に連続させるとともに前縁を被取付部uの外周面に一体化させた複数枚の壁kを備えたものであるので、いわゆる構造材として軽量化に優れるとともに強度に優れたものとなる。
【0056】
肘掛け本体21における補強ブロック212のリブrが、後方に向かって漸次降下するように傾斜しているため、個性的な外観の表出に寄与し得るものとなるとともに、壁kとリブrにより構成される下向き開口穴部p2の数や大きさを設定し易いものとなる。
【0057】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0058】
上述した実施形態では、支持フレームのループ構造は、水平杆の存在を前提としているものであったが、このようなものには限定されず、水平杆の無い態様でループ構造を形成するようにしても良い。例えば、後脚と座受とを溶接等により直接接続する態様などが考えられる。
【0059】
上述した実施形態では、椅子に同一構造をなす他の椅子をスタッキング可能なものとして説明していたが、必ずしも同一構造をなす他の椅子をスタッキング可能に構成していなくても良い。
【0060】
上述した実施形態では、被取付部が嵌合凹部と外嵌合部とを備えたものを示したが、これに限定されるものではなく、少なくとも取付部の突出部分が内嵌される嵌合凹部を備えたものであれば良い。
【0061】
上述した実施形態では、背カバーTを取り付けるための溝が、背板の下縁にのみ形成されているものを示したが、これに限定されるものではなく、溝を背板の周囲に適宜形成するようにしてもよい。
【0062】
上述した実施形態では、背カバーの挿入部が、帯状であるものを示したが、これに限定されるものではない。例えば、挿入部がコード部材や紐等の線状体であってもよい。
【0063】
上述した実施形態では、被取付部における支持フレーム(後脚)の後側に位置する部位の肉厚が、被取付部における支持フレームの前側に位置する部位の肉厚よりも薄く設定されているものを示したが、これに限定されるものではなく、逆に、被取付部における支持フレームの前側に位置する部位の肉厚が、被取付部における支持フレームの後側に位置する部位の肉厚よりも薄く設定されているものであってもよい。
【0064】
上述した実施形態では、椅子に同一構造をなす他の椅子をスタッキングする際に、同一構造をなす他の椅子の被取付部uが、椅子の被取付部に当接するものを示したが、これに限定されるものではなく、近接するものであれば良い。
【0065】
上述した実施形態では、取付部に第一のねじ孔と第二のねじ孔を設け、これらにねじをそれぞれ螺着させて被取付部を取り付けるようにしたいわゆる2箇所ねじ止め構造を有するものについて説明をしたが、必ずしも、このような構成に限定されるものではなく、1箇所ねじ止め構造であってもよい。例えば、第一のねじ孔に第一のねじを螺着して取り付けるだけの構成としても良いし、第二のねじ孔に第二のねじを螺着して取り付けるだけの構成としても良い。
【0066】
上述した実施形態では、支持フレームが金属パイプ材を主体に構成されたものとしているが、これに限られるものではなく、例えば、金属製の丸棒無垢材を用いたものであっても良い。
【0067】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…支持フレーム
2…肘掛け
3…背凭れ
4…座
T…背カバー



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13