【実施例】
【0059】
以下に、本発明の具体的な実施例(実施例1〜5)を、比較例(比較例1)と対比して説明する。しかしながら、これら実施例は、本発明の実施の態様の一例であり、本発明がこれらの実施例に特に限定されるものではなく、また、これにより限定的に解釈されたりするものではない。なお、以下%とあるものは、特になき限り、質量(又は重量)%である。
【0060】
〔実施例1〕
(1)(原料粉末及び有機酸の準備)
(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δを形成するように各原料の秤量を行った。
すなわち、表1に示すように、La源として酸化ランタン(La
2O
3)565.18g、Sr源として炭酸ストロンチウム(SrCO
3)127.95g、及びMn源として炭酸マンガン(MnCO
3)544.68g(原子比で、La:Sr:Mnが0.784:0.196:1.00とする。)を秤量した。上記のように秤量した原料金属化合物中のLaイオンのモル数とSrイオンのモル数とMnイオンのモル数の合計は8.72モルであった。
【0061】
一方で、10LのセパラブルフラスコにLaイオン、Srイオン、Mnイオンのモル数に対して、それぞれ0.5倍量のクエン酸一水和物917g、及びLaイオン、Srイオン、Mnイオンのモル数に対して、それぞれ等量のDL−リンゴ酸1170gを55℃の純水3.8L(リットル)に加えてクエン/リンゴ酸混合水溶液を調製した。
【0062】
(2)(中間生成物及び乾燥)
上記のクエン/リンゴ酸混合水溶液に酸化ランタン、炭酸ストロンチウム、炭酸マンガンを投入し、75℃まで加熱し、その温度で5時間反応させた。
【0063】
反応終了後、得られたスラリーをスプレードライヤーで乾燥させ、中間生成物である複合有機酸塩の乾燥粉末を得た。なお、スプレードライヤーとしては、BDP−10型スプレーバッグドライヤー(大川原化工機社製)を使用し、入口温度:200℃、出口温度:125℃、アトマイザー回転数:15000rpmの条件で乾燥を行った。
【0064】
(3)(粗焼成、仮焼成、本焼成)
得られた乾燥粉末をムライト質の30cmの角サヤ2枚に充填し、大気中において、電気炉で、400℃で10時間焼成し、有機物を分解させた(粗焼成)。室温から400℃までの昇温速度は400℃/3時間とし、400℃から室温までの降温速度は400℃/4時間とした。
得られた粗焼成粉をムライト質の30cmの角サヤ1枚に充填し、大気中において、電気炉で、600℃で10時間焼成し、残存炭素を分解させた(仮焼成)。室温から500℃までの昇温速度は500℃/3時間、さらに600℃までの昇温時間は100℃/2時間とし、600℃から室温までの降温速度は600℃/6時間とし、仮焼成粉を得た。
【0065】
当該仮焼成粉をムライト質の30cmの角サヤ1枚に充填し、大気中において、電気炉で、1200℃で6時間焼成し、目的のLSM最終粉末(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δを得た。(本焼成)室温から700℃までの昇温速度は700℃/4時間、さらに、1200℃までの昇温速度は200℃/3時間とした。1200℃から室温までの降温速度は1200℃/12時間とした。本焼成後、焼成粉を解砕し(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δ粉を得た。
【0066】
(4)(成分分析)
(i)XRD分析
少量の(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δの最終粉末を分取し、その結晶相を同定するためCuKαをX線源とする粉末X線回折測定を行った。X線回折測定にはリガク社製のRINT2200Vを用いた。
その結果、単相の菱面体晶(113相)を有するペロブスカイト構造であることが確認された。
【0067】
(ii)SEM及びEDX分析
また、当該粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)及びこれに付随したエネルギー分散X線分光装置(EDX)により分析した。使用したSEMは日立社製のFE−SEM S−4300であり、EDX検出器は、堀場製作所製のEDX EMAX6853−H、分解能:137eVである。また、測定条件は、加速電圧20kV、エミッション電流20μA、倍率3000倍、WD15mm、プロセスタイム4、計数400万カウント以上とした。
【0068】
図1は、当該粉末のSEM写真(倍率×3000)である。
図2〜4は、それぞれLa、Sr、MnのEDXマッピング図である。これらの図からLa、Sr、Mnのマッピング図から各成分の偏析は後述するクエン酸一水和物のみを使用して製造した比較例1と比べて少ないことが確認された。
図1に示されるような粉末のSEM画像上において、一辺が8μmの格子状に分割した12個の格子点をポイント分析箇所として、各格子点におけるランタンのLα線とマンガンのKα線のピーク面積を測定した。そのピーク面積から、各測定点におけるランタンの含有量(w
a)とマンガンの含有量(w
b)が式(1)の関係を満足するようにランタンの含有量とマンガンの含有量を算出し、12点の平均をとったところランタン及びマンガンの平均含有量はそれぞれ68.1wt%、31.9wt%であった。変動係数を計算するとランタンの変動係数(α)は2.0%であり、マンガンの変動係数(β)は4.3%であった。
w
a+w
b=100(wt%) (1)
【0069】
(iii)粒度分布測定
少量の(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δを以下のようにイオン交換水に分散させて試料を調製した。分散剤として和光純薬社製の二リン酸ナトリウム十水和物を使用した濃度0.24重量%の水溶液を用い、約0.001gの(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δと分散液とから全体が10mlとなるように分散液を調製し、3分間超音波を照射したものを試料とした。その試料から(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δの粒度分布をHORIBA社製のレーザー回折/散乱式粒度分布装置LA−920を用いて測定した。測定の直前に180秒間出力30Wの超音波処理を施した。その結果、体積平均粒径D
50は15.1μmであった。
【0070】
(5)原料化合物と有機酸とからなるスラリーの安定化試験
酸化ランタン254.33gと、炭酸ストロンチウム57.58gと、炭酸マンガン245.11gとからなる混合粉末(La:Sr:Mn=0.784:0.196:1.00)を作製した。別途、クエン酸一水和物413gとDL−リンゴ酸526gとを秤量し、純水1.35L(リットル)に溶解させた。前記混合粉末を前記クエン酸一水和物とDL−リンゴ酸とを含有する水溶液に分散させ、その水溶液を35℃に保ちながら24時間ごとにその粘度を測定した。その結果を
図5に示す。原料化合物の混合物を投入直後26cPであったスラリー粘度は、原料化合物投入後4日間経過した時点で約100cPまで上昇したが、6日間経過しても約100cPのまま安定で低粘度を保っていた。
【0071】
〔実施例2〕
(1)実施例1において、酸化ランタン565.18gを水酸化ランタン(La(OH)
3)656.84gとし、DL−リンゴ酸1170gの代わりに、Laイオン、Srイオン、Mnイオンのモル数に対して、それぞれ1.73倍量のマレイン酸2026gを添加し、また本焼成温度を1000℃とする他は、実施例1と同様の実験を行い、(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δで表される最終粉末を得た。(表1参照)
【0072】
なお、本焼成の温度プログラムは、室温から700℃までの昇温速度を700℃/4時間、さらに1000℃までの昇温速度を100℃/1時間とした。また1000℃から室温までの降温速度は100℃/1時間とした。本焼成後、焼成粉を解砕し(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δ粉を得た。
【0073】
(2)(成分分析)
(i)XRD分析
少量の(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δの最終粉末を分取し、実施例1と同様にして粉末X線回折測定を行った。その結果、単相の菱面体晶(113相)を有するペロブスカイト構造であることが確認された。
【0074】
(ii)SEM及びEDX分析
また、当該粉末を実施例1と同様にして走査型電子顕微鏡(SEM)及びこれに付随したエネルギー分散X線分光装置(EDX)により分析した。
当該粉末のSEM写真による表面状態、EDXによるLa、Srのマッピング図は、実施例1と同様に後述するクエン酸一水和物のみを使用して製造した比較例1と比べて少ないことが確認された。
【0075】
実施例1と同様にして測定したEDXのランタンのLα線とマンガンのKα線のピーク面積比より算出したランタンの含有量(w
a(wt%))と、マンガンの含有量(w
b(wt%))とを、式(1)の関係を満足するように決定し、ランタンの平均含有量とマンガンの平均含有量を算出したところ、それぞれ、68.0wt%、32.0wt%であった。変動係数を計算するとランタンの変動係数C.V.(α)は2.8%であり、マンガンの変動係数C.V.(β)は6.1%であった。
w
a+w
b=100(wt%) (1)
【0076】
(iii)粒度分布測定
実施例1と同様にして粒度分布測定を行なった。その結果、(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δの体積平均粒径D
50は15.7μmであった。
【0077】
〔比較例1〕
(1)(原料粉末及び有機酸を添加してなる中間生成物)
実施例1と同様に(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δを形成するように各原料の秤量を行った。(表1参照)
一方で、10Lセパラブルフラスコに純水2L(リットル)を加え、酸化ランタンを添加して液温50℃に保持し、2時間水和反応(La
2O
3+3H
2O→2La(OH)
3)させた。これに炭酸ストロンチウム、炭酸マンガンを加えて1時間分散させた。さらにクエン酸一水和物1773gを加えて2時間反応させ、淡桃色のスラリーを得た。
なお、使用したクエン酸量は、Laイオン、Mnイオンのモル数に対してそれぞれ等量、Srイオンのモル数に対して2/3倍量である。
【0078】
(2)(中間生成物の乾燥)
反応終了後、得られたスラリーをスプレードライヤーで乾燥させ、中間生成物である複合有機酸塩の乾燥粉末を得た。なお、スプレードライヤーとしては、BDP−10型スプレーバッグドライヤー(大川原化工機社製)を使用し、入口温度:200℃、出口温度:125℃、アトマイザー回転数:15000rpmの条件で乾燥を行った。
(3)(粗焼成、仮焼成、本焼成)
得られた乾燥粉末をムライト質の30cmの角サヤ2枚に充填し、大気中において、電気炉で、実施例1と同様にして粗焼成し、さらに仮焼成、本焼成を行なった。本焼成後、焼成粉を解砕し(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δ粉を得た。
【0079】
(4)(成分分析)
(i)XRD分析
少量の(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δの最終粉末を分取し、実施例1と同様にして粉末X線回折測定を行った。その結果、当該粉末は、菱面体晶(113相)を有するペロブスカイト構造に相当する主相と不純物相に相当する微量のMn
3O
4とからなることが確認された。
(ii)SEM及びEDX分析
また、当該粉末を実施例1と同様にして走査型電子顕微鏡(SEM)及びこれに付随したエネルギー分散X線分光装置(EDX)により分析した。
図6は、当該粉末のSEM写真(倍率×3000)である。
図7〜9は、それぞれLa、Sr、MnのEDXマッピング図である。これらの図には、La、Sr、Mnについてはかなりの偏析が認められた。
【0080】
実施例1と同様にして測定したEDXのランタンのLα線とマンガンのKα線のピーク面積比より算出したランタンの含有量(w
a(wt%))と、マンガンの含有量(w
b(wt%))とを、式(1)の関係を満足するように決定し、ランタンの平均含有量とマンガンの平均含有量を算出したところ、それぞれ、66.7wt%、33.3wt%であった。変動係数を計算するとランタンの変動係数C.V.(α)が10.4%であり、マンガンの変動係数(β)は20.8%であった。
w
a+w
b=100(wt%) (1)
(iii)粒度分布測定
実施例1と同様にして粒度分布測定を行なった。その結果、(La
0.8Sr
0.2)
0.98MnO
3+δの体積平均粒径D
50は15.3μmであった。
【0081】
(5)原料化合物と有機酸とからなるスラリーの安定化試験
実施例1と同様に、酸化ランタンと、炭酸ストロンチウムと、炭酸マンガンとからなる混合粉末(La:Sr:Mn=0.784:0.196:1.00)を作製した。別途、クエン酸一水和物798gを秤量し、純水1.35L(リットル)に溶解させた。前記混合粉末を前記クエン酸一水和物を含有する水溶液に分散させ、その水溶液を35℃に保ちながらその粘度を測定した。原料化合物の混合物を投入直後25cPであったスラリー粘度は、原料化合物投入後24時間経過した時点で固化してしまった。
【0082】
〔実施例3〕
(1)実施例1において、酸化ランタン559.04g、炭酸ストロンチウム126.56g、炭酸マンガン555.78gを使用し、Laイオン、Srイオン、Mnイオンのモル数に対して、それぞれ0.5倍量のクエン酸一水和物921gと、Laイオン、Srイオン、Mnイオンのモル数に対して、それぞれ等倍量のDL−リンゴ酸1176gを使用した他は実施例1と同様の実験を行い、(La
0.8Sr
0.2)
0.95MnO
3+δで表される最終粉末を得た。(表1参照)
【0083】
(2)(成分分析)
(i)XRD分析
少量の(La
0.8Sr
0.2)
0.95MnO
3+δの最終粉末を分取し、実施例1と同様にして粉末X線回折測定を行った。その結果、当該粉末は、菱面体晶(113相)を有するペロブスカイト構造に相当する主相と不純物相に相当する微量のMn
3O
4からなることが確認された。
【0084】
(ii)SEM及びEDX分析
また、当該粉末を実施例1と同様にして走査型電子顕微鏡(SEM)及びこれに付随したエネルギー分散X線分光装置(EDX)により分析した。
当該粉末のSEM写真による表面状態、EDXによるLa、Srのマッピング図は、実施例1と同様であったが、Mnについては僅かの偏析が認められた。しかし、全体的にはほぼ均一に分布していることが確認された。
実施例1と同様にして測定したEDXのランタンのLα線とマンガンのKα線のピーク面積比より算出したランタンの含有量(w
a(wt%))と、マンガンの含有量(w
b(wt%))とを、式(1)の関係を満足するように決定し、ランタンの平均含有量とマンガンの平均含有量を算出したところ、それぞれ、67.8wt%、32.2wt%であった。変動係数を計算するとランタンの変動係数C.V.(α)は4.3%であり、マンガンの変動係数C.V.(β)は9.0%であった。
w
a+w
b=100(wt%) (1)
【0085】
(iii)粒度分布測定
実施例1と同様にして粒度分布測定を行なった。その結果、(La
0.8Sr
0.2)
0.95MnO
3+δの体積平均粒径D
50は15.7μmであった。
【0086】
〔実施例4〕
(1)(原料粉末及び有機酸の準備)
La
0.6Ca
0.4MnO
3+δを形成するように各原料の秤量を行った。すなわち、表1に示すようにLa源としての酸化ランタン(La
2O
3)493.04g、Sr源としての炭酸カルシウム(CaCO
3)200.83g、及びMn源として炭酸マンガン(MnCO
3)620.88g(原子比で、La:Ca:Mnが0.6:0.4:1.0とする。)を秤量した。上記のように秤量した原料金属化合物中のLaのモル数とCaのモル数とMnのモル数の合計は10.04モルであった。
以後、実施例1において、クエン酸一水和物917gとリンゴ酸1170gとに代えて、Laイオン、Srイオン、Mnイオンのモル数に対して、それぞれ1.5倍量のクエン酸3166gとLaイオン、Srイオン、Mnイオンのモル数に対して、それぞれ2倍量DL−リンゴ酸2694gを使用し、1100℃で6時間本焼成した他は実施例1と同様の実験を行い最終粉末である(La
0.6Ca
0.4MnO
3+δ)を得た。
室温から700℃までの昇温速度は700℃/4時間、さらに、1100℃までの昇温速度は200℃/3時間とした。1100℃から室温までの降温速度は1100℃/11時間とした。
【0087】
(2)(成分分析)
(i)XRD分析
少量のLa
0.6Ca
0.4MnO
3+δの最終粉末を分取し、その結晶相を同定するためCuKαをX線源とする粉末X線回折測定を行った。X線回折測定には実施例1と同様のリガク社製のRINT2200Vを用いた。その結果、単相のペロブスカイト構造であることが確認された。
【0088】
(ii)SEM及びEDX分析
また、当該粉末を実施例1で用いた走査型電子顕微鏡(SEM)及びこれに付随したエネルギー分散X線分光装置(EDX)により分析した。
当該粉末のSEM写真による表面状態、EDXによるLa、Ca、Mnのマッピング図は、実施例1と同様であり、偏析の程度は比較例1と比べて少なかった。
【0089】
実施例1と同様にして測定したEDXのランタンのLα線とマンガンのKα線のピーク面積比より算出したランタンの含有量(w
a(wt%))と、マンガンの含有量(w
b(wt%))とを、式(1)の関係を満足するように決定し、ランタンの平均含有量とマンガンの平均含有量を算出したところ、それぞれ61.8wt%、38.2wt%であった。変動係数を計算するとランタンの変動係数C.V.(α)は3.7%であり、マンガンの変動係数C.V.(β)は6.0%であった。
w
a+w
b=100(wt%) (1)
【0090】
(iii)粒度分布測定
実施例1と同様にして粒度分布測定を行なった。その結果、La
0.6Ca
0.4MnO
3+δの体積平均粒径D
50は15.9μmであった。
【0091】
〔実施例5〕
(1)(原料粉末及び有機酸の準備)
La
0.8Sr
0.2MnO
3+δを形成するように各原料の秤量を行った。
すなわち、表1に示すようにLa源としての炭酸ランタン(La
2(CO
3)
3・8H
2O)1065.92g、Sr源としての炭酸ストロンチウム(SrCO
3)128.85g、及びMn源として酢酸マンガン(Mn(CH
3COO)
2・4H
2O)1169.82g(原子比で、La:Sr:Mnが0.8:0.2:1.0とする。)を秤量し、以後クエン酸一水和物とDL−リンゴ酸の使用量をそれぞれ1827g、1166gにした以外は、実施例1と同様にしてクエン酸一水和物とDL−リンゴ酸と原料金属化合物とからなるスラリーを得た。
上記のクエン酸一水和物とDL−リンゴ酸の使用量は、原料金属化合物中のLaイオンとSrイオンとMnイオンとの合計に対して、共に等倍量であった。
【0092】
(2)(中間生成物及び乾燥)
反応終了後、得られた溶液をスプレードライヤーで乾燥させ、中間生成物である複合有機酸塩の乾燥粉末を得た。なお、スプレードライヤーとしては、実施例1と同じBDP−10型スプレーバッグドライヤー(大川原化工機社製)を使用し、実施例1と同様の条件で乾燥を行った。
【0093】
(3)(粗焼成、仮焼成、本焼成)
得られた乾燥粉末を実施例1と同じ条件で粗焼成及び仮焼成した。
当該仮焼成粉をムライト質の30cmの角サヤ1枚に充填し、大気中において、電気炉で、800℃で6時間焼成し、目的のLSM最終粉末(La
0.8Sr
0.2MnO
3+δ)を得た。(本焼成)
なお、室温から800℃までの昇温速度は800℃/4時間とした。また800℃から室温までの降温速度は100℃/1時間とした。
【0094】
(4)(成分分析)
(i)XRD分析
少量のLa
0.8Sr
0.2MnO
3+δの最終粉末を分取し、その結晶相を同定するためCuKαをX線源とする粉末X線回折測定を行った。X線回折測定には実施例1と同様のリガク社製のRINT2200Vを用いた。その結果、単相の菱面体晶(113相)を有するペロブスカイト構造であることが確認された。
【0095】
(ii)SEM及びEDX分析
また、当該粉末を実施例1で用いた走査型電子顕微鏡(SEM)及びこれに付随したエネルギー分散X線分光装置(EDX)により分析した。
当該粉末のSEM写真による表面状態、EDXによるLa、Sr、Mnのマッピング図は、実施例1と同様であり、偏析の程度は比較例1と比べて少なかった。
【0096】
実施例1と同様にして測定したEDXのランタンのLα線とマンガンのKα線のピーク面積比より算出したランタンの含有量(w
a(wt%))と、マンガンの含有量(w
b(wt%))とを、式(1)の関係を満足するように決定し、ランタンの平均含有量とマンガンの平均含有量を算出したところ、それぞれ68.9wt%、31.1wt%であった。変動係数を計算するとランタンの変動係数C.V.(α)は1.8%であり、マンガンの変動係数C.V.(β)は4.0%であった。
w
a+w
b=100(wt%) (1)
【0097】
(iii)粒度分布測定
実施例1と同様にして粒度分布測定を行なった。その結果、La
0.8Sr
0.2MnO
3+δの体積平均粒径D
50は16.1μmであった。
【0098】
【表1】