(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
夫々の発電装置が、前記通常運転モードにおいて、発電電力を対応する住戸の個別消費電力に追従させるように出力を制御する電主運転を行う請求項1に記載の集合住宅用発電計画システム。
【背景技術】
【0002】
商用電力系統からの受電電力に連系して発電を行う発電装置を住戸に設置した場合、その発電装置の発電電力を商用電力系統に逆潮流させる所謂系統逆潮流が禁止される場合がある。
このような系統逆潮流を防止するためには、発電装置の発電電力を常に電力負荷よりも小さいものにコントロールして余剰電力を発生させないのが望ましいが、発電装置を発電効率が低い部分負荷で運転することで、省エネ性の低下等が懸念される。
そこで、その住戸に蓄電池を設置し、その蓄電池に発電装置の余剰電力を充電し、その充電した電力を電力不足時に放電すれば、系統逆潮流の防止に加えて、住戸における省エネ性の向上を実現することができる(例えば特許文献1を参照。)。
【0003】
集合住宅における複数の住戸の夫々に発電装置を設置する場合にも、集合住宅全体で生じた総余剰電力を共用の内部電力線から商用電力系統へ逆潮流させる系統逆潮流は禁止される場合があるが、夫々の住戸で生じた個別余剰電力を夫々の住戸から内部電力線へ逆潮流させる内部逆潮流については事実上許される。
そこで、集合住宅の共用部に共用蓄電池を設置し、その共用蓄電池に内部電力線に対して内部逆潮流された集合住宅全体の総余剰電力を充電し、その充電した電力を集合住宅全体における電力不足時に放電すれば、系統逆潮流の防止に加えて、集合住宅における省エネ性の向上を実現することができる。
また、集合住宅において複数の住戸の夫々に設置された発電装置について、内部逆潮流を行うか否かの判断を、集合住宅におけるエネルギ調達のための一次エネルギ消費量が削減されるように決定して、集合住宅における省エネ性の向上を実現する発電計画方法が知られている(例えば特許文献2を参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の住戸の夫々に発電装置が設置され、共用部に共用蓄電池が設置された集合住宅において、夫々の発電装置が内部逆潮流を行うか否かの判断を、集合住宅におけるエネルギ調達のための一次エネルギ消費量のみで行うと、共用蓄電池の充電のための一次エネルギの消費が後の放電時に反映されないなどの理由で共用蓄電池が無用に放充電されてしまい、充分に省エネ性を向上することができない場合があった。
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、複数の発電装置及び共用蓄電池を設置した集合住宅において、夫々の発電装置の発電計画を適切に行って、充分に省エネ性を図ることができる集合住宅用発電計画システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するための本発明に係る集合住宅用発電計画システムは、
商用電力系統から共用の内部電力線を介して供給される受電電力に連系して発電を行う発電装置が設置された住戸が複数存在する集合住宅において、
制御システムが、夫々の発電装置の発電計画を行う集合住宅用発電計画システムであって、
前記内部電力線に対して充放電可能に接続され、集合住宅全体の総余剰電力を充電する共用蓄電池を備えると共に、
夫々の発電装置が、前記内部電力線に対して電力を逆潮流させる内部逆潮流を禁止した状態で住戸における消費電力又は消費熱量に応じて出力を制御する通常運転モードと、前記内部逆潮流を許容した状態で出力を最大出力に設定する最大出力運転モードとの間で、運転モードを切り換え可能に構成され、
前記制御システムは、
前記共用蓄電池の蓄電残量が第1所定値以上の場合は、変数Hを第1変数値に設定し、前記集合住宅に存在する全ての住戸の発電装置を前記通常運転モードに設定し、
前記共用蓄電池の蓄電残量が第2所定値未満の場合は、変数Hを第2変数値に設定し、前記集合住宅に存在する全ての住戸の発電装置を前記最大出力運転モードに設定し、
前記蓄電残量が前記第1所定値未満で前記第2所定値以上、かつ前記変数Hが前記第1変数値の場合は、前記集合住宅に存在する全ての住戸の発電装置を前記通常運転モードに設定し、
前記蓄電残量が第3所定値未満、かつ前記変数Hが前記第2変数値の場合は、前記集合住宅に存在する全ての住戸の発電装置を前記最大出力運転モードに設定し、
前記蓄電残量が前記第1所定値未満で前記第3所定値以上、かつ前記変数Hが前記第2変数値の場合は、前記集合住宅に存在する各住戸の発電装置を前記通常運転モードまたは前記最大出力運転モードに設定した場合において、前記集合住宅全体のエネルギ消費量を示す評価指標Pが最小となる最適運転モードに設定し、
前記第1〜第3所定値は、前記第1所定値>前記第3所定値>前記第2所定値の関係にあり、
前記評価指標Pは、前記共用蓄電池への
充電時に対しては、当該共用蓄電池への充電電力を発電装置で発電するとした場合の
エネルギ消費量を減算し、一方、前記共用蓄電池からの
放電時に対しては、当該共用蓄電池からの放電電力を発電装置で発電するとした場合の
エネルギ消費量を加算
して算出される点にある。
【0007】
本特徴構成によれば、夫々の発電装置の運転モードが、内部逆潮流が抑制される上記通常運転モードと内部逆潮流が積極的に行われる上記最大出力運転モードとの間で切り換え可能に構成されている。よって、最大出力運転モードで発電装置の運転が行われる住戸において、当該発電装置の発電出力のうちその住戸での電力負荷分を差し引いた余剰電力が内部電力線へ内部逆潮流されることになる。更に、集合住宅の夫々の住戸から内部電力線へ内部逆潮流された各住戸の余剰電力(以下「個別余剰電力」という。)の合計が、内部電力線から夫々の住戸に供給される各住戸の不足電力(以下「個別不足電力」という。)と共用部の消費電力との合計を上回る場合に、その差分が集合住宅の総余剰電力として生じることになり、その総余剰電力が共用蓄電池に充電されることになる。よって、内部電力線から外部の商用電力系統への系統逆潮流を防止することができる。
逆に、個別不足電力と共用部の消費電力との合計が、個別余剰電力の合計を上回る場合には、その差分が集合住宅の総不足電力として生じることになり、その総不足電力が、商用電力系統からの受電電力よりも優先して共用蓄電池からの放電電力により補われることになる。よって、商用電力系統からの受電電力を少なくして、集合住宅における省エネ性を向上することができる。
【0008】
また、このように共用部に設置した共用蓄電池の充放電により系統逆潮流の防止と省エネ性の向上を図ることができる集合住宅において、複数の住戸の夫々に設置された発電装置に対して、上記評価指標が最小化されるときの最適運転モードパターンにおける運転モードでの運転を指令することができる。この評価指標は、集合住宅全体のエネルギ調達負荷、即ち、集合住宅全体におけるエネルギ調達のための一次エネルギ消費量等に相当するエネルギ負荷や、集合住宅全体における二酸化炭素排出量等に相当する環境負荷の少なくとも一方を示すものとされる。よって、その集合住宅全体の評価指標が最小化されるときの最適運転モードパターンを用いて夫々の発電装置の運転指令を行えば、集合住宅全体の省エネ性を一層向上することができる。
【0009】
更に、共用蓄電池に充電された電力は後の総不足電力を補うために利用できることから、最適運転モードパターンを導出する際に、上記評価指標に対して、共用蓄電池への充電電力を発電装置で発電するとした場合のエネルギ調達負荷である充電電力調達負荷や、共用蓄電池からの放電電力を発電装置で発電するとした場合のエネルギ調達負荷である放電電力調達負荷を反映させて、共用蓄電池の放充電による省エネ効果をより確実に享受することができる。
即ち、共用蓄電池への充電時の評価指標に対しては、上記充電電力調達負荷を減算すれば、後の総不足電力の補充として利用価値のある充電電力の調達のための評価指標の無用な悪化(上昇)を抑制し、当該評価指標の悪化による共用蓄電池の充電抑制を回避することができる。
一方、共用蓄電池からの放電時の評価指標に対しては、上記放電電力調達負荷を加算すれば、充電時における評価指標の低下抑制分を放電時の評価指標の低下として反映させて、放電電力の利用による評価指標の無用な改善(低下)を抑制し、当該評価指標の無用な改善による共用蓄電池の過剰放電を回避することができる。
従って、本発明により、複数の発電装置及び共用蓄電池を設置した集合住宅において、夫々の発電装置の発電計画を適切に行って、充分な省エネ性を図ることができる集合住宅用発電計画システムを提供することができる。
また、本特徴構成によれば、共用蓄電池の蓄電残量が所定値以下の場合には、全ての発電装置が内部逆潮流を積極的に行う最大出力運転モードで運転が行われる。よって、多くの住戸から内部電力線に対して個別余剰電力が内部逆潮流されることになり、共用蓄電池へ充電される総余剰電力が増加して、共用蓄電池の蓄電残量が増加することになる。従って、共用蓄電池の蓄電残量を所定値以上に維持し、例えば停電時などにおける不足電力の補充に好適に利用することができる。
また、本特徴構成によれば、共用蓄電池が満充電となり、当該共用蓄電池にこれ以上充電できない状態であっても、全ての発電装置が内部逆潮流を禁止する通常運転モードで運転が行われる。よって、全ての住戸から内部電力線に対して内部逆潮流されなくなり、総余剰電力の発生による商用電力系統への系統逆潮流を確実に防止することができる。
【0010】
本発明に係る集合住宅用発電計画システムの更なる特徴構成は、
夫々の発電装置が、前記通常運転モードにおいて、発電電力を対応する住戸の個別消費電力に追従させるように出力を制御する電主運転を行う点にある。
【0011】
本特徴構成によれば、発電装置が、固体酸化物形燃料電池(SOFC)などのように高い発電効率を維持したまま出力を調整可能なものである場合において、通常運転モードでは、発電電力をその発電装置が設置された住戸における個別消費電力に追従させるように、発電装置の出力を制御する所謂電主運転を行うことができる。
また、最大出力運転モードでは、住戸における消費電力に関係なく、発電装置の出力を最大出力に設定するので、個別消費電力に対する発電電力の余剰分である個別余剰電力を内部電力線に対して内部逆潮流させて、共用蓄電池の充電に利用することができる。
【0012】
本発明に係る集合住宅用発電計画システムの更なる特徴構成は、
前記共用蓄電池への充電時のエネルギ消費量を算出するにあたり、前記共用蓄電池における充電電力に対して当該共用蓄電池の充電ロス分を減算し、一方、
前記共用蓄電池からの放電時のエネルギ消費量を算出するにあたり、前記共用蓄電池における放電電力に対して当該共用蓄電池の放電ロス分を加算する点にある。
【0013】
本特徴構成によれば、充電時及び放電時の評価指標に対して加減算される
前記共用蓄電池への充電時のエネルギ消費量及び
前記共用蓄電池からの放電時のエネルギ消費量を算出するにあたり、共用蓄電池の充電ロス及び放電ロス分を反映させて、当該評価指標を一層正確なものとすることができる。
【0014】
本発明に係る集合住宅用発電計画システムの更なる特徴構成は、
前記発電装置の夫々が、発電に伴って熱を発生する熱電併給装置であり、
発生熱が対応する住戸の個別消費熱量に対して余剰する熱余剰状態の熱電併給装置については、前記最大出力運転モードでの運転を禁止して、前記通常運転モードでの運転を指令する点にある。
【0015】
本特徴構成によれば、夫々の住戸に発電装置として熱電併給装置が設置されている場合には、熱余剰状態の熱電併給装置については、最大出力で運転されることで多くの排熱が発生する最大出力運転モードでの運転を禁止することで、その熱電併給装置が設置された住戸における熱電併給装置の排熱利用率の低下による省エネ性悪化を抑制することができる。
【0016】
本発明に係る集合住宅用発電計画システムの更なる特徴構成は、
前記評価指標Pは、前記集合住宅に存在する全ての住戸の各発電装置のエネルギ消費量の合計であるP1と、前記商用電力系統からの受電電力を発電するのに要するエネルギ消費量であるP2との合計に対して、前記共用蓄電池への充電時のエネルギ消費量を減算、又は前記共用蓄電池からの放電時のエネルギ消費量を加算することによって算出される点にある。
【0017】
本発明に係る集合住宅用発電計画システムの更なる特徴構成は、
前記最適運転モードは、前記集合住宅に存在する全ての住戸の発電装置を前記通常運転モード又は前記最大出力運転モードに設定した全ての運転モードの組み合わせに対して算出された複数の評価指標Pのうち、評価指標Pが最小値となる時の運転モードである点にある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る集合住宅用発電計画システム(以下「発電計画システム」と呼ぶ。)の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示す発電計画システムXは、住戸A、B、C、Dが複数存在する集合住宅Mの共用部に設置されたコンピュータで構成された制御システム100で構成され、夫々の住戸A、B、C、Dに設置された夫々の熱電併給装置20等との間で通信を行って当該夫々の熱電併給装置20の発電計画を行うように構成されている。
尚、本実施形態では、集合住宅Mに4つの住戸A、B、C、Dが存在するものとして説明する。また、本願において集合住宅Mは、マンションやアパートのみならず、共有の内部電力線4を介した一括受電を行う区域を含む広義の集合住宅を示す。
【0022】
先ず、夫々の住戸A、B、C、Dに設置された熱電併給装置20等の機器の詳細構成について説明する。
熱電併給装置20は、商用電力系統1から共用の内部電力線4を介して供給される受電電力に連系して発電を行う発電装置として機能すると共に、当該発電に伴って熱を発生する所謂コージェネレーションシステムとして構成されている。具体的に、熱電併給装置20は、電力と熱とを発生する燃料電池21と、当該燃料電池21の発生熱で加熱した温水を、温度成層を形成する状態で貯留する成層貯湯槽22と、消費熱量の不足分を補う形態で熱を発生する補助熱源機23とを備えて構成されている。
【0023】
燃料電池21は、電解質としてZr系やCe系等のセラミックを利用して、空気中の酸素と都市ガス13Aであるガス燃料から生成した水素や一酸化炭素との電気化学反応により発電を行う固体酸化物形燃料電池として構成されており、その発電に伴って発生する熱により、成層貯湯槽22との間で循環する湯水を加熱するように構成されている。
熱電併給装置20の発電電力の出力側、即ち燃料電池21の発電電力の出力側には、系統連係用のインバータ(図示省略)が設けられており、そのインバータは、燃料電池21の発電電力を、内部電力線4を介して受電する受電電力と同じ電圧及び同じ周波数に調整し、商用電力系統1及び対応する電力負荷25に電気的に接続されている。尚、商用電力系統1は、例えば、単相3線式100/200Vであり、電灯やエアコンなどの電力負荷25に電気的に接続されている。
そして、電力負荷25に対しては、燃料電池21の発電電力と内部電力線4からの受電電力とが供給可能となり、詳しくは、電力負荷25の消費電力から燃料電池21の発電電力を差し引いた住戸個別の不足分の電力(以下「個別不足電力」と呼ぶ。)が、内部電力線4から電力負荷25に供給される。
一方、燃料電池21の発電電力が、電力負荷25の消費電力よりも大きい場合には、燃料電池21の発電電力から電力負荷25の消費電力を差し引いた住戸個別の余剰分の電力(以下「個別余剰電力」と呼ぶ。)が発生する。この個別余剰電力は、内部電力線4に対して内部逆潮流される。
【0024】
成層貯湯槽22において、燃料電池21による発電時には、底部から湯水が取り出され、その取り出された湯水が燃料電池21の排熱との熱交換により加熱されて温水となり、その温水が天井部から流入する。このことにより、成層貯湯槽22の湯水の状態は、上層から下層に亘って、上層に高温の温水が存在し下層に低温の冷水が存在する形態の所謂温度成層が形成された成層貯湯状態となる。
そして、この成層貯湯槽22の天井部から取り出された温水が、給湯栓や温水暖房機器などの熱負荷26に供給される。
【0025】
補助熱源機23は、詳細な図示は省略するが、バーナによりガス燃料を燃焼させて湯水を加熱する一般的な給湯装置として構成されている。また、この補助熱源機23は、バーナへのガス燃料の供給量を調整することにより、湯水に対する加熱量を調整可能に構成されている。
そして、成層貯湯槽22の天井部から取り出される温水の温度が、熱負荷26にて必要とされる所定の目標温度未満であるとき、即ち、燃料電池21の発生熱が対応する住戸A、B、C、Dの個別消費熱量に対して不足する熱不足状態であるときには、補助熱源機23により目標温度に加熱した温水が熱負荷26に供給されることになる。
【0026】
以上が、夫々の住戸A、B、C、Dに設置された熱電併給装置20等の機器の詳細構成の説明であるが、以下に、これら住戸A、B、C、Dが含まれる集合住宅Mの共用部に設けられる電力機器等の詳細構成について説明する。
集合住宅Mの共用部には、発電計画システムXとして機能する制御システム100が設けられていると共に、内部電力線4に対して、逆電力継電器3、共用蓄電池10、及び、共用部の外灯やエレベータなどの共用電力負荷11が接続されている。
【0027】
逆電力継電器3は、商用電力系統1に対する内部電力線4の接続部に設けられており、内部電力線4から商用電力系統1へ電力が流れる所謂系統逆潮流の発生を検知すると、その検知信号を制御システム100に出力する。
そして、制御システム100は、逆電力継電器3から検知信号が入力されると、各住戸A,B,C,Dに設置されている夫々の熱電併給装置20に対して解列信号を出力し、その解列信号が入力された夫々の熱電併給装置20は、内部電力線4から燃料電池21を解列する。すると、夫々の燃料電池21から内部電力線4への内部逆潮流が禁止され、これにより、内部電力線4から商用電力系統1への系統逆潮流が防止される。
【0028】
共用蓄電池10は、内部電力線4に対して充放電可能に接続され、集合住宅M全体の総余剰電力を充電すると共に、集合住宅M全体の総不足電力を補充する形態で放電する。
具体的には、内部電力線4における共用蓄電池10の接続部と各住戸A,B,C,Dの接続部との間に、その箇所を通流する電力を計測する電力計測器5が設けられている。そして、この電力計測器5において、各住戸A,B,C,Dから共用蓄電池10に向かう電力が計測された場合には、共用蓄電池10はその電力に相当する分の電力を共用蓄電池10が充電し、一方、共用蓄電池10から各住戸A,B,C,Dに向かう電力が計測された場合には、その電力を賄う分の電力を共用蓄電池10が放電するように、共用蓄電池10の放充電制御が行われる。尚、
図1では、電力計測器5が制御システム100と直接繋がる構成を示したが、これに限定されるものではなく、たとえば、共用蓄電池10が電力計測器5を取り込み、共用蓄電池10が自ら判断して充電または放電することを決定する構成としてもよい。
ここで、総余剰電力とは、各住戸A、B、C、Dの個別余剰電力の合計から、各住戸A、B、C、Dの個別不足電力と共用電力負荷11の消費電力とを差し引いた分で、集合住宅M全体で余剰となる電力を示す。一方、総不足電力とは、各住戸A、B、C、Dの個別不足電力と共用電力負荷11の消費電力との合計から、各住戸A、B、C、Dの個別余剰電力の合計を差し引いた分で、集合住宅M全体で不足となる電力を示す。
更に、各住戸A、B、C、Dに設置されている夫々の熱電併給装置20は、後述する通常運転モードと最大出力運転モードとの間で、運転モードを切り換え可能に構成されている。
この通常運転モードでは、内部電力線4に対して電力を逆潮流させる内部逆潮流を禁止した状態で、対応する電力負荷25の消費電力又は熱負荷26の消費熱量に応じて熱電併給装置20の出力が制御される。詳しくは、通常運転モードで熱電併給装置20の運転を行うと、熱電併給装置20の発電電力が電力負荷25の消費電力に追従するように熱電併給装置20の出力が制御される所謂電主運転が行われる。尚、この電主運転では、電力負荷25の消費電力が定格出力以下の範囲内にある場合には、熱電併給装置20の出力がその消費電力に相当する部分出力に設定され、一方、電力負荷25の消費電力が定格出力を超える場合には、熱電併給装置20の出力が定格出力に設定される。
一方、最大出力運転モードでは、内部電力線4に対して電力を逆潮流させる内部逆潮流を許容した状態で、熱電併給装置20が最大出力である定格出力で運転される。詳しくは、最大出力運転モードで熱電併給装置20の運転を行うと、熱電併給装置20の発電電力が電力負荷25の消費電力に関係なく、定格出力に設定される。そして、この発電電力のうち対応する電力負荷25の消費電力を差し引いた分の余剰電力が個別余剰電力となって、内部電力線4に逆潮流されることになる。
【0029】
制御システム100は、発電計画システムXとして機能して、集合住宅Mに設けられた複数の熱電併給装置20の発電計画、即ち、上記通常運転モードでの運転を行うか、又は、上記最大出力運転モードでの運転を行うかについての計画を適切に行って、充分な省エネ性を図るように構成されており、この発電計画の処理フローの詳細について、
図2及び
図3に基づいて、以下に説明を加える。
【0030】
発電計画システムXが実行する発電計画では、
図2に示すように、共用蓄電池10の蓄電残量Lを計測した上で、その計測した蓄電残量Lに基づいて、夫々の熱電併給装置20に対する運転計画方法を判断する。
【0031】
具体的に、共用蓄電池10の蓄電残量が99%以上である所謂満充電の場合(ステップ#02のYES側)には、満充電識別変数Hを1にセットした上で(ステップ#03)、全ての住戸A、B、C、Dにおける夫々の熱電併給装置20の運転モードを全て通常運転モードに設定し(ステップ#04)、全ての熱電併給装置20に対して通常運転モードでの運転を指令する(ステップ#11)。
すると、共用蓄電池10にこれ以上充電できない状態であっても、全ての住戸A、B、C、Dから内部電力線4へ内部逆潮流がされなくなり、総余剰電力の発生による商用電力系統1への系統逆潮流が確実に防止される。
また、このように一旦共用蓄電池10が満充電となって、満充電識別変数Hが1にセットされると、共用蓄電池10の蓄電残量が90%未満になって(ステップ#05のNO側)、満充電識別変数Hが0にリセットされる(ステップ#10)までの間は、常に上記ステップ#04の処理が実行されて、全ての住戸A、B、C、Dにおける夫々の熱電併給装置20の運転モードが全て通常運転モードに設定して、共用蓄電池10へ充電される総余剰電力の発生を防止することで、共用蓄電池10において10%以上の蓄電余裕が確保されることになる。
【0032】
一方、共用蓄電池10の蓄電残量が90%未満である場合(ステップ#05のNO側)、又は、満充電識別変数Hが0である場合(ステップ#06のNO側)において共用蓄電池10の蓄電残量が95%未満である場合(ステップ#07のNO側)には、全ての住戸A、B、C、Dにおける夫々の熱電併給装置20の運転モードを全て最大出力運転モードに設定し(ステップ#09)、全ての熱電併給装置20に対して最大出力運転モードでの運転を指令する(ステップ#11)。
すると、多くの住戸A、B、C、Dにおいて個別余剰電力が発生し、その個別余剰電力が内部電力線4に内部逆潮流されるので、共用蓄電池10へ充電される総余剰電力が増加し、共用蓄電池10の蓄電残量が増加する。よって、共用蓄電池10の蓄電残量を常に90%以上に維持して、その充電電力を例えば停電時などにおける不足電力の補充に好適に利用することができる。
【0033】
更に、満充電識別変数Hが0である場合(ステップ#06のNO側)において、共用蓄電池10の蓄電残量が95%以上である場合(ステップ#07のYES側)には、集合住宅M全体の所定の評価指標が最小化されるときの夫々の熱電併給装置20の運転モードのパターンを最適運転モードパターンとして導出し(ステップ#08)、夫々の熱電併給装置20に対して当該導出した最適運転モードパターンにおける運転モードでの運転を指令する(ステップ#11)。
例えば、
図3に示すように、4つの住戸A、B、C、Dの夫々について、熱電併給装置20の運転モードを通常運転モードとして内部逆潮流を禁止した場合(
図3の「×」)と、熱電併給装置20の運転モードを最大出力運転モードとして内部逆潮流を許容した場合(
図3の「○」)との全ての16通りの運転モードパターンについて、集合住宅M全体の評価指標Pを導出する。
そして、この集合住宅M全体の評価指標Pが最小化されるときの夫々の熱電併給装置20の運転モードのパターンを最適運転モードパターン(
図3No.14)として導出する。
【0034】
上記集合住宅M全体の評価指標Pは、現時点から1日分の将来の夫々の熱電併給装置20の運転状態を予測し、その予測した1日の運転状態におけるエネルギ調達のためのエネルギ負荷である一次エネルギ消費量の合計として算出され、具体的には、下記[数1]により求められる。
【0035】
[数1]
評価指標P=P1+P2+P3
P1:発電電力関連一次エネルギ消費量
P2:受電電力関連一次エネルギ消費量
P3:充放電電力関連一次エネルギ消費量
【0036】
上記発電電力関連一次エネルギ消費量P1は、全ての燃料電池21の夫々の燃料消費量の合計として求められる。また、予測した現時点から1日分の夫々の熱電併給装置20の運転状態を参照して、熱電併給装置20の発電に伴って発生する排熱が温水として熱負荷26で利用できると判断した場合には、この全ての燃料電池21の夫々の燃料消費量の合計から、当該排熱の利用による全ての補助熱源機23の燃料消費量の夫々の削減分の合計を控除した値が、上記発電電力関連一次エネルギ消費量P1として求められる。
【0037】
上記受電電力関連一次エネルギ消費量P2は、商用電力系統1からの受電電力を発電するのに必要な一次エネルギ消費量を示し、その受電電力を商用電力系統1側で発電するのに消費された燃料消費量として求められる。具体的には、受電電力と一次エネルギ消費量の変換係数を予め設定しておき、その係数と受電電力との積が上記受電電力関連一次エネルギ消費量P2として求められる。
【0038】
上記充放電電力関連一次エネルギ消費量P3は、共用蓄電池10の充放電電力に対応する一次エネルギ消費量であり、共用蓄電池10の充電時及び放電時の夫々の評価指標Pに対して求められる。
具体的に、共用蓄電池10の充電時には、共用蓄電池10への充電電力を、燃料電池21と同じ発電効率の発電装置で発電すると仮定して、その場合の発電装置での燃料消費量である充電電力一次エネルギ消費量(充電電力調達負荷)の負の値が上記充放電電力関連一次エネルギ消費量P3とされる。
一方、共用蓄電池10の放電時には、共用蓄電池10からの放電電力を、燃料電池21と同じ発電効率の発電装置で発電すると仮定して、その場合の発電装置での燃料消費量である放電電力一次エネルギ消費量(放電電力調達負荷)の正の値が上記充放電電力関連一次エネルギ消費量P3とされる。
【0039】
即ち、共用蓄電池10への充電時の評価指標Pに対しては、上記充電電力一次エネルギ消費量が減算されて、後の総不足電力の補充として利用価値のある共用蓄電池10の充電電力の調達のための評価指標Pの無用な悪化(上昇)が抑制される。よって、この評価指標Pの無用な悪化により共用蓄電池10の充電が無用に抑制されることが回避される。
一方、共用蓄電池10からの放電時の評価指標Pに対しては、上記放電電力一次エネルギ消費量が加算されて、充電時における評価指標Pの低下抑制分を放電時の評価指標Pの低下として反映させて、放電電力の利用による評価指標Pの無用な改善(低下)が抑制される。よって、この評価指標Pの無用な改善により共用蓄電池10が無用に放電されることが回避される。
【0040】
尚、発生した総余剰電力のうち例えば10%程度の充電ロス分を差し引いた電力が共用蓄電池10に充電されることから、共用蓄電池10における充電電力に対して例えば10%程度の充電ロス分を減算した上で、上記充電電力一次エネルギ消費量を算出する。
一方、必要となる放電電力のうち例えば10%程度の放電ロスを加算した電力を共用蓄電池10から放電させることから、共用蓄電池10における放電電力に対して例えば10%程度の放電ロス分を加算して、上記放電電力一次エネルギ消費量を算出する。
このことで、[数1]の評価指標Pを一層正確なものとすることができる。
【0041】
また、現時点から1日分の将来の熱電併給装置20の運転状態の予測は、以下のように行われる。
即ち、電力負荷25及び熱負荷26の過去の一時間毎の消費電力及び消費熱量を予め過去データとして学習しておき、その過去データの傾向から将来の一時間毎の消費電力及び消費熱量を予測する。
そして、その予測した将来の一時間毎の消費電力及び消費熱量に対して、熱電併給装置20の一時間毎の出力変化をシミュレーションし、そのシミュレーション結果を将来の熱電併給装置20の運転状態とする。
更に、現時点での成層貯湯槽22での貯湯量が、上記のように学習した将来の消費熱量に相当する貯湯量を下回る状態、即ち熱電併給装置20の発生熱が対応する住戸の個別消費熱量に対して不足する熱不足状態である場合には、現時点の熱電併給装置20の発電に伴って発生する排熱は温水として熱負荷26で利用できる判断できるので、上述したように、熱電併給装置20の一次エネルギ消費量から熱電併給装置20の排熱の利用による補助熱源機23の燃料消費量の削減分が控除されて、上記[数1]の発電電力関連一次エネルギ消費量P1が求められる。
一方、現時点での成層貯湯槽22での貯湯量が、上記のように学習した将来の消費熱量に相当する貯湯量以上である状態、即ち熱電併給装置20の発生熱が対応する住戸の個別消費熱量に対して余剰する熱余剰状態である場合には、現時点の熱電併給装置20の発電に伴って発生する排熱は利用されず、熱電併給装置20の排熱の利用による補助熱源機23の燃料消費量の削減分が無いものと判断できるので、熱電併給装置20の一次エネルギ消費量が、上記[数1]の発電電力関連一次エネルギ消費量P1とされる。
【0042】
更に、上記ステップ#11において、夫々の熱電併給装置20に対して所定の運転モードでの運転を指令するにあたり、熱余剰状態の熱電併給装置20に対しては、住戸における熱電併給装置20の排熱利用率の低下による省エネ性悪化を抑制するために、共用蓄電池10の蓄電残量や評価指標Pに関係なく、最大出力運転モードでの運転を禁止して、
通常運転モードでの運転を指令する。
【0043】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0044】
(1)上記実施形態では、発電装置を熱電併給装置20として構成したが、熱を発生しない単なる発電装置として構成しても構わない。
【0045】
(2)上記実施形態では、最適運転モードパターンを導出するための評価指標Pを、エネルギ調達のためのエネルギ負荷である一次エネルギ消費量として求めたが、例えば、一次エネルギ消費量をコスト換算した一次エネルギコストや、二酸化炭素排出量などの環境負荷などの別のエネルギ調達負荷を評価指標として利用しても構わない。
【0046】
(3)上記実施形態では、熱電併給装置20が、個別余剰電力の内部逆潮流を禁止する通常運転モードにおいて、発電電力を対応する住戸A、B、C、Dの個別消費電力に追従させるように出力を制御する電主運転を行うように構成したが、例えば、通常運転モードにおいて、定格出力で運転し、個別余剰電力を別途設けた電気ヒータによる温水生成に利用するように構成しても構わない。