(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1の正面図である。
図2は、基板処理装置1の平面図である。
図2では、基板処理装置1の向きを
図1から変更している。基板処理装置1は、半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1では、基板9に対して液体が吐出されて所定の処理が行われる。本実施の形態では、基板9上に洗浄液の液滴を吐出することにより、基板9上からパーティクル等を除去する洗浄処理が行われる。基板処理装置1では、例えば、直径約20μmの液滴が、基板9に向けてスプレー状に吐出される。
【0019】
図1および
図2に示すように、基板処理装置1は、基板保持部21と、カップ部22と、基板回転機構23と、処理液供給部3と、ヘッド移動機構35と、保護液供給部36と、待機ポッド4と、吐出検査部5と、チャンバ6と、制御ユニットとを備える。チャンバ6は、基板保持部21、カップ部22、基板回転機構23、処理液供給部3、ヘッド移動機構35、保護液供給部36、待機ポッド4および吐出検査部5等の構成を内部空間60に収容する。チャンバ6は、外部から内部空間60への光の入射を遮る遮光チャンバである。
図1および
図2では、チャンバ6を破線にて示し、チャンバ6の内部を図示している。
【0020】
基板保持部21は、チャンバ6内において基板9の一方の主面91(以下、「上面91」という。)を上側に向けた状態で基板9を保持する。基板9の上面91には、回路パターン等の微細パターンが形成されている。カップ部22は、基板9および基板保持部21の周囲を囲む略円筒状の部材である。基板回転機構23は、基板保持部21の下方に配置される。基板回転機構23は、基板9の中心を通るとともに基板9の上面91に垂直な回転軸を中心として、基板9を基板保持部21と共に水平面内にて回転する。
【0021】
処理液供給部3は、処理液を下方に向けて吐出する吐出ヘッド31と、吐出ヘッド31に処理液を供給する処理液配管32とを備える。
図2では、処理液配管32の図示を省略する。吐出ヘッド31は、カップ部22の内側において基板保持部21の上方に配置される。換言すれば、吐出ヘッド31の下面は、カップ部22の上部開口220と、基板9の上面91との間に位置する。吐出ヘッド31は、後述する複数の吐出口から相互に分離した微小な液滴を連続的に吐出する装置である。吐出ヘッド31により、基板9の上面91に向けて処理液が吐出される。処理液としては、純水(好ましくは、脱イオン水(DIW:deionized water))、炭酸水、アンモニア水と過酸化水素水との混合液等の液体が利用される。吐出ヘッド31からの処理液の設計上の吐出方向は、上下方向(すなわち、重力方向)におよそ平行である。
【0022】
図3は、吐出ヘッド31の下面311を示す底面図である。吐出ヘッド31の下面311には、4つの吐出口列313a〜313dを含む複数の吐出口が設けられる。吐出口列313a〜313dはそれぞれ、所定の配列ピッチにて
図3中の左右方向に略直線状に配列される複数の吐出口314a〜314dの集合である。各吐出口314a〜314dの直径は、およそ5μm〜10μmである。
図3では、各吐出口314a〜314dを実際よりも大きく、吐出口314a〜314dの個数を実際よりも少なく描いている。また、
図3では、吐出ヘッド31の下面311において複数の吐出口314a〜314dが設けられる吐出口配置領域316を二点鎖線にて囲む。吐出口配置領域316は略矩形である。吐出ヘッド31では、複数の吐出口314a〜314dのそれぞれから、処理液の微小液滴が噴射される。
【0023】
以下の説明では、各吐出口列313a〜313dの吐出口配列方向である
図3中の左右方向を「配列方向」という。吐出口列313a〜313dはそれぞれ、当該配列方向に延びる直線状である。吐出口列313a〜313dは、配列方向に垂直な方向(すなわち、
図3中の上下方向)に、互いに平行に並ぶ。なお、吐出口列313a〜313dは、必ずしも上記配列方向に垂直に並ぶ必要はなく、配列方向に対して傾斜する方向に並んでいればよい。
【0024】
以下の説明では、
図3中の上側から下側に向かって配列される吐出口列313a〜313dをそれぞれ、「第1吐出口列313a」、「第2吐出口列313b」、「第3吐出口列313c」および「第4吐出口列313d」という。さらに、第1吐出口列313aの複数の吐出口314aを「第1吐出口314a」といい、第2吐出口列313bの複数の吐出口314bを「第2吐出口314b」という。第3吐出口列313cの複数の吐出口314cを「第3吐出口314c」といい、第4吐出口列313dの複数の吐出口314dを「第4吐出口314d」という。
【0025】
上記配列方向に垂直な方向において、第1吐出口列313aと第2吐出口列313bとの間の距離は、第3吐出口列313cと第4吐出口列313dとの間の距離に等しく、第2吐出口列313bと第3吐出口列313cとの間の距離よりも小さい。第2吐出口列313bは、第1吐出口列313aから、配列方向の一方側である
図3中の右側に所定のシフト距離だけずれて配置される。第4吐出口列313dは、第3吐出口列313cから、
図3中の右側に上記シフト距離だけずれて配置される。当該シフト距離は、上述の配列ピッチよりも小さい距離であり、例えば、配列ピッチの半分の距離である。
【0026】
吐出ヘッド31では、配列方向に垂直、かつ、吐出ヘッド31の下面311に平行な方向から見た場合、複数の第1吐出口314aと複数の第2吐出口314bとが配列方向に交互に並び、複数の第3吐出口314cと複数の第4吐出口314dとが配列方向に交互に並ぶ。また、複数の第1吐出口314aと複数の第3吐出口314cとがそれぞれ重なり、複数の第2吐出口314bと複数の第4吐出口314dとがそれぞれ重なる。
【0027】
図1および
図2に示すように、ヘッド移動機構35は、アーム351と、回転軸352と、ヘッド回転機構353と、ヘッド昇降機構354とを備える。アーム351は、回転軸352から水平方向に延びる。アーム351の先端部には、吐出ヘッド31が取り付けられる。ヘッド回転機構353は、吐出ヘッド31をアーム351と共に回転軸352を中心として水平方向に回転移動する。ヘッド昇降機構354は、吐出ヘッド31をアーム351と共に上下方向に移動する。ヘッド回転機構353は、例えば、電動モータを備える。ヘッド昇降機構354は、ボールねじ機構および電動モータを備えており、吐出ヘッド31を精密に位置決めすることができる。ヘッド昇降機構354は、エアシリンダを備えるものであってもよい。
【0028】
保護液供給部36は、吐出ヘッド31に直接的または間接的に固定され、保護液を斜め下方に向けて吐出する。保護液としては、上述の処理液と同様に、純水(好ましくは、脱イオン水)、炭酸水、アンモニア水と過酸化水素水との混合液等の液体が利用される。保護液は処理液と同じ種類の液体でもよく、異なる種類の液体でもよい。基板処理装置1では、保護液供給部36から基板9の上面91に向けて液柱状に吐出された保護液が、吐出ヘッド31の下方において基板9上に広がることにより、吐出ヘッド31の真下に所定の厚さの保護液の膜(以下、「保護液膜」という。)が形成される。保護液供給部36は、ヘッド回転機構353およびヘッド昇降機構354により、吐出ヘッド31と共に移動する。
【0029】
図4は、制御ユニット7の機能を示すブロック図である。
図4では、制御ユニット7以外の構成も併せて描いてる。制御ユニット7は、処理制御部71と、検査制御部72と、検査演算部73とを備える。処理制御部71により、基板回転機構23、処理液供給部3、ヘッド移動機構35および保護液供給部36等が制御されることにより、基板9の処理が行われる。検査制御部72により、処理液供給部3、ヘッド移動機構35および吐出検査部5等が制御されることにより、吐出ヘッド31の複数の吐出口314a〜314d(
図3参照)からの処理液の吐出動作の検査が行われる。
【0030】
検査演算部73は、吐出検査部5の一部であり、参照画像記憶部731と、判定部75とを備える。参照画像記憶部731には、後述する参照画像732が予め記憶されている。判定部75は、位置ずれ補正部751と、良否判定部752とを備える。参照画像記憶部731および判定部75は、上述の吐出動作の検査に利用される。
【0031】
図1および
図2に示す基板処理装置1において基板9の処理が行われる際には、まず、基板9がチャンバ6内に搬入されて基板保持部21により保持される。基板9の搬入時には、吐出ヘッド31は、
図2に二点鎖線にて示すように、カップ部22の外側に設けられた待機ポッド4上の待機位置にて待機している。
図5は、待機位置に位置する吐出ヘッド31を待機ポッド4と共に拡大して示す側面図である。待機ポッド4は、略直方体の容器であり、上部に開口が設けられる。待機位置では、吐出ヘッド31の一部が、上記開口を介して待機ポッド4内に挿入される。なお、
図5では、保護液供給部36の図示を省略している。また、後述する検査領域に位置する吐出ヘッド31を二点鎖線にて示す。
図1および
図2に示すように、基板9が基板保持部21により保持されると、処理制御部71(
図4参照)により基板回転機構23が駆動され、基板9の回転が開始される。
【0032】
続いて、処理制御部71により、ヘッド回転機構353およびヘッド昇降機構354が駆動され、吐出ヘッド31および保護液供給部36が、待機位置から上昇し、カップ部22の上方へと移動した後に下降する。これにより、吐出ヘッド31および保護液供給部36が、カップ部22の上部開口220を介してカップ部22の内側かつ基板保持部21の上方へと移動する。次に、保護液供給部36から基板9上への保護液の供給が開始され、基板9の上面91の一部を覆う保護液膜が形成される。また、吐出ヘッド31の複数の吐出口314a〜314d(
図3参照)から、保護液膜が形成された基板9の上面91に向けて処理液の吐出(すなわち、微小液滴の噴射)が開始される。保護液膜は、複数の吐出口314a〜314dからの処理液の基板9上における設計上の複数の着液点(すなわち、微小液滴の着弾点)を覆う。
【0033】
吐出ヘッド31から保護液膜に向けて噴射された多数の微小液滴は、基板9の上面91上の保護液膜に衝突し、保護液膜を介して基板9の上面91に間接的に衝突する。そして、基板9の上面91に付着しているパーティクル等の異物が、処理液の微小液滴の衝突による衝撃により基板9上から除去される。換言すれば、処理液の微小液滴により保護液膜を介して基板9に間接的に付与される運動エネルギーにより、基板9の上面91の洗浄処理が行われる。
【0034】
このように、処理液の微小液滴が保護液膜を介して基板9に衝突することにより、微小液滴が直接的に基板に衝突する場合に比べて、基板9の上面91に形成されたパターン等にダメージを与えることを防止または抑制しつつ、基板9の洗浄処理を行うことができる。また、基板9上の洗浄処理が行われる部位が保護液により覆われているため、基板9上から除去されたパーティクル等が、基板9の上面91に再付着することを防止または抑制することができる。
【0035】
基板処理装置1では、保護液および処理液の吐出と並行して、ヘッド回転機構353による吐出ヘッド31および保護液供給部36の回転移動が行われる。吐出ヘッド31および保護液供給部36は、回転中の基板9の中央部の上方と基板9の外縁部の上方との間にて、水平に往復移動を繰り返す。これにより、基板9の上面91全体に対して洗浄処理が行われる。基板9の上面91に供給された保護液および処理液は、基板9の回転により、除去された異物と共に基板9のエッジへと移動し、基板9のエッジから外側へと飛散する。基板9から飛散した保護液および処理液は、カップ部22により受けられて廃棄または回収される。
【0036】
吐出ヘッド31からの処理液による所定の処理(すなわち、基板9の洗浄処理)が終了すると、保護液および処理液の吐出が停止される。吐出ヘッド31および保護液供給部36は、ヘッド昇降機構354によりカップ部22の上部開口220よりも上側まで上昇し、ヘッド回転機構353により、基板9の上方から待機ポッド4の上方の検査領域へと回転移動する。
【0037】
検査領域は、上述の待機位置の上方の領域である。検査領域は、設計上の所定の検査位置(以下、「設計検査位置」という。)を略中心とする小さい領域である。換言すれば、検査領域は、設計検査位置、および、設計検査位置の極近傍の位置を含む。吐出ヘッド31が基板9の上方から待機ポッド4の上方へと回転移動する場合、吐出ヘッド31は、検査領域内のいずれかの位置に停止する。当該検査領域において、吐出検査部5により、定期的に、または、必要に応じて、吐出ヘッド31の複数の吐出口314a〜314dからの処理液の吐出動作の検査が行われる。
【0038】
図6は、検査領域における吐出ヘッド31、および、吐出ヘッド31の周囲に配置される吐出検査部5を示す斜視図である。吐出検査部5は、光出射部51と、撮像部52とを備える。光出射部51および撮像部52は、吐出ヘッド31の真下を避けて、吐出ヘッド31の斜め下方に配置される。光出射部51および撮像部52は、
図4に示すように、制御ユニット7の検査制御部72により制御される。
【0039】
図6に示す光出射部51は、光源と、当該光源からの光を略水平方向に延びる線状光に変換する光学系とを備える。光源としては、例えば、レーザダイオードやLED(light emitting diode)素子が利用される。光出射部51は、予め定められた仮想面である光存在面に沿って、吐出ヘッド31の下方に向けて光を出射する。
図6では、光出射部51の光軸J1を一点鎖線にて描き、光出射部51から出射される面状の光の輪郭を、符号510を付す二点鎖線にて示す。
【0040】
光出射部51からの面状光510は、吐出ヘッド31の下面311近傍にて、吐出ヘッド31の真下を通過する。基板処理装置1では、検査制御部72から処理液供給部3に所定の駆動信号が送出され、吐出ヘッド31の複数の吐出口314a〜314d(
図3参照)から待機ポッド4の内部に向けて処理液が吐出される。そして、検査領域に位置する吐出ヘッド31の複数の吐出口314a〜314dから吐出される処理液である複数の飛翔体が、上述の光存在面を通過する(すなわち、面状光510を通過する)際に、光出射部51から当該複数の飛翔体に光が照射される。面状光510は、吐出ヘッド31からの処理液の設計上の吐出方向(すなわち、複数の飛翔体の予め定められた所定の吐出方向)におよそ垂直である。厳密には、面状光510(すなわち、光存在面)は、複数の飛翔体の所定の吐出方向に垂直な平面に対して、僅かな角度(例えば、5°〜10°)だけ傾斜していることが好ましい。
【0041】
撮像部52は、上記光存在面よりも下方にて、撮像軸J2を吐出ヘッド31の下方に位置する面状光510に向けて配置される。撮像部52における撮像方向(すなわち、撮像軸J2が向く方向)は、複数の飛翔体の所定の吐出方向に垂直な平面に対して傾斜している。撮像部52としては、例えば、CCD(charge-coupled device)カメラが利用される。撮像部52は、面状光510を通過する処理液(すなわち、複数の飛翔体)を撮像することにより、当該複数の飛翔体上に現れる複数の輝点を含む検査画像を取得する。撮像部52は、
図3中の4つの吐出口列313a〜313dのうち、第1吐出口列313aが最も手前側に見える位置に配置される。
【0042】
吐出検査部5では、撮像部52による撮像結果から、1フレームの静止画が検査画像として抽出される。検査画像は、制御ユニット7の検査演算部73(
図4参照)に送られる。検査演算部73では、検査画像に対して2値化処理が行われ、複数の輝点が抽出されるとともに背景のノイズ等が除去される。
【0043】
図7は、検査画像8を示す図である。検査画像8では、吐出ヘッド31の複数の吐出口314a〜314dにそれぞれ対応する複数の輝点81が、吐出口314a〜314dの配列方向に対応する方向に配列される。吐出検査部5では、面状光510が僅かながら厚さを有しているため、各輝点81は、検査画像8において上下方向に対応する方向に長い略楕円形となる。
【0044】
続いて、判定部75の位置ずれ補正部751により、検査画像8と、参照画像記憶部731に予め記憶されている参照画像732とが比較される。参照画像732は、基板処理装置1において、吐出ヘッド31が上記検査領域内の設計検査位置に位置し、かつ、複数の吐出口314a〜314dから処理液を正常に吐出している状態で、光出射部51から面状光510を出射しつつ撮像部52により取得された画像である。参照画像732は、基板処理装置1において基板9の処理が行われるよりも前に(例えば、基板処理装置1の製造現場において基板処理装置1の出荷前に)取得され、検査画像8と同様に2値化処置が行われた後、参照画像記憶部731に予め記憶される。
【0045】
位置ずれ補正部751では、検査画像8および参照画像732に基づいて、検査画像8の参照画像732に対する相対的なずれ(以下、「画像ずれ」という。)が求められる。当該画像ずれは、検査画像8を取得した際の吐出ヘッド31の位置と、設計検査位置との差により生じる。画像ずれの量の算出は、例えば、検査画像8と参照画像732との差が最小になるまで(すなわち、検査画像8の複数の輝点81と参照画像732の複数の輝点との重なりの程度が最大になるまで)、検査画像8を
図7中の上下方向および左右方向に移動したり、検査画像8に垂直な回転軸を中心として回転させたり、検査画像8を拡大または縮小することにより行われる。検査画像8と参照画像732との差が最小になったときの検査画像8の移動量、回転量および変倍量が、検査画像8の画像ずれ量である。画像ずれ量は、一般的なパターンマッチング用の画像処理関数を検査画像8および参照画像732に適用することにより求められてもよい。
【0046】
位置ずれ補正部751では、求められた画像ずれ量に基づいて、検査画像8の画像ずれが補正される。具体的には、検査画像8上の複数の輝点81の位置が、吐出ヘッド31が検査領域内の設計検査位置に位置した状態で検査画像8が取得されたと仮定した場合の位置へと補正される。
【0047】
次に、判定部75の良否判定部752により、参照画像732と検査画像8との差分画像82が、
図8に示すように生成される。具体的には、まず、参照画像732の各画素の画素値から、検査画像8において対応する画素の画素値を減算する。参照画像732および検査画像8では、各輝点に含まれる画素の画素値はプラスであり、背景に含まれる画素の画素値はゼロである。したがって、参照画像732の輝点と検査画像8の輝点81とが重なる位置では、参照画像732の画素値から検査画像8の画素値を減算した値である差分値はゼロとなる。また、参照画像732の背景と検査画像8の背景とが重なる位置においても、差分値はゼロとなる。一方、参照画像732の輝点は存在するが検査画像8の輝点81は存在しない位置では、差分値はプラスとなる。検査画像8の輝点81は存在するが参照画像732の輝点は存在しない位置では、差分値はマイナスとなる。
【0048】
良否判定部752では、差分値がマイナスの画素の階調値を最も暗いゼロとし、差分値がゼロの画素の階調値を中間の明るさの127とし、差分値がプラスの画素の階調値を最も明るい255として、差分画像82が生成される。
図8では、階調値が255の画素の集合である第1領域821については輪郭のみを図示する。また、階調値が127の画素の集合である第2領域822には平行斜線を付す。階調値がゼロの画素の集合である第3領域823は塗りつぶして示す。
【0049】
次に、良否判定部752により、差分画像82から第1領域821および第3領域823が抽出される。
図8では、差分画像82の左側の領域には、1つの第1領域821と、当該第1領域821に近接する1つの第3領域823とが存在する。また、差分画像82の右側の領域には、1つの第1領域821が存在する。
【0050】
左側の1つの第1領域821は、参照画像732上の1つの輝点に対応し、検査画像8上には当該輝点に対応する位置に輝点81が存在しないことを示す。また、当該第1領域821に近接する1つの第3領域823は、検査画像8上の1つの輝点81に対応し、参照画像732上には、当該輝点81に対応する位置に輝点が存在しないことを示す。したがって、良否判定部752では、第1領域821に対応する吐出口において、設計上の吐出方向に処理液の吐出が行われず、第3領域823に向かう方向へと処理液が斜め吐出されていると判定される。
【0051】
良否判定部752では、第1領域821と第3領域823との間の距離(例えば、重心間の距離)が求められる。当該距離は、検査画像8上において第3領域823に対応する1つの輝点81と、参照画像732上において当該1つの輝点81に対応する輝点との間の距離である。そして、当該距離が所定の距離よりも大きい場合、上記1つの輝点81に対応する吐出口において、斜め吐出の吐出不良が生じていると判定される。吐出不良の発生は、報知部79(
図4参照)を通じて作業者等に通知される。一方、上記距離が所定の距離以下の場合、上記1つの輝点81に対応する吐出口からの処理液は、設計上の吐出方向から許容範囲内のずれ量で僅かにずれた方向へと吐出されていると判定される。このとき、報知部79を通じての作業者等への通知は行われない。
【0052】
検査画像8上では、配列方向にて隣接する輝点81間の距離は、観察視点である撮像部52から離れるに従って(すなわち、手前側から奥側へと向かうに従って)小さくなる。このため、上記所定の距離も、同様に、撮像部52から輝点81が離れるに従って小さくなる。
【0053】
差分画像82上の右側の1つの第1領域821も、参照画像732上の1つの輝点に対応し、検査画像8上には当該輝点に対応する位置に輝点81が存在しないことを示す。当該第1領域821の近傍には第3領域823が存在しないため、良否判定部752では、第1領域821に対応する吐出口において、処理液が吐出されない不吐出の吐出不良が生じていると判定される。吐出不良の発生は、報知部79(
図4参照)を通じて作業者等に通知される。
【0054】
このように、良否判定部752は、差分画像82上に第1領域821(すなわち、輝点81の画像が参照画像732に存在するが検査画像9上には存在しない領域)が検出された場合、当該第1領域821に注目し、差分画像82の左側の第1領域821のように、その近傍に第3領域823(すなわち、輝点81の画像が検査画像9上に存在するが参照画像732上には存在しない領域)が検出されるか否かを探索する。良否判定部752により、第3領域823が発見された場合、当該第1領域821に対応する吐出口において、斜め吐出の吐出不良が生じている、と判定される。一方、差分画像82の右側の第1領域821のように、良否判定部752により、注目されている第1領域821の近傍に第3領域823が発見されなかった場合、当該第1領域821に対応する吐出口において、不吐出の吐出不良が生じている、と判定される。
【0055】
また、周囲に第1領域821が存在しない、孤立した第3領域823が発見された場合には、当該第3領域823に対応する吐出口が参照画像732を取得した時に作動していなかった、検査画像8を撮像した際に撮像部52に水滴等が付着していた、あるいは、位置ずれ補正部751による検査画像8の画像ずれ補正が正しく行われていなかった等の不具合が発生していた可能性がある。したがって、このような孤立した第3領域823が発見された場合にも、報知部79(
図4参照)を通じて作業者等に通知することができる。
【0056】
ところで、複数の吐出口における吐出動作の良否を判定する吐出検査部として、上記と同様の検査画像を取得し、検査画像上の複数の輝点の配列方向の間隔を測定するものが考えられる。このような吐出検査部(以下、「第1の比較例の吐出検査部」という。)では、複数の輝点の間隔が、所定の間隔におよそ等しければ各吐出口における吐出動作が良好と判定される。一方、隣接する2つの輝点の間隔が所定の間隔の2倍以上大きい場合、当該2つの輝点に対応する2つの吐出口の間に、不吐出の吐出口が存在すると判定される。
【0057】
第1の比較例の吐出検査部では、間隔が所定の間隔からある程度以上大きい(または、小さい)隣接する2つの輝点が存在すると、当該2つの輝点に対応する2つの吐出口のうち、どちらか一方または双方に斜め吐出の吐出不良が生じていると判定される。しかしながら、2つの吐出口のうちどちらの吐出口に吐出不良が生じているかを判定することは容易ではない。また、一方の吐出口からの処理液が他方の吐出口から遠ざかるようにずれ、他方の吐出口からの処理液が一方の吐出口から遠ざかるようにずれた場合、各吐出口からの処理液のずれは許容範囲であったとしても、上述のように2つの吐出口の少なくとも一方が、誤って吐出不良と判断されてしまう。さらに、連続する複数の吐出口に吐出不良が生じ、当該複数の吐出口に対応する複数の輝点が、同じ方向におよそ同じ距離だけずれた場合、複数の輝点の間隔は所定の間隔におよそ等しいため、これらの吐出不良は検出されない。
【0058】
これに対し、判定部75の良否判定部752では、参照画像732と検査画像8との差に基づいて、複数の吐出口314a〜314dのそれぞれにおける吐出動作の良否が判定される。これにより、複数の吐出口314a〜314dのそれぞれにおける吐出動作の良否を、個別に(すなわち、他の吐出口314a〜314dの吐出動作の良否から独立して)精度良く判定することができる。また、吐出動作の良否判定を簡素化することができる。さらに、良否判定部752では、検査画像8の画像ずれを補正した後に、上述の参照画像732と検査画像8との差が求められ、吐出動作の良否判定が行われる。これにより、検査領域における吐出ヘッド31の設計検査位置からの位置ずれを補正し、複数の吐出口314a〜314dにおける吐出動作の検査精度を向上することができる。その結果、吐出不良による基板9に対する処理への悪影響を抑制または防止することができる。当該悪影響としては、例えば、処理液の不吐出による基板9に対する処理の質の低下や、処理液の斜め吐出による基板9上のパターンの損傷が考えられる。
【0059】
吐出ヘッド31では、多数の吐出口314a〜314dが設けられ、配列方向に略直線状に延びる吐出口列313a〜313dとして配列される。このため、検査画像8上において多数の輝点81が近接して存在し、各輝点81と吐出口314a〜314dとの対応関係を把握することは容易ではない。基板処理装置1では、上述のように、複数の吐出口314a〜314dとの対応関係が明確な参照画像732上の複数の輝点と、検査画像8上の複数の輝点81とが対応付けられることにより、各吐出口314a〜314dの吐出動作を個別に精度良く判定することができるため、基板処理装置1の構造は、互いに平行に配列される複数の吐出口列を有する吐出ヘッドにおける吐出動作の良否判定に特に適している。
【0060】
基板処理装置としては、上述の参照画像732に代えて、計算にて求められた正常な輝点の位置と検査画像上の輝点の位置との差に基づいて吐出動作を検査するもの(以下、「第2の比較例の基板処理装置」という。)も考えられる。上述の正常な輝点の位置とは、吐出ヘッドから処理液が正常に吐出されていると仮定した場合の検査画像上の輝点の位置であり、基板処理装置の設計データ等に基づいて計算により求められる。しかしながら、第2の比較例の基板処理装置では、吐出ヘッドの製造時の公差(例えば、吐出ヘッドの製造時における吐出口の許容範囲内の位置ずれ)により、検査画像上にて輝点の位置ずれが生じた場合であっても、斜め吐出として吐出不良と判定される可能性がある。また、光出射部や撮像部の設置時における許容範囲内の位置ずれや向きのずれ等により、検査画像上にて輝点の位置ずれが生じた場合であっても、斜め吐出として吐出不良と判定される可能性がある。本来、このような輝点の位置ずれは、斜め吐出によるものではないため、吐出不良と判定されるべきものではない。
【0061】
これに対し、
図1に示す基板処理装置1では、実際に製造された基板処理装置1において、正常な吐出状態に対応する参照画像732が取得される。したがって、参照画像732における輝点は、上述のような吐出ヘッド31の製造時の公差や光出射部51および撮像部52の設置時における公差等の影響を反映した位置に位置する。このため、参照画像732と検査画像8との差に基づいて吐出動作の良否を判定する際に、上述の様々な公差等による輝点81の位置ずれは上記差として検出されず、当該公差等に起因する誤判定(例えば、斜め吐出との判定)が行われることを防止することができる。
【0062】
第2の比較例の基板処理装置では、正常な輝点の位置を計算にて求めた後、上述の様々な公差を補正することも考えられる。しかしながら、当該補正を行うためには、正常な吐出状態に対応する画像を取得し、設計データ等から計算で求めた輝点の位置との差を算出して補正を行う必要があるため、吐出検査のための準備に多くの作業が発生する。これに対し、
図1に示す基板処理装置1では、正常な吐出状態に対応する画像を取得し、当該画像を参照画像732として参照画像記憶部731に記憶するのみで上記準備作業が終了する。このように、基板処理装置1では、吐出検査の準備作業を簡素化することができる。
【0063】
基板処理装置1では、上述のように、検査画像8上の1つの輝点81と、参照画像732において当該1つの輝点81に対応する輝点との間の距離が求められる。そして、当該距離が所定の距離よりも大きい場合、上記輝点81に対応する吐出口において、斜め吐出の吐出不良が生じていると判定される。このように、吐出口からの処理液の吐出方向が許容範囲内であるか許容範囲外であるかを判定することにより、斜め吐出の吐出不良を精度良く検出することができる。また、上記所定の距離が、撮像部52から輝点81が離れるに従って小さくなることにより、斜め吐出の吐出不良を、より高精度に検出することができる。
【0064】
上述のように、基板処理装置1の吐出検査部5では、撮像部52における撮像方向が、吐出ヘッド31からの処理液の所定の吐出方向に垂直な平面に対して傾斜している。これにより、撮像部52を吐出口直下に配置することなく、全ての吐出口314a〜314dからの液滴に対応する輝点81を含む検査画像8を、撮像部52により確実に取得することができる。さらに、検査画像8上において複数の輝点81が互いに重なることを抑制することができる。その結果、複数の吐出口314a〜314dにおける吐出動作の良否判定精度を向上することができる。このような吐出検査部5の構造は、互いに平行に配列される複数の吐出口列を有する吐出ヘッドにおける吐出動作の良否判定に特に適している。
【0065】
上述のように、吐出検査部5では、光存在面が処理液の所定の吐出方向に垂直な平面に対して傾斜している。これにより、検査画像8上において複数の輝点81が互いに重なることを抑制することができる。その結果、複数の吐出口314a〜314dにおける吐出動作の良否判定精度をさらに向上することができる。このような吐出検査部5の構造も、互いに平行に配列される複数の吐出口列を有する吐出ヘッドにおける吐出動作の良否判定に特に適している。
【0066】
吐出ヘッド31の複数の吐出口314a〜314dは、上述のように、それぞれが配列方向に略直線状に延びるとともに配列方向に対して傾斜する方向に並ぶ吐出口列313a〜313dを含む。このため、1つの吐出口列の端部の吐出口が不吐出である場合であっても、画像ずれの検出の際に、検査画像8が不吐出の吐出口側に配列ピッチに対応する距離だけ参照画像732からずれた位置にて、検査画像8と参照画像732との差が最小と判断されることが防止される。これにより、検査画像8の画像ずれ量をより一層精度良く取得することができる。
【0067】
上記基板処理装置1では、様々な変更が可能である。
【0068】
判定部75の良否判定部752では、必ずしも差分画像82は生成される必要はなく、参照画像732と検査画像8との差に基づいて複数の吐出口314a〜314dにおける吐出動作の良否が判定されるのであれば、様々な方法にて良否判定が行われてよい。
【0069】
上記説明では、処理液の不吐出および斜め吐出が良否判定部752により吐出不良と判定されるが、他の吐出動作も吐出不良と判定されてよい。例えば、吐出ヘッド31から吐出された液滴が飛翔中に分裂して複数の極小液滴になる可能性がある。このような極小液滴は、基板9の上面91に十分な運動エネルギーを付与することができず、基板9を適切に洗浄できない可能性がある。したがって、このような極小液滴の吐出も、吐出口の吐出不良と判定されてもよい。極小液滴の吐出を吐出不良と判定する場合は、例えば、差分画像82において、通常よりも小さい第3領域823が第1領域821の近傍に検出されるケースを吐出不良と判定する。
【0070】
光出射部51では、必ずしも面状に光が出射される必要はなく、光存在面に沿って光出射部51から前方に直線状に延びる光が出射され、当該光が光存在面に沿ってポリゴンミラー等の光走査手段により走査されてもよい。これにより、複数の吐出口314a〜314dから吐出された処理液である複数の飛翔体が光存在面を通過する際に、当該複数の飛翔体に光が照射される。また、光存在面は、吐出ヘッド31からの処理液の設計上の吐出方向に垂直であってもよく、撮像部52における撮像方向は、当該設計上の吐出方向に垂直な平面に平行であってもよい。
【0071】
光出射部51および撮像部52は、吐出ヘッド31の斜め下方以外の位置、例えば、吐出ヘッド31の斜め上方に配置されてもよい。上述の検査領域は、待機ポッド4の上方以外の領域に設定されてもよい。この場合、光出射部51および撮像部52は、当該検査領域の近傍に配置される。
【0072】
吐出ヘッド31の複数の吐出口は、必ずしも、互いに平行に並ぶ複数の吐出口列を含む必要はない。
【0073】
基板処理装置1は、基板9の洗浄以外の様々な処理に利用されてよい。また、基板処理装置1では、半導体基板以外に、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、FED(field emission display)等の表示装置に使用されるガラス基板の処理に利用されてもよい。あるいは、基板処理装置1は、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板および太陽電池用基板等の処理に利用されてもよい。
【0074】
上述の光出射部51、撮像部52、参照画像記憶部731および判定部75を備える装置は、基板処理装置1の他の構成から独立する吐出検査装置として使用されてもよい。当該吐出検査装置は、例えば、上述の様々な基板に対して複数の吐出口から液体を吐出する装置において、複数の吐出口からの液体の吐出動作の検査に利用される。
【0075】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。