(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161601
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】故障時シャットダウンを備えた電子整流される電動機
(51)【国際特許分類】
H02P 6/12 20060101AFI20170703BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20170703BHJP
H02P 6/16 20160101ALI20170703BHJP
【FI】
H02P6/12
B62D5/04
H02P6/16
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-516398(P2014-516398)
(86)(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公表番号】特表2014-523730(P2014-523730A)
(43)【公表日】2014年9月11日
(86)【国際出願番号】EP2012062886
(87)【国際公開番号】WO2013004684
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2013年12月19日
【審判番号】不服2016-3188(P2016-3188/J1)
【審判請求日】2016年3月1日
(31)【優先権主張番号】102011078672.4
(32)【優先日】2011年7月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パスカル ヒリー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ウアバン
【合議体】
【審判長】
中川 真一
【審判官】
堀川 一郎
【審判官】
矢島 伸一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/112262(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用のパワーステアリングシステム(1、35)のための、電子整流される電動機(1)であって、
固定子(3)と、永久磁石を用いて形成されている回転子(5)とを有しており、
前記電動機(1)は、出力側で前記固定子(3)と接続されている制御ユニット(30)を有しており、前記制御ユニット(30)は回転磁界を形成するために前記固定子(3)に通電する、電動機において、
前記電動機(1)は、複数の半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)を備えた、三相インバータ構成を有する出力段(10)を有しており、前記出力段(10)は、各相ごとに設けられて制御可能に形成された3つの分離スイッチ(16、18、20)を介して、前記固定子(3)と接続されており、
前記電動機(1)は、前記制御ユニット(30)と接続されている回転子位置センサ(26)を有しており、
前記回転子位置センサ(26)は、前記回転子(5)の回転子位置を検出し、かつ、前記回転子位置を表す回転子位置信号を形成するように構成されており、
前記制御ユニット(30)は、前記回転子(5)の回転数を表す回転数信号を、時間信号に依存して前記回転子位置信号から形成し、前記回転数信号の周波数変調を検出することによって、半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)の故障によって前記回転子(5)に生じた制動トルク(60)を、前記回転数信号に依存して検出するように構成されており、
前記制御ユニット(30)は、前記半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)の故障を、前記制動トルク(60)に依存して検出し、かつ、前記3つの分離スイッチ(16、18、20)のうち、少なくとも、前記故障した半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)の電流経路内の前記分離スイッチ(16、18、20)を、前記故障した半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)を前記固定子(3)から切り離すために起動するように構成されている、
ことを特徴とする電動機(1)。
【請求項2】
前記電動機(1)は、前記制御ユニット(30)と接続されており、かつ、時間基準である前記時間信号を形成するタイマー(31)を有している、請求項1記載の電動機(1)。
【請求項3】
前記制御ユニット(30)は、前記制動トルク(60)の変化時点を、前記回転子位置信号に依存して検出するように構成されている、請求項1または2記載の電動機(1)。
【請求項4】
前記制御ユニット(30)は、前記分離スイッチ(16、18、20)と接続されており、前記故障した半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)を介して流れる電流の零通過を前記分離スイッチ(16、18、20)を介して下降する電圧に依存して検出し、かつ、前記零通過の時間的な領域において、前記分離スイッチ(16、18、20)を、切り離しのために起動するように構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の電動機(1)。
【請求項5】
前記制御ユニット(30)は、前記故障した半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)を介して流れる電流の零通過を前記回転子位置信号に依存して検出し、かつ、前記零通過の時間的な領域において、前記分離スイッチ(16、18、20)を切り離しのために起動するように構成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の電動機(1)。
【請求項6】
前記分離スイッチ(16、18、20)は半導体スイッチであり、
前記制御ユニット(30)は、前記分離スイッチ(16、18、20)を通って流れる電流の流れ方向に依存して、前記分離スイッチ(16、18、20)を切り離しのために起動するように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の電動機(1)。
【請求項7】
前記分離スイッチ(16、18、20)は電界効果トランジスタである、請求項6記載の電動機(1)。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の電動機(1)を備えた、自動車用のパワーステアリングシステム(1、35)。
【請求項9】
自動車用のパワーステアリングシステム(1、35)のための、電動機(1)の動作方法であって、
前記電動機(1)の固定子(3)と接続されている、前記電動機(1)の、三相インバータ構成を有する出力段(10)の半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)の故障を、前記電動機(1)の、永久磁石を用いて形成されている回転子(5)に作用する制動トルク(60)の時間に亘った変化に依存して検出する電動機(1)の動作方法において、
回転子位置センサ(26)によって、前記回転子(5)の回転子位置を検出して、前記回転子位置を表す回転子位置信号を形成し、
前記回転子(5)の回転数を表す回転数信号を、時間信号に依存して前記回転子位置信号から形成し、
前記回転数信号の周波数変調を検出することによって、前記制動トルク(60)を、前記回転数信号に依存して検出し、
故障した前記半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)が前記固定子(3)に通電できなくなるように、少なくとも、前記故障している半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)の、前記固定子(3)へと続く電流経路を前記制動トルク(60)に依存して電気的に切り離すために、前記出力段(10)と前記固定子(3)との間の電流経路に各相ごとに設けられて制御可能に形成された3つの分離スイッチ(16、18、20)のうち、少なくとも、前記故障している半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)の前記電流経路内の前記分離スイッチ(16、18、20)を起動する、電動機の動作方法。
【請求項10】
前記制動トルク(60)に依存して、前記出力段(10)の全ての半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)を、前記固定子(3)から電気的に切り離す、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記回転子位置信号に依存して前記固定子(3)に通電し、前記制動トルク(60)の時間に亘った変化を前記回転子位置信号に依存して検出する、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
前記故障した半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)を介して流れる電流の零通過を、前記制動トルク(60)の時間に亘った変化に依存して検出し、前記出力段(10)の前記半導体スイッチ(12、14、23、25、27、29)を、前記零通過の時間的な領域において、前記固定子(3)から電気的に切り離す、請求項9から11までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、電子整流される電動機に関する。この電動機は固定子と、殊に永久磁石式に構成された回転子とを有している。この電動機は、出力側で、殊にパワー出力段を介して固定子と接続されている制御ユニットを有している。この制御ユニットは、回転磁界を形成するために、固定子に通電するように構成されている。
【0002】
従来技術から公知の電動機では、次のような問題が生じる。すなわち、電動機のパワー出力段の半導体スイッチの故障時に、故障を有する半導体スイッチが低抵抗になり、このようにして、この半導体スイッチと接続されている、固定子の固定子コイルが、永続的に短絡されてしまう、という問題が生じる。従って短絡電流が流れ、ここで電動機は発電気モードで動かされる。パワー出力段の切り離し時、殊にリレーによる、固定子からの故障した半導体スイッチの切り離し時に、火花が形成されることがある。半導体スイッチ、殊にMOSFETトランジスタによる、固定子からの故障した半導体スイッチを切り離し時には、このMOSFETトランジスタ(MOSFET=Metal−Oxide−Semiconductor−Field−Effect−Ttransistor)が破壊され得る。
【0003】
本発明の開示
有利には、電動機は、半導体スイッチを備えたパワー出力段を有している。このパワー出力段は、少なくとも1つの、制御可能に形成されている分離スイッチを介して、固定子と接続されている。制御ユニットは、半導体スイッチの故障を、この故障によって生じる制動トルクに依存して、有利には、電動機の回転子の制動トルクの時間的な変化に依存して検出し、固定子からこの故障した半導体スイッチを切り離すために分離スイッチを起動するように構成されている。制動トルクを検出することによって、有利には、例えば複数の半導体スイッチを有しているパワー出力段の故障した1つの半導体スイッチを、これらの複数の半導体スイッチの中から検出することができる。このようにして検出された半導体スイッチは次に、属する分離スイッチによって固定子、殊に固定子の固定子コイルから切り離される。
【0004】
有利な実施形態では、電動機は、制御ユニットと接続されている回転子位置センサを有している。この回転子位置センサは、回転子の回転子位置を検出し、この回転子位置を表す回転子位置信号を形成するように構成されている。制御ユニットは、有利には、この回転子位置信号に依存して固定子に通電するように構成されている。
【0005】
制御ユニットは有利には、制動トルクを、この回転子位置信号に依存して検出するように構成されている。さらに有利には、制御ユニットは、回転子位置信号に依存して回転数信号を形成するように構成されている。この回転数信号は回転子の回転数を表す。制御ユニットはさらに、制動トルク、有利には制動トルクの、時間に亘った変化または制動トルクの変化の少なくとも1つの時点を、この回転数信号の周波数変調に依存して検出するように構成されている。これによって有利には、故障した半導体スイッチを検出するセンサを省くことができる。すなわち、有利には、いずれにせよ設けられている電動機の回転子位置センサを、パワー出力段の故障した半導体スイッチを検出するために用いることができる。従ってこの制御ユニットに有利には低コストで、故障検出部を設けることができる。
【0006】
有利な実施形態では、制御ユニットは分離スイッチと接続されており、故障した半導体スイッチを介して流れる電流の零通過を、この分離スイッチを介して下降する電圧に依存して検出し、この零通過の時間的な領域において分離スイッチを起動するように構成されている。従って、有利にはリレーの場合における、火花形成を回避することができる。分離スイッチとしての半導体スイッチの場合、殊にMOSFETトランジスタの場合の、分離スイッチの破壊を回避することができる。
【0007】
有利な実施形態では、制御ユニットは、位相電流の零通過、殊に電動機の発電気モード時に、パワー出力段の故障した半導体スイッチを介して流れる位相電流の零通過を、回転子位置信号に依存して検出し、さらに、分離スイッチを、この零通過の時間的な領域において、分離のために起動するように構成されている。従って、この分離スイッチ、殊に半導体分離スイッチを、有利には常に機能できるようにし続けることができる。すなわち、半導体分離スイッチが、位相の発電機モード時の位相電流によって破壊され、これによって低抵抗になってしまうならば、位相電流が流れ続け、パワー出力段を固定子から分離させるためにさらなるスイッチオフ手段を使用することができなくなってしまうであろう。電動機、例えばパワーステアリングの電動機はこのような場合にさらに、制動トルクを、パワーステアリングによる車両の操舵中に形成するであろう。これは、車両の操舵をサポートするのではなく、むしろ困難にしてしまうだろう。
【0008】
有利な実施形態では、分離スイッチは半導体スイッチ、殊に電界効果トランジスタである。制御ユニットは有利には、分離スイッチを、分離スイッチを通って流れる電流の流れ方向に依存して、分離のために起動する。制御ユニットは例えば、半導体スイッチのボディダイオードの電流線路に相応する流れ方向のときに、有利には、電流の位相位置を配慮すること無く、分離スイッチを分離のために起動するように構成されている。制御ユニットは例えば、半導体分離スイッチのボディダイオードの逆方向における電流流れ方向のときに、位相電流の零通過の時間的な領域において、分離スイッチを分離のために起動するように構成されている。このようにして、半導体分離スイッチによる、固定子からのパワー出力段の切り離しによって、半導体スイッチのアバランシェブレークダウン時に、分離スイッチが破壊されることがなくなる。
【0009】
本発明は、自動車のパワーステアリングシステムにも関する。これは、上述した様式の電動機を有している。パワーステアリングシステムは、自動車の操舵を、電動機によってサポートし、付加的な操舵トルクを形成するように構成されている。
【0010】
本発明は、電動機の動作方法にも関する。この方法では、電動機の固定子と接続されている、電動機のパワー出力段の、半導体スイッチの故障が、電動機の回転子に作用する制動トルクに依存して検出され、少なくとも、固定子への、故障している半導体スイッチの電流経路が、この制動トルクに依存して電気的に切り離される。従って、故障した半導体スイッチは固定子をもはや通電することができない。
【0011】
有利には、制動トルクに依存して、パワー出力段の全ての半導体スイッチが、固定子から電気的に切り離される。
【0012】
有利には、この方法では、回転子の回転子位置が検出され、回転子位置を表す回転子位置信号が形成され、固定子は、この回転子位置信号に依存して通電される。さらに制動トルクは回転子位置信号に依存して検出される。さらに有利には、回転子位置信号に依存して回転数信号が形成され、制動トルク、殊に制動トルクの時間に亘った変化が、回転数信号に依存して検出される。
【0013】
有利には、この方法では、故障した半導体スイッチを介して流れる電流の零通過が、制動トルク、有利には制動トルクの変化に依存して検出され、パワー出力段の半導体スイッチは固定子から、この零通過の時間領域において、固定子から電気的に分離される。
【0014】
本発明を以降で、図面およびさらなる実施例に基づいて説明する。別の有利な実施形態は、従属請求項および図面に記載されている特徴から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】パワー出力段と制御ユニットを有する電動機の実施例を概略的に示しており、これは、半導体スイッチの故障を、制動トルクによって生じる、回転子の回転数変調に依存して検出する
【
図2】故障した半導体スイッチによって変調された回転信号を有するダイヤグラムであり、この回転信号は、
図1に示された回転子の回転数を表す
【実施例】
【0016】
図1は、電動機1の実施例を概略的に示している。電動機1は、固定子3と永久磁石を用いて構成されている回転子5とを有している。回転子5の回転子軸は例えば、破線で示されているように、パワーステアリングと接続されている。固定子3は、この実施例では、星形回路に接続されている3つの固定子コイルを有している。これらはすなわち固定子コイル7と、固定子コイル8と、固定子コイル9である。固定子コイル7、8および9はそれぞれ、第1の端子で、共通の星形回路端子6と接続されている。
【0017】
電動機1は、パワー出力段10も有している。このパワー出力段10は、回転子の回転運動のための回転磁界を形成するために、入力側で受信された制御信号に依存して固定子3の固定子コイル7、8および9に通電するように構成されている。このために、パワー出力段10は、マルチチャネル接続32を介して、制御ユニット30と接続されている。制御ユニット30は例えば、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ、FPGA(FPGA=Field−Programmable−Gate−Array)またはASIC(ASIC=Application−Specific−Integrated−Circuit)によって形成されている。パワー出力段10はこの実施例では、B−6−ブリッジを有している。このB−6−ブリッジは、6つのMOS−FET−トランジスタ(MOS−FET=Metal−Oxide−Semiconductor−Field−Effect−Transistor)を有している。このうちの2つの、相互に直列接続されたトランジスタ12と14が例として示されている。パワー出力段10、殊にB−6−ブリッジのトランジスタは、それぞれ1つの、この図に示されているボディダイオードを有している。このB−6ブリッジは、端子24によって供給電圧と接続されており、シャント抵抗15を介してアース端子22と接続されている。制御ユニット30はこの実施例では、付加的に、回転磁界を形成するために、このシャント抵抗によって検出されたモータ電流に依存して、制御信号を形成するように構成されている。
【0018】
B−6−ブリッジのトランジスタはそれぞれ制御端子を有している。ここで、トランジスタのこれらの制御端子は、マルチチャネル接続32を介して、制御ユニット30と接続されている。
【0019】
パワー出力段10は、3つの分離スイッチも有している。これらはそれぞれMOSFET−トランジスタとして形成されている。固定子コイル7は接続線路46を介して、さらに、制御可能に形成された分離スイッチ16を介して、B−6−ブリッジのトランジスタ12および14を含んでいるトランジスタ対と接続されている。トランジスタ14はここでハイサイドトランジスタを形成し、トランジスタ12はここでローサイドトランジスタを形成する。固定子コイル8は、接続線路45を介して、さらに制御可能に構成された分離スイッチ18を介して、B−6ブリッジの別の位相用の別の出力側と接続されている。分離スイッチ18は、接続ノード13と接続されている。この接続ノード13は、位相スイッチの出力側を含んでいる。この位相スイッチは、相互に直列接続された2つのMOSFETトランジスタ23と27を含んでいる。固定子コイル9は、接続線路44を介して、さらに、制御可能に構成されている分離スイッチ20を介して、B−6ブリッジの固定子コイル9用の出力側と接続されている。分離スイッチ19は、接続ノード13と接続されている。この接続ノード13は、位相スイッチの出力側を含んでいる。この位相スイッチは、相互に直列接続された2つのMOSFETトランジスタ25と29を含んでいる。制御可能に構成されている分離トランジスタ16、18および20は、この実施例では、MOSFETトランジスタとして形成されている。トランジスタ16、18および20の制御端子は、マルチチャネル接続部34を介して、制御ユニット30と接続されている。
【0020】
電動機1は、回転子位置センサ26も有している。この回転子位置センサは例えば、少なくとも1つのホールセンサを含んでいる。GMRセンサ(Giant−Magneto−Resistive)またはAMRセンサ(AMR=Anistrope−Magneto−Resistive)も可能である。制御ユニット30は入力側で、接続線路36を介して、回転子位置センサ26と接続されている。この回転子位置センサ26は、回転子5の回転子位置を検出し、この回転子位置を表す回転子位置信号を形成し、この回転子位置信号を制御ユニット30に送信するように構成されている。制御ユニット30は、回転子位置信号に依存して、回転子5の回転運動のために回転磁界を形成するようにパワー出力段を駆動制御するため、殊にB−6−ブリッジの制御端子を駆動制御するために、制御信号を形成するように構成されている。
【0021】
制御ユニット30は、回転子位置信号の信号パターンに依存して、殊に回転子位置信号の少なくとも1つの周波数成分に依存して、回転子の制動トルクを検出するように構成されている。この制動トルクは、パワー出力段10、殊にB−6−ブリッジの故障した半導体スイッチによって形成されたものである。制御ユニット30は、このために、双方向接続38を介して、ルックアップテーブル用のメモリ40と接続されている。メモリ40は、データセットを有している。このデータセットは、協同して、ルックアップテーブルを形成する。データセット42は例として示されている。メモリ40内のルックアップテーブルは、この実施例では、回転子位置センサ26によって検出された回転子5の回転子位置と、パワー出力段10のB−6−ブリッジの半導体スイッチとの間の対応を表している。制御ユニット30はさらに、接続部38を介して、ルックアップテーブルを表すデータセットをメモリ40から読み出し、所定の回転子位置を表すデータセットを回転子位置信号と比較するように構成されている。制御ユニット30はさらに、半導体スイッチを回転子位置信号と比較の結果に依存して、ルックアップテーブルを用いて、パワー出力段の少なくとも1つの故障した半導体スイッチを求めるように構成されている。制御ユニット30はさらに、この求められた故障した半導体スイッチに依存して、少なくとも1つの分離スイッチまたは全ての分離スイッチ16、18および20を、マルチチャネル接続34を介して駆動制御し、固定子3をパワー出力段10から切り離すように構成されている。
【0022】
制御ユニット30は、この実施例では、回転数位置信号に依存して、ひいては回転子位置に依存して、固定子コイルによって発電され、故障した半導体スイッチを介して流れる電流の零通過の時間的な領域において、少なくとも1つの分離スイッチを分離のために起動するように構成されている。このために、制御ユニット30は、回転子位置信号から、時間信号に依存して回転数信号を形成するように構成されている。この回転数信号は、回転子の回転数を表し、回転数信号の周波数変調を検出するように構成されている。このために、制御ユニット30は接続線路33を介してタイマー31と接続されており、このタイマーは、時間基準である時間信号を、回転数信号を求めるために形成するように構成されている。時間基準は例えば水晶振動子によって形成されている。
【0023】
例えば、ハイサイドトランジスタ14が故障しており、これによって低抵抗導電性である場合には、エラー電流が供給電圧端子24から、トランジスタ14のドレイン端子およびその接続区間およびトランジスタ14のソース端子および固定子コイル7の位相スイッチの出力側を形成する接続ノード11および分離スイッチ16および接続線路46を介して、固定子コイル7の第2の端子へと流れる。半導体分離スイッチ16のソース端子はこの実施例では、接続ノード11と接続されており、ドレイン端子は接続線路46と接続されている。従って、分離スイッチが開放されている場合には、エラー電流はこの実施例においてMOSFETトランジスタとして形成されている分離トランジスタ16のボディダイオードの方向で流れる。このエラー電流は、星形回路端子6と固定子コイル9および8を介して流れ、接続線路45および44を介して戻り、これによって、分離スイッチ20および18も介して、B−6ブリッジのハイサイドトランジスタ27ないしはハイサイドトランジスタ29を介して流れ、ここで、各ボディダイオードの順方向において、故障した半導体スイッチ14に戻る。
【0024】
制御ユニット30は、回転子位置信号に依存して求められた、半導体スイッチ14の故障に基づいて、半導体スイッチ14と接続されている固定子コイル7を分離スイッチ16で切り離すために、制御信号を送出するように構成されている。制御ユニットは例えば、故障したトランジスタの場合には、パワー出力段10の分離スイッチを、以下の表に従った回転子5の回転子位置で起動するように構成されている。
【0025】
【表1】
【0026】
エラー電流は、故障したハイサイドトランジスタ14の上述した例において説明したように、切り離し時に、分離スイッチ16のボディダイオードの方向において流れるので、分離スイッチ16は、上述の表に従ったエラー電流の周期の時点の間、分離される。有利には、制御ユニット30による分離は、エラー電流の零通過で行われる。従って、分離スイッチ18および20を通って、各ボディダイオードの逆方向で流れるエラー電流はこれを、アバランシェブレークダウン(アバランシェ崩壊とも称される)の間、妨害することがない。
【0027】
ローサイドトランジスタ、例えば半導体スイッチ12が故障している場合、固定子コイル7内で誘起されたエラー電流は、固定子コイル7から、接続線路46を介して、分離スイッチ16のボディダイオードの逆方向において、分離スイッチ16を通って、さらに接続ノード11を介して半導体スイッチ12のドレイン端子へと流れ、故障した半導体スイッチ12を通って半導体スイッチ12のソース端子へと流れ、さらに、B−6ブリッジの別のローサイドトランジスタ23および25を介して星形回路端子6に戻る。この星形回路端子6は、固定子コイル7の第1の端子と接続されている。ここで、エラー電流は、半導体スイッチ12のソース端子から、B−6−ブリッジのローサイドトランジスタ23および25のローサイドトランジスタ13を介して、接続ノード13へと流れる。これは、分離スイッチ18のソース端子と接続されている。さらにエラー電流は、分離スイッチ18と接続線路45と固定子コイル8を介して、星形回路端子6に戻る。エラー電流はこれに対して並行に、半導体スイッチ12のソース端子から、上述されている半導体スイッチのローサイド半導体スイッチ25と接続ノード17と分離スイッチ20と接続線路44と固定子コイル9を介して、星形回路端子6へと流れる。エラー電流は、ここで分離スイッチ18および20において、分離スイッチ18および20のボディダイオードの方向において流れ、エラー電流は、ここで分離スイッチ16を通って、分離スイッチ16の分離時に、分離スイッチ16のボディダイオードの逆方向において流れ、アバランシェブレークダウンに陥り、ここで崩壊される。
【0028】
分離スイッチ16のスイッチング経路は、この場合には低抵抗に接続されるであろう。従って、分離スイッチ16は、固定子コイル7をもはや、パワー出力段10から切り離すことができない。制御ユニット30はこの実施例では、ローサイドトランジスタ12の故障時に、トランジスタ16を通って流れるエラー電流の零通過の領域において、分離スイッチ16を切り離しのために起動するように構成されている。
【0029】
図2は、ダイヤグラム50を示している。このダイヤグラム50は、横軸54と縦軸52を有している。横軸54は時間経過を示しており、縦軸52は、
図1に示された、電動機1の回転子の回転数を、1分あたりの回転で示している。曲線58も示されている。この曲線は、回転子位置センサ26によって検出された回転子位置信号を表している。曲線60も示されている。この曲線は、
図1における回転子5の回転子軸で出力される制動トルクを表している。別の縦軸56は、曲線60の制動トルクの値を表している。曲線58と60はそれぞれ測定に基づいている。従って、曲線58および60は、表されている量信号に対して付加的に別の信号成分を表している。これは、曲線58と60の曲線形状に影響を与える。
図1に示された制御ユニットは、例えば信号分析器によって、電動機1によって、および曲線60によって表された制動トルクを、曲線58によって表されている回転数信号に依存して、殊に回転数信号の周波数変調に依存して検出するように構成されている。制御ユニット30は
図1において例えば、回転子位置信号に依存して回転数信号を形成するように構成されている。これは、回転子5の回転数を表している。曲線58および60は、ダイヤグラム50において、回転子回転数の下降中に回転子軸での回転トルクが低減し、これによって回転子軸での制動トルクが増大することを示している。