(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161610
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】68GA錯体の調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 49/04 20060101AFI20170703BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20170703BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
A61K49/04
A61K47/22
A61K47/12
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-524396(P2014-524396)
(86)(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公表番号】特表2014-524423(P2014-524423A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】EP2012065659
(87)【国際公開番号】WO2013024013
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年7月28日
(31)【優先権主張番号】FI2011A000180
(32)【優先日】2011年8月12日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517137538
【氏名又は名称】アドヴァンスド アッチェレラター アプリケーションズ インターナショナル ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】フガッツァ・ロレンツァ
(72)【発明者】
【氏名】フィランニーノ・マリア・アズーラ
(72)【発明者】
【氏名】マリアニ・マウリツィオ・フランコ
【審査官】
菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/092114(WO,A1)
【文献】
特表2012−517974(JP,A)
【文献】
米国特許第06056939(US,A)
【文献】
特表2010−502585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/04
A61K 47/12
A61K 47/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
68Ga錯体の調製方法であって、キレート剤で官能基化された分子と68Ga間の錯体化反応を、金属陽イオンを封鎖することが可能な化合物の存在下で、緩衝剤ギ酸/ギ酸塩水溶液中において行い、前記金属陽イオンを封鎖することが可能な化合物が1,10−フェナントロリン及び12−クラウン−4からなる群から選択され、該金属陽イオンを封鎖することが可能な化合物を錯体化反応の開始時に加える、方法。
【請求項2】
68Ga錯体の調製方法であって、キレート剤で官能基化された分子と68Ga間の錯体化反応を、1,10−フェナントロリン及び12−クラウン−4からなる群から選択される金属イオン封鎖剤の存在下、緩衝水溶液中において行う、方法。
【請求項3】
前記キレート剤で官能基化された分子が、DOTA及びその誘導体、NOTA及びその誘導体、PCTA及びその誘導体よりなる群から選択され、前記ギ酸塩がギ酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
標識混合物中におけるギ酸/ギ酸塩の比が1〜3.5である、請求項1及び3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記錯体化反応がpH3〜4.5の範囲で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応のpHが3.2〜4.2であることが更に好ましい、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
反応のpHが3.4〜4.0であることが最も好ましい、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
・商業用68Ga発生剤を、酸を含有する溶離液を用いて、緩衝剤ギ酸/ギ酸塩水溶液及び塩基を含有するバイアル中に直接溶離させ;
・キレート剤で官能基化された分子を前記バイアル中に加え、その反応バイアルを短時間加熱し;
・生成物を集める、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
・商業用68Ga発生剤を、酸を含有する溶離液を用いて、キレート剤で官能基化された分子を含有するバイアル中に直接溶離させ;
・緩衝剤ギ酸/ギ酸塩水溶液及び塩基を前記バイアル中に加え、その反応バイアルを短時間加熱し;
・生成物を集める、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
酸溶離液がHCl水溶液であり、塩基がNaOH水溶液である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
・キレート剤で官能基化された分子及び1,10−フェナントロリン及び12−クラウン−4からなる群から選択される金属陽イオンを封鎖することが可能な化合物を含有するバイアルと;
・適切な超高純度のギ酸/ギ酸ナトリウム混合物を含有するバイアル又はシリンジと
を備える反応キット。
【請求項12】
キレート剤で官能基化された分子と、1,10−フェナントロリン及び12−クラウン−4からなる群から選択される金属陽イオンを封鎖することが可能な化合物と、適切な超高純度のギ酸/ギ酸ナトリウム混合物とを含有するバイアル。
【請求項13】
前記バイアルがシリコン処理をしたバイアルである、請求項11に記載の反応キット又は請求項12に記載のバイアル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同位体を含有する錯体の調製方法、特には放射線マーカーとして有用である同位体
68Gaを含有する錯体の調製方法を扱うものである。
【背景技術】
【0002】
生体内PET画像処理に
68Gaで標識された放射性トレーサーを用いる最近の臨床研究での励まされる結果にもかかわらず、その同位体の長期的分布を可能にしない短い半減期(68分)は、標識化プロセスの設備が整っている「プロダクション・ラジオファーマシー」の必要性と共に、依然として、核医学ルーチンでの広範な使用を禁止している。
【0003】
Ga−68による標識化は、放射性金属を、適切なキレート剤と、反応媒体中で錯体化することによって行われるが、該反応媒体中には、
68Ga発生剤の溶離に由来する放射線量の
68Gaと、標識されるべき分子(我々の出願では、キレート剤で官能基化された分子又は前駆物質と称される)の量と、錯体形成に最適なpHを確保するのに適した緩衝剤とが導入されている。
【0004】
所謂
68Ga発生剤は、ゲルマニウムを含有する市販の樹脂であり、該樹脂から、ゲルマニウム崩壊によって、所望の
68Gaが自然に形成される;それ故に、適当なpH条件下で且つキレート剤で官能基化された分子の存在下で上記樹脂を溶離することにより、
68Gaを含有する所望の錯体の形成が可能である;選ばれたキレート剤で官能基化された分子によって、75〜90℃での加熱が必要な場合がある。
【0005】
上記標識化成功の主な限界は、適切なpHを一定に保つ必要があることと、錯体形成過程でのGa−68と金属不純物の競合とによって与えられる。
【0006】
上述の内容を考慮すると、標準pHを確保することのできる適切な緩衝剤を調査することが、68Ga標識化における当業者によって継続的に調べられている話題であることは明らかであり、未だに未解決である。
【0007】
かかる緩衝剤は、毒性がなく、pH3.5〜5.0の範囲で緩衝液として作用することができるべきであり、ガリウムイオンと競合すべきではなく、優先的に、弱い金属錯体化能を有するべきでもない。
【0008】
報告された異なる緩衝剤の中で、これまでに主として使用されてきたものは、HEPES(スルホン酸誘導体)又は酢酸塩緩衝剤である;しかしながら、それらは、厳しく規定されたpH範囲でのみ作動することが可能であり(出版物Velikyan et al., Bioconjugate Chem., 2008, 19, 569-573)、溶離液酸性度がわずかに変化すると、所要の緩衝能をもはや保つことができない。
【0009】
例えば、上記発生剤から来る溶離液の体積が少し増加しても、錯体形成を損ない、多量の遊離Ga−68をもたらす値にpHが変化する原因となる。これは、最終精製を強制させるノンコンプライアンスの危険を生じさせる。更に、HEPES緩衝剤については、利用できる毒物学的データがない:最終精製は、放射性医薬品の投与前にHEPESを除去し又は少なくとも低減するためにも行われる必要がある。
【0010】
最近、他の緩衝剤が、Ga−68錯体形成に効率的な解決策として報告されており(WO2010/092114)、例えば、乳酸塩、酒石酸塩及び炭酸塩緩衝剤である。これら緩衝剤は、少なくとも2つのGa−68配位機能を備えており、緩衝剤が標識化を妨げることもあり得るという偏見を克服する。とにかく、それらの使用は、Ga−68溶液の予備標識化処理を免除することなく、上記発生剤溶離液の減少され且つ精製した画分を用いて首尾よく試験された。
【0011】
第2の重要な限界は、金属不純物の競合であり、主として、固定相とGa−68崩壊の両方に由来する三価の及び二価の陽イオンである(Zn)。これら金属は、Ga−68と同様に、キレート剤で官能基化された分子によって拘束され、標識化に実際利用できる分子の数を低減する。これは、Ga−68の不完全な錯体形成を招く場合があり、調製物の最終放射化学的純度を低減する。時に、先行技術において、標識化の間キレート剤で官能基化された分子によって錯体化されていないGa−68は、放射性医薬品調製物の投与の場合に高い割合での遊離金属の存在を回避し且つそれらの除去を促進するために、同位体に対する親和性が認められている過剰のキレート剤(例えばEDTAキレート剤)を標識化後に加えることで、完全に封鎖される(WO2010/141833−例2)。そうではなく、より多い量のキレート剤で官能基化された分子から開始して、部分的なGa−68錯体形成に直面するかもしれない。しかしながら、キレートされた前駆物質の量の増加は、比放射能(放射性の物と標識されていない物の比)の望ましくない低減を引き起こし、診断結果を悪化させる場合がある。実際、同じ受容体について、標識された分子との競合によって、標識されていない分子の存在は、標的組織における放射能濃度に悪影響を及ぼす可能性がある。それ故に、高SRA(比放射能)は、標的組織とその周りのPET画像において十分なコントラストを与えるために重要である可能性がある。当該技術の状況においては、(特許番号WO2010/092114に記載されるように)競合する金属イオンの存在が、通常、標識化前に溶離液の予備精製又は分画によって低減されるものの、これら工程は、開始活性の不利な喪失をもたらす。
【0012】
更に、予備標識化工程も最終精製も回避できない場合、Ga−68標識化は、常に、合成モジュールを用いることで、ある程度、自動化に基づいており、そのキット戦略を実現不可能にさせる。これは、必要とされる技術的な専門知識に加えて、標識化のために好ましくない長時間を要する。放射性核種の短い半減期(t
1/2=68分)と、上記発生剤によって与えられる限られた活性の理由から、非常に迅速で、直接的で且つ高収率の錯体形成を得ることを目標としているどんな改善も非常に望ましい。
【0013】
先に述べたすべての内容から、
68Ga錯体の調製を可能にし、先に述べた問題を克服する方法の必要性は明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO2010/092114
【特許文献2】WO2010/141833
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Velikyan et al., Bioconjugate Chem., 2008, 19, 569-573
【発明の概要】
【0016】
68Gaを含有する錯体の調製方法であって、その錯体形成反応において、場合により金属陽イオンを封鎖することが可能な化合物の存在下で、緩衝剤ギ酸/ギ酸塩を用いる方法について説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、含水緩衝剤ギ酸/ギ酸塩中においてGa−68がキレート剤で官能基化された分子により効果的に錯体化される方法によって、上述の課題を克服することを可能にする。
【0018】
上述の緩衝剤ギ酸/ギ酸塩は、適切なpHを確立することを可能にすると共に、溶離液体積/酸性度変化に耐えることも可能にする。
【0019】
実際、その緩衝能力は、Ga−68錯体形成に適したpHの値にて中心があり、金属錯体形成能がないため、標識化の障害を与えない。更に、この緩衝剤は、ギ酸が薬局方の第3類(低毒性溶媒)残留溶媒に分類されており、5mg/ml(5000ppm)の限界が認められているため、医薬的適用に適合するはずである。
【0020】
通常、ギ酸塩としてはギ酸ナトリウムが好適であるが、ギ酸の他のどんな金属塩も使用できる。
【0021】
ギ酸/ギ酸塩の比は、通常、1〜3.5である。
【0022】
更に、金属不純物の存在の問題に立ち向かうためには、当該技術の通常の慣行であるように、キレート剤で官能基化された分子の量を増加させたり(SRAの減少をもたらしたり)又は時間及び放射能を消費する精製工程により発生剤溶離液を予め処理したりする代わりに、妨害種を中和し、Ga−68がキレート剤で官能基化された分子とより自由に反応できるようにしておくため、上記方法において、金属イオン封鎖剤を使用できることを見出した。
【0023】
これら金属イオン封鎖剤は、存在する場合、キレート剤で官能基化された分子をサポートする役目を果たし、キレート剤で官能基化された分子との反応に競合する金属を一時的に又は恒久的に取り去る。
【0024】
注目すべきは、本発明における金属イオン封鎖剤の機能が、上述のように、先行技術で使用される金属イオン封鎖剤の機能と反対であることである。
【0025】
実際、既知の手順に従うと、標識化の終わりで、ガリウムに対して特定の親和性を持つ金属イオン封鎖剤を、その同位体の未反応部分をキレートするために、加えることができるが、本発明によれば、金属不純物の競合を最小限に抑えることができる金属イオン封鎖剤を反応の開始時に加える。
【0026】
本発明に使用される金属イオン封鎖剤は、明らかに、主要な標識化反応の障害又はバイサイドで標識される種の形成を回避するため、Ga−68イオンよりむしろ競合する金属と優先的に結合するはずである。
【0027】
更に、特定の実施態様によれば、本発明はまた、放射性同位体、特には
68Gaを錯体化するための方法であって、緩衝溶液を、上述し且つ以下に述べる金属イオン封鎖剤と組み合わせて使用する方法についても言及する。
【0028】
本発明によれば、キレート剤で官能基化された分子は、Ga−68等の放射性同位体を錯体化することができるキレートで官能基化された標的能力を持つどんな分子も対象となる。
【0029】
本発明に従うGa−68の錯体形成に好適なキレートは、DOTA及びその誘導体、NOTA及びその誘導体、PCTA及びその誘導体の中から選択できる。
【0030】
一般に、Ga
3+の周りに十分安定したケージを形成できるどんなキレートを使用してもよく、特には、あらゆる脂肪族、大環状若しくは線状アミンであり、又は第3級アミンを備えた大環状アミンである。
【0031】
標的能力を持つ分子としては、診断又は治療的に興味のある生物学的過程を標的にすることができる分子が対象とされ、有利には、アミノ酸、ペプチド、有利には4〜15若しくは4〜10のアミノ酸を含むペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ビタミン、単糖若しくは多糖、抗体、核酸、又はアプタマーである。
【0032】
本発明に有用である標的能力を持つ分子の中でも、我々は以下のものについて言及することができる(例であり、制限する一覧ではない):
・VEGF受容体を標的にする分子
・ボンベシン類似物又はGRP受容体を標的にする分子
・ソマトスタチン受容体を標的にする分子
・RGDペプチド又はαvβ3及びαvβ5標的分子
・アネキシンV又はアポトーシス過程を標的にする分子
・エストロゲン受容体を標的にする分子
・アテロームプラークを標的にする分子
・Topics in Current Chemistry,vol.222,260−270,Fundamentals of Receptor−based Diagnostic Metallopharmaceuticalsで想起された標的分子
【0033】
金属イオン封鎖剤は、存在する場合、以下のものよりなる群から選択されるのが好ましい:
・グリシン及び他のキレートアミノ酸(例えばメチオニン、システイン等)
・クラウンエーテル及び窒素クラウンエーテル
・複素環式有機化合物、例えば1,10−フェナントロリン、2,2’−ビピリジン
・カリックスアレーン類
・多座キレート剤、例えばタンパク質、多糖類及びポリ核酸
・天然キレート剤、例えばカテキン類、タンニン、ポルフィリン
・一般的な線状又は大環状キレート剤(例えばポダンド及びクリプタンド)
【0034】
通常ではミクロモル量の、より有利にはナノモル量の金属イオン封鎖剤が使用され、好ましくは100ナノモル未満であり、例えば20と25ナノモルの範囲にある。
【0035】
先に説明した金属イオン封鎖剤は、他の緩衝剤を使用する錯体化反応においても有利に利用できることに注目することが重要である。
【0036】
従って、本発明の他の実施態様は、放射性同位体、特に
68Gaの錯体化反応を含む方法であって、先に規定された金属イオン封鎖剤を反応緩衝剤に加える方法である。
【0037】
錯体化反応は、好ましくはpH3〜4.5、より好ましくは3.2〜4.2、最も好ましくは3.4〜4.0の範囲で行われる。
【0038】
先に記載される方法に従って得られる錯体も本発明の実施態様である;それらは、10mg/ml未満のギ酸/ギ酸塩と、100nmol未満の金属イオン封鎖剤(使用した場合)とを含有することができる。
【0039】
前述のように、商業用発生剤(ゲルマニウムを持つ樹脂カラムからなる)を、酸(通常HCL)を含有する溶離液を用いて、緩衝剤ギ酸塩と塩基とを含有するバイアル中に直接溶離させる。
【0040】
そのバイアル中に、キレート剤で官能基化された分子を(通常、例えばフェナントロリンのような金属イオン封鎖剤の存在下で)加え、その反応バイアルを短時間加熱する;その生成物溶液を集めて、逆相HPLC及びITLC(MeOH/1Mの酢酸アンモニウム 1/1)によって調べる。
【0041】
また、その添加順序を逆にすることもできる。
【0042】
例えば、上記商業用発生剤を、酸(通常HCL)を含有する溶離液を用いて、キレート剤で官能基化された分子を(好ましくは、例えばフェナントロリンのような金属イオン封鎖剤の存在下で)含有するバイアル中に直接溶離させることができる。
【0043】
ギ酸塩緩衝剤と塩基とをそのバイアル中に加え、反応混合物を短時間加熱する。
【0044】
酸溶離液は、通常、例えばHClのような強酸の水溶液によって構成されるが、塩基は、例えばNaOHのような強塩基の水溶液である。
【0045】
全体的に見ると、ギ酸塩緩衝剤の使用は、たとえ溶離液酸性度の変化が起きても、適切なpHを保証し、このようにして、低過ぎる又は高過ぎるpHであって、それぞれが高含量の遊離
68Ga
3+又は
68Ga水酸化物を生じさせるpHによって錯体化していないGa−68の量を低減する。更に、金属イオン封鎖剤を加えることで、完全なGa−68錯体形成を得るために必要とされるキレート剤で官能基化された分子の量を減少させることが可能になる。
【0046】
これら2つの態様は、出願人が、適切な程度の錯体形成、有利には少なくとも92%、95%及び97%を実現することを可能にし、その結果として、十分な純度であり(少なくとも92%、95%及び97%)、どんな種類の予備又は最終精製もない。得られた結果は、操作や精製を要しない直接的なGa−68標識化の実現可能性を裏付けるため、その処方を特定のキットの製造に適用することができる。
【0047】
それ故に、特定の実施態様によれば、本発明はまた、
・キレート剤で官能基化された分子と選択された金属イオン封鎖剤とを含有するシリコン処理されたバイアル;
・適切な超高純度のギ酸/ギ酸ナトリウム混合物を含有するシリコン処理されたバイアル又はシリンジ
を備える反応キットに関する。
【0048】
更に、本発明はまた、キレート剤で官能基化された分子と、選択された金属イオン封鎖剤と、適切な超高純度のギ酸/ギ酸ナトリウム混合物とを含有する単一のバイアルに関する。
【実施例】
【0049】
例1
0.6MのHCl溶離液3mlを用いた
68GaDOTAペプチドの標識化
SnO
2固定相を有する30mCiの商業用発生剤(IDB製)を、0.6Mの超高純度HClの溶離液3mlを用いて、1.5Mの超高純度緩衝剤ギ酸塩200μlと4.5Mの超高純度NaOH400μlとを含有するバイアル中に直接溶離させた。次いで、DOTA−ペプチド30μgと、1,10−フェナントロリン4.5μgとを加え、その反応バイアルを95℃で7分間加熱した。生成物を逆相HPLC及びITLC(MeOH/1Mの酢酸アンモニウム.1/1)によって調べたところ、両方のテストで放射化学純度98%がもたらされた。
【0050】
例2
0.6MのHCl溶離液3.2mlを用いた
68GaDOTAペプチドの標識化
SnO
2固定相を有する30mCiの商業用発生剤(IDB製)を、0.6Mの超高純度HClの溶離液3.2mlを用いて、1.5Mの超高純度緩衝剤ギ酸塩200μlと4.5Mの超高純度NaOH400μlとを含有するバイアル中に直接溶離させた。次いで、DOTA−ペプチド30μgと、1,10−フェナントロリン4.5μgとを加え、その反応バイアルを95℃で7分間加熱した。生成物を逆相HPLC及びITLC(MeOH/1Mの酢酸アンモニウム.1/1)によって調べたところ、両方のテストで放射化学純度97%がもたらされた。
【0051】
例3:
0.6MのHCl溶離液3mlを用いた
68GaDOTAペプチドの標識化
SnO
2固定相を有する30mCiの商業用発生剤(IDB製)を、0.6Mの超高純度HClの溶離液3mlを用いて、1.5Mの超高純度緩衝剤ギ酸塩200μlと4.5Mの超高純度NaOH400μlとを含有するバイアル中に直接溶離させた。次いで、30μgのDOTA−ペプチドと、15μgの12−クラウン−4とを加え、その反応バイアルを95℃で7分間加熱した。生成物を逆相HPLC及びITLC(MeOH/1Mの酢酸アンモニウム.1/1)によって調べたところ、それぞれ98%及び96%の放射化学純度がもたらされた。
【0052】
例4:
0.6MのHCl溶離液3mlを用いた
68GaDOTAペプチドの標識化
SnO
2固定相を有する30mCiの商業用発生剤(IDB製)を、0.6Mの超高純度HClの溶離液3mlを用いて、30μgのDOTA−ペプチドと15μgの12−クラウン−4とを含有するバイアル中に直接溶離させた。次いで、1.5Mの超高純度緩衝剤ギ酸塩200μlと4.5Mの超高純度NaOH400μlとを加え、その反応バイアルを95℃で7分間加熱した。生成物を逆相HPLC及びITLC(MeOH/1Mの酢酸アンモニウム.1/1)によって調べたところ、それぞれ98%及び96%の放射化学純度がもたらされた。