特許第6161630号(P6161630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6161630作業機用の推進回路と作業回路の組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161630
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】作業機用の推進回路と作業回路の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/14 20060101AFI20170703BHJP
   B66F 9/22 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   F15B21/14 B
   B66F9/22 X
【請求項の数】31
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-552267(P2014-552267)
(86)(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公表番号】特表2015-509170(P2015-509170A)
(43)【公表日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】US2013020833
(87)【国際公開番号】WO2013106431
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2015年12月9日
(31)【優先権主張番号】61/584,650
(32)【優先日】2012年1月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/584,630
(32)【優先日】2012年1月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390033020
【氏名又は名称】イートン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ホクシー、ベンジャミン、マックスフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ミーハン、ティモシー、アイザック
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/132765(WO,A1)
【文献】 特開2013−133172(JP,A)
【文献】 特表2013−526468(JP,A)
【文献】 実開昭63−192396(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22
F15B 21/14
B66F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動型作業車用の油圧回路構造であって、
原動機によって駆動されるように適合され、高圧力側及び低圧力側を有する駆動油圧ポンプと、
少なくとも1つのアクチュエータに接続されるように適合され、前記移動型作業車の作業用部品を駆動する油圧作業回路と、
前記移動型作業車のドライブトレーンに接続されるように適合される推進油圧モータ,及び,油圧アキュムレータを含んだ油圧推進回路と、
前記油圧作業回路と前記油圧推進回路に、前記駆動油圧ポンプの高圧力側を選択的に接続する回路セレクタと、
を含み、
前記油圧回路構造は、
a)前記油圧推進回路が、前記駆動油圧ポンプの高圧力側に接続され、かつ、前記油圧作業回路が、前記駆動油圧ポンプの高圧力側から遮断される第1モード、及び、
b)前記油圧作業回路が、前記駆動油圧ポンプの高圧力側に接続され、かつ、前記油圧推進回路が、前記駆動油圧ポンプの高圧力側から遮断される第2モード、
で動作可能であり、
前記油圧回路構造が前記第2モードである場合、前記油圧アキュムレータに貯蔵されているエネルギが用いられ、前記推進油圧モータを駆動し、前記移動型作業車を推進させることができることを特徴とする油圧回路構造。
【請求項2】
前記油圧作業回路と前記油圧推進回路との間の流体連通を提供するクロスオーバ油圧流路をさらに含み、前記クロスオーバ油圧流路を開閉するクロスオーババルブが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の油圧回路構造。
【請求項3】
前記クロスオーババルブは、前記クロスオーバ油圧流路を通過する流量を制御することを特徴とする請求項2に記載の油圧回路構造。
【請求項4】
前記クロスオーバ油圧流路は、前記油圧アキュムレータに貯蔵されたエネルギを用いて、前記油圧作業回路の少なくとも1つのアクチュエータを駆動可能にすることを特徴とする請求項2に記載の油圧回路構造。
【請求項5】
前記油圧回路構造は、前記油圧作業回路と前記油圧推進回路の双方が、前記駆動油圧ポンプの高圧力側から油圧流体の流れを全く受け取らない第3モードで動作可能であり、かつ、前記クロスオーバ油圧流路は、前記油圧アキュムレータに貯蔵されたエネルギを用いて、前記油圧作業回路の少なくとも1つのアクチュエータを駆動可能にし、前記油圧アキュムレータに貯蔵されたエネルギは、前記推進油圧モータを駆動することを特徴とする請求項2に記載の油圧回路構造。
【請求項6】
前記推進油圧モータは、可変容量形油圧ポンプ/モータであり、前記油圧回路構造は、前記可変容量形油圧ポンプ/モータによって加圧された油圧流体を用いて、前記油圧アキュムレータをチャージするチャージモードで動作可能であることを特徴とする請求項1に記載の油圧回路構造。
【請求項7】
前記移動型作業車が減速した場合、前記移動型作業車の運動エネルギは、追加の貯蔵エネルギに変換され、前記油圧アキュムレータ内に保存されることを特徴とする請求項6に記載の油圧回路構造。
【請求項8】
前記駆動油圧ポンプは、油圧ポンプ/モータであり、かつ、前記油圧アキュムレータからの油圧流体を、前記油圧ポンプ/モータを駆動するために利用可能であることを特徴とする請求項1に記載の油圧回路構造。
【請求項9】
前記油圧ポンプ/モータは、前記油圧ポンプ/モータが前記油圧アキュムレータからの油圧流体によって駆動される場合に、前記原動機を起動させてもよいことを特徴とする請求項8に記載の油圧回路構造。
【請求項10】
前記回路セレクタは、1つのバルブを含むことを特徴とする請求項1に記載の油圧回路構造。
【請求項11】
前記回路セレクタは、複数のバルブを含むことを特徴とする請求項1に記載の油圧回路構造。
【請求項12】
前記油圧推進回路から前記油圧アキュムレータを選択的に遮断する遮断バルブをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の油圧回路構造。
【請求項13】
前記油圧推進回路に流体連通する油圧ステアリング回路をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の油圧回路構造。
【請求項14】
前記移動型作業車はフォークリフトであり、前記原動機は、前記駆動油圧ポンプに機械連結された燃焼機関であり、前記油圧作業回路は、前記少なくとも1つのアクチュエータに油圧連通され、かつ、前記少なくとも1つのアクチュエータは、前記フォークリフトのフォークをリフトするための第1油圧シリンダ,前記フォークをチルトするための第2油圧シリンダ,及び,前記フォークを横方向に移動させるための第3油圧シリンダを含むことを特徴とする請求項1に記載の油圧回路構造。
【請求項15】
前記第1油圧シリンダはメインステージシリンダであり、前記少なくとも1つのアクチュエータは、さらに、セカンドステージの複数の油圧シリンダを含み、前記セカンドステ
ージの複数の油圧シリンダは、前記フォークリフトの前記フォークをリフトするための、少なくとも1つのセカンドステージシリンダを含むことを特徴とする請求項14に記載の油圧回路構造。
【請求項16】
前記油圧推進回路の最大作動圧力は、前記油圧アキュムレータの作動圧力より高いことを特徴とする請求項12に記載の油圧回路構造。
【請求項17】
前記油圧推進回路の最大作動圧力は、前記油圧アキュムレータの定格圧力より高いことを特徴とする請求項12に記載の油圧回路構造。
【請求項18】
前記駆動油圧ポンプは、単に前記油圧回路構造の駆動油圧ポンプであることを特徴とする請求項1に記載の油圧回路構造。
【請求項19】
前記駆動油圧ポンプは、チャージポンプを含むことを特徴とする請求項18に記載の油圧回路構造。
【請求項20】
移動型作業車用の油圧回路構造であって、
少なくとも1つのアクチュエータに接続されるように適合され、前記移動型作業車の作業用部品を駆動する油圧作業回路と、
前記移動型作業車のドライブトレーンに接続されるように適合される推進油圧モータ,及び,油圧アキュムレータを含んだ油圧推進回路と、
前記油圧作業回路と前記油圧推進回路との間を選択的に流体連通するクロスオーバ油圧流路と、
を含み、
前記油圧回路構造は、前記油圧作業回路が前記油圧推進回路から油圧遮断される少なくとも第1モードで動作可能であり、前記油圧作業回路が原動機によって駆動され、前記推進油圧モータが前記油圧アキュムレータによって駆動され、
前記クロスオーバ油圧流路は、前記油圧推進回路の前記油圧アキュムレータから前記油圧作業回路へエネルギを伝達する手段をもたらすように構成されることを特徴とする油圧回路構造。
【請求項21】
原動機によって駆動されるように適合された単一の油圧ポンプをさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の油圧回路構造。
【請求項22】
移動型作業車用の油圧回路構造であって、
少なくとも1つのアクチュエータに接続されるように適合され、前記移動型作業車の作業用部品を駆動する油圧作業回路と、
前記移動型作業車のドライブトレーンに接続されるように適合される推進油圧モータ,及び,油圧アキュムレータを含んだ油圧推進回路と、
原動機によって駆動されるように適合される駆動油圧ポンプと、
前記原動機によって駆動されるように適合された作業回路油圧ポンプと、
前記原動機と前記駆動油圧ポンプとの間に作動連結されるクラッチとを含み、
前記油圧回路構造は、前記油圧作業回路が前記油圧推進回路から油圧遮断される少なくとも1つのモードで動作可能であり、
前記油圧回路構造は、前記油圧推進回路の前記油圧アキュムレータから前記油圧作業回路へエネルギを伝達する手段を含み、
前記油圧推進回路の前記油圧アキュムレータから前記油圧作業回路へエネルギを伝達する前記手段は、前記駆動油圧ポンプから前記作業回路油圧ポンプへ動力伝達する軸動力を含み、
前記軸動力が前記駆動油圧ポンプから前記作業回路油圧ポンプへ動力伝達する場合、前記クラッチは、前記駆動油圧ポンプから前記原動機を切り離すことができることを特徴とする油圧回路構造。
【請求項23】
クロスオーババルブが、前記クロスオーバ油圧流路を開閉するように設けられることを特徴とする請求項20に記載の油圧回路構造。
【請求項24】
前記油圧推進回路の前記油圧アキュムレータから前記油圧作業回路へエネルギを伝達する前記手段は、前記クロスオーバ油圧流路を開通させることを含むことを特徴とする請求項23に記載の油圧回路構造。
【請求項25】
前記駆動油圧ポンプは、単に前記油圧回路構造の駆動油圧ポンプであることを特徴とする請求項22に記載の油圧回路構造。
【請求項26】
前記駆動油圧ポンプは、チャージポンプを含むことを特徴とする請求項25に記載の油
圧回路構造。
【請求項27】
移動型作業車用の油圧回路構造であって、
原動機に回転シャフトを選択的に接続させるクラッチと、
少なくとも1つのアクチュエータに接続されるように適合され、前記移動型作業車の作業用部品を駆動し、前記回転シャフトに取り付けられた第1回転部材によって油圧駆動される作業回路と、
前記作業回路に流体連通しない油圧推進回路と、
を含み、
前記油圧推進回路は、前記移動型作業車のドライブトレーンに接続されるように適合される推進油圧モータを含み、前記油圧推進回路は、さらに、油圧アキュムレータを含み、かつ、前記油圧推進回路は、前記回転シャフトに取り付けられた第2回転部材によって油圧駆動され、前記第2回転部材は、ポンプ/モータであり、
前記第2回転部材をモータとして動作させることにより、前記油圧アキュムレータからのエネルギは、前記回転シャフトを介して前記第1回転部材へ伝達され、前記作業回路を油圧駆動することができ、
前記クラッチは、前記アキュムレータからのエネルギが前記回転シャフトを介して前記第1回転部材へ伝達された場合に、前記原動機から前記回転シャフトを選択的に切り離すことを特徴とする油圧回路構造。
【請求項28】
前記駆動油圧ポンプは、少なくとも前記油圧作業回路と前記油圧推進回路を駆動するように適合された前記油圧回路構造における単一の油圧ポンプであることを特徴とする請求項1に記載の油圧回路構造。
【請求項29】
前記単一の油圧ポンプは、チャージポンプを含むことを特徴とする請求項28に記載の油圧回路構造。
【請求項30】
前記油圧作業回路が前記油圧推進回路から油圧エネルギを受け取る第2モードをさらに含むことを特徴とする請求項20に記載の油圧回路構造。
【請求項31】
前記単一の油圧ポンプは、チャージポンプを含むことを特徴とする請求項21に記載の油圧回路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、PCT国際特許出願として、2013年1月9日に出願されており、かつ、2012年1月9日に出願された米国特許出願第61/584,650号,及び,2012年1月9日に出願された米国特許出願第61/584,630号に対する優先権を主張し、その開示内容はその全体を参照として本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
パレット,ダート,及び/または瓦礫等の資材を移送するために、作業機が用いられる。作業機の例としては、フォークリフト,ホイールローダ,トラックローダ,掘削機,バックホウ,ブルドーザ,テレハンドラ等を含む。これらの作業機は、概して、作業機に接続された作業器具(例えばフォーク)を含む。作業機に取り付けられた作業器具は、概して、油圧システムによって駆動される。油圧システムは、ディーゼルエンジンのような原動機によって駆動される油圧ポンプを含む。油圧ポンプは、一連の複数のバルブによって油圧アクチュエータに接続され、油圧アクチュエータへ流れる加圧油圧流体の流量を制御する。加圧油圧流体は、油圧アクチュエータを伸縮または回転させ、それ故に、作業器具が作動する。
【0003】
作業機は、さらに、作業機を推進させるために適用される推進システムを含んでもよい。推進システムは、原動機によって駆動される油圧ポンプを含んでもよい。推進システムは、さらに、静圧駆動系統を含んでもよい。
【発明の概要】
【0004】
本開示における1つの態様は、移動型作業車用の油圧回路構造に関するものである。この油圧回路構造は、駆動油圧ポンプ,油圧作業回路,油圧推進回路,及び,回路セレクタを含む。油圧回路構造は、駆動油圧ポンプとして単一のポンプを含むように適合されることができ、これにより、複数のポンプを購入し、メンテナンスするコストを回避する利益,及び,油圧作業機の設置面積と重量を節約する利益を提供する。
駆動油圧ポンプは、原動機によって駆動されるように適合され、また、高圧力側と低圧力側を有する。油圧作業回路は、少なくとも1つのアクチュエータに接続されるように適合され、移動型作業車の作業用部品を駆動する。油圧推進回路は、推進油圧モータを含み、推進油圧モータは、移動型作業車のドライブトレーンに接続されるように適合される。油圧推進回路は、さらに、油圧アキュムレータを含む。回路セレクタは、油圧作業回路と油圧推進回路に、駆動油圧ポンプの高圧力側を選択的に接続する。油圧回路構造は、第1モード及び第2モードで動作可能である。第1モードにおいて、油圧推進回路は、駆動油圧ポンプの高圧力側に接続され、かつ、油圧作業回路は、駆動油圧ポンプの高圧力側から遮断される。第2モードにおいて、油圧作業回路は、駆動油圧ポンプの高圧力側に接続され、かつ、油圧推進回路は、駆動油圧ポンプの高圧力側から遮断される。油圧回路構造が第2モードである場合、油圧アキュムレータに貯蔵されているエネルギが用いられ、推進油圧モータを駆動し、移動型作業車を推進させることができる。
【0005】
油圧回路構造は、油圧作業回路が油圧推進回路から油圧遮断される少なくとも1つのモードで動作可能であり、また、油圧アキュムレータから油圧作業回路へエネルギを伝達する手段が提供される。
【0006】
様々な追加の態様が、後に続く記載において説明される。これらの態様は、個別の特徴及びこれらの特徴の組み合わせを有することが可能である。前述の発明の概要と後述の発明を実施するための形態の両方が、例示的かつ説明的なものでしかなく、本発明において開示される実施形態に基づく広範囲のコンセプトを制限しようとするものではないことが、理解される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
非限定的かつ非包括的実施形態が、必ずしも縮尺通りに描写されていない後述の複数の図と関連して記載され、特記されない限り、いくつかの図を通して同一の参照番号は同一の部品を示している。
【0008】
図1図1は、本開示における原理に従った実施例としての特徴を有する油圧システムの回路図である。
図2図2は、図1の油圧システムの制御システムをさらに示している回路図である。
図3図3は、図1の油圧システムの第1モードをさらに示している回路図である。
図4図4は、図1の油圧システムの第2モードをさらに示している回路図である。
図5図5は、図1の油圧システムの第3モードをさらに示している回路図である。
図6図6は、図1の油圧システムの第4モードをさらに示している回路図である。
図7図7は、図1の油圧システムの第5モードをさらに示している回路図である。
図8図8は、本開示における原理に従った実施例としての特徴を有する別の油圧システムの回路図である。
図9図9は、本開示における原理に従った図1または図8の油圧システムを含んだ作業車の概略上面図である。
図10図10は、本開示における原理に従った実施例としての特徴を有するさらなる別の油圧システムの回路図である。
図11図11は、図1の油圧システムにより使用可能な作業回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
様々な実施形態が図面を参照して詳細に記載され、いくつかの図を通して同一の参照番号は、同一の部品及びアセンブリを示している。様々な実施形態への言及は、添付の請求の範囲を限定しない。さらに、本明細書に記載されている如何なる例も、添付の請求の範囲に対して考えられる一部の実施形態に限定することを意図せず、この一部の実施形態をただ単に説明しているにすぎない。
【0010】
本開示は、概して、作業車に用いる油圧回路構成に関するものである。本開示の原理に従った油圧回路構成は、推進回路,及び,作業回路を含むことができる。特定の実施形態において、この推進回路と作業回路は、同一の油圧ポンプ構造(例えば、油圧ポンプまたは油圧ポンプ/モータ)により、駆動される。特定の実施形態において、この油圧ポンプ構造は、単一の駆動ポンプ(例えば、1つのポンプのみ,1つのポンピング回転部材のみ,1つのポンプ/モータのみ,等)を含む。特定の実施形態において、推進回路は、油圧アキュムレータ,及び,油圧駆動ポンプ/モータを含み、ドライブトレーンを介して動力伝達される作業車の推進部品(例えば、ホイール,無限軌道等)を駆動することができる。
【0011】
作業回路は、様々なアクチュエータを含み、リフト,クランプ,ブーム,バケット,カッター,及び/または他の構造のような作業部品に動力供給することができる。この様々なアクチュエータは、油圧シリンダ,油圧モータ等を含んでもよい。望ましい実施形態においては、本開示における油圧構造が、フォークリフト50(図9参照)に用いられ、推進回路が、フォークリフト50の駆動輪54に連結されたドライブトレーン114を駆動し、また、作業回路が、バルブとアクチュエータ(例えば油圧シリンダ)を含み、フォークリフト50のフォーク52を昇降させ,フォーク52を前後に傾斜させ,かつ,フォーク52を左右に移動させる。
【0012】
特定の実施形態においては、推進回路においてアキュムレータが用いられ、多くの機能と利益を提供する。例えば、油圧アキュムレータを備えることは、推進回路に動力供給する油圧ポンプ/モータ,及び,原動機が、常に最大効率または最大効率に近い効率で動作することを可能にする。さらに、油圧アキュムレータに蓄積されたエネルギは、油圧ポンプ/モータを駆動するために用いられる動力源(例えば、原動機,ディーゼルエンジン,または他のエンジン)を起動するための動力として、用いられる。
【0013】
さらに、油圧ポンプ/モータに連結された動力源が作動していないときでさえ、油圧アキュムレータが用いられ、推進機能を提供する。同様に、油圧ポンプ/モータに連結された動力源が作動していないときでさえ、油圧アキュムレータが用いられ、作業回路機能を提供する。その上、ブレーキ/減速現象の間にモータとして推進油圧ポンプ/モータを動作させることにより、作業車の減速に相当するエネルギは、後で再利用するために、油圧アキュムレータにフィードバックされて保存され、作業車の全体効率を高める。
【0014】
特定の実施形態において、1つ(つまり、単一)の油圧ポンプ/モータ(例えば、図1に示されている油圧ポンプ/モータ102)が用いられ、推進回路と作業回路の両方を駆動する。このような実施形態において、回路セレクタ(つまり、モードセレクタ)が提供され、推進回路か作業回路のどちらかに、油圧ポンプ/モータの高圧側を選択的に流体接続する。この回路セレクタは、1つ以上のバルブを含む。その上、クロスオーババルブが提供され、推進回路と作業回路との間の流体連通を選択的に提供する。クロスオーババルブを開放することにより、油圧アキュムレータからの動力が用いられ、作業回路の1つ以上のアクチュエータを駆動し、これにより、動力源がオフのときでさえ、作業回路のアクチュエータの駆動を可能にする。
【0015】
回路セレクタが、推進回路にポンプ/モータを流体接続し、作業車を推進させる場合、作業回路の様々な構成要素が、クロスオーババルブを開放することによって駆動される。その上、回路セレクタが、作業回路にポンプ/モータを流体接続している場合、油圧アキュムレータが用いられ、作業車の推進及びステアリングを提供する。当然のことながら、ステアリング要素は、好ましくは、油圧推進回路に組み込まれている。動力源がオフの場合、油圧アキュムレータが用いられ、油圧アキュムレータが、ステアリング要素,推進要素,及び/または作業回路の様々な構成要素に動力供給する。当然のことながら、このような動作は、単独または同時に導かれる。クロスオーババルブは、可変サイズのオリフィスを提供することができる。
【0016】
特定の実施形態において、動力源に連結された油圧ポンプ/モータは、回転部材及び斜板を有する開回路のポンプ/モータであり、この斜板は調整可能であり、動力源によって駆動されるポンプ/モータのシャフトの1回転当たりの、ポンプ/モータの油圧流体の吐出量を制御する。特定の実施形態において、斜板は、オーバーセンターの構造を有する。ポンプ/モータが、ポンプとして動作しているとき、斜板は、中心から第1側にあり、動力源は、第1方向にポンプ/モータのシャフトを回転させ、油圧流体は、ポンプ/モータによってリザーバ/タンクに流体連通する低圧力側から、回路セレクタに流体連通する高圧力側へくみ上げられる。
【0017】
ポンプ/モータが、モータとして動作しているとき、斜板は、中心から第2側に移動し、油圧アキュムレータからの油圧流体が、ポンプ/モータによって高圧力側から低圧力側へ方向づけられ、これにより、ポンプ/モータのシャフトが動力源によって駆動されるときに回転するのと同じ方向に、ポンプ/モータのシャフトを回転させる。このように、油圧アキュムレータからの油圧エネルギが用いられ、動力源を使用することを含んだ複数のモードを起動することができる。
【0018】
さらに、推進用ポンプ/モータは、リザーバ/タンクに接続された低圧力側と、回路セレクタによって動力源に連結された油圧ポンプ/モータに接続された高圧力側とを有する開回路のポンプ/モータである。推進用ポンプ/モータは、回転部材と斜板を含み、斜板は調整可能であり、推進用ポンプ/モータのシャフトの1回転当たりの推進用ポンプ/モータの吐出量を制御することができる。斜板は、オーバーセンターの斜板であり、推進用ポンプ/モータのシャフトの双方向回転を許容する。例えば、斜板が中心から第1側にあるとき、ポンプ/モータを通過して高圧力側から低圧力側へ流れる油圧流体が、時計回りの方向にシャフトを駆動させる。それに対して、斜板が中心から第2側にあるとき、推進用ポンプ/モータを通過して高圧力側から低圧力側への方向に流れる油圧流体が、反時計回りの方向にシャフトを回転させる。
【0019】
このようにして、推進用ポンプ/モータは用いられ、作業車を前後方向に駆動する。さらに、ブレーキ現象の間、推進用ポンプ/モータは、ポンプとして機能し、リザーバから油圧アキュムレータへ油圧流体を方向付け、油圧アキュムレータをチャージすることができ、これにより、減速に伴うエネルギを回収する。従って、推進用ポンプ/モータ,及び,油圧アキュムレータは、ブレーキ/減速とエネルギ貯蔵機能を提供する。
【0020】
当然のことながら、他の実施形態(例えば、図8に示されている実施形態)において、非オーバーセンターポンプ/モータと組み合わせて、バルブを操作して、上述したオーバーセンターポンプ/モータと同様または類似した機能を提供することができる。非オーバーセンターポンプ/モータ,及び,バルブは、図8に示されているように動力源に連結された油圧ポンプ/モータとして、用いられることが可能であり、かつ/または、ドライブトレーンに連結された比例油圧ポンプ/モータとして用いられることが可能である。
【0021】
本開示における原理に従って、図1〜7に示されているような油圧システム100(つまり、油圧回路構造)が適用されて、作業機50(つまり、作業車,移動作業車,フォークリフト,リフトトラック,フォークトラック,ホイールローダ,掘取機,掘削機,バックホウローダ等)のドライブトレーン114を駆動する。この油圧システム100がさらに適用されて、作業機50の作業回路300を駆動する。油圧システム100が適用されて、作業機50のステアリング制御ユニット600(例えば、油圧ステアリング回路)を駆動してもよい。
【0022】
図9に示されているように、作業機50は、作業用アタッチメント52(例えば、フォーク,作業用部品等),少なくとも1つの駆動輪54,及び,少なくとも1つの操舵輪56を含む。特定の実施形態において、1つ以上の駆動輪54は、1つ以上の操舵輪56と組み合わされてもよい。特定の実施形態において、作業機50は、単一の駆動油圧ポンプのみを含んでもよい。
【0023】
油圧システム100が適用されて、油圧アキュムレータ116においてエネルギを回収・保存し、そのエネルギを再利用する。例えば、作業機50が減速したとき、ドライブトレーン114は、油圧システム100に運動エネルギを供給することができ、これにより、油圧アキュムレータ116にその運動エネルギを保存することができる。油圧システム100は、さらに、適用されて、油圧アキュムレータ116内に保存されたエネルギを用いて、作業機50の原動機104(例えば、内燃機関)を迅速に起動する。油圧システム100が適用されて、油圧アキュムレータ116から油圧動力を引き出すことによって動作している原動機104を用いずに、ドライブトレーン114,作業回路300,及び/または,ステアリング制御ユニット600を駆動してもよい。
【0024】
特定の実施形態において、原動機104は、単一の油圧ポンプのみを駆動する。特定の実施形態において、原動機104は、単一の油圧ポンプのみを駆動し、ドライブトレーン114及び作業回路300を駆動する。特定の実施形態において、原動機104は、単一の油圧ポンプのみを駆動し、少なくともドライブトレーン114及び作業回路300を駆動する。特定の実施形態において、原動機104は、単一の油圧ポンプのみを駆動し、ドライブトレーン114,作業回路300,及び,ステアリング制御ユニット600を駆動する。特定の実施形態において、原動機104は、単一の油圧ポンプのみを駆動し、ドライブトレーン114,作業回路300,及び,ステアリング制御ユニット600を少なくとも駆動する。
【0025】
油圧システム100は、(例えば、運転者によって)作業機50にセットされる要求に応じて、様々なモードで作動する。制御システム500は、作業機50のオペレータインタフェース506を監視し、さらに、油圧システム100の様々なセンサ510及び動作パラメータを監視する。図2に示されているように、信号線508が、制御システム500との通信を容易にする。制御システム500は、オペレータインタフェース506から受信する入力を評価する。
【0026】
特定の実施形態において、電子制御ユニット502は、油圧システム100の様々なセンサ510及び動作パラメータを監視し、油圧システム100を最も適切なモードに構成する。このモードは、図3に示されているような作業回路主要モード82,図4及び5に示されているようなハイブリッド駆動モード84,及び,図6及び7に示されているような静圧モード86を含む。電子制御ユニット502は、オペレータインタフェース506,原動機104,及び環境条件(例えば、周囲の温度)を監視することができる。メモリ504(例えば、RAMメモリ)が、電子制御ユニット502に用いられてもよく、このメモリ504は、実行コード,動作パラメータ,オペレータインタフェース506からの入力等を保存する。
【0027】
作業回路主要モード82(図3参照)において、原動機104からの動力が、油圧システム100により作業回路300に直接供給され、また、油圧アキュムレータ116からの動力が、油圧システム100によりドライブトレーン114に供給される。特定の実施形態において、ステアリング制御ユニット600用の動力が、作業回路主要モード82において油圧アキュムレータ116から、さらに取り出される。
【0028】
ドライブトレーン114からの動力要求が、低い,比較的低い,かつ/若しくは,低いと予測される場合、かつ/または、作業回路300からの動力要求,及び/または,油圧流体要求が、高い,比較的高い,かつ/若しくは,高いと予測される場合、作業回路主要モード82が選択される。このような条件は、例えば、作業機50が遅く移動しているか,または,静止しており、かつ、作業用アタッチメント52が広範囲,かつ/または,高負荷で用いられる場合に起き得る。作業回路主要モード82において、ステアリング制御ユニット600は、油圧アキュムレータ116から動力を受け取ることができる。
【0029】
ドライブトレーン114からの動力要求が作業回路300の動力要求より優先される場合、ハイブリッド駆動モード84(図4及び5)が用いられる。このハイブリッド駆動モード84は、さらに、作業機50の減速からエネルギを再度獲得することが望ましい場合においても、用いられる。ハイブリッド駆動モード84は、さらに、原動機104を全く作動させずに,または,常時作動させずに作業機50に動力供給するために用いられてもよい。
【0030】
例えば、ハイブリッド駆動モード84は、アキュムレータ116内に十分な圧力が存在すれば、原動機104を停止させることを可能にする。油圧アキュムレータ116の枯渇にあたる低圧に対して、ハイブリッド駆動モード84は、原動機104を再起動し、これより、油圧アキュムレータ116を再びチャージし、さらに、原動機104から作業機50へ動力を供給する。ハイブリッド駆動モード84において、ステアリング制御ユニット600は、油圧アキュムレータ116,及び/または,原動機104から動力を受け取ることができる。
【0031】
ドライブトレーン114の動力要求が高い,比較的高い,かつ/または,高いと予測される場合、静圧モード86(図6及び7参照)が用いられる。例えば、作業機50が高速で運転される場合,作業機50が斜面を上がる場合,かつ/または,ドライブトレーン114に高負荷がかかる場合である。ドライブトレーン114の動力要求が、油圧アキュムレータ116内の圧力を必要とするほど十分高く、油圧アキュムレータ116の定格圧力,及び/または,作動圧力を超えている場合、静圧モード86が用いられる。
【0032】
単独で用いられるモード(例えば、静圧モード86)と、油圧アキュムレータ116が接続されるモード(例えば、ハイブリッド駆動モード84)との間で、油圧アキュムレータ116が切り替えられるため、油圧システム100の油圧アキュムレータ116の定格圧力,及び/または,作動圧力を、それに応じて下げることができる。静圧モード86において、ステアリング制御ユニット600は、原動機104から動力を受け取ることができる。
【0033】
制御システム500は、作業回路主要モード82,ハイブリッド駆動モード84,及び/または,静圧モード86間を迅速に切り替えて、油圧システム100を作業機50の要求に対して継続的に調整することができる。
【0034】
ここで図1を参照すると、油圧システム100が回路図として示されている。この油圧システム100は、ポンプ/モータ102に接続される原動機104によって駆動される。特定の実施形態において、ポンプ/モータ102は、ポンプに取って代わってもよい。図に示されているように、油圧システム100は、油圧ポンプ/モータ102が単一のポンプ/モータ(または単一のポンプ)となり、ドライブトレーン114,作業回路300,及び/または,ステアリング制御ユニット600を駆動することを可能にする。
【0035】
単一のポンプ/モータ(または単一のポンプ)を備えた油圧システム100を構成することにより、油圧システム100のコストが軽減され、油圧システム100の重量が軽減され、追加部品への寄生損失が軽減されることよって油圧システム100の効率が向上し、かつ/または、油圧システム100のパッケージサイズが減少する。
【0036】
図に示されているように、油圧ポンプ/モータ102及び原動機104は、エンジンポンプアセンブリ106にアセンブリされている。特定の実施形態において、原動機104は、単一の回転方向(例えば、時計回りの方向)で回転するため、油圧ポンプ/モータ102も、さらに、原動機104のその単一の回転方向で回転することができる。動力は、シャフトにより油圧ポンプ/モータ102と原動機104との間で伝達される(例えば、油圧ポンプ/モータ102の入力/出力シャフトが、原動機104のクランクシャフトに接続されている)。
【0037】
油圧ポンプ/モータ102が、油圧アキュムレータ116,ドライブトレーン114,作業回路300,及び/または,ステアリング制御ユニット600へ油圧動力を供給する場合、この動力は、概して、原動機104から油圧ポンプ/モータ102へ伝達される。油圧ポンプ/モータ102が、エンジンブレーキ等の間において原動機104を起動する場合、この動力は、油圧ポンプ/モータ102から原動機104へ伝達される。
【0038】
油圧ポンプ/モータ102は、可変容量形ポンプ/モータであってもよい。油圧ポンプ/モータ102は、オーバーセンターポンプ/モータであってもよい。油圧ポンプ/モータ102は、タンク118から低圧力通路440を経由して油圧流体を受け取る入口102l(つまり低圧側)を含み、かつ、油圧ポンプ/モータ102は、油圧ポンプ/モータ102の高圧力通路400に接続された出口102h(つまり高圧側)を含む。原動機104が油圧ポンプ/モータ102に動力を供給する場合、油圧流体は、タンク118からくみ上げられ、油圧ポンプ/モータ102の入口102lに引き入れられ、油圧ポンプ/モータ102の出口102hから高圧で放出される。
【0039】
特定の実施形態において、動力は、油圧ポンプ/モータ102から原動機104へ供給されてもよく、この場合、油圧ポンプ/モータ102の斜板が中央部を越えて位置し、高圧力通路400からの高圧油圧流体が油圧ポンプ/モータ102によって逆方向に送られ、低圧力通路440そしてタンク118に放出される。あるいは、図8に示されているように、油圧システム100’の逆転バルブ103が用いられ、油圧ポンプ/モータ102と同様の油圧ポンプ/モータ102’によって原動機104を逆駆動してもよい。
【0040】
流れ制御装置202(例えば、リリーフバルブ)が、高圧力通路400に接続されて備えられている。高圧力通路400内の油圧流体圧力が所定の上限に到達すると、流れ制御装置202は開放され、タンク118に油圧流体の一部を放出し、これにより、高圧力通路400が超過圧力条件に達することを防止する。
【0041】
流れ制御装置206が、高圧力通路400と作業回路300の高圧力通路406との間に接続されている。図に示されている実施形態における流れ制御バルブ206は、作業回路バルブである。
【0042】
流れ制御装置208が、高圧力通路400と高圧力通路402との間に接続されている。図に示されているように、高圧力通路402は、ポンプ/モータ108の入口108h(つまり、高圧側)に接続されている。流れ制御装置208は、遮断バルブであってもよい。特定の実施形態において、流れ制御装置206及び流れ制御装置208は、組み合わせて単一の三方バルブ207にしてもよい(図8参照)。
【0043】
高圧力通路402は、流れ制御装置210によって油圧アキュムレータ116に接続されている。図に示されている実施形態において、流れ制御装置210は、油圧アキュムレータ116用の遮断バルブである。図に示されている実施形態において、流れ制御装置210及び油圧アキュムレータ116は、アキュムレータ通路404によって接続される。
【0044】
高圧力通路402は、さらに、流れ制御装置212,及び,もう1つの流れ制御装置224によって、高圧力通路406に接続されている。図に示されている実施形態において、流れ制御装置212は、Valvistor(登録商標)比例流れ制御装置であり、また、流れ制御装置224はチェックバルブであり、油圧流体が高圧力通路406から高圧力通路402へ流入することを防止する。図に示されている実施形態において、流れ制御装置212及び224は、高圧力通路402と高圧力通路406を接続するクロスオーバ流路408に順次接続されている。他の実施形態において、単一の流れ制御装置が、クロスオーバ流路408内に用いられてもよい。
【0045】
作業機50の推進システムの特定の様態をここで説明する。この推進システムは、ポンプ/モータ108を含み、出力シャフト110によりドライブトレーン114へ動力を伝達し、また、ドライブトレーン114から動力を受け取る。特に、出力シャフト110は、ギアボックス112に接続されている。図9に示されているように、ギアボックス112は、一対の駆動輪54に接続されたディファレンシャルを含む。他の実施形態において、油圧ポンプ/モータが、駆動輪54の其々に備えられ、ディファレンシャルが用いられなくてもよい。ドライブトレーン114に動力を送る場合、ポンプ/モータ108は、作業機50を加速させることができ、作業機50に斜面を上がらせることができ、かつ/または、さもなければ、作業機50の全体を移動させることができる。
【0046】
作業機50が減速、かつ/または、斜面を下る場合、ポンプ/モータ108は、ドライブトレーン114からエネルギを受け取ることができる。油圧システム100がハイブリッド駆動モード84または作業回路主要モード82である場合、ポンプ/モータ108は、油圧アキュムレータ116へ油圧エネルギを送ることができる。特に、ポンプ/モータ108は、低圧力通路440を経由してタンク118から油圧流体を受け取ることができ、油圧流体を加圧し、流れ制御装置210とアキュムレータ通路404を経て、その加圧流体を、油圧アキュムレータ116へ送ることができる。
【0047】
ポンプ/モータ108は、油圧アキュムレータ116または油圧ポンプ/モータ102からの油圧動力によって、駆動されてもよい。特に、油圧システム100が作業回路主要モード82である場合、図3に示されているように、ポンプ/モータ108は、油圧アキュムレータ116からの油圧動力を受け取る。油圧システム100がハイブリッド駆動モード84である場合、図4及び5に示されているように、ポンプ/モータ108は、油圧ポンプ/モータ102,油圧アキュムレータ116,または,油圧ポンプ/モータ102と油圧アキュムレータ116の両方からの油圧動力を受け取ることができる。
【0048】
油圧システム100が静圧モード86である場合、図6及び7に示されているように、ポンプ/モータ108は、油圧ポンプ/モータ102からの油圧動力を受け取る。しかしながら、ポンプ/モータ108は、油圧ポンプ/モータ102へ動力を供給してもよく、これにより、原動機104がエンジンブレーキを提供することができる。
【0049】
リリーフバルブ214が、高圧力通路402とタンク118との間に接続されてもよい。ポンプ/モータ制御圧力バルブ220(例えば、減圧バルブ)を手段として、高圧力通路402からのフィードバックが、油圧ポンプ/モータ102に与えられてもよい。特に、フィルタ装置222は、高圧力通路402と、このポンプ/モータ制御圧力バルブ220との間に接続されて、使用される。ポンプ/モータ制御圧力バルブ220は、油圧ポンプ/モータ102へ圧力信号を送信し、これにより、特定の実施形態,及び/または,特定のモードにおいて、油圧ポンプ/モータ102を制御することができる。
【0050】
図に示された実施形態において、ステアリング制御ユニット600は、高圧力通路402から油圧動力を受け取る。特に、中間圧力ステアリング通路420が、ステアリングフィードバルブ218(例えば、流れ制御バルブ),及び,ステアリングフィードバルブ216(例えば、減圧バルブ)を経て、高圧力通路402に接続されている。リターン通路442が、ステアリング制御ユニット600とタンク118との間に接続されている。
【0051】
様々な部品が、マニホールドブロック200に含まれる。例えば、流れ制御装置202,206,208,210,212、リリーフバルブ214、ポンプ/モータ制御圧力バルブ220、装置222、及び/または、流れ制御装置224が、マニホールドブロック200に含まれる。
【0052】
ここで図2を参照すると、制御システム500の回路図が、油圧システム100の回路図と共に示されている。図に示されているように、油圧システム100は、油圧システム100の状態を示している複数のセンサを監視する。制御システム500は、さらに、オペレータインタフェース506を監視し、これにより、オペレータが油圧システム100を統制することを可能にし、その結果、作業機50を統制する。制御システム500の電子制御ユニット502は、様々なモードにおける油圧システム100を構成するための計算を行うことができ、これにより、最適なモードを決定し、所与の作業条件,及び,所与のオペレータ入力に対する最適なモードを選択する。
【0053】
特定の条件下において、油圧システム100のモードが選択され、作業機50の燃料効率を最大化する。他の条件における油圧システム100のモードは、油圧システム100の性能、つまり作業機50の性能を最大限にするように選択される。電子制御ユニット502は、作業機50が繰り返し行う作業サイクルを学習してもよい。作業サイクルを学習することにより、電子制御ユニット502は、作業サイクルに対する効率を最大化することができ、また、作業機50が作業サイクル内にあるときを識別することができる。電子制御ユニット502は、作業機50が行っている作業サイクルに応じて、其々モードを切り替えることができる。
【0054】
作業サイクルにわたってモードを切り替えることにより、油圧システム100の様々なパラメータが、効率または性能のうえで最適化される。例えば、油圧アキュムレータ116の圧力チャージ,油圧ポンプ/モータ102及び/またはポンプ/モータ108の斜板の角度,及び/または,原動機104を起動停止させるタイミングが、作業機50の作業サイクルに基づいて決定される。制御システム500は、従来型の作業機をエミュレートしてもよく、作業機50は、オペレータに対してまるで従来型の作業機のように動作する。
【0055】
ここで図3を参照すると、作業回路主要モード82が示されている。作業回路主要モード82は、作業用アタッチメント52が大重量用,支持用,及び/または,油圧流体の体積流量が多く必要とされる場合に、制御システム500によって選択される。作業機50のドライブトレーン114は、作業回路主要モード82で操作可能である。特に、油圧アキュムレータ116は、ポンプ/モータ108に動力を供給し、また、ポンプ/モータ108から動力を受け取ることができる。
【0056】
油圧アキュムレータ116が所与のレベルまで枯渇すると、制御システム500は、ハイブリッド駆動モード84に油圧システム100を迅速に切り替え、油圧アキュムレータ116を再チャージすることができる。油圧アキュムレータ116が所与の圧力レベルまで再チャージされると、制御システム500は、作業回路主要モード82に油圧システム100を戻す。
【0057】
ここで図4を参照すると、ハイブリッド駆動モード84が示されている。特に、ハイブリッドモード84aが示されている。このハイブリッドモード84aは、油圧ポンプ/モータ102と,油圧アキュムレータ116と,ポンプ/モータ108との間でエネルギを交換することを可能にする。特に、油圧ポンプ/モータ102は、油圧アキュムレータ116を再チャージするために、油圧アキュムレータ116に油圧動力を供給してもよい。油圧ポンプ/モータ102は、ポンプ/モータ108に、単独、または、油圧アキュムレータ116と同時に動力を提供し、作業機50を推進させてもよい。
【0058】
油圧アキュムレータ116は、原動機104を起動させるために、油圧ポンプ/モータ102に動力を供給してもよい。単独、または、油圧ポンプ/モータ102と同時に、油圧アキュムレータ116が、ポンプ/モータ108に動力を供給し、作業機50を推進させてもよい。ポンプ/モータ108が、油圧アキュムレータ116に油圧流体動力を供給し、これにより、油圧アキュムレータ116をチャージしてもよい。単独、または、アキュムレータ116と同時に、ポンプ/モータ108が、油圧ポンプ/モータ102に動力を供給してもよい。
【0059】
油圧ポンプ/モータ102への動力供給は、原動機104を起動するため,かつ/または,(例えば、油圧アキュムレータ116が満杯であるときに)エンジンブレーキを提供するために、行われる。油圧システム100がハイブリッドモード84aにある場合、作業回路300は、油圧流体動力から切り離される。この場合、作業回路300からの油圧動力要求がない。
【0060】
ここで図5を参照すると、ハイブリッド駆動モード84が再度示されている。特に、ここではハイブリッドモード84bが示されている。このハイブリッドモード84bは、クロスオーバ流路408が開通し、高圧力通路402からの油圧流体動力が、作業回路300に供給されることを許容する以外、ハイブリッドモード84aと同様である。ハイブリッドモード84bにおいて、油圧ポンプ/モータ102,油圧アキュムレータ116,及び/または,ポンプ/モータ108が、作業回路300に油圧動力を供給する。
【0061】
ハイブリッド駆動モード84は、作業機50が並の作業負荷を受けている場合,及び/または,油圧システム100の高効率、及び/若しくは、ドライブトレーン114からのエネルギ回収が望まれている場合に、用いられるのが好ましい。
【0062】
ここで図6を参照すると、静圧モード86が示されている。特に、ここでは静圧モード86aが示されている。静圧モード86aは、作業機50のドライブトレーン114が高負荷にある場合に、用いられる。例えば、作業機50が高トルク/パワーで駆動される場合,及び/または,作業機50が斜面を上がる場合である。油圧システム100が静圧モード86aで動作している場合、高圧力通路400及び高圧力通路402内の油圧は、作業圧力,及び/または,油圧アキュムレータ116の定格圧力を超える。ハイブリッド駆動モード84と静圧モード86との間を切り替えることにより、油圧システム100は、タスクを実行し、油圧アキュムレータ116を高圧力にさらすことなく、高圧力通路402内が高圧力になることをもたらす。
【0063】
従って、このハイブリッド駆動モード84の利益は、アキュムレータ116が、油圧ポンプ/モータ102の最大圧力定格に釣り合うような圧力定格を有することを必要とせずに、享受される。流れ制御装置210を用いてアキュムレータ116をバイパスする(例えば、遮断する)ことにより、油圧システム100は、アキュムレータ116が所望の作業圧力まで加圧されることを待つ必要がない。油圧システム100が静圧モード86aである場合、作業回路300は、油圧流体動力から切り離される。この場合、作業回路300からの油圧動力要求がない。
【0064】
ここで図7を参照すると、静圧モード86がさらに示されている。ここでは特に、静圧モード86bが示されている。この静圧モード86bは、クロスオーバ流路408が開通し、高圧力通路402からの油圧流体動力が、作業回路300に供給されることを許容する以外、静圧モード86aと同様である。静圧モード86bにおいては、油圧ポンプ/モータ102,及び/または,ポンプ/モータ108が、作業回路300に油圧動力を供給する。
【0065】
ここで図8を参照すると、本開示の原理に従った第2実施形態を形成するシステムが示されている。このシステムは、上述した油圧システム100’を含む。概念と特徴の多くは、図1〜7に示されている第1実施形態と同様であり、ここで、第1実施形態における記載が、第2実施形態に対する記載として組み込まれる。同様または類似した特徴または要素が表れている場合には、同一の参照番号が、可能な限り用いられている。第2実施形態に対する以下の記載は、主として、第1実施形態と第2実施形態との間の違いに限定している。
【0066】
油圧システム100’において、油圧システム100の流れ制御装置206及び208は、単一の三方バルブ207に置き替えられている。さらに、油圧システム100の流れ制御装置212及び224は、オンオフ電気制御バルブ212’及び定流量弁224’に置き替えられている。このオンオフ電気制御バルブ212’及び定流量弁224’は、さらに、本開示における他の実施形態において代用されることが可能である。同様に、油圧システム100の流れ制御装置212及び224は、この第2実施形態において代用されることが可能である。
【0067】
ここで図9を参照すると、作業機50の配置図が示されている。ここで示されている実施形態において、作業機50は、フォークトラックである。
【0068】
ここで図10を参照すると、本開示の原理における第3実施形態を形成するシステムが、概略的に示されている。このシステムは、油圧システム100’’を含む。油圧システム100と同様に、油圧システム100’’は、作業回路300に動力供給する。しかしながら、油圧システム100’’において、油圧ポンプ107が用いられ、作業回路300に油圧動力を供給する。ここで、油圧ポンプ107は、シャフト109によってポンプ/モータ102’’に接続されている。クラッチ105が、原動機104と油圧ポンプ/モータ102’’との間に動作可能に接続されている。さらに、低圧力アキュムレータ117(例えば、貯蔵アキュムレータ)が含まれ、このアキュムレータ117は、油圧ポンプ/モータ102’’の低圧力側に接続されている。
【0069】
油圧ポンプ/モータ102’’の斜板をゼロの変位角にすることにより、動力が、原動機104からクラッチ105を経由して油圧ポンプ107内に流れることを可能にする。これより、原動機104からの動力が、作業回路300に直接動力供給される。原動機104が作業回路300に直接動力供給している間、油圧アキュムレータ116は、ポンプ/モータ108に動力供給すること,ポンプ/モータ108から動力を受け取ることのいずれも行うことができる。このように、油圧システム100’’は、図3に示されている作業回路主要モード82と同類のモードを有する。
【0070】
油圧アキュムレータ116からの油圧動力は、原動機104を起動するために用いられてもよい。特に、油圧動力は、油圧アキュムレータ116から流れ制御装置210を経由して油圧ポンプ/モータ102’’へ流れる。クラッチ105が油圧ポンプ/モータ102’’に係合されているため、油圧ポンプ/モータ102’’は、原動機104を起動することができる。
【0071】
油圧ポンプ/モータ102’’,油圧アキュムレータ116,ポンプ/モータ108,及び,原動機104は、ハイブリッド駆動モード84と同類のハイブリッド駆動モードで動作することができる。油圧動力が作業回路300から必要とされる場合、油圧ポンプ107は、シャフト109を介して油圧ポンプ/モータ102’’から動力を受け取ることができる。このように、油圧システム100’’は、図5に示されているハイブリッド駆動モード84bと同類のモードをさらに有する。
【0072】
油圧アキュムレータ116は、流れ制御装置210を閉鎖することによって、ポンプ/モータ108から遮断されることが可能である。このようにして、油圧システム100’’は、静圧モード86と同類の静圧モードで動作することもできる。作業回路300が油圧動力を必要とする場合、油圧ポンプ107は、シャフト109を介して油圧ポンプ/モータ102’’から動力を受け取ることができる。
【0073】
ここで図11を参照すると、例示的な作業回路300の詳細な回路図が示されている。作業回路300は、作業機50の作業用アタッチメント52を駆動するためのものである。この実施形態に示されているように、作業回路300は、ポンプポート302を有し、このポンプポート302は、高圧力通路406を経由してポンプ/モータ102に接続されている。作業回路300は、さらに、タンクポート304を有し、このタンクポート304は、(低圧力通路440を経由して)リザーバまたはタンク118に接続されている。
【0074】
作業回路300は、さらに、作業用アタッチメントのリフト機能を可能にする第1バルブ306,作業用アタッチメントのチルト機能を可能にする第2バルブ308,及び,作業用アタッチメントのサイドシフト機能を可能にする第3バルブ310を含む。図11に示されている特定の実施形態において、バルブ306,308,310は、スプール及びスリーブタイプの比例バルブである。
【0075】
第1バルブ306は、ポート302からの加圧流体を、作業用アタッチメント52に機械的に連結されている油圧リフトシリンダ312,314のいずれか,または,双方へ選択的に供給するように配置構成されている。このバルブ306の作動は、リフト機能として作業用アタッチメント52を選択的に昇降させる。リフトシリンダ312,314のリフト速度は、バルブ306を通過する流量で決まる。
【0076】
バルブ306を通過する流量は、バルブ306のスプールの両端部に作用する一対の可変ソレノイドアクチュエータ322,326によって制御される。この可変ソレノイドアクチュエータ322,326は、制御システム500により制御ライン324,328を経由して其々動作することができる。あるいは、特定の実施形態において、バルブ306を通過する流量は、レバーによって制御される。
【0077】
第2バルブ308は、ポート302からの加圧流体を、作業用アタッチメント52に機械的に連結されている油圧チルトシリンダ316,318のいずれか,または,双方へ選択的に供給するように配置構成されている。このバルブ308の作動は、チルト機能として作業用アタッチメント52を選択的に前後にチルトさせる。
【0078】
バルブ308を通過する流量は、バルブ308のスプールの両端部に作用する一対の可変ソレノイドアクチュエータ330,334によって制御される。この可変ソレノイドアクチュエータ330,334は、制御システム500により制御ライン332,336を経由して其々動作することができる。あるいは、特定の実施形態において、バルブ308を通過する流量は、レバーによって制御される。
【0079】
第3バルブ310は、ポート302からの加圧流体を、作業用アタッチメント52に機械的に連結されている油圧サイドシフトシリンダ320へ選択的に供給するように配置構成されている。このバルブ310の作動は、サイドシフト機能として作業用アタッチメント52を選択的に左右に移動させる。
【0080】
バルブ310を通過する流量は、バルブ310のスプールの両端部に作用する一対の可変ソレノイドアクチュエータ338,342によって制御される。この可変ソレノイドアクチュエータ338,342は、制御システム500により制御ライン340,344を経由して其々動作することができる。あるいは、特定の実施形態において、バルブ310を通過する流量は、レバーによって制御される。
【0081】
特定の実施形態において、上述した複数の機能または一連の機能が、単一の駆動ポンプ要素(例えば、単一のポンプ,単一のポンプ/モータ,単一のポンピング回転部材等)によって、実現される。ここで用いられている用語としての“ポンプ”は、1つの機能を提供するのに十分な期間にわたって、低圧力から高圧力に流体を移送する能力を意味している。この単一の駆動ポンプは、チャージポンプを含んでもよい。ここで用いられる用語としての“駆動ポンプ”及び“駆動油圧ポンプ”は、原動機によって駆動される(例えば、直接機械的に駆動される)ポンプまたはポンプ/モータを示している。
【0082】
上述した様々な実施形態は、例として提供されただけであり、添付の請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない。当業者は、本明細書において示された例示的な実施形態及び適用例に続くことなく、かつ、本開示における真の精神と範囲から離れることなしに、行われる様々な修正と変更を容易に認識するであろう。
図1
図2
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図4
図5
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図9
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図11