(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機材料が、前記半導体層、前記ゲート電極、または前記ソース電極および前記ドレイン電極に結合された有機層中に存在し、前記有機層が、不動態化層または表面改質層として機能する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本教示は、多種多様な電子デバイス、光学デバイス、および光電子デバイス、例えば、薄膜トランジスター(TFT)、特定的には、有機電界効果トランジスター(OFET)、半導体酸化物電界効果トランジスター(SOFET)、さらにはセンサー、キャパシター、ユニポーラー回路、相補回路(例えば、インバーター回路)などで能動材料および/または受動材料として使用可能な有機材料に関する。
【0013】
一般的には、本有機材料は、側鎖中にジエン部分(例えば、−CR
a=CR
c−CR
b=CR
d−)を含む第1の繰返し単位を有するポリマーから調製される。ただし、このポリマーは、より低い硬化線量でかつ/またはより短い硬化時間内で硬化可能であるにもかかわらず、得られる架橋生成物は、公知の光硬化性材料と比較して改良された電子的および/または物理的性質を呈することが可能である。
【0014】
より特定的には、本明細書に記載のポリマーは、溶液加工して薄膜にすることが可能である。続いて、この薄膜は、光化学的にかつ任意選択で熱的に硬化させて、種々の電子デバイス、光学デバイス、およびオプトエレクトロニクスデバイスで使用するのに好適な物理的にロバストかつ周囲安定性の能動材料または受動材料にすることが可能である。例えば、本教示に係る有機材料は、薄膜トランジスターの誘電体層として、エッチストップ材料/フォトレジスト材料/ブロッキング材料/不動態化材料/封入材料/障壁材料として(例えば、トランジスターのソース電極およびドレイン電極を封入するために)、または界面材料(例えば、表面改質中間層)として使用可能である(単独または少なくとも1種の他の誘電体材料との併用のいずれかで)。
【0015】
誘電体材料として使用した場合、本有機材料は、限定されるものではないが、低漏れ電流密度、高破壊電圧、低ヒステリシス、同調キャパシタンス値、均一膜厚、溶液加工性、低温および/もしくは大気圧での成形性、空気安定性および湿気安定性、ならびに/またはさまざまなゲート材料および/もしくは半導体との適合性をはじめとする広範にわたる望ましい性質および特徴を呈することが可能である。不動態化材料または界面材料として使用した場合、本有機材料は、限定されるものではないが、低線量および/または増加した速度での光架橋性、高ガラス転移温度、高光学的透明性、低収縮性、低吸湿性、低酸素透過性、接着性、均一膜厚、溶液加工性、低温および/または大気圧での成形性、ならびに近接材料への良好な接着性をはじめとする望ましい性質および特徴を呈することが可能である。
【0016】
本出願全体を通じて、組成物が特定の成分を有するもしくはそれを含むものとして記載されている場合、またはプロセスが特定のプロセス工程を有するもしくはそれを含むものとして記載されている場合、本教示に係る組成物はまた、挙げられた成分から本質的になるもしくはそれからなると考えられ、本教示に係るプロセスはまた、挙げられたプロセス工程から本質的になるもしくはそれからなると考えられる。
【0017】
本出願では、要素もしくは部材が、挙げられた要素もしくは部材のリストに含まれるおよび/もしくはそれから選択されると述べられている場合、要素もしくは部材は、挙げられた要素もしくは部材のいずれか1つであることが可能であるか、または挙げられた要素もしくは部材の2つ以上からなる群から選択可能であることを理解すべきである。さらに、本明細書に記載の組成物、装置、または方法の要素および/または特徴は、本明細書で明示的か黙示的かにかかわらず、本教示の趣旨および範囲から逸脱することなくさまざまな方法で組合せ可能であることを理解すべきである。
【0018】
「include(〜を含む)」、「includes(〜を含む)」、「including(〜を含む)」、「have(〜を有する)」、「has(〜を有する)」、または「having(〜を有する)」という用語の使用は、とくに明記されていないかぎり、一般的には、オープンエンドであり限定的でないことを理解すべきである。
【0019】
本明細書での単数形の使用は、とくに明記されていないかぎり、複数形を含む(また、その逆も同様である)。それに加えて、「約」という用語が定量値の前で用いられている場合、本教示はまた、とくに明記されていないかぎり、特定の定量値自体を含む。本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、とくに指定や推定がないかぎり、公称値から±10%の変動を意味する。
【0020】
工程の順序または特定の動作の実施順序は、本教示が依然として実施可能であるかぎり、重要でないことを理解すべきである。さらに、2つ以上の工程または動作は、同時に行われうる。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
【0022】
本明細書で用いられる場合、「オキソ」とは、二重結合酸素(すなわち、=O)を意味する。
【0023】
本明細書で用いられる場合、「アルキル」とは、直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n−プロピルおよびiso−プロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)、ペンチル基(例えば、n−ペンチル、iso−ペンチル、ネオペンチル)、ヘキシル基などが挙げられる。種々の実施形態では、アルキル基は、1〜40個の炭素原子(すなわち、C
1〜40アルキル基)、例えば、1〜20個の炭素原子(すなわち、C
1〜20アルキル基)を有することが可能である。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1〜6個の炭素原子を有することが可能であり、かつ「低級アルキル基」として参照可能である。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、n−プロピルおよびiso−プロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)、およびヘキシル基が挙げられる。いくつかの実施形態では、アルキル基は、本明細書に記載されるように置換可能である。アルキル基は、一般的には、他のアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基で置換されない。
【0024】
本明細書で用いられる場合、「ハロアルキル」とは、1個または複数個のハロゲン置換基を有するアルキル基を意味する。種々の実施形態では、ハロアルキル基は、1〜40個の炭素原子(すなわち、C
1〜40ハロアルキル基)、例えば、1〜20個の炭素原子(すなわち、C
1〜20ハロアルキル基)を有することが可能である。ハロアルキル基の例としては、CF
3、C
2F
5、CHF
2、CH
2F、CCl
3、CHCl
2、CH
2Cl、C
2Cl
5などが挙げられる。ペルハロアルキル基、すなわち、水素原子のすべてがハロゲン原子で置き換えられたアルキル基(例えば、CF
3およびC
2F
5)は、「ハロアルキル」の定義の範囲内に含まれる。例えば、C
1〜
40ハロアルキル基は、式−C
zH
2z+1−tX
0t(式中、X
0は、存在ごとに、F、Cl、Br、またはIであり、zは、1〜40の範囲内の整数であり、かつtは、1〜81の範囲内の整数であるが、ただし、tは、2z+1以下である)を有することが可能である。ペルハロアルキル基でないハロアルキル基は、本明細書に記載されるように置換可能である。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「アルコキシ」とは、−O−アルキル基を意味する。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ(例えば、n−プロポキシおよびイソプロポキシ)基、t−ブトキシ基、ペントキシル基、ヘキソキシル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。−O−アルキル基中のアルキル基は、本明細書に記載されるように置換可能である。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「アルキルチオ」とは、−S−アルキル基を意味する。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ(例えば、n−プロピルチオおよびイソプロピルチオ)基、t−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。−S−アルキル基中のアルキル基は、本明細書に記載されるように置換可能である。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「アルケニル」とは、1個または複数個の炭素−炭素二重結合を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を意味する。アルケニル基の例としては、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基などが挙げられる。1個または複数個の炭素−炭素二重結合は、内部(例えば、2−ブテンの場合)または末端(例えば、1−ブテンの場合)に存在可能である。種々の実施形態では、アルケニル基は、2〜40個の炭素原子(すなわち、C
2〜40アルケニル基)、例えば、2〜20個の炭素原子(すなわち、C
2〜20アルケニル基)を有することが可能である。いくつかの実施形態では、アルケニル基は、本明細書に記載されるように置換可能である。アルケニル基は、一般的には、他のアルケニル基、アルキル基、またはアルキニル基で置換されない。
【0028】
本明細書で用いられる場合、「アルキニル」とは、1個または複数個の炭素−炭素三重結合を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を意味する。アルキニル基の例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどが挙げられる。1個または複数個の炭素−炭素三重結合は、内部(例えば、2−ブチンの場合)または末端(例えば、1−ブチンの場合)に存在可能である。種々の実施形態では、アルキニル基は、2〜40個の炭素原子(すなわち、C
2〜40アルキニル基)、例えば、2〜20個の炭素原子(すなわち、C
2〜20アルキニル基)を有することが可能である。いくつかの実施形態では、アルキニル基は、本明細書に記載されるように置換可能である。アルキニル基は、一般的には、他のアルキニル基、アルキル基、またはアルケニル基で置換されない。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「環式」とは、本明細書に定義されるシクロアルキル基、アリール基、シクロヘテロアルキル基、およびヘテロアリール基を含む有機閉環基を意味する。
【0030】
本明細書で用いられる場合、「シクロアルキル」とは、環状アルキル基、環状アルケニル基、および環状アルキニル基を含む非芳香族炭素環式基を意味する。種々の実施形態では、シクロアルキル基は、3〜40個の炭素原子(すなわち、C
3〜40シクロアルキル基)、例えば、3〜20個の炭素原子を有することが可能である。シクロアルキル基は、炭素原子が環系内に位置する単環式(例えば、シクロヘキシル)または多環式(例えば、縮合環系、架橋環系、および/またはスピロ環系を含有する)であることが可能である。シクロアルキル基の任意の好適な環位置を定義化学構造に共有結合させることが可能である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプタトリエニル基、ノルボルニル基、ノルピニル基、ノルカリル基、アダマンチル基、およびスピロ[4.5]デカニル基、さらにはそれらの同族体、異性体などが挙げられる。いくつかの実施形態では、シクロアルキル基は、本明細書に記載されるように置換可能である。
【0031】
本明細書で用いられる場合、「ヘテロ原子」とは、炭素や水素以外の元素の原子を意味し、例えば、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、リン、およびセレンが挙げられる。
【0032】
本明細書で用いられる場合、「シクロヘテロアルキル」とは、O、S、Se、N、P、およびSi(例えば、O、S、およびN)から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含有しかつ任意選択で1個または複数個の二重結合または三重結合を含有する非芳香族シクロアルキル基を意味する。シクロヘテロアルキル基は、3〜40個の環原子(すなわち、3〜40員のシクロヘテロアルキル基)、例えば、3〜20個の環原子を有することが可能である。シクロヘテロアルキル環内の1個または複数個のN、P、S、またはSe原子(例えば、NまたはS)は、酸化されていてもよい(例えば、モルホリンN−オキシド、チオモルホリンS−オキシド、チオモルホリンS,S−ジオキシド)。いくつかの実施形態では、シクロヘテロアルキル基の窒素原子またはリン原子は、置換基、例えば、水素原子、アルキル基、または本明細書に記載の他の置換基を有することが可能である。シクロヘテロアルキル基はまた、オキソピペリジル、オキソオキサゾリジル、ジオキソ−(1H,3H)−ピリミジル、オキソ−2(1H)−ピリジルなどのように1個または複数個のオキソ基を含有することが可能である。シクロヘテロアルキル基の例としては、とくに、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピペリジニル、ピペラジニルなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、シクロヘテロアルキル基は、本明細書に記載されるように置換可能である。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「アリール」とは、芳香族単環式炭化水素環系、あるいは2個以上の芳香族炭化水素環が互いに縮合された(すなわち、共通の結合を有する)、または少なくとも1個の芳香族単環式炭化水素環が1個または複数個のシクロアルキル環および/もしくはシクロヘテロアルキル環に縮合された、多環式環系を意味する。アリール基は、複数の縮合された環を含むことが可能なその環系内に6〜40個の炭素原子を有することが可能である。いくつかの実施形態では、多環式アリール基は、8〜40個の炭素原子を有することが可能である。アリール基の任意の好適な環位置を定義化学構造に共有結合させることが可能である。芳香族炭素環式環のみを有するアリール基の例としては、フェニル、1−ナフチル(二環式)、2−ナフチル(二環式)、アントラセニル(三環式)、フェナントレニル(三環式)などの基が挙げられる。少なくとも1個の芳香族炭素環式環が1個または複数個のシクロアルキル環および/もしくはシクロヘテロアルキル環に縮合された多環式環系の例としては、とくに、シクロペンタンのベンゾ誘導体(すなわち、5,6−二環式シクロアルキル/芳香族環系であるインダニル基)、シクロヘキサンのベンゾ誘導体(すなわち、6,6−二環式シクロアルキル/芳香族環系であるテトラヒドロナフチル基)、イミダゾリンのベンゾ誘導体(すなわち、5,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香族環系であるベンゾイミダゾリニル基)、およびピランのベンゾ誘導体(すなわち、6,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香族環系であるクロメニル基)が挙げられる。アリール基の他の例としては、ベンゾジオキサニル基、ベンゾジオキソリル基、クロマニル基、インドリニル基などが挙げられる。いくつかの実施形態では、アリール基は、本明細書に記載されるように置換可能である。いくつかの実施形態では、アリール基は、1個または複数個のハロゲン置換基を有することが可能であり、かつ「ハロアリール」基として参照可能である。ペルハロアリール基、すなわち、水素原子のすべてがハロゲン原子で置き換えられたアリール基(例えば、−C
6F
5)は、「ハロアリール」の定義の範囲内に含まれる。特定の実施形態では、アリール基は、他のアリール基で置換され、かつビアリール基として参照可能である。ビアリール基中のアリール基のそれぞれは、本明細書に開示されるように置換可能である。
【0034】
本明細書で用いられる場合、「ヘテロアリール」とは、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、ケイ素(Si)、およびセレン(Se)から選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含有する芳香族単環式環系、または環系内に存在する環の少なくとも1個が芳香族でありかつ少なくとも1個の環ヘテロ原子を含有する多環式環系を意味する。多環式ヘテロアリール基は、互いに縮合された2個以上のヘテロアリール環、ならびに1個または複数個の芳香族炭素環式環、非芳香族炭素環式環、および/または非芳香族シクロヘテロアルキル環に縮合された単環式ヘテロアリール環を含む。ヘテロアリール基は、全体として、例えば、5〜40個の環原子を有することが可能であり、かつ1〜5個の環ヘテロ原子を含有することが可能である。ヘテロアリール基は、安定構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子で定義化学構造に結合可能である。一般的には、ヘテロアリール環は、O−O、S−S、またはS−Oの結合を含有しない。しかしながら、ヘテロアリール基中の1個または複数個のN原子またはS原子は、酸化可能である(例えば、ピリジンN−オキシド、チオフェンS−オキシド、チオフェンS,S−ジオキシド)。ヘテロアリール基の例は、例えば、以下に示される5または6員の単環式環系および5−6二環式環系:
【化2】
(式中、Tは、O、S、NH、N−アルキル、N−アリール、N−(アリールアルキル)(例えば、N−ベンジル)、SiH
2、SiH(アルキル)、Si(アルキル)
2、SiH(アリールアルキル)、Si(アリールアルキル)
2、またはSi(アルキル)(アリールアルキル)である)を含む。そのようなヘテロアリール環の例は、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、イソチアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、2−メチルキノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、シンノリニル基、1H−インダゾリル基、2H−インダゾリル基、インドリジニル基、イソベンゾフリル(isobenzofuyl)基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、プテリジニル基、プリニル基、オキサゾロピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピリジニル基、フロピリジニル基、チエノピリジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピリドピリダジニル基、チエノチアゾリル基、チエノオキサゾリル基、チエノイミダゾリル基などを含む。ヘテロアリール基のさらなる例は、4,5,6,7−テトラヒドロインドリル基、テトラヒドロキノリニル基、ベンゾチエノピリジニル基、ベンゾフロピリジニル基などを含む。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、本明細書に記載されるように置換可能である。
【0035】
本明細書の種々の箇所で、化学基上の置換基は、群または範囲で開示される。特定的には、この記載は、そのような群および範囲のメンバーのあらゆる個別の部分的組合せを含むことが意図される。例えば、「C
1〜6アルキル」という用語は、特定的には、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
1〜C
6、C
1〜C
5、C
1〜C
4、C
1〜C
3、C
1〜C
2、C
2〜C
6、C
2〜C
5、C
2〜C
4、C
2〜C
3、C
3〜C
6、C
3〜C
5、C
3〜C
4、C
4〜C
6、C
4〜C
5、およびC
5〜C
6のアルキルを個別に開示することが意図される。他の例として、0〜40の範囲内の整数は、特定的には、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、33、34、35、36、37、38、39、および40を個別に開示することが意図され、また、1〜20の範囲内の整数は、特定的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20を個別に開示することが意図される。追加の例として、「任意選択で1〜5個の置換基で置換された」という表現は、特定的には、0、1、2、3、4、5、0〜5、0〜4、0〜3、0〜2、0〜1、1〜5、1〜4、1〜3、1〜2、2〜5、2〜4、2〜3、3〜5、3〜4、および4〜5個の置換基を含むことが可能な化学基を個別に開示することが意図されることが挙げられる。
【0036】
本明細書で用いられる場合、「p型半導体材料」または「p型半導体」とは、多数電流担体として正孔を有する半導体材料を意味する。いくつかの実施形態では、p型半導体材料が基板上に堆積された場合、約10
−5cm
2/Vsを超える正孔移動度を提供可能である。電界効果デバイスの場合、p型半導体はまた、約10超の電流オン/オフ比を呈することが可能である。
【0037】
本明細書で用いられる場合、「n型半導体材料」または「n型半導体」とは、多数電流担体として電子を有する半導体材料を意味する。いくつかの実施形態では、n型半導体材料が基板上に堆積された場合、約10
−5cm
2/Vsを超える電子移動度を提供可能である。電界効果デバイスの場合、n型半導体はまた、約10超の電流オン/オフ比を呈することが可能である。
【0038】
本明細書で用いられる場合、「誘電体材料」は、10
−6Scm
−1以下程度の伝導度を有して近接電気伝導体への電流漏れを回避する。
【0039】
2つの部材が互いに結合されるものとして記載されている場合、2つの部材が直接接触した状態をとることが可能であるか(例えば、互いに直接結合される)、または2つの部材が1つまたは複数の介在する部材または層を介して互いに結合可能であることは、理解されよう。
【0040】
本ポリマーは、式(Ia)で示される第1の繰返し単位および任意選択で式(Ib)で示される第2の繰返し単位:
【化3】
(式中、
LおよびL’は、独立して、不在であるかまたは二価リンカーであり、
Wは、−(CR
a’=CR
c’)
p−(CR
b’=CR
d’)
p’−Z’から選択され、
Zは、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、置換または非置換のC
6〜14アリール基、および置換または非置換の5〜14員ヘテロアリール基から選択され、
Z’は、H、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、置換または非置換のC
6〜14アリール基、および置換または非置換の5〜14員ヘテロアリール基から選択され、
R
1およびR
2は、独立して、HまたはCH
3であり、
R
a、R
a’、R
b、およびR
b’は、独立して、H、F、Cl、CN、CH
3、およびCF
3から選択され、
R
c、R
c’、R
d、およびR
d’は、独立して、H、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、置換または非置換のC
6〜14アリール基、および置換または非置換の5〜14員ヘテロアリール基から選択され、
pおよびp’は、独立して、0または1であり、かつ
qおよびq’は、独立して、0または1である)
を含む。
【0041】
存在する場合、リンカーLおよびL’は、種々の加水分解安定性二価有機基であることが可能である。例えば、LおよびL’は、二価フェニル基(−C
6H
5−)、−Y−、および−C(O)O−Y−(式中、Yは、二価C
1〜10アルキル基および二価C
1〜10ハロアルキル基から選択可能である)から選択可能である。
【0042】
したがって、種々の実施形態では、式(Ia)で示される第1の繰返し単位は、
【化4】
(式中、R
a、R
b、R
c、R
d、Z、およびqは、本明細書に定義されるとおりである)
から選択可能である。
【0043】
好ましい実施形態では、Zは、非置換または置換のC
6〜14アリール基または5〜14員ヘテロアリール基であることが可能である。例えば、Zは、ハロゲン、CN、R
e、−O−R
e、−S−R
e、−C(O)−R
e、および−C(O)−O−R
e(式中、R
eは、存在ごとに、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、C
2〜10アルケニル基、およびC
2〜10アルキニル基から選択される)から独立して選択される1〜5個の基で任意選択で置換されたフェニル基、ナフチル基、またはアントラセニル基であることが可能である。他の好ましい実施形態では、Zは、非置換の5もしくは6員ヘテロアリール基、またはハロゲン、CN、オキソ、R
e、−O−R
e、−S−R
e、−C(O)−R
e、および−C(O)−O−R
e(式中、R
eは、存在ごとに、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、C
2〜10アルケニル基、およびC
2〜10アルキニル基から選択される)から独立して選択される1〜5個の基で置換された5もしくは6員ヘテロアリール基であることが可能である。5もしくは6員ヘテロアリール基の例としては、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、イソチアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、およびオキサジアゾリル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに他の好ましい実施形態では、Zは、非置換の5−6二環式ヘテロアリール基、またはハロゲン、CN、オキソ、R
e、−O−R
e、−S−R
e、−C(O)−R
e、および−C(O)−O−R
e(式中、R
eは、存在ごとに、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、C
2〜10アルケニル基、およびC
2〜10アルキニル基から選択される)から独立して選択される1〜5個の基で置換された5−6二環式ヘテロアリール基であることが可能である。5−6二環式ヘテロアリール基の例としては、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、2−メチルキノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、シンノリニル基、1H−インダゾリル基、2H−インダゾリル基、インドリジニル基、イソベンゾフリル(isobenzofuyl)基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、プテリジニル基、プリニル基、オキサゾロピリジニル基、チアゾロピリジニル基、イミダゾピリジニル基、チエノピリジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピリドピリダジニルチエノチアゾリル基、チエノオキサゾリル基、およびチエノイミダゾリル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
例示すると、式(Ia)で示される第1の繰返し単位は、
【化5】
すなわちq=0の場合から選択可能である。
【0045】
特定の実施形態では、R
aは、CNであることが可能である。例えば、式(Ia)で示される第1の繰返し単位は、
【化6】
から選択可能である。
【0046】
さらに例示すると、式(Ia)で示される第1の繰返し単位は、
【化7】
すなわちq=1の場合から選択可能である。
【0047】
特定の実施形態では、本ポリマーは、ホモポリマー、特定的には、式(Ia)で示される繰返し単位のホモポリマーであることが可能である。したがって、特定の実施形態では、本ポリマーは、
【化8】
【化9】
【化10】
から選択される繰返し単位のホモポリマーであることが可能である。
【0048】
他の実施形態では、本ポリマーは、式(Ia)で示される少なくとも第1の繰返し単位と、式(Ib)で示される第2の繰返し単位と、を含むコポリマーであることが可能である。これらの実施形態では、第2の繰返し単位中のL’は、第1の繰返し単位中のLと同一であるかまたはそれと異なることが可能である。一方、特定の実施形態では、Wは、Z’または−(CR
a’=CR
c’)−Z’(式中、Z’は、H、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、置換または非置換のC
6〜14アリール基、および置換または非置換の5〜14員ヘテロアリール基から選択可能である)であることが可能である。他の実施形態では、Wは、−(CR
a’=CR
c’)−(CR
b’=CR
d’)−Z’ であることが可能であるが、ただし、Z’は、第1の繰返し単位中のZとは異なる。
【0049】
例示すると、特定の実施形態では、式(Ib)で示される第2の繰返し単位は、
【化11】
(式中、Z’は、C
1〜10アルキル基またはC
1〜10ハロアルキル基であることが可能であり、かつqは、0または1である)
から選択可能である。
【0050】
特定の実施形態では、式(Ib)で示される第2の繰返し単位は、
【化12】
(式中、R
a’は、H、F、およびCH
3から選択され、R
c’は、H、CH
3、およびフェニル基から選択され、かつZ’は、H、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、置換または非置換のC
6〜14アリール基、および置換または非置換の
5〜14員ヘテロアリール基から選択される)
から選択可能である。特定の実施形態では、Z’は、非置換または置換のC
6〜14アリールまたは5〜14員ヘテロアリール基であることが可能である。例えば、Z’は、ハロゲン、CN、R
e、−O−R
e、−S−R
e、−C(O)−R
e、および−C(O)−O−R
e(式中、R
eは、存在ごとに、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、C
2〜10アルケニル基、およびC
2〜10アルキニル基から選択される)から独立して選択される1〜5個の基で任意選択で置換されたフェニル基、ナフチル基、またはアントラセニル基であることが可能である。他の好ましい実施形態では、Z’は、非置換の5もしくは6員ヘテロアリール基、またはハロゲン、CN、オキソ、R
e、−O−R
e、−S−R
e、−C(O)−R
e、および−C(O)−O−R
e(式中、R
eは、存在ごとに、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、C
2〜10アルケニル基、およびC
2〜10アルキニル基から選択される)から独立して選択される1〜5個の基で置換された5もしくは6員ヘテロアリール基であることが可能である。さらに他の好ましい実施形態では、Z’は、非置換の5−6二環式ヘテロアリール基、またはハロゲン、CN、オキソ、R
e、−O−R
e、−S−R
e、−C(O)−R
e、および−C(O)−O−R
e(式中、R
eは、存在ごとに、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、C
2〜10アルケニル基、およびC
2〜10アルキニル基から選択される)から独立して選択される1〜5個の基で置換された5−6二環式ヘテロアリール基であることが可能である。5または6員ヘテロアリール基および5−6二環式ヘテロアリール基の例は、以上に提供されている。
【0051】
特定の実施形態では、第2の繰返し単位中のL’は、第1の繰返し単位中のLと同一であることが可能である。したがって、本教示に係る特定のコポリマーは、
【化13】
【化14】
(式中、mおよびnは、独立して、実数であるが、ただし、0<m<1、0<n<1、かつm+n=1であり、かつR
a、R
b、R
c、R
d、およびZは、本明細書に定義されるとおりである)から選択される式により表すことが可能である。例えば、R
aおよびRbは、独立して、H、F、およびCNから選択可能であり、R
cおよびR
dは、独立して、H、CH
3、およびフェニル基から選択可能であり、一方、Zは、ハロゲン、CN、R
e、−O−R
e、−S−R
e、−C(O)−R
e、および−C(O)−O−R
e(式中、R
eは、存在ごとに、C
1〜10アルキル基、C
1〜10ハロアルキル基、C
2〜10アルケニル基、およびC
2〜10アルキニル基から選択される)から独立して選択される1〜5個の基で任意選択で置換されたC
6〜14アリールまたは5〜14員ヘテロアリール基であることが可能である。例えば、mとnとの比は、約0.01:0.99〜約0.99:0.01であることが可能である。好ましい実施形態では、mは、約0.50〜約0.99であり、かつnは、約0.01〜約0.50である。より好ましい実施形態では、mは、約0.70〜約0.99であり、かつnは、約0.01〜約0.30である。
【0052】
さらに例示すると、本教示に係るコポリマーの特定例は、
【化15】
(式中、mおよびnは、独立して、実数であるが、ただし、0<m<1、0<n<1、かつm+n=1である)を含むことが可能である。
【0053】
本ポリマーは、当技術分野で公知の種々のポリマー、特定的には、(ビニレンもしくは)ジエン含有カルボン酸またはその誘導体と反応して式(Ia)で示される第1の繰返し単位および任意選択で式(Ib)で示される第2の繰返し単位を提供可能なヒドロキシル基を側鎖中に有するポリマーから誘導可能である。これらのポリマーの例としては、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ビニルフェノール)、ポリ(ビニルアルコール)、およびそれらのコポリマー、例えば、ポリ(ビニルアルコール−co−エチレン)およびポリ(ビニルフェノール/メチルメタクリレート)を挙げることが可能であるが、これらに限定されるものではない。例示的な合成経路は、これ以降の実施例に提供される。
【0054】
例えば、本教示に係るモノマーおよびポリマーは、一般的には、スキーム1に従って合成可能である。したがって、他にも可能な合成経路はあるが、モノマーを合成する最も単純な方法の1つは、活性化メチレン基を有する酸/エステルまたはα−ケト酸/エステルとアルデヒド(またはα,β−不飽和アルデヒド)との縮合によるものである。縮合後、モノマーは、さらなる修飾を行うことなく使用可能であるか、またはモノマーは、ヒドロキシル含有ポリマー骨格との反応により本教示に係るポリマーを生成する前により高反応性の種に変換可能である(例えば、ハロゲン化により)。
スキーム1
【化16】
【0055】
例えば、以下のモノマーは、文献に報告された手順に基づいて合成可能である。
【化17】
Belmessieri,D.et al.,JACS,133(8):2714−2720(2011)を参照されたい。
【化18】
Balodis,J.;Materialzinatne un Lietiska Kimija,5:42−46(2002)を参照されたい。
【化19】
Ibrahim,Y.A.;J.Het.Chem.,18(5):953−956(1981)を参照されたい。
【化20】
Thangavel,V.,Tetrahedron,63(19):4126−4133(2007)を参照されたい。または
【化21】
Miura,Katsukiyo;Chem.Letts.,38(8):832−833(2009)を参照されたい。
【0056】
架橋する前、本教示に係るポリマーは、一般的には、共通有機溶媒に可溶であるが、架橋を行った後、同一の溶媒にそれほど有意に可溶でないこともあれば不溶であることもある。本明細書で用いられる場合、1mlの溶媒に少なくとも1mgの化合物が溶解する場合、化合物は溶媒に可溶であると考えられることが可能である。1mlの溶媒に1mg未満の化合物が均一に溶解する場合、化合物は不溶であると考えられる。
【0057】
より特定的には、本ポリマーは、種々の通常の有機溶媒への満足すべき溶解性を有することにより、溶液相プロセスに好適な配合物を与えることが可能である。特定の実施形態では、本ポリマーは、通常の有機半伝導性の分子またはポリマーを処理するのに典型的に使用される溶媒(例えば、芳香族溶媒または極性塩素化溶媒)に直交する有機溶媒への満足すべき溶解性を有することが可能である。これにより、例えば、溶液加工トップゲートトランジスターの作製が可能になる。この場合、本ポリマーを溶解するために使用される有機溶媒は、下側の有機半導体材料に損傷(すなわち、溶解、離層、膨潤、もしくは物理的擾乱)を与えることもその半伝導性に悪影響を及ぼすこともない。本ポリマーを配合するために使用可能な有機溶媒の例としては、脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、アルコール溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、およびヘプタノール、ケトン溶媒、例えば、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン、およびシクロヘキサノン、エステル溶媒、例えば、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ペンチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、イソブチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルラクテート、エチルラクテート、およびγ−ブチロラクトン、エーテル溶媒、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、およびベラトロール、ならびにアミド溶媒、例えば、N−メチルピロリジノンおよびジメチルアセトアミドが挙げられる。これらの溶媒は、単独または組合せまたは水との混合物のいずれかで使用可能である。
【0058】
したがって、本ポリマーは、薄膜材料を形成するための組成物(コーティング配合物)を提供するために液体媒体中に動員可能である。組成物は、溶液、分散液、懸濁液、乳濁液、またはゲルであることが可能であるが、本ポリマーを薄膜として提供するために使用される組成物は、溶液相プロセスに好適な溶液または分散液である。液体媒体は、固体および/またはガスの成分を含むことが可能である。すなわち、液体媒体は、蒸気またはガスの形態をとることが可能である。したがって、「液体媒体」という用語は、蒸発した液体媒体を含むことが可能である。「液体媒体中に動員」という用語は、広義には、指定の液体媒体により指定の固体が液体または蒸気の性質を呈するようになることを意味する。例えば、固体を液体媒体中に溶解させて単相溶液を形成することが可能であるか、または、固体を液体媒体中に分散させて二相分散液を形成することが可能である。他の実施形態では、固体と液体媒体とを互いに組み合わせて、乳濁液、懸濁液、ゲル、さらにはミセルを形成することが可能である。本明細書で用いられる場合、「溶液」という用語は、指定の溶質の実質的な部分が指定の溶媒と単相を形成しているが、分散された微粒子状物質を含むことが可能な実質的な固体、液体、および/またはガスの第2の相もまた存在可能であることを意味する。
【0059】
本ポリマーに加えて、コーティング配合物は、特定の性質、例えば、コーティング配合物の粘度、または形成されるフィルム材料の誘電性、熱安定性、および/もしくはガラス転移温度を選択的に改変するために使用可能な他の成分を含むことが可能である。コーティング配合物はまた、本ポリマーの架橋性を改変するために、開始剤および/または増感剤、例えば、以上に記載のものを含むことが可能である。したがって、いくつかの実施形態では、コーティング配合物は、粘度調整剤、洗浄剤、分散剤、結合剤、相溶化剤、硬化剤、開始剤、増感剤、湿潤剤、消泡剤、湿潤剤、pH調整剤、殺生物剤、および静細菌剤から独立して選択される1種または複数種の添加剤を含むことが可能である。例えば、分散剤、結合剤、相溶化剤、および/または消泡剤として、界面活性剤および/またはポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレートなど)を含むことが可能である。いくつかの実施形態では、コーティング配合物は、ブレンド誘電体材料を調製するために使用可能な他の線状誘電体ポリマー、金属酸化物、シラン架橋剤、アクリレート架橋剤、および/またはそれらの組合せを含むことが可能である。例えば、より高い誘電率を提供するために、金属酸化物充填剤を使用することが可能である。高い誘電率を有する充填剤としては、金属酸化物、例えば、SiO
2、Al
2O
3、TiO
2など、窒化物、例えば、Si
3N
4、ならびに常誘電体セラミックス充填剤、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、およびジルコン酸鉛が挙げられる。
【0060】
本明細書で用いられる場合、「溶液加工可能」または「溶液加工」とは、種々の溶液相プロセスを介して処理される化合物、例えば、本ポリマーの性能を意味する。本ポリマーを含むコーティング配合物は、当技術分野で公知の種々の溶液相堆積方法を介して、基板上、例えば、電気伝導性材料(例えば、トランジスターのソース電極、ドレイン電極、もしくはゲート電極)上または半導体材料(例えば、トランジスターの電荷運搬層)上に堆積可能である。種々の実施形態では、溶液相プロセスは、スピン塗布、スロット塗布、印刷(例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、リソグラフィー印刷、大量印刷など)、スプレー塗布、静電スプレー塗布、ドロップキャスティング、ディップ塗布、およびブレード塗布から選択可能である。スピン塗布は、過剰量の塗布溶液を基板上に適用してから基板を高速回転させて遠心力により流体を展延することを含む。この技術により作製される生成膜の厚さは、スピン塗布速度、溶液濃度、さらには使用溶媒に依存する可能性がある。印刷は、例えば、グラビア印刷プレス、フレキソ印刷プレス、パッド印刷プリンター、スクリーン印刷プリンター、またはインクジェットプリンターを用いて、行うことが可能である。これらの印刷方法により加工される生成膜の厚さは、溶液の濃度、溶媒の選択、および印刷の繰返し数に依存する可能性がある。周囲条件、例えば、温度、圧力、および湿度もまた、生成膜の厚さに影響を及ぼす可能性がある。使用される特定の印刷技術に依存して、印刷品質は、限定されるものではないが張力エネルギーや粘度などの配合物/組成物のレオロジー性をはじめとするさまざまなパラメーターにより影響を受ける可能性がある。インクジェット印刷などの非接触印刷技術では、溶解度要件は、一般的には、それほど厳しくないこともあり、約1〜4mg/ml程度の低い溶解度範囲で十分なこともある。グラビア印刷では、より高い溶解度範囲、多くの場合、約50〜100mg/mlの範囲が必要なこともある。スクリーン印刷やフレキソ印刷などの他の接触印刷技術は、さらに高い溶解度範囲、例えば、約100〜1000mg/mlを必要とすることもある。
【0061】
生成膜は、ウエハ、層、シート、または長尺状ウェブをはじめとする種々の形態をとることが可能である。本教示に係るポリマーに基づく薄膜材料は、モノリシック(単一の均一層で構成される)であることが可能であるか、または複数のサブ層を有することが可能であり、この場合、複数のサブ層は、同一(均一)化学組成または異なる(不均一)化学組成を有することが可能である。
【0062】
本明細書に開示されたポリマーの利点の1つは、基板上に堆積された後の架橋性能、例えば、光架橋性能である。架橋性官能基は、緻密架橋高分子マトリックスの形成を可能にする。架橋高分子マトリックスは、例えば、上側層(例えば、ボトムゲートTFTの半導体層)を形成/堆積するためのパターニングプロセスおよび後続の溶液相プロセスを含めて、デバイス作製プロセスの通常の種々の条件に耐えるのに十分な程度にロバストである。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、架橋化学は、安定なシクロブタン部分を提供する2+2光刺激付加環化を含むことが可能である。架橋化学はまた、フリーラジカル付加を含むことが可能である。
【0063】
本教示に係るポリマーは、例えば、約250nm〜約500nmの波長で、光照射により光架橋可能である。光架橋は、フラッド照射(すなわち、フィルターを用いない)により、または選択的波長の照射線、例えば、スペクトルのH(404.7nm)線、G(435.8nm)線、もしくはI(365.4nm)線の照射により、行うことが可能である。本ポリマーの利点の1つは、光硬化のためにより長い波長(例えば、>350nm)を使用できることでありうる。特定的には、これ以降の実施例3に記載されるように、追加のカルボニル基(すなわち、q=1の場合)および/またはシアノ基(例えば、R
a=CN)を含む実施形態では、光架橋に必要な波長のレッドシフトを呈することが可能であるので、典型的には漏れ性に有害な作用を及ぼす光増感剤を使用する必要性を排除することが可能である。したがって、本ポリマーを用いて誘電体材料を調製する利点は、誘電体材料の調製の出発配合物(本ポリマーを含む)がイオン光開始剤(材料の誘電強度を損なう、すなわち、高い漏れを引き起こすことが知られている)を含まいこと、特定的には、電荷トラップとして作用する酸性部分を生成可能な酸光開始剤を含まいことでありうる。例えば、本教示に係る誘電体材料を調製するための配合物は、
【化22】
などのイオン性光酸発生剤および
【化23】
などの非イオン性光酸発生剤を含む既存の光硬化性組成物(例えば、既存の光架橋性誘電体材料またはフォトレジスト材料)中に一般に見いだされる種々の光開始剤を含まないことが可能である。
【0064】
光照射に加えて、本ポリマーの架橋はまた、他のタイプの照射により、例えば、荷電粒子のイオンビームおよび放射性線源により、達成可能である。架橋マトリックスの形成に続いて、本教示に係る薄膜材料は、さらなるパターニング工程およびプロセス工程に付すことが可能であり、それにより、追加の誘電体層、半導体層、および/または伝導層をはじめとする追加の層をその上に形成することが可能である。
【0065】
これ以降の実施例により実証されるように、本ポリマーはまた、公知の光硬化性誘電体材料と比較して、より低い硬化線量および/またはより短い硬化時間で硬化可能である。本ポリマーがより低い硬化線量および/またはより短い硬化時間で硬化可能であるという事実から、デバイス作製時、近接層(例えば、下側有機半導体層)の損傷は、最小限に抑えられるであろう。これはまた、本ポリマーをフォトレジスト材料として、例えば、半導体層をパターニングするためのネガフォトレジスト材料として、使用する可能性をもたらす。特定的には、フォトマスクを介して本ポリマーに照射線を照射し、次いで、適切な現像剤を用いて現像するにより、反応性イオンプラズマエッチングから下側半導体層を保護することが可能である。
【0066】
本ポリマーは、典型的には、優れた電気絶縁性および低い漏れ電流密度を有するので、誘電体として使用可能である。漏れ電流密度は、典型的には、単位断面積あたりの漏れ電流が大きさであるベクトルとして定義される。本明細書で用いられる場合、「漏れ電流」とは、電流、例えば、薄膜トランジスターデバイスのゲート誘電体を横切って流れる電流が流れてはならない半導体構造またはデバイスの領域を横切って流れる無制御(「寄生」)電流を意味する。当業者には公知のように、誘電体材料の漏れ電流密度は、誘電体材料を含む標準的な金属−絶縁体−半導体(MIS)キャパシター構造および/または金属−絶縁体−金属(MIM)キャパシター構造を作製してから、漏れ電流を測定して測定電流を金属電極の面積で割り算することにより、決定可能である。
【0067】
種々の実施形態では、本ポリマーは、標準的なMISキャパシター構造およびMIMキャパシター構造で測定される非常に低い漏れ電流密度を有することが可能である。例えば、本教示に係るポリマーから作製される誘電体材料は、E=2MV/cmで約1×10
−6A/cm
2以下、E=2MV/cmで約1×10
−7A/cm
2以下、E=2MV/cmで約1×10
−8A/cm
2以下、E=2MV/cmで約8×10
−9A/cm
2以下、E=2MV/cmで約7×10
−9A/cm
2以下、E=2MV/cmで約6×10
−9A/cm
2以下、E=2MV/cmで約4×10
−9A/cm
2以下、E=2MV/cmで約2×10
−9A/cm
2以下、またはE=2MV/cmで約1×10
−9A/cm
2以下の漏れ電流密度を有することが可能である。本ポリマーから作製される誘電体材料はまた、非常に高い破壊電圧(すなわち、分解して導電し始める前の誘電体を横切って印加可能な最大電圧差)に耐えることが可能である。例えば、本教示に係る誘電体材料は、4MV/cm以上の破壊電圧、または6MV/cm以上の破壊電圧、または7MV/cm以上の破壊電圧に耐えることが可能である。
【0068】
本ポリマーはまた、既存の公知の光硬化性誘電体材料と比較して改良された空気安定性および湿気安定性を有することが可能であるので、本ポリマーが組み込まれたデバイスは、最小限のゲートバイアスストレスヒステリシスを呈することが可能である。可能な誘電体材料として多くの光硬化性ポリマーが研究されてきたが、適正な低漏れ性にもかかわらず、これらのポリマーの多くは、バイアスストレスに起因する有意な不安定性をデバイス性能にもたらす。
【0069】
以上に記載したように、本ポリマーは、有機または無機の半伝導性化合物を溶解するために一般に使用される溶媒に直交する溶媒に溶解可能であるので、本ポリマーは、全体的または部分的に、溶液加工有機電界効果トランジスターの誘電体層として使用可能である。典型的な電界効果トランジスター(FET)は、いくつかの層を含み、種々の方法で構成可能である。例えば、FETは、基板と、誘電体層と、半導体層と、半導体層に接触した状態のソース電極およびドレイン電極と、誘電体層に近接するゲート電極と、を含むことが可能である。ゲート電極に電位が印加された場合、電荷担体は、誘電体層との界面で半導体層中に蓄積される。結果として、ソース電極とドレイン電極との間に伝導性チャネルが形成され、ドレイン電極に電位が印加されれば電流が流れるであろう。
【0070】
図1は、FET構造の4つの一般的タイプ、すなわち、(a)ボトムゲートトップコンタクト構造、(b)ボトムゲートボトムコンタクト構造、(c)トップゲートボトムコンタクト構造、および(d)トップゲートトップコンタクト構造を例示している。
図1に示されるように、FETは、誘電体層(例えば、
図1a、1b、1c、および1dにそれぞれ8、8’、8’’、および8’’’として示される)と、半導体/チャネル層(例えば、
図1a、1b、1c、および1dにそれぞれ6、6’、6’’、および6’’’として示される)と、ゲートコンタクト(例えば、
図1a、1b、1c、および1dにそれぞれ10、10’、10’’、および10’’’として示される)と、基板(例えば、
図1a、1b、1c、および1dにそれぞれ12、12’、12’’、および12’’’として示される)と、ソースコンタクトおよびドレインコンタクト(例えば、
図1a、1b、1c、および1dにそれぞれ2、2’、2’’、2’’’、4、4’、4’’、および4’’’として示される)と、を含むことが可能である。1つまたは複数の任意選択の層も、また存在可能である。例えば、上側層の湿潤性および結晶化を改良するために、任意選択の緩衝層を基板上に堆積させることが可能である。任意選択の表面改質膜は、ゲート電極上に配設可能である。
【0071】
ボトムゲートトップコンタクト薄膜トランジスターの例を用いて、
図2は、本教示に係る有機材料を層1(表面改質剤として)、層2(ゲート誘電体として)、および/または封入層3(エッチストップ材料/ブロッキング材料/不動態化材料/障壁材料として)で利用可能である場合を例示している。
【0072】
したがって、本ポリマーは、半導体層に近接する薄膜材料として堆積させて、薄膜トランジスターの誘電体層として機能させることが可能である。特定的には、薄膜材料は、一方の側の半導体薄膜層と反対側の電気伝導性部材(すなわち、ゲート電極)とを結合することが可能である。誘電体層の厚さは、典型的には、約10nm〜約5000nm、好ましくは約50nm〜約1000nm、より好ましくは約200nm〜約500nmの範囲内である。いくつかの実施形態では、半導体層と本ポリマーを含む誘電体層との間に1つまたは複数の中間層を存在させることが可能である。中間層は、1種または複数種の線状誘電体ポリマーから作製可能であり、その例は、これ以降に提供される。
【0073】
いくつかの実施形態では、誘電体層は、互いに上に逐次的に堆積された2層以上の誘電体材料を有する多層ラミネート(ただし、1つまたは複数の中間層が存在可能である)であることが可能であり、この場合、少なくとも層の1つは、本教示に係るポリマーを含む組成物から作製される。例えば、多層ラミネートは、本ポリマーのみを液体媒体中に含む組成物から作製された少なくとも1つの層と、線状誘電体ポリマー材料または無機(例えば、金属酸化物)誘電体材料から作製された少なくとも1つの層と、を含むことが可能である。誘電体材料が有機および無機のサブ層を実施形態では、接着性を改良するためにサブ層間に中間層を存在させることが可能である。
【0074】
(同一の誘電体層または独立した誘電体層のいずれかで)本ポリマーと組み合わせて使用可能な線状誘電体ポリマーの例としては、フッ素化p−キシレン、フルオロポリアリールエーテル、フッ素化ポリイミド、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(α−ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルトルエン)、ポリエチレン、cis−ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(2−メチル−1,3−ブタジエン)、ポリ(p−キシリレン)、ポリ(α−α−α’−α’−テトラフルオロ−p−キシリレン)、ポリ[1,1−(2−メチルプロパン)ビス(4−フェニル)カーボネート]、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリ(4−クロロスチレン)、ポリ(2,6−ジクロロスチレン)、ポリ(4−ブロモスチレン)、ポリ(2、6−ジメチル−1(4−フェニレンエーテル))、ポリイソブチレン、ポリ(ビニルシクロヘキサン)、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリフェニレン、ポリ(エチレン/テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethyelene))、ポリ(エチレン/クロロトリフルオロエチレン)、フッ素化エチレン/プロピレンコポリマー、ポリスチレン−co−α−メチルスチレン、エチレン/エチルアセテートコポリマー、ポリ(スチレン/ブタジエン)、ポリ(スチレン/2,4−ジメチルスチレン)、ポリプロピレン−co−1−ブテン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(ビニルフェノール)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアルコール−co−エチレン)、ポリ(イソブチレン/メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルフェノール/メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルクロリド)、ポリサッカリド、例えば、2−ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート(actate)、セルロース(cellullose)アセテートブチレート、エチルセルロース、シアノ化(エトキシル化)ポリサッカリド、例えば、シアノプルラン(例えば、CYMM(登録商標))、ベンゾシクロブテン系ポリマー、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン−co−ブチルメタクリレート)、ポリ(4−ビニルピリジン−co−スチレン)、ポリ(1−ビニルピロリドン−co−スチレン)、ポリ(1−ビニルピロリドン−co−ビニルアセテート)、ポリ(ビニリジンフッ化物)、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリロニトリル−co−ブタジエン−co−スチレン)、ポリ(アクリロニトリル−co−メチルアクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリビニルピロリドン、ポリ(ペンタフルオロスチレン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(テトラヒドロフラン)、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(メチルビニルエーテル−alt−無水マレイン酸)、ポリ(エチルビニールエーテル)、ポリ(エチレン−alt−無水マレイン酸)、ポリ(アリルアミン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルシンナメート)、ポリ(ビニルステアレート)、ポリ(ビニルプロピオネート)、ポリ(ビニルホルメート)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)、ポリ(無水マレイン酸−alt−1−オクタデカン)、ポリ(テトラヒドロフリルメタクリレート)、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)、ポリ(プロピレンカーボネート)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)、ポリ(ジアリルイソフタレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキシド)、ポリ(フルオロプロピレンオキシド−co−ペルフルオロホルムアルデヒド)、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。それに加えて、ペルフルオロ(1−ブテニルビニルエーテル)ホモシクロポリマー(例えば、CYTOP(登録商標)という商品名のもの)を使用することが可能である。そのようなフッ素化シクロポリマーの例としては、以下の構造:
【化24】
の1つを有するものが挙げられる。また、以下の構造:
【化25】
を有するポリ[4,5−ジフルオロ−2,2−ビス(トリフルオロメチル)−1,3−ジオキソール−co−テトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標)AF2400という商品名で市販されている)を使用することも可能である。
【0075】
半導体層は、有機半伝導性の分子またはポリマーから作製された有機半導体材料を含むことが可能である。p型か、n型か、当技術分野で有用であることが公知のまたは判明した他の型かにかかわらず、種々の縮合ヘテロ環、芳香族炭化水素(例えば、ペンタセン)、ポリチオフェン、縮合(ヘテロ)芳香族物質(例えば、ペリレンイミドおよびナフタレンイミドの小分子またはポリマー)、および他のそのような有機半導体の化合物または材料が例として挙げられる。例えば、半導体部材は、米国特許第6,585,914号明細書、同第6,608,323号明細書、同第6,991,749号明細書、同第7,374702号明細書、同第7,528,176号明細書、同第7,569,693号明細書、同第7,605,225号明細書、同第7,671,202号明細書、同第7,893,265号明細書、同第7,892,454号明細書、同第7,902363号明細書、同第7,928,249号明細書、同第7,947,837、同第8,022,214号明細書、ならびに国際公開第2009/098254号パンフレット、国際公開第2009/098252号パンフレット、国際公開第2009/098253号パンフレット、国際公開第2009/098250号パンフレット、国際公開第2010/117449号パンフレット、および国際公開第2011/082234号パンフレットに記載の1種または複数種の化合物および/またはポリマーから作製可能である。いくつかの実施形態では、半導体層は、無機半導体材料、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、当技術分野で公知の種々の金属酸化物および金属カルコゲン化物などを含むことが可能である。金属酸化物半導体の例としては、酸化インジウム(In
2O
3)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、亜鉛スズ酸化物(ZTO)、インジウムガリウム酸化物(IGO)、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)、インジウムスズ亜鉛酸化物(ITZO)、酸化スズ(SnO
2)、および酸化亜鉛(ZnO)が挙げられる。金属カルコゲン化物半導体の例としては、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)などが挙げられる。溶液相加工された金属酸化物および金属カルコゲン化物は、例えば、米国特許第8,017,458号明細書に記載されている。他の選択肢として、半導体層は、気相加工された(例えば、スパッタリングされた)金属酸化物またはカルコゲン化物を含むことが可能である。
【0076】
本教示に係る誘電体材料は、本明細書に記載の1種または複数種のポリマーを有機溶媒中に溶解して誘電体組成物を提供することと、誘電体組成物を基板上に堆積させることと(例えば、スピン塗布または印刷により)、任意選択で少なくとも1つの硬化工程を行って誘電体材料を形成することと、により調製可能である。例えば、硬化工程は、照射(例えば、光をフラッド照射することにより、またはUV−visスペクトル内の選択的波長で照射することにより)を含むことが可能である。特定の実施形態では、堆積工程前、1種または複数種の金属酸化物を誘電体組成物に添加することが可能である。特定の材料では、堆積工程前、1種または複数種の線状誘電体ポリマーを誘電体組成物に添加することが可能である。特定の実施形態では、後照射焼成工程を行うことが可能である。有機半導体層は、誘電体層の形成前または形成後、溶液相プロセスを介して形成可能である。例えば、有機半導体層は、誘電体組成物中の有機溶媒に直交する有機溶媒中に有機半伝導性の分子またはポリマーを含む組成物から形成可能である。無機半導体は、スパッタリングなどの気相堆積により形成可能である。
【0077】
いくつかの実施形態では、1種または複数種の本明細書に記載のポリマーを有機溶媒中に溶解させて誘電体組成物を提供することと(ただし、誘電体組成物は、任意選択で、線状誘電体ポリマー、金属酸化物、および架橋剤の少なくとも1つを含むことが可能である)、誘電体組成物を基板上に堆積させて(例えば、スピン塗布または印刷により)第1の層を形成することと、線状誘電体ポリマーまたは金属酸化物を含む組成物を堆積させて第2の層を形成することと、により、本教示に係る多層誘電体材料を作製することが可能である。各堆積工程後、例えば、本明細書に記載のパラメーターを用いて照射および任意選択で加熱により、硬化工程を行うことが可能である。有機半導体層は、多層誘電体層の形成前または形成後、溶液相プロセスを介して形成可能である。例えば、有機半導体層は、誘電体組成物中の有機溶媒に直交する有機溶媒中に有機半伝導性の分子またはポリマーを含む組成物から形成可能である。無機半導体は、スパッタリングなどの気相堆積により形成可能である。
【0078】
本ポリマーから作製される架橋薄膜材料はまた、湿気および酸素に対する障壁性が与えられるのであれば、薄膜トランジスターの不動態化層として使用可能である。不動態化層として使用する場合、薄膜材料は、約0.2μm〜約5μmの範囲内の厚さを有することが可能である。不動態化層は、1種または複数種の本明細書に記載のポリマーを有機溶媒中に溶解させてコーティング配合物を提供することと、コーティング配合物を基板上に(例えば、ソース電極およびドレイン電極を覆って)堆積させることと(例えば、スピン塗布または印刷により)、任意選択で少なくとも1つの硬化工程を行って不動態化層を形成することと、により作製可能である。硬化工程は、照射線によりさらには任意選択で熱により行うことが可能である。改良された湿気ブロッキング性および酸素ブロッキング性を提供可能な本架橋有機材料を不動態化層として用いることにより、薄膜トランジスターは、より良好なデバイス信頼性を達成することが可能である。それに加えて、本線状ポリマーは、有機半伝導性の分子またはポリマーを堆積させるために典型的に使用される溶媒に直交する溶媒中に溶解させることが可能であるので、本線状ポリマーを含む不動態化層は、有機半導体チャンネル領域に損傷を与えることなく、トップコンタクトトランジスター構造のソース電極およびドレイン電極の上に溶液相プロセスを介して形成可能である。
【0079】
本ポリマーは、比較的低い硬化線量および/またはより長い波長で光架橋可能であるので、低い光化学的耐性を有するプラスチック可撓性基板を含めて、多種多様な基板に適合可能である。そのような可撓性基板の例は、ポリエステル類、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン類、例えば、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、およびポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド類、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリエーテルケトン類、ポリイミド類、アクリル樹脂類、ポリメチルメタクリレート類、ならびにそれらのブレンドおよび/またはコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、基板は、比較的低い耐熱性および/または耐薬品性を有する安価な剛性基板であることが可能である。例えば、本有機薄膜は、石英やVYCOR(登録商標)などのより高価なかつより高い耐熱性および/または耐薬品性のガラス基板とは対照的に、安価なソーダライムガラス基板に結合可能である。薄膜トランジスターで一般に使用される基板ゲート材料は、ドープシリコンウエハ、ガラス上のスズドープ酸化インジウム、ポリイミド膜上またはマイラー膜上のスズドープ酸化インジウム、単独のまたはポリエチレンテレフタレート、ドープポリチオフェンなどのポリマー上にコーティングされたアルミニウムまたは他の金属を含む。
【0080】
したがって、本教示はまた、本ポリマーの少なくとも1つから調製された架橋材料を含む有機層を含む電子デバイス、光学デバイス、または光電子デバイスに関する。ただし、有機層は、直接にまたは保護中間層や表面改質中間層などの任意選択で存在する介在層を介して、半導体層(例えば、有機もしくは無機の半導体層)および/または伝導性部材(例えば、ソース電極、ドレイン電極、もしくはゲート電極のいずれかとして機能する金属コンタクト)に接触または結合した状態をとることが可能である。種々の実施形態では、デバイスは、トランジスターデバイス、例えば、有機薄膜トランジスター(OTFT)(より特定的には、有機電界効果トランジスター(OFET)もしくは有機発光トランジスター(OLET))または半導体酸化物薄膜トランジスター(SOTFT)であることが可能である。ソース電極およびドレイン電極さらにはゲート電極は、種々の堆積技術を用いて作製可能である。例えば、ソース電極およびドレイン電極は、マスクを介して堆積させることが可能であるか、または堆積させてからエッチングすることが可能である(例えば、フォトリソグラフィーを用いて)。好適な堆積技術としては、銅、アルミニウム、金、銀、白金、パラジウム、および/もしくはニッケルを含む金属もしくは金属合金、またはポリエチレンチオキシチオフェン(PEDOT)などの電気伝導性ポリマーからの、電着、気化、スパッタリング、電気メッキ、コーティング、レーザーアブレーション、およびオフセット印刷が挙げられる。
【0081】
本教示の態様は、本明細書に記載の誘電体材料を含む誘電体層と、半導体層と、ゲート電極と、ソース電極と、ドレイン電極と、を含む薄膜トランジスターデバイスに関する。誘電体層は、典型的には、半導体層とゲート電極との間に配設される。デバイスジオメトリーに依存して、ソース電極およびドレイン電極は、半導体層の上に配設可能であるか(トップコンタクト)、または半導体層は、ソース電極およびドレイン電極の上に配設可能である(ボトムコンタクト)。
【0082】
本教示の他の態様は、本教示に係る誘電体材料を含む電界効果トランジスターの作製方法に関する。本教示に係る誘電体材料は、トップゲートトップコンタクト構造、トップゲートボトムコンタクト構造、ボトムゲートトップコンタクト構造、およびボトムゲートボトムコンタクト構造をはじめとする種々のタイプの電界効果トランジスターの作製に使用可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
いくつかの実施形態では、本方法は、本教示に係る誘電体組成物を基板(ゲート)上に堆積させて誘電体層を形成することと(ただし、誘電体組成物は、第1の溶媒中に溶解された1種または複数種の本明細書に記載のポリマーを含む)、半伝導性組成物を誘電体層上に堆積させて半導体層を形成することと(ただし、半伝導性組成物は、第2の溶媒中に溶解された1種または複数種の半伝導性化合物(例えば、小分子化合物またはポリマー)を含み、かつ、第1の溶媒および第2の溶媒は、直交溶媒である)、第1の電気コンタクトおよび第2の電気コンタクト(ソースおよびドレイン)を半導体層上に形成するによりトップコンタクトボトムゲート有機電界効果トランジスターを提供することと、を含むことが可能である。本方法は、照射線で架橋を引き起こすことにより誘電体層を硬化させることを含むことが可能である。
【0084】
いくつかの実施形態では、本方法は、本教示に係る誘電体組成物を基板(ゲート)上に堆積させて誘電体層を形成することと(ただし、誘電体組成物は、第1の溶媒中に溶解された1種または複数種の本明細書に記載のポリマーを含む)、第1の電気コンタクトおよび第2の電気コンタクト(ソースおよびドレイン)を誘電体材料の上に形成することと、半伝導性組成物を第1および第2の電気コンタクトならびに誘電体層の上に堆積させて(すなわち、電気コンタクトおよび電気コンタクト間の誘電体材料の領域を覆って)半導体層を形成することにより(ただし、半伝導性組成物は、第2の溶媒中に溶解された1種または複数種の半伝導性化合物(例えば、小分子化合物またはポリマー)を含み、かつ、第1の溶媒および第2の溶媒は、直交溶媒である)、ボトムコンタクトボトムゲート有機電界効果トランジスターを提供することと、を含むことが可能である。本方法は、照射線で架橋を引き起こすことにより誘電体層を硬化させることを含むことが可能である。
【0085】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の電気コンタクトおよび第2の電気コンタクト(ソースおよびドレイン)を基板上に形成することと、半伝導性組成物を第1および第2の電気コンタクトの上に堆積させて(すなわち、電気コンタクトおよび電気コンタクト間の基板の領域を覆って)半導体層を形成することと(ただし、半伝導性組成物は、第1の溶媒中に溶解された1種または複数種の半伝導性化合物(例えば、小分子化合物またはポリマー)を含む)、本教示に係る誘電体組成物を半導体層の上に堆積させて誘電体層を形成することと(ただし、誘電体組成物は、第2の溶媒中に溶解された1種または複数種の本明細書に記載のポリマーを含み、かつ第1の溶媒および第2の溶媒は、直交溶媒である)、第3の電気コンタクト(ゲート)を誘電体材料の上に形成してボトムコンタクトトップゲート有機電界効果トランジスターを提供することと(ただし、第3の電気コンタクトは、第1および第2の電気コンタクト間の領域の上に存在する)、を含むことが可能である。本方法は、照射線で架橋を引き起こすことにより誘電体層を硬化させることを含むことが可能である。
【0086】
いくつかの実施形態では、本方法は、半伝導性組成物を基板上に堆積させて半導体層を形成することと(ただし、半伝導性組成物は、第1の溶媒中に溶解された1種または複数種の半伝導性化合物(例えば、小分子化合物またはポリマー)を含む)、第1の電気コンタクトおよび第2の電気コンタクト(ソースおよびドレイン)を半導体層の上に形成することと、本教示に係る誘電体組成物を第1および第2の電気コンタクトならびに第1および第2の電気コンタクト間の半導体層の領域の上に堆積させて誘電体層を形成すること(ただし、誘電体組成物は、第2の溶媒中に溶解された1種または複数種の本明細書に記載のポリマーを含み、かつ第1の溶媒および第2の溶媒は、直交溶媒である)、第3の電気コンタクト(ゲート)を誘電体材料の上に形成してトップコンタクトトップゲート有機電界効果トランジスターを提供することと(ただし、第3の電気コンタクトは、第1および第2の電気コンタクト間の領域の上に存在する)、を含むことが可能である。本方法は、照射線で架橋を引き起こすことにより誘電体層を硬化させることを含むことが可能である。
【0087】
いくつかの実施形態では、本方法は、本教示に係る誘電体組成物を基板(ゲート)上に堆積させて誘電体層を形成すること(ただし、誘電体組成物は、1種または複数種の本明細書に記載のポリマーを含む)、金属酸化物半導体層を誘電体層上に形成することと、第1の電気コンタクトおよび第2の電気コンタクト(ソースおよびドレイン)を半導体層上に形成することにより、トップコンタクトボトムゲート金属酸化物電界効果トランジスターを提供することと、を含むことが可能である。本方法は、照射線で架橋を引き起こすことにより誘電体層を硬化させることを含むことが可能である。
【0088】
いくつかの実施形態では、本方法は、本教示に係る誘電体組成物を基板(ゲート)上に堆積させて誘電体層を形成すること(ただし、誘電体組成物は、1種または複数種の本明細書に記載のポリマーを含む)、第1の電気コンタクトおよび第2の電気コンタクト(ソースおよびドレイン)を誘電体材料の上に形成することと、金属酸化物半導体層を第1および第2の電気コンタクトならびに誘電体層の上に形成して(すなわち、電気コンタクトおよび電気コンタクト間の誘電体材料の領域を覆って)ボトムコンタクトボトムゲート金属酸化物電界効果トランジスターを提供することと、を含むことが可能である。本方法は、照射線で架橋を引き起こすことにより誘電体層を硬化させることを含むことが可能である。
【0089】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1の電気コンタクトおよび第2の電気コンタクト(ソースおよびドレイン)を基板上に形成することと、金属酸化物半導体層を第1および第2の電気コンタクトの上に形成することと(すなわち、電気コンタクトおよび電気コンタクト間の基板の領域を覆う)、本教示に係る誘電体組成物を半導体層の上に堆積させて誘電体層を形成することと(ただし、誘電体組成物は、1種または複数種の本明細書に記載のポリマーを含む)、第3の電気コンタクト(ゲート)を誘電体材料の上に形成して(ただし、第3の電気コンタクトは、第1および第2の電気コンタクト間の領域の上に存在する)ボトムコンタクトトップゲート金属酸化物電界効果トランジスターを提供することと、を含むことが可能である。本方法は、照射線で架橋を引き起こすことにより誘電体層を硬化させることを含むことが可能である。
【0090】
いくつかの実施形態では、本方法は、金属酸化物半導体層を基板上に形成することと、第1の電気コンタクトおよび第2の電気コンタクト(ソースおよびドレイン)を半導体層の上に形成することと、本教示に係る誘電体組成物を第1および第2の電気コンタクトならびに第1および第2の電気コンタクト間の半導体層の領域の上に堆積させて誘電体層を形成することと(ただし、誘電体組成物は、1種または複数種の本明細書に記載のポリマーを含む)、第3の電気コンタクト(ゲート)を誘電体材料の上に形成して(ただし、第3の電気コンタクトは、第1および第2の電気コンタクト間の領域の上に存在する)トップコンタクトトップゲート金属酸化物電界効果トランジスターを提供することと、を含むことが可能である。本方法は、照射線で架橋を引き起こすことにより誘電体層を硬化させることを含むことが可能である。
【0091】
半導体層および種々の電気コンタクトは、当業者に公知の種々の堆積プロセスにより形成可能である。例えば、半導体層は、スパッタリング、イオン支援堆積(IAD)、物理気相堆積、さまざまなタイプの印刷技術(例えば、フレキソ印刷、リソグラフィー印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、パッド印刷など)、ドロップキャスティング、ディップ塗布、ドクターブレード塗布、ロール塗布、スピン塗布などのプロセスにより形成可能であるが、これらに限定されるものではない。好ましい実施形態では、半導体層は、スピン塗布、スロット塗布、印刷などの溶液相プロセスから形成可能である。電気コンタクトは、限定されるものではないが、熱蒸発および無線周波数スパッタリングまたはeビームスパッタリングなどのプロセス、さらには限定されるものではないが、直前に記載のプロセス(例えば、フレキソ印刷、リソグラフィー印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、パッド印刷、スクリーン印刷、ドロップキャスティング、ディップ塗布、ドクターブレード塗布、ロール塗布、およびスピン塗布)を含む種々の堆積プロセスにより、形成可能である。
【0092】
本教示のさらに他の態様は、本教示に係る表面改質層を含む電界効果トランジスターの作製方法に関する。例えば、本方法は、ソースコンタクトおよびドレインコンタクトの形成、半導体層の形成、ゲート誘電体層の形成、ならびにゲートコンタクトの形成(これらの工程の順序にかかわらず、所望の構成に必要とされるとおり)の前、表面改質剤組成物を基板(例えば、ガラス)上に堆積させることを含む。ただし、表面改質剤組成物は、1種または複数種の本明細書に記載のポリマーを含む。本方法は、照射線で架橋を引き起こすことにより誘電体層を硬化させることを含むことが可能である。
【0093】
本教示のさらなる態様は、本教示に係るフォトレジストを用いて電界効果トランジスターの半導体層をパターニングする方法に関する。例えば、本方法は、本教示に係る1種または複数種のポリマーを含む組成物を半導体層の少なくとも一部分の上に堆積させてフォトレジストを形成することと、フォトマスクを介してフォトレジストに照射線を照射することによりフォトレジストを架橋することと、1種または複数種の現像剤を用いてフォトレジストの非照射部分を除去して半導体層の一部を露出させることと、半導体層の露出部分をエッチングすることと、フォトレジストを剥離してパターン化半導体層を提供することと、を含むことが可能である。
【実施例】
【0094】
以下の実施例は、本教示をさらに例示してその理解を容易にすべく提供されたものであり、本発明をなんら限定しようとするものではない。
【0095】
実施例1: ポリマー合成
実施例1a: P(DM−CydEMA)の合成
【化26】
工程1: 2(エチルジメトキシ−シンナミリデンアセテート)の調製
30mLの無水DMF中のNaH(鉱油中60%分散液、1.39g、34.75mmol)の懸濁液に、無水DMF(20mL)中のトリエチル4−ホスホノクロトネート(7.7mL、34.75mmol)の溶液を徐々に添加した。得られた混合物を窒素下、室温で30分間攪拌し、次いで、20mLの無水DMF中の1(2,5−ジメトキシベンズアルデヒド)(5.25g、31.59mmol)の溶液を添加した。反応混合物を室温で15時間攪拌し、次いで、水を用いてクエンチした。エチルアセテートを添加し、有機相を分離し、Na
2SO
4で脱水し、ロータリーエバポレーターで濃縮して粗化合物を黄色油として生成させた。粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン:エチルアセテート(4:1、v/v))により精製して、化合物2(エチルジメトキシ−シンナミリデンアセテート)を鮮黄色固体として与えた(6.23g、収率75.1%)。
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ7.48(dd,1H,J=7.5Hz,11.5Hz)、7.22(d,1H,J=15.5Hz)、7.05(d,1H,J=2.0Hz)、6.89(m,3H)、5.96(d,1H,J=15.5Hz)、4.23(q,2H)3.90(s,3H)、3.80(s,3H)、1.32(t,3H)。
【0096】
工程2: 3(ジメトキシ−シンナミリデン酢酸)の調製
化合物2(エチルジメトキシ−シンナミリデンアセテート)(6.0g、22.87mmol)を120mLのメタノール(MeOH)中に懸濁させて、水中のNaOHの溶液(2.29M、25.0mL)で処理した。反応混合物を還流下で4時間加熱し、室温に冷却し、次いで、50mLの水中の12.0mLの濃水性HClで処理した。得られた混合物を5分間攪拌して鮮黄色固体を生成し、これを濾過し、水で洗浄し、70℃の真空オーブン(P=20Torr)中で一晩乾燥させた。化合物3(ジメトキシ−シンナミリデン酢酸)を鮮黄色固体(3.55g、収率66%)として得た。
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ7.58(dd,1H,J=7.0Hz,11.5Hz)、7.31(d,1H,J=15Hz)、7.07(d,1H,J=2.0Hz)、6.84(m,3H)、5.98(d,1H,J=15Hz)、3.86(s,3H)、3.82(s,3H)。
【0097】
工程3: 4(ジメトキシ−シンナミリデンアセチルクロリド)の調製
化合物3(ジメトキシ−シンナミリデン酢酸)(3.05g、13.02mmol)を60.0mLの無水THF中に溶解させて、オキサリルクロリド(1.36mL、15.62mmol)および6滴のDMFでそれぞれ処理した。反応混合物を室温で4時間攪拌し、次いで、ロータリーエバポレーターで濃縮して揮発性物質をすべて除去した。化合物4(ジメトキシ−シンナミリデンアセチルクロリド)を暗黄色固体(3.0g、収率91.2%)として得た。
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ7.63(dd,1H,J=8.5Hz,11.5Hz)、7.42(d,1H,J=15Hz)、7.06(d,1H,J=3.0Hz)、6.95(m,2H)、6.85(d,1H,J=8.5Hz)、6.17(d,1H,J=15Hz)、3.86(s,3H)、3.82(s,3H)。
【0098】
工程4: ポリ(ジメトキシ−シンナミリデンアセチルエチルメタクリレート)[P(DM−CydEMA)]の調製
ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(1.19g、Mw=20,000g/mol、ヒドロキシ基:9.14mmol)を5.0mLの無水ピリジンに溶解させた。このポリマー溶液に10.0mLの無水THF中の4(ジメトキシ−シンナミリデンアセチルクロリド)(3.0g、11.87mmol)の溶液を徐々に添加した。反応混合物を室温で一晩攪拌し、次いで、約100mLの氷冷メタノール(MeOH)中に沈殿させた。ポリマー沈殿物を捕集し、2つの追加の溶解−沈殿工程(THF/MeOH)により精製して2.69gのポリ(ジメトキシ−シンナミリデンアセチルエチルメタクリレート)[P(DM−CydEMA)]を黄色固体として生成させた(収率85%)。
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ7.44(m,ブロード,1H)、7.18(m,ブロード,1H)、7.03(m,ブロード,1H)、6.90(m,ブロード,1H)、6.78(m,ブロード,2H)、5.94(m,ブロード,1H)、4.29(s,ブロード,2H)、4.16(s,ブロード,2H)、3.76(d,シャープ,6H)、1.90−0.86(m,5H)。
【0099】
実施例1b: (DM−Cyd/アセチル(0.8:0.2)EMA)の合成
【化27】
ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(1.0g、Mw=20,000g/mol、ヒドロキシ基:7.68mmol)を5.0mLの無水ピリジン中に溶解させた。このポリマー溶液に10.0mLの無水THF中の4(ジメトキシ−シンナミリデンアセチルクロリド)(1.55g、6.14mmol、0.8当量)の溶液を徐々に添加した。反応混合物を室温で一晩攪拌し、次いで、THF中のアセチルクロリド(0.3g、3.84mmol、0.5当量)の溶液を添加し、反応系をさらに10時間撹拌した。反応混合物を約100mLの氷冷メタノール(MeOH)中に沈殿させた。ポリマー沈殿物を捕集し、2つの追加の溶解−沈殿工程(THF/MeOH)により精製して、ポリ(ジメトキシ−シンナミリデンアセチル/アセチル(0.8:0.2)エチルメタクリレート)P(DM−Cyd/アセチル(0.8:0.2)EMA)を黄色固体として生成させた。
【0100】
実施例1c: P(CydEMA)の合成
【化28】
工程1: 6(シンナミリデンアセチルクロリド)の調製
化合物5(シンナミリデン酢酸)(5.0g、28.7mmol)を90.0mLの無水THF中に溶解させて、オキサリルクロリド(3.0mL、34.3mmol)および3滴のDMFで処理した。反応混合物を室温で4時間攪拌し、次いで、ロータリーエバポレーターで濃縮して揮発性物質をすべて除去した。化合物6(シンナミリデンアセチルクロリド)を淡黄色固体(5.0g、収率90.4%)として得た。
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ7.65(dd,1H,J=7.5Hz,11.5Hz)、7.54(d,1H,J=2.0Hz)、7.53(d,1H,J=2.0Hz)、7.44(m,3H)、7.11(d,1H,J=15.0Hz)、6.95(dd,1H,J=7.5Hz,11.5Hz)、6.21(d,1H,J=12.5 Hz)。
【0101】
工程2: ポリ(シンナミリデンアセチルエチルメタクリレート)[P(CydEMA)]の調製
ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(1.56g、Mw=20,000g/mol、ヒドロキシ基:11.99mmol)を5.0mLの無水ピリジン中に溶解させた。このポリマー溶液に10.0mLの無水THF中の6(シンナミリデンアセチルクロリド)(3.0g、15.57mmol)の溶液を徐々に添加した。反応混合物を室温で一晩攪拌し、次いで、約100mLの氷冷メタノール(MeOH)中に沈殿させた。ポリマー沈殿物を捕集し、2つの追加の溶解−沈殿工程(THF/MeOH)により精製して、3.32gのポリ(シンナミリデンアセチルエチルメタクリレート)[P(CydEMA)]を淡黄色固体として生成させた(収率80%)。
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ7.44(d,ブロード,3H)、7.31(d,ブロード,3H)、6.87(s,ブロード,2H)、5.98(m,ブロード,1H)、4.29(s,ブロード,2H)、4.17(s,ブロード,2H)、1.95−0.90(m,5H)。C
17H
18O
4に対して解析された計算値:C71.31、H6.34、N0.00、実測値:C71.06、H6.45、N0.00、GPC(THF中のRT):M
n=14,051gmol
−1、M
w=26,095gmol
−1およびPDI=1.86(PS標準に対して)。
【0102】
実施例1d: P(Cyd/アセチル(0.9:0.1)EMA)の合成
【化29】
ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(0.75g、Mw=20,000g/mol、ヒドロキシ基:5.76mmol)を5.0mLの無水ピリジン中に溶解させた。このポリマー溶液に2.0mLの無水THF中の6(シンナミリデンアセチルクロリド)(1.00g、5.19mmol、0.9当量)の溶液を徐々に添加した。反応混合物を室温で一晩攪拌し、次いで、1.0mLの無水THF中のアセチルクロリド(0.136g、1.73mmol、0.3当量)の溶液を添加し、反応系をさらに24時間撹拌した。反応混合物を約100mLの氷冷メタノール(MeOH)中に沈殿させた。ポリマー沈殿物を捕集し、2つの追加の溶解−沈殿工程(THF/MeOH)により精製して、ポリ(シンナミリデンアセチル/アセチル(0.9:0.1)エチルメタクリレート)P(Cyd/アセチル(0.9:0.1)EMA)を灰白色固体として生成させた(1.0g、63%)。
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ7.44(d,ブロード,3H)、7.31(d,ブロード,3H)、6.87(s,ブロード,2H)、5.98(m,ブロード,1H)、4.30(s,ブロード,2H)、4.16(s,ブロード,2H)、2.01(s,ブロード,約0.1H)、1.95−0.90(m,5H)。
【0103】
実施例1e: P(Cyd/アセチルEMA)の合成
工程1: (2E,4E)−5−フェニルペンタ−2,4−ジエン酸(5、300.0g、1.7mol)を20℃で無水ジクロロメタン(954g)中に懸濁させた。92分間にわたりオキサリルクロリド(264.0g、2.1mol)を徐々に添加し、続いて、無水DMF(0.2g)を注意深く添加した。この混合物を20℃でさらに5.5時間撹拌し、その後、40℃未満の温度を用いて真空中(1024mbar〜20mbarの圧力)で揮発性物質をすべて除去した。粗生成物(333.9g)を取得して、さらなる精製を行うことなく次の工程に直接使用した。
【0104】
工程2: 窒素下でポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(100.0g、0.77mol)を撹拌しながら無水ピリジン(121.7g)および無水THF(258g)中に溶解させた。10℃に維持された反応温度を用いて、無水THF(204g)中の工程1からの(2E,4E)−5−フェニルペンタ−2,4−ジエン酸クロリド(6、170g、0.88mol)の溶液を60分間にわたり徐々に添加した。得られた反応混合物を窒素下、20℃でさらに4時間撹拌した。次いで、10℃で9分間にわたりアセチルクロリド(9.0g、0.11mol)を徐々に添加し、この混合物を20℃で一晩攪拌し続けた後、濾過して沈殿物を除去した。濾過ケークをTHF(100g)で洗浄した。合わせた濾液を約600gに濃縮し、この溶液をメタノール(5L、0.15gモノメチルエーテルヒドロキノンMEHQ含有)中に沈殿させた。沈殿物を濾過により捕集してメタノール(420mL)で洗浄し、真空中で乾燥させて粗生成物(199g)を得た。この粗生成物(132g)の一部をジクロロメタン(1060g)中に溶解させ、得られた溶液を脱イオン水(400g×3)で洗浄し、有機層を約300gに濃縮して透明溶液を与え、これをジクロロメタンで約650gに希釈して濾過した。次いで、この溶液(630g)をペンタン(5L、0.1gMEHQ含有)中に沈殿させ、沈殿物を濾過により捕集し、メタノール(420mL、0.1gMEHQ含有、2回)で洗浄し、真空中(10mbar)、60℃で乾燥させて、微黄色粉末を最終生成物として得た。
【0105】
実施例1f: P(SMe−CydEMA)の合成
【化30】
実施例1aに記載のものに類似した手順を用いて、以上の合成スキームに従って調製可能なp−メチチオシンナミリデン酢酸から、ポリ(p−メチチオシンナミリデンアセチルエチルメタクリレート)を合成することが可能である。
【0106】
実施例1g: P(Cyd−CO−EMA)の合成
【化31】
工程1: 1(シンナミリデンカルボニル酢酸)の調製
MeOH(10mL)中のピルビン酸(7.0g、0.079mol)、trans−シンナムアルデヒド(10.5g、0.079mol)の溶液に、0℃で30分間にわたり、MeOH(20mL)中のKOH(6.65g、0.118mol)の溶液を少量ずつ添加した。得られた反応混合物を40℃で1時間かつ室温で一晩撹拌した。黄色沈殿物を真空濾過により捕集し、MeOHで洗浄し、水中に懸濁させ、0.1M HClで酸性化して透明黄色溶液を生成させた。酸性化水性溶液をエチルアセテートで抽出し、Na
2SO
4で脱水し、真空中で濃縮して化合物1を黄色生成物(10g、62%)として生成させた。
1H NMR(500MHz、CDCl3):δ7.79(dd,1H,J=9.0Hz,11.0Hz)、7.03−7.23(m,2H)、7.42−7.62(m,6H)。
【0107】
工程2: ポリ(シンナミリデン−カルボニル−エチルメタクリレート)[P(Cyd−CO−EMA)]の調製
ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(0.096g、Mw=20,000g/mol、ヒドロキシ基:0.742mmol)およびシンナミリデンカルボニル酢酸(0.15g、0.742mmol)をDMF(2mL)中に溶解させ、この溶液にDMAP(4.8mg、w/w5%)を添加した。溶液を室温で2時間撹拌し、DCC(0.17mg、0.816mmol)を添加した。得られた反応混合物を室温で18時間撹拌し、メタノール(MeOH)に沈殿させてポリマーを黄色生成物(130mg、59%)として生成させた。
【0108】
実施例1h: 追加のポリマーの合成
【化32】
以上のスキームに示されるように、実施例1cに記載のものに類似した手順を用いて、市販のカルボン酸から、本教示に係る追加のポリマーを調製することが可能である。
【0109】
実施例2: 溶解性データの比較
本教示に係るホモポリマーおよびコポリマーを、通常の有機溶媒、例えば、アニソールおよびアセテート類、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチルラクテート、およびn−ブチルアセテート中に溶解させて、それらの溶解性データを比較した(表1)。特定的には、予想外なことに、比較的低いモル比(例えば、約10mol.%)でさえも、式(Ib)で示される繰返し単位の存在により溶解時間を有意に短縮可能であることが判明した。例えば、約900mg/mLなどの高濃度で、コポリマーP(Cyd/アセチル(0.9:0.1)EMA)は、約60秒間で完全に溶解することが観察されたが、ホモポリマー(P(CydEMA)は、撹拌しながら完全に溶解させるのに約25分間かかった。
【0110】
【表1】
【0111】
実施例3: 光架橋波長の調整可能性
なんら特定の理論により拘束されることを望むものではないが、分子軌道(MO)計算により決定されるより低いバンドギャップエネルギー(Eg)は、より長い最大吸収波長を示唆するもとと考えられる。本ポリマーの特定の実施形態の発色団単位のMO計算を行い、特定の先行技術ポリマーと比較した。特定的には、Spartan PC(Spartan ’08、バージョン1.0.0、Wavefunction,Inc.)を用いて、B3LYP/6−31G
**レベルの理論で、密度汎関数理論(DFT)計算により、表2に列挙された化合物の気相中性状態のジオメトリー最適化および電子構造計算を行った。本ポリマーの特定の実施形態の発色団単位の最大吸収波長を測定して、特定の先行技術ポリマーと比較した。
【0112】
【表2】
【0113】
実施例4: デバイスの作製および特性解析
実施例4a: 硬化線量の比較
ゲート誘電体材料としてP(DM−CydEMA)またはP(CydEMA)を用いてトップゲートボトムコンタクトTFTを作製した。ポリ(ジメトキシ−シンナモイルエチルメタクリレート)[P(DM−CyEMA)]およびポリ(シンナモイルエチルメタクリレート)[P(CyEMA)]を用いて対照デバイスを作製した。
【化33】
【0114】
スピン塗布された表面改質剤層を有するポリエチレンナフタレート(PEN)膜を基板として使用した。半導体層の堆積前、従来のフォトリソグラフィープロセスにより500Åの銀(Ag)ソース/ドレイン電極を規定した。チャネルの長さおよび幅は、それぞれ、10μmおよび1000μmである。チオール処理プロセスを用いてトランジスターのチャネルおよび電極を改質した。スピン塗布によりPDICN2系半導体層(80nm)を堆積させた。OSC層を120℃で5分間アニールして溶媒残留物を除去した。次いで、約550nmまたは約500nmの厚さを有するP(DM−CydEMA)またはP(CydEMA)の誘電体薄膜をスピン塗布し、種々の硬化線量で架橋すべく365nmUVランプで照射し、次いで、約120℃または約150℃のホットプレート上で5分間焼成した。トランジスターチャネルとの良好な位置合せを行って、ステンシルマスクを介して300Åの銀(Ag)ゲート電極を誘電体層上に気相堆積することにより、TFTを完成させた。約0V〜約−5Vのターンオン電圧および10
5〜10
7のオンオフ電流比で、約0.4cm
2/Vs〜約0.8cm
2/Vsの範囲内の移動度が得られた。
【0115】
図3は、P(DM−CydEMA)の硬化速度と[P(DM−CyEMA)]の硬化速度とを比較している。P(DM−CydEMA)と[P(DM−CyEMA)]とを比較した場合、かなり低い硬化線量であるが同一レベルの架橋を達成可能であることがわかる。特定的には、0.8の任意の規格化単位を用いると(架橋レベルに反比例する)、[P(DM−CyEMA)]では、1000mJの硬化線量を必要とするが、P(DM−CydEMA)では、300mJ程度の低い硬化線量を使用することが可能である。
【0116】
P(CydEMA)の硬化速度と[P(CyEMA)]の硬化速度とを比較している
図4では、類似の観測を行うことが可能である。0.75の任意の規格化単位を用いると、[P(CyEMA)]では、1000mJの硬化線量を必要とするが、P(CydEMA)では、300mJ程度の低い硬化線量を使用することが可能である。
【0117】
実施例4b: 正バイアスの熱ストレス試験
本ポリマーの電気ストレスおよび熱ストレスに対する耐性を調べるために、誘電体層として[P(CydEMA)]またはP(DM−CydEMA)を用いてトップゲートボトムコンタクトTFTを作製し、誘電体層として[P(DM−CyEMA)]または市販のエポキシ材料を用いて作製されたものと比較した。P(DM−CydEMA)、[P(CydEMA)]、および[P(CyEMA)]は、300mJ/cm2でUV硬化させたが、市販の利用可能なエポキシ材料は、150mJ/cm2でUV硬化させた。
【0118】
正バイアスの温度ストレス(PBTS)データを得るために、最初に、TGBCデバイスを約60℃の一定の基板加熱に付し、同時に、ゲート電極を約30Vで一定に維持し、一方、ソース電極およびドレイン電極を両方とも接地した。250秒後、IdVgプロットを取り込み、バイアスストレスをさらに2サイクル繰り返して、合計で少なくとも750秒間のストレス時間を提供した([P(CydEMA)]デバイスでは1500秒間)。
【0119】
図5a〜bを参照して、P(DM−CydEMA)は、[P(DM−CyEMA)]と比較して、PBTSに関して約3倍の改良を示すことがわかる。また、
図6a〜bを参照して、P(CydEMA)デバイスは、1500秒間のストレス時間にわたり無視しうるヒステリシスを示す。さらに、後焼成温度を110℃から135℃にわずかに増大させることにより、P(CydEMA)デバイスは、PBTSで0Vに近いV
THシフトを達成可能であった。
【0120】
比較すると、市販のエポキシ材料は、有意な反時計回りヒステリシスを示すことが
図7からわかる。
【0121】
本明細書に記載の刊行物、特許出願、特許、および他の参照文献はすべて、それらの全体が参照により組み込まれる。矛盾を生じた場合、定義を含む本明細書が優先する。
【0122】
本教示は、その趣旨または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態の実施形態を包含する。したがって、以上の実施形態は、本明細書に記載の本教示を限定するものではなく、あらゆる点で例示的なものと考えるべきである。したがって、本発明の範囲は、以上の説明によってではなく、添付の請求項によって示され、請求項の意味および均等範囲に含まれるすべて変更がそれに包含されることが意図される。