(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[ひずみセンサ材料]
まず、本発明のひずみセンサ材料について説明する。本発明のひずみセンサ材料は、以下説明する(A)導電性粒子および(B)樹脂を含有する導電性樹脂組成物から形成されるものである。
【0013】
そして、本発明のひずみセンサ材料は、導電性樹脂組成物を硬化または乾燥させることにより形成される成形体であるが、この成形体の引張弾性率および破断伸び率を測定したときに、以下の条件(i)〜(iii)の全てを満たすことが必要である。なお、ひずみセンサ材料は、導電性樹脂組成物の硬化条件などに応じて作製されるものである。例えば、ここでのひずみセンサ材料は、温度150℃にて5時間の加熱処理を施すことで硬化させたものである。
【0014】
条件(i):引張弾性率が1GPa以下である。
引張弾性率が条件(i)の上限を超える場合には、ひずみへの応答性や繰り返しの変形に対する耐性が不十分となる。また、ひずみへの応答性や繰り返しの変形に対する耐性とその他の物性とのバランスの観点から、引張弾性率は、0.1MPa以上1GPa以下であることが好ましく、1MPa以上0.5GPa以下であることがより好ましく、1MPa以上0.1GPa以下であることが特に好ましい。
条件(ii):破断伸び率が5%以上である。
破断伸び率が条件(ii)の下限未満の場合には、ひずみへの応答性や繰り返しの変形に対する耐性が不十分となる。また、ひずみへの応答性や繰り返しの変形に対する耐性とその他の物性とのバランスの観点から、破断伸び率は、5%以上1000%以下であることが好ましく、10%以上500%以下であることがより好ましく、20%以上500%以下であることが更により好ましく、30%以上300%以下であることが特に好ましい。
【0015】
引張弾性率および破断伸び率は、島津製作所社製のオートグラフ「AG−50kN X plus」を用いて測定できる。具体的には、ひずみセンサ材料(長さ:50mm、幅:3mm、厚み:100μm)を試料して、つかみ治具幅40mm、引張速度5mm/min、測定温度23℃の条件にて、破断伸び率を測定できる。また、引張弾性率は、測定により得られた応力−ひずみ曲線を用い、応力とひずみが比例している剛性領域における傾きから求めることができる。
【0016】
条件(iii):体積抵抗値が10
4Ω・cm以下である。
体積抵抗値が条件(iii)の上限を超える場合には、ひずみへの応答性が不十分となる。また、ひずみへの応答性とその他の物性とのバランスの観点から、前記条件(v)を満たすことが好ましい。また、同様の観点から、体積抵抗値は、10
−6Ω・cm以上10
2Ω・cm以下であることが好ましく、10
−6Ω・cm以上10Ω・cm以下であることがより好ましく、10
−6Ω・cm以上1Ω・cm以下であることが特に好ましい。
体積抵抗値は、ひずみセンサ材料(長さ:50mm、幅:10mm、厚み:100μm)を試料として、三菱化学アナリテック社製の低抵抗率計「ロレスタGP MCP−T610型」を用いて測定できる(測定温度23℃)。
【0017】
本発明のひずみセンサ材料においては、以下の条件(iv)を満たすことが好ましい。
条件(iv):伸び率が0%の場合の抵抗値R
0と、伸び率が0.05%の抵抗値R
0.05とが、下記数式(F1)で示される条件を満たす。
{(R
0−R
0.05)/R
0}×100 ≧ 0.4・・・(F1)
ひずみへの応答性の観点から、前記数式(F1)の条件を満たすことが好ましい。また、同様の観点から、{(R
0−R
0.05)/R
0}×100の値は、0.6以上であることが好ましく、1以上であることがより好ましく、5以上であることが特に好ましい。
抵抗値は、島津製作所社製のオートグラフ「AG−50kN X plus」を用いて測定できる。具体的には、ひずみセンサ材料(長さ:40mm、幅:10mm、厚み:100μm)を試料して、印加電圧5V、つかみ治具幅40mm、引張速度0.5mm/min、測定温度23℃の条件で、伸び率が0%および0.05%の場合の抵抗値を測定できる。
【0018】
本発明のひずみセンサ材料においては、以下の条件(v)を満たしていてもよい。
条件(v):体積抵抗値VRを、温度を変化させながら(例えば、昇温速度0.5℃/秒で昇温しながら)測定した場合に、温度T℃における体積抵抗値VR
Tと、温度T+10℃における体積抵抗値VR
T+10とが、下記数式(F2)で示される条件を満たす。
{(VR
T+10−VR
T)/VR
T}×100 ≧ 10・・・(F2)
温度への応答性の観点から、前記数式(F2)の条件を満たすことが好ましい。また、同様の観点から、{(VR
T+10−VR
T)/VR
T}×100の値は、20以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。
体積抵抗値は、ひずみセンサ材料(長さ:50mm、幅:10mm、厚み:100μm)を試料として、三菱化学アナリテック社製の低抵抗率計「ロレスタGP MCP−T610型」を用いて測定できる。
また、測定の温度は、ひずみセンサの用途に応じて適宜設定できる。例えば、ひずみセンサの用途が、衣類などのウェアラブルなものである場合には、測定の温度を30℃および40℃とすればよい。
【0019】
なお、引張弾性率、破断伸び率および体積抵抗値を上述した範囲に調整する方法としては、以下のような方法が挙げられる。
引張弾性率は、樹脂の種類、導電性粒子の配合量などを変更することによって調整できる。例えば、導電性粒子の配合量を少なくすれば、引張弾性率を小さくできる。
破断伸び率は、樹脂の種類、導電性粒子の形状および配合量などを変更することによって調整できる。例えば、導電性粒子の配合量を少なくすれば、破断伸び率を大きくできる。また、導電性粒子の形状を球状に近づけるほど、破断伸び率を大きくできる。
体積抵抗値は、樹脂の種類、導電性粒子の形状、粒子径および配合量などを変更することによって調整できる。例えば、導電性粒子の配合量を多くすれば、体積抵抗値を小さくできる。また、導電性粒子の粒子径を大きくすれば、体積抵抗値を小さくできる。
【0020】
[導電性樹脂組成物]
本発明に用いる導電性樹脂組成物は、具体的には、(B)樹脂を含有する樹脂組成物をバインダーとして、(A)導電性粒子を分散させたものである。
【0021】
[(A)成分]
本発明に用いる(A)導電性粒子としては、導電性を有する粒子(粉末)であれば、適宜公知のものを用いることができる。この(A)成分としては、無機物粒子(ニッケル、銅、銀、カーボンなど)、無機物粒子の表面に導電性の高い金属(銀、金など)をコーティングした粒子、有機物粒子の表面に導電性の高い金属(銀、金など)をコーティングした粒子などが挙げられる。これらの導電性粒子の中でも、導電性の観点から、銀粒子が好ましい。
この(A)成分の形状は、特に限定されず、球状、フレーク状、針状などが挙げられる。これらの形状は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、球状の粉末とフレーク状の粉末とを混合してもよい。また、これらの中でも、導電性の観点から、少なくともフレーク状の粉末を含有することが好ましい。
前記(A)成分の平均粒子径は、通常1μm以上40μm以下であるが、導電性の観点の観点から、1μm以上20μm以下であることがより好ましく、2μm以上15μm以下であることがさらにより好ましく、3μm以上12μm以下であることが特に好ましい。なお、平均粒子径は、(A)成分の形状が球状などである場合には、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。また、(A)成分の形状がフレーク状、針状などである場合には、電子顕微鏡による観察により測定できる(長軸方向の長さの平均値)。
【0022】
[樹脂組成物]
本発明に用いる導電性樹脂組成物は、以下説明する樹脂組成物と、前記(A)成分とを含有するものである。
前記樹脂組成物の配合量は、導電性樹脂組成物100質量%に対して、5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上25質量%以下であることが特に好ましい。樹脂組成物の配合量が5質量%未満の場合(導電性粒子の配合量が95質量%を超える場合)には、バインダーとしての樹脂組成物が足りないため、樹脂組成物と導電性粒子とを混合しにくくなる傾向にあり、他方、樹脂組成物の配合量が35質量%を超える場合(導電性粒子の配合量が65質量%未満の場合)には、得られる導電性樹脂組成物を用いた場合に、十分な導電性を得られにくくなる傾向にある。
【0023】
[(B)成分]
本発明に用いる(B)樹脂としては、(B1)熱硬化性樹脂および(B2)熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記(B1)熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、熱硬化性エラストマーなどが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、硬化性の観点から、エポキシ基およびイソシアネート基のうちの少なくともいずれかの基を有することが好ましい。また、引張弾性率および破断伸び率の観点から、これらの熱硬化性樹脂はエラストマー変性されていてもよい。さらに、引張弾性率をより小さくし、破断伸び率をより大きくするという観点から、これらの熱硬化性樹脂は、ロタキサン構造を有することが好ましい。
(B1)成分のうちエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂を適宜用いることができる。このようなエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、およびジシクロペンタジエン型などのエポキシ樹脂が挙げられる。
(B1)成分のうちロタキサン構造を有する樹脂(熱硬化性エラストマー)としては、例えば、アドバンストソフトマテリアルズ社製の「セルム スーパーポリマー」が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。例えば、硬化性、引張弾性率および破断伸び率などの物性のバランスの観点から、エポキシ樹脂と、熱硬化性エラストマーとを併用してもよい。
また、これらの熱硬化性樹脂は、常温(25℃)で液状のものを含有することが好ましく、常温で固形のものを用いる場合には、常温で液状のものと併用することが好ましい。
【0024】
前記(B2)熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリル系共重合体などが挙げられる。これらの中でも、引張弾性率および破断伸び率の観点から、熱可塑性エラストマーを用いることが好ましく、ロタキサン構造を有する熱可塑性エラストマーを用いることがより好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、飽和物であってもよく、不飽和物であってもよい。また、これらの熱可塑性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、(B)成分として、(B1)熱硬化性樹脂と(B2)熱可塑性樹脂とを併用する場合には、硬化性、引張弾性率および破断伸び率などの物性のバランスの観点から、(B1)成分としてエポキシ樹脂などを用い、(B2)成分として熱可塑性エラストマーを用いてもよい。
また、(B)成分として、(B1)熱硬化性樹脂を用いずに、(B2)熱可塑性樹脂のみを用いることも可能であるが、このような場合、他に重合性化合物および重合開始剤などが必要となる。
【0025】
(B)成分として、(B1)熱硬化性樹脂を用いる場合、前記(B)成分の配合量としては、樹脂組成物100質量%に対して、60質量%以上99質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。熱硬化性樹脂の配合量が前記下限未満では、十分な強度が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、樹脂組成物中の硬化成分の含有量が減少し、熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にある。
【0026】
[(C)成分]
本発明に用いる樹脂組成物には、前記(B)成分として(B1)熱硬化性樹脂を用いる場合に、(C)樹脂硬化剤を用いることが好ましい。
この(C)樹脂硬化剤としては、適宜公知の硬化剤を用いることができる。例えば、(B1)熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を用いる場合には、以下のようなものを用いることができる。これらの硬化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
潜在性硬化剤としては、例えば、ノバキュアHX−3722、HX−3721、HX−3748、HX−3088、HX−3613、HX−3921HP、HX−3941HP(旭化成エポキシ社製、商品名)、ジシアンジアミド(DICY)、メラミンが挙げられる。
芳香族アミン系硬化剤としては、例えば、DPE/ODA、BAPP(和歌山精化工業社製、商品名)、4,4’−メチレンジアニリンが挙げられる。
脂肪族ポリアミン系硬化剤としては、例えば、フジキュアFXR−1020、FXR−1030、FXR−1050、FXR−1080、FXR−1081(T&K TOKA社製、商品名)が挙げられる。
アミンアダクト系硬化剤としては、例えば、アミキュアPN−23、PN−F、MY−24、VDH、UDH、PN−31、PN−40(味の素ファインテクノ社製、商品名)、EH−3615S、EH−3293S、EH−3366S、EH−3842、EH−3670S、EH−3636AS、EH−4346S、EH−5016S(ADEKA社製、商品名)が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2P4MHZ、1B2PZ、2MZA、2PZ、C11Z、C17Z、2E4MZ、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNZ(四国化成工業社製など、商品名)が挙げられる。
【0027】
(C)成分を配合する場合、(C)成分の配合量としては、樹脂組成物100質量%に対して、0.5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、2質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。(C)成分の配合量が前記下限未満では、熱硬化性樹脂を硬化せしめる速度が遅延しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応性が速くなり、ポットライフが短くなる傾向にある。
【0028】
[他の成分]
本発明に用いる樹脂組成物には、前記(B)成分および前記(C)成分の他に、必要に応じて、その他の添加剤を加えることができる。その他の添加剤としては、重合性化合物(重合性オリゴマー、反応性希釈剤など)、重合開始剤(有機過酸化物など)、溶剤、チクソ剤、消泡剤、酸化防止剤、改質剤、つや消し剤などが挙げられる。
【0029】
[ひずみセンサ材料の製造方法]
本発明のひずみセンサ材料は、以上説明した導電性樹脂組成物を用いて形成することができる。
具体的には、この導電性樹脂組成物を被測定物上に塗布し、加熱炉などにより所定条件にて加熱して、導電性樹脂組成物を硬化または乾燥させることにより、被測定物上にひずみセンサ材料を形成できる。
また、この導電性樹脂組成物を剥離シート上に塗布し、加熱炉などにより所定条件にて加熱して、導電性樹脂組成物を硬化または乾燥させた後に、剥離シートから剥離して、薄膜状のひずみセンサ材料を形成できる。
ここで用いる塗布装置としては、スクリーン印刷機、メタルマスク印刷機、ディスペンサー、ジェットディスペンサーなどが挙げられる。
導電性樹脂組成物の硬化条件は、導電性樹脂組成物の硬化成分の種類に応じて適宜設定すればよい。例えば、エポキシ樹脂やロタキサン構造を有する樹脂を含有する導電性樹脂組成物を用いる場合には、130〜170℃に設定した加熱炉にて0.5〜8時間の加熱処理をすればよい。
【0030】
[ひずみセンサ]
次に、本発明のひずみセンサについて説明する。本発明のひずみセンサは、以上説明したひずみセンサ材料と、このひずみセンサ材料の抵抗値を測定する抵抗値測定手段と、を備えることを特徴とするものである。
そのため、本発明のひずみセンサでは、ひずみに応答して抵抗値が変化するひずみセンサ材料の抵抗値を測定することにより、被測定物のひずみの変化を検知できる。
また、本発明のひずみセンサは、柔軟性が求められる機器のひずみセンサとして利用でき、例えばウェアラブル機器にも適用可能である。
さらに、本発明のひずみセンサは、用途に応じて、様々な形状に加工できるため、広範囲の用途に利用できる。
【0031】
抵抗値測定手段としては、特に限定されず、公知の抵抗率計を適宜用いることができる。測定する抵抗値は、接続抵抗値であってもよく、体積抵抗値であってもよい。
【0032】
また、本発明のひずみセンサにおいては、前記ひずみセンサ材料が、薄膜であることが好ましい。このような薄膜の厚みは、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。ひずみセンサ材料が薄膜である場合には、製造コストを下げることができ、例えば、使い捨てを想定した用途のひずみセンサとしても利用できる。このような使い捨てを想定した用途としては、輸送管理用途、医療用途などが挙げられる。
【0033】
本発明のひずみセンサにおいては、前記ひずみセンサ材料に、電極が設けられていてもよい。
このような場合に、電極を形成するための材料として、(A)導電性粒子と、(B)樹脂と、を含有する導電性樹脂組成物を用いることができる。例えば、電極を形成するための材料を、導電性樹脂組成物の配合を調整して、導電性に優れ、温度への応答性がない組成とすることが好ましい。このようにすれば、ひずみセンサ材料への接着性に優れ、しかも抵抗値の測定に影響のない電極が形成できる。
【0034】
また、本発明のひずみセンサにより、被測定物の温度の変化を検知することもできる。
このように被測定物のひずみの変化だけでなく、温度の変化も検知する場合には、前記ひずみセンサ材料が、前記条件(v)を満たすことが好ましい。前記条件(v)を満たす場合には、温度への応答性も十分なものとなるため、ひずみの変化だけでなく、温度の変化も検知する温度ひずみセンサとして、特に好適なものとなる。
このような温度ひずみセンサによれば、従来のように、温度センサ(サーミスタなど)とひずみセンサ(金属ひずみゲージ、圧電素子など)を併用しなくとも、温度およびひずみの変化の検知ができる。そのため、温度ひずみセンサの構成をシンプルにでき、小型化を図ることができる。
【0035】
さらに、本発明のひずみセンサを用いて、三軸加速度センサを作製することもできる。例えば、錘とひずみセンサと備える三軸加速度センサが挙げられる。このような三軸加速度センサでは、錘に加速度が加わったときの位置変化を捉えることで、加速度を検知できる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A)成分)
導電性粒子:銀粉末(フレーク状)、平均粒子径4μm、DOWA社製、商品名「FA−8−1」
((B1)成分)
熱硬化性エラストマー:1液硬化型熱硬化性エラストマー、アドバンストソフトマテリアルズ社製、商品名「セルム スーパーポリマーSH3400S」
エポキシ樹脂A:変性エポキシ樹脂、三菱化学社製、商品名「JER 871」
エポキシ樹脂B:変性エポキシ樹脂、DIC社製、商品名「EXA−4850」
エポキシ樹脂C:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、DIC社製、商品名「EXA−830LVP」
((C)成分)
樹脂硬化剤A:4,4’−メチレンジアニリン
樹脂硬化剤B:2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成工業社製、商品名「キュアゾール2P4MHZ−PW」
樹脂硬化剤C:メラミン
【0037】
[実施例1]
熱硬化性エラストマー20質量%および導電性粒子80質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、混練機にて混合することで導電性樹脂組成物を調製した。
そして、テフロン(登録商標)シート上に、マスク(厚み:100μm、開口:50mm×50mm)を用い、導電性樹脂組成物を印刷した。その後、150℃に設定した熱風乾燥炉にて5時間の加熱処理を行い、ひずみセンサ材料を作製した。
【0038】
[実施例2〜5および比較例1〜2]
下記表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、ひずみセンサ材料を得た。
【0039】
<ひずみセンサ材料の評価>
ひずみセンサ材料の評価(引張弾性率、破断伸び率、体積抵抗値、温度応答、伸び応答)を以下のような方法で行った。得られた結果を表1に示す。
(1)引張弾性率、および、(2)破断伸び率
実施例および比較例で得られたひずみセンサ材料を切断して、フィルム状の試料(厚み:100μm、大きさ:3mm×50mm)を得た。
得られた試料について、島津製作所社製のオートグラフ「AG−50kN X plus」を用いて、つかみ治具幅40mm、引張速度5mm/min、測定温度23℃の条件にて、破断伸び率(単位:%)を測定した。また、引張弾性率(単位:Pa)を、測定により得られた応力−ひずみ曲線を用い、応力とひずみが比例している剛性領域における傾きから求めた。
(3)体積抵抗値
実施例および比較例で得られたひずみセンサ材料を切断して、フィルム状の試料(厚み:100μm、大きさ:10mm×50mm)を得た。
得られた試料について、低抵抗率計(ロレスタGP MCP−T610型、三菱化学アナリテック社製)で4端子法により、測定温度23℃での体積抵抗値(単位:Ω・cm)を測定した。
【0040】
(4)伸び応答(ひずみ応答)
実施例および比較例で得られたひずみセンサ材料を切断して、フィルム状の試料(厚み:100μm、大きさ:10mm×40mm)を得た。
得られた試料について、島津製作所社製のオートグラフ「AG−50kN X plus」を用いて、伸び率を変化させながら、抵抗値を測定した。具体的には、印加電圧5V、つかみ治具幅40mm、引張速度0.5mm/min、測定温度23℃の条件で、伸び率が0%および0.05%の場合の抵抗値を測定した。実施例1について、この伸び応答試験を行った結果を
図1に示す。
また、伸び率が0%の場合の抵抗値R
0、および、伸び率が0.05%の抵抗値R
0.05の測定値から、以下の基準に従って、伸び応答を評価した。
◎:{(R
0−R
0.05)/R
0}×100の値が、0.6以上である。
○:{(R
0−R
0.05)/R
0}×100の値が、0.4以上0.6未満である。
×:{(R
0−R
0.05)/R
0}×100の値が、0.4未満である。
(5)温度応答
実施例および比較例で得られたひずみセンサ材料を切断して、フィルム状の試料(厚み:100μm、大きさ:10mm×50mm)を得た。
得られた試料について、温度23℃から温度40℃まで、昇温速度0.5℃/秒で昇温しながら、低抵抗率計(ロレスタGP MCP−T610型、三菱化学アナリテック社製)で4端子法により、体積抵抗値(単位:Ω・cm)を測定した。実施例1について、この温度応答試験を行った結果を
図1に示す。
また、温度30℃における体積抵抗値VR
30、および、温度40℃における体積抵抗値VR
40の測定値から、以下の基準に従って、温度応答を評価した。
○:{(VR
40−VR
30)/VR
30}×100の値が、10以上である。
×:{(VR
40−VR
30)/VR
30}×100の値が、10未満である。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のひずみセンサ材料(実施例1〜5)は、ひずみへの応答性が優れることが確認された。また、本発明のひずみセンサ材料(実施例1〜5)は、導電性樹脂組成物を塗布し、加熱処理を施すことで作製できるため、加工性に富み、しかも製造工程がシンプルである。本発明のひずみセンサ材料(実施例1〜5)は、引張弾性率および破断伸び率の結果からも明らかなように、柔軟性に富んでいる。
これに対し、ひずみセンサ材料が、引張弾性率、破断伸び率および体積抵抗値に関する本発明の条件の全てを満たさない場合(比較例1〜2)には、ひずみへの応答性が不十分となることが分かった。