特許第6161661号(P6161661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6161661液晶表示装置用色純度の向上および輝度補償フィルム並びにこれを含む液晶表示装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161661
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】液晶表示装置用色純度の向上および輝度補償フィルム並びにこれを含む液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13357 20060101AFI20170703BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20170703BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20170703BHJP
   B32B 7/04 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G02F1/13357
   G02F1/1335 505
   G02B5/02 B
   B32B7/04
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-132096(P2015-132096)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-90998(P2016-90998A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年6月30日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0150137
(32)【優先日】2014年10月31日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】315006953
【氏名又は名称】エスケイシー ハース ディスプレイ フィルムズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ホンユル
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ギュチュン
(72)【発明者】
【氏名】ナム ヒョンチョル
【審査官】 磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−039093(JP,A)
【文献】 特開2010−134349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13357
G02F 1/1335
G02B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトユニットおよび液晶パネルを含む液晶表示装置において、
前記バックライトユニット、液晶パネル、またはその両方が、その構成の中に一つ以上のコーティング層または粘着層を備え、
上記一つ以上のコーティング層または粘着層が、特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料及び特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料を、前記一つ以上のコーティング層または粘着層のいずれか1つの同一層内に一緒に含むか、または互いに異なる層内にそれぞれ含み、
前記液晶パネルは、上偏光板、第1粘着層、液晶セル、第2粘着層および下偏光板を順次含み、
前記第1粘着層及び第2粘着層は、特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料および特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料を、前記第1粘着層及び第2粘着層のいずれか1つの層内に含むか、または、これらのそれぞれの層内に分けて含むことを特徴とする、液晶表示装置。
【請求項2】
前記吸収染料がRGB以外の主吸収波長帯域を有し、
前記蛍光染料がRGB以外の主吸収波長帯域、およびRGBに該当する主発光波長帯域を有することを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記吸収染料が380nm〜430nm、480nm〜510nmまたは560nm〜600nmの主吸収波長帯域を持って、
前記蛍光染料が380nm〜430nm、480nm〜510nmまたは560nm〜600nmの主吸収波長帯域、および430nm〜480nm、510nm〜580nmまたは600nm〜650nmの主発光波長帯域を有することを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記吸収染料が、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HB)系、トリスレゾルシノールトリアジンクロモフォア(TRTC)系、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールクロモフォア(HBC)系、ピロールメチン(PM)系、ローダミン(RH)系、ボロンジピロメテン(BODIPY)系、テトラアザポルフィリン(TAP)系、スクアリン(SQ)系およびシアニン(CY)系の吸収染料からなる群より選択され、
前記蛍光染料が、アントラセン系、アントラキノン系、アリールメチン系、アゾ系、アゾメチン系、ビマン系、クマリン系、1,5―ジアザビシクロ[3.3.0]オクタジエン系、ジケトピロール系、ナフタレノールイミン系、ナフタルイミド系、ペリレン系、フェノールフタレイン系、ピロールメチン系、パイラン系、パイレン系、ポルフィセン系、ポルフィリン系、キナクリドン系、ローダミン系、ルブリン系およびスチルベン系の蛍光染料からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記1種以上の吸収染料がヒドロキシベンゾトリアゾール系、シアニン系、およびテトラアザポルフィリン系の吸収染料の組合せであり
前記1種以上の蛍光染料がフェリルレン系、ピロールメチン系、パイラン系およびクマリン系の蛍光染料の組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記吸収染料が前記コーティング層または粘着層の重量を基準に、0.01重量%〜10重量%の量で使用され、
前記蛍光染料が前記コーティング層または粘着層の重量を基準に、0.01重量%〜10重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記バックライトユニットは、二重輝度向上フィルム(DBEF)または上拡散板、水平プリズムシート、垂直プリズムシート、下拡散板、導光板および反射板を順次含み、
前記二重輝度向上フィルム、または上拡散板の一面または両面、前記水平プリズムシートの一面または両面、前記垂直プリズムシートの一面または両面、前記下拡散板の一面または両面、そして前記反射板の一面のいずれか1つ以上の位置にコーティング層を有し、
前記1つ以上のコーティング層は、特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料および特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料を、前記1つ以上のコーティング層のいずれか1つの同一層内に含むか、または互いに異なる層内にそれぞれ含むことを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記コーティング層および粘着層は、2μm〜100μmの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
感圧性粘着剤と、
特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料と、
特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料とを含む、
液晶表示装置用色純度の向上および輝度補償フィルム。
【請求項10】
バインダー樹脂と、
特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料と、
特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料とを含む、
液晶表示装置用色純度の向上および輝度補償フィルム。
【請求項11】
前記吸収染料が、ヒドロキシベンゾトリアゾール系、トリスレゾルシノールトリアジンクロモフォア系、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールクロモフォア系、ピロールメチン系、ローダミン系、ボロンジピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリン系およびシアニン系の吸収染料からなる群より選択され、
前記蛍光染料が、アントラセン系、アントラキノン系、アリールメチン系、アゾ系、アゾメチン系、ビマン系、クマリン系、1,5−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタジエン系、ジケトピロール系、ナフタレノールイミン系、ナフタルイミド系、ペリレン系、フェノールフタレイン系、ピロールメチン系、パイラン系、パイレン系、ポルフィセン系、ポルフィリン系、キナクリドン系、ローダミン系、ルブリン系およびスチルベン系の蛍光染料からなる群より選択されることを特徴とする、請求項または10に記載の液晶表示装置用色純度の向上および輝度補償フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用色純度の向上および輝度補償フィルム、並びにこれを備える液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、40インチ(inch)代のテレビが主流であったが、今では50インチ代、さらには60インチ代のテレビを購入する消費者も多く増えた。このようなサイズ競争が終わると、解像度競争が始まった。1年前までは、FHD(full HD)級であれば高級モデルに属したものだったが、今やUHD(ultra HD)のものが市場で急速に広がっている。
【0003】
最近のディスプレイ市場は、大面積、高解像度の競争から色感競争へと進化している。このような理由から最近では、優れた色感を有するディスプレイ製造に対する競争が台頭している。
【0004】
液晶表示装置(liquid crystal display、LCD)は、液晶(liquid crystal)の光学的特性を利用して画像を表示するが、画像を表示する液晶パネルが自体発光をしない非発光型素子であるため、液晶パネルと一緒にその背面に配置され、液晶パネルに光を供給するバックライトユニット(back―light unit)を含む構造を有する。
【0005】
液晶表示装置は、他の表示装置に比べ厚さが薄く、重さが軽く、消費電力が少なく、駆動電圧が低いという利点を有する反面、色感の面では、他の表示装置に比べてやや劣る。今は消えつつあるCRTの場合は、色再現率がNTSC(National Television System Committee)規格の80%に達し、PDP(Plasma Display Panel)もまたNTSC90%レベルの製品が最近まで発売された。そして、次世代ディスプレイとして脚光を浴びている有機発光ダイオード(OLED)の場合は、NTSCの100%まで達成可能である。しかし、LCD TVはNTSC72%レベルである。
【0006】
よって、低迷しているディスプレイ市場を克服するためには、このようなLCDの欠点を改善する必要がある。
【0007】
特に、従来のLCDの色純度を向上させる技術、および色純度の向上により発生し得る輝度低下を補償することができる新しい技術が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、光源から出る純粋なRGB波長は最大限透過させながらもRGB波長以外の不要な波長を遮断することにより、液晶表示装置の色純度を向上させ、輝度の低下を補償することができるフィルム、およびこれを含む液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明は、バックライトユニットおよび液晶パネルを含む液晶表示装置において、前記バックライトユニット、液晶パネル、またはその両方が、その構成の中で一つ以上のコーティング層または粘着層を備え、前記一つ以上のコーティング層または粘着層が、特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料および特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料を、前記一つ以上のコーティング層または粘着層のうちのいずれかの同一層内に含むか、または互いに異なる層内にそれぞれ含むことを特徴とする、液晶表示装置を提供する。
【0010】
また、本発明は、感圧性粘着剤と、特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料と、特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料とを含む、液晶表示装置用色純度の向上および輝度補償フィルムを提供する。
【0011】
さらに、本発明は、バインダー樹脂と、特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料と、特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料とを含む、液晶表示装置用色純度の向上や輝度補償フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、特定の波長帯域を吸収する吸収染料の組合せと、特定の波長帯域を吸収して発光する蛍光染料の組合せとを、液晶表示装置の粘着層またはコーティング層内に導入して製造した液晶表示装置用の色純度向上フィルムを利用することにより、光源から出る純粋なRGBの波長は最大限透過させながらも、RGB波長以外の不要な波長を遮断してカラーガモット(gamut)を向上させ、この過程で発生し得る輝度の低下を補償し、これにより、色純度および輝度が向上された液晶表示装置を製造することができる。また、本発明に係る色純度向上フィルムは、その位置を自在に移動させることにより、ディスプレイの特性に応じて色純度の向上おおび輝度補償効果を最大限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一般的な液晶表示装置の構造を示した模式図である。
図2A図2Aは、二重輝度向上フィルムの構造を示した模式図である。
図2B図2Bは、拡散フィルムの構造を示した模式図である。
図2C図2Cは、水平プリズムシートの構造を示した模式図である。
図2D図2Dは、反射板の構造を示した模式図である。
図3A図3Aは、実施例1の液晶表示装置の構造を示した模式図である。
図3B図3Bは、実施例2の液晶表示装置の構造を示した模式図である。
図3C図3Cは、比較例1の液晶表示装置の構造を示した模式図である。
図3D図3Dは、比較例2の液晶表示装置の構造を示した模式図である。
図3E図3Eは、比較例3の液晶表示装置の構造を示した模式図である。
図4A図4Aは、実施例1の液晶表示装置の発光強度の変化を示したものである。
図4B図4Bは、実施例2の液晶表示装置の発光強度の変化を示したものである。
図4C図4Cは、比較例1の液晶表示装置の発光強度の変化を示したものである。
図4D図4Dは、比較例2の液晶表示装置の発光強度の変化を示したものである。
図4E図4Eは、比較例3の液晶表示装置の発光強度の変化を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の液晶表示装置は、バックライトユニットと液晶パネルを含み、前記バックライトユニット、液晶パネル、またはその両方が、その構成の中に一つ以上のコーティング層または粘着層を備え、前記一つ以上のコーティング層または粘着層が、特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料および特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料を、前記一つ以上のコーティング層または粘着層のうちいずれか1つの同一層内に含むか、または互いに異なる層内にそれぞれ含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によると、特定の波長帯域を1つ以上選択的に吸収する染料の組み合わせおよび特定の波長帯域を吸収して発光する蛍光染料の組み合わせを液晶表示装置の粘着層またはコーティング層内に導入することにより、光源から出る純粋なRGB波長は最大限透過させながらも、RGBの波長以外の不要な波長を遮断してカラーガモットを向上させ、この過程で発生し得る輝度の低下を補償して、これにより、色純度および輝度を向上することができる。
【0016】
一般的な液晶表示装置の構造の一例を図1に示した。図1を参照すると、液晶パネル(10)は、上偏光板(101)、第1粘着層(102)、液晶セル(103)、第2粘着層(104)および偏光板(105)を順次積層された形態で含み、バックライトユニット(20)は、二重輝度向上フィルム(dual brightness enhancement film;DBEF)または上拡散板(201)、水平プリズムシート(202)、垂直プリズムシート(203)、下拡散板(204)、導光板(205)、反射板(206)を順次含む。
【0017】
図2A〜2Dを参照すると、二重輝度向上フィルム(211)は、多層の構造を持つことができ(図示せず)、上拡散板または下拡散板として使用される拡散フィルム(221)は、拡散フィルム基材(221−3)の一面に第1ビーズ(221−1)を有する拡散コーティング層(221−2)が備えられ、反対面に第2ビーズ(221−5)を有する隠蔽コーティング層(221−4)を備えることができる。また、水平プリズムシート(202)は、プリズムシート基材(202−2)の一面にプリズムパターン層(202−1)が備えられ、反対面に第3ビーズ(202−4)を有する背面コーティング層(202−3)が備えることができる。垂直プリズムシートも上記水平プリズムシート(202)と同一または類似の層の構成を有することができる。また、反射板(206)は、反射板基材(206−3)の一面に第4ビーズ(206−1)を有する前面コーティング層(206−2)が備えることができる。
【0018】
しかし、本発明の液晶表示装置は、上述の構造に限定されず、必要に応じて多様に変形可能である。
【0019】
特に、前記バックライトユニット(20)は、以下のような積層構造を含むことができる。
【0020】
i)上拡散板/水平プリズムシート/垂直プリズムシート/下拡散板
ii)上拡散板/水平プリズムシート/垂直プリズムシート
iii)二重輝度向上フィルム/水平プリズムシート/垂直プリズムシート
iv)マイクロレンズフィルム(MLF)/水平プリズムシート/垂直プリズムシート
v)上拡散板/水平プリズムシート/垂直プリズムシート
【0021】
液晶表示装置の基本原理を見ると、光源から出た光が導光板を経て液晶パネルの方向に出射され、光拡散板を通りながら面に対する垂直/水平方向に拡散される。光拡散板から出た光は、その後プリズムシートを通過することにより出光面の正面以外の方向に出ることが防止され、光指向性が向上して視野角が狭くなることにより、バックライトの出光面正面方向への輝度が増大される。このとき、バックライトユニット内に二重輝度向上フィルムのような、別のシートを使用することにより、光リサイクリング(recycling)によって輝度増大を最大限にすることができる
本発明によると、前記バックライトユニット、液晶パネルまたはその両方が、その構成の中に特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料および/または特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料を含むコーティング層または粘着層を備える。
【0022】
例えば、液晶パネルは、その構成層のうち前記第1粘着層及び第2粘着層が、特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料および特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料を、前記第1粘着層及び第2粘着層のいずれかの層内に含むか、またはこれらのそれぞれの層内に分けて含むことができる。
【0023】
また、バックライトユニットは、その構成層のうちの二重輝度向上フィルムまたは上拡散板の一面または両面、水平プリズムシートの一面または両、垂直プリズムシートの一面または両面、下拡散板の一面または両面、そして、反射の一面(すなわち、導光板の対向面)のいずれか1つ以上の位置にコーティング層を有し、前記1つ以上のコーティング層が、特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料および特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料を、上記いずれか1つ以上のコーティング層のうちいずれかの同一層内に含むか、または、互いに異なる層内にそれぞれ含むことができる。
【0024】
上記吸収染料と蛍光染料を同時に含有する粘着層またはコーティング層のことを色純度向上および輝度補償フィルムと称し、このような色純度向上フィルムの位置、特にコーティング層の位置に応じて、液晶表示装置の発光色純度および輝度損失が異なってくるので、必要に応じてその位置を適切に調節することができる。
【0025】
また、本発明に使用される吸収染料は、主吸収波長帯域がRGB以外の波長帯域の吸収染料の少なくとも1つ以上の組み合わせであってもよい。
【0026】
例えば、本発明に使用される吸収染料は、RGB以外の波長帯域として430nm以下(例えば、380nm〜430nm)、480nm〜510nmまたは560nm〜600nmの主吸収波長帯域を持つことができ、このような吸収染料を少なくとも1つ以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
具体的な例として、(i)波長380nm〜430nmを遮蔽する吸収染料としては、ヒドロキシベンゾトリアゾール(hydroxybenzotriazole、HB)系、トリスレゾルシノールトリアジンクロモフォア(tris−resorcinol−triazine chromophore、TRTC)系、およびヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールクロモフォア(hydroxylphenyl−benzotriazolechromophore、HBC)系吸収染料を、(ii)波長480nm〜510nmを遮蔽する吸収染料としては、ピロールメチン(pyrrole methine、PM)系、ローダミン(rhodamine、RH)系、およびボロンジピロメテン(boron dipyrromethene、BODIPY)系吸収染料を、(iii)波長560nm〜600nmを遮蔽する吸収染料としては、テトラアザポルフィリン(tetraaza porphyrin、TAP)系、スクアリン(squarine、SQ)系、シアニン(cyanine、CY)系の吸収染料を挙げることができる。
【0028】
好ましくは、ヒドロキシベンゾトリアゾール系、ピロールメチン系、ローダミン系、シアニン系、およびテトラアザポルフィリン系の吸収染料からなる群より選ばれる2種以上の吸収染料の組み合わせを用いることができ、より好ましくは、ヒドロキシベンゾトリアゾール系、シアニン系、およびテトラアザポルフィリン系の吸収染料の組み合わせを用いることができる。
【0029】
また、本発明に使用される蛍光染料は、主吸収波長帯域がRGB以外の波長帯域であり、主発光波長帯域がRGBに該当する波長帯域である蛍光染料の少なくとも1つ以上の組み合わせであってもよい。
【0030】
例えば、本発明に使用される蛍光染料は、RGB以外の波長帯域として、430nm以下(例えば、380nm〜430nm)、480nm〜510nmまたは560nm〜600nmの主吸収波長帯域を持って、RGBに該当する波長帯域として430nm〜480nm、510nm〜580nmまたは600nm以上(例えば、600nm〜650nm)の主発光波長帯域を持つことができ、このような蛍光染料を少なくとも1つ以上組み合わせて使用することができる。
【0031】
具体的な例として、上記蛍光染料としては、アントラセン(anthracene)系、アントラキノン(anthraquinone)系、アリールメチン(arylmethine)系、アゾ(azo)系、アゾメチン(azomethine)系、ビマン(bimane)系、クマリン(coumarin)系、1,5−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタジエン(1,5−diazabicyclo[3.3.0]octadiene)系、ジケトピロール(diketo−pyrrole)系、ナフタレノールイミン(naphthalenol−imine)系、ナフタルイミド(naphthalimide)系、ペリレン(perylene)系、フェノールフタレイン(phenolphthalein)系、ピロールメチン(pyrrole methine)系、パイラン(pyran)系、パイレン(pyrene)系、ポルフィセン(porphycene)系、ポルフィリン(porphyrin)系、キナクリドン(quinacridone)系、ローダミン(rhodamine)系、ルブリン(rubrene)系、およびスチルベン(stilbene)系の蛍光染料を挙げることができる。
【0032】
好ましくは、ペリレン(perylene)系、アゾ(azo)系、ピロールメチン(pyrrole methine)系、パイラン(pyran)系およびクマリン(coumarin)系の蛍光染料からなる群より選ばれた2種以上の蛍光染料の組み合わせを使用することができ、
より好ましくは、ペリレン(perylene)系、ピロールメチン(pyrrole methine)系、パイラン(pyran)系およびクマリン(coumarin)系蛍光染料の組み合わせを使用することができる。
【0033】
したがって、本発明は、感圧性粘着剤、特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料、および特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料を含む、液晶表示装置用色純度の向上および輝度補償フィルムを提供する。この際、前記色純度向上および輝度補償フィルムは、液晶表示装置において粘着層として提供されてもよい。
【0034】
また、本発明は、バインダー樹脂、特定の波長帯域を吸収する1種以上の吸収染料、および特定の波長帯域を吸収して発光する1種以上の蛍光染料を含む、液晶表示装置用色純度の向上および輝度補償フィルムを提供する。この際、前記色純度向上および輝度補償フィルムは、液晶表示装置においてコーティング層として使用されてもよい。
【0035】
上記吸収染料は、前記色純度向上および輝度補償フィルム(すなわち、粘着層またはコーティング層)の重量を基準に、0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.05重量%〜7重量%の量で使用することができる。
【0036】
また、上記蛍光染料は、前記色純度向上および輝度補償フィルム(すなわち、粘着層またはコーティング層)の重量を基準に、0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.05重量%〜7重量%の量で使用することができる。
【0037】
また、前記フィルム内の前記吸収染料:蛍光染料の重量比は、0.1:100から100:0.1まで可能である。
【0038】
粘着層(第1粘着層、第2粘着層)に使用される感圧性粘着剤の例としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、およびシリコーン系粘着剤からなる群より選ばれた1種以上の粘着剤を挙げることができ、好ましくは、アクリル系粘着剤であってよい。例えば、粘着層は、上偏光板および下偏光板の一面または両面にウェットコーティングにより形成されてもよく、粘着層の厚さは2μm〜100μm、5μm〜100μm、好ましくは15μm〜25μmであってよい。
【0039】
コーティング層に使用されるバインダー樹脂の例としては、ポリエステル系、アクリル系、ポリウレタン系、メラミン系、ポリビニルアルコール系およびオキサゾリン系のバインダー樹脂からなる群より選ばれた1種以上の樹脂を挙げることができ、好ましくは、アクリル系バインダー樹脂であってよい。例えば、コーティング層は、二重輝度向上フィルム、または上拡散板の一面または両面に、水平プリズムシートの一面または両面に、垂直プリズムシートの一面または両面に、下拡散板の一面または両面に、そして反射板の一面(つまり導光板の対向面)にウェットコーティングにより形成されてもよく、コーティング層の厚さは1μm〜100μm、2μm〜100μm、好ましくは2μm〜15μmであってよい。
【0040】
必要に応じて、上記粘着層およびコーティング層は、UV光の遮断のために紫外線遮断剤をさらに含むことができる。使用される紫外線遮断剤は、430nm以下の光を吸収(遮蔽)するものであって、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HB、hydroxy benzotriazole)系、トリスレゾルシノールトリアジンクロモフォア(TRTC、tris-resorcinol-triazine chromophore)系、またはヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールクロモフォア(HBC、hydroxylphenyl‐benzotriazole chromophore)系の吸収染料であってよく、単独、または2種以上を混合して使用することができる。粘着層およびコーティング層は、前記紫外線遮断剤を粘着層またはコーティング層の重量を基準に0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.05重量%〜7重量%の量で含むことができる。
【0041】
本発明に係る色純度向上フィルムの光透過率は、液晶表示装置の輝度範囲に応じて調整することができるが、通常は30%〜90%、好ましくは50%〜90%の可視光透過率の範囲を有する。
【0042】
本発明の液晶表示装置を構成するバックライトユニットおよび液晶パネルそれぞれの構成層は、当業界で通常許容される材質、厚さ、形状などを持つことができ、必要に応じて多様に変形可能である。
【0043】
このように、本発明に係る色純度の向上および輝度補償フィルムを含む液晶表示装置は、光源から出る純粋なRGB波長は最大限透過させながらRGBの波長以外の不要な波長をカットして、改良されたカラーガモットおよび輝度を提供することができ、色純度の向上および輝度補償フィルムの位置を自在に移動させることにより、ディスプレイの特性に応じて色純度の向上および輝度補償効果を極大化することができる
以下、本発明を下記の実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらだけに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
アクリルバインダー樹脂としてSoken社のGS1000を35重量部、溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)を50重量部、およびビーズとしてSoken社のMX−500を15重量部混合した後、これに吸収染料としてエスケーケミカル社のSK−d593を上記混合物100重量部に対して0.1重量部の量で添加して吸収染料含有のコーティング組成物を製造した。拡散フィルムの一面に、上記吸収染料含有コーティング組成物を、メイヤーバー(Mayer bar)を用いてコーティングし、乾燥および硬化して吸収染料が含有された隠蔽コーティング層を厚さ5μmに形成した。
【0045】
一方、アクリルバインダー樹脂としてSoken社のGS1000を35重量部と、溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)を50重量部、およびビーズとしてSoken社のMX−1000を15重量部混合した後、これに蛍光染料としてエスケーケミカル社のFL560を上記混合物100重量部に対して0.1重量部の量で添加して、蛍光染料含有コーティング組成物を製造した。先に隠蔽コーティング層が形成された拡散フィルムの反対面に、上記蛍光染料含有コーティング組成物を、メイヤーバー(Mayer bar)を用いてコーティングし、乾燥および硬化して蛍光染料が含有された拡散コーティング層を厚さ15μmに形成した。
【0046】
上記得られた拡散フィルムを上拡散板として、隠蔽コーティング層が水平プリズムシートを向くよう、市販の液晶表示装置に導入して本発明の液晶表示装置を製造した(図3A参照)。
【0047】
(実施例2)
前記実施例1と同じ方法で吸収染料含有コーティング組成物を製造した後、拡散フィルムの一面に吸収染料が含有された隠蔽コーティング層を形成した。隠蔽コーティング層が形成された拡散フィルムの反対面には、前記実施例1と同じ方法で拡散コーティング層を形成するが、実施例1とは異なり、拡散コーティング層に蛍光染料を添加しなかった。
【0048】
また、上記実施例1と同じ方法で蛍光染料含有コーティング組成物を製造した後、水平プリズムシートのプリズムが形成されていない面に、前記蛍光染料含有コーティング組成物を、メイヤーバー(Mayerbar)を用いてコーティングし、乾燥および硬化して蛍光染料が含有された背面コーティング層を厚さ5μmに形成した。
【0049】
上記得られた拡散フィルムを上拡散板にして、上記の得られた水平プリズムシートを用いるが、上記拡散フィルムの隠蔽コーティング層が、上記水平プリズムシートを向くように、また、上記水平プリズムシートの背面コーティング層が垂直プリズムシートを向くように、市販されている液晶表示装置に導入して本発明の液晶表示装置を製造した(図3B参照)。
【0050】
(比較例1)
前記実施例1と同じ方法で拡散フィルムの拡散コーティング層と隠蔽コーティング層を形成するが、実施例1とは異なり、拡散コーティング層と隠蔽コーティング層は、吸収染料や蛍光染料のいずれも添加しなかった。
【0051】
上記得られた拡散フィルムを上拡散板にして、隠蔽コーティング層が水平プリズムシートを向くように、市販されている液晶表示装置に導入して、本発明の液晶表示装置を製造した(図3C参照)。
【0052】
(比較例2)
前記実施例1と同じ方法で吸収染料含有コーティング組成物を製造した後、拡散フィルムの一面に吸収染料が含有された隠蔽コーティング層を形成した。隠蔽コーティング層が形成された拡散フィルムの反対面には、前記実施例1と同じ方法で拡散コーティング層を形成するが、実施例1とは異なり、拡散コーティング層に蛍光染料を添加しなかった。
【0053】
その結果、得られた拡散フィルムを上拡散板にして、隠蔽コーティング層が水平プリズムシートを向くように、市販の液晶表示装置に導入して本発明の液晶表示装置を製造した(図3Dを参照)。
【0054】
(比較例3)
前記実施例1と同じ方法で蛍光染料含有コーティング組成物を製造した後、拡散フィルムの一面に蛍光染料が含有された拡散コーティング層を形成した。拡散コーティング層が形成された拡散フィルムの反対面には、上記実施例1と同じ方法で隠蔽コーティング層を形成するが、実施例1とは異なり、隠蔽コーティング層に吸収染料を添加しなかった。
【0055】
その結果、得られた拡散フィルムを上拡散板にし、隠蔽コーティング層が水平プリズムシートを向くように、市販の液晶表示装置に導入して本発明の液晶表示装置を製造した(図3E参照)。
【0056】
(実験例)
前記実施例および比較例で製造した液晶表示装置について、ラジオメーター(radiometer、CS−2000;ミノルタ(Minolta)社)を用いてスペクトルの変化および特性を測定し、その結果を下記表1、および図4A〜4Eにそれぞれ示した。下記表1においてカラーガモットは、色再現面積を示す。
【0057】
【表1】
【0058】
上記表1および図4A〜4Eから分かるように、本発明による色純度の向上および輝度補償フィルムを含む実施例の液晶表示装置は、向上したカラーガモットおよび色純度を提供しながらも、優れた輝度を示すことが分かる。
【符号の説明】
【0059】
10 液晶パネル
20 バックライトユニット
101 上偏光板
102 第1粘着層、
103 液晶セル
104 第2粘着層
105 下片光板
201 二重輝度向上フィルム(DBEF)または上拡散板
202 水平プリズムシート
202−1 プリズムパターン層、
202−2 プリズムシート基材
202−3 背面コーティング層、
202−4 第3ビーズ
203 垂直プリズムシート、
204 下拡散板
205 導光板、
206 反射板
206−1 第4ビーズ
206−2 前面コーティング層
206−3 反射板基材
211 二重輝度向上フィルム
221 拡散フィルム、
221−1 第1ビーズ
221−2 拡散コーティング層
221−3 基材
221−4 隠蔽コーティング層
221−5 第2ビーズ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E