特許第6161680号(P6161680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6161680有機過酸化物によって開始する生産性の高いエチレンのフリーラジカル重合
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161680
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】有機過酸化物によって開始する生産性の高いエチレンのフリーラジカル重合
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/36 20060101AFI20170703BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C08F4/36
   C08F10/02
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-243041(P2015-243041)
(22)【出願日】2015年12月14日
(62)【分割の表示】特願2013-553011(P2013-553011)の分割
【原出願日】2012年2月8日
(65)【公開番号】特開2016-94617(P2016-94617A)
(43)【公開日】2016年5月26日
【審査請求日】2016年1月13日
(31)【優先権主張番号】1151086
(32)【優先日】2011年2月10日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ニコル, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ユブ, セルジュ
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02650913(US,A)
【文献】 国際公開第2008/112373(WO,A1)
【文献】 特表2004−520468(JP,A)
【文献】 Plasticheskie Massy,1967年,(4),p.12-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の過酸化物化合物の中から選択される過酸化物重合開始剤の存在下で、150℃以上かつ200℃未満の初期温度、500〜3000バールの圧力で反応器(オートクレーブ反応器は除く)中で、エチレンをフリーラジカル重合または共重合する段階を含むポリエチレンまたはエチレンコポリマーの製造方法:
【化1】
(ここで、
R1およびR8は互いに独立してC2〜C6アルキル基を表し、
R2、R3、R6およびR7は互いに独立してC1〜C5アルキル基を表し、
R4およびR5は互いに独立してC1〜C6アルキル基を表す)
【請求項2】
R2、R3、R4、R6およびR7がそれぞれメチル基を表す請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R1およびR8は互いに独立してC2〜C4アルキル基を表す請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
R5がC2〜C4アルキル基を表す請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
過酸化物重合開始剤が2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタンである請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
エチレンの重合または共重合を160〜190℃の初期温度で行う請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
重合または共重合を追加の過酸化物開始剤の存在下で行う請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
重合または共重合を、酸化防止剤、紫外線保護剤、加工助剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、充填剤、カップリング剤、架橋剤、静電防止剤、核形成剤、顔料、染料、可塑剤、流動化剤および難燃添加剤の中から選択される少なくとも一種の添加剤の存在下で行う請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の温度範囲での特定の過酸化物重合開始剤の存在下の高圧重合によってポリエチレンまたはエチレンコポリマーを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低密度ポリエチレンおよびエチレンコポリマーは、一般にオートクレーブ反応器または管状反応器にエチレンと、一種以上の任意成分のコモノマーと、一般に有機溶剤に希釈した一種以上の有機過酸化物開始剤とを超高圧下に連続的に導入して製造する。反応器内の圧力は一般に500〜5000バールであり、反応開始時の温度は一般に80〜250℃であり、最高反応温度は一般に120〜350℃である。
【0003】
この方法で一般に得られるポリマーへの変換率は約15〜25%である。同様に、この方法の生産性は、用いる過酸化物開始剤1グラム当たりの生産されたポリエチレンのグラムで表して、一般に1000〜3000g/g、特に2500g/g以下である。
【0004】
生産性の伸び、従って、コストの追求はポリエチレン生産者の恒常的な最大関心事である。生産性が高く、ポリマーへの変換率が有利に保持されるポリエチレン製造方法に対するニーズは依然としてある。
【0005】
特許文献1(米国特許第2 650 913号明細書)には2,2−ビス−(第3ブチルぺルオキシ)ブタンの存在下でエチレンを重合する方法が開示されているが、この開始剤での生産性が低い(この文献の実施例1および下記テスト3を参照)。
【0006】
特許文献2(フランス国特許第2 946 653号)には2,2−ジ(t−アミルペルオキシ)プロパンが開示されているが、これを開始剤として用いることはなかった。
【0007】
特許文献3(米国特許公開第2008/0226891号明細書)、特許文献4(欧州特許第0273090号公報)、特許文献5(欧州特許第0259537号公報)には、2,2−ジ(t−アミルペルオキシ)ブタンが開示されているが、これはエチレンポリマーまたはエチレンコポリマーとは全く異なるポリマーの製造で用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2 650 913号明細書
【特許文献2】フランス国特許第2 946 653号公報
【特許文献3】米国特許公開第2008/0226891号明細書
【特許文献4】欧州特許第0273090号公報
【特許文献5】欧州特許第0259537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、驚くことに、下記式(I)の過酸化物重合開始剤を150〜200℃の温度で用いることによって上記の問題が解決でき、3000g/g以上の生産性を得ることができ、しかも、ポリマーへの変換率を13〜25%に維持できるということを見出した:
【化1】
【0010】
(ここで、R1およびR8は互いに独立してC2〜C6アルキル基を表し、
R2、R3、R6およびR7は互いに独立してC1〜C5アルキル基を表し、
R4およびR5は互いに独立してC1〜C6アルキル基を表す)
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の対象は、500〜3000バールの圧力で、エチレンをフリーラジカル重合または共重合する段階を含む、ポリエチレンまたはエチレンコポリマーの製造方法にあり、本発明では、重合または共重合を150〜200℃の初期温度で、下記の(I)の過酸化物化合物の中から選択される過酸化物重合開始剤の存在下で開始する:
【0012】
【化2】
【0013】
(ここで、
R1およびR8は互いに独立してC2〜C6アルキル基を表し、
R2、R3、R6およびR7は互いに独立してC1〜C5アルキル基を表し、
R4およびR5は互いに独立してC1〜C6アルキル基を表す)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1実施例では、R2、R3、R4、R6およびR7はそれぞれメチル基を表す。
本発明の第2実施例では、R1およびR8は互いに独立してC2〜C4アルキル基を表す。
本発明の第3実施例では、R5はC2〜C4アルキル基を表す。
これらの3つの実施例を二つ一組でまたは3つ全て一緒に組み合わせることができる。
【0015】
従って、本発明の一つの特定の実施例では、R2、R3、R4、R6およびR7がそれぞれメチル基を表すことができ、且つ、R1およびR8が互いに独立してC2〜C4アルキル基を表すことができる。
【0016】
本発明の別の特定の実施例では、R2、R3、R4、R6およびR7がそれぞれメチル基を表すことができ、且つ、R5はC2〜C4アルキル基を表すことができる。
本発明のさらに別の特定の実施例では、R1およびR8は互いに独立してC2〜C4アルキル基を表すことができ、且つ、R5はC2〜C4アルキル基を表すことができる。
本発明のさらに別の特定の実施例では、R2、R3、R4、R6およびR7がそれぞれメチル基を表すことができ、R1およびR8は互いに独立してC2〜C4アルキル基を表すことができ、且つ、R5はC2〜C4アルキル基を表すことができる。
本発明の一つの特定の好ましい実施例では、過酸化物重合開始剤が2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタンである。
【0017】
過酸化物重合開始剤は一般に、エチレンの重量に対して20〜1000ppmの重量で存在する。
重合開始剤は一般に溶剤または溶剤混合物に希釈する。溶剤はC1〜C20アルカンから選択できる。
既に説明したように、エチレンの重合または共重合は150〜200℃、好ましくは160〜190℃の初期温度で行う。
【0018】
重合または共重合を追加の過酸化物開始剤の存在下で行うことができる。この追加の過酸化物開始剤は下記の中から選択できる:tert-ブチルぺルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-アミルペルオキシピバレート、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ドデカノイルペルオキシド、tert-アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエオート、tert-ブチル ペルオキシ−2−エチルヘキサノエオート、tert-ブチル ペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエオート、tert-アミル ペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエオート、tert-ブチルぺルオキシベンゾエート、tert-ブチルぺルオキシアセテートおよびジ-tert-アミルペルオキシド。
【0019】
重合または共重合は少なくとも一種の添加剤、好ましくは酸化防止剤;紫外線保護剤;加工助剤、最終外観を良くする機能を有する、例えば脂肪アミド、ステアリン酸およびその塩、エチレンビス(ステアルアミド)またはフルオロポリマー;防曇剤;ブロッキング防止剤、例えばシリカまたはタルク;充填剤、例えばカルボン酸カルシウム、およびナノフィラー、例えばクレー;カップリング剤、例えばシラン;架橋剤、例えば過酸化物;静電防止剤;核形成剤;顔料;染料;可塑剤;流動化剤および難燃添加剤、例えば水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムから選択される少なくとも一種の添加剤の存在下で行うことができる。
【0020】
これらの添加剤は一般に、最終ポリエチレンまたはエチレンコポリマーの重量に対して10〜10 000重量ppmの含有量で用いる。可塑剤、流動化剤または難燃添加剤は10 000ppmを優に上回る量に達しうる。
重合または共重合は500〜3000バール、好ましくは1200〜3000バール、より好ましくは1200〜2600バールの圧力で行う。
高圧重合は一般にオートクレーブ反応器または管状反応器で行う。反応温度は一般に150〜320℃である。
【0021】
管状反応器を使用するときは、エチレンと任意のコモノマーとの混合物を管状反応器の頂部に導入するのが好ましい。エチレンと任意のコモノマーとの混合物の導入位置の後で、開始剤または開始剤混合物を反応器の頂部に高圧ポンプを用いて注入する。
【0022】
エチレンと任意のコモノマーとの混合物は、反応器の少なくとも一つの他の位置に注入できる。この場合は、多点噴射技術を用い、上記注入後に、さらに開始剤または開始剤混合物の注入を行う。多点噴射技術を用いるときは、反応器入口に注入する混合物と注入する全混合物との重量比が10〜90%になるように、混合物を注入するのが好ましい。
【0023】
使用可能な他の管状高圧重合または共重合法は、例えば特許文献6(米国特許公開第2006/0149004 A1号明細書)または特許文献7(米国特許公開第2007/0032614 A1号明細書)に記載のものである。
【0024】
フリーラジカル高圧重合を行うのにオートクレーブ反応器を使用することができる。オートクレーブ反応器は一般に撹拌器が配置された円筒形反応器で構成される。反応器を互いに直列に接続された複数の帯域に分けることができる。反応器内の滞留時間は30〜120秒であるのが有利である。反応器の長さ/直径比は3〜25であるのが好ましい。エチレン単独か、それと任意のコモノマーとを50〜120℃の温度で反応器の第1帯域に注入する。反応帯域の温度が150〜200℃に達したときに第1反応帯域に開始剤を導入する。反応は発熱反応であるので反応中の温度は150〜320℃になる。反応器がマルチゾーン反応器の場合、未応のエチレンと任意のコモノマーの流れおよび生成したポリマーは次に続く反応帯域へ送る。各反応帯域ではエチレン、任意のコモノマーおよび開始剤を150〜200℃の開始温度で注入できる。開始後の帯域の温度は150〜320℃である。反応器の圧力は500〜3000バール、好ましくは1200〜3000バール、より好ましくは1200〜2600バールである。
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0025】
実施例1
従来の開始剤であるtert-ブチルぺルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(アルケマ社から商品名Luperox(登録商標)270で市販)を用いてエチレンの重合を行う。
オートクレーブタイプの435mlの高圧撹拌反応器に、エチレンを圧力が1800バールに達するまで、すなわち約207g注入する。次いで反応器の壁に配置された棒状ヒーターによって反応器壁温度を177℃に固定する。反応器内の反応媒体の温度は2つの熱電対によって測定する。
tert-ブチルぺルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(14.8mg)を、反応器に入る前に反応が開始しないように、反応器の上流且つ低温(25℃)でヘプタン(1.3g)およびプロパンアルデヒド(0.89g)に希釈する。次いで、この混合物を高圧ポンプを用いて反応器に注入する。過酸化物を177℃(初期温度)の初期温度で注入した時に、重合は開始する。
【0026】
最終温度が初期温度と同じ値レベルに戻るまで反応を続ける(すなわち、テスト時間は約25〜50分)。
反応器の出口では、エチレン/ポリエチレン混合物を3バールまで直接放圧し、分離器に通すことによって未反応エチレンからポリマーを分離する。
重合後に回収されたポリマーの量を秤量し、それによってポリマーへの変換率、過酸化物比消費量およびプロセスの生産性を表すことができる。
生産性は用いる過酸化物開始剤1g当たりの生産されたポリエチレンのグラムで表す。
変換率は導入したエチレンの量に対する生産されたポリエチレンの量で定義される。
結果は以下の通り:
ポリエチレンへの変換率:10.2%
生産された低密度ポリエチレンの量:22.4g
生産性:1510g/g。
従って、従来の過酸化物開始剤では生産性は低くという結論に達する。
【0027】
実施例2
本発明に従って、開始剤として2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタン(アルケマ社から商品名Luperox(登録商標)520M50で市販)を用いてエチレンの重合を行う。
実施例1の操作を繰り返すが、14.8mgのtert-ブチルぺルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエートの代わりに、本発明の10.2mgの2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタンを用いる。
結果は以下の通り:
ポリエチレンへの変換率:13.9%
生産された低密度ポリエチレンの量:30.7g
生産性:3010g/g。
従って、2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタン開始剤を重合中に150〜200℃の温度で用いることよって高い変換率および高い生産性を得ることができる。
【0028】
実施例3
本発明に従って、開始剤として2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタンを用いてエチレンの重合を行う。
実施例2の操作を繰り返すが、初期重合温度(初期温度)を変える。この温度は177℃の代わりに192℃に固定する。実施例2の場合と同様に本発明に従って10.2mgの2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタンを用いて開始する。
結果は以下の通り:
ポリエチレンへの変換率:14.4%
生産された低密度ポリエチレンの量:31.1g
生産性:3100g/g。
従って、2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタン開始剤を重合中に150〜200℃の温度で用いることよって高い変換率および高い生産性を得ることができる。
【0029】
実施例4
2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタン開始剤を用い、本発明方法で用いる温度を超える温度で、従来のエチレンの重合を行う。
すなわち、実施例2の操作を繰り返すが、初期重合温度(初期温度)を177℃ではなく、215℃に固定する。
実施例2の場合と同様に10.2mgの2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタンを用いて開始する。
結果は以下の通り:
ポリエチレンへの変換率:5.7%
生産された低密度ポリエチレンの量:12.1g
生産性:1200g/g。
従って、エチレン重合を200℃以上の温度で行うと、変換率が低くなり且つ生産性が低くなる。
【0030】
本発明のポリエチレンまたはエチレンコポリマーの製造方法(下記のテスト1および2)を、開始剤が2,2−ビス(第3ブチルぺルオキシ)である従来技術の方法〔特許文献1(米国特許第2 650 913号明細書)〕と比較するために、補完テストを行った。
テスト1および2の開始剤のケースのみ、ポリマーへの変換率が13〜25%で、3000g/g以上の生産性を得ることができ、一方、特許文献1(米国特許第2 650 913号明細書)の対象である上記開始剤ではこれらの目標が達成されていない。
【0031】
テスト1
2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタン(本発明)またはLuperox(登録商標)520M50を用いて開始する重合
2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタン(アルケマ社から商品名Luperox(登録商標)520M50で市販の)を用いて本発明のエチレンの重合を行う。
オートクレーブタイプの435mlの高圧撹拌反応器に、エチレンを圧力が1800バールに達するまで、すなわち約207g注入する。次いで反応器の壁に配置された棒状ヒーターによって反応器壁温度を177℃に固定する。反応器内の反応媒体の温度は2つの熱電対によって測定する。
2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタン(10.2mg)を、反応器に入る前に反応が開始しないように、反応器の上流且つ低温(25℃)でヘプタン(1.3g)およびプロパンアルデヒド(0.89g)に希釈する。次いで、この混合物を高圧ポンプを用いて反応器に注入する。過酸化物を177℃(初期温度)の初期温度で注入した時に重合はを開始する。
【0032】
最終温度が初期温度と同じ値レベルに戻るまで反応を続ける(すなわち、テスト時間は約25〜50分)。
反応器の出口では、エチレン/ポリエチレン混合物を3バールまで直接放圧し、分離器に通すことによって未反応エチレンからポリマーを分離する。
重合後に回収されたポリマーの量を秤量して求め、それによってポリマーへの変換率、過酸化物比消費量およびプロセスの生産性を表すことができる。
生産性は用いる過酸化物開始剤1g当たりの生産されたポリエチレンのグラムで表す。
変換率は導入されるエチレンの量に対する生産されるポリエチレンの量で定義される。
このテストで記録された結果は以下の通り:
ポリエチレンへの変換率:13.9%
生産された低密度ポリエチレンの量:30.7g
生産性:3010g/g
【0033】
テスト2
2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタン(本発明)またはLuperox(登録商標)520M50を用いて開始する重合
2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタンを用いて本発明に従ってエチレンの重合を行う。
上記のテスト(テスト1)の操作を繰り返すが、初期重合温度(初期温度)を変える。この温度を177℃の代わりに192℃に固定する。上記テスト1の場合と同様に10.2mgの2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタンを用いて開始する。
結果は以下の通り:
ポリエチレンへの変換率:14.4%
生産された低密度ポリエチレンの量:31.1g
生産性:3100g/g。
従って、2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタン開始剤を重合中に150〜200℃の温度で用いることよって、高い変換率および高い生産性(変換率>13%および生産性>3000g/g)を得ることができる。
【0034】
テスト3
2,2−ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタンを用いて開始する重合
2,2−ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタンを用いてエチレンの従来の重合を本発明に従って行う。
すなわち、テスト1の操作を繰り返すが、2,2−ジ(tert-アミルペルオキシ)ブタン開始剤を、2,2−ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタンに代える。
10.2mgの2,2−ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタンを用いて開始する。
結果は以下の通り:
ポリエチレンへの変換率:11.9%
生産された低密度ポリエチレンの量:24.6g
生産性:2410g/g。
従って、2,2−ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタンでは生産性がより低くなり(<3000g/g)、変換率が13%以下になるという結論に達する。