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特許6161685電気的に加熱可能なハニカム体の複数の薄板金属層の電気的接続構造、及び関連するハニカム体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161685
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】電気的に加熱可能なハニカム体の複数の薄板金属層の電気的接続構造、及び関連するハニカム体
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20170703BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20170703BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20170703BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20170703BHJP
   H05B 3/02 20060101ALI20170703BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   F01N3/20 KZAB
   F01N3/28 301P
   B01J35/04 321A
   B01D53/86
   H05B3/02 A
   H05B3/20 361
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-503869(P2015-503869)
(86)(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公表番号】特表2015-520820(P2015-520820A)
(43)【公表日】2015年7月23日
(86)【国際出願番号】EP2013057009
(87)【国際公開番号】WO2013150066
(87)【国際公開日】20131010
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】102012007020.9
(32)【優先日】2012年4月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500038927
【氏名又は名称】エミテック ゲゼルシヤフト フユア エミツシオンステクノロギー ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100102185
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 繁範
(74)【代理人】
【識別番号】100129399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】ブリュック ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】クルト フェルディ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルト ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヘリク トーマス
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−277379(JP,A)
【文献】 実開平06−011838(JP,U)
【文献】 特開平09−174180(JP,A)
【文献】 特開平08−100642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20− 3/28
B01D 53/86−53/88
B01J 35/04
H05B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム体(14)の複数の薄板金属層(1、2、3、4)と接続ピン(12)の電気的接続構造であって、前記ハニカム体(18)は、内周(I)を有する金属ケーシング(7)を備え、前記接続ピン(12)は、ブッシング(10)の中で電気的に絶縁された状態で前記金属ケーシング(7)を貫通し、前記薄板金属層(1、2、3、4)は、粗く構造化された薄板金属層(2)と細かく構造化された又は平滑な薄板金属層(1)が交互に配置され、前記薄板金属層は一緒に、最上部の薄板金属層(3)と最下部の薄板金属層(4)を有する積層体(5)を形成し、前記積層体は、気体が前記薄板金属層(1、2、3、4)の間を軸方向(A)に入口側(14)から出口側(15)に流れることができる流路(9)を有し、前記接続ピン(12)は、前記薄板金属層(1、2、3、4)と垂直に、即ち半径方向(R)に延び、接続領域(6)において前記積層体(5)の複数の薄板金属層(1、3、4)を取り囲む少なくとも一つの電気伝導性の媒介要素(13)によって、少なくとも2つの薄板金属層(1、2、3、4)に、金属を用いて接続され
少なくとも前記最上部の薄板金属層(3)又は前記最下部の薄板金属層(4)は、少なくとも部分領域において、厚くなった部分を有するか又は前記積層体(5)のさらなる薄板金属層(1、2)よりも厚いことを特徴とする電気的接続構造
【請求項2】
前記積層体(5)の前記最上部の薄板金属層(3)は、前記金属ケーシング(7)と平行に、前記内周(I)の少なくとも35%を超えて延び、前記金属ケーシングから空隙(8)のみによって分離されることを特徴とする請求項1に記載の電気的接続構造
【請求項3】
前記積層体(5)の前記最上部の薄板金属層(3)は、前記金属ケーシング(7)と平行に、前記内周(I)の長さの少なくとも40%を超えて延びることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気的接続構造
【請求項4】
前記積層体(5)の前記最上部の薄板金属層(3)は、細かく構造化されているか又は平滑であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気的接続構造
【請求項5】
前記粗く構造化された薄板金属層(2)と前記細かく構造化された薄板金属層(1、3、4)は、それぞれ波形に形成され、前記粗く構造化された薄板金属層(2)の第2の波形高さ(H2)は、前記細かく構造化された薄板金属層(1、3、4)の第1の波形高さ(H1)よりも大きいことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の電気的接続構造
【請求項6】
前記粗く構造化された薄板金属層(2)と前記細かく構造化された薄板金属層(1、3、4)は、波形に形成され、前記粗く構造化された薄板金属層(2)の第2の波形長さ(L2)は、前記細かく構造化された薄板金属層(1、3、4)の第1の波形長さ(L1)よりも大きいことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の電気的接続構造
【請求項7】
前記積層体(5)の形状が、多数の支持ピン(17)によって安定化され、少なくとも一つの支持ピン(17)が、前記積層体(5)の外形に沿って測定したときに、前記接続ピン(12)から10cm以下の距離に配置されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の電気的接続構造
【請求項8】
前記媒介要素(13)は、少なくとも前記積層体(5)の前記入口側(14)又は前記出口側(15)まで延び、少なくとも前記入口側(14)又は前記出口側(15)を少なくとも部分的に取り囲むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の電気的接続構造
【請求項9】
前記媒介要素(13)は、前記積層体(5)の端部(16)の周りで、前記積層体(5)を取り囲むことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の電気的接続構造
【請求項10】
前記媒介要素(13)の形状は、少なくとも前記積層体(5)の端部(16)の横断面(19)の形状又は縦断面(20)の形状と一致することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の電気的接続構造
【請求項11】
前記媒介要素(13)は、前記薄板金属層が少なくとも前記入口側(14)又は前記出口側(15)で前記媒介要素(13)と突き当たることによって、前記積層体(5)の複数の又はすべての薄板金属層と直接接触することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の電気的接続構造
【請求項12】
前記媒介要素(13)の領域における前記積層体(5)の横断面(19)は、前記積層体(5)の残りの外形と同じ形状及び同じ大きさを有することを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の電気的接続構造
【請求項13】
前記積層体(5)の端部(16)は、前記媒介要素(13)の外でテーパー状となっていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の電気的接続構造
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の電気的接続構造を有するハニカム体(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは自動車内の、特に内燃機関の排ガス処理システムのための、電気的に加熱可能なハニカム体の分野に関する。電気的に加熱可能なハニカム体は、例えば、排ガス清浄システム内の構成要素を加熱し、その結果、特定の化学反応、特にまた触媒的に活性化された反応のために、必要な特定の最低温度に到達するため、又は維持するために必要とされる。これは、例えば、排ガス触媒コンバーター、粒子フィルター、及び/又は亜酸化窒素を還元するためのシステムで用いられる。
【背景技術】
【0002】
この種の電気的に加熱可能なハニカム体の代表的な構造は、例えば、引用文献1に記載されている。引用文献2もまた、電気的に加熱可能なハニカム体の構造を開示している。これら両方の文献は、この種の電気的に加熱可能なハニカム体が、(電気的に絶縁されたやり方で)隣接するハニカム体に支持されることを可能にする。
【0003】
電気的加熱のために十分高いオーム抵抗を与えることができるように、この種の電気的に加熱可能なハニカム体は、軸方向に気体が流れることができる流路を形成するように構成された複数の薄板金属層の、少なくとも一つの積層体を備える。一般的に、この目的のため、粗く構造化された金属薄板と細かく構造化された及び/又は平滑な金属薄板が、交互に重ねて積層される。積層体は、S字状、U字状等になるよう反対方向にループ状に巻かれているため、上記の積層体は円形又は楕円形の断面を満たすように形成され、積層体の隣接する曲がった部分は、互いに電気的に絶縁されなければならない。この絶縁は、絶縁層及び/又は電気的に絶縁する空隙によって達成することができ、作動中の金属薄板/積層体の激しい熱膨張の場合に空隙は、支持ピンによって隣接するハニカム体に固定され、その結果それらの位置に固定された積層体の曲がった部分によって安定化することができる。このように、比較的短い電気的に加熱可能なハニカム体、例えば、軸方向の伸びが1から5センチしかないハニカム体を安定化することも可能である。
【0004】
電気的に加熱可能なハニカム体の安定性及び/又は電気的特性のために、電気的に加熱可能なハニカム体を、交互になっている粗く構造化された薄板金属層と細かく構造化された薄板金属層から、特に(小さい第1の波形高さと小さい第1の波形長さの)細かい第1の波形を有する薄板金属層と(大きい第2の波形高さ及び/又は大きい第2の波形長さの第2の波形を有する)第2の粗い構造を持つ薄板金属層から構成することが有利であることが分かっている。積層体内の薄板金属層は、好ましくは、いくつかの(選択された)又はすべての接触ポイントで互いにろう付けされるか、又は拡散接続によって互いに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第96/10127号
【特許文献2】欧州特許出願公開第1967712号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、積層体の外部電流源への電気的接続は、技術的問題を引き起こす。ループ状に巻かれた電気伝導性の積層体を金属ケーシング管の内部に配置する必要があるため、積層体への少なくとも一つの電流供給ラインが必要とされ、上記の電流供給ラインは、ケーシング管から電気的に絶縁される。一般的にそのような高い強度の電流が積層体に流されることが意図されるため、電流を積層体の個々の薄板金属層の間に、接触している領域でもできるだけ均一に分配することが望ましく、損傷を防止するためにそうすることも必要となる。
【0007】
従って、従来技術において知られている実施形態は、一般的に、積層体の個々の薄板金属層が終端する電流分配構造を含み、電気的に絶縁された状態でハニカム体の金属ケーシングを通る接続ピンが、同様に電流分配構造と接触する。上記の構造において一般的な電流分配構造は、金属ケーシングに平行に延びる一種の半殻構造であり、そこで個々の薄板金属層が終端し、金属を用いて、特にろう付けされて接続される。この電流分配構造は、同様に、絶縁層によってハニカム体の金属ケーシングから電気的に絶縁されなければならない。これは、空隙によって実現することができるが、この目的のため、電流分配構造が同様にその位置に安定化される必要がある。これは、好ましくは、追加の支持ピンによって行われ、この場合、支持される電流分配構造はまた、電気的に絶縁されることが常に確保される必要がある。
【0008】
電気的に接触する問題は、電気的に加熱可能なハニカム体において、少なくとも積層体の一方の側で、特に積層体の他方の側が金属ケーシングに直接接続されることができるか/直接接続されることが意図されるときに起きる。積層体の両方の端部が、(電気的)グランドに接続されることが意図されない場合には、積層体の両方の端部が、対応するやり方でまた接触する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、従来技術に関して浮き彫りとなった問題を少なくとも部分的に解決することである。その目的は、特にハニカム体の複数の薄板金属層と接続ピンの電気的接続を提供することである。この接続は、単純で費用効率の高いやり方で確立され、主に金属ケーシングと平行な電流分配構造を回避し、それにもかかわらず電流の均一な分配と電気的に加熱可能なハニカム体の安定な構造を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の特徴に従う電気的接続は、上記の目的を達成するのに役立つ。有利な実施形態が従属項において記述され、それらの有利な実施形態は技術的に意味のあるやり方で互いに組み合わせることができる。明細書は、特に図面と一緒に、請求項に記述された特徴を説明及び定義し、さらなる有利な実施形態を特定する。また、本発明に従う電気的接続を有するハニカム体が提供される。
【0011】
従って、ハニカム体の複数の薄板金属層と接続ピンの電気的接続が提案される。ハニカム体は内周を有する金属ケーシングを備え、接続ピンは、ブッシングの中で電気的に絶縁された状態で金属ケーシングを貫通する。さらに、薄板金属層が、粗く構造化された薄板金属層と細かく構造化された又は平滑な薄板金属層が交互に配置されるように提供され、その薄板金属層は一緒に、最上部の薄板金属層と最下部の薄板金属層を有する積層体を形成し、その積層体は、気体が薄板金属層の間を軸方向に入口側から出口側に流れることができる流路を有する。さらに、接続ピンは、薄板金属層と(略)垂直に、即ち半径方向に延び、積層体の複数の薄板金属層を取り囲む少なくとも一つの電気伝導性の媒介要素によって、少なくとも2つの薄板金属層、好ましくは少なくとも半分の薄板金属層、特にすべての薄板金属層に、金属を用いて接続される。
【0012】
比較的太い接続ピンを複数の比較的薄い薄板金属層(これらはまた、追加的にさらに構造化することができる)に接続することは困難に見えるが、(少なくとも部分的に)上記の薄板金属層を取り囲む媒介要素によって、重ねて配置され、及び/又は一緒に締め付けられた2つ以上の薄板金属層を接続することは、可能なだけではなく、非常に安定した状態で積層体を保持することに繋がることが分かっている。これはまた、同様に、半殻構造や電流分配構造のような追加の安定化構造の必要なしで、積層体と金属ケーシングの間に空隙が安定した状態で形成されることを可能にする。
【0013】
媒介要素は、接続ピンと、接触している薄板金属層との両方に(直接)電気的に接触する。媒介要素は、特に、一体成型された金属薄板である。媒介要素が、外側で接続ピンと電気的に接触し、内側で薄板金属層と電気的に接触する留め具(クリップ)のように設計されると、さらに好ましい。特に、媒介要素が2つの面で、好ましくは3つの面(外側、内側、前端、後端、積層体の円周の末端側)で積層体に寄り掛かったときに、「取り囲み」が生じる。
【0014】
好ましい実施形態では、積層体の最上部の薄板金属層は、金属ケーシングと(略)平行に、上記の内周の長さの少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%を超えて延び、上記の金属ケーシングから空隙のみによって分離される。ハニカム体を端部から軸方向に見て、円周方向に360°(角度)に分割したときに、最上部の薄板金属層(半径方向外側の最も遠くに位置する薄板金属層)は、従って好ましくは、接続領域の正確な形状とハニカム体の内部の積層体の外形に応じて、金属ケーシングと平行に最大で180°から少なくとも(約)144°の角度範囲に亘って延びる。
【0015】
さらに好ましい実施形態では、積層体の最上部の薄板金属層は、及び好ましくは最下部の薄板金属層は、細かく構造化された薄板金属層又は平滑な薄板金属層である。これは、積層体の最上部の薄板金属層と最下部の薄板金属層が、好ましくは金属を用いて媒介要素と接続されるため、特に有利である。その結果、残りの薄板金属層が実質的に取り囲まれ、それら自体が媒介要素に接続できなかった場合でも、それらの端部が動くことができず、従っていかなる電気的短絡も起こす可能性がない。
【0016】
最上部の及び/又は最下部の薄板金属層の機能は、その一方又は両方が、少なくとも部分領域において、厚くなった部分を有するか、及び/又は積層体のさらなる又は残りの薄板金属層より厚くすることにより支援できる。特に、より厚い部分領域は、さらなる薄板金属層又は残りの薄板金属層が例えば20から60μm(マイクロメートル)の厚さを有するのに対し、80から200μm(マイクロメートル)、特に好ましくは110から170μmの薄板金属厚さを有することができる。より大きな厚さは、所望の部分領域により厚い金属薄板を用いることにより、及び/又は問題の部分領域の最上部又は最下部の薄板金属層を、重ねて配置され、一緒に構成された複数の、例えば2つ又は3つの薄板金属層から構成することにより達成することができる。
【0017】
この場合、最下部の薄板金属層は、少なくとも接続領域において、積層体の一部に沿って厚くなった部分を有するか、及び/又は残りの薄板金属層よりも厚くすることができる。外側の2つの薄板金属層をより厚くすることは、特に抵抗溶接又はろう付けの方法が用いられるときに、金属を用いた媒介要素への接続を単純化する。
【0018】
少なくとも最上部の薄板金属層は、好ましくは、ニッケル、クロム及び鉄を含有する鋼鉄(NiCroFerという名前でも知られる)から構成される。この材料の機械的及び電気的特性、特に優れた電気伝導性と高温耐食性は、最上部の薄板金属層からくる要求に、それを特に適したものとする。
【0019】
積層体における均一な電流分配を達成するために、すべての薄板金属層が媒介要素に接続されることが特に好ましく、この目的のため、薄板金属層は、既存の構造を平滑にするために圧縮されるか、及び/又は媒介要素によって変わらない形状で取り囲まれる。
【0020】
実際に、粗く構造化された薄板金属層と細かく構造化された薄板金属層が、それぞれ波形に形成され、粗く構造化された金属薄板の第2の波形高さが、細かく構造化された金属薄板の第1の波形高さよりも、特に3倍から10倍、好ましくは4倍から6倍大きいときに、特に安定した構造が作成されることが実験により示されている。この種の構造は、様々な観点から有利であることが分かっている。支持ピンの組み込みは、すべての薄板金属層がある程度の弾力性を持つことによって単純化され、これは媒介要素への電気伝導性の接続にほとんど影響を及ぼさない。
【0021】
積層体のすべての薄板金属層に対して波形に形成された/構造化された薄板金属層が用いられたときに、粗く構造化された薄板金属層が、細かく構造化された薄板金属層の第1の波形長さよりも、特に、例えば少なくとも1.5倍大きい第2の波形長さを有すると有利である。粗く構造化された薄板金属層と細かく構造化された薄板金属層の波形高さ及び波形長さを選択する際には、技術的に賢明な限度に従う必要がある。特に、比率と波形の形状は、被覆の間に閉塞される可能性のある非常に小さな断面を有する流路が出来る限りできないように選択される。
【0022】
媒介要素は、好ましくは、金属を用いて、例えば積層体の2つから5つの薄板金属層に、少なくとも10mm(平方ミリメートル)の面積に亘って接続され、媒介要素は、金属ケーシングの内周から、例えば3から8mm(ミリメートル)、好ましくは4から6ミリメートルだけ間隔を空けて配置される。このようにして、電気的接続が、積層体に必要な電流を均一に導入することができ、それと同時に、空隙によって積層体と金属ケーシングの間の電気的絶縁が確保されるように、上記の積層体を金属ケーシングから十分な距離で安定化することができる。
【0023】
また、このハニカム体にとって好ましい形状は、S字状に反対方向に巻かれた積層体のループであるが、積層体の曲がった部分は、空隙によって互いに電気的に絶縁されている。この実施形態は、それ自体は知られているが、温度の激しい変化の際に起きる薄板金属層の機械的な動きのため、今まで半殻形状の電流分配構造なしでは構成することができなかった。これは、この文書で提案される媒介要素によってのみ可能となる。
【0024】
この場合、特に積層体の最上部の薄板金属層が特有の機能を有する。S字状の構造の場合、上記の最上部の薄板金属層は、絶縁する空隙と金属ケーシングの境界を、実質的に上記の内周の半分を超えて形成し、上記の最上部の薄板金属層は、媒介要素との電気的接続を確立する役目を果たし、内部の薄板金属層の境界となる。最上部の薄板金属層が厚くなった部分を有するか、又は他の薄板金属層より厚い場合、これが積層体の長さの一部に亘る場合のみ、好ましくは、概ねハニカム体の中心までの場合のみ有利であることが証明されている。積層体のこの部分領域において、最上部の薄板金属層は、同時に積層体内に電流を分配する役目を果たすことができることも分かっている。電流は、常に最短の経路及びその最も低い抵抗のものを探すため、積層体の内部領域に流れる傾向にあり、これは、より厚い最上部の薄板金属層によって相殺される。しかし、ハニカム体の中心領域では、積層体が反対方向にループ状に巻かれているため、最上部の薄板金属層が最下部の薄板金属層となる。従って、上記の薄板金属層が遅くともそこで終端するようにするか、又はより薄い層がそこから続くようにするのが有利である。これは、例えば、ループが方向を変えるポイントの一つで行うことができる。
【0025】
接続領域を安定化させるため、多数の支持ピンによって積層体の形状を安定化するのが特に好ましく、少なくとも一つの支持ピンが、積層体の外形に沿って測定したときに、接続ピンから10cm(センチメートル)以下の距離に、好ましくは5cm以下の距離に、特に好ましくは2cm以下の距離に配置される。この配置は、特に、金属ケーシングに対して空隙を安定化させる役目を果たす。同様の距離にある少なくとも一つのさらなる支持ピンを、媒介要素から突出した積層体の端部を安定に保つために、設けることができる。
【0026】
本発明の特に非常に好ましい実施形態では、媒介要素が、少なくとも積層体の入口側及び/又は出口側の範囲まで延び、入口側と出口側の少なくとも一つを少なくとも部分的に取り囲む。結果として、少なくともいくつかの流路が閉塞されるか又は覆われるが、閉塞される又は覆われる流路の数は、ハニカム体の流路の総数に対して無視できる。しかし、その代り、薄板金属層に接触する能力が改善され、もはや媒介要素の領域における積層体の断面を変形する必要がない。媒介要素は、積層体の少なくとも一部の周りで一種の留め具(クリップ)を形成し、その過程で、部分的に(平行に)入口側の前と、及び/又は(平行に)出口側の後ろに延び、そこには十分な空間がある。
【0027】
代替として又は追加として、媒介要素は、積層体を端部(円周の末端側)で取り囲むことができる。媒介要素の形状は、好ましくは、積層体の端部の横断面の形状及び/又は縦断面の形状と一致する。
【0028】
この場合、媒介要素は、好ましくは、入口側及び/又は出口側で上記の薄板金属層が媒介要素と突き当たることによって、特に上記の媒介要素とろう付けされることによって、積層体の複数の又はすべての薄板金属層と直接接触する。
【0029】
好ましい実施形態では、媒介要素の領域における積層体の横断面は、積層体の残りの外形と(実質的に)同じ形状及び同じ大きさ、特に長方形の形状を有する。
【0030】
この場合、積層体の端部は、ハニカム体の残りの部分の形状とよく一致するように、媒介要素の外でテーパー状となり、特に湾曲したくさびの形状で延びることができる。媒介要素を越えて突出した積層体の端部は、作動中に、接続領域の追加の冷却をもたらす。
【0031】
本発明は、また、ここに記載された電気的接続を有する電気的に加熱可能なハニカム体に関する。電気的接続の発明に従う実装は、単純化された構造と費用効率の高い生産を可能にし、これは特に、自動車部門における連続生産にとって重要である。
【0032】
本発明は、特に、内燃機関と、排ガスシステムと一体化された電気的に加熱可能なハニカム体とを有する自動車で使用される。
【0033】
本発明の技術分野、さらなる詳細及び例示的実施形態(しかし、本発明は、これらに限定されない)が、(概略的な)図面に図示される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、電気的に加熱可能なハニカム体の電気的接続の領域を通る概略断面図を示す。
図2図2は、薄板金属層を横方向に取り囲む媒介要素の実施形態を示す。
図3図3は、一端から見た媒介要素との電気的接続のさらなる例示的実施形態を示す。
図4図4は、媒介要素を有する接続ピンの特定の実施形態を示す。
図5図5は、構造化された薄板金属層の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、金属ケーシング7内に配置された電気的に加熱可能なハニカム体18の部分領域の概略図である。ハニカム体18は、波形に形成された又は粗く構造化された薄板金属層2と交互に配置された平滑な又は細かく構造化された薄板金属層1を備える積層体5を含む。積層体5は、最上部の薄板金属層3と最下部の薄板金属層4を有し、これらの薄板金属層は、この例示的実施形態において、両方とも細かく構造化されている。少なくともいくつかの薄板金属層1、2、3、4は、媒介要素13で終端し、それらは電気伝導的に媒介要素13に接続され、媒介要素13は電気伝導的に接続ピン12に接続されている。可能な接続技術は、例えば、抵抗溶接及び/又は硬ろう付けを含む。接続ピン12は、ブッシング10を通って金属ケーシング7を貫通し、電気的絶縁層11によって上記の金属ケーシングから絶縁される。接続ピン12は、矢印で示された半径方向Rに延びる。粗く及び細かく構造化された薄板金属層は、一緒になって、同様に矢印で示された軸方向Aに延びる流路を形成する。金属ケーシング7は、同様に矢印で示された内周Iを有する。少なくとも最上部の薄板金属層3と最下部の薄板金属層4、及びまた好ましくは、さらなる薄板金属層1、2が、電気伝導的に媒介要素13に接続され、上記の媒介要素によって、接続ピン12に接続される。積層体5は、隣接するさらなるハニカム体(ここでは図示せず)に支持される可能性がある支持ピン17によって安定化される。また、媒介要素13が、積層体5の端部16を取り囲む方法が示されており、そのとき媒介要素の内部形状は積層体の端部16の縦断面20と一致しており、逆に言うと、例えば、湾曲したくさびの形状をしている。
【0036】
図2は、薄板金属層1、2、3、4の積層体5が、媒介要素13によってどのように横方向に取り囲まれるかを概略的に示す。この場合、媒介要素13は、留め具(この場合、概ね長方形の内部断面を有する留め具(クリップ))の形状であり、最上部の薄板金属層3と最下部の薄板金属層4と直接接触し、また残りの薄板金属層1、2の端部と入口側14で直接接触する。このようにして、積層体5の変形なしで電流を均一に導入することができる。
【0037】
図3は、別の実施形態において、積層体5の接続領域6が、細かく構造化された薄板金属層1と粗く構造化された薄板金属層2から構成される方法を概略的に示す。接続ピン12は、電気的絶縁層11によって、金属ケーシング(図示せず)を貫通するブッシング10から同様に絶縁され、媒介要素9に対して接続側15で終端する。接続ピン12は、好ましくは溶接又はろう付けされて、上記の媒介要素と電気伝導的に接続され、場合によっては上記の媒介要素の下に位置する薄板金属層1、2の端部と電気伝導的に接続される。この例示的な実施形態では、媒介要素9が、接続領域6において積層体5の端部を取り囲むが、上記の方法と同様に、様々な実施形態において、接続領域6の精密な構造が可能である。すべての薄板金属層を、好ましくは、一緒により強く圧縮することができ、又は所望のテーパー形状を得るために、より小さい波形高さを有するように設計することができる。支持ピン17は、同様に、全体の配置を安定化することができる。
【0038】
図4は、媒介要素13を有する接続ピン12の発明に従う実施形態を、斜視図で概略的に示し、媒介要素によって取り囲まれることができる積層体5(図示せず)の横断面19がハッチングで示されている。同様の方法で、媒介要素はまた、図1に示されているように、積層体5の端部16を取り囲むことができ、そのとき媒介要素の内部形状は、積層体の端部16の縦断面20と一致し、例えば、湾曲したくさびの形状をしている。
【0039】
図5は、薄板金属層1、2、3、4の構造と波形の相対的な大きさを示す。積層体の細かく構造化された薄板金属層1は、第1の波形高さH1及び第1の波形長さL1の第1の波形を有し、これらは、(この場合)それぞれ粗く構造化された薄板金属層2の第2の波形の第2の波形高さH2及び第2の波形長さL2よりも小さい。最上部の薄板金属層3はさらに、積層体5の残りの薄板金属層1、2よりも大きい厚さTを有することができる。
【0040】
念のために、図面に示された技術的特徴の組み合わせは、一般的に拘束力がないことにも留意すべきである。例えば、一つの図面からの技術的特徴は、さらなる図面及び/又は全般的な記載からの他の技術的特徴と組み合わせてもよい。これの唯一の例外は、特徴の組み合わせがここで明示的に言及されているか、及び/又は当業者が、装置の基本的機能がもはや別のやり方で実現できないと確認した場合である。
【0041】
本発明は、非常に均一な電流分配を可能にし、従って電流分配構造又は外側領域で支持を行う半殻構造なしでも加熱を可能にする電気的に加熱可能なハニカム体の単純な構造を可能にし、その構造は費用効率の高い方法で製造することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 平滑な/細かく構造化された薄板金属層
2 波形に形成された/粗く構造化された薄板金属層
3 最上部の薄板金属層
4 最下部の薄板金属層
5 積層体
6 接続領域
7 金属ケーシング
8 空隙
9 流路
10 ブッシング
11 電気的絶縁層
12 接続ピン
13 電気伝導接続
14 入口側
15 出口側
16 積層体の端部
17 支持ピン
18 ハニカム体
19 積層体の横断面
20 積層体の端部の縦断面
A 軸方向
R 半径方向
I 金属ケーシングの内周の方向
H1 第1の波形高さ
H2 第2の波形高さ
L1 第1の波形長さ
L2 第2の波形長さ
T 厚さ
図1
図2
図3
図4
図5