特許第6161696号(P6161696)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161696
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】内部ばねを有する手術用クリップ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/08 20060101AFI20170703BHJP
   A61B 17/122 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   A61B17/08
   A61B17/122
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-518934(P2015-518934)
(86)(22)【出願日】2013年5月28日
(65)【公表番号】特表2015-521507(P2015-521507A)
(43)【公表日】2015年7月30日
(86)【国際出願番号】EP2013060924
(87)【国際公開番号】WO2014001008
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】102012211379.7
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】508056408
【氏名又は名称】カールスルーエ インスティチュート ヒュア テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレイル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】テッサリ イウィザ
(72)【発明者】
【氏名】シュタインヒルパー クラウス−ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ネスベル マーカス
【審査官】 近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04416266(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00105414(EP,A1)
【文献】 特表2004−531285(JP,A)
【文献】 特開2006−305230(JP,A)
【文献】 米国特許第06179850(US,B1)
【文献】 特開平01−310654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00 − 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがクランプ部および作動部を有する2つのクリップ分岐部と、曲げばね部と、を有し、前記曲げばね部によって前記2つのクリップ分岐部が相互に一体に結合される手術用クリップであって、
前記曲げばね部が半回転を超える巻きを有しており、
実質的にC型の弾性体が、前記曲げばね部の中に配置され、
前記実質的にC型の弾性体は、前記手術用クリップの開口操作によって変形し、
前記実質的にC型の弾性体と前記曲げばね部の間には、3つ以上の接触点が形成され
前記実質的にC型の弾性体が、その外周面に沿って円周方向の溝を有し、前記溝が前記曲げばね部を少なくとも部分的に受け入れるように適合されることを特徴とする、手術用クリップ。
【請求項2】
前記実質的にC型の弾性体が、実質的にその外面全体に沿って前記曲げばね部の内面と接触するように、前記曲げばね部の中に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の手術用クリップ。
【請求項3】
前記実質的にC型の弾性体が、前記クリップ分岐部の前記クランプ部の方に開口することを特徴とする、請求項1又は2に記載の手術用クリップ。
【請求項4】
保持装置が、前記実質的にC型の弾性体の少なくとも1つの端面に設けられ、前記実質的にC型の弾性体の外周面全体に沿って実質的に延在し、前記曲げばね部の内側半径を超えて外側に突き出ることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
【請求項5】
前記実質的にC型の弾性体が、前記曲げばね部の両側において、中心領域に比べてより大きな外接円を有し、前記中心領域で前記実質的にC型の弾性体が前記曲げばね部の内面と接触するような態様で、前記実質的にC型の弾性体が軸方向に可変断面を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
【請求項6】
前記曲げばね部が1回転半の巻きを有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
【請求項7】
前記2つのクリップ分岐部が、前記それぞれのクランプ部と前記それぞれの作動部の間で交差することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
【請求項8】
前記2つのクリップ分岐部の一方が前記交差領域に溝穴を有し、前記2つのクリップ分岐部の他方が前記溝穴を通って延在し、前記溝穴を通して案内されることを特徴とする、請求項に記載の手術用クリップ。
【請求項9】
前記クリップ分岐部が、前記曲げばね部と前記実質的にC型の弾性体の間の摩擦を低減するために、少なくとも前記曲げばね部の領域でコーティングまたはペイントされることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
【請求項10】
前記実質的にC型の弾性体がプラスチックまたは金属から形成されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内部ばねを有するクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
手術用クリップの閉鎖力を制御または増大するための複数の方法が従来技術にある。手術用クリップの閉鎖力を増大する1つの簡単な可能な方法は、脚ばね(leg spring)を有するクリップの場合、脚ばねの巻きの数を増大するものである。しかしながら脚ばねの断面を、ばねの幾何学的な慣性モーメントが増大するように変化させることも可能である。曲げ荷重にさらされるばねである脚ばねの幾何学的な慣性モーメントは、脚ばねの弾性率とともに、付加される力または付加されるモーメントに依存する弾性変形またはたわみのプロファイルを決定する。
【0003】
医療分野において、使用される材料は徹底的に試験し、承認を受ける必要があるので、比較的少ない材料だけが利用可能である。脚ばねの断面の変化は、主として巻かれた断面の高さが変えられるとき都合がよい。高さは、断面の幅よりもはるかに大きい影響を幾何学的な慣性モーメントに有するからである。しかしながらこの断面の変化は欠点も伴う。一方では、可塑化が生じることなくばねが変形できる領域は結果として低減され、他方では、ばねの寸法は結果として増大する。巻き数が増加するにつれて、ばねの寸法も増大する。
【0004】
手術用クリップのばね力を増大する考えられ得る別の方法は、補強クリップを手術用クリップに適用することである。このため、横に曲げられた分岐部を有するクリップが最も一般的に使用され、このクリップは手術用クリップの分岐部に配置され、従って手術用クリップを補強する。しかしながらこの方法は単一のクリップより多くの空間を必要とし、また、補強クリップが手術用クリップから外れるという危険を伴ったり、プロセスのコストが増加したりする。第1に2つのクリップを使用しなければならず、第2に両方のクリップを連続的に適用しなければならないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、外側寸法を増大することなく、増大したばね力を有する手術用クリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1で特許請求される手術用クリップによって達成される。さらなる有利な実施形態は、従属項の主題である。
【0007】
本発明の1つの態様によれば、手術用クリップは、それぞれがクランプ部および作動部を有する2つのクリップ分岐部と、曲げばね部とを有し、曲げばね部によって2つのクリップ分岐部は相互に一体に結合される。2つのクリップ分岐部および曲げばね部は、この場合、1種類の材料および1つのピースから製造することができるが、それらは異なる材料から製造することもでき、後で一緒にされる。さらに、曲げばね部は半回転を超える巻きを有し、弾性体が、手術用クリップの開口操作によって変形できるように曲げばね部の中に配置される。
【0008】
曲げばね部が半回転を超える巻きを有さない場合、弾性体を、曲げばね部の中に、それがその中で確実に保持されるように配置することは不可能である。何故なら、半回転を超える巻きを有さない場合、弾性体は少なくとも曲げばね部から横方向に出現、すなわち逸脱し得るからである。クリップは好ましくは例えば一回転半の巻きを有する。弾性体は、本発明による曲げばね部の中に配置され、このとき、弾性体は、手術用クリップが開口されるとすぐに変形する。手術用クリップが開口されると、すなわちクランプ部が離されると、曲げばね部の内径は低減する。このように曲げばね部の内径が低減することにより弾性体に影響が及び、これにより弾性体の変形および手術用クリップのばね力の増大がもたらされる。
【0009】
本発明のこの態様の有利な実施形態によれば、弾性体は実質的にC型の弾性体である。このC型体は、実質的にその外面の全体に沿って曲げばね部の内面と接触するように曲げばね部の中に配置される。ここで、「実質的にその外面の全体に沿って」は、外面の全体またはほとんど全体が曲げばね部の内面と接触しなければならないことを意味する訳ではない。円形プロファイルから製造された曲げばね部の場合、接触ラインは曲げばね部とC型体の間に形成される。原則として、形成されるものはらせん状の接触ラインであり、それはC形状を得るために弾性体が軸方向において溝を付けられる場所で中断される。従って、ここで「実質的にその外面の全体に沿って」は、弾性体が実質的にその円周全体に沿って曲げばね部と接触点を形成することを意味する。
【0010】
この代わりとして、弾性体の外面が曲げばね部の内面と数点のみで接触することも可能である。この場合もまた、弾性C型体は手術用クリップのばね力補強部材として機能し得る。しかしながら、そのような設計の場合、組織が曲げばね部と弾性体の間で意図せずに締め付けられるという事態になる恐れがある。何故なら、この場合、弾性体の外面と曲げばね部の内面の間の距離が変化するからである。原則として、そのような場合、弾性体は曲げばね部の内面の少なくとも2点とのみ当接する必要がある。2つのみの当接点または接触点がある場合、これらは曲げばね部内で正反対の位置に配置される必要がある。3点以上の当接点または接触点が形成される場合、それらが少なくとも180°の角度範囲内で点在することを条件として、これらは曲げばね部の内面に沿って自由に分散させることができる。すなわち、弾性体と曲げばね部の間の第1の接触点が曲げばね部の中心に対して接続され、かつ弾性体と曲げばね部の間の最後の接触点が同様に曲げばね部の中心に対して接続される場合、これら2つの接続ラインは少なくとも180°の角度を含まなければならない。そうでない場合、弾性体と曲げばね部の間に締付作用はないであろうし、また弾性体はばね補強部材として機能しないであろうし、曲げばね部の内側領域から落下するであろう。
【0011】
本発明のこの態様の別の有利な実施形態によれば、実質的にC型の弾性体は、クリップ分岐部のクランプ部の方に開口する。これは、C型体を中空円筒体と区別する側面の開口が、手術用クリップの掴み部の中心に向かって分岐することを意味する。
【0012】
あるいは、開口は掴み部の中心から離れる方を指向することもでき、あるいは掴み部に対して任意の所望の方向に配置されることができる。掴み部中心を向く開口の向きは、掴み部の方向のより良い眺めを可能とし、さらに均一のばね力補強を保証する。
【0013】
本発明のこの態様のさらなる有利な実施形態によれば、弾性体は実質的に棒状の弾性体であり、そしてこれは弾性棒状体の円周面と曲げばね部の内面の間の接触点が好ましくは弾性棒状体の円周面全体に沿って均一に分散されるように曲げばね部の中に配置される。C型弾性体に関して上で既に説明したように、これは弾性体の側面全体が曲げばね部と接触しなければならないことを意味せず、弾性体の円周面と曲げばね部の内面の間の複数の接触点が実質的に弾性体の円周面全体に沿って配置されることを意味する。特に、接触点は弾性体の外面または周面の軸方向長さ全体にわたって延在する必要はない。
【0014】
本発明のこの態様の有利な実施形態によれば、実質的に棒状の弾性体は、円形、多角形または星型の断面を有する。これは正多角形または正多角形以外の多角形または星形の断面であってもよい。さらに、棒状弾性体は星形多角形の断面形状を有するばかりでなく、外接円、内接円および頂点の数によって決定される星形の断面形状(例:NATOスター、メルセデススター)を有することができる。円形断面の場合、円周接触点は、弾性体の外面または側面と、曲げばね部の内面との間に形成される。多角形断面または星形断面の場合、対応する数の接触点が個別に形成され、これらは、正多角形または星形正多角形の断面の場合、弾性体の側面に沿って均一に分散され、正多角形または星形正多角形の断面でない場合、不均一に分散される。
【0015】
本発明のこの態様の別の有利な実施形態によれば、弾性体はばね状ケージであり、そしてこれは、実質的にその円周面全体に沿ってその外面で曲げばね部の内面と接触するように曲げばね部の中に配置される。この実施形態では、接触点は、グリッドバーがばね状ケージの外面を画定する位置でのみ、ばね状ケージの外面と曲げばね部の内面との間に形成される。ばね状ケージのグリッドバーは、その円周面に沿って均一に分散されると好ましい。
【0016】
本発明のこの態様のさらなる有利な実施形態によれば、弾性体の少なくとも1つの端面に保持装置が設けられ、保持装置は曲げばね部の内側半径を超えて外側に突出する。このタイプの保持装置は、弾性体が曲げばね部の内側領域から不意に逸脱し得ることがないことを保証することができる。保持装置は、例えば2つの突出部からなり、これらは弾性体の端面の外縁部において互いに反対方向の位置に設けられる。しかしながら、この代わりとして、3つ以上の突出部を設けることも可能であり、これらは端面の外縁部に沿って少なくとも180°の角度範囲において配置される。
【0017】
保持装置は弾性体の両方の端面に設けられると好ましい。例として、一方の保持装置は弾性体と一体的に形成可能であるか、弾性体が曲げばね部の中に配置される前に弾性体に結合することが可能である。いったん弾性体が曲げばね部の中に配置されると、次に他方の保持装置または両方の保持装置が、接着接合、ねじ留め、溶接によって、または別の方法によって弾性体に取り付けられる。保持装置と曲げばね部の側面との間の距離は好ましくは短い。しかしながら、保持装置と曲げばね部の側面との間の特定の間隙が保たれ、これら構成要素間に望ましくない摩擦を発生させないようにすべきである。
【0018】
本発明のこの態様の有利な実施形態によれば、保持装置は実質的に弾性体の外周面全体に沿って延在する。保持装置はいわば一種のカラーを形成する環状要素である。しかしながらカラーまたは保持装置は曲げばね部の円周面全体に沿って延在する必要はない。C型弾性体の場合、保持装置は好ましくはC型体の端面全体に沿って延在する。しかしながら保持装置は、弾性体の端面の特定部分だけ、例えばC型弾性体の両端部の領域および中心部分の領域だけに配置することもできる。
【0019】
本発明のこの態様の特に有利なさらなる実施形態によれば、弾性体は以下のような軸方向において可変の断面を有する。すなわち、曲げばね部の両側において、弾性体は、弾性体が曲げばね部の内面と接触する中心領域と比べてより大きな外接円を有する。これは、曲げばね部が配置される領域の弾性体に、実質的に円周方向の溝が形成されることを意味する。曲げばね部は少なくとも部分的に前記溝の中に配置され、曲げばね部の内面は少なくとも部分的に円周方向の溝の底面と接触する。C型弾性体の場合、同様にこれに溝を設けることができる。このC型体を曲げばね部に導入するために、C型体は、手術用クリップの基本的位置における場合よりわずかにさらに折り込むだけでよい。続いてC型体は横から曲げばね部に押し込まれ、弛緩され、その結果、曲げばね部の内面に当接する。C型弾性体が正しく配置されると、曲げばね部はC型体の円周方向の溝と係合し、それによりC型体の位置を曲げばね部の中で固定する。
【0020】
軸方向に可変断面を有するこの弾性体の特定の実施形態によれば、弾性体の外周面に切欠き状の凹部を形成するように溝を形成することができる。従ってこの場合V型の円周方向の溝が形成される。この場合、形成されるものは自動心合わせ式C型弾性体であり、その円周方向の溝は2つの斜面を有する。
【0021】
C型弾性体は一定程度まで圧縮応力を受けているので、少なくとも曲げばね部がその端部領域と当接すると、C型弾性体が曲げばね部に対して自動的に中心に置かれることが斜面により保証される。何故なら、C型弾性体はこの位置で、すなわち曲げばね部がC型弾性体の中心領域に位置する場合、曲げばね部がC型弾性体の端部領域に位置する場合よりも小さい圧縮応力を有するからである。しかしながら、溝はU型であることもでき、または湾曲した側壁を有する実質的にV型の溝を形成することができる。弾性体の円周方向の溝の底面と側面の間に段を形成することも可能である。
【0022】
本発明のこの態様の特に有利な実施形態によれば、曲げばね部は1回転半の巻きを有する。1回転半の巻きは以下の理由で特に有利である。すなわち、第一に1回転半の巻きによって弾性体がその円周面全体に沿って曲げばね部の内面と接触できることが保証され、第二に、1回転半の巻きは曲げばね部の幅を過度に増大しないからである。
【0023】
本発明のこの態様の特に有利なさらなる実施形態によれば、2つのクリップ分岐部は、各クランプ部と各作動部の間で交差する。これは以下のことを意味する。すなわち、曲げばね部が、奇数の半回転巻きから構成され([2k+1]/2、式中、kは0以上の整数である)、手術用クリップの掴み部は、巻きの数が偏向により増大されることによって、すなわち曲げばね部がさらに巻かれることによって、開口される。この場合、曲げばね部の内径は低減され、その結果として、環状の圧縮力が曲げばね部の中の弾性体に適用される。
【0024】
本発明のこの態様の別の有利な実施形態によれば、2つのクリップ分岐部の一方は交差領域に溝穴を有し、2つのクリップ分岐部の他方は前記溝穴を通って延在し、溝穴を通して案内される。こうすることで、ばね負荷がクランプ部の外れた位置に与えられ、2つのクランプ部が基本的位置を越えて互いに離れ、これにより手術用クリップの確実な閉鎖を保証できないという事態の発生を防止することが可能である。
【0025】
本発明のこの態様の有利な実施形態によれば、クリップは、曲げばね部と弾性体の間の摩擦を低減するために、少なくとも曲げばね部の領域においてコーティングまたはペイントされる。しかしながら、このようにして、曲げばね部の個々の巻きの内側の摩擦を、または曲げばね部と負荷付与装置の間の摩擦を低減することも可能であり、負荷付与装置は手術用クリップを曲げばね部において掴み、曲げばね部を押すことによって手術用クリップを開口させる。
【0026】
本発明のこの態様のさらなる有利な実施形態によれば、弾性体はプラスチックまたは金属から形成される。弾性体は、C型弾性体またはグリッド体である場合、ばね鋼またはチタン合金から形成されると好ましい。棒状体の場合、断面が円形、多角形または星形であるように選択されるかどうかにかかわらず、中実ゴム材料(例えばシリコーン)を選択することも可能である。言うまでもなく、材料の組合せ、例えばプラスチックから形成された環状保持装置が設けられた金属製C型体を使用することも可能である。
【0027】
本発明のさらなる利点および特徴は、添付の図面および例示的実施形態の詳細な記載から当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本発明の第1の例示的実施形態の横からの図である。
図1B図1Aに対応するC型弾性体の図である。
図1C】本発明の第2の例示的実施形態の横からの図である。
図1D図1Cに対応するC型弾性体の図である。
図2】本発明の第3の例示的実施形態の横からの図である。
図3】本発明の第4の例示的実施形態の横からの図である。
図4】第5の例示的実施形態によるC型弾性体の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の例示的実施形態を、図1Aおよび1Bを参照して本明細書中以下で詳しく記載する。
【0030】
第1の例示的実施形態による手術用クリップ10Aは、2つのクリップ分岐部を有する。各クリップ分岐部はクランプ部11A、11Bおよび作動部12A、12Bを有する。手術用クリップ10Aはさらに曲げばね部15を有し、それにより2つのクリップ分岐部は相互に一体的に結合される。
【0031】
この例示的実施形態の曲げばね部15は1回転半の巻きを有し、図1Bに詳しく示されるC型弾性体20が曲げばね部15の中に配置される。C型弾性体20は、その外周面全体が曲げばね部15の内周面に接触した状態で当接する。C型弾性体20は、クランプ部11A、11Bの方に開口するように、すなわちC型体20の開口部が掴み部の中心を向くような方法で配置される。
【0032】
C型弾性体20はその周囲に沿って均一の厚さをさらに有する。別の実施形態では、弾性体20の厚さは異なってもよい。弾性体20は様々な材料、例えばばね鋼、プラスチックまたはチタン合金から形成することができる。本例では、手術用クリップ10A全体と同様、チタン合金から形成される。
【0033】
この例示的実施形態による手術用クリップ10Aの場合、2つのクリップ分岐部は、それぞれのクランプ部11A、11Bとそれぞれの作動部12A、12Bの間で交差する。ここでクランプ部11Aは作動部12Aに隣接し、クランプ部11Bは作動部12Bに隣接する。低減された幅の部分18が作動部12Aとクランプ部11Aの間に形成される。溝穴部17が作動部12Bとクランプ部11Bの間に形成される。低減された幅の部分18および溝穴部は互いに交差し、低減された幅の部分18は溝穴部17を通って延びる。この方法において、2つのクランプ部11Aおよび11Bは相互に関連して案内される。さらに、曲げばね部15はコーティングを有する。曲げばね部15から2つの作動部12Aおよび12Bへの移行部の領域は、負荷付与装置で掴みやすくするために厚くなっている。
【0034】
この例示的実施形態のC型弾性体20には溝も保持装置もない。これは押し付けられるか巻き込まれることによって、曲げばね部15の内側の空間に横から挿入されることによって、そして続いて弛緩されることによって、曲げばね部15に導入または挿入される。手術用クリップ10Aの基本的位置においてさえ完全に弛緩されないという事実により、C型弾性体20は曲げばね部15の内面に確実に押し付けられる。
【0035】
この例示的実施形態による手術用クリップ10Aは、2つの作動部12A、12Bが互いに向けて移動されることによって開かれる。2つのクリップ分岐部は交差しているので、結果として2つのクランプ部11A、11Bは離れる。結果として曲げばね部15の内径は低減され、これはC型弾性体20がさらに曲げられ、曲げばね部15に対し追加の負荷をもたらし、手術用クリップ10Aの合計クランプ力を増大するという効果を有する。C型弾性体20は曲げられた板ばねのように作用し、それは曲げばね部15と平行に接続され、それを支持する。この例示的実施形態では、クランプ部11A、11Bの内面は、無外傷性の態様で形成される。
【0036】
C型弾性体20の2つの端部21、22の間の間隙は、開口操作の間、2つの端部21、22が他方と衝突しないように選択される。衝突はクリップ10Aの開口角度の制限をもたらし得る。本例示的実施形態では、開口角度は、溝穴部17の、および低減された幅の部分18の幾何学的形状によって制限される。そのような開口角度の制限がなく、掴み部を過度に開口するせいで曲げばね部15が可塑化し得ることが懸念される場合、これは掴み部がもはや完全に閉じない、または少なくとももはや完全な負荷によって閉じることはないという影響を有するが、2つの端部21、22を有するC型弾性体20は、開口角度制限装置として評価することができる。
【0037】
本発明の第2の例示的実施形態を図1Cおよび1Dを参照して詳しく記載する。手術用クリップ10Bは第1の例示的実施形態による手術用クリップ10Aと同様の構成を有するので、主に第1の例示的実施形態との差に関して細部をここで記載する。考察されない特徴は第1の例示的実施形態の特徴と同一である。
【0038】
単純なC型弾性体20の代わりに、この例示的実施形態では、その端面のそれぞれに保持装置32および33が設けられたC型弾性体30が提供される。この例示的実施形態では、2つの保持装置32、33は、C型弾性体30の円周面31全体に沿ってそれぞれ延びる。従って2つの保持装置32、33はそれぞれ一種のカラーを形成し、カラーは、手術用クリップ10Bの曲げばね部15が2つのカラー32、33の間に完全に受け入れられるような範囲まで弾性C型体30から外側に突き出る。
【0039】
この場合カラー32はC型弾性体30と一体的に形成され、この際、プラスチックから形成されるカラーが金属製C型体30上に成型される。次にこの構成要素は曲げばね部15に挿入され、続いて第2のカラー33がC型体30に取り付けられる。この場合、同様にプラスチックから形成されるカラー33はC型体30に押し付けられる。この場合、カラーの、または保持装置33の内径は、C型体30への接合を保証するために、特定のアンダサイズを有する。
【0040】
保持装置32、33および弾性体30に同じ材料が用いられる場合、これら構成要素は効果的に溶接することもできる。特にこれは、金属構成要素またはプラスチック構成要素の場合、効果的に達成されることができる。
【0041】
本例示的実施形態による実施形態では、保持装置32、33の寸法および材料は、各弾性体30、40、50の弾性または曲げ挙動に重要な影響を有する。保持装置32、33が弾性体30、40、50の曲げ挙動に有する影響を低下させるために、保持装置32、33に外側から溝を入れることができる。
【0042】
この例示的実施形態では、弾性体30を曲げばね部15の中に固定する2つの保持装置が設けられるので、弾性体30またはC型体30は、図1Cに示されるように、手術用クリップ10Bの基本的位置において完全に弛緩されるような方法で寸法を決められることができる。従って弾性体30は、クリップ10Bの基本的位置においてすでに曲げばね部15に負荷を作用するか、クランプ部11A、11Bが基本的位置から移動するとすぐに曲げばね部15に負荷を作用するか、あるいはクランプ部11A、11Bの基本的位置からの特定の移動があって初めて曲げばね部15に負荷を適用するような方法で寸法を決められることができる。このように、クリップ10Bの掴み部の開きの移動/強制挙動を設定することが可能である。
【0043】
本発明の第3の例示的実施形態を、図2を参照して本明細書中以下に詳しく記載する。この例示的実施形態では、弾性体40は曲げばね部15の中に提供されている。この例示的実施形態の弾性体は、ゴムから作られた中実体からなるが、これは複合材料、例えばゴムと金属から構成された層構造から作られた中実体であってもよい。この複合材料は、平坦な層から構成されることができるか、一方が他方に押し込まれ、ゴムとともに鋳造される複数の金属管からなることができる。原則として、どのような形状の複合材料も使用できるが、ほぼ等方性の材料が、一般的に直交異方性材料より好まれる。等方性材料の場合、曲げばね部15の中のその位置に注意を払う必要がないからである。
【0044】
この例示的実施形態では、弾性棒状体40は、その全周囲に沿って曲げばね部15の内面と接触している。さらに、溝(図2には示されていない)が弾性体40の周囲に沿って形成され、溝により、弾性体40もまたクリップ10Cの基本的位置において曲げばね部15から落下しないことが保証される。
【0045】
言うまでもなく、この弾性体40に1つまたは2つの保持装置を設けることもできる。ここで、例として、これらは、弾性体40の端面に取り付けられるか結合される2つの円板からなることができる。
【0046】
本発明の第4の例示的実施形態を、図3を参照して本明細書中以下に詳しく記載する。第4の例示的実施形態では、第3の例示的実施形態と比べて、棒状弾性体40の代わりにばね状ケージ50が設けられる。
【0047】
ばね状ケージは軸方向バー52からなり、軸方向バー52は曲げばね部15の両側で支持部材51に結合される。ばね状ケージ50の弾性作用は、軸方向バー(軸方向はここではばね状ケージの軸方向に関連する)がばね状ケージの軸の方に曲がることができるという事実によって主に達成される。より剛性の高いばね状ケージ50が必要とされる場合、より多くの軸方向バー52を設けることができるか、バー52自体により剛性の高い形状を与えることができるか、あるいは追加の環状部材を設けることができ、追加の環状部材は、曲げばね部15の領域内で個々のバー52を相互に接続する。しかしながら、ばね状ケージ50はまた、弾性係数を向上させるために、例えば、プラスチック材料、例えば第3の例示的実施形態によるゴムなどとともに鋳造することもできる。支持部材51が曲げばね部15の内径より大きい直径を有する場合、それらは同時に保持装置として機能する。
【0048】
第5の例示的実施形態による弾性C型リングを、図4を参照して本明細書中以下に詳しく記載する。
【0049】
この例示的実施形態によるC型弾性体60は、円周方向V型溝61を有する。弾性体が曲げばね部の中に配置される場合、C型体の圧縮応力が、傾斜面または斜面62、63と協働して、弾性体60が軸方向において曲げばね部15に対して中心に置かれることを保証する。このように、C型体60が正しく位置決めされることを簡単に保証することができる。
【0050】
個々の例示的実施形態に関連してここに記載される多くの特徴は、しかしながら他の例示的実施形態と組み合わせて実行することもでき、例えば、多様な保持装置32、33を多様な弾性体20、30、40、50、60と組み合わせることができる。同様に、示される材料は全ての例示的実施形態に使用することができる。総じて、個々の例示的実施形態の全ての特徴は、所望の適切な態様で組み合わせることができる。
以下の項目は、国際出願時の特許請求の範囲に記載の要素である。
[項目1]
それぞれがクランプ部および作動部を有する2つのクリップ分岐部と、曲げばね部と、を有し、前記曲げばね部によって前記2つのクリップ分岐部が相互に一体に結合される手術用クリップであって、
前記曲げばね部が半回転を超える巻きを有しており、
弾性体が、前記曲げばね部の中に配置されており、
前記弾性体は、前記手術用クリップの開口操作によって変形することを特徴とする、手術用クリップ。
[項目2]
前記弾性体が実質的にC型の弾性体であり、前記C型弾性体が、実質的にその外面全体に沿って前記曲げばね部の内面と接触するように、前記曲げばね部の中に配置されることを特徴とする、項目1に記載の手術用クリップ。
[項目3]
前記実質的にC型の弾性体が、前記クリップ分岐部の前記クランプ部の方に開口することを特徴とする、項目2に記載の手術用クリップ。
[項目4]
前記実質的にC型の弾性体が、その外周面に沿って円周方向の溝を有し、前記溝が前記曲げばね部を少なくとも部分的に受け入れるように適合されることを特徴とする、項目2または3に記載の手術用クリップ。
[項目5]
前記弾性体が実質的に棒状の弾性体であり、前記棒状の弾性体は、前記弾性棒状体の円周面と前記曲げばね部の内面との間の接触点が、好ましくは前記弾性棒状体の円周面全体に沿って均一に分散されるように前記曲げばね部の中に配置されることを特徴とする、項目1に記載の手術用クリップ。
[項目6]
前記実質的に棒状の弾性体が、円形、多角形または星形の断面を有することを特徴とする、項目5に記載の手術用クリップ。
[項目7]
前記弾性体がばね状ケージであり、前記ばね状ケージは、実質的にその円周面全体に沿ってその外面で前記曲げばね部の内面と接触するように前記曲げばね部の中に配置されることを特徴とする、項目1〜6のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
[項目8]
保持装置が、前記弾性体の少なくとも1つの端面に設けられ、前記曲げばね部の内側半径を超えて外側に突き出ることを特徴とする、項目1〜7のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
[項目9]
前記保持装置が、実質的に前記弾性体の外周面全体に沿って延在することを特徴とする、項目8に記載の手術用クリップ。
[項目10]
前記弾性体が、前記曲げばね部の両側において、中心領域に比べてより大きな外接円を有し、前記中心領域で前記弾性体が前記曲げばね部の内面と接触するような態様で、前記弾性体が軸方向に可変断面を有することを特徴とする、項目1〜9のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
[項目11]
前記曲げばね部が1回転半の巻きを有することを特徴とする、項目1〜10のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
[項目12]
前記2つのクリップ分岐部が、前記それぞれのクランプ部と前記それぞれの作動部の間で交差することを特徴とする、項目1〜11のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
[項目13]
前記2つのクリップ分岐部の一方が前記交差領域に溝穴を有し、前記2つのクリップ分岐部の他方が前記溝穴を通って延在し、前記溝穴を通して案内されることを特徴とする、項目12に記載の手術用クリップ。
[項目14]
前記クリップが、前記曲げばね部と前記弾性体の間の摩擦を低減するために、少なくとも前記曲げばね部の領域でコーティングまたはペイントされることを特徴とする、項目1〜13のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
[項目15]
前記弾性体がプラスチックまたは金属から、好ましくはばね鋼またはチタン合金から形成されることを特徴とする、項目1〜14のいずれか一項に記載の手術用クリップ。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4