【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1で特許請求される手術用クリップによって達成される。さらなる有利な実施形態は、従属項の主題である。
【0007】
本発明の1つの態様によれば、手術用クリップは、それぞれがクランプ部および作動部を有する2つのクリップ分岐部と、曲げばね部とを有し、曲げばね部によって2つのクリップ分岐部は相互に一体に結合される。2つのクリップ分岐部および曲げばね部は、この場合、1種類の材料および1つのピースから製造することができるが、それらは異なる材料から製造することもでき、後で一緒にされる。さらに、曲げばね部は半回転を超える巻きを有し、弾性体が、手術用クリップの開口操作によって変形できるように曲げばね部の中に配置される。
【0008】
曲げばね部が半回転を超える巻きを有さない場合、弾性体を、曲げばね部の中に、それがその中で確実に保持されるように配置することは不可能である。何故なら、半回転を超える巻きを有さない場合、弾性体は少なくとも曲げばね部から横方向に出現、すなわち逸脱し得るからである。クリップは好ましくは例えば一回転半の巻きを有する。弾性体は、本発明による曲げばね部の中に配置され、このとき、弾性体は、手術用クリップが開口されるとすぐに変形する。手術用クリップが開口されると、すなわちクランプ部が離されると、曲げばね部の内径は低減する。このように曲げばね部の内径が低減することにより弾性体に影響が及び、これにより弾性体の変形および手術用クリップのばね力の増大がもたらされる。
【0009】
本発明のこの態様の有利な実施形態によれば、弾性体は実質的にC型の弾性体である。このC型体は、実質的にその外面の全体に沿って曲げばね部の内面と接触するように曲げばね部の中に配置される。ここで、「実質的にその外面の全体に沿って」は、外面の全体またはほとんど全体が曲げばね部の内面と接触しなければならないことを意味する訳ではない。円形プロファイルから製造された曲げばね部の場合、接触ラインは曲げばね部とC型体の間に形成される。原則として、形成されるものはらせん状の接触ラインであり、それはC形状を得るために弾性体が軸方向において溝を付けられる場所で中断される。従って、ここで「実質的にその外面の全体に沿って」は、弾性体が実質的にその円周全体に沿って曲げばね部と接触点を形成することを意味する。
【0010】
この代わりとして、弾性体の外面が曲げばね部の内面と数点のみで接触することも可能である。この場合もまた、弾性C型体は手術用クリップのばね力補強部材として機能し得る。しかしながら、そのような設計の場合、組織が曲げばね部と弾性体の間で意図せずに締め付けられるという事態になる恐れがある。何故なら、この場合、弾性体の外面と曲げばね部の内面の間の距離が変化するからである。原則として、そのような場合、弾性体は曲げばね部の内面の少なくとも2点とのみ当接する必要がある。2つのみの当接点または接触点がある場合、これらは曲げばね部内で正反対の位置に配置される必要がある。3点以上の当接点または接触点が形成される場合、それらが少なくとも180°の角度範囲内で点在することを条件として、これらは曲げばね部の内面に沿って自由に分散させることができる。すなわち、弾性体と曲げばね部の間の第1の接触点が曲げばね部の中心に対して接続され、かつ弾性体と曲げばね部の間の最後の接触点が同様に曲げばね部の中心に対して接続される場合、これら2つの接続ラインは少なくとも180°の角度を含まなければならない。そうでない場合、弾性体と曲げばね部の間に締付作用はないであろうし、また弾性体はばね補強部材として機能しないであろうし、曲げばね部の内側領域から落下するであろう。
【0011】
本発明のこの態様の別の有利な実施形態によれば、実質的にC型の弾性体は、クリップ分岐部のクランプ部の方に開口する。これは、C型体を中空円筒体と区別する側面の開口が、手術用クリップの掴み部の中心に向かって分岐することを意味する。
【0012】
あるいは、開口は掴み部の中心から離れる方を指向することもでき、あるいは掴み部に対して任意の所望の方向に配置されることができる。掴み部中心を向く開口の向きは、掴み部の方向のより良い眺めを可能とし、さらに均一のばね力補強を保証する。
【0013】
本発明のこの態様のさらなる有利な実施形態によれば、弾性体は実質的に棒状の弾性体であり、そしてこれは弾性棒状体の円周面と曲げばね部の内面の間の接触点が好ましくは弾性棒状体の円周面全体に沿って均一に分散されるように曲げばね部の中に配置される。C型弾性体に関して上で既に説明したように、これは弾性体の側面全体が曲げばね部と接触しなければならないことを意味せず、弾性体の円周面と曲げばね部の内面の間の複数の接触点が実質的に弾性体の円周面全体に沿って配置されることを意味する。特に、接触点は弾性体の外面または周面の軸方向長さ全体にわたって延在する必要はない。
【0014】
本発明のこの態様の有利な実施形態によれば、実質的に棒状の弾性体は、円形、多角形または星型の断面を有する。これは正多角形または正多角形以外の多角形または星形の断面であってもよい。さらに、棒状弾性体は星形多角形の断面形状を有するばかりでなく、外接円、内接円および頂点の数によって決定される星形の断面形状(例:NATOスター、メルセデススター)を有することができる。円形断面の場合、円周接触点は、弾性体の外面または側面と、曲げばね部の内面との間に形成される。多角形断面または星形断面の場合、対応する数の接触点が個別に形成され、これらは、正多角形または星形正多角形の断面の場合、弾性体の側面に沿って均一に分散され、正多角形または星形正多角形の断面でない場合、不均一に分散される。
【0015】
本発明のこの態様の別の有利な実施形態によれば、弾性体はばね状ケージであり、そしてこれは、実質的にその円周面全体に沿ってその外面で曲げばね部の内面と接触するように曲げばね部の中に配置される。この実施形態では、接触点は、グリッドバーがばね状ケージの外面を画定する位置でのみ、ばね状ケージの外面と曲げばね部の内面との間に形成される。ばね状ケージのグリッドバーは、その円周面に沿って均一に分散されると好ましい。
【0016】
本発明のこの態様のさらなる有利な実施形態によれば、弾性体の少なくとも1つの端面に保持装置が設けられ、保持装置は曲げばね部の内側半径を超えて外側に突出する。このタイプの保持装置は、弾性体が曲げばね部の内側領域から不意に逸脱し得ることがないことを保証することができる。保持装置は、例えば2つの突出部からなり、これらは弾性体の端面の外縁部において互いに反対方向の位置に設けられる。しかしながら、この代わりとして、3つ以上の突出部を設けることも可能であり、これらは端面の外縁部に沿って少なくとも180°の角度範囲において配置される。
【0017】
保持装置は弾性体の両方の端面に設けられると好ましい。例として、一方の保持装置は弾性体と一体的に形成可能であるか、弾性体が曲げばね部の中に配置される前に弾性体に結合することが可能である。いったん弾性体が曲げばね部の中に配置されると、次に他方の保持装置または両方の保持装置が、接着接合、ねじ留め、溶接によって、または別の方法によって弾性体に取り付けられる。保持装置と曲げばね部の側面との間の距離は好ましくは短い。しかしながら、保持装置と曲げばね部の側面との間の特定の間隙が保たれ、これら構成要素間に望ましくない摩擦を発生させないようにすべきである。
【0018】
本発明のこの態様の有利な実施形態によれば、保持装置は実質的に弾性体の外周面全体に沿って延在する。保持装置はいわば一種のカラーを形成する環状要素である。しかしながらカラーまたは保持装置は曲げばね部の円周面全体に沿って延在する必要はない。C型弾性体の場合、保持装置は好ましくはC型体の端面全体に沿って延在する。しかしながら保持装置は、弾性体の端面の特定部分だけ、例えばC型弾性体の両端部の領域および中心部分の領域だけに配置することもできる。
【0019】
本発明のこの態様の特に有利なさらなる実施形態によれば、弾性体は以下のような軸方向において可変の断面を有する。すなわち、曲げばね部の両側において、弾性体は、弾性体が曲げばね部の内面と接触する中心領域と比べてより大きな外接円を有する。これは、曲げばね部が配置される領域の弾性体に、実質的に円周方向の溝が形成されることを意味する。曲げばね部は少なくとも部分的に前記溝の中に配置され、曲げばね部の内面は少なくとも部分的に円周方向の溝の底面と接触する。C型弾性体の場合、同様にこれに溝を設けることができる。このC型体を曲げばね部に導入するために、C型体は、手術用クリップの基本的位置における場合よりわずかにさらに折り込むだけでよい。続いてC型体は横から曲げばね部に押し込まれ、弛緩され、その結果、曲げばね部の内面に当接する。C型弾性体が正しく配置されると、曲げばね部はC型体の円周方向の溝と係合し、それによりC型体の位置を曲げばね部の中で固定する。
【0020】
軸方向に可変断面を有するこの弾性体の特定の実施形態によれば、弾性体の外周面に切欠き状の凹部を形成するように溝を形成することができる。従ってこの場合V型の円周方向の溝が形成される。この場合、形成されるものは自動心合わせ式C型弾性体であり、その円周方向の溝は2つの斜面を有する。
【0021】
C型弾性体は一定程度まで圧縮応力を受けているので、少なくとも曲げばね部がその端部領域と当接すると、C型弾性体が曲げばね部に対して自動的に中心に置かれることが斜面により保証される。何故なら、C型弾性体はこの位置で、すなわち曲げばね部がC型弾性体の中心領域に位置する場合、曲げばね部がC型弾性体の端部領域に位置する場合よりも小さい圧縮応力を有するからである。しかしながら、溝はU型であることもでき、または湾曲した側壁を有する実質的にV型の溝を形成することができる。弾性体の円周方向の溝の底面と側面の間に段を形成することも可能である。
【0022】
本発明のこの態様の特に有利な実施形態によれば、曲げばね部は1回転半の巻きを有する。1回転半の巻きは以下の理由で特に有利である。すなわち、第一に1回転半の巻きによって弾性体がその円周面全体に沿って曲げばね部の内面と接触できることが保証され、第二に、1回転半の巻きは曲げばね部の幅を過度に増大しないからである。
【0023】
本発明のこの態様の特に有利なさらなる実施形態によれば、2つのクリップ分岐部は、各クランプ部と各作動部の間で交差する。これは以下のことを意味する。すなわち、曲げばね部が、奇数の半回転巻きから構成され([2k+1]/2、式中、kは0以上の整数である)、手術用クリップの掴み部は、巻きの数が偏向により増大されることによって、すなわち曲げばね部がさらに巻かれることによって、開口される。この場合、曲げばね部の内径は低減され、その結果として、環状の圧縮力が曲げばね部の中の弾性体に適用される。
【0024】
本発明のこの態様の別の有利な実施形態によれば、2つのクリップ分岐部の一方は交差領域に溝穴を有し、2つのクリップ分岐部の他方は前記溝穴を通って延在し、溝穴を通して案内される。こうすることで、ばね負荷がクランプ部の外れた位置に与えられ、2つのクランプ部が基本的位置を越えて互いに離れ、これにより手術用クリップの確実な閉鎖を保証できないという事態の発生を防止することが可能である。
【0025】
本発明のこの態様の有利な実施形態によれば、クリップは、曲げばね部と弾性体の間の摩擦を低減するために、少なくとも曲げばね部の領域においてコーティングまたはペイントされる。しかしながら、このようにして、曲げばね部の個々の巻きの内側の摩擦を、または曲げばね部と負荷付与装置の間の摩擦を低減することも可能であり、負荷付与装置は手術用クリップを曲げばね部において掴み、曲げばね部を押すことによって手術用クリップを開口させる。
【0026】
本発明のこの態様のさらなる有利な実施形態によれば、弾性体はプラスチックまたは金属から形成される。弾性体は、C型弾性体またはグリッド体である場合、ばね鋼またはチタン合金から形成されると好ましい。棒状体の場合、断面が円形、多角形または星形であるように選択されるかどうかにかかわらず、中実ゴム材料(例えばシリコーン)を選択することも可能である。言うまでもなく、材料の組合せ、例えばプラスチックから形成された環状保持装置が設けられた金属製C型体を使用することも可能である。
【0027】
本発明のさらなる利点および特徴は、添付の図面および例示的実施形態の詳細な記載から当業者に明らかになる。