特許第6161698号(P6161698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6161698同軸構造を有する繊維から成るナノ繊維材料及びマイクロ繊維材料を製造するための紡糸ノズル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161698
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】同軸構造を有する繊維から成るナノ繊維材料及びマイクロ繊維材料を製造するための紡糸ノズル
(51)【国際特許分類】
   D01D 4/02 20060101AFI20170703BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20170703BHJP
   D01D 5/34 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   D01D4/02
   D01D5/04
   D01D5/34
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-523417(P2015-523417)
(86)(22)【出願日】2013年7月23日
(65)【公表番号】特表2015-526604(P2015-526604A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】CZ2013000085
(87)【国際公開番号】WO2014015843
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年6月24日
(31)【優先権主張番号】PV2012-514
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】CZ
(73)【特許権者】
【識別番号】507211897
【氏名又は名称】コンティプロ アクチオヴァ スポレチノスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】特許業務法人小倉特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081695
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 正明
(72)【発明者】
【氏名】ポコルニー,マレク
(72)【発明者】
【氏名】レビツェク,イリ
(72)【発明者】
【氏名】スコヴァ,ラダ
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,インドリッチ
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァコヴァ,ヤナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレブニー,ヴラディミル
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−212919(JP,A)
【文献】 米国特許第03204290(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00〜13/02
D01F1/00〜 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐ 少なくとも1つの連続溝(2)を設けた第1のプレート(1)であって,前記連続溝(2)が前記第1のプレート(1)の表面(4)にある前記連続溝(2)の出口部(3)へ第1の材料を向ける第1のプレート(1)と;
‐ 少なくとも1つの連続溝(6)を設けた第2のプレート(5)であって,前記連続溝(6)が,前記第2のプレート(5)の前記連続溝(6)の出口部(7)に第2の材料を向け,前記出口部(7)が前記第1のプレート(1)の前記出口部(3)に隣接して配置される第2のプレート(5)と;及び
‐ 前記第2のプレート(5)の前記連続溝(6)から前記第1のプレート(1)の前記連続溝(2)を分離するために,前記第1のプレート(1)と前記第2のプレート(5)との間に配置された分離プレート(8)とを備え,前記分離プレート(8)の表面(9)が,前記第1のプレート(1)の前記表面(4)及び/又は前記第2のプレート(5)の表面(10)と共に,前記連続溝(2;6)の前記出口部(3;7)の領域に連続的な表面を形成することを特徴とする静電紡糸法によってナノ繊維材料及びマイクロ繊維材料を製造するための紡糸ノズル。
【請求項2】
前記第1のプレート(1)が非導電性材料から成り,一方,前記第2のプレート(5)及び前記分離プレート(8)が導電性材料から成ることを特徴とする請求項1記載の紡糸ノズル。
【請求項3】
連続溝(12)を設けた第3のプレート(11)を備え,前記連続溝(12)は前記第3のプレート(11)の表面(13)で開口し,かつ,前記第2のプレート(5)に隣接し,前記第3のプレート(11)の前記連続溝(12)の出口部(14)は,前記第2のプレート(5)の前記連続溝(6)の対応する出口部(7)に隣接して配置されることを特徴とする請求項1記載の紡糸ノズル。
【請求項4】
前記第1のプレート(1)の前記連続溝(2)は,前記第2のプレート(5)の前記連続溝(6)より広く,両側で前記第2のプレート(5)の前記連続溝(6)を超えて伸長し,前記分離プレート(8)に対して垂直方向の面から見た場合,前記連続溝(2,6,12)の前記縦軸は,少なくとも前記連続溝(2,6,12)の前記出口部(3,7,14)の領域で互いに重なっていることを特徴とする請求項1記載の紡糸ノズル。
【請求項5】
前記第2のプレート(5)から離間して設けた,前記第1のプレート(1),前記分離プレート(8)及び前記第2のプレート(5)の各表面(4,9,10)に成形用及び/又は加熱用空気を供給するための第4のプレート(15)を備えることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の紡糸ノズル。
【請求項6】
前記第3のプレート(11)から離間した第5のプレート(16)と,前記第1のプレート(1)から離間した第6のプレート(17)とを備え,前記第5及び第6のプレートは,前記第1のプレート(1),前記分離プレート(8),前記第2のプレート(5)及び第3のプレート(11)の各表面(4,9,10,13)に両側から成形用及び/又は加熱用空気を供給するように機能することを特徴とする請求項4記載の紡糸ノズル。
【請求項7】
前記第1のプレート(1),前記分離プレート(8)及び前記第2のプレート(5)の前記各表面(4,9,10)は,前記紡糸ノズルの前記出口面に流路を形成し,前記流路の縦軸は前記分離プレート(8)の前記表面(9)の縦軸に平行であることを特徴とする請求項1記載の紡糸ノズル。
【請求項8】
前記第1のプレート(1),前記分離プレート(8),前記第2のプレート(5)及び前記第3のプレート(11)の前記各表面(4,9,10,13)は,前記紡糸ノズルの前記出口面に流路を形成し,前記流路の縦軸は前記分離プレート(8)の前記表面(9)の縦軸に平行であることを特徴とする請求項4記載の紡糸ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,高圧電源の電位点の1つに接続した紡糸電極を備えるナノ繊維材料又はマイクロ繊維材料の製造装置に関し,前記電極は導電性及び非導電性部品から成り,ここに2種の異なる紡糸混合体が2種の異なる分配流路により供給され,後者は2種の各比例配分装置に接続されており,一方の混合体は繊維の長手方向のコアを形成し,他方の混合体はコア繊維の長手方向のシェルを形成し,更に,その周囲を流れる空気がノズルを通過する。
【背景技術】
【0002】
ナノ繊維材料又はマイクロ繊維材料を製造するために用いる静電紡糸法は,反対の電位点に接続した2つの電極の使用に基づく。基本的な配置では,前記電極の1つはポリマー溶液を比例配分し,それを曲率半径の小さい湾曲した形状に成形するように機能する。強い電界により誘起された力の作用により,いわゆるテイラーコーンが形成され,それと同時に繊維が形成され,後者は静電力によって他方,すなわち逆極性を有する対向電極に引き付けられ,飛翔している繊維を捕捉するように機能する。繊維は捕捉された後,前記対向電極の表面上に連続層を連続的に形成し,その層はランダムに配置された小径(一般的に数10nm〜数μmの範囲)の繊維から成る。強い電界における繊維の生成を実際に可能にするには,ポリマー溶液自体の物理的及び化学的特性,並びに環境的影響及び電極の形状に関して数多くの条件を満たす必要がある。いくつかの他の条件を固持しながら好適に適合させたノズルに2種の異なる材料を供給する場合,同軸繊維を形成することが可能であり,このことは,2種の材料のうちの1種から成る同軸コア及び他の異なる材料から成るシェルにより個々のどの繊維も形成されることを意味する。このように適合させた工程は同軸静電紡糸(coaxial electrostatic spinning)と称されるか,或いは「共静電紡糸(co-electrospinning)」と略される。このような同軸繊維を得るために,一方の混合体で形成された内側の液滴及び他方の混合体で形成された外周の液滴の両方から生じるテイラーコーンを生成する必要があることは前述の原理から理解できる。このことは2種の異なる混合体が同軸導電ノズルを用いて供給されることで達成され得る。
【0003】
新規なナノ繊維材料及びマイクロ繊維材料の開発及びその用途に関し,このような材料の形態パラメータの拡大に関する需要は増加し続ける。機能性が拡大した,より複雑なナノ構造及びマイクロ構造の形成に関する要求も同様である。最新の用途では,繊維が円形の断面を有する細長い形態で構成される繊維についての単純化された概念は,改変されたナノ構造又はマイクロ構造を有する繊維に替わっている。このような構造的改変としては,2種の異なる材料から成るコア及びシェルにより形成される同軸繊維も挙げられる。「コア‐シェル(core-shell)繊維」として既知のこのような同軸繊維から成る最終製品は,現代の医療用途及び他の産業用途(医薬の徐放,繊維の表面活性の増加,機械的特性の向上,濾過効率の向上等)に適応可能である。例示的な用途としては,医薬の分配及び放出の制御に使用できる新たな材料が挙げられ,ここでは最初に第1の材料が繊維のシェルから放出され,次いで第2の材料が繊維のコアから放出される(反応速度は材料の構造により制御される)。また,ウイルス,細菌,結晶等の他の粒子又は物質をシェルに封入することが可能であるが,これらは紡糸工程中に個別に紡糸することができず,損傷するか,若しくは生存能力等が急速に低下する可能性がある。更にシェルは,例えば検出,診断等の目的に使用される毒性物質の封入を可能にする非分解性遮断材として機能し得る。コアは逆に,このような材料自体が紡糸不可能である場合に,その表面上で第2の材料(すなわちシェルに含有される混合体)と結合することもあるが,個々の用途に絶対的に必須かつ重要な機能は有する。中空断面を有する繊維を得る目的で,内部の材料はその後,処理後工程で除去することも可能である。この方式では,ナノ流路又はマイクロ流路が形成可能であり,例えば特定の表面において各繊維材料を増加し,マイクロピペットが調製できるもの等が挙げられる。更に,このような繊維の利点は,その繊維では機械的特性が向上しており,機械的特性に関して一方の材料がより重要であり,他方の材料を担持する要素を構成していることである。上記で概説した可能な用途の全範囲から,このような最新式のナノ繊維材料及びマイクロ繊維材料の開発及び使用の重要性は将来的に高まり,同軸繊維の工業生産は現在又は将来,切望されることが明らかである。
【0004】
同軸静電紡糸法は,ノズルを用いて2種の異なる溶液を単一の小型同軸液滴へと比例配分することから成り,一方の溶液は内部円形ノズルを介して供給され,他方の溶液は外部円形ノズルを通じて供給され,前記外部ノズルは内部ノズルに近接して該内部ノズルを囲撓する。小径(外径は通常2mm未満であり,内径は通常1mm未満)の両ノズルは,高圧電源の1つの電位点に接続される。高圧電源の他方の極は,静電界効果により繊維を引き寄せる対向する集電極に接続される。このような同軸ノズルの構造的配置は,例えば米国特許公開第2006−0213829号,国際公開第2012/058425号及び英国特許第2482560号の文献に記載されている。また,同軸繊維の生産を扱った他の特許文献もある。しかし,これらの文献は全て,単一同軸ノズルに基づく解決策を開示したものであり,生産性が不十分で,実用的観点から見れば,実験目的での同軸繊維から成るナノ繊維材料又はマイクロ繊維材料しか提供できない。そのような状況ではあるが,実際の工業的態様におけるナノ繊維材料又はマイクロ繊維材料の生産を可能にするため,大量生産技術のための解決策を探し出す必要がある。より生産性の高いこのような解決策は米国特許公開第2012−0034461号の文献に開示され,ここでは構造的配置が同一である個々の同軸ノズルが記載されており,ノズルの数を増やし,それらをマイクロチップ内に集めることで生産性を高める。前記文献に記載されている小型ノズルのシステムは,反復し生産するための解決策の構成ではない。特に,実際に使用する際はノズルを洗浄することができない。同軸ノズルの工業生産用の別の解決策はチェコ特許第302876(B6)号の特許明細書に記載されている。前記文献は,同軸繊維を得るために必要な2つの成分の液滴を形成せず,直接的な方式で導電性電極上を流れる2種の混合体を使用することに基づく解決策を開示する。2種の混合体が電極上を流れる際,それらは後者の近傍で混合され,形成される繊維内,すなわちコア又はシェル内における成分の分布が非制御となる。したがって,異なる材料を独立して個別に紡糸することは非常に簡単である。電極上を流れた後,液体混合体は再使用できず,実質的に再生することができるどのような適切な方法も存在しない。このことは,同軸繊維の生産に用いる天然原材料又はその構成成分が比較的高価であるという事実を考慮すると,工業生産に関する大きな短所である。
【0005】
同軸繊維の形成に関する主な問題は,特殊な薄型の同軸ノズルの複雑かつ高額となる製造法にある。研究室での製造と比較して大規模に同軸繊維を製造する場合,紡糸電極を形成する領域で各ノズルを重ねて配置する。上記で引用した文献から判る解決策にはメンテナンスに限っては非常に要求が多く,同軸繊維の長期的製造には適していない。本発明者らの長期に渡る経験から,簡単で非同軸のノズルを使用する場合でさえ,混合体は高頻度に薄型毛細管の内側で凝固し,時間を要する洗浄手順を繰り返し行う必要があることが分かっている。いくつかの事例では,このようなノズルは再度洗浄することが不可能である。当該技術分野で既知の薄型の同軸ノズルを集積する以外の方法で同軸繊維を工業規模で製造することを可能にし,また簡単かつ迅速な方法で必要なメンテナンスを実行可能とする新規な多重紡糸ノズルが考案されれば,同軸繊維の製造を実験室規模から工業規模に変える唯一の可能性が提供される。このようなノズルは,個々に比例配分した2種の混合体から2つの成分の液滴(内部の液滴及び外周の液滴から成る)を形成することを確実にし,所定の同軸組成物を有するテイラーコーンを形成できるようにしなければならない。
【0006】
発明の概要
本発明の目的は,個々の同軸繊維から成るナノ繊維材料又はマイクロ繊維材料を製造し得る生産性の高いノズルの新規な設計解を提供するものであり,これは全ての繊維が,2種の材料の一方から形成された同軸コア及び他方の別の種類の材料から形成されたシェルにより形成されることを意味する。
【0007】
この目的は,ナノ繊維材料及びマイクロ繊維材料を製造するための紡糸ノズルにより概ね達成され,本発明によれば,
‐ 少なくとも1つの連続溝を設けた第1のプレートであって,前記連続溝が前記第1のプレートの表面にある前記連続溝の出口部へ第1の材料を向ける第1のプレートと;
‐ 少なくとも1つの連続溝を設けた第2のプレートであって,前記連続溝が,前記第2のプレートの前記連続溝の出口部に第2の材料を向け,前記出口部が前記第1のプレートの前記出口部に隣接して配置される第2のプレートと;及び
‐ 前記第2のプレートの前記連続溝から前記第1のプレートの前記連続溝を分離するために,前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間に配置された分離プレートとを備え,前記分離プレートの表面が,前記第1のプレートの前記表面及び/又は前記第2のプレートの表面と共に,前記連続溝の前記出口部の領域に連続的な表面を形成する。
【0008】
好ましい実施形態によると,前記第1のプレートが非導電性材料から成り,一方,前記第2のプレート及び前記分離プレートが導電性材料から成る。
【0009】
別の好ましい実施形態によると,前記第1のプレートの前記連続溝は,前記第2のプレートの前記連続溝より広く,両側で前記第2のプレートの前記連続溝を超えて伸長し,前記分離プレートに対して垂直方向の面から見た場合,前記連続溝の前記縦軸は,少なくとも前記連続溝の前記出口部の領域で互いに重なっている。
【0010】
更に別の好ましい実施形態によると,前記紡糸ノズルは,連続溝を設けた第3のプレートを備え,前記連続溝は前記第3のプレートの表面で開口し,かつ,前記第2のプレートに隣接し,前記第3のプレートの前記連続溝の出口部は,前記第2のプレートの前記連続溝の対応する出口部に隣接して配置される。
【0011】
更なる実施形態によると, 前記紡糸ノズルは,前記第2のプレートから離間して設けた,前記第1のプレート,前記分離プレート及び前記第2のプレートの各表面に成形用及び/又は加熱用空気を供給するための第4のプレートを備える。
【0012】
更に別の好ましい実施形態によると,前記紡糸ノズルは前記第3のプレートから離間した第5のプレートと,前記第1のプレートから離間した第6のプレートとを備え,前記第5及び第6のプレートは,前記第1のプレート,前記分離プレート,前記第2のプレート及び第3のプレートの各表面に両側から成形用及び/又は加熱用空気を供給するように機能する。
【0013】
好ましくは,前記第1のプレート,前記分離プレート,前記第2のプレート及び前記第3のプレートの前記各表面は,前記紡糸ノズルの前記出口面に流路を形成し,前記流路の縦軸は前記分離プレートの前記表面の縦軸に平行である。
【0014】
より詳細に,添付図面を用いて本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による紡糸ノズルの一部の平面図を概略的に示し;
図2図1に示す発明による紡糸ノズルの縦断面図を概略的に示し;
図3】本発明による紡糸ノズルの第2の例示的な実施形態の縦断面図を概略的に示し;
図4】本発明による紡糸ノズルの第3の例示的な実施形態の縦断面図を概略的に示し;
図5】本発明による紡糸ノズルの第4の例示的な実施形態の縦断面図を概略的に示し;及び
図6図1に示す本発明によるノズルの例示的な実施形態を利用した同軸繊維の形成工程を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は,本発明による紡糸ノズルの遠位端の平面図を概略的に示す。第1のプレート1には連続溝2が設けられ,分離プレート8と隣接しており,前記分離プレート8が連続溝2を横方向に閉塞する。反対側では,分離プレート8に隣接する連続溝6を備えた第2プレート5に分離プレート8が隣接しており,分離プレート8が連続溝6を横方向に閉塞する。その反対側では,連続溝12を備えた第3のプレート11に第2のプレート5が隣接しており,第2のプレート5が連続溝12を横方向に閉塞する。紡糸ノズルの隠れた部分の遠位端の平面図で明らかなように,第1のプレート1及び第3のプレート11の各連続溝2及び12は両側で第2のプレート5の連続溝6を超えて伸長し,第1,第2及び第3のプレート1,5,11の各連続溝2,6,12の中心は同一線上に整列し,該同一線は第1のプレート1に隣接する分離プレート8の面に垂直である。連続溝6は同軸繊維のコア材料を通過させることが目的であり,一方,連続溝2及び12は同軸繊維のコアを包囲するシェルの材料を通過させることが目的である。第2のプレート5及び分離プレート8は導電材料から成り,一方,第1のプレート1及び第3のプレート11は絶縁材料から成る。第1,第2及び第3のプレート1,5,11はそれぞれ複合連続溝2,6,12を備え,図2に示す個々の溝の出口部3,7,14は紡糸ノズルの遠位端に形成され,図1に示す対応する開口部のものと一致する相互配置となっている。第1,第2及び第3のプレート1,5,11並びに分離プレート8は,例えば,ねじ継手を用いて互いに堅固だが着脱可能に連結する。結合された紡糸ノズルの遠位端から離間して集電極(図示せず)を配置する。高圧電源(同様に図示せず)を集電極と分離プレート8に結合された第2のプレート5との間に配線する。
【0017】
図2は,図1に示す発明の第1の例示的実施形態による紡糸ノズルの縦断面図を概略的に示し,図1に示すA‐A面で切断した断面図である。紡糸ノズルの前記図面から明らかなように,第1のプレート1の表面4は第1のプレート1の連続溝2の出口部3と共に,第3のプレート11の表面13は該第3のプレート11の連続溝12の出口部14と共に隆起した壁を流路に形成し,後者の底部は,第2のプレート5の連続溝6の出口部7と共に分離プレート8の表面9及び第2のプレート5の表面10により形成される。
【0018】
図3は,紡糸ノズルの第2の例示的実施形態の類似した縦断面図を概略的に示す。紡糸ノズルのこの実施形態は,第3のプレート11が省略されている点で前述のものと異なる。
【0019】
図4は,紡糸ノズルの第3の例示的実施形態の類似した縦断面図を概略的に示す。前記ノズルは第2の例示的実施形態に基づくが,第2のプレート5に平行に,かつ,該第2のプレート5から離間して配置された第4のプレート15を更に備える。第4のプレート15は通常,非導電性材料から成る。第2のプレート5と第4のプレート15との間の間隙は,気流,通常は暖かい気流を供給し,ノズルの表面の近傍における同軸テイラーコーン19(図6参照)の形成に影響を与えることを目的とする。例示的な実施態様では,このような中間の間隙に噴射した空気は,流速0〜1000L/分で20〜100℃に達するまで温度を上げられる。
【0020】
図5は,紡糸ノズルの第4の例示的実施形態の類似した縦断面図を概略的に示す。前記紡糸ノズルは第1の例示的実施形態に基づくが,第3のプレート11に平行に,かつ該第3のプレート11から離間して配置された第5のプレート16,及び第1のプレート1に平行に,かつ,該第1のプレート1から離間して配置された第6のプレート17を更に備える。第1のプレート1と第6のプレート17との間の間隙及び第3のプレート11と第5のプレート16との間の間隙は,気流,通常は暖かい気流を供給し,ノズルの表面の近傍における同軸テイラーコーン19(図6参照)の形成に影響を与えることを目的とする。通常,第5のプレート16及び第6のプレート17は非導電性材料から成る。
【0021】
図6は,図1及び図2に示す発明による紡糸ノズルの例示的な実施形態を利用した同軸繊維の形成工程を概略的に示す。A相では,第1,第2及び第3のプレート1,5,11のそれぞれの連続溝2,6,12が紡糸ノズルの断面図に明確に示されている。B相では,マイクロ繊維又はナノ繊維のシェルを形成するための第1の材料を,第1及び第3のプレート1及び11のそれぞれの連続溝2及び12を介して押出すことが,紡糸ノズルの断面図に明確に示されており,押出された第1の材料はノズルの表面の流路で液滴18を形成する。C相では,紡糸ノズルの断面図から判るように,第2の材料はマイクロ繊維又はナノ繊維のコアを形成するための第2のプレート5の連続溝6から押出され,連続溝6の出口部7(図2参照)は,それぞれ第1及び第3のプレート1及び11の連続溝2及び12の出口部3と14との間に位置する。第2の材料は第1の材料から形成された液滴に押しつけられる。紡糸ノズルに電圧を印加した後,同軸のテイラーコーン19が形成され,これはD相から明らかである。
【0022】
上記実施形態の全てにおいて,第1,第2及び第3のプレート1,5,11はそれぞれ連続溝2,6,12の列を備え,前記溝の各近位端は,第1及び第2の材料の供給装置に接続され,それにより一連の平行な同軸繊維が単一のノズル内で製造可能となる。必要条件としては,第2のプレート5の連続溝6の全てが今後形成される同軸繊維のコア材料の供給装置に接続された近位端を有し,第1及び第3のプレート1及び11のそれぞれの連続溝2及び12の全てが,今後形成される同軸繊維用のシェル材料の供給装置に接続された近位端を有し,連続溝2,6,12の出口部3,7,14の同時形成される3つ組は図1に示す構造であることが推測されることのみである。
【0023】
紡糸ノズルを分解して第1,第2及び第3のプレート1,5,11を分離プレート8と共に分離した後,プレートの壁及び特に全ての連続溝2,6,12が接触可能になり,洗浄が容易になり,殺菌可能になることは多重紡糸ノズルの上記の設計解から理解できる。
【0024】
紡糸工程自体では,本明細書中に開示された紡糸ノズルの解決策により,設定される用途に関する様々な態様が可能になる。したがって,多様な形態の同軸繊維が製造され得る。高圧電源(図示せず)の電位点の1つに接続された電極を形成する内部導電性連続溝6は,第1の材料である混合体を比例配分することを目的とし,一方,導電性の第2のプレート5に近接した第1及び第3の非導電性プレート1及び11にそれぞれ形成された外部連続溝2及び12は,第2の材料である混合体を比例配分することを目的とする。その後の紡糸の態様は下記のとおりである:
‐ 混合体が2種の材料から成り,かつ,第1の材料と第2の材料が異なる場合には,紡糸工程により同軸繊維が形成され,各繊維は第1の材料から成るコア及び第2の材料から成るシェルを備える。
‐ 混合体の第1の材料を気体状態に置換した場合には,紡糸工程では第2の材料のみから成る中空繊維が形成される。
‐ 混合体の第1の材料が気体又は液体媒体中の粒子の分散体から成る場合には,紡糸工程では第2の材料から成る繊維構造に分散粒子が封入される。このような粒子としては結晶,細菌,ウイルス,薬物,成長因子,DNA,ポリペプチド等が挙げられる。
‐ 混合体の第1の材料が溶液を形成する溶解物質から成り,混合体の第2の材料が気体又は液体媒体中の粒子の分散体から成る場合,紡糸工程では第1の溶解材料から成るコアと第2の粒子材料から成るシェルとを有する繊維が形成される。粒子は個別に紡糸可能である必要はない。また,このような粒子としては結晶,細菌,ウイルス,薬物,成長因子,DNA,ポリペプチド等が挙げられる。
‐ 電極は,「コア‐シェル」構造を有するナノ液滴及びマイクロ液滴の形成を可能にする静電噴霧工程においても使用可能である。
‐ 混合体の第1の材料は気体状態に置換されてもよく,後者は混合体の第2の材料内に気泡を形成できるような方法で比例配分される。その後,紡糸工程は混合体の第2の材料中に生じる気泡の薄層上に形成されたテイラーコーンに基づく。
【0025】
産業上の利用可能性
本発明は,静電紡糸法により同軸構造を有するナノ繊維又はマイクロ繊維から成る材料等の繊維材料の実験室での調製及び工業生産に特に有用である。
図1
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図5
図6