【実施例1】
【0057】
図1は、本実施例1に係るファスナーチェーンを用いて構成されたスライドファスナーを示す平面図である。
図2、
図3、及び
図4は、同スライドファスナーのファスナーエレメントを示す斜視図、正面図、及び側面図である。
【0058】
なお、以下の説明において、前後方向とは、ファスナーテープのテープ長さ方向を指し、スライダーの摺動方向と同じ方向である。特に、前方とは、スライダーを左右のエレメント列が噛合してスライドファスナーが閉鎖するように摺動させる方向を言い、後方とは、スライダーを左右のエレメント列が分離してスライドファスナーが開くように摺動させる方向を言う。
【0059】
左右方向とは、ファスナーテープのテープ幅方向を指し、ファスナーテープのテープ面に平行で、且つ、テープ長さ方向に直交する方向である。また、上下方向とは、ファスナーテープのテープ面に直交するテープ表裏方向であり、特に、ファスナーテープに対してスライダーの引手が配されている側の方向を上方とし、その反対側の方向を下方とする。
【0060】
本実施例1のスライドファスナー1は、左右のファスナーテープ11のテープ側縁部にエレメント列12が形成された左右一対のファスナーストリンガー10と、エレメント列12に沿って摺動可能に配されたスライダー30と、エレメント列12の前端側に隣接して配され、スライダー30の脱落を防止する上止5、エレメント列12の後端側に隣接して配された開離嵌挿具6とを有する。
【0061】
なお、本実施例1のスライドファスナー1は、エレメント列12を形成するファスナーエレメント20の構成に主な特徴を有しており、例えばスライダー30、上止5、及び開離嵌挿具6は、一般的に知られている従来の金属性片面エレメントを有するスライドファスナーに用いられるスライダー、上止、及び開離嵌挿具とそれぞれ実質的に同様の構成を有している。
【0062】
例えば、本実施例1のスライダー30は、スライダー胴体31と、スライダー胴体31に回動可能に保持される引手32とを備えている。また、スライダー胴体31は、上下翼板33,34と、上下翼板33,34の前端部(肩口側端部)間を連結する案内柱35と、上下翼板33,34の左右側縁部に配された左右のフランジ部36と、上翼板33の上面側に立設され、引手32を保持する引手取付柱37と有している。
【0063】
スライダー胴体31の前端には、案内柱35を間に挟んで左右の肩口が形成されているとともに、スライダー胴体31の後端には後口が形成されている。また、上下翼板33,34間には、左右の肩口と後口とを連通する略Y字形状のエレメント案内路が形成されている。更に、スライダー胴体31における上翼板33に配された左右の上フランジ部36と、下翼板34に配された左右の下フランジ部36との間には、左右のファスナーテープ11を挿通させるテープ挿通間隙が形成されている。
【0064】
本実施例1の開離嵌挿具6は、左側ファスナーストリンガー10の後端部に固定される蝶棒7と、右側ファスナーストリンガー10の後端部に固定される箱棒8と、箱棒8の後端部に配される箱体9とを有している。また、スライダー30及び開離嵌挿具6の材質は特に限定されるもののではなく、任意の材料を用いることができる。
【0065】
本実施例1における各ファスナーストリンガー10は、ファスナーテープ11のテープ側縁部に複数の金属製のファスナーエレメント20が所定のピッチをもって列設されて構成されており、エレメント列12は、ファスナーテープ11に取着された複数のファスナーエレメント20により形成されている。また、左右のファスナーストリンガー10のエレメント列12が噛み合わされることにより、ファスナーチェーンが構成される。
【0066】
ファスナーテープ11は帯状に織製又は編成されており、ファスナー被着製品との取付部となるテープ主体部と、テープ主体部の一側縁に配され、複数のファスナーエレメント20が列設されるテープ側縁部(エレメント取付部とも言う)とを有している。また本実施例1では、左右のファスナーテープ11の相対するテープ側端縁に、ファスナーテープ11のテープ表裏面から膨出するように形成される芯紐部を設けることも可能である。
【0067】
本実施例1のファスナーエレメント20は、銅、銅合金、アルミニウム合金等の金属により構成されている。このファスナーエレメント20は、
図2〜
図4に示したように、噛合凸部24及び噛合凹部25を備えた噛合頭部21と、噛合頭部21の一端から延出する胴部22と、胴部22の一端から二股に分岐し延出する一対の脚部23とを有している。
【0068】
また、ファスナーエレメント20は、噛合凸部24と噛合凹部25が互いに噛合頭部21の反対面側に配された片面エレメントとして構成されており、且つ、エレメント幅方向(テープ表裏方向)の中心位置を基準にして対称的に形成されている。
【0069】
なお、
図2〜
図4では、ファスナーテープ11に取着された状態のファスナーエレメント20の形態が示されており、取着前のファスナーエレメント20は、一対の脚部23が胴部22からエレメント幅方向に開脚して略Y字状の形態を有している。
【0070】
本実施例1の噛合頭部21は、前面(第1主面)及び後面(第2主面)間におけるエレメント厚さ寸法(テープ長さ方向の寸法)が一定の大きさを有する頭部本体21aと、頭部本体21aの前面側に山状に突設された噛合凸部24と、頭部本体21aの後面側に凹設された底面部を備える噛合凹部25とを有している。
【0071】
頭部本体21aの前面及び後面は、テープ長さ方向に直交する平坦面(テープ幅方向に平行な平坦面)に形成されており、頭部本体21aにおけるテープ長さ方向の寸法は一定の大きさを有する。噛合凸部24と噛合凹部25とは、
図5に示すように、頭部本体21aの前面側における噛合凸部24の位置と後面側における噛合凹部25の位置とが互いに対応するように配されている。
【0072】
また、本実施例1において、頭部本体21aの前面から噛合凸部24の先端(頂面)までのテープ長さ方向の寸法(噛合凸部24の高さ寸法)と、頭部本体21aの後面から噛合凸部24の底面部までのテープ長さ方向の寸法(噛合凹部25の深さ寸法)とは、所定の大きさに設定されており、特に、噛合凸部24の高さ寸法は、後述するb/aの値が所定の範囲内の大きさとなるように設定されている。
【0073】
本実施例1の胴部22は、エレメント長さ方向(テープ幅方向)において、噛合凹部25の端縁位置から、一対の脚部23を分岐させる股部のテープ挟着面26の位置まで配されている。すなわち、本実施例1において、胴部22とは、エレメント長さ方向において、噛合凹部25の端縁位置から股部のテープ挟着面26の位置までに配される部分を指し、この胴部22よりもテープ外方側に配される部分を噛合頭部21とし、胴部22よりもテープ内方側に配される部分を脚部23とする。また、本実施例1において、胴部22の前面及び後面は、頭部本体21aの前面及び後面と同一平面を形成している。また、後述する脚部23の前面及び後面は、湾曲面又は傾斜面に形成されているが、胴部22の前面及び後面に連接している。
【0074】
本実施例1の脚部23は、胴部22からテープ内方側に延出しており、一対の脚部23の先端領域(テープ内方側の端部領域)には、互いに接近する方向(内側)に屈曲した鉤状の屈曲部23aが配されている。また、胴部22及び一対の脚部23の内周面はテープ長さ方向に平行に配されており、この内周面は、ファスナーテープ11に密接するテープ挟着面26となる。
【0075】
なお、本発明におけるテープ外方側とは、
図1の平面視において、対象とするファスナーエレメント20が取り付けられたファスナーテープ11のテープ端縁よりもテープ外側の部分を指し、テープ内方側とは、
図1の平面視において、対象とするファスナーエレメント20が取り付けられたファスナーテープ11のテープ端縁よりもテープ内側の部分を指す。
【0076】
また、本実施例1のファスナーエレメント20では、スライドファスナー1の平面視にて、一対の脚部23が、脚部23の先端部が基端部(胴部22側の端部)よりも噛合凸部24の突出方向である前方に位置するように、頭部本体21aの前面及び後面に対して(又はテープ幅方向に対して)斜めの方向に湾曲して延出している。
【0077】
この場合、脚部23の先端部を除く部分の前面は、脚部23の先端(テープ内方側)に向かうにつれて前方側に位置するように、凹状に湾曲した湾曲面に形成されている。また、脚部23の後面は、脚部23の先端(テープ内方側)に向かうにつれて前方側に位置するように、凸状に湾曲した湾曲面に形成されている。更に、脚部23の先端部を除く部分の厚さ寸法(テープ長さ方向の寸法)は、全体的に略一定の大きさを有している。
【0078】
なお、本実施例1では、一対の脚部23が上述のように湾曲しながら延出しているが、本発明において、一対の脚部は、脚部の先端部が基端部よりも前方に位置するように、テープ幅方向に対して斜めの方向に直線的に傾斜して延出していても良い。
【0079】
本実施例1の脚部23の先端部における前面側には、ファスナーエレメント20の手触りや肌触りを良くするためや、スライダー30の摺動時にファスナーエレメント20がスライダー30に引っ掛かり難いようにするために、面取り部23bが設けられている。この面取り部23bは、頭部本体21aの前面及び後面に平行な面により構成されている。
【0080】
この場合、脚部23の湾曲形状は、脚部23の先端部における前面の位置が、すなわち、面取り部23bの平坦面の位置が、テープ長さ方向において、噛合相手側のファスナーエレメント20における頭部本体21aの形成領域D内に配されるように形成されている。
【0081】
このように脚部23の湾曲形状が形成されることにより、ファスナーエレメント20の独特の湾曲形状を強調して顕在化できるとともに、ファスナーエレメント20のファスナーテープ11に対する適切な取付強度を安定して確保できる。また、脚部23の湾曲が強くなり過ぎることを防いで、脚部23の湾曲形状に起因してスライドファスナー1の柔軟性が低下することも抑制できる。
【0082】
またファスナーエレメント20の脚部23が上述のような湾曲形状を有する場合、左右のエレメント列12を噛合させた状態で左右のファスナーテープ11に、互いを離間させる方向に引っ張る横引き力を加えたときに、その横引き力が加えられた部分のファスナーエレメント20に回転モーメントが働く。このため、エレメント列12の一部においては、横引き力を受けたときに、左右のファスナーエレメント20が、その噛み合わせが外れる方向に回転することがある。
【0083】
そこで、本実施例1では、上述のような横引き力を受けても左右のファスナーエレメント20の噛み合わせが外れることを防ぐために、ファスナーエレメント20の取り付けピッチの大きさやファスナーエレメント20の噛合凸部24の突出高さなどを調整して、
図5に示したように、一方のファスナーストリンガー10にて隣接するファスナーエレメント20の頭部本体21a間の間隔の大きさをaと規定し、ファスナーエレメント20の噛合凸部24が噛合相手側のファスナーエレメント20の噛合凹部25内に挿入されるテープ長さ方向の挿入深さの大きさをbとした場合に、b/aの値が0.25以上となるように設定されている。
【0084】
このように前記b/aの値を0.25以上の大きさに設定することにより、各ファスナーエレメント20の噛合凸部24が噛合相手側のファスナーエレメント20の噛合凹部25内に挿入される挿入深さを大きく確保できる。これにより、ファスナーエレメント20が横引き力を受けて回転するような動きをしても、左右のファスナーエレメント20の噛み合わせが外れることはなく、更には、ファスナーエレメント20の噛合凸部24が噛合相手側の噛合凹部25の内壁面に当接してファスナーエレメント20の回転角度がそれ以上大きくなることを防止できる。
【0085】
従って、左右のファスナーエレメント20の噛み合わせが外れずに、左右のエレメント列12の噛合状態を安定して維持することができるため、スライドファスナー1の横引き強度を高めることができる。
【0086】
また、上述したように、ファスナーエレメント20の噛合凸部24が噛合相手側の噛合凹部25の内壁面に当接してファスナーエレメント20の回転が抑えられるため、通常体のファスナーエレメント20の向きに対して、横引き力を受けて回転するファスナーエレメント20の最大回転角度は、20°以下の大きさに、好ましくは15°以下の大きさに制限される。
【0087】
更に本実施例1では、前記b/aの値が0.25以上であることによって、噛合凸部24を噛合相手側の噛合凹部25内に深く挿入できるため、テープ表裏方向の外力に対するエレメント列12の噛合状態の強さを表す突き上げ強度も高めることができる。
【0088】
一方、本実施例1では、前記b/aの値を0.30以下の大きさに設定することにより、各ファスナーエレメント20の噛合凸部24が噛合相手側のファスナーエレメント20の噛合凹部25内に深く入り込みすぎることを防ぐことができる。これにより、噛合状態にある左右のファスナーストリンガー10(ファスナーチェーン)の柔軟性が低下することを抑えて、適切な柔軟性を安定して確保することができる。
【0089】
また、本実施例1では、噛合凸部24における頭部本体21aの前面から突出するテープ長さ方向における突出寸法の大きさcに対して、噛合凸部24が噛合相手側のファスナーエレメント20の噛合凹部25内に挿入されるテープ長さ方向の挿入深さの大きさbの割合(すなわち、b/cの値×100)が65%以上85%以下に、好ましくは70%以上80%以下に設定されている。
【0090】
このように噛合凸部24の突出寸法に対する挿入深さの割合が65%以上であることにより、左右のエレメント列12の噛合状態において、ファスナーエレメント20の噛合凸部24が噛合相手側のファスナーエレメント20の噛合凹部25内に深く挿入されるため、スライドファスナー1の噛合強度が高められて、所望の横引き強度や突き上げ強度を安定して確保することができる。
【0091】
また、噛合凸部24の突出寸法に対する挿入深さの割合が85%以下であることにより、左右のエレメント列12の噛み合わせが強くなり過ぎることを防いで、噛合した左右のエレメント列が硬くなることを防いでスライドファスナー1の適切な柔軟性を安定して確保できるとともに、スライダー30の摺動による左右のエレメント列12を噛み合わせる動作や分離させる動作を円滑に行うことができ、スライダー30の良好な摺動性を安定して確保することができる。
【0092】
なお、本実施例1においては、前述したように、頭部本体21aの前面及び後面と、胴部22の前面及び後面とは、テープ長さ方向に直交する同一の平坦面上に配されており、脚部23の前面及び後面は、頭部本体21a及び胴部22の前面及び後面に対して斜めの方向に湾曲する湾曲面に形成されている。
【0093】
このため、テープ長さ方向に直交する平坦面と、その平坦面に対して斜めの方向に湾曲する湾曲面との境界は、胴部22と脚部23の境界の位置(言い換えると、エレメント長さ方向(テープ幅方向)における股部の内周面の位置)に設定されている。
【0094】
しかし、本発明において、平坦面と湾曲面の境界位置はこれに限定されるものではなく、頭部本体21aの前面及び後面がテープ長さ方向に直交する平坦面に形成され、且つ、その平坦面に対して脚部23が斜めの方向に湾曲して延出していれば、平坦面と湾曲面の境界位置を、エレメント長さ方向(テープ幅方向)における胴部22の形成領域内に設定することも可能である。すなわち、ファスナーエレメント20の胴部22と脚部23とに連続するように、頭部本体21aの前面及び後面に対して斜め方向に湾曲する湾曲面を形成することができる。
【0095】
なお本発明において、平坦面と湾曲面の境界位置は、頭部本体21aから離れている場合の方が、噛合頭部21の形状を安定させて所望の噛合強度を容易に確保できるため、平坦面と湾曲面の境界位置は、本実施例1のように胴部22と脚部23の境界の位置に設定されていることが好ましい。
【0096】
次に、本実施例1のファスナーエレメント20を製造する方法について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。
先ず、銅、銅合金、アルミニウム合金等の金属からなる平角線材40に対して、
図8に示すような上下一対の金型41a、41bを用いてプレス加工を行って、その平角線材40を部分的に塑性変形させることにより、噛合凸部24及び噛合凹部25を所定のピッチで形成する。
【0097】
次に、噛合凸部24及び噛合凹部25が形成された平角線材40に対して、
図9に示すようなカッティングパンチ42及びカッティングダイ43を用いて、ファスナーエレメント20の外周形状に沿うような打ち抜き加工を行う。
【0098】
このカッティングダイ43には、ファスナーエレメント20の外周形状に対応した断面形状を備えた抜き穴43aが形成されている。また、カッティングパンチ42の先端部には、平角線材40の頭部本体21a及び胴部22に該当する部分に当接する平坦面を備えた頭部側平坦部42aと、その頭部側平坦部42aに凹設されて噛合凸部24を収容する収容凹部42bと、頭部側平坦部42aの平坦面に対して斜め方向に湾曲する湾曲面を備えた脚部形成部42cと、ファスナーエレメント20の脚部23の先端部に対応する位置に配される面取り部形成部42dとが設けられている。この場合、脚部形成部42cの湾曲面は、頭部側平坦部42aの平坦面に対して打ち抜き方向とは反対側の方向となる斜め上昇方向に凸状に湾曲している。また、面取り部形成部42dは、頭部側平坦部42aの平坦面と平行な面を備えて構成されている。
【0099】
このようなカッティングパンチ42及びカッティングダイ43を用いて、噛合凸部24及び噛合凹部25が形成された平角線材40に対し、カッティングパンチ42をファスナーエレメント20の前面側となる面に衝接させて打ち抜き加工を行うことにより、所定の外周形状を備えたファスナーエレメント20が打ち抜かれると同時に、打ち抜かれるファスナーエレメント20の脚部23を、頭部本体21aの前面及び後面に対して噛合凸部24の突出方向側に斜めに湾曲する湾曲形状に塑性変形させることができる。
【0100】
特にこの場合、頭部側平坦部42aを平角線材40に接触させて打ち抜きを始めてから、脚部形成部42cを平角線材40に接触させて脚部23を湾曲させることにより、カッティングパンチ42でファスナーエレメント20を打ち抜きながら、そのファスナーエレメント20の脚部23を所定の湾曲形状に円滑に且つ安定して変形させることができる。
【0101】
更に、カッティングパンチ42の先端部に面取り部形成部42dが設けられていることにより、ファスナーエレメント20の打ち抜き時に、面取り部形成部42dにて、そのファスナーエレメント20の脚部23の先端部に面取り部23bを安定して形成することができる。
【0102】
特に本実施例1では、ファスナーエレメント20の打ち抜き時に、予め平角線材40に形成した噛合凸部24が、カッティングパンチ42の先端部に設けた収容凹部42bに収容される。これにより、カッティングパンチ42及びカッティングダイ43に対して、平角線材40の打ち抜き部分の位置決めを容易に且つ安定して行うことができるとともに、ファスナーエレメント20の打ち抜き時に噛合凸部24が変形することを防止して、噛合凸部24の形状を安定して保持することができる。
【0103】
上述のような打ち抜き加工を行うことにより、一対の脚部23が開脚したファスナーエレメント20を得ることができ、その後、得られたファスナーエレメント20に研磨工程や塗装工程等を行うことによって、本実施例1のファスナーエレメント20が製造される。
【0104】
そして、このようにして製造された本実施例1のファスナーエレメント20は、一対の脚部23が胴部22側の基端部から先端部に向けてエレメント幅方向に開脚した形態を有する。このため、一対の脚部23間にファスナーテープ11のテープ側縁部を挿入し、その後、一対の脚部23を互いに接近する内側方向に加締める加工を行ってファスナーエレメント20を塑性変形させることにより、ファスナーエレメント20がファスナーテープ11に取着される(植え付けられる)。
【0105】
これにより、ファスナーストリンガー10が製造される。また、製造されたファスナーストリンガー10を2つ一組で組み合わせて、各ファスナーストリンガー10のエレメント列12を相互にかみ合わせることにより、ファスナーチェーンが得られる。更に、そのファスナーチェーンのエレメント列12にスライダー30を取り付けるとともに、上止5及び開離嵌挿具6をファスナーチェーンの所定位置に固定することによって、
図1に示した本実施例1のスライドファスナー1が製造される。
【0106】
このようにして得られる本実施例1のスライドファスナー1では、各ファスナーエレメント20の脚部23が、頭部本体21aの前面及び後面に対して、テープ長さ方向の噛合凸部24の突出方向側に湾曲する湾曲形状を有するため、従来の一般的な通常のファスナーエレメントを有するスライドファスナーと全く異なる外観品質を備え、他の製品との差別化を図ることができる。
【0107】
更に、脚部23が湾曲形状に形成されてファスナーテープ11に固定されていることにより、ファスナーエレメント20がテープ長さ方向の前方や後方に傾き難くなるため、例えば脚部23の厚さを少し薄くしても(すなわち、脚部23のテープ長さ方向における寸法(厚さ寸法)を小さくしても)、ファスナーテープ11に対するファスナーエレメント20の姿勢を安定して保持することができる。また、脚部23が湾曲形状に形成されていることにより、脚部23とファスナーテープ11との接触面積が増大するため、ファスナーテープ11に対するファスナーエレメント20の取付強度が向上することも期待される。
【0108】
また、本実施例1のスライドファスナー1では、脚部23が湾曲形状に形成されているにも係らず、頭部本体21aの前面及び後面がテープ幅方向に平行に配されており、各ファスナーエレメント20の噛合頭部21が、従来の一般的な通常のファスナーエレメントの噛合頭部と略同じように形成されており、その上、前述したb/aの値や、噛合凸部24の突出寸法に対する挿入深さの割合が所定の範囲に設定されている。
【0109】
これにより、本実施例1のスライドファスナー1では、スライダー30を摺動させることによって左右のエレメント列12を円滑に噛合させることができ、また、スライダー30の良好な摺動性を一層安定して確保することができる。更に、従来の一般的な通常のファスナーエレメントを有するスライドファスナーと同等以上の横引き強度及び突き上げ強度を安定して得ることができる。
【0110】
また、本実施例1では、脚部23が湾曲形状に形成されていても、その脚部23の頭部本体21aの前面及び後面に対する湾曲方向が、頭部本体21aに対して噛合凸部24の突出方向である前方側に向いている。更に、本実施例1のスライドファスナー1では、ファスナーエレメント20の噛合凸部24が、頭部本体21aに対して、スライダー30をスライドファスナー1が閉鎖するように摺動させる方向に突出しており、例えば
図6に示したように、ファスナーエレメント20がスライダー30のエレメント案内路内に移動したときに、噛合凸部24がスライダー30の後口側ではなく、肩口側に向くように突出している。
【0111】
このため、スライダー30をファスナー閉鎖方向に摺動させるときには、スライダー30の肩口側からエレメント案内路内に移動するファスナーエレメント20が、スライダー30の肩口付近でテープ幅方向に動き易くなる。しかし、本実施例1では、ファスナーエレメント20の脚部23が、頭部本体21aに対する噛合凸部24の突設方向と同じ前方に向けて湾曲しているため、スライダー30の肩口付近でファスナーエレメント20が動いて、例えばスライダー30の左右フランジ部36に接触したとしても、ファスナーエレメント20の脚部23がフランジ部36を傷付け難くすることができる。
【0112】
なお、スライダー30の後口付近に位置するファスナーエレメント20は噛合状態にあるとともに、スライダー30の左右フランジ部36によってテープ幅方向の位置が規制されているため、スライダー30の後口付近ではファスナーエレメント20がテープ幅方向に動き難い。
【0113】
このため、ファスナーエレメント20の脚部23が前方に向けて湾曲していても、例えばスライダー30をスライドファスナー1が開く方向に摺動させて、噛合状態にある左右のファスナーエレメント20をスライダー30の後口からエレメント案内路内に移動させるときに、ファスナーエレメント20の脚部23がスライダー30の左右フランジ部36に引っ掛かって傷付けることは生じ難くなる。
【0114】
更に、本実施例1のスライドファスナー1では、ファスナーエレメント20の脚部23が前方に向けて湾曲しているため、例えば
図7に示したように、エレメント列12の最も後端に配されるファスナーエレメント20の脚部23と、エレメント列12の後端部に隣接して配された蝶棒7又は箱棒8との間の間隔を、脚部23の先端部に向けて漸増させることができる。
【0115】
これにより、ファスナーエレメント20と蝶棒7又は箱棒8との間におけるファスナーストリンガー10の部分的な柔軟性を向上させることができるため、例えば蝶棒7又は箱棒8の向きを、エレメント列12に対してテープ幅方向に容易に傾けることが可能となる。
【0116】
このように蝶棒7又は箱棒8の向きを傾けることができることにより、蝶棒7をスライダー30のエレメント案内路を介して箱体9に挿入する操作や、蝶棒7を箱体9からスライダー30のエレメント案内路を介して抜出する操作を、より円滑に行うことが可能となる。このため、開離嵌挿具6の操作性を向上させることができる。
【0117】
なお、本実施例1において、開離嵌挿具6は、前述のように、蝶棒7、箱棒8、及び箱体9を有して構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明は、例えば、前後両方向に左右のファスナーストリンガーを分離させることが可能な所謂両開きタイプのスライドファスナーに開離嵌挿具を設ける場合にも同様に適用することができる。
【0118】
この両開きタイプのスライドファスナー用の開離嵌挿具は、例えば、左右のファスナーストリンガーのエレメント列に、互いの後口を対向させるようにして2つのスライダーを摺動可能に取着し、且つ、一方のファスナーストリンガーの後端部に蝶棒を固定するとともに他方のファスナーストリンガーの後端部に蝶棒を固定することによって構成されており、通常の開離嵌挿具に備えられる箱体は排除されている。
【0119】
また、上述した実施例1のファスナーエレメント20を製造する場合、平角線材40に噛合凸部24及び噛合凹部25を形成した後、
図9に示したように、カッティングパンチ42を、平角線材40の噛合凸部24が形成されている面(第1主面)側に衝接させて打ち抜き加工を行うことによって、ファスナーエレメント20を製造している。
【0120】
しかし、本発明では、平角線材40に噛合凸部24及び噛合凹部25を形成した後、例えば
図10に示したようなカッティングダイ48及びカッティングパンチ47を用いて、カッティングパンチ47を、平角線材40の噛合凹部25が形成されている面(第2主面)側に衝接させて打ち抜き加工を行うことによって、ファスナーエレメント20を製造することも可能である。
【0121】
この場合、カッティングダイ48には、ファスナーエレメント20の外周形状に対応した断面形状を備えた抜き穴48aが形成されている。また、カッティングパンチ47の先端部には、平角線材40の頭部本体21a及ぶ胴部22に該当する部分に当接する平坦面を備えた頭部側平坦部47aと、その頭部側平坦部47aに突設されて噛合凹部25に挿入される挿入突部47bと、頭部側平坦部47aの平坦面に対して斜め下降方向に凹状に湾曲する湾曲面を備えた脚部形成部47cとが設けられている。
【0122】
このようなカッティングパンチ47及びカッティングダイ48を用いて、噛合凸部24及び噛合凹部25が形成された平角線材40に対し、カッティングパンチ47をファスナーエレメント20の後面側となる面に衝接させて打ち抜き加工を行うことにより、所定の外周形状を備えたファスナーエレメント20が打ち抜かれると同時に、打ち抜かれるファスナーエレメント20の脚部23を、頭部本体21aの前面及び後面に対して噛合凸部24の突出方向へ斜めに湾曲する湾曲形状に塑性変形させることができる。
【0123】
またこの場合、予め平角線材40に形成した噛合凹部25に、カッティングパンチ47の先端部に突設した挿入突部47bが挿入されることにより、カッティングパンチ47及びカッティングダイ48に対して、平角線材40の打ち抜き部分の位置決めを容易に且つ安定して行うことができるとともに、ファスナーエレメント20の打ち抜き時に噛合凹部25が変形することを防止して、噛合凹部25の形状を安定して保持することができる。
【0124】
そして、上述の打ち抜き加工を行うことにより、一対の脚部23が開脚したファスナーエレメント20を得ることができる。この場合、ファスナーエレメント20が打ち抜かれる際に、ファスナーエレメント20の脚部23先端部の前面側が削られて面取り部23bが形成されることもある。そして、得られたファスナーエレメント20に、必要に応じて脚部23の先端部に面取り部23bを形成する加工を行い、その後、研磨工程や塗装工程等を行うことによって、本発明の片面エレメントを製造することができる。
【実施例2】
【0125】
図11は、本実施例2に係るファスナーエレメントをテープ長さ方向から見た正面図であり、
図12は、同ファスナーエレメントの断面図である。
本実施例2では、各ファスナーエレメントの形状が前述の実施例1と異なるものの、その他の構成については前述の実施例1に係るスライドファスナーと同様である。このため、本実施例2では、ファスナーエレメントについて主に説明を行うこととする。
【0126】
本実施例2のスライドファスナーは、左右のファスナーテープのテープ側縁部に複数のファスナーエレメント50が列設されてエレメント列が形成された左右一対のファスナーストリンガーと、エレメント列に沿って摺動可能に配されたスライダーと、エレメント列の前端側に隣接して配された上止、エレメント列の後端側に隣接して配された開離嵌挿具とを有する。
【0127】
本実施例2のファスナーエレメント50は、銅、銅合金、アルミニウム合金等の金属により構成されている。このファスナーエレメント50は、
図11及び
図12に示したように、噛合凸部54及び嵌入空間部55を備えた噛合頭部51と、噛合頭部51の一端から延出する胴部52と、胴部52の一端から二股に分岐し延出する一対の脚部53とを有している。
【0128】
また、ファスナーエレメント50は、噛合頭部51の前面(第1主面)側と後面(第2主面)側とにそれぞれ噛合凸部54及び嵌入空間部55が一組ずつ配された両面エレメントとして構成されており、且つ、エレメント幅方向(テープ表裏方向)の中心位置を基準にして対称的に形成されている。
【0129】
本実施例2の噛合頭部51は、前面及び後面間におけるエレメント厚さ寸法(テープ長さ方向の寸法)が一定の大きさを有する頭部本体51aと、頭部本体51aの前面及び後面に突設された噛合凸部54と、頭部本体51aの前面及び後面において胴部52からテープ外方側(頭部先端側)に向けて延出した左右の延出部57とを有している。
【0130】
噛合頭部51の頭部本体51aは、胴部52よりも段差を介してエレメント厚さ寸法を小さくした所定の厚さをもって配されている。また、頭部本体51aの前面及び後面は、テープ長さ方向に直交する平坦面(テープ幅方向に平行な平坦面)に形成されており、頭部本体51aにおけるテープ長さ方向の寸法は一定の大きさを有する。
【0131】
この噛合頭部51を
図1に示すように前方側から見たときに、頭部本体51aの先端縁は、エレメント幅方向に平行に配されており、頭部本体51aの側縁は、頭部本体51aのエレメント幅方向の寸法が先端縁に向けて漸減するようにエレメント長さ方向に対して傾斜又は湾曲して配されている。
【0132】
頭部本体51aの前面側及び後面側に配される噛合凸部54は、エレメント幅方向の中央部にて、頭部本体51aの前面及び後面から山状に突設されており、胴部52から所定の距離で離間した位置に形成されている。
【0133】
左右の延出部57は、互いに離間した位置に、頭部本体51aから隆起した所定のエレメント厚さ寸法をもって、胴部52から噛合凸部54の左右側方側に向かうように前方へ延出している。この場合、噛合凸部54と左右の延出部57との間には所定の間隙が設けられている。また、左右の延出部57における前面及び後面は、胴部52の前面及び後面と同一平面上に配されている。
【0134】
本実施例2の噛合頭部51には、噛合凸部54、左右の延出部57、及び胴部52によって囲まれた嵌入空間部55が頭部本体51aの前面側と後面側とにそれぞれ形成されている。各嵌入空間部55は、エレメント厚さ方向(テープ長さ方向)の高さ位置が頭部本体51aの前面及び後面と同じ位置に設定された底面55aを有している。
【0135】
本実施例2の胴部52は、嵌入空間部55の底面55aからエレメント厚さ方向に隆起し、噛合頭部51の頭部本体51aよりもエレメント厚さ寸法を大きくして形成されている。この胴部52は、エレメント長さ方向(テープ幅方向)において、嵌入空間部55の底面55aの端縁位置から、一対の脚部53を分岐させる股部のテープ挟着面56の位置まで配されている。
【0136】
すなわち、本実施例2において、胴部52とは、エレメント長さ方向において、嵌入空間部55の底面55aの端縁位置から股部のテープ挟着面56の位置までに配される部分を指し、この胴部52よりもテープ外方側に配される部分を噛合頭部51とし、胴部52よりもテープ内方側に配される部分を脚部53とする。
【0137】
本実施例2の脚部53は、胴部52からテープ内方側に延出しており、一対の脚部53の先端領域(テープ内方側の端部領域)には、互いに接近する方向(内側)に屈曲した鉤状の屈曲部53aが配されている。また、胴部52及び一対の脚部53の内周面はテープ長さ方向に平行に配されており、この内周面は、ファスナーテープに密接するテープ挟着面56となる。
【0138】
また、本実施例2のファスナーエレメント50では、一対の脚部53が、脚部53の先端部が基端部(胴部52側の端部)よりも前方に位置するように、頭部本体51aの前面及び後面に対して(又はテープ幅方向に対して)斜めの方向に湾曲して延出している。
【0139】
この場合、脚部53の先端部を除く部分の前面は、脚部53の先端(テープ内方側)に向かうにつれて前方側に位置するように、凹状に湾曲した湾曲面に形成されている。また、脚部53の後面は、脚部53の先端(テープ内方側)に向かうにつれて前方側に位置するように、凸状に湾曲した湾曲面に形成されている。更に、脚部53の先端部を除く部分の厚さ寸法(テープ長さ方向の寸法)は、全体的に略一定の大きさを有している。
【0140】
なお、本発明において、一対の脚部53は、脚部53の先端部が基端部よりも前方に位置するように、テープ幅方向に対して斜めの方向に直線的に傾斜して延出していても良い。
【0141】
また、本実施例2の脚部53の先端部における前面側には、ファスナーエレメント50の手触りや肌触りを良くするためや、スライダーの摺動時にファスナーエレメント50がスライダーに引っ掛かり難いようにするために、面取り部53bが設けられている。この面取り部53bは、頭部本体51aの前面及び後面に平行な面により構成されている。
【0142】
この場合、脚部53の湾曲形状は、脚部53の先端部における前面の位置が、すなわち、面取り部53bの平坦面の位置が、テープ長さ方向において、噛合相手側のファスナーエレメント50における頭部本体51aの形成領域内に配されるように形成されている。
【0143】
更に、本実施例2では、噛合凸部54における頭部本体51aの前面から突出するテープ長さ方向における突出寸法の大きさに対して、噛合凸部54が噛合相手側のファスナーエレメント50の噛合凹部55内に挿入されるテープ長さ方向の挿入深さの大きさの割合が65%以上85%以下に設定されている。
【0144】
噛合凸部54の突出寸法に対する挿入深さの割合が65%以上であることにより、スライドファスナー1の噛合強度が高められて、所望の横引き強度や突き上げ強度を安定して確保することができる。また、当該割合が85%以下であることにより、左右のエレメント列12の噛み合わせが強くなり過ぎることを防いで、スライドファスナーの適切な柔軟性や、スライダーの良好な摺動性を安定して確保できる。
【0145】
また、本実施例2において、テープ長さ方向に直交するように配された胴部52の平坦な前面及び後面と、その平坦面に対して斜めの方向に湾曲する脚部53の湾曲面との境界は、胴部52と脚部53の境界の位置に設定されている。しかし、本発明において、胴部52の平坦面と、その平坦面に対して湾曲する湾曲面との境界位置は、エレメント長さ方向(テープ幅方向)における胴部52の形成領域内に設定されても良い。
【0146】
上述のような本実施例2のファスナーエレメント50を製造する場合、先ず、銅、銅合金、アルミニウム合金等の金属からなる平角線材に対して、上下一対の金型を用いてプレス加工を行って、その平角線材を部分的に塑性変形させることにより、平角線材の両面に噛合凸部54及び嵌入空間部55をそれぞれ所定のピッチで形成する。
【0147】
次に、噛合凸部54及び嵌入空間部55が形成された平角線材に対して、カッティングパンチ及びカッティングダイを用いて、ファスナーエレメント50の外周形状に沿うような打ち抜き加工を行う。
【0148】
この場合、カッティングダイには、ファスナーエレメント50の外周形状に対応した断面形状を備えた抜き穴が形成されている。また、カッティングパンチの先端部には、平角線材の頭部本体51aに当接する平坦面を備えた頭部側平坦部と、その頭部側平坦部に凹設されて噛合凸部54を収容する収容凹部と、頭部側平坦部の平坦面に対して斜めに湾曲する湾曲面を備えた脚部形成部とが少なくとも設けられている。
【0149】
このようなカッティングパンチ及びカッティングダイを用いて打ち抜き加工を行うことにより、所定の外周形状を備えたファスナーエレメント50が打ち抜かれると同時に、打ち抜かれるファスナーエレメント50の脚部53を、頭部本体51a及び胴部52の前面及び後面の向きに対して斜めの方向に湾曲する湾曲形状に塑性変形させることができる。そして、得られたファスナーエレメント50に研磨工程や塗装工程等を行うことによって、本実施例2のファスナーエレメント50が製造される。
【0150】
このようにして製造された本実施例2のファスナーエレメント50は、一対の脚部53が開脚した形態を有するため、一対の脚部53間にファスナーテープのテープ側縁部を挿入し、その後、一対の脚部53を互いに接近する内側方向に加締める加工を行うことにより、ファスナーエレメント50がファスナーテープに取着されたファスナーストリンガーを製造することができる。また、製造されたファスナーストリンガーを2つ一組で組み合わせて、各ファスナーストリンガーのエレメント列を相互にかみ合わせることにより、ファスナーチェーンを得ることができる。
【0151】
このようにして得られるファスナーチェーンを用いて構成された本実施例2のスライドファスナーは、従来の一般的な通常のファスナーエレメントを有するスライドファスナーと全く異なる外観品質を備えている。また、脚部53が湾曲形状に形成されてファスナーテープに固定されていることにより、ファスナーテープに対するファスナーエレメント50の姿勢を安定して保持することができる。
【0152】
更に、本実施例2のスライドファスナーでは、脚部53が湾曲形状に形成されているにも係らず、頭部本体51aの前面及び後面がテープ幅方向に平行に配されており、各ファスナーエレメント50の噛合頭部51が、従来の一般的な通常のファスナーエレメントの噛合頭部と略同じように形成されている。
【0153】
これにより、本実施例2のスライドファスナーでは、スライダーを摺動させることによって左右のエレメント列を円滑に噛合させることができ、また、スライダーの良好な摺動性を安定して確保することができる。また、従来の一般的な通常のファスナーエレメントを有するスライドファスナーと同等以上の横引き強度及び突き上げ強度を安定して得ることができる。