特許第6161710号(P6161710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6161710ポリ乳酸層を含む物品およびそれを作製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161710
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ポリ乳酸層を含む物品およびそれを作製する方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20170703BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170703BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20170703BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 51/00 20060101ALI20170703BHJP
   C08J 9/08 20060101ALI20170703BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20170703BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20170703BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   B32B27/36ZBP
   C08L67/04
   C08L101/00
   C08K5/42
   C08K5/11
   C08L51/00
   C08J9/08CFD
   B32B5/18
   B32B27/18 Z
   B65D65/40 D
【請求項の数】22
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-538493(P2015-538493)
(86)(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公表番号】特表2016-501741(P2016-501741A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013072564
(87)【国際公開番号】WO2014067923
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2015年6月24日
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2012/002421
(32)【優先日】2012年10月30日
(33)【優先権主張国】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】504310401
【氏名又は名称】コンパニ・ジェルベ・ダノン
(73)【特許権者】
【識別番号】506330645
【氏名又は名称】クラリアント インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・シヴラック
(72)【発明者】
【氏名】アンヌ−フロール・ジャコブ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン−エリック・ウェグナー
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ・グレーゼリング
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−202196(JP,A)
【文献】 特開2002−173589(JP,A)
【文献】 特開2006−168321(JP,A)
【文献】 特表2010−507006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/36
B32B 5/18
B32B 27/18
B65D 65/40
C08J 9/08
C08K 5/11
C08K 5/42
C08L 51/00
C08L 67/04
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)ポリ乳酸を含む非発泡ポリ乳酸材料Aの1つの層Aと、
B)ポリ乳酸を含み、実質的に膨張微小球を含まない発泡ポリ乳酸材料Bの1つの層Bと
を少なくとも含む多層プラスチック材料を含む物品であって、材料Aが耐衝撃改質剤を0.1質量%から10質量%含み、材料Bが耐衝撃改質剤を含まないまたは耐衝撃改質剤を1質量%未満含む、物品。
【請求項2】
材料Bが耐衝撃改質剤を含まない、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
材料Bが化学的発泡剤の少なくとも1種の付加物を含有する、請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
前記化学的発泡剤がクエン酸および任意選択により重炭酸ナトリウムを含む、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記付加物がクエン酸ナトリウム、シス-アコニット酸、トランス-アコニット酸、シス-アコニット酸無水物、トランス-アコニット酸無水物、イタコン酸無水物およびシトラコン酸無水物、またはそれらの混合物である、請求項3または4に記載の物品。
【請求項6】
材料Bが0.5から1.2、好ましくは0.75から1.1の密度を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
0.75から1.2の密度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記耐衝撃改質剤がコア/シェルポリマー化合物、スルホン酸アルキル化合物、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、ポリブチレンサクシネート、PVA、エチレン酢酸ビニルまたは水素化大豆油(soil oil)である、請求項1から7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
層Bを少なくとも19質量%、好ましくは少なくとも38質量%含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
3層材料(第1の層A)-(層B)-(第2の層A)である、請求項1から9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
物品厚に沿った層距離量が、以下のプロファイル:
- 第1の層A: 5%から45%、
- 層B: 10%から90%、
- 第2の層A: 5%から45%
に対応し、合計が厚さの100%であり、ここで、第1の層Aおよび第2の層Aが同一または異なる厚さを有する、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
プラスチックシートである、請求項1から11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
前記プラスチックシートが0.5mmから2mm、好ましくは0.6mmから1mmの厚さを有する、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
容器である、請求項1から11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項15】
前記容器が、好ましくは請求項12または13のいずれか一項に記載のプラスチックシート物品から得られる、熱成形品である、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
ボトル、または好ましくはマルチパック形態または個々のカップ形態の熱成形カップである、請求項14または15に記載の物品。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の物品を作製する方法であって、ポリ乳酸および化学的発泡剤を混合する工程、および加熱することで、化学的発泡剤からガス化合物を発生させる工程を含む、方法。
【請求項18】
前記化学的発泡剤がクエン酸および任意選択により重炭酸ナトリウムを含み、前記ガス化合物がCO2を含み、H2Oも任意選択により発生させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
加熱が150℃から250℃の温度で実施される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
加熱が押出工程中に実施されることで、層Bを形成する、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも層Aおよび層Bが同時押出される、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
物品が、
1)少なくとも層Aおよび層Bを同時押出することで、多層プラスチックシートを得る工程と、
2)プラスチックシートを熱成形することで、容器を得る工程と
によって得られる熱成形容器である、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ポリ乳酸を含む物品、およびそれを作製する方法に関する。該物品は包装の分野において使用することができる。それは、良好なスナップ性(snapability)を含めて良好な特性を示す。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸(PLA)は、再生可能な供給源から作製される熱可塑性ポリマーである。それは顕著な生分解性を有する。PLAプラスチックシートは、熱成形容器を作製するために使用される。しかしながら、機械的性質または他の特性に著しく衝撃を与えることなく、包装において使用される材料の量を低下させる必要がある。
【0003】
材料の量を低下させる解決法は、熱可塑性材料、例えばポリスチレンに、加熱するとガス化合物を発生させる発泡剤を組み込むことである。こうした発泡剤の例としては、加熱すると一緒に反応するとともに二酸化炭素および水を発生させる、クエン酸および重炭酸ナトリウムの組合せが挙げられる。
【0004】
文献CN101899167は、発泡PLA単層シートを調製するため、PLAへの膨張性微小球の組込みを開示している。しかしながら、こうしたシートは、食品用途などの一部の包装用途にはほとんど適応せず、なぜならば発泡構造が、一部の薬剤、例えば異物、または酸素など食物製品を変える恐れがある薬剤に対するバリアを提供しないからである。他の物品が必要である。
【0005】
一方、膨張性微小球の組込みは、ギアポンプを使用することなく行われることが好ましく、なぜならばこうした装置は、微小球を損傷し、したがってそれらの膨張を低下させ得る大きな剪断力を伴うからである。他方では、添加剤を組み込むためのギアポンプの使用は、プラスチックシートの形態の物品に重要であり得る均質性などの他の特性および熱成形などのさらなる変形を制御するのに通常好ましい。それゆえに、膨張性微小球を伴う技術以外の技術が必要である。
【0006】
また、包装のための物品は、スナップ性(屈曲誘導(flexural solicitation)下でマルチパック容器を分離する能力)などの一部の特定の特性を必要とすることがある。こうした特性は、通常、予備切断ステップ中に容器製造ラインで得られる。予備切断ステップは、プラスチックシートに衝撃を与えるとともに制御された予備切断深度に貫通する機械的トリミング器具を実現することを伴う。このステップを実現することは、PLAを用いると特に困難であり、というのは、それが脆性材料であるからである。したがって、割れ目が容器端に、および予備切断線に沿って容器表面に出現する。その結果として、容器の保全性に影響することなくカップを分離することはほとんど不可能である。したがって、マルチパック容器を製造するために、改善されたスナップ性を示すPLA物品、例えば脆性が減少されたPLA物品が必要である。対象の他の特性としては、密度、機械的性質、それらの両立、およびその上さらなる形成ステップでの加工性が挙げられる。
【0007】
文献US 2010/0086758は、耐衝撃改質剤を含まない単層発泡PLAシートを開示している。しかしながら、こうしたシートは、食品用途などの一部の包装用途にほとんど適応せず、なぜならば発泡構造が、一部の薬剤、例えば異物、または酸素など食物製品を変える恐れがある薬剤に対するバリアを提供しないからである。こうしたシートは乏しいスナップ性を示すとも考えられ、より良好なスナップ性を有する異なる製品が必要である。
【0008】
文献EP 1798029は、耐衝撃改質剤を含まない、発泡層を有する同時押出多層PLAシートを開示している。こうしたシートは乏しいスナップ性を示すと考えられ、より良好なスナップ性を有する異なる製品が必要である。
【0009】
文献WO 2007/145905は、PLAと反応する架橋化合物を添加することを用いる、PLA発泡シートを形成する方法を開示している。しかしながら、こうしたシートは、食品用途などの一部の包装用途にほとんど適応せず、なぜならば発泡構造が、一部の薬剤、例えば異物、または酸素など食物製品を変える恐れがある薬剤に対するバリアを提供しないからである。こうしたシートは乏しいスナップ性を示すとも考えられ、より良好なスナップ性を有する異なる製品が必要である。
【0010】
文献WO 2005/042627は、発泡剤および核形成剤を添加することによってPLA発泡シートを形成する方法を開示している。しかしながら、こうしたシートは、食品用途などの一部の包装用途にほとんど適応せず、なぜならば発泡構造が、一部の薬剤、例えば異物、または酸素など食物製品を変える恐れがある薬剤に対するバリアを提供しないからである。こうしたシートは乏しいスナップ性を示すとも考えられ、より良好なスナップ性を有する異なる製品が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】CN101899167
【特許文献2】US 2010/0086758
【特許文献3】EP 1798029
【特許文献4】WO 2007/145905
【特許文献5】WO 2005/042627
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、
A)ポリ乳酸を含む非発泡ポリ乳酸材料Aの1つの層Aと、
B)ポリ乳酸を含み、実質的に膨張微小球を含まない発泡ポリ乳酸材料Bの1つの層Bと
を少なくとも含む多層プラスチック材料を含む物品であって、材料Aおよび/または材料Bが耐衝撃改質剤を含む、物品を用いて、上記の問題または必要の少なくとも1つに取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0013】
具体的な実施形態において、本発明は、
A)ポリ乳酸および耐衝撃改質剤を含む非発泡ポリ乳酸材料Aの1つの層Aと、
B)ポリ乳酸を含み、実質的に膨張微小球を含まない発泡ポリ乳酸材料Bの1つの層Bと
を少なくとも含む多層プラスチック材料を含む物品に関する。
【0014】
本発明は、物品を調製するのに適応される方法にも関する。
【0015】
驚くべきことに、本発明の物品および/または方法は、良好な加工性、および/または圧縮耐性などの良好な機械的性質、および/またはスナップ性などの良好な他の特性を可能にすることが見出された。驚くべきことに、非発泡層中に耐衝撃改質剤を導入することは、より良好なスナップ性を可能にすることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1.3のために得られたPLAのサンドイッチ構造の写真を示す。
図2】PLA添加剤なし(比較例1.1)、緻密PLA 1 (比較例1.3)、およびフォームPLA 1 (実施例1.3)、2 (実施例1.4)および3 (実施例1.5)について予備切断深度の関数としてスナップ性評点を示す。
図3】PLAフォーム3 (実施例1.5)シート上で実施された予備切断写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本出願において、非発泡ポリ乳酸(PLA)材料は、直接PLA中またはPLAに埋め込まれた微小球中のいずれかにおいて、ガス封入体が実質的に激減されたポリ乳酸を指す。非発泡PLAは、典型的に、1.2超の密度を有する。非発泡PLAは「緻密PLA」とも称される。
【0018】
本出願において、発泡ポリ乳酸(PLA)材料は、PLAに埋め込まれた微小球中のガス封入体とは典型的に対照的に、好ましくは直接PLA中にガス封入体を含むポリ乳酸を指す。発泡PLAは、典型的に最大1.2まで、好ましくは1.2未満、好ましくは最大1.1までの密度を有する。
【0019】
本出願において、膨張性微小球または膨張微小球は、ポリマーシェル、典型的に熱可塑性シェル、および加熱すると膨張することができるシェル中のガスを有する生成物を指す。加熱すると、ガス圧がシェルの内側で増加し、シェルは膨張する。こうした製品は当業者によって知られており、例えばExpancel(登録商標)として市販されている。
【0020】
本出願において、スナップ性(またはスナップ能力)は、屈曲誘導下で予備切断線に沿って分割できるという層状材料の能力を指す。
【0021】
本出願において、「添加剤」は、膨張性微小球または膨張微小球を含む製品、および耐衝撃改質剤と異なる、ポリ乳酸または他の熱可塑性材料に添加され得る製品を指す。
【0022】
物品構造-シート
本発明の物品は、
A)ポリ乳酸を含む非発泡ポリ乳酸材料Aの1つの層Aと、
B)ポリ乳酸を含み、実質的に膨張微小球を含まない発泡ポリ乳酸材料Bの1つの層Bと
を少なくとも含み、ここで、材料Aおよび/または材料Bが耐衝撃改質剤を含む、多層プラスチック材料、好ましくは熱可塑性材料である。
【0023】
一実施形態において、材料Aは耐衝撃改質剤を含み、材料Bは耐衝撃改質剤を含まない。別の実施形態において、材料Bは耐衝撃改質剤を含み、材料Aは耐衝撃改質剤を含まない。別の実施形態において、材料Aおよび材料Bは、耐衝撃改質剤を含む。
【0024】
好ましい実施形態において、本発明の物品は、
A)ポリ乳酸および耐衝撃改質剤を含む非発泡ポリ乳酸材料Aの1つの層Aと、
B)ポリ乳酸を含み、実質的に膨張微小球を含まない発泡ポリ乳酸材料Bの1つの層Bと
を少なくとも含む多層プラスチック材料、好ましくは熱可塑性材料である。
【0025】
材料Aは、典型的に、好ましくは耐衝撃改質剤を含み、任意選択によりさらなる添加剤を含む緻密ポリ乳酸材料である。材料Aにおけるさらなる添加剤含有量は、例えば0質量%から10質量%、好ましくは0.1質量%から5質量%であり得る。
【0026】
材料Bは、膨張微小球を含まない発泡ポリ乳酸材料である。本明細書において、「膨張微小球を含まない」は、0.5%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.01%未満、好ましくは0%の質量含有量を指す。材料Bは、ある耐衝撃改質剤を、好ましくは1質量%未満の量で耐衝撃改質剤を含むことができる。材料Bにおいて、より高い量の耐衝撃改質剤の存在は、スナップ性を減少させると考えられる。
【0027】
材料Bは、好ましくは耐衝撃改質剤を含まない。本明細書において、「耐衝撃改質剤を含まない」は、0.5%未満、好ましくは0.1%未満、好ましくは0.01%未満、好ましくは0%の質量含有量を指す。材料Bにおいて耐衝撃改質剤の非存在は、スナップ性を改善すると考えられる。
【0028】
材料Bは、任意選択により、さらなる添加剤を含む。材料Bにおけるさらなる添加剤含有量は、例えば0質量%から10質量%、好ましくは0.1質量%から5質量%であり得る。
【0029】
好ましい実施形態において、ポリ乳酸材料は、過酸化物など、重合後に典型的に添加される架橋剤を0質量%から0.15質量%、好ましくは0質量%から0.1質量%含むと記述される。最も好ましい実施形態において。ポリ乳酸材料は、こうした架橋剤を含まない。驚くべきことに、こうした架橋剤は有用でないことが見出された。
【0030】
一実施形態において、該物品は、プラスチックシートまたはフィルムである。それは典型的に、厚さeを有する。それは典型的に、長さlおよび幅bなど2つの他の寸法を有する。典型的に、他の寸法1およびbの両方は、厚さの少なくとも10倍、好ましくは100倍である。プラスチックシートまたはフィルムは典型的に、0.1mmから5mm、好ましくは0.5mmから2mm、好ましくは0.6mmから1mmの厚さを有することができる。厚さの例は、0.5mm、または0.7mm、または0.8mm、または0.9mm、または1mmである。幅は典型的に20cmから200cmであり得る。長さは少なくとも200cmであり得る。プラスチックシートは、ロールとして提供することができる。
【0031】
一実施形態において、物品は容器である。容器は、好ましくはプラスチックシートから得られる熱成形品であってよい。それは、例えばボトル、または好ましくはマルチパック形態もしくは個々のカップ形態の熱成形カップであってよい。容器は、典型的に、多層構造に対応する部分を少なくとも含む。それは、延伸部分および非延伸部分を含むことができる。非延伸部分は、典型的に、プラスチックシート厚を有するプラスチックシートに対応し得る。非延伸部分は、例えば、延伸部分の辺縁がフランジであってよい。例えば、該物品は、延伸された、典型的には熱成形されたシート部分に対応する本体を有する熱成形カップであり、シートの非延伸部分に対応する本体の辺縁ではフランジであってよい。容器についてのさらなる詳細は、下記に示されている。
【0032】
該物品は2層または3層以上を含むことができる。それは2層または3層からなることがある。それは例えば2層材料(層A)-(層B)であり得る。それは3層材料(層A)-(層B)-(層C)であり得る。それは3層材料(第1の層A)-(層B)-(第2の層A)であり得る。第1の層Aおよび第2の層Aは、同一または異なっていてよい。該物品は、好ましくは、層Bを少なくとも19質量%、好ましくは少なくとも38質量%含む。こうした量は、該物品の密度減少を改善する。
【0033】
物品厚に沿った層距離量は、以下の厚さプロファイル:
- 層A:10%から90%、
- 層B:10%から90%
に対応することができ、合計は厚さの100%であり、ここで、第1の層Aおよび第2の層Aは、同一または異なる厚さを有する。
【0034】
好ましい実施形態において、物品厚に沿った層距離量は、以下の厚さプロファイル:
- 第1の層A: 5%から45%、
- 層B: 10%から90%、
- 第2の層A: 5%から45%
に対応し、合計は厚さの100%であり、ここで、第1の層Aおよび第2の層Aは、同一または異なる厚さを有する。
【0035】
好ましい実施形態において、物品厚に沿った層距離量は、以下の厚さプロファイル:
- 第1の層A: 10%から30%、
- 層B: 40%から80%、
- 第2の層A: 10%から30%
に対応し、合計は厚さの100%であり、ここで、第1の層Aおよび第2の層Aは、同一または異なる厚さを有する。
【0036】
層の質量による層の量は、以下の通り:
- 層A: 12%から95%、
- 層B: 5%から88%
であり得、合計は厚さの100%であり、ここで、第1の層Aおよび第2の層Aは、同一または異なる厚さを有する。
【0037】
好ましい実施形態において、質量による量は以下の通り:
- 第1の層A: 6%から47.5%、
- 層B: 5%から88%、
- 第2の層A: 6%から47.5%
であり、合計は厚さの100%であり、ここで、第1の層Aおよび第2の層Aは、同一または異なる厚さを有する。
【0038】
好ましい実施形態において、質量による量は以下の通り:
- 第1の層A: 12%から35%、
- 層B: 30%から76%、
- 第2の層A: 12%から35%
であり、合計は厚さの100%であり、ここで、第1の層Aおよび第2の層Aは、同一または異なる厚さを有する。
【0039】
ポリ乳酸
ポリ乳酸(PLA)ポリマーは、当業者によって知られており、市販されている。これらは典型的に、乳酸モノマーの重合によって得られる。乳酸モノマーは、典型的に、細菌などの微生物体を伴う微生物学的方法によって得られる。
【0040】
発泡および発泡剤
材料Bは、ガス封入体を含む発泡材料である。ガス封入体は、膨張性微小球と異なる任意の適切な手段によって発生させることができる。適切な手段としては、化学的発泡剤(CFA)の導入、およびCO2、N2またはアルカン、例えばn-ブタンおよび/またはi-ブタンおよび/またはn-ペンタンおよび/またはi-ペンタンおよび/またはネオペンタンなど、ガス形態または液状形態または超臨界形態のガス化合物の直接的導入が挙げられる。ポリマー溶融体におけるガスの直接的導入に適切な技術は、当業者によって知られている。
【0041】
好ましい実施形態において、化学的発泡剤(CFA)を使用する。こうした薬剤は、典型的に熱活性化による加工でガスを発生させ、したがって発泡を可能にする。ガスが発生され、材料が発泡されると、こうした薬剤は、典型的に、該材料中に反応付加物を残す。
【0042】
したがって、材料Bは、好ましくは、化学的発泡剤の少なくとも1種の付加物を含有する。
【0043】
化学的発泡剤は、典型的に、熱分解を受けることで分解生成物としてガス化合物を発生させる化合物または化合物の混合物である。発泡剤の選択は、材料Bが加工される加工温度に依存することができる。材料Bは、典型的に、押出機のバレル内で加工される。典型的に、化学的発泡剤は、150℃超から280℃の範囲における分解温度を有する。こうした発泡剤は、典型的に、二酸化炭素発生体および任意選択により水湿分発生体である。適切なCFAとしては、金属の炭酸塩および重炭酸塩、例えば重炭酸ナトリウム、および/または純粋なクエン酸が挙げられる。CO2および任意選択によりH2Oの発生以外に、これらのCFAの熱的劣化は、典型的に、以下の副生物付加物:クエン酸ナトリウム、シス-アコニット酸、トランス-アコニット酸、シス-アコニット酸無水物、トランス-アコニット酸無水物、イタコン酸無水物およびシトラコン酸無水物も発生させる。
【0044】
化学的発泡剤は、好ましくは、クエン酸、および任意選択により重炭酸ナトリウムを含む。
【0045】
付加物は、典型的に、クエン酸ナトリウム、シス-アコニット酸、トランス-アコニット酸、シス-アコニット酸無水物、トランス-アコニット酸無水物、イタコン酸無水物およびシトラコン酸無水物、またはそれらの混合物である。
【0046】
使用される発泡剤の量は、生成物において所望される発泡のレベル、およびしたがって所望の密度のレベルに依存することができる。好ましい実施形態において、材料Bは、0.5から1.2、好ましくは0.75から1.1の密度を有する。好ましい実施形態において、発泡ポリ乳酸材料(材料B)は、活性CFA(例えば純粋なクエン酸または重炭酸ナトリウム/クエン酸)を0.1質量%から10質量%、好ましくは0.5質量%から4質量%含む。好ましい実施形態において、物品(全ての層を含む)は、0.75から1.2、好ましくは0.75から1.2未満または1.0未満の密度を有する。CFA、その量、層A、任意選択によるさらなる層、および層の組成物は、そのことで選択することができる。
【0047】
化学的発泡剤は、添加剤が、ポリマーマトリックス、例えばPLA、またはエチレン酢酸ビニルコポリマーなどエチレン性不飽和モノマーのポリマー中に分散されるマスターバッチの形態で添加することができると記述される。
【0048】
化学的発泡剤によって発生されるガス化合物は、典型的に押出機内における圧力下でのポリマー溶融体において溶解形態であってよく、典型的には押出機ダイの後に圧力減少でガス封入体を可能にするガス形態に変形することができると記述される。
【0049】
耐衝撃改質剤
材料Aおよび/または材料Bは、少なくとも1種の耐衝撃改質剤を含む。こうした化合物は当業者によって知られており、それ自体市販されている。それらは、前記熱可塑性樹脂の引張応力を増加させることによって熱可塑性樹脂の機械的性質を改質する。衝撃での空洞化または衝撃で放出される拡散エネルギーなど、様々な機序が伴われ得る。こうした特性を有する化合物は典型的に適切である。耐衝撃改質剤の例としては、スルホン酸アルキル、芳香族-脂肪族のポリエステル、ポリ(ブチレンアジペート-co-テレフタレート)、例えば文献EP 2065435に記載されているもの、エチレンコポリマー、例えば文献WO 2011119639に記載されているもの、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、ポリブチレンサクシネート、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン酢酸ビニル、水素化大豆油(soil oil)が挙げられる。
【0050】
好ましい実施形態において、耐衝撃改質剤は、コア/シェルポリマー化合物またはスルホン酸アルキル化合物である。
【0051】
好ましい実施形態において、材料Aおよび/または材料Bは、耐衝撃改質剤を0.01質量%から30質量%、好ましくは0.1質量%から10質量%、好ましくは0.5質量%から5質量%含む。
【0052】
耐衝撃改質剤は、耐衝撃改質剤がポリマーマトリックス、例えばPLA、またはエチレン酢酸ビニルコポリマーなどエチレン性不飽和モノマーのポリマー中に分散されるマスターバッチの形態で添加することができる。
【0053】
コア-シェルコポリマーとも称されるコア-シェルポリマー化合物は、典型的に、エラストマーコアおよび少なくとも1つの熱可塑性シェルを有する微粒子の形態であり、粒径は、一般に1ミクロン未満、有利には150nmから500nmの間、好ましくは200nmから450nmである。コア-シェルコポリマーは、単分散または多分散であってよい。
【0054】
コアの例として、イソプレンホモポリマーまたはブタジエンホモポリマー、イソプレンと多くとも3mol%のビニルモノマーとのコポリマー、およびブタジエンと多くとも35mol%、好ましくは30mmol%以下のビニルモノマーとのコポリマーを記述することができる。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリルまたはアルキル(メタ)アクリレートであってよい。別のコアファミリーは、アルキル(メタ)アクリレートのホモポリマー、およびアルキル(メタ)アクリレートと多くとも35mol%、好ましくは30mol%以下のビニルモノマーとのコポリマーからなる。アルキル(メタ)アクリレートは、有利には、ブチルアクリレートである。別の代替物は、2-オクチルアクリレートと、n-ブチルアクリレート、エチルアクリレート、イソブチルアクリレートまたは2-エチルヘキシルアクリレートなどの低級アルキルアクリレートとの全アクリルコポリマーに存する。アルキルアクリレートは、有利には、ブチルアクリレートもしくは2-エチルヘキシル-アクリレートまたはそれらの混合物である。より好ましい実施形態によると、2-オクチルアクリレートのコモノマーは、ブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートの中から選択される。ビニルモノマーは、スチレン、アルキルスチレン、アクリロニトリル、ブタジエンまたはイソプレンであってよい。コポリマーのコアは、完全にまたは部分的に架橋されていてよい。必要とされるのは、コアの調製中に少なくとも二官能性のモノマーを加えることだけであり、これらのモノマーは、ブチレンジ(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートなど、ポリオールのポリ(メタ)アクリル酸エステルから選択することができる。他の二官能性モノマーは、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ビニルアクリレートおよびビニルメタクリレートである。コアは、不飽和カルボン酸の無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドなどの不飽和官能性モノマーを、それに導入することによって、グラフト化することによって、または重合中にコモノマーとして、架橋することもできる。例として、マレイン酸無水物、(メタ)アクリル酸およびグリシジルメタクリレートを記述することができる。
【0055】
シェルは、典型的に、スチレンホモポリマー、アルキルスチレンホモポリマーもしくはメチルメタクリレートホモポリマー、または上記のモノマーの1種を少なくとも70mol%ならびに他の上記モノマー、酢酸ビニルおよびアクリロニトリルから選択される少なくとも1種のコモノマーを含むコポリマーである。シェルは、不飽和カルボン酸の無水物、不飽和カルボン酸および不飽和エポキシドなどの不飽和官能性モノマーを、それに導入することによって、グラフト化することによって、または重合中のコモノマーとして、官能化することができる。例えば、マレイン酸無水物、(メタ)アクリル酸およびグリシジルメタクリレートを記述することができる。例として、ポリスチレンシェルを有するコア-シェルコポリマー(A)、およびPMMAシェルを有するコア-シェルコポリマー(A)を記述することができる。シェルは、分散および異なるポリマー相との相溶性を補助するための官能性基または親水性基を含有することもできる。一方がポリスチレンで作製され、外側の他方がPMMAで作製されている2つのシェルを有するコア-シェルコポリマー(A)もある。コポリマー(A)およびそれらの調製方法の例は、以下の米国特許第4,180,494号、米国特許第3,808,180号、米国特許第4,096,202号、米国特許第4,260,693号、米国特許第3,287,443号、米国特許第3,657,391号、米国特許第4,299,928号および米国特許第3,985,704号に記載されている。
【0056】
コア/シェル比は、例えば、10/90から90/10、より好ましくは40/60から90/10の間、有利には60/40から90/10、最も有利には70/30から95/15の間の範囲であり得る。
【0057】
適切なコア/シェル耐衝撃改質剤の例としては、Arkema社によって市販されている、Biostrengthの類、例えばBiostrength 150が挙げられる。
【0058】
さらなる添加剤
材料Aおよび/または材料Bは、さらなる添加剤を含む。本明細書において、さらなる添加剤は、耐衝撃改質剤および膨張性微小球と異なる化合物と理解される。材料Aおよび/または材料Bにおけるさらなる添加剤は、存在するならば、同一または異なっていてよい。使用することができる添加剤としては、例えば:
- タルクなどの核形成剤
- 充填剤、
- 顔料または着色料などの外観改質剤、
- 安定剤、
- 潤滑剤、
- それらの混合物または組合せ
が挙げられる。
【0059】
核形成剤は、例えば;タルク粒子である。こうした薬剤は、フォームの生成を加速することができ、および/またはガス(gaz)封入サイズを制御する際に役立つことができる。こうした薬剤は、例えばマスターバッチの形態で市販されている。
【0060】
顔料は、例えば文献WO 2011119639に記載されている、例えばTiO2顔料であってよい。
【0061】
さらなる添加剤は、添加剤がポリマーマトリックス、例えばPLA、またはエチレン酢酸ビニルコポリマーなどエチレン性不飽和モノマーのポリマー中に分散されるマスターバッチの形態で添加することができる。
【0062】
材料Aおよび/または材料Bにおけるさらなる添加剤は、存在するならば、典型的に、0.1質量%から15質量%の量で、例えば1質量%から10質量%の量で存在することができる。
【0063】
容器
物品は、容器、例えば、ヨーグルトカップのような乳製品容器として使用される容器であり得る。本発明は、食物製品または非食物製品、好ましくは乳製品、好ましくは乳系(乳は動物乳または植物乳の代替物、例えば大豆乳または米乳などである)製品、好ましくは発酵乳製品、例えばヨーグルトが充填される容器にも関する。容器は、例えば四角い断面もしくは丸状角を有する四角い断面、または丸い断面を持つヨーグルトカップ形状を有することができる。容器は、テーパ底、好ましくはテーパ丸状底を有することができる。容器は、スティッカーまたはバンドロールなどの要素を設けることができる壁(断面に垂直)を有する。バンドロールなどの要素は、容器の機械的抵抗を再強化するのに寄与することができる。容器は、例えば50ml (または50g)から1L (または1kg)の容器、例えば50ml (または50g)から80ml (または80g)、または80ml (または80g)から100ml (または100g)、または100ml (または100g)から125ml (または125g)、または125ml (または125g)から150ml (または150g)、または150ml (または150g)から200ml (または200g)、または250ml (または250g)から300ml (または300g)、または300ml (または300g)から500ml (または500g)、または500ml (または500g)から750ml (または750g)、または750ml (または750g)から1L (または1kg)の容器であり得る。
【0064】
方法
該物品は、任意の適切な方法によって調製することができる。材料Aおよび/または材料Bは、物品を形成する前または物品の形成中に調製することができる。PLAなどの熱可塑性材料は、粉末、ペレットまたは顆粒の形態で導入することができる。
【0065】
典型的に、該方法は、ポリ乳酸および化学的発泡剤を混合するステップ、および加熱することで化学的発泡剤からガス化合物を発生させるステップを含む。
【0066】
材料Aは、いくつかの成分:少なくともPLAおよび耐衝撃改質剤の混合物である。これらの成分は、典型的には押出機内で物品の形成時に混合することができる。耐衝撃改質剤、および任意選択により、熱可塑性材料と混合されるべきさらなる添加剤のマスターバッチを実現することができる。別の実施形態において、典型的には粉末、ペレットまたは顆粒の形態のプレミックス化合物を使用することができる。
【0067】
材料Bは、成分、例えばポリ乳酸およびガス、またはポリ乳酸および化学的発泡剤の混合物であってよい。これらの成分は、典型的には押出機内で物品の形成時に混合することができる。化学的形成剤、および任意選択により、ポリ乳酸と混合されるべきさらなる添加剤のマスターバッチ、またはいくつかのマスターバッチさえ実施することができる。別の実施形態において、粉末、ペレットまたは顆粒の形態のプレミックス化合物を使用することができる。有用な方法には、典型的に、ポリ乳酸および化学的発泡剤を混合するステップ、および加熱することでガス化合物を発生させるステップが含まれる。これらのガス化合物は、材料Bのマトリックス中に溶解され、次いで、典型的には押出機のダイの後に圧力が減少する時にガスとして膨張して、材料Bが膨張するのを可能にすることができる。加熱温度は、例えば150℃から250℃、例えば180℃から230℃、好ましくは150℃から200℃、または200℃から230℃であってよい。加熱は、混合ステップ中で、またはさらなるステップにおいて実施することができる。混合および/または加熱は、押出ステップにおいて押出機内で実施することができる。加熱は、典型的に、層Bを形成するための押出ステップ中で実施される。
【0068】
一実施形態において、化学的発泡剤は、クエン酸および任意選択により重炭酸ナトリウムを含み、発生されるガス化合物はCO2を含み、H2Oも任意選択により発生される。
【0069】
好ましい実施形態において、層Aおよび層Bは、典型的に、溶融形態の材料Aおよび材料Bの流れから同時押出される。同時押出法は当業者から知られている。これらは、典型的に、別々の隣り合うダイを介して別々の流れを押し出すことを伴う。ダイを超えると、流れは合流し、少なくとも1つの境界面を形成する。2層物品には1つの境界面があり、3層物品には2つの境界面がある。次いで、該材料は冷却されることで、固体物品を形成する。同時押出後に適切な処理を実現することで、所望の生成物、例えばシートまたはフィルムを得ることができる。処理ステップは、例えばプレス処理、カレンダリング、延伸などである。温度、圧力、速度、処理数などこれらの処理ステップのパラメータは、所望の生成物、例えばシートを得るように適応させることができる。一実施形態において、該物品は、同時押出およびカレンダリングを伴う方法によって調製されるシートである。
【0070】
一実施形態において、物品は、プラスチックシートから得られる熱成形容器である。熱成形品は、好ましくは:
1)少なくとも層Aおよび層Bを同時押出することで、多層プラスチックシートを得ること、ならびに
2)プラスチックシートを熱成形することで、容器を得ること
によって得られる。
【0071】
熱成形は、知られている操作である。本明細書において、熱成形は、プラスチック材料が加熱されるとともに、例えばプラグを用いて(これは従来の熱成形である)および/またはブローすることによって空洞に延伸される任意の方法を指す。シートを熱成形することで、所望の形状の最終生成物を得ることができる。一部の延伸は熱成形時に生じると記述される。熱成形は、例えば、フォームフィルシール熱成形ラインのおかげで実施することができる。こうした方法は、マルチパック形態のカップを得るのによく適応されている。代替として、熱成形は、充填する前にそこで予備形成される個々のカップを提供するために、単一カップ形成方法に従って実施することができる。一実施形態において、シートがストリップに変形され、ストリップがチューブに形状化されるとともに溶接され、次いでチューブが鋳型内でブローされる方法を実現する。そのため、こうした方法および装置は、例えば、Agami社によって「Roll N Blow」として市販されており、ならびに/または文書FR2851227および/もしくはWO201007004に記載されている。
【0072】
熱成形は以下のステップを示すことができる:
- ガイド鎖(すなわち、スパイクまたはジョー)上にシート導入;
- 接触プレートを加熱することによるシート加熱;
- プラグおよび気圧を形成することによって補助されているネガ型のおかげによる形成。該鋳型はラベルを含むまたは含まなくてよい。
【0073】
フォームフィルシール熱成形ラインにおいて、典型的に、熱成形後に以下のステップを実現する:
- 結果として得られる形態は生成物が充填され、次いで、蓋フィルムで熱シールされる、
- 最終的に、それらは、1つまたはいくつかの機械的トリミング器具によって、切断および任意選択により予備切断される。
【0074】
本発明のさらなる詳細または利点は、以下の非限定的な実施例において現れ得る。
【実施例】
【0075】
実施例は、以下の材料:
- PLA: NatureWorks社によって市販されているIngeo(登録商標)2003D
- 耐衝撃改質剤1 (IM1): 50%wt%のPLAマスターバッチの形態において、Arkema社によって市販されているBiostrength 150
- 化学的発泡剤1 (CFA1):クエン酸マスターバッチ(PLA中40%のCFA1)
- 化学的発泡剤2 (CFA2):クエン酸+重炭酸ナトリウムマスターバッチ(PLA中30%のCFA1)
を使用することで実現される。
【0076】
(実施例1)
プラスチックシート
実施例1.3〜1.5(ただし、1.5は比較例である)
3層PLA膨張プラスチックシートを、以下の手順に従って調製する。
【0077】
実施例1.3〜1.5のための手順:
多層構造を同時押出によって生成する。
【0078】
内部の発泡PLA層の材料(PLA、CFAマスターバッチおよび耐衝撃改質剤マスターバッチ)を、45mmの内部直径および24Dの長さを有するFairex押出機で押し出す。CFA1を用いると、スクリューに沿った温度プロファイルは、165℃から230℃の間に含まれる。CFA2を用いると、スクリューに沿った温度プロファイルは、165℃から220℃の間に含まれる。
【0079】
2つの外部緻密層の材料(PLAおよびマスターバッチ)を、30mmの内部直径および26Dの長さを有する1つのScannex押出機で押し出す。次いで、得られた溶融PLAを、フィードブロック内で2つの異なる流れに分離することで、外部緻密層を形成する。スクリューに沿った温度は、165℃から195℃の間に含まれる。押出機の後、異なるPLA流れを、2つの薄い平面(ダイ)によって分離されている異なる通路を介してフィードブロックチャネルに送給する。分離平面の端で、3つの流れが合流し、2つの境界面を形成し、シートが、185℃から195℃の間に含まれる温度を有するダイを介して押し出される。次いでシートを、40℃の温度になる3つのロール上でカレンダリングする。第1と第2のカレンダーロール間の圧力をゼロに維持することで、泡構造を安定化し、膨張構造の任意崩壊を回避する。
【0080】
比較例1.1〜1.2
対照として、2つの緻密PLAプラスチックシート(耐衝撃改質剤を用いるPLAおよび用いないPLA)を、以下の手順に従って調製する。
【0081】
比較例1.1〜1.2のための手順:
緻密層の材料(PLAおよびマスターバッチ)を、45mmの内部直径および24Dの長さを有するFairex押出機で押し出す。スクリューに沿った温度は、180℃から200℃の間に含まれる。185℃から195℃の間に含まれる温度を有するダイを介して溶融PLAを押し出すことで、緻密シートを生成する。次いでシートを、40℃の温度になる3つのロールでカレンダリングする。
【0082】
下記の表Iは、様々な緻密シートまたは層状シートの組成物を示す(質量によって提供される含有量)。
【0083】
【表1】
【0084】
評価
実施例1.3および1.4の両方には、発泡PLA粘度の有意な減少(非発泡PLAと比較して)が押出中に観察されず、シート生成中に発生されるCO2および水湿分がPLAを劣化しないことを証明している。結果として、発泡PLAおよび緻密PLAは、ほぼ同じ粘度を有しており、フィードブロック内への異なるPLA流れの合流および次いでダイを介する押出を促進する。
【0085】
全ての実施例および比較例のシートの全体的厚さは700μmである。多層構造の層再分配を、光学顕微鏡法によって確認する。実施例1.3のために得られたPLAのサンドイッチ構造の写真を、図1に示す。フォーム構造は容易に見られ、PLAが発泡されることを証明している。
【0086】
シートの密度は重量測定法によって決定され、実施例1.3、1.4および1.5については1.07に等しい。この結果は、緻密PLAと比較して密度の低下を証明している(比較例1.1および1.2は、1.25の密度を有する)。
【0087】
(実施例2)
ヨーグルトカップ
実施例1のプラスチックシートを、下記の手順に従ってヨーグルトカップに熱成形する。
【0088】
手順:
シートをF.F.S.熱成形ラインに導入し、次いで、以下のパラメータ:
- 加温板温度: 90℃;
- 6つの加熱ステップのおかげでシートを徐々に加熱し、加熱ボックスの各々は140msの閉鎖時間を有する;
- 熱成形ステップを従来のフェルト形成プラグ(felt forming plug)で実施する;鋳型温度を40℃に固定することで、ラベルホットメルトを活性化するとともにPLA材料を冷却する;
- 形成気圧: 4バール;
- ブロー時間: 200ms
- 機械 速度: 1分当たり29ストローク
で変形する。
【0089】
ヨーグルトカップを、2つのカップの各々の間に予備切断線を有する×2の付着されたカップ(「マルチパック」と称される)に切断する。予備切断線をF.F.S.装置上で実施する。操作者によって様々な深度を実現および制御する。
【0090】
評価:
- ヨーグルトカップ機械的性能を、トップロードとして参照される圧縮試験によって決定される。トップロード値を以下のプロトコール:
- 引張/圧縮試験機型ADAMEL LHOMARGY DY 34の使用
- 10mm/minの速度にて室温でカップ(2カップずつ)に圧縮を加える
- トップロード値を:圧縮曲線の最大として評価する
に従って評価する。
【0091】
対照として、650μmの厚さを有するPLAシートで生成された緻密PLAカップから記録されたトップロード結果を組み込んだ。
- 予備切断線の深度を光学顕微鏡法(miscroscopy)によって少なくとも3測定で測定する。
- 屈曲誘導下で分離されるべきカップの能力を表す採点スケールを用いるハンド測定によってスナップ性を決定する:
- 評点0- 3回の誘導で分断しないし、予備切断線もたどらない;
- 評点1- 3回の誘導で分断し、予備切断線をたどる
- 評点3- 2回の誘導で分断し、予備切断線をたどる;
- 評点5- 1回の誘導で分断し、予備切断線をたどる。
- 次いで、スナップ性を予備切断深度と比較することで、良好なスナップ性を得るために必要とされる最小予備切断深度を決定する。
【0092】
評価の結果:
- 熱成形ステップ中に課題は報告されず、測定された発泡PLAおよび緻密PLAの厚さプロファイルを完了した。したがって、該フォーム構造は熱成形ステップを変更しない。
- カップの機械的性能を圧縮測定から決定する:
- 緻密PLA1シート:密度d=1.25、トップロード= 53.3±4.1daN
- PLAフォーム1シート:密度d=1.07、トップロード= 59.9±2.9daN
- PLAフォーム2シート:密度d=1.07、トップロード= 60.6±6.5daN
- PLAフォーム3シート:密度d=1.08、トップロード= 58.2±3.4daN
これらのトップロード性能は、緻密ポリスチレンなどの従来の材料で必要とされる性能と一致している。
- 緻密PLA (比較例1.1)に反して、残差脆性(residual brittleness)は、耐衝撃改質剤で改質された緻密PLAおよび発泡PLAを用いるF.F.S.熱成形ラインへのシート導入中に観察されない(実施例1.3、1.4、1.5)。
- 図2は、PLA添加剤なし(比較例1.1)、緻密PLA 1 (比較例1.3)、およびフォームPLA 1 (実施例1.3)、2 (実施例1.4)および3 (実施例1.5)について予備切断深度の関数としてスナップ性評点を示している。
- 耐衝撃改質剤なしでは、カップの完全性に影響することなくカップを分離することが不可能であると思われる(必要とされる予備切断深度は、全切断である100%である)。
- 緻密PLA 1 (比較例1.2)は、3超の点数を有し、62%よりも深い予備切断深度なので、確かにスナップ性になる。
- PLAフォーム1 (実施例1.3) & PLAフォーム2 (実施例1.4)は、5の評点に達するための、より低い予備切断深度、すなわち40%および55%を示す。加えて、CFA2と比較して、純粋なクエンCFA1酸(citric CFA1 acid)がスナップ性を助けることが注目される。
- 最終的に、膨張層中に耐衝撃改質剤を含有するPLAフォーム3 (実施例1.5)を用いると、予備切断深度は、5の評点に達するために70%よりも深くなければならないことがわかる。この結果は、PLAフォーム3 (実施例1.5)シート上で実施された予備切断写真を示す図3によって説明される。膨張層はブレードの衝撃によって変形されること、および実際の予備切断は実施されないことがわかる。
- これらの結果は、良好なスナップ性を得るのに耐衝撃改質剤が必要とされ、膨張層中の耐衝撃改質剤が良好なスナップ性に達する必要がないことを表している。こうした構造は、耐衝撃改質剤を有する緻密PLAと比較してカップの分断性を増強する。反対に、膨張層中に耐衝撃改質剤を用いると、スナップ性は、膨張層の変形のせいで僅かに変化される。
図1
図2
図3