特許第6161719号(P6161719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6161719高級シランの製造触媒および高級シランの製造方法
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  • 特許6161719-高級シランの製造触媒および高級シランの製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161719
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】高級シランの製造触媒および高級シランの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/18 20060101AFI20170703BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20170703BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20170703BHJP
   C01B 33/04 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   B01J29/18 MZAB
   B01J29/40 M
   B01J29/70 M
   C01B33/04
【請求項の数】17
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-543814(P2015-543814)
(86)(22)【出願日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2014077538
(87)【国際公開番号】WO2015060189
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-218262(P2013-218262)
(32)【優先日】2013年10月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】松下 達己
(72)【発明者】
【氏名】能地 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】松浦 陽
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−183613(JP,A)
【文献】 特表2013−506541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
C01B 33/00−33/193
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質酸化物を含む、低級シランに接触することにより、該低級シランを、該低級シランよりケイ素数が多い高級シランへ変換させる高級シランの製造触媒であり、該多孔質酸化物が、規則的に配列する細孔を少なくとも有し、主としてケイ素酸化物からなり、かつ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が0.00重量%以上2.00重量%以下であり、前記多孔質酸化物がアルミノシリケートからなる結晶性ゼオライト構造を有する高級シランの製造触媒。
【請求項2】
前記多孔質酸化物の細孔の直径が0.4nm以上0.6nm以下である、請求項1記載の高級シランの製造触媒。
【請求項3】
前記多孔質酸化物の細孔が酸素の8〜12員環で構成された細孔である、請求項1または2に記載の高級シランの製造触媒。
【請求項4】
前記結晶性ゼオライト構造が、BEA型、FER型、LTA型、MFI型、MOR型、MWW型のなかの少なくともいずれか1種である請求項1〜3のいずれか一項に記載の高級シランの製造触媒。
【請求項5】
前記多孔質酸化物中のアルミノシリケート骨格の負電荷を補償するアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンが水素イオンに置換されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高級シランの製造触媒。
【請求項6】
前記多孔質酸化物がアルミノシリケートであり、該多孔質酸化物中のSiO2/Al23モル比が10以上3,000以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高級シランの製造触媒。
【請求項7】
前記SiO2/Al23モル比が20以上2,000以下であることを特徴とする請求項に記載の高級シランの製造触媒。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の高級シランの製造触媒に、低級シランを接触させることにより、該低級シランを、該低級シランよりケイ素数が多い高級シランへ変換させることを特徴とする高級シランの製造方法。
【請求項9】
前記高級シランの製造触媒に低級シランを接触させる温度が、100℃以上400℃以下であることを特徴とする請求項記載の高級シランの製造方法。
【請求項10】
前記温度が、120℃以上350℃以下であることを特徴とする請求項記載の高級シランの製造方法。
【請求項11】
前記温度が、140℃以上300℃以下であることを特徴とする請求項記載の高級シランの製造方法。
【請求項12】
前記低級シランは、低級シランを含む原料ガスによって供給され、原料ガス中の低級シランの濃度は、50vol%以上100vol%以下である請求項8〜11のいずれか一項に記載の高級シランの製造方法。
【請求項13】
低級シランがモノシランであり、高級シランがジシランおよびトリシランであることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の高級シランの製造方法。
【請求項14】
低級シランがモノシランであり、高級シランがジシランであることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の高級シランの製造方法。
【請求項15】
低級シランがジシランであり、高級シランがトリシランであることを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の高級シランの製造方法。
【請求項16】
高級シランの製造触媒を水素含有ガスで賦活処理する工程を含むことを特徴とする請求項8〜12のいずれか一項に記載の高級シランの製造方法。
【請求項17】
高級シランの製造触媒を水素含有ガスで賦活処理する工程の処理温度が20℃以上であることを特徴とする請求項16に記載の高級シランの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高級シラン製造用触媒、及び高級シランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス工業の発展に伴い、多結晶性シリコンの薄膜あるいはアモルファスシリコンの薄膜等の半導体製造用シリコン系薄膜の需要が急激に増大している。モノシラン(SiH4)、ジシラン(Si26)等の高級シラン(Sin2n+2;nは2以上の整数)は、かかる半導体製造用シリコン系薄膜の製造用原料として最近その重要性を増しており、特にジシランは微細化が進んだ最先端の半導体製造用シリコン系薄膜の原料として、今後大幅な需要増加が期待されている。
従来から知られているジシランなどの高級シランの製造方法としては、次に例示するようないくつかの方法がある。
【0003】
(1)硫化水素または金属硫化物を触媒とするケイ素の水素還元による製造方法(特許文献1)、(2)塩化ケイ素化合物の還元による製造方法(特許文献2)、(3)ケイ素―水素結合、またはケイ素―ケイ素結合をもつケイ素酸化物とアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の水素化物、アルコキシド、アマルガムとの反応による製造方法(特許文献3)、(4)ケイ化マグネシウムの酸による分解による製造方法(特許文献4)、(5)モノシランガス中での放電による製造方法(特許文献5)、(6)遷移金属錯体を触媒とするモノシランの縮合による製造方法(特許文献6)。
【0004】
また、低級シランを、例えば、熱的処理により高級シランに変換させる製造方法(特許文献7、8、9)も報告されている。この技術の一例を挙げれば、モノシランを350〜550℃で熱処理することにより、高級シランを製造できる。
【0005】
熱的処理する際に、アルミナ、またはアルミナを含む複合酸化物、またはパラジウムやレニウムなどの貴金属金属元素を含むアルミナを触媒として使用すると、300℃程度でもモノシランからジシランを製造する例も知られている(特許文献10)。
【0006】
半導体などに用いるシリコン系薄膜の製造においては、今後も経済性のみならず、工業的規模において、安定的に効率よく製造できる技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭36−21507
【特許文献2】特開昭57−27915
【特許文献3】特開昭60−255612
【特許文献4】特開昭60−141613
【特許文献5】特開昭62−1322720
【特許文献6】特表2011−524329
【特許文献7】特開平3−183614
【特許文献8】特開平11−260729
【特許文献9】特許第4855462号
【特許文献10】特開平3−183613
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、高級シラン(例えば、原料である低級シランがモノシランの場合のジシラン)の製造方法にはいくつかの方法が知られており、モノシランの熱的処理による製造においては、触媒を共存させることによって従来、350〜500℃の高温が必要であったものが、300℃程度まで低温化できるようになっている。モノシランは処理温度が高くなるほどケイ素―水素結合が切断され、ケイ素―ケイ素結合ができやすくなるため、モノシランの反応率は高くなるが、一方で、生成した高級シラン、たとえば、ジシランの更なる高級化が進み、これが進みすぎると微粉状または膜状の固体ケイ素となり、これは、望ましい目的生成物である高級シラン、例えば、ジシランの選択性を低下させるとともに、反応器を含む反応系内に固体ケイ素が堆積することにより、系内ラインのつまりなどの不具合を生じる。したがって、触媒を用いることによって、処理温度を下げることは、目的生成物の選択性や微粉析出を抑制できるために好ましいが、既知の方法においても、高級シラン(例えば、原料である低級シランがモノシランの場合のジシラン)の選択性はまだ十分とは言えず、反応を促進させるために処理温度を上げると微粉の生成が増大するため好ましいものではなかった。
【0009】
以上より、本発明は、低級シランを高級シランに変換する反応において、微粉の生成を抑制した、目的生成物の選択性が高い製造触媒、およびその触媒による高級シランの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、先に述べた問題を改善するためには、さらに低温で反応を促進させる触媒が必要であると考え、気相反応で分離が容易な固体触媒に着目して種々の固体化合物の探索を進めた。
【0011】
その結果、固体触媒として、その固体表面にある程度大きさのそろった規則的に配列した細孔を有し、かつ、その表面に強度や分布を制御された酸点を有する特定の多孔質体を、低級シラン(例えば、モノシラン)から高級シランを製造するための触媒として用いると、熱処理の温度を下げる効果が認められ、固体ケイ素発生の抑制と目的生成物の選択性向上に極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は高級シランを製造するための触媒と、該触媒を用いた高級シランの製造方法であり、以下の[1]〜[19]の事項を含む。
[1] 多孔質酸化物を含む、低級シランに接触することにより、該低級シランを、該低級シランよりケイ素数が多い高級シランへ変換させる高級シランの製造触媒であり、該多孔質酸化物が、規則的に配列する細孔を少なくとも有し、主としてケイ素酸化物からなり、かつ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が0.00重量%以上2.00重量%以下である高級シランの製造触媒。
[2] 前記多孔質酸化物の細孔の直径が0.4nm以上0.6nm以下である、[1]記載の高級シランの製造触媒。
[3] 前記多孔質酸化物の細孔が酸素の8〜12員環で構成された細孔である、[1]または[2]に記載の高級シランの製造触媒。
[4] 前記多孔質酸化物がアルミノシリケートまたはメタロシリケートからなる結晶性ゼオライト構造を有する[1]〜[3]のいずれかに記載の高級シランの製造触媒。
[5] 前記結晶性ゼオライト構造が、BEA型、FER型、LTA型、MFI型、MOR型、MWW型のなかの少なくともいずれか1種である[4]に記載の高級シランの製造触媒。
[6] 前記多孔質酸化物中のアルミノシリケートまたはメタロシリケート骨格の負電荷を補償するアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンが水素イオンに置換されていることを特徴とする、[4]または[5]に記載の高級シランの製造触媒。
[7] 前記多孔質酸化物がアルミノシリケートであり、該多孔質酸化物中のSiO2/Al23モル比が10以上3,000以下であることを特徴とする[4]〜[6]のいずれかに記載の高級シランの製造触媒。
[8] 前記SiO2/Al23モル比が20以上2,000以下であることを特徴とする[7]に記載の高級シランの製造触媒。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の高級シランの製造触媒に、低級シランを接触させることにより、該低級シランを、該低級シランよりケイ素数が多い高級シランへ変換させることを特徴とする高級シランの製造方法。
[10] 触媒が存在しない条件下で、低級シランの熱的分解により高級シランが実質的に生成し始める温度より低い温度で前記高級シランの製造触媒に低級シランを接触させる、[9]に記載の高級シランの製造方法。
[11] 前記高級シランの製造触媒に低級シランを接触させる温度が、100℃以上400℃以下であることを特徴とする[9]記載の高級シランの製造方法。
[12] 前記温度が、120℃以上350℃以下であることを特徴とする[11]記載の高級シランの製造方法。
[13] 前記温度が、140℃以上300℃以下であることを特徴とする[11]記載の高級シランの製造方法。
[14] 前記低級シランは、低級シランを含む原料ガスによって供給され、原料ガス中の低級シランの濃度は、50vol%以上100vol%以下である[9]〜[13]のいずれか一項に記載の高級シランの製造方法。
[15] 低級シランがモノシランであり、高級シランがジシランおよびトリシランであることを特徴とする[9]〜[14]のいずれか一項に記載の高級シランの製造方法。
[16] 低級シランがモノシランであり、高級シランがジシランであることを特徴とする[9]〜[14]のいずれかに記載の高級シランの製造方法。
[17] 低級シランがジシランであり、高級シランがトリシランであることを特徴とする[9]〜[14]のいずれかに記載の高級シランの製造方法。
[18] 高級シランの製造触媒を水素含有ガスで賦活処理する工程を含むことを特徴とする[9]〜[14]のいずれかに記載の高級シランの製造方法。
[19] 高級シランの製造触媒を水素含有ガスで賦活処理する工程の処理温度が20℃以上であることを特徴とする[18]に記載の高級シランの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高級シランの製造触媒によれば、低級シランを高級シランへ変換させる反応において、該反応を比較的低温で進行させることができ、固体ケイ素の生成を抑制し、目的生成物である高級シランの選択性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は実験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、低級シランを比較的低温で反応させて高級シラン化合物を製造するための触媒、及び、該触媒を用いた低級シランからの高級シランの製造方法からなる。
【0016】
(高級シランの製造触媒)
本発明の低級シランから高級シランを製造する際に用いられる触媒は、多孔質酸化物を含む。この多孔質酸化物は主としてケイ素酸化物からなるが、その含有量は60重量%以上100重量%以下であることが好ましい。ケイ素酸化物以外に含まれる成分としては、一般的に触媒担体として含まれる成分であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、ジルコニウム酸化物、亜鉛酸化物、マグネシウム酸化物、鉄酸化物、ホウ素酸化物、ガリウム酸化物などが挙げられる。これら成分は、ケイ素酸化物と物理的に混合した状態で含まれていてもよく、あるいは化学的に複合化した状態(複合酸化物の状態)で含まれていてもよい。
【0017】
本発明におけるケイ素酸化物を主成分とする多孔質酸化物は、均一な細孔を有する。均一な細孔とはすなわち規則的に配列した細孔のことであり、この規則的に配列する細孔の直径は0.4nm以上0.6nm以下であることが好ましい。上記多孔質酸化物の細孔は、窒素吸着法から求めることができる。なお本願実施例では、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association)のAtlas of Zeolite Framework Types, Sixth revised edition(Elsevier)記載の数値を用いた。複数の直径を有する場合、0.4nm以上0.6nm以下の範囲内に入っている直径が少なくとも1つある場合は、それを記載した。
【0018】
また、本発明におけるケイ素酸化物を主成分とする触媒の細孔は、ケイ素−酸素結合、およびそのケイ素−酸素結合で形成される骨格に取り込まれる必要に応じて含まれる他の元素(例えば、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、亜鉛など)−酸素結合の繰り返し結合により形成される。この結合の構成が同じであれば細孔径は同じ大きさになることが期待できる。本発明においては、その酸素の数が8〜12個、すなわち酸素の8〜12員環である場合、細孔径はほぼ目標とする大きさになるため、多孔質酸化物の細孔は酸素の8〜12員環で構成された細孔であることが好ましい。なお、1つの化合物中に複数種の環が存在している場合には、最も酸素の数が多い環が酸素の8〜12員環であることが好ましい。
【0019】
このように触媒に細孔が必要で、かつその大きさを制御する必要がある理由は、このような細孔が触媒中に存在することで、低級シランから高級シランへ変換する反応が細孔の中で進行するため、触媒表面積が大きくなることで反応が速やかに進行するだけでなく、細孔の大きさが適度に制限された結果、目的生成物である高級シラン(例えば、ジシラン)の選択性を向上できるためと推察される。
【0020】
本発明の触媒を構成する多孔質酸化物に含有されるアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量は0.00重量%以上2.00重量%以下であり、好ましくは0.00重量%以上であり、好ましくは1.00重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。なお、上記値は、触媒に含まれる金属として見たアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量であり、ICP発光分析、ICP質量分析、原子吸光分析などの方法により測定することができる。
【0021】
例えば、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩などのケイ酸塩を含む物を原料とし、本発明の触媒で用いるケイ素酸化物を製造する場合には、アルカリ金属、およびアルカリ土類金属が、イオンとして原料に含まれるため、本発明で用いるケイ素酸化物には、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンが含まれ得る。このケイ素酸化物を酸で処理すると、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンは除去され、その部分には電気的中性を保つために水素イオンに置き換わる。この水素イオンはブレンステッド酸として機能し、その量を制御することによって、酸量の分布のみならず、酸強度も制御することができる。本発明の低級シランから高級シランへ変換する反応は、酸点があると促進され、酸点の強度や分布状態によって反応速度や反応選択性が変化すると推察される。
【0022】
本発明の触媒に用いる多孔質酸化物は、先に述べたように均一で規則的な細孔を有するが、該多孔質酸化物が結晶性であり、その結晶構造に由来して、規則的に配列した細孔が形成されていることが好ましい。このときケイ素酸化物(ケイ素−酸素結合)のみで結晶を形成することも可能ではあるが、アルミニウムやその他の金属が共存する場合には、それらの金属を取り込んで結晶を形成してもよい。このような結晶性の主としてケイ素酸化物を含む多孔質酸化物としては、アルミニウムとケイ素とを含有するアルミノシリケート、アルミニウム以外の他の金属(例えば、チタン、ジルコニウム、亜鉛、鉄、ホウ素、ガリウムなど)とケイ素とを含有するメタロシリケートが知られている。これら結晶性のケイ素酸化物の中でも、均一な細孔を有する点で、結晶性ゼオライトが好ましく用いられる。
【0023】
本発明の触媒として好ましく用いられる結晶性ゼオライトは、一般に下記式(I)で示される組成を有する。
(M1,M21/2m(AlmSin2(m+n))・xH2O (I)
上記式(I)中、M1はLi+、Na+、K+等のアルカリ金属イオンまたは水素イオンを表し、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+等のアルカリ土類金属イオンを表し、mおよびnは整数であり、n≧mを満たし、xは整数である。
【0024】
上記ゼオライトでは、M1およびM2の陽イオンが、AlmSin2(m+n)によって形成されるアルミシリケート骨格の負電荷が補償される組成を有している。そして、ゼオライトの基本単位となる構造は、SiO4またはAlO4の四面体構造であり、これらが3次元方向に無限に連なり、結晶を形成している。また、上記ゼオライトは、上記式(I)のアルミニウム元素の少なくとも一部を、亜鉛、鉄、ホウ素、ガリウム、リンなどの他の元素に置き換えられたメタロシリケート骨格を有していてもよい。また、上記ゼオライトのシリコン元素の少なくとも一部を、他の元素に置き換えられた骨格を有するものも用いてもよい。
【0025】
上記ゼオライトとしては、天然のもの(天然ゼオライト)もあるが、触媒として用いるという観点からは、規則性が高い合成ゼオライトが好ましい。合成ゼオライトは、一般に、シリカ源として水ガラス、ケイ酸ソーダ、コロイダルシリカ等を用い、これにアルミナ源や、上記の鉄、ホウ素、チタン、ガリウム、リン、などの元素の酸化物源となる化合物を混合し、アルカリ水溶液中で水熱合成することにより製造される。水熱合成により生成するゼオライトのままでは、上記式(I)に示すように、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属を有したままであり、この状態で低級シランを接触させ、高級シランへ変換させる反応を行っても、触媒活性が低い。
【0026】
本発明では、先に述べたように、上記式(I)で示されるゼオライトにおいても、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの全部、または少なくとも一部が、イオン交換などにより水素イオンに置換されて、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が0.00重量%以上2.00重量%以下となっていることが必要である。これにより、ケイ素酸化物(典型的にはゼオライト)の表面において酸点が発現し、触媒活性を有するようになると推測される。この結晶構造はその合成条件によって変化し、構造が変われば規則性も変わるため、酸の分布や強度も変化することが期待され、実際に、その骨格構造によって、シラン類の反応性も変化する。
【0027】
上記ゼオライトの骨格構造は、国際ゼオライト学会によりデータベース化されており、アルファベット大文字3つからなる構造コードで表現される。上記ゼオライトとしては、例えば、BEA型ゼオライト、FER型ゼオライト、LTA型ゼオライト、MFI型ゼオライト、MOR型ゼオライト、MWW型ゼオライト、LTL型ゼオライト、FAU型ゼオライト、ERI型ゼオライト、CHA型ゼオライト、OFF型ゼオライト等が挙げられる。
【0028】
上記ゼオライトの中でも、低級シランの高級シランへの変換反応が良好であるという点では、BEA型ゼオライト、FER型ゼオライト、LTA型ゼオライト、MFI型ゼオライト、MOR型ゼオライト、およびMWW型ゼオライトが好ましく、MFI型ゼオライトがより好ましい。これらゼオライトは、上記反応をする上では、適切な酸の分布及び酸強度を有しているものと推察される。
【0029】
上記BEA型ゼオライトとしては、例えば、β型ゼオライトなどが挙げられる。上記FER型ゼオライトとしては、例えば、フェリエライト等が挙げられる。上記LTA型ゼオライトとしては、例えばA型ゼオライトなどが挙げられる。上記MFI型ゼオライトとしては、例えば、ZSM−5等が挙げられる。上記MOR型ゼオライトとしては、例えば、モルデナイト類が挙げられる。上記MWW型ゼオライトとしては、例えば、MCM−22等が挙げられる。上記LTL型ゼオライトとしては、例えば、L型ゼオライトなどが挙げられる。上記FAU型ゼオライトとしては、例えば、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、フォージャサイト等が挙げられる。上記ERI型ゼオライトとしては、例えば、エリオナイト等が挙げられる。上記CHA型ゼオライトとしては、例えば、チャバサイト等が挙げられる。上記OFF型ゼオライトとしては、例えば、オフレタイト等が挙げられる。これらゼオライトの中でも、MFI型ゼオライトがさらに好ましい。
【0030】
本発明の多孔質酸化物がアルミノシリケートまたはメタロシリケートを含む結晶性の酸化物である場合には、多孔質酸化物中のアルミノシリケートまたはメタロシリケートにおいて、骨格の負電荷を補償するアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンの一部、または全てが水素イオンに置換されていることが好ましい。アルミノシリケートまたはメタロシリケートに含有される水素イオンの量は、アルミノシリケートまたはメタロシリケート骨格の負電荷を補償して電気的中性を保つために必要なイオンの総量から、アルミノシリケートまたはメタロシリケートに含有されるアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの総量を差し引くことにより、算出することができる。水素イオンは前述通り酸として機能することから、算出される水素イオンの量は、多孔質酸化物に含有される酸量である。
【0031】
本発明の多孔質酸化物がアルミノシリケートまたはメタロシリケートを含む結晶性の酸化物(典型的にはゼオライト)である場合には、多孔質酸化物中のアルミノシリケートまたはメタロシリケートに含まれるアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンの水素イオンへの交換は、公知の方法又は公知に準ずる方法に従って行うことができる。例えば、上記アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを有するケイ素複合酸化物をアンモニウム塩溶液で処理することにより、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンをアンモニウムイオンに交換した後、高温で焼成することにより、水素イオンに置換された形態に変換することが出来る。
【0032】
また、上記の水素イオンに置換されたアルミノシリケートまたはメタロシリケートを含む結晶性の酸化物(典型的にはゼオライト)を得る方法としては、上記イオン交換によるもの以外に、シリカ源として、微粉末シリカ、コロイダルシリカ、テトラエトキシシラン(TEOS)等を用い、これに金属アルミニウムや硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等のアルミナ源、あるいは上記の鉄、ホウ素、チタン、リン、ガリウムなどの元素の酸化物源となる化合物を混合し、第4級アンモニウム塩のような有機構造規定剤、水を加えて、水熱合成して製造する方法も挙げられる。
【0033】
本発明の触媒として用いるケイ素酸化物中にアルミが含まれる場合、典型的にはアルミノシリケートを含む場合には、SiO2/Al23モル比は、任意の値をとることが出来るが、通常5以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上であり、通常5,000以下、好ましくは3,000以下、より好ましくは2,000以下である。SiO2/Al23モル比が上記範囲あることにより、ジシラン等の高級シランを生成する反応に好適な酸強度となる傾向にある。なお、上記SiO2/Al23モル比は、例えば蛍光X線分析などにより求めることができる。
【0034】
前記通り、水素イオンの量は、骨格の負電荷を補償して電気的中性を保つために必要なイオンの総量から、アルミノシリケートまたはメタロシリケートに含有されるアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの総量を差し引くことにより、算出することができるが、ここで具体的な算出方法例について記載する。SiO2/Al23モル比が1500であるZSM−5ゼオライトに、Naが0.01重量%含有されている場合を例として考える。ZSM−5ゼオライト1gに含まれるAlの量は83.8マイクロモルであり、これが骨格の負電荷を補償して電気的中性を保つために必要なイオンの総量である。一方、ZSM−5ゼオライト1gに含まれるNaの量は4.3マイクロモルである。この結果、ZSM−5ゼオライト1gに含まれる水素イオンの量は、79.5マイクロモルと算出される。
【0035】
本発明の触媒として用いる多孔質酸化物のBET法(出典:吸着の科学と応用 小野嘉夫 鈴木勲/著 講談社サイエンティフィク/編集)による比表面積は、好ましくは100m2/g以上、より好ましくは200m2/g以上であり、好ましくは1,000m2/g以下、より好ましくは800m2/g以下である。
なお、本発明の触媒として用いる多孔質酸化物には、触媒としての性能や特性をさらに改善するために、必要に応じて、例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、銅、銀、モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト等の触媒機能を有する適当な遷移金属元素を適宜、イオン交換法や含浸法等により導入してもよい。
【0036】
上記多孔質酸化物の成形が必要な場合には、公知の方法又は公知に準ずる方法に従って、種々の方法で成形することができる。例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、マグネシア、チタニア、粘土鉱物等の適当なバインダーを多孔質酸化物と混合し、得られた混合物を、例えば押し出し成形等の方法により成形してもよい。また、バインダーを用いずに、例えば多孔質酸化物を圧縮成形法等により成形してもよい。このように成形することで適切なサイズ、形状とすることができ、本発明で高級シランを製造する際の反応形式、プロセスなどにより適合させることができる。
【0037】
(高級シランの製造)
本発明の高級シランの製造方法は、上記高級シランの製造触媒に、低級シランを接触させることにより、該低級シランを、該低級シランよりケイ素数が多い高級シランへ変換させる方法である。
【0038】
高級シランの原料である低級シランとしては、目的とする高級シランに応じて、適切な低級シランを原料として用いることができる。原料として用いる低級シランとしては、例えば、モノシラン、ジシラン、トリシランなどのシラン類(Sin2n+2;nは1以上の整数)が挙げられる。これらシラン類は、1種単独で、あるいは2種以上混合して用いることができる。例えば、ジシランを目的生成物(高級シラン)とする場合には、モノシランを原料(低級シラン)として用いる。本発明の製造方法においては、原料に用いる低級シランは、希釈せずにそのまま用いても、他の希釈ガスで希釈して用いてもどちらでもよい。希釈する場合の希釈ガスは、窒素、水素、アルゴン、ヘリウムなど、低級シランに対して不活性なガスであれば、特に制限はない。原料ガス中の低級シランの濃度は、通常1vol%以上、好ましくは10vol%以上、より好ましくは20vol%以上であり、通常95vol%以下、好ましくは90vol%以下、より好ましくは80vol%以下であればよいが、濃度が高くなればなるほど製造装置のコンパクト化が図れるため好ましい。また、製造装置のコンパクト化を図ることなどをより考慮すると、原料ガス中の低級シランの濃度は、好ましくは50vol%以上であり、好ましくは100vol%以下であってもよい。無触媒系ではケイ素の析出を抑制するために、水素を原料ガスに共存させる方法が用いられることがあるが、本発明においては、原料ガス中に水素を共存させる必要性は低く、無触媒系の製造方法に比べて、製造装置の小型化、製造コストの低減など、生産性を向上できる。
【0039】
本発明の製造方法において、原料として用いる低級シランおよび目的生成物である高級シランは特に限定されるものではないが、(1)低級シランがモノシランであり高級シランがジシランおよびトリシランであって、モノシランからジシランおよびトリシランを製造する方法、(2)低級シランがモノシランであり高級シランがジシランであって、モノシランからジシランを製造する方法、(3)低級シランがジシランであり高級シランがトリシランであって、ジシランからトリシランを製造する方法について、好適に適用することができる。
【0040】
原料に使用する低級シランは、反応に不活性である限り、不純物を含有していても構わない。一方、酸素、炭酸ガス、一酸化炭素、アミンやニトリルなどの含窒素化合物、水やアルコール、アルデヒド、ケトンなどの含酸素化合物、エチレン、アセチレンなどオレフィン類、フォスフィン類は触媒活性を阻害する可能性があるので出来る限り低減することが好ましい。
【0041】
本発明の製造方法において、製造触媒に低級シランを接触させる温度は、製造触媒を使用しないこと以外は、圧力、滞留時間、原料ガス中の低級シランの濃度、反応形式などを全て等しくした条件の下で、低級シランの熱的分解により高級シランが実質的に生成し始める温度より低い温度である。本発明によれば、このように低い温度で低級シランから高級シランを製造することが可能になる。製造触媒に低級シランを接触させる温度は、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上であり、通常400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは250℃以下である。この温度範囲内であれば、温度が低すぎて、原料低級シランの転化率が不十分となることはなく、また、反応温度が高くなり過ぎて、前記の固体ケイ素析出が顕著となり、反応器内壁や配管に固体ケイ素が付着や堆積することにより、安定運転が困難になるということもない。
【0042】
反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれであってもよいが、0.1MPaG以上1.0MPaG以下であることが好ましい。ある程度、加圧下で行うほうが、反応器や、それに付帯する機器のサイズを小さくできる利点がある。一方、圧力が高すぎると、前記固体ケイ素が生成しやすくなることがあるため、1.0MPaG以下の圧力で反応を行うのが好ましい。
【0043】
本発明における反応の実施に際しては、その反応形式については特に制限は無く、バッチ式、セミバッチ式、または連続式のいずれの方法においても実施することが可能であるが、通常、固定床、流動床、移動床等による連続流通方式によって好適に実施される。
【0044】
固定床の場合、具体的には、上記のように適切に成形された触媒を充填した管型反応器にモノシランなどの低級シランを含むガスを連続的に流通させることが好ましい。反応器は1基だけで使用しても良いし、複数基を使用する場合は、それぞれを連続式または並列式に連結させても良いし、これらを組み合わせて使用してもよい。その際、ガス空間速度(GHSV)は、通常50hr-1以上、好ましくは100hr-1以上であり、通常5,000hr-1以下、好ましくは2,000hr-1以下である。この範囲であれば、ガス空間速度が小さくなって、生産量に対する触媒量使用量が増加する、あるいは、反応器のサイズが大きくなる、などの経済的に好ましくない条件になることはなく、また、逆にガス空間速度が大きくなりすぎて、転化率が低くなり、未反応原料の低級シランの分離や回収にかかるコストが増加してしまい、経済的に不利となることもない。
【0045】
本発明において、反応時間の経過等により低級シランの転化率が減少した場合には、触媒賦活処理を施すことにより、低級シラン転化率を向上させることができる。触媒賦活処理は、触媒を反応器から取り出して実施してもよいし、反応器内に触媒を留めておいた状態のまま実施してもよいが、工程数が簡略化できるため、反応器内に触媒を留めておいた状態のまま、触媒賦活処理を実施することが望ましい。触媒賦活処理の方法は特に限定はしないが、低級シラン、または、低級シランおよび水素ガス等の希釈ガスの混合物を流通させた状態から低級シランの流通を停止し、水素ガスを含有するガスを流通させることが好ましい。触媒賦活処理時に流通させるガスは水素ガス100%が好ましいが、必要に応じて、窒素、アルゴンなどの不活性ガスで希釈して使用してもよい。触媒賦活処理時の温度は特に限定しないが、好ましくは20℃以上、より好ましくは50℃以上であり、さらに好ましくは100℃以上であり、好ましくは600℃以下、より好ましくは400℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。触媒賦活処理の圧力は減圧、常圧、加圧のいずれであってもよいが、0.01PaG以上1.0MPaG以下であることが好ましい。この触媒賦活処理により、触媒活性が回復し、結果として触媒寿命が延長されることとなる。
【0046】
本発明においては、低級シランから高級シランを製造する反応器から出てきた反応ガスを、例えば冷却、蒸留等の公知の方法により、未反応の低級シランと生成した高級シランとに分離することで、高級シランの原料となる低級シランを回収し、反応器にリサイクルして再度、高級シラン製造の為に使用することも出来る。低級シランをリサイクルすることにより、高い生産性で高級シランを製造することができる。
また、低級シランから製造した高級シランを原料として再度、反応を実施することにより、より高い選択率で高級シランを製造することも可能である。例えばモノシランを原料としてジシランを製造した後に、ジシランを原料として再度、反応を実施することにより、トリシラン等のさらなる高級シランを選択的に製造することが可能となる。
前記したように、本発明を利用し、製造したシラン類を再度原料としてリサイクルすれば、任意の高級シランを高選択率、高効率で製造することが可能となる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
本発明で使用した実験装置を図1に示す。反応器内部に触媒を充填し、反応器を電気炉内で所定の温度へ昇温した。原料ガスの流量はマスフローメーターで制御した。
【0048】
反応で得られたガスはオンラインでガスクロマトグラフ(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの濃度を分析した。なお、ガスクロマトグラフィー測定は、以下の通り行った。
分析機器:ガスクロマトグラフ GC−8A(島津製作所社製)
カラム:Porapak−QS(Waters社製)、長さ1メートル、直径3mm
分析対象物の滞留時間(リテンションタイム):モノシラン=7.5分、ジシラン=12.5分、トリシラン=21.0分
キャリア−ガス:ヘリウム(40ml/min)
カラム温度:70℃5分保持後、16℃/分で180℃まで昇温
注入口温度:200℃
TCD検出器温度:200℃
TCD検出器電流:ミリアンペア
原料、生成物の定量方法:
上述のガスクロマトグラフの測定結果から、反応したガス中に含まれるモノシラン(MS)、ジシラン(DS)、トリシラン(TS)の含有量(mol%)を求めた。時間当りのMS供給量(mol/min)および上記各成分の含有量から、反応後の、時間当たりのDS生成量(Si原子換算mol数/min)、時間当たりのTS生成量(Si原子換算mol数/min)、未反応のMS残存量(Si原子換算mol数/min)を求めた。なお、いずれの場合も、テトラシラン以上の高級シランは検出されなかった。
【0049】
これらの値から、モノシランを原料とした場合には、以下のようにして、MS転化率(mol%)、DS選択率(mol%)、TS選択率(mol%)を求めた。
MS転化率(mol%)=(DS生成量(mol)×2+TS生成量(mol)×3)/MS供給量(mol)
DS選択率(mol%)=DS生成量(mol)×2/(DS生成量(mol)×2+TS生成量(mol)×3)
TS選択率(mol%)=TS生成量(mol)×3/(DS生成量(mol)×2+TS生成量(mol)×3)
また、ジシランを原料とした場合には、以下のようにして、DS転化率(mol%)を求めた。
DS転化率(mol%)=(TS生成量(mol)×3)/(DS供給量(mol)×2)
【0050】
[実施例1]
モルデナイト(SiO2/Al23モル比=18、Na含有量[wt%]=0.04、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.48nm、0.57nm(0.4nm以上0.6nm以下である)、形状:1.5mmペレット、バインダー種:アルミナ)を、内径が8mmの反応管に45cc充填した後、窒素流通下400℃で加熱することで触媒の前処理を実施した。モノシランガスと水素ガスとの混合ガス(モノシラン濃度:80vol%)を、ガス空間速度が140h-1となるように反応器に導入し、200℃、0.12MPaGで反応を行った。10時間後に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。これらの値から、MS転化率1.06(mol%)であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。結果を表1に示す。
【0051】
[実施例2]
反応温度を250℃とした以外は、実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。トリシランの生成量は検出下限界以下であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。MS転化率は1.88(mol%)であった。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例3]
実施例1の触媒の替わりにZSM−5(SiO2/Al23モル比=23、Na含有量[wt%]=0.01、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.51nm、0.53nm、0.55nm、0.56nm(0.4nm以上0.6nm以下である)、形状:3mmペレット、バインダー種:アルミナ)を使用した以外は、実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。トリシランの生成量は検出下限界以下であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。MS転化率は0.93(mol%)であった。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例4]
反応温度を250℃とした以外は、実施例3と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。トリシランの生成量は検出下限界以下であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。MS転化率は4.20(mol%)であった。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例5]
実施例1の触媒の替わりに実施例3、4とは異なる性質を有するZSM−5(SiO2/Al23モル比=1,500、Na含有量[wt%]=0.01、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.51nm、0.53nm、0.55nm、0.56nm(0.4nm以上0.6nm以下である)、形状:1.5mmペレット、バインダー種:アルミナ)を使用し、反応温度を150℃とした以外は、実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。トリシランの生成量は検出下限界以下であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。MS転化率は2.97(mol%)であった。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例6]
反応温度を200℃とした以外は、実施例5と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。トリシランの生成量は検出下限界以下であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。MS転化率は6.79(mol%)であった。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例7]
実施例1の触媒の替わりにβ型(SiO2/Al23モル比=500、Na含有量[wt%]=0.07、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.56nm(0.4nm以上0.6nm以下である)、形状:1.5mmペレット、バインダー種:粘土)を使用した以外は、実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。トリシランの生成量は検出下限界以下であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。MS転化率は1.74(mol%)であった。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例8]
反応温度を250℃とした以外は、実施例7と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。トリシランの生成量は検出下限界以下であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。MS転化率は2.15(mol%)であった。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
[実施例9]
実施例1の触媒の替わりに実施例3、4とは異なる性質を有するZSM−5(SiO2/Al23モル比=80、Na含有量[wt%]=0.01、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.51nm、0.53nm、0.55nm、0.56nm(0.4nm以上0.6nm以下である)、形状:1.5mmペレット、バインダー種:アルミナ)を使用し、反応温度を150℃とした以外は、実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。MS転化率は2.23(mol%)であり、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。結果を表2に示す。
【0060】
[実施例10]
反応温度を200℃とした以外は、実施例9と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。MS転化率は6.21(mol%)であり、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。結果を表2に示す。
【0061】
[実施例11]
実施例1の触媒の替わりに実施例3、4とは異なる性質を有するZSM−5(SiO2/Al23モル比=280、Na含有量[wt%]=0.01、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.51nm、0.53nm、0.55nm、0.56nm(0.4nm以上0.6nm以下である)、形状:1.5mmペレット、バインダー種:アルミナ)を使用し、反応温度を150℃とした以外は、実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。MS転化率は2.89(mol%)であり、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。結果を表2に示す。
【0062】
[実施例12]
反応温度を200℃とした以外は、実施例11と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。MS転化率は6.81(mol%)であり、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。結果を表2に示す。
【0063】
[実施例13]
実施例1の触媒の替わりに実施例3、4とは異なる性質を有するZSM−5(SiO2/Al23モル比=280、Na含有量[wt%]=0.01、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.51nm、0.53nm、0.55nm、0.56nm(0.4nm以上0.6nm以下である)、形状:1.5mmペレット、バインダー種:アルミナ)を使用し、反応温度を150℃とした以外は、実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。MS転化率は3.02(mol%)であり、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。結果を表2に示す。
【0064】
[実施例14]
反応温度を200℃とした以外は、実施例13と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。MS転化率は6.94(mol%)であり、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
[実施例15]
ZSM−5(SiO2/Al23モル比=1500、Na含有量[wt%]=0.01、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.51nm、0.53nm、0.55nm、0.56nm(0.4nm以上0.6nm以下である)、形状:3mmペレット、バインダー種:アルミナ)を内径が8mmの反応管に6.4cc充填した後、窒素流通下400℃で加熱することで触媒の前処理を実施した。モノシランガスと水素ガスとの混合ガス(モノシラン濃度:80vol%)を、ガス空間速度が467h-1となるように反応器に導入し、150℃、0.2MPaGで反応を行った。反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率2.37(mol%)、DS選択率88.9(mol%)、TS選択率11.1(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0067】
[実施例16]
反応温度を200℃とした以外は、実施例15と同様に反応を行った。実施例15と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率4.28(mol%)、DS選択率84.1(mol%)、TS選択率15.9mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0068】
[実施例17]
ZSM−5(SiO2/Al23モル比=1500、Na含有量[wt%]=0.01、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.51nm、0.53nm、0.55nm、0.56nm(0.4nm以上0.6nm以下である)、形状:3mmペレット、バインダー種:アルミナ)を内径が8mmの反応管に6.4cc充填した後、窒素流通下200℃で加熱することで触媒の前処理を実施した。モノシランガスと水素ガスとの混合ガス(モノシラン濃度:80vol%)を、ガス空間速度が467h-1となるように反応器に導入し、150℃、0.2MPaGで反応を行った。反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率2.35(mol%)、DS選択率88.6(mol%)、TS選択率11.5(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0069】
[実施例18]
反応温度を200℃とした以外は、実施例17と同様に反応を行った。実施例17と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率4.33(mol%)、DS選択率84.2(mol%)、TS選択率15.9(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0070】
[実施例19]
反応圧力を0.3MPaGとした以外は、実施例17と同様に反応を行った。実施例17と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率2.28(mol%)、DS選択率89.3(mol%)、TS選択率10.7(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0071】
[実施例20]
反応温度を200℃とした以外は、実施例19と同様に反応を行った。実施例17と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率4.70(mol%)、DS選択率83.0(mol%)、TS選択率17.0(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0072】
[実施例21]
反応圧力を0.4MPaGとした以外は、実施例17と同様に反応を行った。実施例17と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率2.41(mol%)、DS選択率89.0(mol%)、TS選択率11.0(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0073】
[実施例22]
反応温度を200℃とした以外は、実施例21と同様に反応を行った。実施例21と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率4.93(mol%)、DS選択率82.0(mol%)、TS選択率18.0(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0074】
[実施例23]
モノシラン濃度を95%とする以外は、実施例17と同様に反応を行った。実施例17と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率1.80(mol%)、DS選択率91.5(mol%)、TS選択率8.5(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0075】
[実施例24]
反応温度を200℃とした以外は、実施例23と同様に反応を行った。実施例23と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率3.88(mol%)、DS選択率85.6(mol%)、TS選択率14.4(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0076】
[実施例25]
モノシラン濃度を100%とする以外は、実施例17と同様に反応を行った。実施例17と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率1.67(mol%)、DS選択率92.1(mol%)、TS選択率7.9(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0077】
[実施例26]
反応温度を200℃とした以外は、実施例25と同様に反応を行った。実施例25と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率3.72(mol%)、DS選択率85.8(mol%)、TS選択率14.2(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0078】
[実施例27]
ガス空間速度を233h-1とする以外は、実施例17と同様に反応を行った。実施例17と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率2.34(mol%)、DS選択率89.3(mol%)、TS選択率10.7(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0079】
[実施例28]
反応温度を200℃とした以外は、実施例27と同様に反応を行った。実施例27と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。これらの値から、MS転化率5.52(mol%)、DS選択率80.8(mol%)、TS選択率19.2(mol%)と求められた。結果を表3に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
[実施例29](製造触媒の寿命試験)
ZSM−5(SiO2/Al23モル比=1500、Na含有量[wt%]=0.01、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.51nm、0.53nm、0.55nm、0.56nm(0.4nm以上0.6nm以下である)、形状:3mmペレット、バインダー種:アルミナ)を内径が8mmの反応管に6.4cc充填した後、窒素流通下200℃で加熱することで触媒の前処理を実施した。モノシランガスと水素ガスとの混合ガス(モノシラン濃度:80vol%)を、ガス空間速度が467h-1となるように反応器に導入し、180℃、0.4MPaGで反応を行った。反応開始10時間後の反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めたところ、MS転化率4.26(mol%)、DS選択率82.1(mol%)、TS選択率17.9(mol%)であった。反応を継続し、反応開始200時間後の反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めたところ、MS転化率2.32(mol%)、DS選択率89.3(mol%)、TS選択率10.7(mol%)であった。結果を表4に示す。
【0082】
[実施例30](製造触媒の再生試験)
実施例29に記載の反応開始200時間後に、モノシランの供給を停止し、水素ガスのみ流通、常圧下、180℃で、触媒賦活処理を3時間行った。触媒賦活処理後、実施例29と同等の条件で反応を行った。反応再開1時間後の反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めたところ、MS転化率3.77(mol%)、DS選択率84.8(mol%)、TS選択率15.2(mol%)であった。再度、モノシランの供給を停止し、水素ガスのみ流通、常圧下、180℃で、触媒賦活処理を72時間行った。触媒賦活処理後、実施例29と同等の条件で反応を行った。反応再開1時間後の反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフGC−8A(島津製作所製)へ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めたところ、MS転化率4.24(mol%)、DS選択率81.5(mol%)、TS選択率18.5(mol%)であった。結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
[比較例1]
実施例1の触媒の替わりに実施例1とは異なる性質を有するモルデナイト(SiO2/Al23モル比=18、Na含有量[wt%]=3.7、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.48nm、0.57nm(0.4nm以上0.6nm以下である)、形状:1.2mmペレット、バインダー種:粘土)を使用し、実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。トリシランの生成量は検出下限界以下であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。MS転化率は0.07(mol%)、DS選択率は100(mol%)、TS選択率は0(mol%)であった。この結果からも分かるように、同じモルデナイトでもそのモルデナイトに含まれるナトリウムイオンが水素イオンに置換された形態であるモルデナイトを使用して同じ条件にて反応を行った実施例1と比較して、モノシランの転化率は非常に低い結果となった。結果を表5に示す。
【0085】
[比較例2]
反応温度を250℃とした以外は、比較例1と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。トリシランの生成量は検出下限界以下であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。MS転化率は0.13(mol%)、DS選択率は100(mol%)、TS選択率は0(mol%)であった。この結果からも分かるように、同じモルデナイトでもそのモルデナイトに含まれるナトリウムイオンが水素イオンに置換された形態であるモルデナイトを使用して同じ条件にて反応を行った実施例1と比較して、モノシランの転化率は非常に低い結果となった。結果を表5に示す。
【0086】
[比較例3]
γ―アルミナ(住化アルケム製FD−24;2〜4mm球状、BET比表面積=3302/g)を使用し、実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。トリシランの生成量は検出下限界以下であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。MS転化率は0.15(mol%)、DS選択率は100(mol%)、TS選択率は0(mol%)であった。この結果からも分かるように、同じ条件にて反応を行った実施例1、3、6、7と比較して、モノシランの転化率は非常に低い結果となった。結果を表5に示す。
【0087】
[参考例1]
触媒を充填せずに、反応温度を350℃、375℃、400℃、425℃とした以外は実施例1と同様に反応を行った。実施例1と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めた。300℃以下ではモノシランの転化は全く認められず、ジシランを生成させるためには350℃の高温が必要であった。また400℃以上の温度では、トリシランの生成が確認されるとともに、反応管の壁面での固体ケイ素の析出が認められた。反応温度350℃では、MS転化率0.04(mol%)、DS選択率100(mol%)、TS選択率0(mol%)であり、反応温度375℃では、MS転化率0.25(mol%)、DS選択率100(mol%)、TS選択率0(mol%)であった。また、反応温度400℃では、MS転化率1.13(mol%)、DS選択率89.0(mol%)、TS選択率10.8(mol%)であり、反応温度425℃では、MS転化率4.75(mol%)、DS選択率82.6(mol%)、TS選択率17.2(mol%)であった。結果を表5に示す。
【0088】
[参考例2]
Y型ゼオライト(SiO2/Al23モル比=6、Na含有量[wt%]=0.01、Na以外のアルカリ金属およびアルカリ土類金属は検出限界以下、細孔直径=0.74nm、形状:1.5mmペレット、バインダー種:アルミナ)を使用し、実施例15と同様に反応を行った。実施例15と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めたところ、MS転化率は0.26(mol%)であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。結果を表5に示す。
【0089】
[参考例3]
反応温度を200℃とした以外は、参考例2と同様に反応を行った。参考例2と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めたところ、MS転化率は0.48(mol%)であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。結果を表5に示す。
【0090】
[参考例4]
反応温度を250℃とした以外は、参考例2と同様に反応を行った。参考例2と同様に、反応生成物をオンラインでガスクロマトグラフへ導入し、モノシラン、ジシラン、トリシランの含有量を求めたところ、MS転化率は0.89(mol%)であった。また、反応管の壁面での固体ケイ素の析出は目視上、認められなかった。結果を表5に示す。
【0091】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の製造方法によれば、固体ケイ素への分解が抑制され、高級シラン(例えば低級シランがモノシランの場合のジシラン)が高収率で得られる。そのため、高純度の高級シラン(例えば低級シランがモノシランの場合のジシラン)を比較的安価に製造することが可能となり有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 低級シラン流量計
2 H2流量計
3 反応器
4 冷却器
5 電気炉
図1